JP6606898B2 - 熱線遮蔽分散体および熱線遮蔽合わせ透明基材 - Google Patents
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Description
当該波長領域の近赤外光は人間の眼に対してほぼ不可視であり、また安価な近赤外LED等の光源により発振が可能であることから、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等に広く利用されている。ところが、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を含有した分散体や合わせ透明基材等の構造体は、当該波長領域の近赤外光も、熱線と伴に強く吸収してしまう。
この結果、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を含有した分散体や合わせ透明基材を介しての、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等の使用は断念せざるを得なかった。
例えば、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を単に向上させるだけであれば、熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材における、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を適宜減少させればよいとも考えられた。しかし、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を減少させた場合、波長1200〜1800nmの領域をボトムとする熱線吸収能力も同時に低下し、熱線遮蔽効果を低下させることになってしまう。
ここで本発明者らは研究を重ね、前記一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子において、タングステン原子の一部を、Mo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の金属原子(本発明において「元素A」と記載する場合がある。)に置き換えることで、波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を向上した熱線遮蔽微粒子が得られるとの知見を得た。
そこで、当該観点から波長700〜1200nmの領域の近赤外光の透過率を有する熱線遮蔽微粒子をさらに検討したところ、当該熱線遮蔽微粒子は、従来の一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子と比較して、熱線遮蔽微粒子としての性能において劣るものではないことを知見した。
つまり本発明に係る熱線遮蔽微粒子を用いることで、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率が向上したとしても、波長1500〜2100nmの熱線の透過は抑制出来るので、ジリジリ感を低減する観点から見た熱線遮蔽分散体や合わせ透明基材としての特性は、従来の技術に係る一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽分散体や合わせ透明基材と同等であることを知見した。
即ち、この微粒子を各種の媒体に分散させた分散体や、この微粒子を含有する合わせ透明基材は、従来の一般式MxWyOzで表される複合タングステン酸化物の持つ高い遮熱特性を保ったまま、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率を向上した熱線遮蔽分散体や熱線遮蔽合わせ透明基材となることを知見し、本発明を完成したものである。
元素Aは、Mo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上であってタングステン原子の一部を置換する元素である。元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属のうちから選択される1種類以上の元素である。Wは、タングステンであり、Oは、酸素である。
さらに、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0で表記され、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であって、波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率が向上したものである。
一方、波長1200〜1800nmをボトムとするさらに大きな熱線の吸収は自由電子による局在表面プラズモン共鳴による吸収である。尚、局在表面プラズモン共鳴のエネルギーの中心は0.83eV(波長1494nm)であると考えられる。
そして、分散粉や可塑剤分散液、マスターバッチを透明樹脂中に均一混合することにより、従来の複合タングステン酸化物の持つ高い遮熱特性を保ったまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を向上した熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムを製造できることを知見した。さらに、これらの熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムを複数枚の透明基材間に存在させることで、従来の複合タングステン酸化物の持つ高い遮熱特性を保ったまま、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率を向上した熱線遮蔽合わせ透明基材を製造できることも知見し、本発明を完成した。
少なくとも熱線遮蔽微粒子と熱可塑性樹脂とを含み、
前記熱線遮蔽微粒子は一般式Aa Cs bWcOdで表記され、AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、Csはセシウムであり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦a/b≦0.1であり、0.20≦b/(a+c)≦0.61であり、2.2≦d/(a+c)≦3.0であり、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする熱線遮蔽分散体である。
第2の発明は、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第3の発明は、 前記複合タングステン酸化物微粒子の直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子を、0.5質量%以上80.0質量%以下含むことを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第5の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第6の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第7の発明は、
