JP7457686B2 - 有機el表示素子用封止剤 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(「有機EL」)表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された積層体構造を有し、この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して発光する。このように有機EL表示素子は自己発光を行うことから、バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、薄型化が可能であり、しかも直流低電圧駆動が可能であるという利点を有している。
有機EL表示素子を構成する有機発光材料層や電極は、水分や酸素等により特性が劣化しやすいという問題がある。従って、実用的な有機EL表示素子を得るためには、有機発光材料層や電極を大気と遮断して長寿命化を図る必要がある。特許文献1には、有機EL表示素子の有機発光材料層と電極とを、CVD法により形成した窒化珪素膜と樹脂膜との積層膜により封止する方法が開示されている。ここで樹脂膜は、窒化珪素膜の内部応力による有機層や電極への圧迫を防止する役割を有する。
特許文献1に開示された窒化珪素膜で封止を行う方法では、有機EL表示素子の表面の凹凸や異物の付着、内部応力によるクラックの発生等により、窒化珪素膜を形成する際に有機発光材料層や電極を完全に被覆できないことがある。窒化珪素膜による被覆が不完全であると、水分が窒化珪素膜を通して有機発光材料層内に浸入してしまう。
有機発光材料層内への水分の浸入を防止するための方法として、特許文献2には、無機材料膜と樹脂膜とを交互に蒸着する方法が開示されており、特許文献3や特許文献4には、無機材料膜上に樹脂膜を形成する方法が開示されている。
樹脂膜を形成する方法として、インクジェット法を用いて基材上に封止剤を塗布した後、該封止剤を硬化させる方法がある。このようなインクジェット法による塗布方法を用いれば、高速かつ均一に樹脂膜を形成することができる。しかしながら、インクジェット法による塗布に適したものとするために封止剤を低粘度となるようにした場合、アウトガスが発生したり、インクジェット装置のヘッド部分等にダメージを与えて流路が変化することで長期間安定した吐出ができなかったりする等の問題があった。
特開2000-223264号公報 特表2005-522891号公報 特開2001-307873号公報 特開2008-149710号公報
本発明は、インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤を提供することを目的とする。
本発明1は、重合性化合物と重合開始剤とを含有し、25℃における粘度が5~50mPa・sであり、25℃における表面張力が15~35mN/mであり、かつ、封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率が10%以下である有機EL表示素子用封止剤である。
また、本発明2は、インクジェット法による塗布に用いられる有機EL表示素子用封止剤であって、重合性化合物と重合開始剤とを含有し、封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率が10%以下である有機EL表示素子用封止剤である。
以下に本発明を詳述する。なお、本発明1の有機EL表示素子用封止剤と本発明2の有機EL表示素子用封止剤とに共通する事項については、「本発明の有機EL表示素子用封止剤」として記載する。
本発明者らは、インクジェット塗布性に優れる有機EL表示素子用封止剤について、更に、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、「EPDMゴム」ともいう)の重量変化率を特定の範囲となるようにすることを検討した。その結果、インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法として、非加熱式インクジェット法による塗布に用いることもできるし、加熱式インクジェット法による塗布に用いることもできる。
なお、本明細書において、上記「非加熱式インクジェット法」は、28℃未満の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法であり、上記「加熱式インクジェット法」は、28℃以上の塗布ヘッド温度でインクジェット塗布する方法である。
上記加熱式インクジェット法には、加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドが用いられる。インクジェット塗布ヘッドが加熱機構を搭載していることにより、有機EL表示素子用封止剤を吐出する際に粘度と表面張力を低下させることができる。
上記加熱機構を搭載したインクジェット用塗布ヘッドとしては、例えば、コニカミノルタ社製のKM1024シリーズや、富士フィルムDimatix社製のSG1024シリーズ等が挙げられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合、塗布ヘッドの加熱温度は、28℃~80℃の範囲であることが好ましい。上記塗布ヘッドの加熱温度がこの範囲であることにより、有機EL表示素子用封止剤の経時的な粘度上昇が抑制され、吐出安定性により優れるものとなる。
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、粘度の下限が5mPa・s、上限が50mPa・sである。上記粘度がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。
なお、本明細書において上記粘度は、E型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定される値を意味する。
上記非加熱式インクジェット法によって塗布する場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の粘度の好ましい下限は5mPa・s、好ましい上限は20mPa.sである。上記粘度がこの範囲であることにより、非加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記非加熱式インクジェット法によって塗布する場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の粘度のより好ましい下限は8mPa・s、より好ましい上限は16mPa.s、更に好ましい下限は10mPa・s、更に好ましい上限は13mPa.sである。
