JP7452937B1 - 感熱記録体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念が低く、発色性と耐光性に優れ、さらに耐熱性に優れた感熱記録体を提供することを目的とする。感熱記録体(1)は、基材(2)上に、感熱記録層(3)が積層された構成を有する。感熱記録層(3)は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤とを含有する。非フェノール系光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する。前記非フェノール系顕色剤は、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。【化1】TIFF0007452937000034.tif39150【化2】TIFF0007452937000035.tif40150(上記式(1)、(2)中の各記号の定義は、明細書記載の通りである。)

Description

本発明は、感熱記録体に関し、更に詳しくは、安全性の懸念が低く、発色性、耐光性、及び耐熱性に優れた感熱記録体に関する。
感熱記録体は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、記録画像が得られるものであり、ファクシミリや自動券売機、科学計測機の記録用媒体としてだけではなく、小売店等のPOSシステムの感熱記録ラベル、レシート用紙等として広範な用途に使用されている。
上述のように感熱記録体は広範に利用されている。このため、感熱記録体には様々な性能が求められる。例えば、バーコードリーダでバーコードを読み取る際、バーコードリーダによる読み取りの精度が良好となるような発色性が求められる。また、感熱記録体が紫外線を含む強い光に長時間曝された場合、感熱記録体が黄変しにくい特性(耐光性)が求められる。さらに、電子レンジ等の加熱においても印字部の発色性が低下しない一方、非印字部が発色しにくい優れた耐熱性も求められる。
このような感熱記録体としては、例えば、支持体上に無色ないし淡色の電子供与性のロイコ染料と電子受容性の顕色剤とを含有する感熱記録層を設けた感熱記録体であって、感熱記録層が、顕色剤として4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン等のフェノール系顕色剤を含有し、更に、光安定剤として紫外線吸収剤である2-(3’-t-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のフェノール性水酸基を有するフェノール系光安定剤を含有するものが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
特開2009-066897号公報 特開2018-134818号公報 特開2017-177577号公報
上記特許文献1~3で使用されるフェノール系顕色剤やフェノール系光安定剤等のフェノール性水酸基を有する化合物(フェノール系化合物)は、内分泌攪乱物質として安全性が懸念されている。そのため、近年では、環境対応の観点からフェノール骨格を有しない顕色剤や光安定剤等の添加剤を用いた感熱記録体が求められている。
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念が低く、発色性および耐光性に優れ、さらに耐熱性にも優れた感熱記録体を提供することを目的とする。
本願発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、感熱記録層にフェノール骨格を有しない顕色剤(非フェノール系顕色剤)、及びフェノール骨格を有しない特定の光安定剤(非フェノール系光安定剤)を配合することにより、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念が低く、発色性と耐光性に優れ、さらに耐熱性にも優れた感熱記録体を提供できることを見出した。本発明は、当該知見に基づき、完成したものである。
すなわち、本発明の一の側面は、基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体を提供する。本発明の感熱記録体において、前記感熱記録層は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤とを含有する。
従来の感熱記録体には、顕色剤および光安定剤としてフェノール系化合物を含有することが一般的であった。しかしながら、フェノール系化合物は、内分泌攪乱物質として安全性が危惧されている。
これに対し、本発明の感熱記録体によれば、感熱記録層に含有される顕色剤および光安定剤は非フェノール系化合物である。このため、上記のような懸念が生じることはない。また、上記のような非フェノール系化合物を採用した場合でも、本発明の感熱記録体は、発色性および耐光性、さらに耐熱性に優れたものとなる。
本発明の感熱記録体において、前記非フェノール系光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する。これにより、とくに耐光性を向上させることができる。
本発明の感熱記録体の一の実施形態において、前記非フェノール性顕色剤は、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含有することが好ましい。
Figure 0007452937000001
(式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R6、及びR12は、それぞれ独立して、置換基を示す。mは、0~4の整数を示す。mが2以上の場合、複数のR6は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、0~4の整数を示す。nが2以上の場合、複数のR12は、同一であっても、異なっていてもよい。)
Figure 0007452937000002
(式(2)中、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R18は、置換基を示す。oは、0~4の整数を示す。oが2以上の場合、複数のR18は、同一であっても、異なっていてもよい。)
本発明の感熱記録体の一の実施形態において、前記非フェノール系顕色剤が、下記式(1a)で表される化合物、及び/又は下記式(2a)で表される化合物を含有することが好ましい。
Figure 0007452937000003
(式(1a)中の各記号は、式(1)と同じである。)
Figure 0007452937000004
(式(2a)中の各記号は、式(2)と同じである。)
この構成によれば、発色性および耐熱性により優れる感熱記録体を提供できる。
本発明の感熱記録体の一の実施形態において、前記感熱記録層は、さらに、保存性向上剤を含有することが好ましい。
この場合において、前記保存性向上剤は、下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有することが好ましい。
Figure 0007452937000005
この構成によれば、印字保存性、特に、耐可塑剤性に優れる感熱記録体を提供できる。
本発明の感熱記録体の他の実施形態において、前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系顕色剤の含有量が、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。この構成により、発色性に優れ、さらに耐熱性に優れる感熱記録体を提供できる。
本発明の感熱記録体の他の実施形態において、前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系光安定剤の含有量が、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。この構成により、非フェノール系の光安定剤であっても、発色性および耐熱性に優れ、さらに耐光性に優れる感熱記録体を提供できる。
本発明によれば、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念が低く、発色性と耐光性に優れ、さらに耐熱性に優れた感熱記録体を提供することができる。
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
本発明の感熱記録体は、基材上に、感熱記録層が積層された積層構造を有する。本発明の感熱記録体において、前記感熱記録層は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤とを含有する。前記非フェノール系光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有する。
以下、本発明の感熱記録体の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の感熱記録体の一実施形態を示す模式的な断面図である。
本実施形態の感熱記録体1は、図1に示すように、シート状の基材2上に、アンダーコート層6、感熱記録層3、中間層4、及び、トップコート層5が、この順で積層された積層構造を有する。
本実施形態において、基材2は、感熱記録体1の支持体として機能する。基材2としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の紙類、合成紙、及び不織布等の多孔質材料を用いることができる。また、透明の合成樹脂フィルム、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を用いることができる。なお、基材2の厚みは特に限定されないが、基材2の厚みを10μm~100μm程度に調製した場合、塗工性に優れた基材2が得られる。また、透明性に優れた基材2が得られる。
本実施形態において、アンダーコート層6は、サーマルヘッドから与えられた熱の放散を防ぐ断熱性や、クッション性等の機能を有する。アンダーコート層6は、例えば、結着剤に、充填剤として中空粒子を添加することにより形成される。
このような、断熱性を有するアンダーコート層6を感熱記録体1に設けることにより、印字の感度が向上する。このため、サーマルヘッドの印加電圧の上昇を抑制することができ、その結果として、サーマルヘッドの焼付きを抑制することができる。
アンダーコート層6に充填剤として添加される中空粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm~100μmである。このような範囲であれば、アンダーコート層6の断熱性が向上する。ここで、平均粒子径とは、レーザー回折法により測定される重量平均粒子径である。レーザー回折法による平均粒子径の測定は、例えば、マイクロトラック・ベル社製の商品名「MT3300EX-II」を用いて行うことができる。
また、中空粒子の中空率は、好ましくは30%~99%である。このような範囲であれば、アンダーコート層6の断熱性が向上する。また、中空粒子は、その中空率は大きいほど、断熱効果が高くなる。このため、発色剤は少ない熱量で有効に発色し得る。つまり、中空率を大きくすると、感熱記録体1の印字品質が向上する。
