JP2011185385A - 転がり軸受およびその冠形保持器 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂材料等よりも強度が高く、射出成形が可能で且つ軸受組立時の転動体挿入も容易に実施可能な転がり軸受およびその冠形保持器を提供する。
【解決手段】転がり軸受は、密閉型の深溝玉軸受であり、内輪と、外輪と、複数の玉4と、冠形保持器5と、内外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材とを有する。冠形保持器5において、ポケットPtAにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dAを、ポケットPtBにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dBよりも低くした爪8,8を設けた。また保持器5は、鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品とした。
【選択図】図2
【解決手段】転がり軸受は、密閉型の深溝玉軸受であり、内輪と、外輪と、複数の玉4と、冠形保持器5と、内外輪間の軸受空間を塞ぐシール部材とを有する。冠形保持器5において、ポケットPtAにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dAを、ポケットPtBにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dBよりも低くした爪8,8を設けた。また保持器5は、鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品とした。
【選択図】図2
Description
この発明は、転がり軸受およびその冠形保持器に関し、例えば、マグネシウム合金で射出成形および使用可能な冠形保持器およびその冠形保持器を用いた転がり軸受に関する。
鉄板保持器や、ナイロン(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックを母材として繊維強化した樹脂保持器がある(例えば、特許文献1)。
鉄板保持器や黄銅製保持器は、金属製であることから強度に優れるが、前記鉄板保持器は、主にプレス加工で製造されることから、3次元的に複雑な形状の保持器を製造することは難しく、また組立も2部品を接合する必要があり煩雑である(例えば、特許文献2)。前記黄銅製保持器も経済的に製造する場合は、単純な揉みぬき形状とされる場合が多く、鉄板保持器、黄銅製保持器共に工業的に製造可能な形状上の制約がある。これら保持器は、樹脂保持器と比べると比重が大きく重いため、軽量性が求められる高速回転下での使用にあまり適さない(特許文献3参照)。このようなことから、例えば、高速回転が求められる工作機械主軸用の転がり軸受には、樹脂保持器が用いられるようになってきている。また、断続運転下では、加速時および減速時の保持器の質量に比例するエネルギーの損失が発生することから、省エネルギー化の強く求められる事務機や自動車等の移動媒体用途でも、保持器は軽いことが望まれる。
一方、樹脂保持器は射出成形で製造可能なことから、形状上の制約も少なく、軽量である。しかしながら、保持器材に用いられる樹脂材料は、要求される剛性や強度を満足するために、通常、繊維等の補強材が添加されているため、射出成形品では流動配向に伴う成形収縮量や機械特性の異方性や、ウエルド部の強度が問題となる場合がある。
前記樹脂材料よりも強度が高いマグネシウム合金から成る保持器を適用することが考えられる。しかし、マグネシウム合金を図16に示す従来形状の冠形保持器100に適用する場合、前記マグネシウム合金は樹脂材料よりも耐変形性に劣る脆性的な材料であり、金型取り出し時に大きな変形を要するいわゆるムリ抜き部を伴うため、射出成形での製作が難しい。
この発明の目的は、樹脂材料等よりも強度が高く、射出成形が可能で且つ軸受組立時の転動体挿入も容易に実施可能な転がり軸受およびその冠形保持器を提供することである。
この発明における第1の発明の転がり軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を各ポケットに対して設け、いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした前記爪を設けたことを特徴とする。
この構成によると、保持器において、いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした爪を設けたため、樹脂材料等よりも強度が高い、例えば、マグネシウム合金等を適用し得る。このようなマグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、一対の爪の軸方向突出量を前記のように低くすることで、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、組立時の玉のポケットへのはめ込みが容易となる。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とすることができる。それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの低減を図ることができる転がり軸受を実現し得る。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とすることができる。それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの低減を図ることができる転がり軸受を実現し得る。
この発明における第2の発明の転がり軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を、前記複数箇所のうちの一部のポケットのみに設けたことを特徴とする。