一方、上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の粘度の好ましい下限は10mPa・s、好ましい上限は50mPa.sである。上記粘度がこの範囲であることにより、加熱式インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記加熱式インクジェット法による塗布に用いる場合の本発明の有機EL表示素子用封止剤の粘度のより好ましい下限は20mPa・s、より好ましい上限は40mPa.sである。
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、表面張力の下限が15mN/m、上限が35mN/mである。上記表面張力がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記表面張力の好ましい下限は20mN/m、好ましい上限は30mN/m、より好ましい下限は22mN/m、より好ましい上限は28mN/mである。
また、本発明2の有機EL表示素子用封止剤は、表面張力の好ましい下限が15mN/m、好ましい上限が35mN/mである。上記表面張力がこの範囲であることにより、インクジェット法によって好適に塗布することができる。上記表面張力のより好ましい下限は20mN/m、より好ましい上限は30mN/m、更に好ましい下限は22mN/m、更に好ましい上限は28mN/mである。
なお、上記表面張力は、25℃において動的濡れ性試験機によりWilhelmy法によって測定された値を意味する。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、封止剤中にEPDMゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率が10%以下である。上記EPDMゴムの重量変化率が10%以下であることにより、インクジェット装置のダメージを低減する効果に優れるものとなる。上記EPDMゴムの重量変化率の好ましい上限は8%、より好ましい上限は5%である。
なお、上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率は、具体的には、有機EL表示素子用封止剤を褐色スクリュー管に入れ、重量W(g)のEPDMゴムを浸漬して蓋をし、25℃で1週間静置した後、EPDMゴムを取り出して表面をウエス等で拭き取り、重量(W(g))を測定することにより、下記式によって求めることができる。
重量変化率(%)=((W-W)/W)×100
上記EPDMゴムは、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエンの共重合体のゴムである。具体的には、エチレン、プロピレン、ジシクロペンタジエンに由来するそれぞれの構成単位の割合が、モル比で、エチレンに由来する構成単位:プロピレンに由来する構成単位:ジシクロペンタジエンに由来する構成単位=10~90:15~50:1~50であり、重量平均分子量が20万~200万であるEPDMゴムが用いられる。エチレン、プロピレン、ジシクロペンタジエンに由来するそれぞれの構成単位の割合、及び、重量平均分子量が上記範囲であるEPDMゴムのうちのいずれかを用いた場合において、上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率が10%以下となればよい。このようなEPDMゴムとして市販されているものとしては、例えば、AS568-009(森清化工社製)等が挙げられる。
なお、本明細書において上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。また、GPCで用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
上記粘度、上記表面張力、及び、上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率は、後述する、重合性化合物、重合開始剤、及び、含有してもよいその他の成分について、これらの種類の選択及び含有割合の調整により、上述した範囲とすることができる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、重合性化合物を含有する。
上記重合性化合物は、分子内に酸素原子を17%以上含む化合物を、重合性化合物全体100重量部中に10~100重量部含有することが好ましい。
本発明者らは、上述したインクジェット装置のダメージの原因は、装置のヘッド部分等に用いられているゴム材料と封止剤との相溶性が高いことであると考えた。そのため、封止剤に配合する重合性化合物として、溶解度パラメータの値をもとに該ゴム材料との相溶性が低くなると考えられるものを用いることを検討した。しかしながら、溶解度パラメータの値をもとに重合性化合物を選択しても、上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率を10%以下とすることが難しく、インクジェット装置のダメージを充分に低減できないことがあった。そこで本発明者らは鋭意検討した結果、重合性化合物として上記分子内に酸素原子を17%以上含む化合物を特定の含有量となるように用いることで、容易に上記含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率を10%以下とすることができることを見出した。
上記分子内に酸素原子を17%以上含む化合物は、分子内に酸素原子を20%以上含むことが好ましく、25%以上含むことがより好ましい。
また、上記重合性化合物全体100重量部中における上記分子内に酸素原子を17%以上含む化合物の含有量のより好ましい下限は20重量部である。
また、上記重合性化合物は、炭素原子が8以上連続する炭素鎖骨格を含まないことが好ましい。上記重合性化合物が炭素原子が8以上連続する炭素鎖骨格を含まないことにより、ゴム材料との相溶性が高くならず、インクジェット装置のダメージを低減する効果により優れるものとなる。上記炭素原子が8以上連続する炭素鎖骨格としては、炭素数8以上のアルキレン基、炭素数8以上のアルケニレン基、シクロヘキサン環と炭素数2以上のアルキレン基又はアルケニレン基との組み合わせ等が挙げられる。