ここで、中空粒子の中空率は、次式で算出される。
中空率={(空隙の体積)/(中空粒子の体積)}×100
また、アンダーコート層6における中空粒子の含有割合は、アンダーコート層100質量部に対して、好ましくは40質量部~90質量部である。
中空粒子を構成する材料は、例えば、熱可塑性樹脂である。そのような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂等が挙げられる。
なお、アンダーコート層6の充填剤として、中空粒子以外を用いてもよい。例えば、焼成カオリン、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等を挙げることができる。また、これらの充填剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
アンダーコート層6に含まれる結着剤としては、例えば、アクリル-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル-ブタジエン-スチレン共重合体、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
また、結着剤として、ポリビニルアルコール、デンプンおよびその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド-アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド-アクリル酸エステル-メタクリル酸三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子を用いてもよい。
アンダーコート層6の塗布量(乾燥重量)は、好ましくは1g/m2~10g/m2である。
アンダーコート層6の厚みは、好ましくは1μm~20μmである。
アンダーコート層6の塗布量、及び厚みを上記の範囲に調製すると、アンダーコート層6は適切に断熱性の機能を発揮する。
本実施形態において、感熱記録層3は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、感熱記録体1に記録画像を形成する層である。本実施形態において、感熱記録層3は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤と、を含有する。
発色剤としては、加熱により発色する発色剤は、サーマルヘッド等の加熱によって化学反応により発色し、本実施形態の感熱記録体1に、記録画像を形成する成分である。加熱により発色する発色剤としては、一般に使用されている公知のロイコ系染料を用いることができる。このロイコ系染料としては、例えば、3-(N-イソブチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソペンチル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-o-クロロアニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エトキシプロピル-N-エチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-n-プロピル)アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-p-トルイジノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-8-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-5-メチル-7-メチルフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン等を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
発色剤の粒子径は、0.1~1.0μmであることが好ましい。発色剤は融解して反応するため、粒子径が大きくなるにつれて反応が鈍化していき、感度特性が低くなる。一方、粒子径が小さくなるにつれて、塗料を乾燥させるときの熱により予期しない温度で発色してしまうリスクが高まる。本実施形態では、発色剤の粒子径を上記のような範囲に設定することにより、発色剤の感度特性および発色温度を適切に調整できる。ここで、粒子径とは、マイクロトラックレーザー解析・散乱式粒度分析機による測定50%平均粒子径をいう。
本実施形態では、発色剤は、優れた発色性を得るため、感熱記録層3の全体に対して10~20質量%程度含有することが好ましい。なお、後述する顕色剤は、乾燥重量比で発色剤1に対して1~3の比率で含有させることが好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3は、従来から汎用されているフェノール系顕色剤ではなく、非フェノール系顕色剤が含有される。非フェノール系顕色剤は、上記のようなロイコ系染料に対して加熱時に反応して、ロイコ染料を発色させる種々の電子受容性物質であって、フェノール性水酸基を有しない化合物である。感熱記録層3が非フェノール系顕色剤を含有するという構成は、言い換えると、内分泌攪乱物質として安全性が危惧されるフェノール系顕色剤を意図的に使用しないということである。本実施形態では、感熱記録層3にフェノール系顕色剤ではなく非フェノール系顕色剤を含有することで、ロイコ系染料を効率的に発色させることができる。なお、感熱記録層3は、内分泌攪乱物質として安全性の懸念が生じない程度の微量のフェノール系化合物を不純物などとして不可避的に含む場合がある。感熱記録層3がそのような微量のフェノール系化合物を不可避的に含む場合は、本発明の範囲に含まれるものとする。
このような非フェノール系顕色剤としては、フェノール性水酸基を有しない公知の顕色剤を特に限定なく使用することができ、例えば、2,2-ビス[(4-メチル-3-フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレア]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(p-トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2’-(3-フェニルウレイド)ベンゼンスルホンアニリド、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア等を用いることができる。
ここで、顕色剤として上記した非フェノール系顕色剤を使用することもできる。しかしながら、本発明者らは、感熱記録体3の耐熱性をより一層向上させる観点から、下記式(1)および下記式(2)で表される化合物が好適であることを見出した。
Figure 0007452937000006
(式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R6、及びR12は、それぞれ独立して、置換基を示す。mは、0~4の整数を示す。mが2以上の場合、複数のR6は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、0~4の整数を示す。nが2以上の場合、複数のR12は、同一であっても、異なっていてもよい。)
Figure 0007452937000007
(式(2)中、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R18は、置換基を示す。oは、0~4の整数を示す。oが2以上の場合、複数のR18は、同一であっても、異なっていてもよい。)
上記「置換基」としては、水素原子以外の有機基を特に限定なく使用することができ、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。
上記「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
上記「アルキル(基)」としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ターシャリーペンチル基、ネオペンチル基、2,3-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、ノルマルヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、ノルマルヘプチル基、ノルマルオクチル基、ノルマルノニル基、ノルマルデシル、ノルマルウンデシル基、ノルマルドデシル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~12個のアルキル基が挙げられる。
上記「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ターシャリーペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチルプロピルオキシ基、1-エチルプロピルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ノルマルヘプチルオキシ基、ノルマルオクチルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1~8個のアルコキシ基が挙げられる。
上記「アリール(基)」としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10個の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記「ジアルキルアミノ基」において、2つのアルキル基は、同一であっても、異なっていてもよい。
式(1)で表される化合物としては、感熱記録体1に優れた発色性及び耐熱性を付与できる観点から、下記式(1a)で表される化合物が好ましい。具体的には、下記式(1b)で表されるN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(p-キシレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(メシチレンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(o-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(m-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素、N,N’-ジ-[3-(ベンゼンスルホニルオキシ)フェニル]尿素等を挙げることができる。
Figure 0007452937000008
(式(1a)中の各記号は、式(1)と同じである。)
Figure 0007452937000009
