JP7452710B2 - 玉軸受用冠型保持器、及び玉軸受 - Google Patents

玉軸受用冠型保持器、及び玉軸受 Download PDF

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Description

本発明は、玉軸受用冠型保持器、及び玉軸受に関する。
一般に、各種回転機械の回転部分を支持するために、図34に示すような玉軸受1が使用されている。玉軸受1は、外周面に内輪軌道2を有する内輪3と、内輪3と同心に配置され、内周面に外輪軌道4を有する外輪5と、内輪軌道2と外輪軌道4との間に転動自在に配置される複数の玉6と、を備える。
各玉6は、保持器100により転動自在に保持される。また、外輪5の内周面の軸方向両端部には、それぞれ円輪状の一対のシールド板7、7の外周縁が係止される。一対のシールド板7,7は、軸受空間に存在するグリース等の潤滑剤が外部に漏洩したり、外部に浮遊する塵埃が軸受空間に侵入したりすることを防止している。なお、密封装置として、非接触型のシールド板7,7に代えて、接触型のシールを使用してもよい。
保持器100は、図35および図36に示すように、樹脂製の冠型保持器である。保持器100は、円環状の主部109と、主部109から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部110と、隣り合う柱部110の間に形成され、玉6を保持可能な球面形状のポケット111と、を備える。
柱部110は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部112,112を有する。ポケット111を構成する隣り合う二つの爪部112,112が玉6を保持することで、保持器100が外輪5と内輪3の間から軸方向に脱落するのを防止している。
ところで、最近の自動車の電動化により、転がり軸受(特に玉軸受)には高速回転化が要求されている。高速回転化のためには、(i)保持器の遠心力膨張を抑制し、ポケットの底部に発生する応力を下げることで、疲労破壊を防ぐこと、および、(ii)保持器の変形を抑制することで、外輪やシールに対する保持器の接触を避けて、保持器の摩耗、振動、発熱を抑制すること、が求められる。
図34~36に示すような従来型の保持器100においては、高速回転時に遠心力によって応力が保持器100に作用し、保持器100が外径側に変形してしまう可能性がある。図34には、保持器100が変形した様子が破線で示されている。この場合、保持器100が外輪5に接触したり(図34中のA部分を参照)、保持器100がシールド板7と接触したりしてしまい(図34中のB部分を参照)、保持器100が摩耗、振動、発熱することが懸念される。
特許文献1や特許文献2には、保持器を軽量化するための技術が開示されている。
具体的には、特許文献1には、冠型保持器のポケット形成部側の端面とは反対側の端面に、肉ぬすみ部が形成されることが開示されている。この肉ぬすみ部によって、冠型保持器の軸方向左右質量バランスを向上させて背面側部分の軽量化を図っている。
また、特許文献2に記載の保持器は、環状の基部と、基部から軸方向に延びるアキシャル部と、を有する。アキシャル部の外径は、基部の外径よりも小さい。基部には、アキシャル部の凹部域と連通する、軸方向に貫通する孔が形成されている。これにより、材料の量を減少させ、高速回転時に誘発される半径方向での変形を抑制することを図っている。
また、特許文献3には、ポケットの裏側の底面に突起が設けられることが開示されている。
また、特許文献4は、軸受の玉を保持する保持器において、保持器を構成する各ポケットの外接円の直径を、各ポケット内に保持する複数個の玉のピッチ円直径以下にすることを開示している。これにより、軸受の高速回転時にも、保持器を構成する各凸部の先端部が外輪の内周面に干渉するのを防止し、かつ保持器の材料を減らして製造コストを低減することを狙っている。
日本国特開2008-274977号公報 日本国特許第5436204号公報 日本国特開平11-264418号公報 日本国特開2010-156439号公報
更なる高速回転化の要求に応えるためには、保持器の軽量化のみならず、保持器の材料を変更することも考えられる。保持器の材料としては、従来から使用されているポリアミド46(PA46)やポリアミド66(PA66)よりも剛性のある、例えば繊維状強化剤を含有する樹脂材料を使うことが望ましい。剛性のある樹脂材料の密度があまり変わらなければ、剛性を向上した割合に応じて、遠心力による保持器の変形を抑えることができる。
しかしながら、剛性のある樹脂材料、すなわち、曲げ弾性率(ヤング率)の大きい材料は、一般に伸びが低い場合が多い。したがって、高速回転中に変形しにくいだけではなく、保持器のポケットに玉を組む際にも変形しにくいので、保持器(特に爪部)の寿命を損なう可能性がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保持器のポケットに玉を挿入する際に、保持器に発生するひずみを減少させ、高剛性の樹脂材料を採用可能にした玉軸受用冠型保持器及び玉軸受を提供することを第一の目的とする。
また、従来の保持器100のポケット111の開口径は、組み込まれる玉の直径よりも狭く設計されている。このため、保持器100に玉6を組み込む際、玉6が保持器100の一対の爪部112を周方向に広げながら組み込まれるので、保持器100の爪部112に過大なひずみが発生し、寿命を損なう可能性があった。
その対策として、保持器100が破損しないようにポケット開口径を広げる設計をすることが考えられる。しかし、この設計では、保持器100に使用されている材料の伸びが小さくなるほど、ポケット開口径を広く設定する必要がある。ポケット開口径を広くしすぎてしまうと、軸方向の振動を受けた際、保持器100が玉6から抜けてしまう可能性がある。
なお、冠型保持器には一般的にポリアミド6,6またはポリアミド4,6が使われているが、高温領域のような環境下ではPPS(ポリフェニレンサルファイド),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような伸びの少ない材料が使われている。また、今後、冠型保持器を高速回転環境下で使用する場合、遠心力による保持器の変形を抑える必要があるため、これまでの材料より高剛性の材料、すなわち、伸びの少ない材料が必要になってくる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、伸びが小さい材料であってもポケット開口径を大きくすることなく、軸受に組み込まれた玉に保持器を組み込むことが可能な玉軸受用冠型保持器及び玉軸受を提供することを第二の目的とする。
また、保持器は玉を保持するために用いられるが、自動車の電動化に伴うモータ用軸受の高回転化への対応、さらには軽量化を目的として樹脂製の保持器、特に冠型保持器が用いられている。樹脂製の冠型保持器は、円環状の主部と、主部から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部と、隣り合う柱部の間に形成され、玉を保持可能なポケットと、を備える。更に柱部は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部を有する。隣り合う二つの爪部が玉を保持することで、保持器が外輪と内輪の間から軸方向に脱落するのを防止している。
二つの爪部の先端部同士の間には、玉の直径よりも短い幅を有し、かつ、玉に挿入するための、入口部が設けられる。すなわち、入口部の径は挿入先の玉の直径に対し、狭く設計されている。このため、保持器が軸受に組み込まれる際、保持器の爪部を周方向に広げながら玉に挿入されていくことになる。この際、保持器の平坦な裏面が下方の押み込み治具等と面接触しているため、保持器が変形できる部分は専ら爪部だけとなり、保持器の玉への挿入時に爪部の根元に過大な応力が発生し、保持器の寿命を低下させるおそれがある。
上記の課題に対応するため、保持器の挿入作業は、爪部を広げる範囲を、保持器の寿命低下を抑制し得る程度までに限定して行われている。しかしながら、この方法によれば保持器に利用されている樹脂材料の伸びが小さくなるほど入口部の径を広く設定する必要がある。入口部の径を広く取りすぎてしまうと、軸方向の振動を受けた際、保持器が玉から抜けてしまう可能性が増大してしまう。
本発明は、保持器を円滑に挿入し得る玉軸受用冠型保持器及び玉軸受を提供することを第三の目的とする。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 円環状の主部と、
前記主部から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部と、
隣り合う前記柱部の間に形成され、玉を保持可能な球面形状のポケットと、
を備える、玉軸受用冠型保持器であって、
前記柱部は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部と、前記一対の爪部を接続する接続部を有し、
前記主部の底面には、軸方向に突出する部分が設けられる、
ことを特徴とする樹脂からなる玉軸受用冠型保持器。
(2) 前記主部の前記底面の径方向外側部には、軸方向に突出する第一凸部が設けられ、
前記第一凸部の少なくとも一部は、周方向および径方向において前記ポケットと重なる
(1)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(3) 前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短い幅を有し、かつ、前記玉を挿入するための、入口部が設けられ、
前記ポケットの球状凹面の曲率半径は、前記玉の転動面の曲率半径よりも大きく、
前記爪部の外径D1は、前記主部の外径D2よりも小さく、
前記爪部の径方向幅t1は、前記主部の径方向幅t2の1/2以下であり、
前記柱部の前記接続部の上面から前記主部の前記底面までの軸方向幅H1は、前記玉軸受用冠型保持器の軸方向幅H2の1/2以下である
(1)又は(2)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(4) 前記第一凸部は、前記主部の前記底面の径方向外側部に、全周にわたって設けられる
(1)又は(2)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(5) 前記主部の前記底面には、軸方向に突出する第二凸部が設けられ、
前記第二凸部は、少なくとも一部が、周方向および径方向において前記ポケットと重なり、
前記第一凸部は、前記第二凸部から更に軸方向に突出する
(2)又は(4)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(6) 前記第二凸部が設けられる径方向範囲及び周方向範囲は、前記ポケットを構成する前記主部の凹面が設けられる径方向範囲及び周方向範囲と略同一である
(5)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(7) 前記主部には、隣り合う前記ポケットの間に開口部が設けられる
(1)~(6)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(8) 前記柱部の前記接続部の上面から前記主部の底面までの軸方向幅H1は、前記ポケットの底部における前記主部の軸方向幅H3よりも大きい
(1)~(7)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(9) 前記爪部の径方向幅は、前記主部側から前記爪部の先端部側に向かうほど小さくなる、(1)~(8)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(10) 前記爪部は、前記ポケットを構成する周方向第一面と、前記周方向第一面とは反対側の周方向第二面と、を有し、
前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部において、二つの前記周方向第二面の間の周方向距離は、前記主部側から前記爪部の先端部側に向かうほど小さくなる
(1)~(9)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(11) 前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短いポケット開口径を有し、かつ、前記軸方向一方側とは逆方向である軸方向他方側に向かって前記玉を挿入するための、ポケット開口部が設けられ、
前記爪部の先端部のうち、前記ポケット開口部を構成し、且つ、前記玉が前記軸方向他方側に向かって挿入される際に最初に接触する部分を最先端部とし、
前記最先端部が前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に位置する場合、前記主部の底面は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側部分に比べて、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側部分において、前記軸方向他方側に突出し、
前記最先端部が前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に位置する場合、前記主部の底面は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側部分に比べて、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側部分において、前記軸方向他方側に突出する
(1)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(12) 前記爪部の最先端部は、径方向に平坦状に延び、
前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側または径方向外側に配置される
(11)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(13) 前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置され、
前記主部の底面には、前記軸方向他方側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置される
(12)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(14) 前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置され、
前記主部の底面には、前記軸方向他方側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される
(12)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(15) 前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置され、
前記主部の底面は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、前記軸方向他方側に突出する傾斜面であり、
前記底面の傾斜面の径方向最外側部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置される