上記重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物やカチオン重合性化合物を用いることができる。
上記ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル化合物が好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物は、単官能(メタ)アクリル化合物であってもよいし、多官能(メタ)アクリル化合物であってもよく、上記単官能(メタ)アクリル化合物と上記多官能(メタ)アクリル化合物とを組み合わせて用いてもよい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
上記単官能(メタ)アクリル化合物は、低アウトガス性等の観点から、カチオン重合性基を有することが好ましい。
上記カチオン重合性基としては、例えば、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタニル基、アリルエーテル基、ビニル基、水酸基等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル化合物としては、具体的には例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、3-エチル-3-(メタ)アクリルオキシメチルオキセタン、アリル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
上記重合性化合物が上記単官能(メタ)アクリル化合物を含有する場合、上記重合性化合物100重量部中における上記単官能(メタ)アクリル化合物の含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記単官能(メタ)アクリル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が低アウトガス性等により優れるものとなる。上記単官能(メタ)アクリル化合物の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記多官能(メタ)アクリル化合物は、インクジェット塗布性等の観点から、主鎖にポリオキシアルキレン骨格を有することが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン骨格は、オキシアルキレン単位が2~6個連続したものであることが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン骨格を構成するオキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位等が挙げられる。
上記多官能(メタ)アクリル化合物は、インクジェット塗布性等の観点から、炭素鎖の分岐が少ない構造であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
上記多官能(メタ)アクリル化合物としては、具体的には例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記重合性化合物が上記多官能(メタ)アクリル化合物を含有する場合、上記重合性化合物100重量部中における上記多官能(メタ)アクリル化合物の含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は80重量部である。上記多官能(メタ)アクリル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤がインクジェット塗布性等により優れるものとなる。上記多官能(メタ)アクリル化合物の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は60重量部である。
上記単官能(メタ)アクリル化合物と上記多官能(メタ)アクリル化合物とを組み合わせて用いる場合、上記単官能(メタ)アクリル化合物と上記多官能(メタ)アクリル化合物との含有割合は、重量比で、単官能(メタ)アクリル化合物:多官能(メタ)アクリル化合物=7:3~3:7であることが好ましい。上記単官能(メタ)アクリル化合物と上記多官能(メタ)アクリル化合物との含有割合をこの範囲とすることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット塗布性等により優れるものとすることができる。上記単官能(メタ)アクリル化合物と上記多官能(メタ)アクリル化合物との含有割合は、重量比で、単官能(メタ)アクリル化合物:多官能(メタ)アクリル化合物=6:4~4:6であることがより好ましい。
上記カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
上記脂環式エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000、セロキサイド8000(いずれもダイセル社製)、サンソサイザーEPS(新日本理化工業社製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物としては、例えば、アリルオキシオキセタン、フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス(((3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、例えば、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、重合開始剤を含有する。
上記重合開始剤としては、用いる重合性化合物の種類等に応じて、光ラジカル重合開始剤や、熱ラジカル重合開始剤や、光カチオン重合開始剤や、熱カチオン重合開始剤が好適に用いられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001、V-501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤のアニオン部分としては、例えば、BF 、PF 、SbF 、又は、(BX(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)等が挙げられる。