式(2)で表される化合物としては、感熱記録体1に優れた発色性及び耐熱性を付与できる観点から、下記式(2a)で表される化合物が好ましい。具体的には、下記式(2b)で表される [3-(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナートを挙げることができる。
Figure 0007452937000010
(式(2a)中の各記号は、式(2)と同じである。)
Figure 0007452937000011
本実施形態において、感熱記録層3は、非フェノール系顕色剤を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
感熱記録層3に、非フェノール系顕色剤として、上記一般式(1)で表される化合物、及び上記一般式(2)で表される化合物の少なくとも一方、又は両方を使用することにより、感熱記録体1の耐熱性及び発色性を向上させることができる。
本実施形態において、感熱記録層3の全体に対する非フェノール系顕色剤の含有量は、10質量%以上50質量%以下が好ましい。非フェノール系顕色剤の含有量が10質量%以上である構成は、顕色剤不足に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点で、好ましい。また、非フェノール系顕色剤の含有量が50質量%以下である構成は、顕色剤過多(則ち、染料不足)に起因して発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止する点で、好ましい。
本実施形態において、上記のように、感熱記録層3に顕色剤としてフェノール系顕色剤を意図的に使用しないものであるが、非フェノール系顕色剤の不純物などとして微量のフェノール系化合物が不可避的に含まれる場合がある。そのような不純物としては、例えば、上記式(1)及び/又は(2)で表される非フェノール系顕色剤において、スルホン酸エステル(-SO2-O-)や、置換基として含まれるアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基などの全部又は一部が加水分解した化合物などが挙げられる。そのような不純物として含まれるフェノール系化合物は、顕色剤として機能し得る場合もある。
本実施形態において、感熱記録層3に不純物として不可避的に含まれうる上記のフェノール系化合物は、例えば、機器分析で検出可能なppmレベルの微量(例えば、感熱記録層3の全体に対して100ppm以下程度)で含まれ得るものであるが、その程度の微量であれば、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念はなく、実質的に顕色剤として機能しないものと考えられる。
本実施形態において、感熱記録層3は、従来から汎用されているフェノール系紫外線吸収剤等のフェノール系光安定剤ではなく、非フェノール系光安定剤が含有される。非フェノール系光安定剤は、太陽光などの光の曝露による物性低下や変色などの光劣化を抑制する物質(光安定剤)であって、フェノール性水酸基を有しない化合物である。感熱記録層3が非フェノール系光安定剤を含有するという構成は、言い換えると、内分泌攪乱物質として安全性が危惧されるフェノール系化合物を意図的に使用しないということである。本実施形態では、感熱記録層3にフェノール系光安定剤ではなく非フェノール系光安定剤を含有することで、感熱記録体1の耐光性、及び耐熱性を向上させることができる。なお、本実施形態の感熱記録層3は、内分泌攪乱物質として安全性の懸念が生じず、発色性、耐光性、耐熱性に影響を与えない程度のフェノール系光安定剤を含む場合も、本発明の範囲に含まれるものとする。
そのような非フェノール系光安定剤としては、フェノール性水酸基を有しない公知の光安定剤を特に限定なく使用することができる。例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。そして、本願発明者らは、感熱記録体1の耐光性、及び耐熱性をより一層向上させる観点から、ヒンダードアミン系光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizer,HALS)が好適であることを見出した。
ヒンダードアミン系光安定剤は、分子内に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格)を、1以上有する化合物であり、ピペリジンの窒素原子が酸化されて生じたニトロキシラジカルが、ラジカルを捕捉することにより、安定化機能を発現すると考えられている。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、分子内に2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格)を、1以上有する化合物を特に限定なく使用することができ、例えば、下記式(3)で表される基を有する化合物が挙げられる。
Figure 0007452937000012
(式(3)中、Ra、は水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1~30のヒドロキシアルコキシ基、炭素原子数2~30のアルケニル基、またはオキシラジカルを表し、これらのアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルケニル基は酸素原子、カルボニル基で単数若しくは複数中断されていてもよい。また、一般式(3)の基は、一般式(3)中、*の箇所で結合する。)
一般式(3)の基は、ヒンダードアミン系光安定剤中に、1個または2個以上の複数個を有していてもよい。
一般式(3)のRaがとり得る、炭素原子数1~30のアルキル基としては、直鎖アルキル基または分岐アルキル基が挙げられる。直鎖アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられ、分岐アルキル基は、上記直鎖アルキル基の1つ若しくは2つ以上を炭素原子数1~9のアルキル基で置換した基が挙げられる。
一般式(3)のRaがとり得る、炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、上述のアルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられる。
一般式(3)のRaがとり得る、炭素原子数1~30のヒドロキシアルキル基としては、上述のアルキル基に対応するヒドロキシアルキル基が挙げられる。
一般式(3)のRaがとり得る、炭素原子数2~30のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基が挙げられ、アルカジエニル基およびアルカトリエニル基も含む。
一般式(3)で表される基としては、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、Raが、水素原子または炭素原子数1~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~30のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらにより好ましく、メチル基であるものが最も好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、一般式(3)のRaが水素原子のものとしては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート等が挙げられ、一般式(3)のRaがメチル基のものとしては、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,3,4-ブタンカルボン酸/2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール/3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパナール/1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステル重縮合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート/メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバカート混合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応生成物等が挙げられ、一般式(3)のRaが炭素原子数1~30のアルコキシ基のものとしては、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート等が挙げられる。これらのなかでも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、一般式(3)で表される基のRaが、水素原子またはメチル基のものが好ましく、メチル基のものがより好ましい。本実施形態において、感熱記録層3は、ヒンダードアミン系光安定剤を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
本実施形態において、感熱記録層3の全体に対する非フェノール系光安定剤の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上10質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。非フェノール系光安定剤の含有量が、1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であるという構成は、本実施形態の感熱記録体1に、優れた耐光性を付与できる点で、好適である。非フェノール系光安定剤の含有量が、10質量%以下であるという構成は、本実施形態の感熱記録体1に、優れた発色性を付与できる点で、好適である。
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる光安定剤の全量に対する非フェノール系光安定剤の含有量は、特に限定されないが、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念を低減させつつ、耐光性と耐熱性を向上させる観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる光安定剤の全量に対すヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、特に限定されないが、内分泌攪乱物質などの安全性の懸念を低減させつつ、耐光性と耐熱性を向上させる観点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
また、感熱記録層3は、必要に応じて、結着剤、増感剤、滑剤、充填剤、保存性向上剤、顔料等の添加剤を適宜含有してもよい。