可視光透過率が70%のときに、波長850nmの近赤外光の透過率が23%以上45%以下であり、且つ波長1200〜1800nmの熱線の透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする熱線遮蔽微粒子分散体である。
第8の発明は、
複数枚の透明基材間に、本発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体が存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材である。
第9の発明は、
波長850nmの近赤外光の透過率が23%以上45%以下であり、且つ波長1200〜1800nmの熱線の透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材である。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、一般式AaMbWcOdで表記される複合タングステン酸化物微粒子である。但し、元素AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、のうちから選択される1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素である。そして、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0を満たす、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子である。
また、複合タングステン酸化物において酸素の一部が他の元素で置換されていても構わない。当該他の元素としては、例えば、窒素や硫黄、ハロゲン等が挙げられる。
本発明に係る一般式AaMbWcOdで表記される熱線遮蔽微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
本発明にかかるタングステン化合物出発原料は、タングステン、元素A、元素Mそれぞれの単体もしくは化合物を含有する混合物である。タングステン原料としてはタングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であることが好ましい。元素Aまたは元素Mの原料としては、元素AまたはM単体、元素AまたはMの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、タングステン酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらには限定されない。
各原料が水や有機溶剤等の溶媒に可溶であれば、各原料と溶媒を十分に混合したのち溶媒を揮発させることで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。もっとも各原料に可溶な溶媒がなくとも、各原料をボールミル等の公知の手段で十分に均一に混合することで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。
尚、所望により、還元性ガス雰囲気中にて還元処理を行ったのち不活性ガス雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。この場合の不活性ガス雰囲気中での熱処理は400℃以上1200℃以下の温度で行うことが好ましい。
熱線遮蔽微粒子分散体の製造方法について(1)粉粒体状の熱線遮蔽微粒子分散体の製造方法、(2)シート形状またはフィルム形状の熱線遮蔽微粒子分散体(熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽シート)の製造方法、の順で説明する。
熱線遮蔽微粒子を、分散剤と、カップリング剤および/または界面活性剤と伴に、有機溶媒中へ分散して有機溶媒分散液を得る。その後、当該有機溶媒分散液から有機溶媒を除去することで、熱線遮蔽微粒子が分散剤中に分散した本発明に係る分散粉を得ることができる。
熱線遮蔽微粒子を有機溶剤へ分散する方法は、当該微粒子が均一に有機溶剤に分散する方法であれば任意に選択できる。例としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることが出来る。
尤も、これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
好適に用いることのできる分散剤として、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
また、熱線遮蔽微粒子や分散粉を樹脂中に分散させ、当該樹脂をペレット化することで、本発明に係るマスターバッチを得ることが出来る。
本発明に係る分散粉、可塑剤分散液、またはマスターバッチを透明樹脂中へ均一に混合することにより、本発明に係るシート状またはフィルム状の熱線遮蔽微粒子分散体を製造できる。当該シート状またはフィルム状の熱線遮蔽微粒子分散体からは、従来の技術に係る複合タングステン酸化物の持つ熱線遮蔽特性を担保し、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率は向上した、熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムを製造できる。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体といった樹脂群から選択される樹脂、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、または当該樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体から、好ましい樹脂の選択を行うことが出来る。
一方、本発明にかかる熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムを後述する熱線遮蔽合わせガラスの中間層として用いる場合は、透明基材との密着性、耐候性、耐貫通性などの観点から、ポリビニルアセタール樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリビニルブチラール樹脂であることがさらに好ましい。
可塑剤としては、本発明に係る熱可塑性樹脂に対して可塑剤として用いられる物質を用いることができる。例えばポリビニルアセタール樹脂で構成された熱線遮蔽フィルムに用いられる可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられる。いずれの可塑剤も、室温で液状であることが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムの形成方法には、公知の方法を用いることが出来る。例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。
本発明に係る熱線遮蔽シートや熱線遮蔽フィルムを、板ガラスまたはプラスチックの材質からなる複数枚の透明基材間に、中間層として介在させて成る熱線遮蔽合わせ透明基材について説明する。