(12)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(16) 前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置され、
前記主部の底面は、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、前記軸方向他方側に突出する傾斜面であり、
前記底面の傾斜面の径方向最内側部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される
(12)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(17) 前記ポケット開口部が、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出することにより、前記最先端部は、前記ポケット開口部の径方向最外側部に位置し、
前記最先端部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に位置する
(11)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(18) 前記主部の底面は、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、前記軸方向他方側に突出する傾斜面であり、
前記底面の傾斜面の径方向最内側部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される
(17)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(19) 前記主部の底面には、前記軸方向他方側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される
(17)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(20) 前記ポケット開口部が、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出することにより、前記最先端部は、前記ポケット開口部の径方向最内側部に位置し、
前記最先端部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に位置する
(11)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(21) 前記主部の底面は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、前記軸方向他方側に突出する傾斜面であり、
前記底面の傾斜面の径方向最外側部は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置される
(20)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(22) 前記主部の底面には、前記軸方向他方側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置される
(20)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(23) 前記凸部の少なくとも一部は、周方向および径方向において前記ポケットと重なる
(13),(14),(19),(22)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(24) 前記凸部は、前記主部の前記底面に、全周にわたって設けられる
(23)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(25) 前記ポケットを挟んで隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短い幅を有し、かつ、前記玉を挿入するための、入口部が設けられ、
少なくとも一つの突出部が、周方向における前記ポケットに対応する位置において、前記主部の底面から軸方向に突出するように形成されている、
樹脂からなる(1)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(26) 前記玉軸受用冠型保持器の使用時に前記底面が他の対向部材に対向し、
前記突出部の軸方向における突出高さが、前記底面から前記他の対向部材までの軸方向距離より小さい、
(25)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(27) 前記突出部が周方向における前記ポケットの中心線上の位置に形成される、
(25)または(26)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(28) 複数の前記突出部が周方向における前記ポケットの中心線上の位置から外れた位置に、前記中心線に対して対称に形成される、
(25)または(26)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(29) 前記玉軸受用冠型保持器の使用時に前記底面が他の対向部材に対向し、
前記ポケットが周方向において隣接する他の二つのポケット各々との間の中間位置上に位置する前記底面の二つの底面中間位置P2と、前記他の対向部材の周方向における前記ポケットの中心線上に位置する対向部材中心位置P3と、を規定し、
前記突出部の先端部は、周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3によって囲まれる領域に位置する、
(25)から(28)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(30) 前記突出部は、周方向において、前記入口部の幅の領域に形成される、
(25)から(29)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(31) 前記ポケットを挟んで隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短い幅を有し、かつ、前記玉を挿入するための、入口部が設けられ、
軸方向において傾斜する少なくとも二つの傾斜面が前記主部の底面に形成され、当該二つの傾斜面が交差して頂部を形成する、
樹脂からなる(1)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(32) 前記玉軸受用冠型保持器の使用時に前記底面が他の対向部材に対向し、
前記傾斜面が、前記頂部と、当該頂部から軸方向において最も遠い底部と、の間において画定され、
前記傾斜面の軸方向における傾斜高さが、前記底部から前記他の対向部材までの軸方向距離より小さい、
(31)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(33) 前記頂部が周方向における前記ポケットの中心線上の位置に形成される、
(31)または(32)に記載の玉軸受用冠型保持器。
(34) 前記玉軸受用冠型保持器の使用時に前記底面が他の対向部材に対向し、
前記ポケットが周方向において隣接する他の二つのポケット各々との間の中間位置上に位置する前記底面の二つの底面中間位置P2と、前記他の対向部材の周方向における前記ポケットの中心線上に位置する対向部材中心位置P3と、を規定し、
前記二つの傾斜面は、周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3によって囲まれる領域に位置する、
(31)~(33)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(35) 熱可塑性樹脂で構成される、
(1)~(34)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(36) 繊維状強化材が添加された熱可塑性樹脂で構成される、
(1)~(34)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(37) ポリアミド9Tと、繊維状強化材と、を含む樹脂組成物で構成される
(1)~(34)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(38) ポリアミド10Tと、繊維状強化材と、を含む樹脂組成物で構成される
(1)~(34)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器。
(39) 外輪と、
内輪と、
前記外輪と、前記内輪と、の間に配置された複数の前記玉と、
(1)~(38)のいずれか1つに記載の玉軸受用冠型保持器と、
を備える、玉軸受。
本発明の玉軸受用冠型保持器及び玉軸受によれば、保持器のポケットに玉を挿入する際に、保持器に発生するひずみを減少させることができるので、従来、保持器に採用することが困難であった高剛性の樹脂材料を採用可能である。
第一実施形態に係る保持器の一部の斜視図である。 第一実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 第一実施形態に係る保持器の一部を底面側から見た図である。 第一実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第一実施形態に係る保持器の一部の断面図である。 第二実施形態に係る保持器の一部の斜視図である。 第二実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 第二実施形態に係る保持器の一部を底面側から見た図である。 第二実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第三実施形態に係る保持器の一部の斜視図である。 第三実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 第三実施形態に係る保持器の一部を底面側から見た図である。 第三実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第四実施形態に係る保持器の斜視図である。 第四実施形態に係る保持器の一部の斜視図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を底面側から見た図である。 第四実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 図19のA-A断面図である。 図19のB-B断面図である。 第五実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第六実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である 比較例に係る保持器の一部の斜視図である。 比較例に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 比較例に係る保持器の一部を底面側から見た図である。 比較例に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 保持器に玉を組み込む様子を示す図である。 保持器に玉を組み込む様子を示す図である。 実施例に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 図25のD-D断面図において、玉を組み込んだ際の保持器の状態を示す図である。 図30のC-C断面図において、玉を組み込んだ際の保持器の状態を示す図である。 (a)~(c)は玉を保持器に組み込む際のひずみ発生領域を示す図であり、(a)は従来例の保持器を示し、(b)は比較例の保持器を示し、(c)は実施例の保持器を示す。 従来例に係る玉軸受の断面図である。 従来例に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 従来例に係る保持器の斜視図である。 治具によって保持器を玉軸受に組み込む様子を示す図である。 玉軸受に保持器が組み込まれた様子を示す図である。 比較例に係る保持器の一部の斜視図である。 図39のE-E断面矢視図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を周方向から見た一部断面図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を上面側から見た図である。 玉が組み込まれる前後の第四実施形態に係る保持器を示す図である。 玉が組み込まれる前後の第四実施形態に係る保持器を示す図である。 比較例に係る保持器の一部を径方向外側から見た図である。 比較例に係る保持器の一部を周方向から見た一部断面図である。 比較例に係る保持器の一部を上面側から見た図である。 比較例に係る保持器の一部を径方向内側から見た図である。 比較例に係る保持器の一部を周方向から見た一部断面図である。 比較例に係る保持器の一部を上面側から見た図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を径方向内側から見た図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を周方向から見た一部断面図である。 第四実施形態に係る保持器の一部を上面側から見た図である。 第七実施形態に係る保持器の斜視図である。 第七実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第七実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第七実施形態の保持器が軸受に組み込まれる様子を示す図である。 第七実施形態の保持器が軸受に組み込まれる様子を示す図である。 第七実施形態の保持器が軸受に組み込まれる様子を示す図である。 第七実施形態の保持器が軸受に組み込まれる様子を示す図である。 (a)は、第七実施形態の保持器を示し、(b)~(c)は、第七実施形態の保持器を軸受に組み込んだ場合に、保持器に生じるひずみを示す図である。(b)は保持器を周方向から見た図であり、(c)は保持器を軸方向一方側(上方)から見た図である。 (a)は、比較例の保持器を示し、(b)~(c)は、比較例の保持器を軸受に組み込んだ場合に、保持器に生じるひずみを示す図である。(b)は保持器を周方向から見た図であり、(c)は保持器を軸方向一方側(上方)から見た図である。 第七実施形態の変形例に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第八実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第八実施形態の変形例に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第九実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第九実施形態の変形例に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第十実施形態に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 第十実施形態の変形例に係る保持器の一部の部分断面斜視図である。 本発明の第十一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器の斜視図である。 図71の玉軸受用冠型保持器の要部の拡大図であり、玉が玉軸受用冠型保持器の一対の爪部に接触した状態を示す。 図71の玉軸受用冠型保持器の要部の拡大図であり、図71の状態から玉を玉軸受用冠型保持器の一対の爪部の間に挿入する過程を示す。 第十一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器と対向部材であるシール部材の側面図である。 第十二実施形態に係る玉軸受用冠型保持器と対向部材であるシール部材の側面図である。 第十三実施形態に係る玉軸受用冠型保持器と対向部材であるシール部材の側面図である。 第十四実施形態に係る玉軸受用冠型保持器と対向部材であるシール部材の側面図である。 第十四実施形態に係る玉軸受用冠型保持器と対向部材であるシール部材の側面図である。 第十一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器の要部の断面図である。 本発明の第十一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器を備える玉軸受の断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器及び玉軸受について、図面を用いて説明する。
