JP6575443B2 - 熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽ガラス - Google Patents
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その課題は、前記一般式MxWyOzで記載された複合タングステン酸化物微粒子、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有した熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラス、当該複合タングステン酸化物微粒子を含有した分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材を、窓材等の構造体に適用した場合、当該窓材等を通過する光において、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率も大きく低下してしまうことである。
当該波長領域の近赤外光は人間の眼に対してほぼ不可視であり、また安価な近赤外LED等の光源により発振が可能であることから、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等に広く利用されている。ところが、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体、熱線遮蔽体や熱線遮蔽基材、分散体や合わせ透明基材等の構造体は、当該波長領域の近赤外光も、熱線と伴に強く吸収してしまう。
この結果、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体、熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラス、分散体や合わせ透明基材を介しての、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等の使用が制限される事態になる場合も生じていた。
例えば、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽ガラス、熱線遮蔽分散体および熱線遮蔽合わせ透明基材を介した場合であっても、近赤外光を用いる通信機器、撮像機器、センサー等の使用を可能とするには、波長800〜900nmの領域における近赤外光の透過率を向上させれば良いと考えられた。そして、当該波長領域における近赤外光の透過率を単に向上させるだけであれば、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度、熱線遮蔽フィルムや熱線遮蔽ガラスにおける複合タングステン酸化物微粒子の濃度、熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材における複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を適宜減少させればよい、とも考えられた。
しかし、複合タングステン酸化物微粒子の濃度、熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材における複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を減少させた場合、波長1200〜1800nmの領域をボトムとする熱線吸収能力も同時に低下し、熱線遮蔽効果を低下させることになり、肌へのジリジリ感も感じることになってしまう。
そこで、当該観点から、ポーラロン吸収の大きさを制御することによって、波長800〜900nmの近赤外光の透過率を向上させた複合タングステン酸化物微粒子についてさらに検討した。
これは、ポーラロン吸収の大きさを制御することによって波長800〜900nmの近赤外光の透過率を向上させた複合タングステン酸化物微粒子において、プラズモン吸収の絶対値は減少するが、可視光での透過率が大きくなり単位面積当たりの複合タングステン酸化物微粒子濃度を高くすることができ、波長1500〜2100nmの熱線の透過を抑制できるためである。
但し、前記元素Lは、K、Rb、Csから選択される元素であり、前記元素Mは、K、Rb、Csから選択される、前記元素Lとは異なる1種以上の元素である。
熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスであって、
透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材の少なくとも一方の面にコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱線遮蔽微粒子を含むバインダー樹脂層であり、
前記熱線遮蔽微粒子は、元素LおよびMと、タングステンと、酸素とを有し、一般式(LAMB)WCODで表記され、六方晶系の結晶構造を有し、
前記元素Lは、K、Rb、Csから選択される元素であり、
前記元素Mは、K、Rb、Csから選択される、前記元素Lとは異なる1種以上の元素であり、
前記熱線遮蔽微粒子は、前記熱線遮蔽微粒子のみによる光吸収を算出し、その可視光透過率を85%としたときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であることを特徴とする熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスである。
第2の発明は、
前記バインダー樹脂が、UV硬化性樹脂バインダーであることを特徴とする第1の発明に記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスである。
第3の発明は、
前記コーティング層の厚さが10μm以下であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスである。
第4の発明は、
前記透明フィルム基材が、ポリエステルフィルムであることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルムである。
第5の発明は、
前記コーティング層に含まれる前記熱線遮蔽微粒子の単位投影面積あたりの含有量が、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする第1から第4の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスである。
第6の発明は、
可視光透過率が70%のときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上45%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が8%以下であり、且つ、波長2100nmの透過率が9%以下であることを特徴とする第1から第5の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスである。
(複合タングステン酸化物微粒子)
本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、元素LおよびMと、タングステンと、酸素とを有し、一般式(LAMB)WCODで表記され、六方晶系の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子であって、前記元素Lは、K、Rb、Csから選択される元素であり、前記元素Mは、K、Rb、Csから選択される、前記元素Lとは異なる1種以上の元素である。具体的には、元素LおよびMとして、KRb、KCs、RbCs,KRbCs(各元素の順序は変更可能である。)の組み合わせをとることが出来る。
そして、当該複合タングステン酸化物微粒子のみによる光吸収を算出し、その可視光透過率を85%としたときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下である熱線遮蔽微粒子である。