感熱記録層3に含まれる結着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、カゼイン、ゼラチン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリルニトリル、メチルビニルエーテル等が挙げられる。これらの結着剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
増感剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、ステアリン酸アニリド、メチロールステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、1-ベンジルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、2,6-ジイソプロピルナフタレン、1,2-ジフェノキシエタン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェノル)エタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、シュウ酸ジベンジル、p-ベンジルビフェニル、m-ターフェニル、ジフェニルスルホン、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、テレフタル酸ジベンジル、p-トルエンスルホンアミド等の、常温で固体、好ましくは約70℃以上の融点を有するもの等が挙げられる。これらの増感剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、オレイン酸等の脂肪酸類、ポリエチレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類、カルナバワックス等のエステルワックス類、シリコンオイル、鯨油等の油類が挙げられる。これらの滑剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、酸化珪素、コロイダルシリカ、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等が挙げられる。これらの充填剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
保存性向上剤としては、例えば、ナトリウム-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4,ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4-(2-メチルグリシルオキシ)-4’-ベンジルオキシジフェニルスルホン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ジエチルチオウレア、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、及び下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物等が挙げられる。
Figure 0007452937000013
これらの保存性向上剤は、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、公知の界面活性剤を含有してもよい。
肉や魚などの生鮮食品は、ラップで包まれたパックの形態で販売されており、値段などを表示したラベルがラップの上に貼り付けられている。また、パックは通常、積み重ねて陳列されているため、ラベルが別のパックを包んでいるラップに接触することがある。このラップには、可塑性を付与するための可塑剤が含まれている。パックを積み重ねた状態で長時間放置された場合に、可塑剤がラベルに移行して、印字に影響を与える場合がある。したがって、感熱記録体は、可塑剤が移行しても印字が消えにくいなどの特性、すなわち、「耐可塑剤性」に優れることが好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3は、印字保存性、特には、耐可塑剤性の観点から、保存性向上剤を含むことが好ましく、特に、上記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含むことが好ましい。
感熱記録層3が、保存性向上剤、特に、式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有することにより、ロイコ系染料と顕色剤との反応効率が高まり、電子移動錯体が生成しやすくなると共に逆反応が起こりにくくなり、感熱記録体の発色性が優れたものになり、さらに発色濃度が低下しにくくなり、印字保存性、特に、耐可塑剤性に優れるものと考えられる。
式(4)で表されるウレアウレタン化合物は、具体的には下記式(4a)~(4c)で表される3種類であり、これらは単独又は2種類以上混合して用いてもよい。
Figure 0007452937000014
Figure 0007452937000015
Figure 0007452937000016
本実施形態において、感熱記録層3が保存性向上剤を含む場合、感熱記録層3の全体に対する保存性向上剤の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましい。前記保存性向上剤の含有量が1質量%以上である構成は、可塑剤などによる発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性、特に、耐可塑剤性が優れたものになる点で、好ましい。また、前記保存性向上剤の含有量が20質量%以下である構成は、発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止する点で、好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3が保存性向上剤を含有する場合、非フェノール系顕色剤に対する保存性向上剤の含有割合(保存性向上剤/非フェノール系顕色剤)は、1/20~1/1が好ましい。前記含有割合が、1/1以下である構成は、発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点で、好ましい。また、前記含有割合が、1/20以上である構成は、可塑剤などによる発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性、特に、耐可塑剤性が優れたものになる点で、好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3が式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含む場合、感熱記録層3の全体に対する式(4)で表されるウレアウレタン化合物の含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましい。前記ウレアウレタン化合物の含有量が1質量%以上である構成は、可塑剤などによる発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性、特に、耐可塑剤性が優れたものになる点で、好ましい。また、前記ウレアウレタン化合物の含有量が20質量%以下である構成は、発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止する点で、好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3が式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有する場合、非フェノール系顕色剤に対する式(4)で表されるウレアウレタン化合物の含有割合(ウレアウレタン化合物/非フェノール系顕色剤)は、1/20~1/1が好ましい。前記含有割合が、1/1以下である構成は、発色性が乏しくなる(光学濃度が低くなる)ことを防止できる点で、好ましい。また、前記含有割合が、1/20以上である構成は、可塑剤などによる発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性、特に、耐可塑剤性が優れたものになる点で、好ましい。
本実施形態において、感熱記録層3に含まれる保存性向上剤の全量に対する式(4)で表されるウレアウレタン化合物の含有量は、特に限定されないが、可塑剤などによる発色濃度の低下を抑制でき、印字保存性、特に、耐可塑剤性が優れたものになる点から、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がさらに好ましい。
本実施形態においては、感熱記録層3上に中間層4を設けることにより、耐水性、耐薬品性、耐可塑剤性等に優れる感熱記録体1を得ることができる。
中間層4を構成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カゼイン、ゼラチン、にかわ、アラビアゴム、ポリアミド、ポリアクリルアミド、変性ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、メチルビニル-無水マレイン酸共重合体、イソプロピレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メチルビニルエーテルポリビニルアルコール等の水系樹脂が挙げられる。なお、「水系樹脂」とは、これらの化合物が水に分散されている、もしくは、水に溶解した樹脂成分という意味である。これらの材料は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記樹脂は、水溶性部分を有する樹脂、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)樹脂、あるいは、疎水性のコア粒子を水溶性のシェルポリマーでコーティングしたコアシェル構造の樹脂、例えば、コアシェル型アクリル樹脂等を使用することにより、透明性を向上することができる。
コアシェル型の樹脂は、例えば、コアシェル型アクリル樹脂として、「バリアスター(三井化学社製)」の名称で市販されているもの等を使用することができる。
中間層4の塗布量(乾燥重量)は、好ましくは0.3g/m2~10g/m2である。
トップコート層5は、サーマルヘッドに対する感熱記録体1のサーマルヘッド適性を向上させて、感熱記録層3の発色が順調に行われるようにするものである。具体的には、サーマルヘッドへの付着物の堆積や、感熱記録体1の表面が熱で歪むといった不具合が極力生じないよう、感熱記録層3の発色が行われることをいう。
本実施形態では、感熱記録体1のトップコート層5は、弾性粒子等を添加することなく、サーマルヘッドの摩耗を低減してサーマルヘッドの寿命を縮めない役割を担う。これは、いわゆる、サーマルヘッド適性の向上を意味する。また、トップコート層5について、サーマルヘッドに対する耐スティッキング性を向上させる必要がある。ここで、耐スティッキング性とは、サーマルヘッドの熱で感熱記録体の最上層の成分が溶融してサーマルヘッドに粘着することによって生じる不具合が生じにくいことである。より具体的には、感熱記録体に部分的に印字されなかったり、印字面が歪むといった不具合が生じにくいことである。