熱線遮蔽合わせ透明基材は、中間層をその両側から透明基材を用いて挟み合わせたものである。当該透明基材としては、可視光領域において透明な板ガラス、または、板状のプラスチック、またはフィルム状のプラスチックが用いられる。プラスチックの材質は、特に限定されるものではなく用途に応じて選択可能であるが、例えば、自動車等の輸送機器に用いる場合は、当該輸送機器の運転者や搭乗者の透視性を確保する観点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂といった透明樹脂が好ましが、他にも、PET樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、等が使用可能である。
ここで、可視光透過率を70%に調整することは、上述した有機溶媒分散液、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチに含有される熱線遮蔽微粒子の濃度、樹脂組成物を調製する際の熱線遮蔽微粒子、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチの添加量、さらにはフィルムやシートの膜厚等を調整することにより、容易である。
1.本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、可視光透過バンドの領域が近赤外光の領域である波長700〜1200nmの領域に広がっており、当該領域において高い透過率を持つものである。
2.本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、波長1200〜1800nmの領域に存在する透過率の最小値の値を殆ど変えていない。
各実施例における熱線遮蔽微粒子分散液および熱線遮蔽微粒子分散体の、波長300〜2100nmの領域における光の透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4100を用いて測定した。
また各実施例における熱線遮蔽シート、熱線遮蔽フィルム、および合わせ透明基材の日射透過率は、上述した分光光度計で測定された波長300〜2100nmの領域の光の透過率をもとに、JIS R 3106:1998に基づいて算出した。
そして熱線遮蔽微粒子の平均粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
タングステン酸(H2WO4)と、水酸化セシウム(CsOH)と、三酸化モリブデン(MoO3)との各粉末を、Mo/Cs/W(モル比)=0.015/0.33/0.985相当となる割合で秤量した後、メノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N2ガスをキャリアーとした5%H2ガス供給下において600℃の温度で1時間の加熱を行って還元処理を行った後、N2ガス雰囲気下で800℃、30分間焼成して、複合タングステン酸化物Mo0.015Cs0.33W0.985O3(以下、粉末Aと記載する。)を得た。
粉末AをX線回折法で測定したところ、純粋な六方晶であり、三酸化モリブデンや二酸化モリブデンの回折線は観察されなかった。また、粉末Aを透過電子顕微鏡で観察したところ、六方晶セシウムタングステンブロンズの多結晶粒子が観察されたが、当該多結晶粒子の粒界にモリブデン化合物などの偏析は観察されなかった。このことから、モリブデン成分は、六方晶セシウムタングステンブロンズの結晶中に完全に固溶していると判断された。
得られた実施例1に係る熱線遮蔽シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が70%であり、波長850nmにおける透過率は39%、透過率の最小値は波長1610nmにおける13%であった。そして、可視光透過率は70%、日射透過率は37%、ヘイズは0.5%と測定された。
タングステン酸(H2WO4)と水酸化セシウム(CsOH)37.4g(Cs/W(モル比)=0.33相当)とをメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N2ガスをキャリアーとした5%H2ガス供給下において加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、N2ガス雰囲気下において800℃、30分間焼成して複合タングステン酸化物Cs0.33WO3(以下、微粒子αと記載する。)を得た。
分散液αへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子の重量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製した。次に、この複合タングステン酸化物微粒子分散液αからスプレードライヤーを用いてメチルイソブチルケトンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉を得た(以下、分散粉αと記載する。)。
この熱線遮蔽シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が70%であり、波長850nmにおける透過率は22%、波長1200〜1800nmにおける透過率の最小値は10%、日射透過率は33%、ヘイズは0.6%と測定された。
添加元素Aと、添加元素Mとしてセシウムと、タングステンおよび酸素との比率が、表1に示す数値となるように実施例1と同様に、添加化合物粉末を秤量し熱処理して、実施例2〜19に係る複合タングステン酸化物粉末を作製した。但し、実施例19においては添加元素Aとしてビスマスとスズとの混合物(Bi:Sn(モル比)=1:1相当)を用いた。
当該実施例2〜19に係る複合タングステン酸化物粉末のすべてについて、X線回折測定と透過電子顕微鏡観察を行ない、添加元素Aが六方晶のセシウムタングステンブロンズ微粒子結晶内に固溶していることを確認した。
当該実施例2〜19に係る各々の複合タングステン酸化物粉末と、溶媒と、分散剤aとをペイントシェーカー中に装填し、実施例1と同様に撹拌混合して、実施例2〜19に係る微粒子分散液を作製した。当該実施例2〜19に係る微粒子分散液の各々に、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと複合タングステン酸化物微粒子との質量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物微粒子]=3となるように調製した。次に、当該微粒子分散液から溶媒を除去し、実施例2〜19に係る複合タングステン酸化物微粒子分散粉を作製した。
これら実施例2〜19に係る複合タングステン酸化物微粒子分散粉を用い、実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂に練り込んで、実施例2〜19に係るシートを作製した。この実施例2〜19に係るシートの透過率を、分光光度計を用いて測定し、可視光透過率が70%となるときの波長850nmにおける透過率と、波長1200〜1800nmでの透過率最小値、日射透過率、ヘイズ値を測定した。当該測定結果を表1に記載した。
三酸化タングステン(WO3)粉末を、N2ガスをキャリアーとした3%H2ガスを供給下において加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行い、タングステン酸化物WO2.72(以下、微粒子βと記載する。)を得た。
この熱線遮蔽シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が70%であり、