複合タングステン酸化物には、その他の不純物が含まれていないことが好ましい。当該不純物が含まれていないことは、複合タングステン酸化物粉末のXRD測定を行った際に、不純物のピークが観察されないことにより確認される。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
本発明にかかるタングステン化合物出発原料は、タングステン、元素M、元素Nそれぞれの単体もしくは化合物を含有する混合物である。タングステン原料としてはタングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であることが好ましい。元素LおよびMの原料としては、元素Lまたは元素Mの単体、元素Lまたは元素Mの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酸化物、炭酸塩、タングステン酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらには限定されない。
各原料が水や有機溶剤等の溶媒に可溶であれば、各原料と溶媒を十分に混合したのち溶媒を揮発させることで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。もっとも各原料に可溶な溶媒がなくとも、各原料をボールミル等の公知の手段で十分に均一に混合することで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。
必要に応じて、還元性ガス雰囲気中にて還元処理を行った後、不活性ガス雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。この場合の不活性ガス雰囲気中での熱処理は400℃以上1200℃以下の温度で行うことが好ましい。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子を液状の媒体中に分散させることで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を製造することができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液は、その他従来の近赤外線を強く吸収する材料、例えば特許文献4で示された複合タングステン酸化物が用いられていたさまざまな分野において、従来の複合タングステン酸化物微粒子の分散液と同様に用いることができる。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子および所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状の媒体へ添加し分散処理を行うことで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得ることができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液の媒体には、熱線遮蔽微粒子の分散性を保つための機能と、熱線遮蔽微粒子分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないための機能が要求される。
均一な熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
本発明にかかる熱線遮蔽微粒子または熱線遮蔽微粒子分散液を、固体状の媒体へ分散することで、分散粉やマスターバッチ、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽プラスチック成形体などを製造することができる。
熱線遮蔽微粒子分散液は、熱線遮蔽微粒子を液状の媒体中に分散させたものである。熱線遮蔽微粒子分散液は、本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子と、所望により適量の分散剤と、カップリング剤と、界面活性剤等とを、液状の媒体へ添加し分散処理を行い、当該微粒子を液状の媒体へ分散し、分散液とすることで得ることができる。
具体的には、水、有機溶媒、液状のプラスチックモノマーやプラスチック用可塑剤あるいはこれらの混合物を選択することができる。尤も、フィルム上やガラス上にコーティングを形成するためには、媒体として低沸点の有機溶媒を選択することが好ましい。これは、媒体が低沸点の有機溶媒であると、コーティング後の乾燥工程で容易に取り除くことが出来、コーティング膜の特性、例えば硬度や透明性などを損なうことがないからである。
尤も、これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒を、1種または2種以上で組み合わせて用いることができる。
均一な熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
上述した熱線遮蔽微粒子分散液を用いて、基板フィルム上または基板ガラスから選択される透明基板上へ、熱線遮蔽微粒子を含有するコーティング層を形成することで、熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスを製造することが出来る。
例えば、熱線遮蔽フィルムは以下のように作製することができる。
上述した熱線遮蔽微粒子分散液に媒体樹脂を添加し、塗布液を得る。この塗布液をフィルム基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させ所定の方法で樹脂を硬化させれば、当該熱線遮蔽微粒子が媒体中に分散したコーティング膜の形成が可能となる。
これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。尤も、当該コーティング層用の媒体のなかでも、生産性や装置コストなどの観点からUV硬化性樹脂バインダーを用いることが特に好ましい。
また、フィルム基板の表面は、コーティング層接着の容易さを実現するため、表面処理がなされていることが好ましい。また、ガラス基板もしくはフィルム基板とコーティング層との接着性を向上させるために、ガラス基板上もしくはフィルム基板上に中間層を形成し、中間層上にコーティング層を形成することも好ましい構成である。中間層の構成は特に限定されるものではなく、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等により構成することができる。
但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
当該測定の際、分散液の溶媒(メチルイソブチルケトン)を、上述のセルに満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。この結果、以下に説明する分光透過率、および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や、溶媒の光吸収による寄与が除外され、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
可視光透過率は、波長380〜780nmの光に対する透過率から、JIS R 3106に基づいて算出した。熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
(Rb/Cs/W(モル比)=0.30/0.03/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)の各粉末を、Rb/Cs/W(モル比)=0.30/0.03/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N2ガスをキャリアーとした5%H2ガスを供給下で加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、N2ガス雰囲気下で800℃、30分間焼成して、実施例1に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末A」と略称する。)を得た。