(第一実施形態)
図1~5に示すように、本実施形態の玉軸受用冠型保持器(以下、「冠型保持器」、又は単に「保持器」とも称す)10は、図35~36に示す従来の保持器100と同様に、図34に示す玉軸受1に適用され得る。
冠型保持器10の材料としては、例えば、ポリアミド46やポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)等の樹脂に、10~50wt%の繊維状強化材(例えば、ガラス繊維や炭素繊維)を添加した樹脂組成物が用いられる。
保持器10の材料としては、ポリアミド46やポリアミド66と比べて、曲げ弾性率の大きい樹脂材料を用いることもできる。
具体的には、保持器10は、ポリアミド9T(PA9T)と繊維状強化材とを含む樹脂組成物で構成されてもよい。繊維状強化材は、樹脂組成物中に15質量%以上35質量%以下の割合で添加された、繊維径が6μm以上8μm以下の炭素繊維であることが好ましい。炭素繊維としては、アクリロニトリル繊維を焼成してなるPAN系のものを用いることが好ましい。ポリアミド9Tは、(株)クラレのPA9T「ジェネスタ(登録商標)」に東レ(株)の炭素繊維「トレカ(登録商標)ミドルファイバー」を添加して得ることができる。
保持器10は、ポリアミド10T(PA10T)と繊維状強化材とを含む樹脂組成物で構成されてもよい。繊維状強化材は、樹脂組成物中に20質量%以上50質量%以下の割合で添加された、繊維径が6μm以上13μm以下のガラス繊維、または樹脂組成物中に20質量%以上35質量%以下の割合で添加された、繊維径が5μm以上9μm以下の炭素繊維であることが好ましい。さらに、保持器10は、ヨウ化物系熱安定化剤として、ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの少なくとも一つを含むことが好ましい。ポリアミド10Tとしては、ユニチカ(株)の「XecoT(登録商標)」のガラス繊維入りのものを使用することができる。
保持器10の製造方法としては、金型を利用して射出成形する方法や、3Dプリンターで製造する方法が例示される。射出成形法を用いる場合は、成形金型内に成形体である軸受用保持器に対応する環状のキャビティが形成され、このキャビティの周縁部に設けた樹脂射出ゲートから溶解された樹脂材料(熱可塑性樹脂)が注入され、当該樹脂材料が冷却固化されることによって、保持器10が製造される。
冠型保持器10は、円環状の主部20と、主部20の上面21から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部30と、隣り合う柱部30,30の間に形成され、玉6(図34参照)を保持可能な球面形状のポケット40と、を備える。
主部20の上面21には、周方向に所定の間隔で、複数の球面形状の凹面23が形成されている。この凹面23は、主部20の径方向全幅にわたって形成されており、ポケット40を構成する。
柱部30は、主部20の上面21のうち径方向内側部から軸方向に突出する。したがって、柱部30の径方向外側には、主部20の上面21が露出する。従来の冠型保持器100(図34参照)においては、柱部110は主部109の上面の径方向全幅から軸方向に突出するので、本願の柱部30はこの点で相違する。すなわち、本願では、柱部30(爪部31)の径方向外側の領域(図4で破線で示された領域S1)が削られた構成が採用される。
柱部30は、一対の爪部31,31と、一対の爪部31,31を接続する接続部33と、を有する。
一対の爪部31,31の先端部31A,31Aは、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。また、ポケット40を構成する隣り合う二つの爪部31,31の先端部31A,31A同士の間には、玉6(図34参照)の直径よりも短い幅を有し、かつ、玉6を挿入するための、入口部41が設けられる。
爪部31は、ポケット40を構成する球面形状の周方向第一面31Bと、周方向第一面31Bとは反対側の周方向第二面31Cと、を有する。
一対の爪部31,31の周方向第二面31C,31Cは、それぞれ湾曲形状であり、接続部33の上面33Aで滑らかに接続する。この接続部33の上面33Aは、一対の周方向第二面31C,31Cによって形成される略U字状の底部に相当する。接続部33の上面33A(一対の周方向第二面31C,31Cの底部)は主部20の上面21よりも僅かに上方(軸方向一方側)に位置している(図4参照)。したがって、一対の周方向第二面31C,31Cは、底部(接続部33の上面33A)が比較的下方(軸方向他方側)に位置し、略U字状の凹部を構成する。従来の冠型保持器100(図35参照)においては、接続部の上面(一対の周方向第二面の底部)は主部109の上面よりも、かなり上方に位置する。すなわち、本願では、一対の爪部31,31の周方向第二面31C,31Cに挟まれた領域(図2で破線で示された領域S2)が削られた構成が採用される。
隣り合う二つの爪部31,31の周方向第一面31B,31Bと、主部20の凹面23と、はポケット40を構成する。これら、二つの周方向第一面31B,31Bおよび凹面23は、互いに滑らかに接続し、ポケット40の球状凹面を構成する。ポケット40の球状凹面の曲率半径は、玉6(図34参照)の転動面の曲率半径よりも大きく設定される。
このように、複数のポケット40が主部20によって接続されているため、高速回転時などに保持器10に遠心力が負荷されると、保持器10は主部20を中心に径方向外側に倒れようとする。この倒れを抑制するため、本願では、上述したように領域S1,S2が削られた構成とされる。
遠心力をF、質量をm、回転軸から回転する物体(保持器10)までの距離をr、角速度をωとすると、F=mrωで表される。保持器10(特にポケット40の底部)に発生する応力σと、保持器10の変形量δは、遠心力Fにほぼ比例する。したがって、玉軸受1の軸方向幅、内輪3の内径、および外輪5の外径が一定の場合、応力σおよび変形量δを低減するためには保持器10の質量mを小さくする必要がある。また、保持器10の変形量δは、保持器10の剛性にほぼ反比例するので、保持器10の形状が変わらない場合、保持器10の剛性すなわちヤング率を大きくしてもよい。
図4に示すように、爪部31の外径D1は、主部20の外径D2よりも小さく設定される。すなわち、爪部31(柱部30)の外周面31Dは、主部20の外周面25から径方向に(D2-D1)だけ内側に位置している。なお、爪部31(柱部30)の内周面31Eは、主部20の内周面24と滑らかに接続し、段差の無い保持器10の内周面を構成する。さらに、爪部31の径方向幅t1は、主部20の径方向幅t2の1/2以下に設定される。このように、D1<D2、t1≦(t2/2)と設定されることで、爪部31(柱部30)の径方向外側の領域S1が削られた構成が採用される。
また、柱部30の接続部33の上面33Aから主部20の底面26までの軸方向幅H1は、保持器10の軸方向幅H2の1/2以下に設定される。このようにH1≦(H2/2)と設定されることで、爪部31の背面側(ポケット40の反対側、周方向第二面31C側)の領域S2が削られた構成が採用される。
なお、軸方向幅H1を小さくしすぎると、保持器10の強度が低下する可能性や、保持器10を射出成形で製造する場合に樹脂が流動せずに空隙が生じる可能性がある。保持器10の各部分の径方向幅は、1mm以上であることが好ましい。したがって、軸方向幅H1は、ポケット40の底部における主部20の軸方向幅H3(図2参照)よりも大きくすることが好ましく(H1>H3)、主部20のポケット40(凹面23)が形成されない部分の軸方向幅H4(図4参照)よりも大きくすることがさらに好ましい(H1>H4)。図5には、ポケット40の凹面23の最下面を通る平面で保持器10を切った断面図が示されている。軸方向幅H3は、ポケット40の凹面23の最下面と、主部20の底面26と、の距離である。すなわち、軸方向幅H3は、主部20のうち最も軸方向幅が短い部分の軸方向幅である。このように、軸方向の寸法関係は、H3<H4<H1≦(H2/2)を満たすことが好ましい。
本実施形態の保持器10によれば、D1<D2、t1≦(t2/2)、H1≦(H2/2)を満たすので、保持器10が軽量化され、変形を抑制することができる。したがって、保持器10が、外輪5やシールド板7等に接触することが防止でき、保持器10の摩耗や振動、発熱を抑制できる。
さらに、保持器10を玉軸受1に組み込む際に、保持器10に生じるひずみ(応力)を低減するため、保持器10の主部20の底面26には、軸方向に突出する部分が設けられる。より具体的には、底面26には、軸方向に突出する第一凸部28が設けられている。
第一凸部28は、主部20の底面26の径方向外側部から、軸方向(爪部31が延びる方向とは反対方向)に突出する。本実施形態の第一凸部28は、主部20の底面26の径方向外側部に、全周にわたって設けられる。図3及び図4に示されるように、第一凸部28の径方向幅t4は、主部20の底面26の径方向幅t2と比べて比較的小さく設定されており、第一凸部28と爪部31とは径方向に重ならない。これにより、保持器10のポケット40に玉6が挿入される際に、爪部31は径方向内側に倒れるので、ポケット40を構成する爪部31全体が一様に広がり、保持器10に発生するひずみ(応力)を低減できる。
なお、明細書中では「保持器10のポケット40に玉6が挿入される」と便宜上説明されている部分があるが、より正確には、保持器10の各ポケット40に玉6を挿入していくのではなく、玉軸受1の内輪3及び外輪5の間に配置された複数の玉6に保持器10を嵌め込むことによって、保持器10が玉軸受1に組み込まれる。以下の説明でも「ポケット40に玉6が挿入される」、「ポケット40に玉6が押し込まれる」等と記載されているが、便宜上の記載であることに注意されたい。
なお、第一凸部28は、必ずしも主部20の底面26の全周にわたって設けられる必要はなく、第一凸部28の少なくとも一部が、周方向および径方向においてポケット40と重なる位置(軸方向から見てポケット40と重なる位置)に設けられればよい。この場合は、周方向に所定の間隔で、複数の第一凸部28が、周方向および径方向においてポケット40と重なる位置(軸方向から見てポケット40と重なる位置)に設けられることが好ましい。この場合であっても、保持器10のポケット40に玉6が挿入される際に、爪部31は径方向内側に倒れるので、ポケット40を構成する爪部31全体が一様に広がり、保持器10に発生するひずみ(応力)を低減できる。
(第二実施形態)
図6~9には、第二実施形態に係る保持器10が開示されている。本実施形態の保持器10は、主部20に開口部27が設けられる構成が、第一実施形態の保持器10と異なる。その他の構成は、上記実施形態と同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
主部20には、隣り合うポケット40,40の間に、開口部27が設けられている。開口部27は、主部20の上面21から底面26を軸方向に貫通している。開口部27は、柱部30(一対の爪部31、31)の径方向外側に位置する。すなわち、開口部27は、その少なくとも一部が、柱部30(一対の爪部31、31)と周方向において重なる。図示された開口部27の周壁部は、段付き面やテーパー面等から構成されているが、その形状は特に限定されない。なお、開口部27の周壁部が段付き面やテーパー面等から構成されている場合、単なる平面から構成されている場合と比べて、射出成形時に金型から保持器10が抜きやすくなるため好ましい。
開口部27の径方向幅t3(図8参照)が大きくなりすぎると、保持器10の他の部分の径方向幅(例えば、第一凸部28の径方向幅t4)が小さくなり、強度が低下する可能性や、保持器10を射出成形で製造する場合に樹脂が流動せずに空隙が生じる可能性がある。したがって、保持器10の各部分の幅は、1mm以上であることが好ましい。そこで、開口部27の径方向幅t3は、主部20の径方向幅t2に対して、(t2/3)≦t3≦(t2/2)程度とすることが好ましい。
本実施形態によれば、開口部27が形成されているので、保持器10が軽量化され、変形を抑制することができる。したがって、保持器10が、外輪5やシールド板7等に接触することが防止でき、保持器10の摩耗や振動、発熱を抑制できる。
(第三実施形態)
図10~13には、第三実施形態に係る保持器10が開示されている。本実施形態の保持器10は、主部20の底面26に第二凸部29が設けられる構成が、第一実施形態の保持器10と異なる。その他の構成は、第一実施形態と同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
主部20の底面26には、軸方向(爪部31が延びる方向と逆方向)に突出する第二凸部29が設けられる。第二凸部29は、少なくとも一部が、周方向および径方向においてポケット40と重なるように設けられる。すなわち、主部20の底面26は、複数のポケット40の下方に、周方向に所定間隔で形成された複数の第二凸部29を有している。
第二凸部29は、ポケット40と、周方向および径方向において重なることが好ましい。すなわち、第二凸部29が設けられる周方向範囲および径方向範囲が、ポケット40を構成する主部20の凹面23が設けられる周方向範囲および径方向範囲と略同一であることが好ましい。この場合、第二凸部29の径方向幅t5および周方向幅L2は、ポケット40を構成する主部20の凹面23の径方向幅(主部20の径方向幅t2)および周方向幅L1と略同一である。
図11に示されるように、第二凸部29の周方向両端部の根元部29Aと、ポケット40を構成する主部20の凹面23と、の最短距離をM1とし、第二凸部29の先端面(底面)29Bと、凹面23と、の最短距離をM2とすると、M1>M2であることが好ましい。最短距離M1を小さくしてしまうと、遠心力によりポケット40に発生する応力が、図19に示す断面Bの凹面23よりも、断面Aの凹面23の方が高くなってしまうからである。
また、本実施形態の第一凸部28は、第二凸部29の先端面(底面)29Bから、更に軸方向(爪部31が延びる方向と反対方向)に突出する。すなわち、第一凸部28は、主部20の底面26から直接延びるのではなく、主部20の底面26に設けられた第二凸部29の先端面(底面)29Bから延びている。第一凸部28と、主部20の底面26と、の間に第二凸部29が設けられる、とも言える。