本実施形態のトップコート層5は、その表面に、窪んだ凹部として、水分の蒸発による蒸発孔、及び、亀裂(クラック)を有する。これによって、トップコート層5の表面とサーマルヘッドとの接触面積を低減している。
このように、トップコート層5の表面に凹部、特に、亀裂を生じさせるために、トップコート層5を形成する塗液として、疎水性の樹脂粒子を含む塗液を使用している。
すなわち、本実施形態では、トップコート層5は、結着剤として、疎水性の樹脂粒子のエマルジョン、例えば、疎水性のアクリル樹脂粒子を水分散させたエマルジョンを使用している。
このように、トップコート層5の結着剤としては、疎水性の樹脂粒子のエマルジョンを使用し、水溶性高分子は使用していない。
水溶性高分子を含む塗液は、塗工して乾燥する際に、凝集しにくく、柔軟性のある塗膜が形成されるため、トップコート層5に収縮による亀裂は生じない。
これに対して、疎水性の樹脂粒子のエマルジョンは、塗工して乾燥する際に、蒸発によって疎水性の樹脂粒子同士が凝集して収縮し、トップコート層5の表面に凹部となる亀裂が生じる。
この亀裂は、疎水性の樹脂粒子の凝集による収縮によって形成されるので、トップコート層5に止まっており、中間層4には達していない。
また、本実施形態では、トップコート層5の表面に、凹部となる水分の蒸発による蒸発孔を形成させるために、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5の3層を、カーテンコータによって3層同時塗工を行っている。
カーテンコータでは、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5をそれぞれ形成するための各塗液を、複数のスリットのそれぞれから吐出させて積層し、その積層した塗液を連続走行する。このとき、予め基材2上に形成されたアンダーコート層6上に、自由落下させて塗工する。
このようなカーテンコータによる3層の同時塗工では、トップコート層5は、乾燥すると、上記のように疎水性の樹脂粒子が凝集し始め亀裂が生じ、亀裂から水蒸気が抜けて、半乾きの中間層4と感熱記録層3が乾燥固化する。中間層4と感熱記録層3の水蒸気は、その大部分が亀裂から放出されるが、一部の水蒸気は、トップコート層5に蒸発孔を形成して放出される。このため、亀裂や蒸発孔は、トップコート層5付近に形成される。
本実施形態では、トップコート層5に形成される蒸発孔は、中間層4に止まっている。このため、最上層であるトップコート層5の表面に、油等が付着しても感熱記録層3に達することはなく、感熱記録層3が変色等することがない。
トップコート層5は、必要に応じて、滑剤、架橋剤、分散剤、消泡剤、耐水化剤、充填剤等の添加剤を含む。
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、炭酸ジルコニウム等が挙げられる。
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカゲル、活性白土、タルク、クレー、カオリナイト、ケイソウ土、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ポリスチレン樹脂粒子、尿素-ホルマリン樹脂粒子、ポリオレフィン樹脂粒子等が挙げられる。これらの充填剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。なお、トップコート層5に含有される充填剤の粒子径は、1.0μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、トップコート層5を形成するための塗液として、疎水性のアクリル樹脂を水分散させたエマルジョンと、滑剤としてのポリエチレンワックスと、顔料として炭酸カルシウムとを、4:3:3の乾燥時の質量比率で配合した水分散懸濁液を使用して感熱記録体1が製造される。
トップコート層5の塗布量(乾燥重量)は、1g/m2とする。
本実施形態によれば、上記のように、感熱記録体1の最上層であるトップコート層5の表面には、凹部となる亀裂及び水分の蒸発孔が形成されているので、トップコート層5の表面は凹凸となる。これによって、トップコート層5とサーマルヘッドとの接触面積が減少し、サーマルヘッドの摩耗が軽減されてサーマルヘッド適性が向上すると共に、耐スティッキング性が向上する。
トップコート層5の厚みは、例えば、1μm未満に調整される。本実施形態では、0.8μm程度に調整される。これによって、トップコート層5の表面から感熱記録層3までの距離が短いので、サーマルヘッドからの熱が、感熱記録層3に効率的に伝導する。また、厚みが薄いため、コストの低減に寄与する。
更に、トップコート層5の表面の亀裂は、トップコート層5の内部である厚み方向に進展しているので、亀裂によってトップコート層5の厚み方向に直交する方向、すなわち、横方向に分断されることになる。これにより、サーマルヘッドからの熱の横方向への放熱が抑制される。その結果、サーマルヘッドからの熱が厚み方向に位置する下層の感熱記録層3に効率的に伝導する。
トップコート層5とサーマルヘッドとの接触面積を減少させるためには、大略円形である水分の蒸発孔は、その平均直径が、2μm以上であるのが好ましい。
この蒸発孔の平均直径は、電子顕微鏡(SEM)によって、トップコート層5の表面を観察し、単位面積、例えば、1mm2当たりの蒸発孔の直径を計測して算出する。また、蒸発孔の個数は、例えば、平均直径が5μm以上の蒸発孔が、1mm2当たり、30個以上であるのが好ましく、40個以上であるのが更に好ましい。
本実施形態の感熱記録体1では、トップコート層5の配合等を調整することによって、例えば、トップコート層5の表面を、多数の蒸発孔と少数の亀裂を有する表面とすることができる。あるいは、トップコート層5の表面を、亀裂のない多数の蒸発孔だけの表面とすることもできる。
本実施形態では、感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5の3層をカーテンコータによって多層同時塗工したが、多層同時塗工に限らず、各感熱記録層3、中間層4、及びトップコート層5を個別に順次形成してもよい。
本実施形態では、基材2上に、アンダーコート層6及び中間層4を形成したが、本発明の他の実施形態として、アンダーコート層6及び中間層4の少なくともいずれか一方の層を省略してもよい。
上記実施形態の感熱記録体は、上記構成の感熱記録層を有するため、耐光性、発色性、耐熱性に優れる。
本実施形態の感熱記録体の下記式で示される白色度変化量(%)は、耐光性に優れ、光照射による白色度低下を抑制する観点から、好ましくは-5%以上であり、より好ましくは-4.5%以上、さらに好ましくは-4%以上である。

白色度変化量(%)=照度5000Luxで100時間放置後の白色度-試験前白色度

白色度は、JIS P 8148に準じて求められるものである。
上記白色度変化量(%)のマイナス(-)は白色度の低下量を示すものであり、0%に近いほど白色度の低下が少なく、耐光性に優れることを示すものである。
本実施形態の感熱記録体の下記式で示されるΔbの絶対値は、耐光性に優れ、光照射による黄変や青変(青みがかること)を抑制する観点から、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.4以下、さらに好ましくは2.3以下、特に好ましくは2.2以下である。

Δb=照度5000Luxで100時間放置後のb値-試験前b値

b値は、JIS Z8781-4:2013で規定されたL***色空間における色度(b値)を表す。
b値は青色から黄色の変化を示し、大きいほど黄色に、小さいほど青色に近づく。上記Δbはb値の変化量を示すものであり、プラスは黄変、マイナスは青変したことを示す。従って、Δbの絶対値が0に近いほど黄変や青変が少なく、耐光性に優れることを示すものである。
本実施形態の感熱記録体の0.16mj/dotにおける印字部の動感度(OD値)は、発色性に優れる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上である。
本実施形態の感熱記録体の0.20mj/dotにおける印字部の動感度(OD値)は、発色性に優れる観点から、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上である。
本実施形態の感熱記録体の0.40mj/dotにおける印字部の動感度(OD値)は、発色性に優れる観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上である。
上記動感度(OD値)は、後掲の実施例で測定されるものであり、値が高いほど発色性に優れることを示すものである。
本実施形態の感熱記録体の後掲実施例の(耐熱性評価)における非印字部のOD値は、耐熱性に優れ、電子レンジ等の加熱調理後においても印字部を明瞭に識別できる観点から、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.19以下、さらに好ましくは0.18以下である。
本実施形態の感熱記録体の後掲実施例の(耐水性評価)における印字部のOD値は、耐水性に優れ、湿潤条件においても印字部を明瞭に識別できる観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.2以上である。
本実施形態の感熱記録体の後掲実施例の(耐可塑剤性評価)における印字部のOD値は、耐可塑剤性に優れ、可塑剤を含むラップなどに密着した状態で放置した場合においても印字部を明瞭に識別できる観点から、好ましくは1.25以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。
以下の実施例、比較例において、感熱記録層に非フェノール系顕色剤及び非フェノール系光安定剤を含有する感熱記録体を作製し、発色性、耐光性、、耐熱性、耐水性、及び耐可塑剤性の評価を行った。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1~10、比較例1~4)
(感熱記録体の作製)
<アンダーコート層>
基材である坪量70g/m2の上質紙(厚さ:80μm)上に、中空粒子(固形分濃度26.5%、ローペイクHP-1055:ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社)70質量部、変性スチレンブタジエンラテックス(固形分濃度49%)10質量部、水20質量部の割合になった組成物を混合攪拌させたアンダーコート層用塗液を塗布し、乾燥させて、乾燥時の塗布量が3.0g/m2であり、厚さが5μmのアンダーコート層を形成した。
<感熱記録層>
表1及び2に示す感熱記録層形成用の塗液を調製し、調製した感熱記録層形成用の塗液を、上述のアンダーコート層上に、塗布量が、乾燥重量で4.0g/m2となるように塗布した後、乾燥を行うことにより、アンダーコート層上に厚さが3.5μmの感熱記録層を形成した。なお、表1、2において、各配合材料の数値は、乾燥時における重量比率を示している。