上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、上記アニオン部分を有する、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩等が挙げられる。
上記芳香族スルホニウム塩としては、例えば、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル-4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス(4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記芳香族ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4-メチルフェニル-4-(1-メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えば、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記芳香族アンモニウム塩としては、例えば、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ベンジル-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1-(ナフチルメチル)-2-シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe塩としては、例えば、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラフルオロボレート、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)((1-メチルエチル)ベンゼン)-Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
上記非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスルホネート等が挙げられる。
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、DTS-200(みどり化学社製)、UVI6990、UVI6974(いずれもユニオンカーバイド社製)、SP-150、SP-170(いずれもADEKA社製)、FC-508、FC-512(いずれも3M社製)、IRGACURE261、IRGACURE290(いずれもBASF社製)、PI2074(ローディア社製)等が挙げられる。
上記熱カチオン重合開始剤としては、アニオン部分がBF 、PF 、SbF 、又は、(BX(但し、Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す)で構成される、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩、アンモニウム塩が好ましい。
上記スルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
上記ホスホニウム塩としては、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラブチルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
上記アンモニウム塩としては、例えば、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メトキシベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチルフェニル(4-メチルベンジル)アンモニウムヘキサフルオロテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムヘキサフルオロアンチモネート、メチルフェニルジベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルフェニル(3,4-ジメチルベンジル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルアニリニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルアニリニウムテトラフルオロボレート、N,N-ジメチル-N-ベンジルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N,N-ジエチル-N-ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、サンエイドSI-60、サンエイドSI-80、サンエイドSI-B3、サンエイドSI-B3A、サンエイドSI-B4(いずれも三新化学工業社製)、CXC1612、CXC1821(いずれもKing Industries社製)等が挙げられる。
上記重合開始剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、得られる有機EL表示素子用封止剤の硬化反応が速くなり過ぎず、作業性により優れるものとなり、硬化物をより均一なものとすることができる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は5重量部である。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の有機EL表示素子用封止剤の硬化反応をより促進させる役割を有する。
上記増感剤としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
上記増感剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなり過ぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、本発明の有機EL表示素子用封止剤と基板等との接着性を向上させる役割を有する。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記シランカップリング剤の含有量は、上記重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトすることを抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、更に、本発明の目的を阻害しない範囲において、表面改質剤を含有してもよい。上記表面改質剤を含有することにより、本発明の有機EL表示素子用封止剤に塗膜の平坦性を付与することができる。