当該測定結果より、実施例1に係る複合タングステン酸化物微粒子は、後述する比較例1に係る従来方法で作製したセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっており、波長2100nmの熱線遮蔽性能が向上していることが確認された。
塗布膜を設けたPETフィルムを、80℃で60秒間乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させることで、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が設けられた熱線遮蔽フィルム(以下、フィルムAと略称する。)を作製した。
フィルムAの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は20.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.2%、波長2100nmの透過率は5.3%、ヘイズは1.1%と測定された。フィルムAの評価結果を表2に記載した。
(Rb/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化ルビジウム(RbOH)および水酸化カリウム(KOH)の各粉末とを、Rb/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末B」と略称する。)を得た。
分散液Bの測定結果を表1に記載した。
フィルムBの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は40.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は7.9%、波長2100nmの透過率は5.8%、ヘイズは1.2%と測定された。フィルムBの評価結果を表2に記載した。
(Rb/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化ルビジウム(RbOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Rb/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末C」と略称する。)を得た。
分散液Cの測定結果を表1に記載した。
フィルムCの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は35.3%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は4.5%、波長2100nmの透過率は3.4%、ヘイズは1.0%と測定された。フィルムCの評価結果を表2に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.05/0.28/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)の各粉末とを、Cs/K/W(モル比)=0.05/0.28/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末D」と略称する。)を得た。
分散液Dの測定結果を表1に記載した。
フィルムDの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は39.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は5.7%、波長2100nmの透過率は4.3%、ヘイズは1.1%と測定された。フィルムDの評価結果を表2に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末E」と略称する。)を得た。
分散液Eの測定結果を表1に記載した。
フィルムEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は32.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.3%、波長2100nmの透過率は3.1%、ヘイズは1.2%と測定された。フィルムEの評価結果を表2に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末F」と略称する。)を得た。
分散液Fの測定結果を表1に記載した。
フィルムFの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は25.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.1%、波長2100nmの透過率は3.1%、ヘイズは1.1%と測定された。フィルムFの評価結果を表2に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.25/0.08/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)および水酸化カリウム(KOH)との各粉末を、Cs/K/W(モル比)=0.25/0.08/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末G」と略称する。)を得た。
分散液Gの測定結果を表1に記載した。
フィルムGの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は18.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.7%、波長2100nmの透過率は4.7%、ヘイズは1.1%と測定された。フィルムGの評価結果を表2に記載した。
(Cs/W(モル比)=0.33/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルム)
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)との各粉末を、Cs/W(モル比)=0.33/1.00相当となる割合で秤量した以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る熱線遮蔽微粒子である複合タングステン酸化物微粒子(以下、「粉末H」と略称する。)を得た。
分散液Hの測定結果を表1に記載した。
フィルムHの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は9.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.3%、波長2100nmの透過率は9.3%、ヘイズは1.0%と測定された。フィルムHの評価結果を表2に記載した。
(Rb/Cs/W(モル比)=0.30/0.03/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例1に係る塗布液Aを10cm×10cm×3mmの無機クリアガラス上にバーコーターで塗布し塗布膜を形成した。尚、他の実施例・比較例においても同様の無機クリアガラスを用いた。
塗布膜を80℃で60秒間乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させることで、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスAと略称する。)を作製した。
ガラスAの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は17.6%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.6%、波長2100nmの透過率は4.4%、ヘイズは0.5%と測定された。ガラスAの評価結果を表3に記載した。
(Rb/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例2に係る塗布液Bを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスBと略称する。)を作製した。