また、配合材料として、ロイコ染料は、粒子径が0.6~0.7μmの3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオロランを使用し、顕色剤1は、上記式(2b)で表される[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]-4-メチルベンゼンスルホナートを使用し、顕色剤2は、上記式(1b)で表されるN,N’-ジ-[3-(p-トルエンスルホニルオキシ)フェニル]尿素を使用した。また、光安定剤1は、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応生成物(商品名「アデカスタブLA-63P」、数平均分子量:約2000、株式会社ADEKA製)を使用し、光安定剤2は、ベンゾトリアゾール系(フェノール系)のα-3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-1-オキソプロピル-ω-ヒドロキシ ポリ(オキシエチレン)を使用した。また、保存性向上剤1は、上記式(4)で表されるウレアウレタン化合物(商品名「UU」、ケミプロ化成社製)を使用した。
また、増感剤は、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン(PVA水溶液に分散させることにより固形分濃度が20%の分散液にしたもの)を使用し、結着剤は、スチレンアクリル共重合体エマルジョンを使用し、顔料として、炭酸カルシウム(ヘキサメタリン酸ナトリウム5%水溶液に分散させることにより固形分濃度が30%の分散液にしたもの)を使用し、滑剤として、ステアリン酸亜鉛エマルジョンを使用した。
<中間層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度30%)液を、上述の感熱記録層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.6g/m2であり、厚さが1.5μmの中間層を形成した。
<トップコート層>
アクリルエマルジョン(固形分濃度20%)が40質量部、炭酸カルシウムが5質量部、ポリエチレンワックス(固形分濃度40%)が15質量部、水が40質量部の割合になったものを混合攪拌させて得た液を、中間層上に塗布し、これを乾燥させて、乾燥時の塗布量が1.0g/m2であり、厚さが0.9μmのトップコート層を形成した。
以上の方法により、実施例1~10、及び比較例1~4の感熱記録体を作製した。
Figure 0007452937000017
Figure 0007452937000018
(耐光性評価)
耐光性評価では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の印字部及び非印字部について、光学濃度(印字部のOD値/非印字部のOD値)、黄変(黄ばみ)、及び白色度の変化をそれぞれ測定した。以下、耐光性評価の手順について説明する。
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.40mJ/dotの条件で印字を行った。
照度計を用いて、5000Luxになるように蛍光灯からの距離を確認し、その位置に上記で印字した感熱記録体を100時間放置した。
試験前、及び上記放置後の感熱記録体のサンプルにおける印字部と非印字部の各光学濃度(印字部のOD値/非印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
また、試験前、及び上記放置後の感熱記録体のサンプルにおける、白色度(%)及び色合い(L、a、b)を測定した。白色度は、フォトボルト方式反射濃度計(東京電色社製、商品名:TC-6DS/A)を用いて、JIS P 8148に準じて測定を行った。
色合い(L、a、b)は、色差計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:SpectroEye)を用いて測定した。
上記の試験による測定結果を表3、4に示す。表3、4の測定結果において、印字部および非印字部における光学濃度(OD値)は、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色しており(発色具合が黒色に近づく)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色が不十分であることを示す。白色度(%)は、数値が大きいほど白色に近づくことを示す。色合い(L、a、b)の各指標のうち、(L)は、黒色から白色の変化を示し、(L)の数値が大きいほど白色に近づく。(a)は、緑色から赤色の変化を示し、(a)の数値が大きいほど赤色に近づく。(b)は、青色から黄色の変化を示し、(b)の数値が大きいほど黄色に近づく。これらの色の変化から、各感熱記録体の耐光性を評価した。
(動感度評価)
動感度試験では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体に対して、印字エネルギーを異ならせて印字を行い、それぞれの印字エネルギーにおける光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の動感度を評価した。以下、動感度試験の手順について説明する。
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.16mJ/dot、0.20mJ/dot、及び0.40mJ/dotの各条件で印字を行い、当該印字エネルギー条件における光学濃度(OD値)を、分光光度計(X-rite社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
上記の試験による測定結果を表3、4に示す。上記の耐光性試験と同様に、表3、4の測定結果において、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、より発色しており、数値が小さい場合、発色が不十分であることを示す。例えば、印字エネルギーが小さいにも関わらず、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合は、「発色性は良好である」と評価される。一方、印字エネルギーが大きいにも関わらず、光学濃度(OD値)の数値が小さい場合は、「発色性は不良である」と評価される。つまり、動感度試験は、発色性の評価である。
(耐熱性評価)
耐熱性試験では、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の印字部及び非印字部に対して熱を加えて、印字部及び非印字部の光学濃度(印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、各実施例及び各比較例における各感熱記録体の耐熱性を評価した。以下、耐熱性試験の手順について説明する。
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.40mJ/dotの条件で印字を行った。
100gの水を収容した容器(直径:12cm、内容量:220cc)に、塩化ビニル製のラップ(厚さ:10μm)を用いて蓋をし、ラップ上に、上記で印字した感熱記録体のサンプル(縦:3cm、横:4cm)を貼り付けた。
次に、加熱時の水蒸気が抜けるように、安全ピンを用いて、ラップに10個の貫通孔を形成した。なお、貫通孔は、サンプルの部分を避けて形成するとともに、貫通孔間の距離が均一になるように形成した。
次に、この容器を、電子レンジ(1500W)を用いて、1分間加熱し、その後、感熱記録体のサンプルにおける印字部と非印字部の各光学濃度(印字部のOD値/非印字部のOD値)を、分光光度計(X-rite社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
上記の試験による測定結果を表3、4に示す。この耐熱性の評価では、光学濃度(OD値)の数値が非印字部は小さく、印字部は大きい場合は、感熱記録体の熱に対する反応が小さいことを意味する。すなわち、電子レンジで感熱記録体を加熱して、蒸気による熱が感熱記録体に加えられたときの、印字部または非印字部の発色の程度を表すことになる。このため、非印字部は、できるだけ発色しないことが好ましいので、光学濃度(OD値)の数値が小さい場合に、「耐熱性が良好」と評価できる。
一方、印字部は、蒸気による熱によって発色部分が消えないことを確認する。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、熱にあまり反応していないことを意味する。
(耐水性評価)
耐水性評価では、実施例7~10及び比較例4における各感熱記録体を水中に浸漬した印字部及び非印字部について、光学濃度(印字部及び非印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、実施例7~10及び比較例4における各感熱記録体の耐水性を評価した。以下、耐水性評価の手順について説明する。
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.171mJ/dotの条件で印字を行った。
印字した感熱記録体のサンプルを23℃の条件下で水に24時間浸漬後、乾燥させた。
上記試験後の感熱記録体のサンプルにおける印字部及び非印字部の光学濃度(印字部及び非印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
上記の試験による測定結果を表4に示す。表4の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、感熱記録体を水中に浸漬したときの、印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の耐水性評価は、水浸漬によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、耐水性に優れることを意味する。また、非印字部は、できるだけ発色しないことが好ましいので、光学濃度(OD値)の数値が小さい場合に、「耐水性が良好」と評価できる。
(耐可塑剤性評価)
耐可塑剤性評価では、実施例7~10及び比較例4における各感熱記録体を可塑剤を含むラップに密着させた印字部及び非印字部について、光学濃度(印字部及び非印字部のOD値)を測定した。この測定結果から、実施例7~10及び比較例4における各感熱記録体の耐可塑剤性を評価した。以下、耐可塑剤性評価の手順について説明する。
作製した感熱記録体に対して、感熱紙印字試験装置(オオクラエンジニアリング社製、商品名:パルスシュミレーターTH-M2/PP)を用い、印字速度50mm/sec、印加電圧17.0V、ヘッド抵抗値870Ω、パルス幅0.488~1.394msに設定して、印字エネルギー0.171mJ/dotの条件で印字を行った。
印字した感熱記録体のサンプルに、塩ビラップ(デンカポリマー社 ML-400)を3枚重ね、表面と裏面の両方に密着させた。荷重を300g/cm2掛け、40℃の環境下で15時間放置した。
上記試験後の感熱記録体のサンプルにおける印字部及び非印字部の光学濃度(印字部のOD値)を、分光光度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、商品名:eXact)を用いて測定した。