上記表面改質剤としては、例えば、界面活性剤やレベリング剤等が挙げられる。
上記表面改質剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系等のものが挙げられる。
上記表面改質剤のうち市販されているものとしては、例えば、BYK-340、BYK-345(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-611(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、粘度調整等を目的として溶剤を含有してもよいが、残存した溶剤により、有機発光材料層が劣化したりアウトガスが発生したりする等の問題が生じるおそれがあるため、溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることが好ましい。
また、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、必要に応じて、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、重合性化合物と、重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤の硬化物の波長380~800nmにおける光の全光線透過率の好ましい下限は80%である。上記全光線透過率が80%以上であることにより、得られる有機EL表示素子が光学特性により優れるものとなる。上記全光線透過率のより好ましい下限は85%である。
上記全光線透過率は、例えば、AUTOMATIC HAZE MATER MODEL TC=III DPK(東京電色社製)等の分光計を用いて測定することができる。
また、上記全光線透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化物に紫外線を100時間照射した後の400nmにおける透過率が20μmの光路長にて85%以上であることが好ましい。上記紫外線を100時間照射した後の透過率が85%以上であることにより、透明性が高く、発光の損失が小さくなり、かつ、色再現性により優れるものとなる。上記紫外線を100時間照射した後の透過率のより好ましい下限は90%、更に好ましい下限は95%である。
上記紫外線を照射する光源としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアークランプ等、従来公知の光源を用いることができる。
また、上記紫外線を100時間照射した後の透過率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤は、JIS Z 0208に準拠して、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度が100g/m以下であることが好ましい。上記透湿度が100g/m以下であることにより、有機発光材料層に水分が到達してダークスポットが発生することを防止する効果により優れるものとなり、得られる有機EL表示素子が信頼性により優れるものとなる。
また、上記透湿度の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
更に、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、硬化物を85℃、85%RHの環境下に24時間暴露したときに、硬化物の含水率が0.5%未満であることが好ましい。上記硬化物の含水率が0.5%未満であることにより、硬化物中の水分による有機発光材料層の劣化を防止する効果により優れるものとなり、得られる有機EL表示素子が信頼性により優れるものとなる。上記硬化物の含水率のより好ましい上限は0.3%である。
上記含水率の測定方法としては、例えば、JIS K 7251に準拠してカールフィッシャー法により求める方法や、JIS K 7209-2に準拠して吸水後の重量増分を求める等の方法が挙げられる。
また、上記含水率の測定に用いる硬化物は、光硬化性の封止剤であれば、例えば、封止剤にLEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射することにより得ることができ、熱硬化性の封止剤であれば、例えば、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
本発明1の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法による塗布に好適に用いられ、本発明2の有機EL表示素子用封止剤は、インクジェット法による塗布に用いられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を用いて有機EL表示素子を製造する方法としては、例えば、インクジェット法により、本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程と、塗布した有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程とを有する方法等が挙げられる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を基材に塗布する工程において、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、基材の全面に塗布してもよく、基材の一部に塗布してもよい。塗布により形成される本発明の有機EL表示素子用封止剤の封止部の形状としては、有機発光材料層を有する積層体を外気から保護しうる形状であれば特に限定されず、該積層体を完全に被覆する形状であってもよいし、該積層体の周辺部に閉じたパターンを形成してもよいし、該積層体の周辺部に一部開口部を設けた形状のパターンを形成してもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射により硬化させる場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、300nm~400nmの波長及び300~3000mJ/cmの積算光量の光を照射することによって好適に硬化させることができる。