第一凸部28は、第二凸部29の先端面(底面)29Bの径方向外周側に設けられる。第一凸部28の径方向幅t4は、第二凸部29の径方向幅t5よりも小さい。また、第一凸部28の周方向幅と、第二凸部29の周方向幅と、は略同一である。
爪部31の先端部31Aから遠い位置に支点があるほど、ひずみの発生する範囲が広がり(ひずみが分散され)、爪部31に発生するひずみが少なくなる。本実施形態では第二凸部29が設けられるので、保持器10に玉6が組み込まれる際に、爪部31の変形の支点となる第一凸部28を爪部31の先端部31Aからより遠くに位置させることができ、爪部31に発生するひずみを低減できる。
図33(a)~(c)は玉を保持器に組み込む際のひずみ発生領域を示す図であり、(a)は従来例の保持器100を示し、(b)は比較例の保持器10を示し、(c)は第三実施形態の保持器10を示す。図33(b)の比較例の保持器10は、第二凸部29に第一凸部28が設けられない点で、図33(c)の第三実施形態の保持器10と相違する。
図33(a)~(c)に示されるように、保持器100,10のポケット111,40に玉6が押し込まれると、爪部112,31は剛性の低い部分を支点Pとして円周方向に広がろうとする。すなわち、支点Pが爪部112,31の先端部から遠い位置にあるほど、発生するひずみは分散するために最大値が下がる。
図33(a)の従来例では、爪部112はその先端部に近い部分を支点Pに広がろうとするので、爪部112に発生するひずみの領域(ひずみ発生領域D)は狭くなり、ひずみは大きくなる。一方、図33(b)の比較例では、爪部31の先端部から支点Pまでの距離が長くなるため、ひずみ発生領域Dが広がり、従来例よりもひずみは下がる。さらに、図33(c)の第三実施形態では、爪部31の先端部31Aから支点までの距離が長くなるので、ひずみ発生領域Dがさらに広がり、比較例よりもひずみはさらに下がる。
(第四実施形態)
図14~21には、第四実施形態に係る保持器10が開示されている。本実施形態の保持器10は、主部20に開口部27が設けられる構成と、主部20の底面26に第二凸部29が設けられる構成と、が第一実施形態と異なる。
本実施形態の保持器10は、第二実施形態の保持器10の構成(開口部27)と、第三実施形態の保持器10の構成(第二凸部29)と、を組み合わせた構成を有する。
主部20には、隣り合うポケット40,40の間に、開口部27が設けられている。開口部27は、主部20の上面21から底面26を軸方向に貫通している。開口部27は、柱部30(一対の爪部31、31)の径方向外側に位置する。すなわち、開口部27は、その少なくとも一部が、柱部30(一対の爪部31、31)と周方向において重なる。図示された開口部27の周壁部は、段付き面やテーパー面等から構成されているが、その形状は特に限定されない。
開口部27の径方向幅t3(図17参照)が大きくなりすぎると、保持器10の他の部分の径方向幅(例えば、第一凸部28の径方向幅t4)が小さくなり、強度が低下する可能性や、保持器10を射出成形で製造する場合に樹脂が流動せずに空隙が生じる可能性がある。したがって、保持器10の各部分の幅は、1mm以上であることが好ましい。そこで、開口部27の径方向幅t3は、主部20の径方向幅t2に対して、(t2/3)≦t3≦(t2/2)程度とすることが好ましい。
本実施形態によれば、開口部27が形成されているので、保持器10が軽量化され、変形を抑制することができる。したがって、保持器10が、外輪5やシールド板7等に接触することが防止でき、保持器10の摩耗や振動、発熱を抑制できる。
主部20の底面26には、軸方向(爪部31が延びる方向と逆方向)に突出する第二凸部29が設けられる。第二凸部29は、少なくとも一部が、周方向および径方向においてポケット40と重なるように設けられる。すなわち、主部20の底面26は、複数のポケット40の下方に、周方向に所定間隔で形成された複数の第二凸部29を有している。
第二凸部29は、ポケット40と、周方向および径方向において重なることが好ましい。すなわち、第二凸部29が設けられる周方向範囲および径方向範囲が、ポケット40を構成する主部20の凹面23が設けられる周方向範囲および径方向範囲と略同一であることが好ましい。この場合、第二凸部29の径方向幅t5および周方向幅L2は、ポケット40を構成する主部20の凹面23の径方向幅(主部20の径方向幅t2)および周方向幅L1と略同一である。
図19~21に示すように、第二凸部29の周方向両端部の根元部29Aと、ポケット40を構成する主部20の凹面23と、の最短距離をM1とし、第二凸部29の先端面(底面)29Bと、凹面23と、の最短距離をM2とすると、M1>M2であることが好ましい。最短距離M1を小さくしてしまうと、遠心力によりポケット40に発生する応力が、図19に示す断面Bの凹面23よりも、断面Aの凹面23の方が高くなってしまうからである。
また、本実施形態の第一凸部28は、第二凸部29の先端面(底面)29Bから、更に軸方向(爪部31が延びる方向と反対方向)に突出する。すなわち、第一凸部28は、主部20の底面26から直接延びるのではなく、主部20の底面26に設けられた第二凸部29の先端面(底面)29Bから延びている。第一凸部28と、主部20の底面26と、の間に第二凸部29が設けられる、とも言える。
第一凸部28は、第二凸部29の先端面29Bの径方向外周側に設けられる。第一凸部28の径方向幅t4は、第二凸部29の径方向幅t5よりも小さい。また、第一凸部28の周方向幅と、第二凸部29の周方向幅と、は略同一である。
爪部31の先端部31Aから遠い位置に支点があるほど、ひずみの発生する範囲が広がり(ひずみが分散され)、爪部31に発生するひずみが少なくなる。本実施形態では第二凸部29が設けられるので、保持器10に玉6が組み込まれる際に、爪部31の変形の支点となる第一凸部28を爪部31の先端部31Aからより遠くに位置させることができ、爪部31に発生するひずみを低減できる。
(第五実施形態)
図22には、第五実施形態に係る保持器10が開示されている。本実施形態の保持器10は、爪部31の径方向寸法が、上記実施形態の保持器10と異なる。その他の構成は、第四実施形態と同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
本実施形態の保持器10においては、爪部31の径方向幅が、主部20側から爪部31の先端部31A側に向かうほど小さくなっている。すなわち、図22中の爪部31の径方向幅a1,a2,a3の関係は、a1<a2<a3を満たす。
このような構成によれば、爪部31に発生する応力やひずみを軽減させることができる。特に、爪部31の先端部31Aが玉6から力を受けるときに、効果的である。また、保持器10を射出成形する場合、保持器10を金型から抜きやすくなるので、効果的である。
なお、本実施形態では、第四実施形態の保持器10(第二凸部29および開口部27を有する)において、爪部31の径方向幅a1,a2,a3の関係をa1<a2<a3を満たすように構成した例を図示したが、本願発明は当該構成に限定されない。すなわち、第一~第三実施形態の保持器10において、爪部31の径方向幅a1,a2,a3の関係をa1<a2<a3を満たすように構成しても構わない。
(第六実施形態)
図23には、第六実施形態に係る保持器10が開示されている。本実施形態の保持器10は、ポケット40を構成する隣り合う二つの爪部31,31の周方向第二面31C,31Cの間の周方向距離が、第四実施形態の保持器10と異なる。その他の構成は、上記実施形態と同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
本実施形態の保持器10においては、ポケット40を構成する隣り合う二つの爪部31,31において、二つの周方向第二面31C,31Cの間の周方向距離が、主部20側から爪部31の先端部31Aに向かうほど小さくなっている。すなわち、図23中の隣り合う二つの爪部31,31の周方向第二面31C,31Cの間の周方向距離b1,b2,b3の関係は、b1<b2<b3を満たす。
このような構成によれば、爪部31に発生する応力やひずみを軽減させることができる。特に、爪部31の先端部31Aが玉6から力を受けるときに、効果的である。また、保持器10を射出成形する場合、保持器10を金型から抜きやすくなるので、効果的である。
なお、本実施形態では、第四実施形態の保持器10(第二凸部29および開口部27を有する)において、周方向距離b1,b2,b3の関係がb1<b2<b3を満たすように構成した例を図示したが、本願発明は当該構成に限定されない。すなわち、第一~第三および第五実施形態の保持器10において、周方向距離b1,b2,b3の関係がb1<b2<b3を満たすように構成しても構わない。
(実施例)
本発明の効果を確かめるために、有限要素法による解析を実施した。解析対象の保持器10は、内径:35mmの軸受に使用される冠型樹脂保持器である。従来の冠型樹脂保持器を基準に、本発明の実施形態に基づき、形状を設定した。実施例としては図14~21に示した第四実施形態の保持器10を採用し、比較例としては図24~27に示した保持器10を採用した。比較例の保持器10は、実施例(第四実施形態)の保持器10と比べて、第一凸部28を有さない点が異なる。第一凸部28以外の構成は、比較例および実施例において同一である。
実施例の保持器10のサイズについて、保持器10の内径は49mm、主部20の最大外径は58mm、保持器10の軸方向高さは第一凸部28を含めて10mm、柱部30の接続部33の軸方向厚さH1は3mm(図35,36のような従来例では、7mm程度である)とした。爪部31の先端部31Aの径方向幅は1.2mm、主部20の開口部27の径方向幅は2mm、第二凸部29の軸方向幅(主部20の底面26から第二凸部29の先端面29Bまでの距離)は0.9mm、第一凸部28の軸方向幅は0.2mm、第一凸部28の径方向幅は1.1mmとした。
第一凸部28を有さない比較例の保持器10のサイズについて、保持器10の軸方向高さは10mmとし、他の寸法は第一凸部28を有する実施例の保持器10と等しくした。
実施例および比較例の保持器10を、内輪3、外輪5、および玉6を有する玉軸受1に挿入することを仮定し、図28~29に示すように、保持器10の一部をモデル化して、保持器10に玉6を押し込む解析を行い、爪部31に発生する最大主ひずみの最大値を算出した。
実施例および比較例の保持器10の物性値として、ポリアミド46(PA46)に相当する値を用いた。具体的には、実施例および比較例の保持器10のヤング率を6500MPa、ポアソン比を0.4とした。
解析した結果、図29に示すように、玉6の中心が保持器10の爪部31の先端部31A(ポケット40の入口部41)に達したときに、ひずみが最大となった。図25のD-D断面図である図31に示されるように、比較例の保持器10は爪部31が弓なりにそっているのに対して、図30のC-C断面図である図32に示されるように、実施例の保持器10の爪部31は弓なりにそっていないことがわかる。なお、示した図の変形倍率は10倍とした。
この解析結果によれば、第一凸部28を設けることで、ひずみが減少することがわかる。比較例の保持器10の爪部31に生じる最大ひずみを1.0とすると、実施例の保持器10の爪部31に生じる最大ひずみは0.9となり、10%下がった。
(爪部に生じるひずみ抑制の原理)
上述した通り、本願の各実施形態の保持器10によれば、爪部31に生じるひずみが抑制されるのであるが、その原理について、以下詳細に説明する。
各実施形態の保持器10は、図37に示すように、外輪5と内輪3との間に複数個の玉6がすでに組み込まれた玉軸受1に、治具50を用いて組み込まれる。治具50は、円環形状である。治具50の内径及び外径は、保持器10の内径及び外径と略等しく、保持器10を玉軸受1に向かって軸方向に付勢可能である。図38には、玉軸受1に保持器10が組み込まれた状態が示される。
先ず、比較例として、特許文献3(特開平11-264418号公報)に記載された保持器200について考察する。図39は比較例に係る保持器200の一部の斜視図であり、図40は図39のE-E断面矢視図である。
保持器200は、冠型保持器であり、円環状の主部220と、主部220の上面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部230と、隣り合う柱部230,230の間に形成され、玉を保持可能な球面形状のポケット240と、を備える。
柱部230は主部220の上面の径方向全幅から軸方向に突出する。柱部230は、一対の爪部231,231と、一対の爪部231,231を接続する接続部233と、を有する。
主部220の底面には、軸方向(爪部231が延びる方向と逆方向)に突出する凸部229が設けられる。凸部229は、ポケット240と、周方向および径方向において重なる。すなわち、凸部229が設けられる周方向範囲および径方向範囲が、ポケット240が設けられる周方向範囲および径方向範囲と略同一である。したがって、凸部229は、本願の各実施形態の第二凸部29に対応する。なお、保持器200は、本願の各実施形態の第一凸部28に相当するものは備えていない。
図40において、主部220の外径はD2’で示され、主部の内径はd2’で示され、爪部231の外径はD1’で示され、爪部の内径はd1’で示されている。主部220及び爪部231の外径D2’,D1’は等しく(D2’=D1’)、主部220及び爪部231の内径d2’,d1’は等しい(d2’=d1’)。
これに対して、図14~21に示した、第四実施形態の保持器10を例に、本発明の特徴である爪部31の位置および第一凸部28が及ぼす作用・機能について、以下に、説明する。
図41~43には、第四実施形態の保持器10が、治具50によって玉6に組み込まれる様子が示されている。図41は、第四実施形態に係る保持器10の一部を径方向外側から見た図である。図42は、第四実施形態に係る保持器10の一部を周方向から見た一部断面図である。図43は、第四実施形態に係る保持器10の一部を上面側から見た図である。なお、図41~43において、内輪3及び外輪5の図示は省略されている。
図41~43には、玉6がポケット40に挿入される際、ポケット40を構成する一対の爪部31の周方向第一面31Bにかかる力が示されている。玉6は、外輪5と内輪3との間に組み込まれているので、径方向にはほとんど動くことができない。玉6が一対の爪部31の先端に接触し始めると、図41に示されるように、一対の爪部31のポケット40を構成する周方向第一面31Bには、それぞれ法線方向の力F,Fがかかる。図42及び図43には、力F,Fをそれぞれ軸方向(図41の上下方向)の分力Fz,Fzと、軸方向に垂直方向の分力Fr,Frと、に分けて示されている。なお、図42には、一対の爪部31のうち片方のみが示されているので、軸方向の力Fz,Fzのうち、Fの分力Fzのみが示され、Fの分力Fzは示されていない。
図42に示されるように、分力Fzは爪部31の先端から、ポケット40の底部に向かって力がかかっている。図示されていないが、分力Fzも同様である。
図43には、力FとFの軸方向に垂直方向の分力FrとFrが示されている。ここで、玉6と爪部31との接触部分はある範囲をもっているので、合力として1点で接触するとした。爪部31の周方向第一面31Bは、大部分において球面形状であり、且つ、爪部31の先端付近においては円筒面形状である。したがって、爪部31の周方向第一面31Bは、軸方向に垂直な断面形状が円弧形状になっており、玉6の中心位置と同じ同心円になっている。したがって、力FrとFrが負荷される方向は、爪部31の周方向第一面31Bの法線方向であり、且つ、力FrとFrは玉6の中心位置を通る。