上記の試験による測定結果を表4に示す。表4の測定結果において、印字部における光学濃度(OD値)は、数値が大きい場合(つまり、光の反射率が少ない)、より発色濃度が維持されており(発色具合の黒色が維持されている)、数値が小さい場合(つまり、光の反射率が大きい)、発色濃度が低下していることを示す。すなわち、ラップに密着したときに感熱記録体に移行する可塑剤による印字部の発色濃度低下の程度を表すことになる。このため、印字部の耐可塑剤性評価は、ラップ密着によって発色部分が消えないことによって確認できる。具体的には、印字部は、光学濃度(OD値)の数値が大きい場合、耐可塑剤性に優れることを意味する。また、非印字部は、できるだけ発色しないことが好ましいので、光学濃度(OD値)の数値が小さい場合に、「耐可塑剤性が良好」と評価できる。
Figure 0007452937000019
Figure 0007452937000020
<検証結果>
表3、4に示す結果から下記のことが確認できた。
[実施例1~3及び比較例1~2]
同一の顕色剤1を含有している実施例1~3および比較例1~2について検討する。
(1)耐光性試験において、実施例1~3は比較例1に比べて、白色度変化量が小さく、試験後の白色度も高い。これは、実施例1~3に光安定剤1(非フェノール系光安定剤)が含有されているためと推測される。一方、実施例1~3と同一の顕色剤1を含有し、実施例1~3とは異なる光安定剤2(フェノール系光安定剤)を含有する比較例2の白色度変化量は、-3.60であった。これは、実施例1~3の白色度変化量よりも小さい。このため、実施例1~3の方が比較例2に比べて、耐光性が劣るようにも思われる。すなわち、従来から汎用されているフェノール系光安定剤を感熱記録層に含有させた方が、耐光性に優れているようにも考えられる。
しかしながら、比較例2の試験後の白色度は、77.4%であり、実施例1~3の白色度に比べて明らかに小さい。また、白色度変化量の差についても、実施例1~2と比較例2とでは、白色度変化量の差は、それぞれ、0.90、0.30と僅かな差であり、特に、光安定剤を比較例2と同じ10重量部配合した実施例3は、0.1とほとんど差は認められなかった。このため、非フェノール系光安定剤を含有しても、比較例2と同程度の白色度の変化具合であると言える。
さらに、実施例1~3及び比較例1~2では、試験後の光学濃度(OD値)にさほど差はなかった。
これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例1~3の感熱記録体は、光安定剤を含有しない比較例1よりも耐光性に優れ、フェノール系光安定剤2を含有する比較例2と同程度の耐光性を有することが確認できた。
(2)動感度試験(発色性)では、印字エネルギーを0.40mJ/dotに設定したとき、実施例1~3の光学濃度(OD値)は1.35~1.41、比較例1~2の光学濃度(OD値)は1.51~1.55、印字エネルギーを0.20mJ/dotに設定したとき、実施例1~3の光学濃度(OD値)は0.88~0.93、比較例1~2の光学濃度(OD値)は1.15~1.20、印字エネルギーを0.16mJ/dotに設定したとき、実施例1~3の光学濃度(OD値)は0.41~0.47、比較例1~2の光学濃度(OD値)は0.58~0.62であり、実施例1~3は、光安定剤を含有しない比較例1よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、7~34%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を示した。
これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例1~3の感熱記録体は、光安定剤を含有しない比較例1、フェノール系光安定剤を含有する比較例2と同程度の遜色ない発色性を有することが確認できた。
(3)耐熱性試験では、実施例1~3の印字部の光学濃度(OD値)は、1.35~1.45であり、比較例1~2の印字部の光学濃度(OD値)は、1.51~1.54であり、実施例1~3は、光安定剤を含有しない比較例1、非フェノール性光安定剤を含有する比較例2よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、4~11%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を維持した。一方、実施例1~3の非印字部の光学濃度(OD値)は、いずれも0.11であるのに対し、比較例1~2の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.17~0.35であり、実施例1~3に比べて、光学濃度(OD値)が大きかった。とくに、比較例2の非印字部の光学濃度(OD値)は、実施例1~3の非印字部の光学濃度(OD値)に比べて随分大きい。上記したとおり、耐熱性試験において、非印字部の光学濃度(OD値)がより小さい方が、耐熱性は良好だと判断できる。このため、少なくとも、実施例1~3における非印字部は、比較例1~2における非印字部よりも耐熱性が良好であると言える。
これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例1~3の感熱記録体は、何らの光安定剤も含有しない比較例1、及びフェノール系光安定剤2を含有する比較例2の感熱記録体よりも、耐熱性が良好であることが確認できた。
[実施例4~6及び比較例3]
同一の顕色剤2を含有している実施例4~6および比較例3について検討する。
(4)耐光性試験において、実施例4~6は比較例3よりも、白色度変化量は小さかった。また、試験後の白色度も比較例3よりも大きかった。これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例4~6は、光安定剤を含有しない比較例3よりも、白色度の低下の抑制に効果的であることが確認できた。
(5)動感度試験では、印字エネルギーを0.40mJ/dotに設定したとき、実施例4~6の光学濃度(OD値)は1.26~1.38、比較例3の光学濃度(OD値)は1.41、印字エネルギーを0.20mJ/dotに設定したとき、実施例4~6の光学濃度(OD値)は0.65~0.71、比較例3の光学濃度(OD値)は0.75、印字エネルギーを0.16mJ/dotに設定したとき、実施例4~6の光学濃度(OD値)は0.21~0.25、比較例3の光学濃度(OD値)は0.28であり、実施例4~6は、光安定剤を含有しない比較例3よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、2~25%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を示した。
これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例4~6の感熱記録体は、光安定剤を含有しない比較例3と同程度の遜色ない発色性を有することが確認できた。
(6)耐熱性試験では、実施例4~6の印字部の光学濃度(OD値)は、1.26~1.34であり、比較例3の印字部の光学濃度(OD値)は、1.39であり、実施例4~6は、光安定剤を含有しない比較例3よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、4~10%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を維持した。一方、実施例4~6の非印字部の光学濃度(OD値)は、1.16~1.18であるのに対し、比較例3の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.23であり、実施例4~6に比べて、光学濃度(OD値)が大きかった。上記したとおり、耐熱性試験において、非印字部の光学濃度(OD値)がより小さい方が、耐熱性は良好だと判断できる。このため、少なくとも、実施例4~6における非印字部は、比較例3における非印字部よりも耐熱性が良好であると言える。
これらのことから、非フェノール系光安定剤を含有する実施例4~6の感熱記録体は、何らの光安定剤も含有しない比較例3の感熱記録体よりも、耐熱性が良好であることが確認できた。
[実施例7~10及び比較例4]
同一の顕色剤1及び保存性向上剤1を含有している実施例7~10および比較例4について検討する。
(7)耐光性試験において、実施例7~10は比較例4よりも、白色度変化量は小さかった。また、試験後の白色度も比較例4よりも大きかった。これらのことから、非フェノール系光安定剤及び保存性安定剤を含有する実施例7~10は、保存性安定剤を含有するが、光安定剤を含有しない比較例4よりも、白色度の低下の抑制に効果的であることが確認できた。
(8)動感度試験では、印字エネルギーを0.40mJ/dotに設定したとき、実施例7~10の光学濃度(OD値)は1.63~1.67、比較例4の光学濃度(OD値)は1.67、印字エネルギーを0.20mJ/dotに設定したとき、実施例7~10の光学濃度(OD値)は1.25~1.36、比較例4の光学濃度(OD値)は1.45、印字エネルギーを0.16mJ/dotに設定したとき、実施例7~10の光学濃度(OD値)は0.6~0.75、比較例4の光学濃度(OD値)は0.82であり、実施例7~10は、光安定剤を含有しない比較例4よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、0~27%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を示した。
これらのことから、非フェノール系光安定剤及び保存性安定剤を含有する実施例7~10の感熱記録体は、保存性安定剤を含有するが、光安定剤を含有しない比較例4と同程度の遜色ない発色性を有することが確認できた。
(9)耐熱性試験では、実施例7~10の印字部の光学濃度(OD値)は、1.56~1.62であり、比較例4の印字部の光学濃度(OD値)は、1.62であり、実施例7~10は、光安定剤を含有しない比較例4よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、0~4%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を維持した。一方、実施例7~10の非印字部の光学濃度(OD値)は、いずれも0.10であるのに対し、比較例4の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.12であり、実施例7~10に比べて、光学濃度(OD値)が大きかった。上記したとおり、耐熱性試験において、非印字部の光学濃度(OD値)がより小さい方が、耐熱性は良好だと判断できる。このため、少なくとも、実施例7~10における非印字部は、比較例4における非印字部よりも耐熱性が良好であると言える。