本発明の有機EL表示素子用封止剤に光を照射するための光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、エキシマレーザ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプ、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。これらの光源は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの光源は、上記光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤の吸収波長に合わせて適宜選択される。
本発明の有機EL表示素子用封止剤への光の照射手段としては、例えば、各種光源の同時照射、時間差をおいての逐次照射、同時照射と逐次照射との組み合わせ照射等が挙げられ、いずれの照射手段を用いてもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程により得られる硬化物は、更に無機材料膜で被覆されていてもよい。
上記無機材料膜を構成する無機材料としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、窒化珪素(SiN)や酸化珪素(SiO)等が挙げられる。上記無機材料膜は、1層からなるものであってもよく、複数種の層を積層したものであってもよい。また、上記無機材料膜と本発明の有機EL表示素子用封止剤からなる樹脂膜とを、交互に繰り返して上記積層体を被覆してもよい。
上記有機EL表示素子を製造する方法は、本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布した基材(以下、「一方の基材」ともいう)と他方の基材とを貼り合わせる工程を有していてもよい。
本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布する基材(以下、「一方の基材」ともいう)は、有機発光材料層を有する積層体の形成されている基材であってもよく、該積層体の形成されていない基材であってもよい。
上記一方の基材が上記積層体の形成されていない基材である場合、上記他方の基材を貼り合わせた際に、上記積層体を外気から保護できるように上記一方の基材に本発明の有機EL表示素子用封止剤を塗布すればよい。即ち、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所に全面的に塗布するか、又は、他方の基材を貼り合わせた際に上記積層体の位置となる場所が完全に収まる形状に、閉じたパターンの封止剤部を形成してもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程は、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なってもよいし、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の後に行なってもよい。
上記有機EL表示素子用封止剤を光照射及び/又は加熱により硬化させる工程を、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程の前に行なう場合、本発明の有機EL表示素子用封止剤は、光照射及び/又は加熱してから硬化反応が進行して接着ができなくなるまでの可使時間が1分以上であることが好ましい。上記可使時間が1分以上であることにより、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる前に硬化が進行し過ぎることなく、より高い接着強度を得ることができる。
上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる工程において、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる方法は特に限定されないが、減圧雰囲気下で貼り合わせることが好ましい。
上記減圧雰囲気下の真空度の好ましい下限は0.01kPa、好ましい上限は10kPaである。上記減圧雰囲気下の真空度がこの範囲であることにより、真空装置の気密性や真空ポンプの能力から真空状態を達成するのに長時間を費やすことなく、上記一方の基材と上記他方の基材とを貼り合わせる際の本発明の有機EL表示素子用封止剤中の気泡をより効率的に除去することができる。
本発明によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1~3、5~8、参考例4、9、比較例1~3)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合することにより、実施例1~3、5~8、参考例4、9、比較例1~3の各有機EL表示素子用封止剤を作製した。
実施例、参考例、及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用いて、25℃、100rpmの条件において測定した粘度、及び、25℃において動的濡れ性試験機(レスカ社製、「WET-6100型」)により測定した表面張力を表1に示した。
また、実施例、参考例、及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を褐色スクリュー管に入れ、EPDMゴム10g(W)を浸漬して蓋をし、25℃で1週間静置した後、EPDMゴムを取り出して表面をウエスで拭き取った後、重量(W)を測定し、上述した式により含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率を算出した。EPDMゴムとしては、AS568-009(森清化工社社製)を用いた。結果を表1に示した。
<評価>
実施例、参考例、及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