本願の保持器10においては、第一凸部28は径方向外側に設けられ、爪部31は径方向内側に設けられる。したがって、図42に示されるように爪部31に軸方向の分力Fzが負荷された場合、治具50と接触している第一凸部28の内周縁を支点Pとして、爪部31が内周側に倒れようとする向きのモーメントMが働く。
また、本願の保持器10は樹脂製であり、且つ、主部20の軸方向の厚みが径方向の幅に比べて十分薄い。したがって、爪部31に軸方向の力FzとFzがかかると、主部20がねじれて、弾性変形し、図44に示されるように、径方向内側に傾く。なお、図44において、弾性変形後の保持器10が実線で示され、弾性変形前の保持器10が破線で示されている。主部20が径方向内側に傾くと、それに伴い、爪部31も径方向内側に傾く。
本願の保持器10の爪部31の径方向幅t1は主部20の径方向幅t2の1/2以下であり(図18参照)、爪部31は保持器10のピッチ円直径PCDよりも径方向内側に配置されている。したがって、爪部31が径方向内側に傾くと、図45に示されるように、爪部31の先端によって構成される、もっとも狭いポケット40の入口部の半径r0は、あたかもr1のように広がる。なお、図45において、弾性変形後の保持器10が実線で示され、弾性変形前の保持器10が破線で示されている。
玉6がさらに軸方向に移動して、ポケット40に挿入されるとき、玉6は、外輪5と内輪3との間に組み込まれているので、径方向にはほとんど動くことができない。したがって、ポケット40の入口部の半径がr1に広がることにより、軸方向に垂直方向の分力Fr,Fr(図43参照)によって爪部31を径方向に押し広げる量は少なくてすむので、爪部31に発生するひずみや応力が低減される。
次に、図39,40の比較例の保持器200を玉軸受に組み込む場合を考察する。
図46~48には、比較例の保持器200が玉6に組み込まれる様子が示されている。図46は、比較例に係る保持器200の一部を径方向外側から見た図である。図47は、比較例に係る保持器200の一部を周方向から見た一部断面図である。図48は、比較例に係る保持器10の一部を上面側から見た図である。
図46~48には、玉6がポケット240に挿入される際、ポケット240を構成する一対の爪部231の内周面に負荷される力が示されている。玉6は、外輪5と内輪3との間に組み込まれているので、径方向にはほとんど動くことができない。玉6が一対の爪部231の先端に接触し始めると、図46に示されるように、一対の爪部231のポケット240を構成する内周面には、それぞれ法線方向の力F1,F2がかかる。図47及び図48には、力F1,F2をそれぞれ軸方向(図47の上下方向)の分力Fz1,Fz2と、軸方向に垂直方向の分力Fr1,Fr2と、に分けて示されている。なお、図47には、一対の爪部231のうち片方のみが示されているので、軸方向の力Fz1,Fz2のうち、F1の分力Fz1のみが示され、F2の分力Fz2は示されていない。
図47に示されるように、分力Fz1は爪部31の先端から、ポケット40の底部に向かって力が負荷されている。図示されていないが、分力Fz2も同様である。
図48には、力F1とF2の軸方向に垂直方向の分力Fr1とFr2が示されている。ここで、玉6と爪部231との接触部分はある範囲をもっているので、合力として1点で接触するとした。
爪部231に軸方向の力Fzがかかると、合力として1点で表した力Fzは、保持器200のピッチ円直径PCD’上にあるため、爪部231は軸方向又は周方向に変形するだけであり、径方向に倒れることはほとんどないと考えられる。したがって、爪部31の形状や設ける位置を工夫し、且つ第一凸部28を設けた本願の保持器10のような効果は、比較例の保持器200では得られない。
次に、他の比較例として、図49~50に示されるように、第四実施形態の保持器10が第一凸部28を有さない場合を考察する。すなわち、当該比較例の保持器10には、第二凸部29は設けられるが、第二凸部29に第一凸部28が設けられない。
図49は、比較例に係る保持器10の一部を径方向内側から見た図である。図50は、比較例に係る保持器10の一部を周方向から見た一部断面図である。図51は、比較例に係る保持器10の一部を上面側から見た図である。図49及び図50には、爪部31の先端に接触し始めたときの玉6が破線で示され、ポケット40の入り口まで入ったときの玉6が実線で示されている。また、図49~図51には、弾性変形前の保持器10が破線で示され、弾性変形後の保持器10が実線で示されている。
図49及び図50に示された第二凸部29と治具50との接触部分Aから分かるように、第二凸部29の全面が治具50と接触しており、第二凸部29と治具50との間に隙間は生じない。玉6が保持器10に挿入される際に、爪部31の先端に働く力Fr10とFr20によって、爪部31を押し広げようとするが、第二凸部29の全面が治具50と接触しているため、第二凸部29はほとんど変形することができず、爪部31だけが変形可能となる。したがって、比較例の保持器10では、本願のように第一凸部28が設けられた場合とは異なり、爪部31にひずみが集中してしまう。
対して、本願の第四実施形態のように、第二凸部29だけではなく第一凸部28も有する保持器10を、玉6に組み込んで行く場合を、図52~54を参照して説明する。
図52は、第四実施形態に係る保持器10の一部を径方向内側から見た図である。図53は、第四実施形態に係る保持器10の一部を周方向から見た一部断面図である。図54は、第四実施形態に係る保持器10の一部を上面側から見た図である。図52及び図53には、爪部31の先端に接触し始めたときの玉6が破線で示され、ポケット40の入り口まで入ったときの玉6が実線で示されている。また、図52~図54には、弾性変形前の保持器10が破線で示され、弾性変形後の保持器10が実線で示されている。
このとき、第二凸部29は、治具50と接触することはない。仮に、第二凸部29が治具50と接触する場合であっても、第二凸部29の内周縁は円弧形状であるので、第二凸部29の内周縁の周方向両端の二点のみがわずかに治具50に接触するのみである。また、第一凸部28の内周縁は治具50と接触する。
このような接触状態となる理由は、玉6が径方向内側に配置された爪部31を軸方向に押すことによって、径方向外側に配置された第一凸部28の内周縁を支点Pとして、爪部31が径方向内側に倒れようとするからである。
爪部31が保持器10の径方向内側のみにあるため、保持器10のうち爪部31のある部分の軸方向反対側の部分、すなわち、第二凸部29の径方向内側部は、治具50とはほとんど接触しない。したがって、第二凸部29と治具50との間には、隙間が生じる。
玉6が保持器10に挿入される際に、爪部31の先端に働く力Fr,Frによって爪部31を押し広げようとするが、第二凸部29は治具50と接触していないために、第二凸部29の径方向内側部は変形することが可能であり、爪部31とともに変形する。
また、主部20は、軸方向の厚みが径方向の幅に比べて十分薄いため、爪部31に軸方向の力Fz,Fzが負荷されると、主部20がねじれて、弾性変形し、径方向内側に傾く。主部20が径方向内側に傾くと、それに伴い、爪部31も径方向内側に傾く。
これにより、ポケット40も広がるので、玉6が爪部31を押し広げようとする力Fr,Frは、比較例のように第一凸部28がなく第二凸部29のみが設けられた場合に
爪部31に働く力Fr10,Fr20よりも小さくてすむ(Fr<Fr10かつFr<Fr20)ので、爪部31の変形量も小さくなる。
このように、本願の保持器10においては、爪部31に加えて第二凸部29が変形可能であるので、爪部31に働く力が小さくなり、爪部31に生じるひずみが低減される。
以下、本発明の第七~第十実施形態に係る玉軸受用冠型保持器及び玉軸受について、図面を用いて説明する。ここで玉軸受は内外輪間で複数の玉を公転方向に等配状態にして置き、そこに保持器を挿入して組み立てるが、以下の説明では理解を容易にするために、保持器に玉を挿入する態様で説明する。
(第七実施形態)
図55~57に示すように、本実施形態の玉軸受用冠型保持器(以下、「冠型保持器」、又は単に「保持器」とも称す)210は、図35~36に示す従来の保持器100と同様に、図34に示す玉軸受1に適用される。
冠型保持器210は、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料、または、他の樹脂材料からなる。また、保持器210の強度を向上させるために、繊維状強化材(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロースナノファイバー等)を5~50wt%添加した樹脂組成物でもよい。保持器210の製造方法としては、金型を利用して射出成形する方法や、3Dプリンターで製造する方法が例示される。
冠型保持器210は、円環状の主部220と、主部220の上面221から周方向に所定の間隔で軸方向一方側(図中、上方)に突出する複数の柱部230と、隣り合う柱部230,230の間に形成され、玉6(図34参照)を保持可能な球面形状のポケット240と、を備える。
主部220の上面221には、周方向に所定の間隔で、複数の球面形状の凹面223が形成されている。この凹面223は、主部220の径方向全幅にわたって形成されており、ポケット240を構成する。
柱部230は、主部220の上面221のうち径方向内側部から軸方向一方側に突出する。したがって、柱部230の外周面231Dは、主部220の外周面225よりも径方向内側に位置し、柱部230の径方向外側には、主部220の上面221が露出する。従来の冠型保持器100(図35~36参照)においては、柱部110は主部109の上面の径方向全幅から軸方向に突出するので、本願の柱部230はこの点で相違する。
柱部230は、一対の爪部231,231と、一対の爪部231,231を接続する接続部233と、を有する。
一対の爪部231,231の先端部231A,231Aは、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。また、ポケット240を構成する隣り合う二つの爪部231,231の先端部231A,231A同士の間には、玉6(図34参照)の直径よりも短いポケット開口径241Aを有し、かつ、軸方向一方側とは逆方向である軸方向他方側に向かって玉6を挿入するための、ポケット開口部241が設けられる。
爪部231は、ポケット240を構成する球面形状の周方向第一面231Bと、周方向第一面231Bとは反対側の周方向第二面231Cと、を有する。
一対の爪部231,231の周方向第二面231C,231Cは、それぞれ湾曲形状であり、接続部233によって互いに接続する。
隣り合う二つの爪部231,231の周方向第一面231B,231Bと、主部220の凹面223と、はポケット240を構成する。これら、二つの周方向第一面231B,231Bおよび凹面223は、互いに滑らかに接続し、ポケット240の球状凹面を構成する。ポケット240の球状凹面の曲率半径は、玉6(図34参照)の転動面の曲率半径よりも大きく設定される。爪部231(柱部230)の内周面231Eは、主部220の内周面224と滑らかに接続し、段差の無い保持器210の内周面を構成する。
このような保持器210のポケット開口部241には、玉6が軸方向一方側(図中、上方)から、軸方向一方側と逆方向である軸方向他方側(図中、下方)に向かって挿入される。爪部231の先端部231Aのうち、最もポケット240側に位置してポケット開口部241を構成する部分を、最先端部231Fと呼ぶ。最先端部231Fは、玉6がポケット開口部241に挿入される際に最初に接触する部分である。
本実施形態の最先端部231Fは、爪部231の先端部231Aの径方向全幅にわたって、平坦状に延びている。より具体的には、最先端部231Fは、周方向から見て、径方向幅a1および軸方向幅a2を有する長方形状(a1>a2)である。最先端部231Fの全体は、ポケット240の径方向中央部(主部220の凹面223の径方向中央部)Mよりも径方向内側に配置される。すなわち、最先端部231Fの径方向幅a1は、ポケット240の底(凹面223)の径方向幅bの半分以下(a1≦b/2)である。
上記のように、最先端部231Fの全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に位置する場合、主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出した形状とされる。
本実施形態では、主部220の底面226に、軸方向他方側に突出する部分である凸部228が設けられる。そして、主部220の内周面224から凸部228の内周面までの径方向距離cがポケット240の底(凹面223)の径方向幅bの半分以上(b/2≦c)であるので、凸部228の全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置される。このような構成により、主部220の底面226は、径方向内側部分226Aに比べて、径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
本実施形態の凸部228は、主部220の底面226の径方向外側部に、全周にわたって設けられる。
なお、凸部228は、必ずしも主部220の底面226の全周にわたって設けられる必要はなく、凸部228の少なくとも一部が、周方向および径方向においてポケット240と重なる位置(軸方向から見てポケット240と重なる位置)に設けられればよい。この場合は、周方向に所定の間隔で、複数の凸部228が、周方向および径方向においてポケット240と重なる位置(軸方向から見てポケット240と重なる位置)に設けられることが好ましい。
図58~59には、保持器210が板状部材250上に載置された状態で、保持器210に玉6が組み込まれる様子が示されている。図58には、玉6が保持器210に組み込まれる直前の様子が示されており、図59には、玉6が保持器210に組み込まれている最中の様子が示されている。
図58~59に示されるように、底面226に凸部228が設けられているので、玉6が板状部材250上の保持器210に組み込まれる際、爪部231が凸部228がある位置とは逆方向に倒れる。すなわち、凸部228が径方向外側にあるので、爪部231は径方向内側に倒れる。図59には、矢印m1で、爪部231が倒れる方向が示されている。また、玉6の組込み前(図58)と、玉6が組み込まれている最中(図59)と、の間の、爪部231の先端部231Aの径方向動き量がdで示されている。
このように、爪部231の先端部231A付近のポケット開口部241が径方向内側に動くため、ポケット開口部241と玉6とが接触する位置も径方向内側にずれる。したがって、玉6が組み込まれる際、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
図6061にも、図58~59と同様に、保持器210が板状部材250(板状部材250は、実際の軸受組立工程において、保持器210を複数の玉6に組み込むための治具に相当する。)上に載置された状態で、保持器210に玉6が組み込まれる様子が示されている。図60には、玉6が保持器210に組み込まれる直前の様子が示されており、図61には、玉6が保持器210に組み込まれている最中の様子が示されている。図61には、矢印m2で、爪部231が倒れる方向が示されている。