ガラスBの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は35.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は6.3%、波長2100nmの透過率は4.8%、ヘイズは0.6%と測定された。ガラスBの評価結果を表3に記載した。
(Rb/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例3に係る塗布液Cを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスCと略称する。)を作製した。
ガラスCの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は31.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は3.4%、波長2100nmの透過率は2.8%、ヘイズは0.4%と測定された。ガラスCの評価結果を表3に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.05/0.28/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例4に係る塗布液Dを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスDと略称する。)を作製した。
ガラスDの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は35.2%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は4.5%、波長2100nmの透過率は3.5%、ヘイズは0.5%と測定された。ガラスDの評価結果を表3に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.10/0.23/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例5に係る塗布液Eを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスEと略称する。)を作製した。
ガラスEの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は28.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.5%、波長2100nmの透過率は2.5%、ヘイズは0.6%と測定された。ガラスEの評価結果を表3に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.20/0.13/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例6に係る塗布液Fを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスFと略称する。)を作製した。
ガラスFの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は21.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.5%、波長2100nmの透過率は2.5%、ヘイズは0.6%と測定された。ガラスFの評価結果を表3に記載した。
(Cs/K/W(モル比)=0.25/0.08/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
実施例7に係る塗布液Gを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスGと略称する。)を作製した。
ガラスGの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は15.8%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は1.3%、波長2100nmの透過率は3.9%、ヘイズは0.4%と測定された。ガラスGの評価結果を表3に記載した。
(Cs/W(モル比)=0.33/1.00となる複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽ガラス)
比較例1に係る塗布液Hを用いた以外は実施例8と同様にして、熱線遮蔽微粒子を含有したコーティング膜が形成された熱線遮蔽ガラス(以下、ガラスHと略称する。)を作製した。
ガラスHの光学特性を測定したところ、透過率プロファイルから、波長800〜900nmにおける透過率の平均値は7.5%、波長1200〜1500nmにおける透過率の平均値は2.5%、波長2100nmの透過率は8.0%、ヘイズは0.4%と測定された。ガラスHの評価結果を表3に記載した。
実施例1〜7に係る熱線遮蔽微粒子おいては、従来の複合タングステン酸化物微粒子である比較例1と比較して、可視光透過率が85%のとき、波長800〜900nmの近赤外光の透過率の平均値が高く、波長1200〜1800nm、波長2100nmの透過率が低い。この結果から、複合タングステン酸化物微粒子が発揮する高い遮熱特性を担保しながら、波長800〜900nmの近赤外光では高い透過率が得られ、肌へのジリジリ感が減少することが判明した。
Claims (6)
- 熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラスであって、
透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材の少なくとも一方の面にコーティング層を有し、
前記コーティング層は、熱線遮蔽微粒子を含むバインダー樹脂層であり、
前記熱線遮蔽微粒子は、元素LおよびMと、タングステンと、酸素とを有し、一般式(LAMB)WCODで表記され、六方晶系の結晶構造を有し、
前記元素Lは、K、Rb、Csから選択される元素であり、
前記元素Mは、K、Rb、Csから選択される、前記元素Lとは異なる1種以上の元素であり、
前記熱線遮蔽微粒子は、前記熱線遮蔽微粒子のみによる光吸収を算出し、その可視光透過率を85%としたときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上60%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、且つ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であることを特徴とする熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス。 - 前記バインダー樹脂が、UV硬化性樹脂バインダーであることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス。
- 前記コーティング層の厚さが10μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス。
- 前記透明フィルム基材が、ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルム。
- 前記コーティング層に含まれる前記熱線遮蔽微粒子の単位投影面積あたりの含有量が、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス。
- 可視光透過率が70%のときに、波長800〜900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上45%以下であり、且つ、波長1200〜1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が8%以下であり、且つ、波長2100nmの透過率が9%以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱線遮蔽フィルムまたは熱線遮蔽ガラス。
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