これらのことから、非フェノール系光安定剤及び保存性安定剤を含有する実施例7~10の感熱記録体は、保存性安定剤を含有するが、光安定剤を含有しない比較例4の感熱記録体よりも、耐熱性が良好であることが確認できた。
(10)耐水性試験では、実施例7~10の印字部の光学濃度(OD値)は、1.24~1.29であり、比較例4の印字部の光学濃度(OD値)は、1.34であり、実施例7~10は、光安定剤を含有しない比較例4よりも光学濃度(OD値)が低い傾向があった。しかし、4~7%程度の低下であり、感熱記録体として良好に使用できる発色性を維持した。一方、実施例7~10の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.05~0.06であり、比較例4の非印字部の光学濃度(OD値)0.05と同等程度であった。
これらのことから、非フェノール系光安定剤及び保存性安定剤を含有する実施例7~10の感熱記録体は、保存性安定剤を含有するが、光安定剤も含有しない比較例4の感熱記録体と同等程度の優れた耐水性を示すことが確認できた。
(11)耐可塑剤性試験では、実施例7~10の印字部の光学濃度(OD値)は、1.44~1.56であり、比較例4の印字部の光学濃度(OD値)は、1.20であり、実施例7~10は、光安定剤を含有しない比較例4よりも光学濃度(OD値)が高い値を示し、特に、保存性安定剤を多く含む実施例10は1.56と高い光学濃度を示した。一方、実施例7~10の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.04~0.06であり、比較例4の非印字部の光学濃度(OD値)は、0.05と同程度であった。
これらのことから、非フェノール系光安定剤及び保存性安定剤を含有する実施例7~10の感熱記録体は、保存性安定剤を含有するが、光安定剤を含有しない比較例4の感熱記録体よりも、耐可塑剤性が良好であり、特に、保存性安定剤を多く含むことにより耐可塑剤性が向上することが分かる。
[結論]
上記測定結果より、非フェノール系顕色剤及び非フェノール系光安定剤を含有する感熱記録体であっても、フェノール系光安定剤を含有する感熱記録体よりも耐光性、発色性、、耐熱性、耐水性、耐可塑剤性が劣ることは確認できなかった。そして、感熱記録体に非フェノール系光安定剤を含有させると、感熱記録体の耐熱性を良好に維持しながら耐光性を向上させる効果を奏することや、白色度の低下および黄変を抑制できること、保存性向上剤を含有させると、用量依存的に耐可塑剤性が向上できることが分かった。
さらに、非フェノール系顕色剤および非フェノール系光安定剤は、フェノール系のものよりも、安全性の面で優れている。このため、非フェノール系顕色剤および非フェノール系光安定剤を使用することにより、環境対応の観点からも非常に有効である。
以下に、本発明のバリエーションを付記する。
〔付記1〕
基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体であって、
前記感熱記録層は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤とを含有し、
前記非フェノール系光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤を含有することを特徴とする、感熱記録体。
〔付記2〕
前記非フェノール性顕色剤は、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含有する、付記1に記載の感熱記録体。
Figure 0007452937000021
(式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R6、及びR12は、それぞれ独立して、置換基を示す。mは、0~4の整数を示す。mが2以上の場合、複数のR6は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、0~4の整数を示す。nが2以上の場合、複数のR12は、同一であっても、異なっていてもよい。)
Figure 0007452937000022
(式(2)中、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R18は、置換基を示す。oは、0~4の整数を示す。oが2以上の場合、複数のR18は、同一であっても、異なっていてもよい。)
〔付記3〕
前記非フェノール系顕色剤が、下記式(1a)で表される化合物、及び/又は下記式(2a)で表される化合物を含有する、付記1又は2に記載の感熱記録体。
Figure 0007452937000023
(式(1a)中の各記号は、式(1)と同じである。)
Figure 0007452937000024
(式(2a)中の各記号は、式(2)と同じである。)
〔付記4〕
前記感熱記録層が、さらに、保存性向上剤を含有する、付記1~3の何れか1つに記載の感熱記録体。
〔付記5〕
前記保存性向上剤が、下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、付記4に記載の感熱記録体。
Figure 0007452937000025
〔付記6〕
前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系顕色剤の含有量が、10質量%以上50質量%以下である、付記1~5の何れか1つに記載の感熱記録体。
〔付記7〕
前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系光安定剤の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、付記1~6の何れか1つに記載の感熱記録体。
以上に説明したように、本発明は、バーコード等が印字される感熱記録体に、特に有用である。
1 感熱記録体
2 基材
3 感熱記録層
4 中間層
5 トップコート層
6 アンダーコート層

Claims (16)

  1. 基材上に、感熱記録層が積層された感熱記録体であって、
    前記感熱記録層は、発色剤と、非フェノール系顕色剤と、非フェノール系光安定剤とを含有し、
    前記非フェノール系光安定剤は、下記式(3)で表される基を有する化合物を含有することを特徴とする、感熱記録体。
    Figure 0007452937000026
    (式(3)中、R a 、は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、このアルキル基は酸素原子、カルボニル基で単数若しくは複数中断されていてもよい。また、一般式(3)の基は、一般式(3)中、*の箇所で結合する。)
  2. 前記非フェノール性顕色剤は、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
    Figure 0007452937000027
    (式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R6、及びR12は、それぞれ独立して、置換基を示す。mは、0~4の整数を示す。mが2以上の場合、複数のR6は、同一であっても、異なっていてもよい。nは、0~4の整数を示す。nが2以上の場合、複数のR12は、同一であっても、異なっていてもよい。)
    Figure 0007452937000028
    (式(2)中、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を示す。R18は、置換基を示す。oは、0~4の整数を示す。oが2以上の場合、複数のR18は、同一であっても、異なっていてもよい。)
  3. 前記非フェノール系顕色剤が、下記式(1a)で表される化合物、及び/又は下記式(2a)で表される化合物を含有する、請求項2に記載の感熱記録体。
    Figure 0007452937000029
    (式(1a)中の各記号は、式(1)と同じである。)
    Figure 0007452937000030
    (式(2a)中の各記号は、式(2)と同じである。)
  4. 前記感熱記録層が、さらに、保存性向上剤を含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
  5. 前記保存性向上剤が、下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、請求項4に記載の感熱記録体。
    Figure 0007452937000031
  6. 前記感熱記録層が、さらに、保存性向上剤を含有する、請求項2に記載の感熱記録体。
  7. 前記保存性向上剤が、下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、請求項6に記載の感熱記録体。
    Figure 0007452937000032
  8. 前記感熱記録層が、さらに、保存性向上剤を含有する、請求項3に記載の感熱記録体。
  9. 前記保存性向上剤が、下記式(4)で表されるウレアウレタン化合物を含有する、請求項8に記載の感熱記録体。
    Figure 0007452937000033
  10. 前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系顕色剤の含有量が、10質量%以上50質量%以下である、請求項1~9の何れか1項に記載の感熱記録体。
  11. 前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系光安定剤の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、請求項1~9の何れか1項に記載の感熱記録体。
  12. 前記感熱記録層の全体に対する前記非フェノール系光安定剤の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、請求項10に記載の感熱記録体。
  13. 前記非フェノール系顕色剤に対する前記式(4)で表されるウレアウレタン化合物の含有割合(ウレアウレタン化合物/非フェノール系顕色剤)は、1/20~5.4/30.6である、請求項5に記載の感熱記録体。
  14. 前記感熱記録層に含まれる前記保存性向上剤の全量に対する前記式(4)で表されるウレアウレタン化合物の含有量は、90質量%以上である、請求項5に記載の感熱記録体。
  15. 前記式(3)で表される基を有する化合物は、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールおよびβ,β,β’,β’-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジエタノールの反応生成物及び/又はテトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートを含有する、請求項1に記載の感熱記録体。
  16. 前記非フェノール性顕色剤は、前記式(2)で表される化合物を含有する、請求項2に記載の感熱記録体。
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