この構成によると、保持器において、特に複数箇所のうちの一部のポケットのみに一対の爪を設け、前記ポケット以外のポケットには爪を設けない構成とした。このため、マグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、第1の発明の保持器よりも組立時の玉のポケットへのはめ込みがさらに容易となる。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。また鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とでき、それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの更なる低減を図れる転がり軸受を実現し得る。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。また鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とでき、それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの更なる低減を図れる転がり軸受を実現し得る。
前記保持器は、鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品であっても良い。この場合、従来の鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とすることができる。
前記爪は、軸方向先端に向かうに従って、円周方向の肉厚が薄くなる先狭まり形状としても良い。この場合、爪の先端部を従来の爪よりも弾性変形し易くできる。これにより、従来の保持器よりも玉のポケットへのはめ込みが容易となり、製造工数の低減を図れる。この場合、従来の保持器よりも爪の先端部の肉厚が薄くなるが、樹脂材料等よりも強度の高いマグネシウム合金等を適用し得るため、このような爪の先端部の肉厚が薄くなる保持器を実用可能とできる。
前記爪は、軸方向先端に向かうに従って、円周方向の肉厚が薄くなる先狭まり形状としても良い。この場合、爪の先端部を従来の爪よりも弾性変形し易くできる。これにより、従来の保持器よりも玉のポケットへのはめ込みが容易となり、製造工数の低減を図れる。この場合、従来の保持器よりも爪の先端部の肉厚が薄くなるが、樹脂材料等よりも強度の高いマグネシウム合金等を適用し得るため、このような爪の先端部の肉厚が薄くなる保持器を実用可能とできる。
前記保持器のいずれかのポケットを、保持器軸方向を含む平面に対し対称に設けても良い。これにより、軸受内で保持器が傾いたり、位置ずれを起こしたりすることを防ぐことができる。したがって、軸受の高速回転化をより図れる。
前記保持器における複数箇所のポケットのうち一部のポケットを、径方向に沿う円筒形状としても良い。従来の保持器のポケットは、全て球面形状となっている。この発明では、径方向に沿う円筒形状としたポケットを採用したため、転がり軸受のおける一部の玉を円周方向にのみ拘束することが可能となる。これにより、保持器−玉間の摩擦抵抗を従来技術のものより低減させることができる。
前記保持器における複数箇所のポケットのうち一部のポケットを、径方向に沿う円筒形状としても良い。従来の保持器のポケットは、全て球面形状となっている。この発明では、径方向に沿う円筒形状としたポケットを採用したため、転がり軸受のおける一部の玉を円周方向にのみ拘束することが可能となる。これにより、保持器−玉間の摩擦抵抗を従来技術のものより低減させることができる。
前記保持器のいずれかのポケットは、外径側に向かうに従って内径が広がるテーパ形状部を含むものとしても良い。軸受運転時つまり保持器に遠心力が働くとき、保持器のポケットに対し玉が前記テーパ形状部に沿って外径側に相対的に変位する。これにより前記保持器の内径側の開口部付近で玉を拘束することができる。
前記爪を、前記環状体の一側面の径方向寸法よりも短く形成しても良い。この場合、保持器材料の削減、保持器質量の低減、グリースの引きずりトルクの低減の効果を得られる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側に片寄らせて設けても良い。この場合、軸受運転時、グリースが保持器の内径側部分で掻きとられることがないので、特に、外輪回転時のグリース漏れを防止することができる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側に片寄らせて設けても良い。この場合、軸受運転時、グリースが保持器の内径側部分で掻きとられることがないので、特に、外輪回転時のグリース漏れを防止することができる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、内径側に片寄らせて設けても良い。この場合、高速回転時に遠心力で爪が変形しても、玉を案内することができる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、保持器ピッチ円直径部分のみに設けても良い。この場合、保持器ピッチ円直径の位置で爪が玉を拘束することで、他の保持器ピッチ円直径以外の位置で玉を拘束するものに比べて、玉とポケットのすきまを大きくしても同等の拘束性が得られ、グリースの引きずりトルクの低減の効果に繋がる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、保持器ピッチ円直径部分のみに設けても良い。この場合、保持器ピッチ円直径の位置で爪が玉を拘束することで、他の保持器ピッチ円直径以外の位置で玉を拘束するものに比べて、玉とポケットのすきまを大きくしても同等の拘束性が得られ、グリースの引きずりトルクの低減の効果に繋がる。
前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側および内径側のみに設けても良い。この場合、軸受運転中に玉と保持器のすきまが小さくなっても、トルクが増加する主原因となる部分、すなわち環状体の一側面における外径側と内径側との間の部分を、削除しているため、軸受運転時のトルク低減効果が得られる。
前記環状体のうち、ポケットが設けられていない側面である他側面が、ポケット間に凹みを有する波形形状とされたものであっても良い。この場合、保持器材料、保持器重量の低減を図れる。
前記保持器の全体を、玉ピッチ円よりも内径側に設けても良い。この場合、軸受が高速回転したときに、保持器を外径側に変形することを許容できるため、高速回転に適する。
前記保持器の全体を、玉ピッチ円よりも内径側に設けても良い。この場合、軸受が高速回転したときに、保持器を外径側に変形することを許容できるため、高速回転に適する。