図6061に示されるように、玉6を保持器210に組み込む際に爪部231が倒れる理由は、玉6と保持器210(最先端部231F)が接触する点(負荷点Q)と、凸部228と板状部材250との接触点(支持点R)と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていないため、釣り合おうとして爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていくためである。すなわち、図61に示すように、玉6から保持器210への接触負荷f1と、板状部材250から保持器210への接触負荷f2,f3と、が釣り合うように爪部231が倒れながら、玉6がポケット240に組み込まれる。
このような保持器210によれば、伸びが少ない材料を利用した場合でも、ポケット開口径241Aを大きくすることなく、玉6を組み込むことができる.
(解析結果)
保持器に玉を組み込んだ際に、保持器に生じるひずみを解析した結果を図62(a)~図63(c)に示す。この解析結果は、玉6を保持器210に徐々に押し込んでいった際に、ポケット開口部241の位置で玉6の直径が最大になった時の結果である。
図62(a)は、第七実施形態の保持器210を示し、図62(b)~(c)は、この第七実施形態の保持器210に玉6を組み込んだ場合に、保持器210に生じるひずみを示す。図62(b)は保持器210を周方向から見た図であり、図62(c)は保持器210を軸方向一方側(上方)から見た図である。
図63(a)は、比較例の保持器210を示し、図63(b)~(c)は、この比較例の保持器210に玉6を組み込んだ場合に、保持器210に生じるひずみを示す。図63(b)は保持器210を周方向から見た図であり、図63(c)は保持器210を軸方向一方側(上方)から見た図である。なお、比較例の保持器210では、主部220の底面226に凸部228が設けられていない。凸部228以外の構成については、第七実施形態および比較例の保持器210で同一である。
比較例の保持器210に生じる最大ひずみは3.7%であるのに対し、第七実施形態の保持器210に生じる最大ひずみは2.3%であり、第七実施形態の保持器210ではひずみの発生が抑制できることが明らかとなった。
ここで、表1には、熱可塑性樹脂材料の曲げ破断ひずみが示されている。
Figure 0007452710000001
なお、「PA46-GF25」は、ポリアミド46にガラス繊維を25wt%添加したものであり、「PA9T-GF25」は、ポリアミド9Tにガラス繊維を25wt%添加したものであり、「PA9T-CF20」はポリアミド9Tに炭素繊維を20wt%添加したものであり、「PA10T-CF20」は、ポリアミド10Tに炭素繊維を20wt%添加したものである。
表1に示す熱可塑性樹脂のうち、曲げ破断ひずみが小さい材料(PA9T-GF25、PA9T-CF20、PA10T-CF20)であっても、第七実施形態の保持器210の材料として採用することが可能である。このように、第七実施形態の保持器210によれば、ひずみの発生を抑制できるので、伸びが小さい材料であってもポケット開口径241Aを大きくすることなく、玉6を組み込むことが可能である。
(第七実施形態の変形例)
なお、本実施形態では、柱部230が主部220の上面221のうち径方向内側部から軸方向一方側に突出し、爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置されていた。しかし、本発明は当該構成に限定されず、図64に示されるように、柱部230が主部220の上面のうち径方向外側部から軸方向一方側に突出し、爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置されてもよい。
爪部231の最先端部231Fの全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置される場合、主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
具体的には、主部220の底面226に、軸方向他方側に突出する凸部228が設けられる。そして、凸部228の全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置される。このような構成により、主部220の底面226は、径方向外側部分226Bに比べて、径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210(最先端部231F)が接触する点(負荷点Q)と、凸部228と板状部材250との接触点(支持点R)と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていないため、釣り合おうとして爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向外側にあるのに対して、凸部228が径方向内側にあるので、爪部231は径方向外側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向外側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第八実施形態)
図65には、第八実施形態に係る保持器210が開示されている。本実施形態の保持器210は、主部220の底面226が傾斜面である構成が、第七実施形態の保持器210と異なる。その他の構成は、上記実施形態と略同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
本実施形態では、第七実施形態と同様、爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置されている。しかし、第七実施形態とは異なり、主部220の底面226には凸部228が設けられていない。
主部220の底面には、軸方向他方側に突出する部分が設けられる。すなわち、主部220の底面226は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって軸方向他方側(図中、下方)に突出する傾斜面である。この底面226の傾斜面の径方向最外側部226C(最も軸方向他方側に突出した部分)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置されている。すなわち、主部220の内周面224から径方向最外側部226Cまでの径方向距離eが、ポケット240の底(凹面223)の径方向幅bの半分以上に設定されている(e≧b/2)。
このように、主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210(最先端部231F)との接触点と、底面(傾斜面)226の径方向最外側部226Cと板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていないため、釣り合おうとして爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向内側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の径方向最外側部226Cが径方向外側にあるので、爪部231は径方向内側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向内側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第八実施形態の変形例)
なお、本実施形態では、柱部230が主部220の上面221のうち径方向内側部から軸方向一方側に突出し、爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置されていた。しかし、本発明は当該構成に限定されず、図66に示されるように、柱部230が主部220の上面221のうち径方向外側部から軸方向一方側に突出し、爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置されてもよい。
爪部231の最先端部231Fの全体(ポケット開口部241)がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置される場合、主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
具体的には、主部220の底面226は、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって軸方向他方側(図中、下方)に突出する傾斜面である。この底面226の傾斜面の径方向最内側部226D(最も軸方向他方側に突出した部分)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置されている。このような構成により、主部220の底面226は、径方向外側部分226Bに比べて、径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210(最先端部231F)との接触点と、底面(傾斜面)226の径方向最内側部226Dと板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていないため、釣り合おうとして爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向外側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の径方向最内側部226Dが径方向内側にあるので、爪部231は径方向外側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向外側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第九実施形態)
図67には、第九実施形態に係る保持器210が開示されている。本実施形態の保持器210は、主部220の底面226が傾斜面である構成および爪部231の先端部231Aが傾斜面である構成が、上述の実施形態の保持器210と異なる。その他の構成は、上記実施形態と略同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
本実施形態では、爪部231の先端部231Aが、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面とされる。これにより、ポケット開口部241も、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。したがって、ポケット開口部241を構成する部分であり、且つ、玉6が保持器210に挿入される際に最初に接触する部分である、爪部231の最先端部231Fは、ポケット開口部241の径方向最外側部241Bに位置する。そして、爪部231の最先端部231F(径方向最外側部241B)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に位置し、ポケット開口部241の径方向最内側部241Cは、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に位置する。
主部220の底面226は、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって軸方向他方側(図中、下方)に突出する傾斜面である。この底面226の傾斜面の径方向最内側部226D(最も軸方向他方側に突出した部分)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置されている。
このように、主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
すなわち、底面226の径方向最内側部226Dからポケット開口部241の径方向最外側部241B(最先端部231F)の軸方向一方側(図中、上方)端部までの軸方向距離をgとし、底面226の径方向最内側部226Dからポケット開口部241の径方向最内側部241Cの軸方向一方側(図中、上方)端部までの軸方向距離をhとし、底面226の径方向最内側部226Dから底面226の径方向最外側部226Cまでの軸方向距離をiとすると、g>hかつi>0の関係を満たす。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210の爪部231の最先端部231F(径方向最外側部241B)との接触点と、底面(傾斜面)226の径方向最内側部226Dと板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていない。したがって、負荷方向が釣り合おうとして、底面226の径方向最外側部226Cと板状部材250との軸方向他方側(図中、下方)にある隙間(径方向距離i)を埋めるように、爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向外側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の径方向最内側部226Dが径方向内側にあるので、爪部231は径方向外側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向外側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第九実施形態の変形例)
なお、本実施形態では、爪部231の先端部231Aが、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面とされることにより、ポケット開口部241も、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。これにより、爪部231の最先端部231Fが、ポケット開口部241の径方向最外側部241Bに位置していた。
しかし、本発明は当該構成に限定されず、図68に示されるように、爪部231の先端部231Aが、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面としてもよい。この場合、ポケット開口部241も、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。したがって、ポケット開口部241を構成する部分であり、且つ、玉6が挿入される際に最初に接触する部分である、爪部231の最先端部231Fが、ポケット開口部241の径方向最内側部241Cに位置する。
この場合、爪部231の最先端部231F(径方向最内側部241C)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に位置し、ポケット開口部241の径方向最外側部241Bは、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に位置する。
主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