なお、インクジェット吐出性、濡れ広がり性、及び、装置ダメージの各評価において、インクジェット用塗布ヘッドとしてはIJH-30(IJT社製)を用い、インクジェット塗布は加熱を行わずに行った(ヘッド温度25℃)。
(1)インクジェット塗布性
(1-1)インクジェット吐出性
実施例、参考例、及び比較例で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、30ピコリットルの液滴量にて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に塗布した。インクジェットノズルから液滴が正常に吐出されて基板に着弾した場合を「○」、正常に吐出されなかった場合を「×」としてインクジェット吐出性を評価した。
(1-2)濡れ広がり性
実施例1~3、5~8、参考例4、及び比較例3で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、30ピコリットルの液滴量にて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に、5m/秒の速度にて500μmピッチで1000滴塗布した。塗布から10分後の無アルカリガラス上の液滴の直径を測定し、液滴の直径が150μm以上であった場合を「○」、液滴の直径が50μm以上150μm未満であった場合を「△」、液滴の直径が50μm未満であった場合を「×」として濡れ広がり性を評価した。
(2)低アウトガス性
実施例1~3、5~8、参考例4、及び比較例3で得られた各有機EL表示素子用封止剤の硬化物の加熱時に発生するアウトガスをヘッドスペース法によるガスクロマトグラフ(JEOL社製、「JMS-Q1050GC」)により測定した。各有機EL表示素子用封止剤100mgをアプリケーターにて300μmの厚さに塗工した。次いで、LEDランプにて波長365nmの紫外線を3000mJ/cm照射して封止剤を硬化した後、ヘッドスペース用バイアルに硬化させた封止剤硬化物を入れてバイアルを封止し、100℃で30分間加熱して、ヘッドスペース法により発生ガスを測定した。
発生したガスが300ppm未満であった場合を「○」、300ppm以上500ppm未満であった場合を「△」、500ppm以上であった場合を「×」として低アウトガス性を評価した。
(3)装置ダメージ
実施例1~3、5~8、参考例4、及び比較例3で得られた各有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に、55Vの電圧で封止剤の製造直後から1か月間毎日100万発を吐出した。1ヶ月後に吐出された封止剤の重量が製造直後に吐出された封止剤の重量の95%以上であった場合を「○」、80%以上95%未満であった場合を「△」、80%未満であった場合を「×」として装置ダメージを評価した。
Figure 0007457686000001
非加熱式インクジェット法と加熱式インクジェット法とにおける、有機EL表示素子用封止剤の粘度によるインクジェット塗布性への効果を確認するため、以下の実験を行った。結果を表2に示した。
(実験例1)
表2に記載された配合比に従い、各材料を、ホモディスパー型撹拌混合機(プライミクス社製、「ホモディスパーL型」)を用い、撹拌速度3000rpmで均一に撹拌混合した後、50℃、0.1MPaの環境に30分曝す脱水工程を行うことにより、有機EL表示素子用封止剤を作製した。
得られた有機EL表示素子用封止剤について、E型粘度計(東機産業社製、「VISCOMETER TV-22」)を用いて、25℃、100rpmの条件において測定した粘度、及び、25℃において動的濡れ性試験機(レスカ社製、「WET-6100型」)により表面張力を測定した。
また、得られた有機EL表示素子用封止剤を褐色スクリュー管に入れ、EPDMゴム10g(W)を浸漬して蓋をし、25℃で1週間静置した後、EPDMゴムを取り出して表面をウエスで拭き取った後、重量(W)を測定し、上述した式により含浸試験前後におけるEPDMゴムの重量変化率を算出した。EPDMゴムとしては、AS568-009(森清化工社社製)を用いた。
得られた有機EL表示素子用封止剤を、インクジェット吐出装置(マイクロジェット社製、「NanoPrinter500」)を用いて、30ピコリットルの液滴量にて、アルカリ洗浄した無アルカリガラス(旭硝子社製、「AN100」)上に塗布した。インクジェットノズルから液滴が正常に吐出されて基板に着弾した場合を「○」、正常に吐出されなかった場合を「×」としてインクジェット吐出性を評価した。なお、インクジェット用塗布ヘッドとしてはIJH-30(IJT社製)を用い、インクジェット塗布は加熱を行わずに行った(ヘッド温度25℃)。
(実験例2)
実験例1で作製したものと同じ有機EL表示素子用封止剤を用意した。
インクジェット用塗布ヘッドとしてIJH-30(IJT社製)を用い、加熱しながらインクジェット塗布を行った(ヘッド温度60℃)こと以外は、実験例1と同様にしてインクジェット吐出性を評価した。
Figure 0007457686000002
本発明によれば、インクジェット法により容易に塗布することができ、低アウトガス性に優れ、かつ、インクジェット装置のダメージを低減できる有機EL表示素子用封止剤を提供することができる。

Claims (2)

  1. 加熱式インクジェット法による塗布に用いられる有機EL表示素子用封止剤であって、
    重合性化合物と重合開始剤とを含有し、
    前記重合性化合物は、脂環式エポキシ樹脂を含有し、
    前記重合性化合物は、分子内に酸素原子を25重量%以上含む化合物を、前記重合性化合物全体100重量部中に60~100重量部含有し、
    25℃における粘度が5~50mPa・sであり、25℃における表面張力が15~35mN/mであり、かつ、
    封止剤中にエチレン・プロピレン・ジエンゴムを浸漬させたまま25℃で1週間静置する含浸試験を行った際、含浸試験前後におけるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの重量変化率が10%以下である
    ことを特徴とする有機EL表示素子用封止剤。
  2. 溶剤を含有しない、又は、溶剤の含有量が0.05重量%以下であることを特徴とする請求項記載の有機EL表示素子用封止剤。
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