波長850nmにおける透過率は49%、波長1200〜1800nmにおける透過率の最小値は39%、日射透過率は55%、ヘイズは0.9%と測定された。当該測定結果を表1に記載した。
六ホウ化ランタン(LaB6)粉末5質量%、分散剤a3質量%、メチルイソブチルケトン92質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、20時間粉砕・分散処理し、六ホウ化ランタン微粒子分散液(以下、分散液γと記載する。)を得た。ここで、分散液γ内における六ホウ化ランタン微粒子の分散平均粒子径を測定したところ31nmであった。
この熱線遮蔽シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が70%であり、波長850nmにおける透過率は41%であった。透過率の最小値は波長1200〜1800nmよりも短い波長領域に存在し、波長975nmにおける透過率は36%であった。また、日射透過率は48%、ヘイズは1.0%と測定された。当該測定結果を表1に記載した。
実施例1〜19においては、従来の複合タングステン酸化物を用いた熱線遮蔽シートである比較例1と比較して、可視光透過率が70%のときの波長850nmの光の透過率が高く、複合タングステン酸化物としての高い熱線遮熱特性を保持しながら、波長700〜1200nmの近赤外光には透過率を持つ熱線遮蔽シートが得られることが判明した。
実施例1で作製した分散粉A(複合タングステン酸化物Cs0.33Mo0.015W0.985O3の分散粉)とポリカーボネート樹脂ペレットとを、複合タングステン酸化物の濃度が2.0質量%となるように混合し、ブレンダーを用いて均一に混合し混合物とした。当該混合物を、二軸押出機を用いて290℃で熔融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、熱線遮蔽透明樹脂成形体用の実施例20に係るマスターバッチ(以下、マスターバッチAと記載する。)を得た。
ポリカーボネート樹脂ペレットへ、所定量のマスターバッチAを所定量添加し、実施例20に係る熱線遮蔽シートの製造用組成物を調製した。尚、当該所定量とは、製造される熱線遮蔽シート(1.0mm厚)の可視光透過率が70%となる量である。
得られた実施例20に係る熱線遮蔽シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が70%であり、波長850nmにおける透過率は38%、透過率の最小値は波長1610nmで10%となった。日射透過率は37%、ヘイズは0.9%と測定された。
以上の結果より、実施例1の分散粉と同様、熱線遮蔽シートの製造に好適に用いることのできる熱線遮蔽微粒子分散体であるマスターバッチが作製出来ることが確認された。
ポリビニルブチラール樹脂に可塑剤のトリエチレングリコ−ル-ジ-2-エチルブチレ−トを添加し、ポリビニルブチラール樹脂と可塑剤との重量比が[ポリビニルブチラール樹脂/可塑剤]=100/40となるように調製した混合物を作製した。この混合物に実施例1で作製した分散粉A(複合タングステン酸化物Cs0.33Mo0.015W0.985O3の分散粉)を、所定量添加し、熱線遮蔽フィルムの製造用組成物を調製した。尚、当該所定量とは、製造される熱線遮蔽合わせ透明基材の可視光透過率が70%となる量である。
この実施例21に係る熱線遮蔽フィルムを10cm×10cmに裁断し、同寸法を有する厚さ2mmの無機クリアガラス板2枚の間に挟み込み、積層体とした。次に、この積層体をゴム製の真空袋に入れ、袋内を脱気して90℃で30分保持した後、常温まで戻し袋から取り出した。そして、当該積層体をオートクレーブ装置に入れ、圧力12kg/cm2、温度140℃で20分加圧加熱して、実施例21に係る熱線遮蔽合わせガラスシートを作製した。
ここで比較の為、分散粉Aに代えて比較例1で作製した分散粉α(複合タングステン酸化物Cs0.33WO3微粒子の分散粉)を用いて、実施例21に係る熱線遮蔽合わせガラスシートを作製と同様のプロセスを行なって、従来の技術に係る熱線遮蔽フィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材を作製した。
一方、比較のために作製した従来の技術に係るCs0.33WO3の熱線遮蔽合わせ透明基材では、可視光透過率が70%のときに、波長850nmにおける透過率は20%、透過率の最小値は波長1590nmで6%となった。
以上の結果から、元素Aとしてモリブデンを添加した実施例21に係る熱線遮蔽合わせ透明基材では、モリブデンを添加しない従来の技術に係る熱線遮蔽合わせ透明基材に比べて、熱線遮蔽特性を保持したまま近赤外光を透過させていることが確認された。
Claims (9)
- 少なくとも熱線遮蔽微粒子と熱可塑性樹脂とを含み、
前記熱線遮蔽微粒子は一般式Aa Cs bWcOdで表記され、AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、Csはセシウムであり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦a/b≦0.1であり、0.20≦b/(a+c)≦0.61であり、2.2≦d/(a+c)≦3.0であり、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする熱線遮蔽分散体。 - 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽微粒子分散体。 - 前記複合タングステン酸化物微粒子の直径が、1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽微粒子分散体。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子を、0.5質量%以上80.0質量%以下含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。
- 前記熱線遮蔽微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。
- 前記熱線遮蔽微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。
- 可視光透過率が70%のときに、波長850nmの近赤外光の透過率が23%以上45%以下であり、且つ波長1200〜1800nmの熱線の透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体。
- 複数枚の透明基材間に、請求項1から7のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子分散体が存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材。
- 波長850nmの近赤外光の透過率が23%以上45%以下であり、且つ波長1200〜1800nmの熱線の透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする請求項8に記載の熱線遮蔽合わせ透明基材。
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