具体的には、主部220の底面226は、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって軸方向他方側(図中、下方)に突出する傾斜面である。この底面226の傾斜面の径方向最外側部226C(最も軸方向他方側に突出した部分)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置されている。このような構成により、主部220の底面226は、径方向内側部分226Aに比べて、径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210の爪部231の最先端部231F(径方向最内側部241C)との接触点と、底面(傾斜面)226の径方向最外側部226Cと板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていない。したがって、負荷方向が釣り合おうとして、底面226の径方向最内側部226Dと板状部材250との軸方向他方側(図中、下方)にある隙間を埋めるように、爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向内側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の径方向最外側部226Cが径方向外側にあるので、爪部231は径方向内側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向内側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第十実施形態)
図69には、第十実施形態に係る保持器210が開示されている。本実施形態の保持器210は、主部220の底面226に凸部228が設けられる構成および爪部231の先端部231Aが傾斜面である構成が、上述の実施形態の保持器210と異なる。その他の構成は、上記実施形態と略同一であるので、図面に符号を付すことでその説明を省略する。
本実施形態では、爪部231の先端部231Aが、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面とされる。これにより、ポケット開口部241も、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。したがって、ポケット開口部241を構成する部分であり、且つ、玉6が保持器210に挿入される際に最初に接触する部分である、爪部231の最先端部231Fは、ポケット開口部241の径方向最外側部241Bに位置する。そして、爪部231の最先端部231F(径方向最外側部241B)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に位置し、ポケット開口部241の径方向最内側部241Cは、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に位置する。
主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
具体的には、主部220の底面226に、軸方向他方側に突出する凸部228が設けられる。そして、凸部228の全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に配置される。すなわち、主部220の外周面225から凸部228の外周面までの径方向距離jは、ポケット240の底(凹面223)の径方向幅bの半分以上(j≧b/2)である。このような構成により、主部220の底面226は、径方向外側部分226Bに比べて、径方向内側部分226Aにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
すなわち、底面226の径方向最内側部226Dからポケット開口部241の径方向最外側部241B(最先端部231F)の軸方向一方側(図中、上方)端部までの軸方向距離をgとし、底面226の径方向最内側部226Dからポケット開口部241の径方向最内側部241Cの軸方向一方側(図中、上方)端部までの軸方向距離をhとし、底面226の径方向最内側部226Dから底面226の径方向最外側部226Cの外周面までの軸方向距離をiとすると、g>hかつi>0の関係を満たす。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210の爪部231の最先端部231F(径方向最外側部241B)との接触点と、底面(傾斜面)226の凸部228と板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていない。したがって、負荷方向が釣り合おうとして、底面226の径方向最外側部226Cと板状部材250との軸方向他方側(図中、下方)にある隙間(径方向距離i)を埋めるように、爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向外側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の凸部228が径方向内側にあるので、爪部231は径方向外側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向外側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
(第十実施形態の変形例)
なお、本実施形態では、爪部231の先端部231Aが、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面とされることにより、ポケット開口部241も、径方向内側から径方向外側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。これにより、爪部231の最先端部231Fが、ポケット開口部241の径方向最外側部241Bに位置していた。
しかし、本発明は当該構成に限定されず、図70に示されるように、爪部231の先端部231Aが、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、軸方向一方側(図中、上方)に突出する傾斜面としてもよい。この場合、ポケット開口部241も、径方向外側から径方向内側に向かうにしたがって、軸方向一方側に突出する。したがって、ポケット開口部241を構成する部分であり、且つ、玉6が挿入される際に最初に接触する部分である、爪部231の最先端部231Fが、ポケット開口部241の径方向最内側部241Cに位置する。
この場合、爪部231の最先端部231F(径方向最内側部241C)は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側に位置しポケット開口部241の径方向最外側部241Bは、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に位置する。
主部220の底面226は、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向内側部分226Aに比べて、ポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
具体的には、主部220の底面226に、軸方向他方側に突出する凸部228が設けられる。そして、凸部228の全体がポケット240の径方向中央部Mよりも径方向外側に配置される。このような構成により、主部220の底面226は、径方向内側部分226Aに比べて、径方向外側部分226Bにおいて、軸方向他方側(図中、下方)に突出する。
このように構成した場合、玉6が板状部材250(図58~61参照)上の保持器210に組み込まれる際、玉6と保持器210の爪部231の最先端部231F(径方向最内側部241C)との接触点と、底面(傾斜面)226の凸部228と板状部材250との接触点と、が大きく離れており、負荷方向が釣り合っていない。したがって、負荷方向が釣り合おうとして、底面226の径方向最内側部226Dと板状部材250との軸方向他方側(図中、下方)にある隙間を埋めるように、爪部231を径方向に倒しながら玉6がポケット240に組み込まれていく。すなわち、爪部231の最先端部231Fが径方向内側にあるのに対して、底面(傾斜面)226の凸部228が径方向外側にあるので、爪部231は径方向内側に倒れる。
したがって、玉6が保持器210に組み込まれる際、爪部231が径方向内側に倒れることで、玉6の直径が小さい部分がポケット開口部241を通ることになるので、爪部231に発生するひずみが小さくなり、保持器210の長寿命化が可能となる。
以下、本発明の第十一~第十四実施形態に係る玉軸受用冠型保持器及び玉軸受について、図面を用いて説明する。なお、以下の明細書中では「保持器310のポケット340に玉6が挿入される」と便宜上説明されている部分があるが、より正確には、保持器310の各ポケット340に玉6を挿入していくのではなく、玉軸受1の内輪3及び外輪5の間に配置された複数の玉6に保持器310を嵌め込むことによって、保持器310が玉軸受1に組み込まれる。以下の説明でも「ポケット340に玉6が挿入される」、「ポケット340に玉6が押し込まれる」等と記載されているが、便宜上の記載であることに注意されたい。
(第十一実施形態)
図71~図74は、本発明の第十一実施形態に係る玉軸受用冠型保持器(以下、「冠型保持器」、又は単に「保持器」とも称す)310を示し、図80は、この玉軸受用冠型保持器310を適用した玉軸受1を示す。
玉軸受用冠型保持器310を説明する前に、図80の玉軸受1について説明する。玉軸受1は、各種回転機械の回転部分を支持する装置であり、外周面に内輪軌道2を有する内輪3と、内輪3と同心に配置され、内周面に外輪軌道4を有する外輪5と、内輪軌道2と外輪軌道4との間に転動自在に配置される複数の玉6と、を備える。
各玉6は、保持器310により転動自在に保持される。また、外輪5の内周面の軸方向両端部には、それぞれ円輪状の一対のシールド板7、7の外周縁が係止される。一対のシールド板7,7は、軸受空間に存在するグリース等の潤滑剤が外部に漏洩したり、外部に浮遊する塵埃が軸受空間に進入したりすることを防止している。なお、密封装置として、非接触型のシールド板7、7に代えて、接触型のシールを使用してもよい。
次に第十一実施形態の冠型保持器310について説明する。冠型保持器310の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、特にポリアミド46やポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)等の樹脂に、10~50wt%の繊維状強化材(例えば、ガラス繊維や炭素繊維)を添加した樹脂組成物が用いられる。
保持器310の材料としては、ポリアミド46やポリアミド66と比べて、曲げ弾性率の大きい樹脂材料を用いることもできる。
具体的には、保持器310は、ポリアミド9T(PA9T)の如き熱可塑性樹脂と繊維状強化材とを含む樹脂組成物で構成されてもよい。繊維状強化材は、樹脂組成物中に15質量%以上35質量%以下の割合で添加された、繊維径が6μm以上8μm以下の炭素繊維であることが好ましい。炭素繊維としては、アクリロニトリル繊維を焼成してなるPAN系のものを用いることが好ましい。ポリアミド9Tは、(株)クラレのPA9T「ジェネスタ(登録商標)」に東レ(株)の炭素繊維「トレカ(登録商標)ミドルファイバー」を添加して得ることができる。
保持器310は、ポリアミド10T(PA10T)と繊維状強化材とを含む樹脂組成物で構成されてもよい。繊維状強化材は、樹脂組成物中に20質量%以上50質量%以下の割合で添加された、繊維径が6μm以上13μm以下のガラス繊維、または樹脂組成物中に20質量%以上35質量%以下の割合で添加された、繊維径が5μm以上9μm以下の炭素繊維であることが好ましい。さらに、保持器310は、ヨウ化物系熱安定化剤として、ヨウ化銅およびヨウ化カリウムの少なくとも一つを含むことが好ましい。ポリアミド10Tとしては、ユニチカ(株)の「XecoT(登録商標)」のガラス繊維入りのものを使用することができる。
保持器310の製造方法としては、金型を利用して射出成形する方法や、3Dプリンターで製造する方法が例示される。射出成形法を用いる場合は、成形金型内に成形体である軸受用保持器に対応する環状のキャビティが形成され、このキャビティの周縁部に設けた樹脂射出ゲートから溶解された樹脂材料(熱可塑性樹脂)が注入され、当該樹脂材料が冷却固化されることによって、保持器310が製造される。
次に冠型保持器310の構造について説明する。図71及び図72に示すように、冠型保持器310は、円環状の主部320と、主部320の上面から周方向に所定の間隔で軸方向に突出する複数の柱部330と、を備える。また、冠型保持器310は、隣り合う柱部330,330の間にそれぞれ形成され、玉6を保持可能な複数の球面形状のポケット340を有している。
さらに冠型保持器310は、柱部330の軸方向の端部において、各ポケット340の軸方向開口に臨むように、軸方向に突出した一対の爪部331を有している。爪部331のポケット340側はポケット340の面に滑らかに接続され、爪部331のポケット340と反対側は、接続部333を介して、柱部330に一体的に接続されている。
柱部330を中心に見ると、一対の爪部331,331が、一つの柱部330の周方向の両端部から突出されるように形成されている。一方で、ポケット340を中心に見ると、一対の爪部331,331が、ポケット340を挟んで隣り合い、一対の爪部331,331の先端部331A,331Aは、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。ポケット340を挟んで隣り合う二つの爪部331,331の先端部331A,331A同士の間には、玉6の直径よりも短い幅を有し、かつ、玉6を挿入するための、入口部341が設けられる。ポケット340を挟んで隣り合う二つの爪部331,331が玉6を保持することで、保持器310が外輪5と内輪3の間から軸方向に脱落するのを防止している。
また、本実施形態では平面状の底面(裏面。軸方向他方側面。)322が、主部320において、柱部330が形成された側の面(主部320の上面)と軸方向において反対側に位置するように画定されている。そして、主部320の底面322には、軸方向に突出する部分が設けられる。すなわち、突出部としての少なくとも一つの突起324が、底面322から軸方向に突出するように形成されている。本実施形態においては、複数の突起324が、冠型保持器310の周方向において所定間隔をもって底面322上に形成されている。特に各突起324は、周方向におけるポケット340に対応する位置に形成されている。
玉軸受1の組立にあたっては、保持器310を、内輪3、外輪5、および玉6を有する玉軸受1に挿入することになる。このことは、図72及び図73に示すように、底面322を支持する治具350が保持器310を所定位置に固定した状態で、保持器310に玉6を押し込むモデルと同一視できる。入口部341の幅は玉6の直径よりも短いため、爪部331が周方向外側に拡がり、爪部331、接続部333には、変形に伴う応力、ひずみが発生する。
従来の保持器は底面に本実施形態の突起324は形成されておらず、底面の全体が治具に面接触した状態で保持される。この状態で玉を押し込むと、保持器が変形できる部分は専ら爪部だけとなり、爪部、接続部に過大な応力やひずみが発生し、保持器310の寿命を低下させるおそれがある。
上記の課題に対応するため、ポケットへの玉の挿入作業は、爪部を広げる範囲を、保持器の寿命低下を抑制し得る程度までに限定して行われている。しかしながら、この方法によれば保持器に利用されている樹脂材料の伸びが小さくなるほど入口部の径を広く設定する必要がある。入口部の径を広く取りすぎてしまうと、軸方向の振動を受けた際、保持器が玉から抜けてしまう可能性が増大してしまう。
一方、第十一実施形態の保持器310は、底面322から軸方向に突出するように形成された突起324を有しており、この突起324は、周方向におけるポケット340に対応する位置に形成されている。図72に示す様に突起324の先端部が治具350に接触し、保持器310の底面322と治具350の間に隙間gが確保される。この状態から玉6を保持器310のポケット340に挿入すると、図73の矢印に示す様に、二つの爪部331,331が周方向に開くとともに、突起324の先端部を支点として接続部333をも含むポケット340,340間の部位が治具350の方向へ変形する。この変形作用により、保持器310の全体を用いて応力、ひずみを分散することができるようになり、従来の保持器よりも爪部331、接続部333に発生する応力やひずみを小さくすることができ、ひいては保持器310の寿命低下を防止することもできる。
また、第十一実施形態の保持器310によれば、玉6の挿入時にポケット340,340間の部位を大きく変形させて、二つの爪部331、31間の入口部341を広げることができるため、伸びが少ない樹脂材料を用いても入口部341の径を大きくする必要がない。よって、軸方向の振動を受けた際においても、保持器310が玉6、すなわち玉軸受1からから抜けてしまうことを抑制できる。
突起324の突出高さが高いほど、爪部331、接続部333を変形させる効果が大きくなる。しかしながら、図80に示す様に保持器310が玉軸受1に組み込まれて使用される際、保持器310の底面322は、シールド板7等の様な他の対向部材370に軸方向に対向するのが一般的であるため、突起324の突出高さが高すぎると、突起324が対向部材370に接触してしまうおそれがある。よって、図74に示す様に、突起324の底面322からの軸方向における突出高さaは、底面322から対向部材370までの軸方向距離bより小さくなるように設定されることが好ましい(a<b)。このように玉軸受1における保持器310に設けた突起324とシールド板7(またはシール)との関係を構成することで、軸受の回転時における突起324とシールド板7(またはシール)との摩擦を回避し、保持器の摩耗を抑制することができる。
また、図74に示す様に、突起324、特に突起324の先端部は、底面322上において、周方向におけるポケット340の中心線L上の位置P1に形成されることが好ましい。突起324がこの位置に形成されることにより、ポケット340の両側の部位が均等に変形し、ポケットへの玉6の挿入作業が円滑なものとなる。
(第十二実施形態)
図75は第十二実施形態の冠型保持器310を示す。本実施形態においては、底面322に、突起324の代わりに、突出部として、軸方向において傾斜する少なくとも二つの傾斜面325,325が形成され、かつ、二つの傾斜面325,325が交差して頂部327が形成されている。本実施形態によれば、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、頂部327が治具350に接触し、保持器310の底面322と治具350の間に隙間g(図72、図73参照)が確保される。よって、第十一実施形態と同等の効果を得ることができる。
傾斜面325は、頂部327と、頂部327から軸方向において最も遠い底部329と、の間において画定されている。すなわち、傾斜面325は、周方向において頂部327から底部329に向かうにしたがって、軸方向において柱部330に近づく方向に傾斜している。底部329から頂部327に至る傾斜面325の軸方向における傾斜高さc(軸方向高さ)が高いほど、爪部331、接続部333を変形させる効果が大きくなる。しかしながら、図80に示す様に保持器310が玉軸受1に組み込まれて使用される際、保持器310の底面322は、シールド板7等の様な他の対向部材370に軸方向に対向するのが一般的であるため、傾斜面325の傾斜高さcが高すぎると、頂部327が対向部材370に接触してしまうおそれがある。よって、図75に示す様に傾斜面325の傾斜高さcは、底部329から対向部材370までの軸方向距離bより小さくなるように設定されることが好ましい(c<b)。
また、図75に示す様に、頂部327は、底面322上において、周方向におけるポケット340の中心線L上の位置に形成されることが好ましい。頂部327がこの位置に形成されることにより、ポケット340の周方向両側の部位が均等に変形し、ポケット340への玉6の挿入作業が円滑なものとなる。
尚、保持器310の使用時に底面322が他の対向部材370に対向した際、ポケット340が周方向において隣接する他の二つのポケット340の各々との間の中間位置M上に位置する底面322の二つの底面中間位置P2と、対向部材370の周方向におけるポケット340の中心線L上に位置する対向部材中心位置P3と、を規定する。この状態において、二つの傾斜面325,325及び頂部327は、周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3,P2-P3とによって囲まれる領域に位置することが好ましい。二つの傾斜面325,325及び頂部327がこの領域外に形成されると、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、治具350と保持器310との十分な隙間が確保できずに、保持器310の滑らかな変形を阻害するおそれがあるからである。
また、この実施形態において、柱部330が形成される各周方向位置には、底面322から柱部330に向かって肉抜き322aが形成されている。
(第十三実施形態)
図76は第十三実施形態の冠型保持器310を示す。本実施形態においては、突出部としての二つの突起324,324が、周方向におけるポケット340に対応する位置であるが、周方向におけるポケット340の中心線L上の位置から外れた位置に、中心線Lに対して対称に形成されている。このような形態によれば、図72、図73の作業時に二つの突起324,324が治具350に接触するため、安定した状態で保持器310を変形させることができる。また、ポケット340の周方向両側の部位が均等に変形し、ポケット340への玉6の挿入作業が円滑なものとなる。尚、突起324の数は二つに限定されず、任意の複数の突起324を設けることができる。
本実施形態においても、第十二実施形態で説明したのと同様に、複数の突起324は、周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3,P2-P3によって囲まれる領域に位置することが好ましい。複数の突起324,324がこの領域外に形成されると、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、治具350と保持器との十分な隙間が確保できずに、保持器310の滑らかな変形を阻害するおそれがあるからである。
なお、第十一実施形態の冠形保持器310においても、第十二及び第十三実施形態と同様に、突起324は周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3,P2-P3によって囲まれる領域に位置することが好ましい。
(第十四実施形態)
図77は第十四実施形態の冠型保持器310を示す。本実施形態においては、突出部としての突起324が平坦状の突起であり、平面状の先端面を持つ。図示の例では、突起324の周方向幅は、ポケット340の周方向幅と略等しいが、適宜増減させて構わない。このような形態によれば、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、突起324の平面状の先端面が治具350に接触するため、安定した状態で保持器310を変形させることができる。尚、本実施形態においても、第十二及び第十三実施形態で説明したのと同様に、平坦状の突起324は、周方向において線分P2-P2と二つの線分P2-P3,P2-P3によって囲まれる領域に位置することが好ましい。平坦状の突起324がこの領域外に形成されると、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、治具350と保持器310との十分な隙間が確保できずに、保持器310の変形を阻害するおそれがあるからである。
また、図78で示す様に、突起324は、周方向において領域dで示される二つの接続部333の間に形成されることが好ましい。すなわち、突起324は、周方向において、ポケット340、一対の爪部331,331、接続部333と重なる位置に配置される。突起324がこの領域外に形成されると、図72、図73に示すような保持器310の軸受への組み込み作業時に、保持器310が突っ張り、保持器310の変形が抑制されるおそれがあるからである。尚、図78は第十四実施形態の構成を用いて説明しているが、第十一実施形態(図71~図74参照)及び第十三実施形態(図76参照)の突起324も同様に、周方向において二つの接続部333の間に形成されることが好ましい。
突起324は、径方向における内径面311と外径面312の間で繋がっている必要はなく、図79に示す様に、径方向における内径面311と外径面312の間において部分的に形成されてもよい。
本発明の突出部は、周方向におけるポケット340に対応する位置において、底面322から突出する部分であればよく、突出部の具体的な形状は特に限定されない。突出部として、図71~図74、図76に示すような先端が曲面の突起、図77、図78に示すような平坦な突起、図75に示すような二つの傾斜面で構成される頂部を挙げたが、側面が湾曲した湾曲面(アーチ面)を有する突起などであってもよい。また、傾斜面325も直線的な傾斜面のみならず、湾曲した傾斜面とすることも可能である。傾斜面325,325が交差して形成される頂部327も、湾曲面であってもよい。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
本出願は、2021年1月18日出願の日本特許出願特願2021-005914、2021年1月18日出願の日本特許出願特願2021-005915、2021年3月15日出願の日本特許出願特願2021-041572に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 玉軸受、2 内輪軌道、3 内輪、4 外輪軌道、5 外輪、6 玉、7 シールド板(対向部材)、10 玉軸受用冠型保持器、20 主部、21 上面、23 凹面、24 内周面、25 外周面、26 底面、27 開口部、28 第一凸部、29 第二凸部、29A 根元部、29B 先端面、30 柱部、31 爪部、31A 先端部、31B 周方向第一面、31C 周方向第二面、31D 外周面、31E 内周面、33 接続部、33A 上面、40 ポケット、41 入口部、210 玉軸受用冠型保持器、220 主部、221 上面、223 凹面、224 内周面、225 外周面、226 底面、226A 径方向内側部分、226B 径方向外側部分、226C 径方向最外側部、226D 径方向最内側部、228 凸部、230 柱部、231 爪部、231A 先端部、231B 周方向第一面、231C 周方向第二面、231D 外周面、231E 内周面、231F 最先端部、233 接続部、240 ポケット、241 ポケット開口部、241A ポケット開口径、241B 径方向最外側部、241C 径方向最内側部、250 板状部材、310 玉軸受用冠型保持器、311 内径面、312 外径面、320 主部、322 底面、322a 肉抜き、324 突起(突出部)、325 傾斜面、327 頂部(突出部)、329 底部、330 柱部、331 爪部、333 接続部、340 ポケット、341 入口部、350 治具、370 対向部材

Claims (8)

  1. 円環状の主部と、
    前記主部から周方向に所定の間隔で軸方向一方側に突出する複数の柱部と、
    隣り合う前記柱部の間に形成され、玉を保持可能な球面形状のポケットと、
    を備える、玉軸受用冠型保持器であって、
    前記柱部は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部と、前記一対の爪部を接続する接続部を有し、
    前記主部の底面には、軸方向に突出する部分が設けられ、
    前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短いポケット開口径を有し、かつ、前記軸方向一方側とは逆方向である軸方向他方側に向かって前記玉を挿入するための、ポケット開口部が設けられ、
    前記爪部の先端部のうち、前記ポケット開口部を構成し、且つ、前記玉が前記軸方向他方側に向かって挿入される際に最初に接触する部分を最先端部とし、
    前記最先端部が前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に位置する場合、前記主部の底面は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側部分に比べて、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側部分において、前記軸方向他方側に突出し、
    前記最先端部が前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に位置する場合、前記主部の底面は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側部分に比べて、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側部分において、前記軸方向他方側に突出し、
    前記爪部の最先端部は、径方向に平坦状に延び、
    前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側または径方向外側に配置され、
    前記主部の底面には、前記軸方向他方側に突出する凸部が設けられ、
    前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される場合には、前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置され、
    前記爪部の最先端部の全体が、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向外側に配置される場合には、前記凸部の全体は、前記ポケットの径方向中央部よりも径方向内側に配置される、
    ことを特徴とする樹脂からなる玉軸受用冠型保持器。
  2. 前記凸部の少なくとも一部は、周方向および径方向において前記ポケットと重なる
    請求項1に記載の玉軸受用冠型保持器。
  3. 前記凸部は、前記主部の前記底面に、全周にわたって設けられる
    請求項2に記載の玉軸受用冠型保持器。
  4. 熱可塑性樹脂で構成される、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の玉軸受用冠型保持器。
  5. 繊維状強化材が添加された熱可塑性樹脂で構成される、
    請求項1~3のいずれか1項に記載の玉軸受用冠型保持器。
  6. ポリアミド9Tと、繊維状強化材と、を含む樹脂組成物で構成される
    請求項1~3のいずれか1項に記載の玉軸受用冠型保持器。
  7. ポリアミド10Tと、繊維状強化材と、を含む樹脂組成物で構成される
    請求項1~3のいずれか1項に記載の玉軸受用冠型保持器。
  8. 外輪と、
    内輪と、
    前記外輪と、前記内輪と、の間に配置された複数の前記玉と、
    請求項1~7のいずれか1項に記載の玉軸受用冠型保持器と、
    を備える、玉軸受。
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