前記環状体のうち、円周方向に隣接するポケット間に設けられる円環部の径方向寸法を、前記ポケットの径方向寸法よりも小さくしても良い。この場合、保持器がねじれやすくなり、転がり軸受への保持器の組込み性が良好となる。したがって、製造工数の低減を図れる。
前記環状体の一側面に、スリット状の凹み部を設けても良い。この場合、保持器の爪を広がり易くすることができ、よってポケットへ玉を容易にはめ込むことができる。
前記環状体の一側面に、スリット状の凹み部を設けても良い。この場合、保持器の爪を広がり易くすることができ、よってポケットへ玉を容易にはめ込むことができる。
前記保持器に、固体潤滑剤を組み込んだものであっても良い。
前記保持器は、マグネシウム合金を射出成形して成る射出成形品であっても良い。この場合、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とすることができる。
前記保持器は、マグネシウム合金を射出成形して成る射出成形品であっても良い。この場合、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器とすることができる。
前記玉がセラミックスから成るものであっても良い。軸受に組み込む玉として、例えば、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスの焼結体から成る玉を用いる。これにより、一般的に用いられている鋼球を組み込んだ軸受よりも、高速化することが可能となる。セラミックスから成る玉は鋼球よりも軽く、硬いため、特に本発明のいずれかの保持器と併用することで、より安定した高速回転を行うことが可能となる。
前記転がり軸受が、モータロータを支持する軸受であっても良い。
前記転がり軸受が、ロボット関節用軸受に用いられるものであっても良い。
前記転がり軸受が、ハードディスクドライブピボット用軸受に用いられるものであっても良い。
前記転がり軸受が、ロボット関節用軸受に用いられるものであっても良い。
前記転がり軸受が、ハードディスクドライブピボット用軸受に用いられるものであっても良い。
この発明における第1の発明の冠形保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状の保持器において、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を各ポケットに対して設け、いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした前記爪を設けたことを特徴とする。
この構成によると、いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした爪を設けたため、樹脂材料等よりも強度が高い、例えば、マグネシウム合金等を適用し得る。このようなマグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、一対の爪の軸方向突出量を前記のように低くすることで、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、組立時の玉のポケットへのはめ込みが容易となる。
この発明における第2の発明の冠形保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状の保持器において、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を、前記複数箇所のうちの一部のポケットのみに設けたことを特徴とする。
この構成によると、特に複数箇所のうちの一部のポケットのみに一対の爪を設け、前記ポケット以外のポケットには爪を設けない構成としたため、マグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、第1の発明の保持器よりも組立時の玉のポケットへのはめ込みがさらに容易となる。
この構成によると、特に複数箇所のうちの一部のポケットのみに一対の爪を設け、前記ポケット以外のポケットには爪を設けない構成としたため、マグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、第1の発明の保持器よりも組立時の玉のポケットへのはめ込みがさらに容易となる。
この発明における第1の発明の転がり軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を各ポケットに対して設け、いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした前記爪を設けたため、樹脂材料等よりも強度が高く、射出成形が可能で且つ軸受組立時の転動体挿入も容易に実施可能とできる。
この発明における第2の発明の転がり軸受は、内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を、前記複数箇所のうちの一部のポケットのみに設けたため、樹脂材料等よりも強度が高く、射出成形が可能で且つ軸受組立時の転動体挿入も容易に実施可能とできる。
この発明の一実施形態を図1おおよび図2と共に説明する。図1に示すように、この実施形態に係る転がり軸受1は、密閉型の深溝玉軸受であり、内輪2と、外輪3と、複数の玉4と、保持器5と、内外輪2,3間の軸受空間を塞ぐシール部材6,6とを有する。なお、深溝玉軸受において、いずれか一方または両方のシール部材6を省略することも可能である。図1ではシール部材6として接触シールが示されているが、非接触シールであっても良い。また、金属板からなるシール部材6を設けても良い。外輪3は内周に軌道面3aを有し、内輪2はこの軌道面3aに対向する軌道面2aを有する。これら軌道面2a,3a間に複数の玉4を介在させ、保持器5が複数の玉4を保持している。前記軸受空間にグリースが封入される。玉4は例えば鋼球から成る。
保持器5について説明する。
図1、図2に示すように、保持器5は、環状体7の一側面7aに一部が開放されて内部に玉4を保持するポケットPtを、前記環状体7の円周方向複数箇所に有する冠形状である。この保持器5は、例えば、マグネシウム合金を射出成形して形成されている。また、この保持器5は各ポケットPtの内面を単調な同一曲率から成る球面とし、各ポケットPtに玉4がはめ込まれることにより、軸方向、径方向、および円周方向への拘束がなされる転動体案内形式に構成されている。
図1、図2に示すように、保持器5は、環状体7の一側面7aに一部が開放されて内部に玉4を保持するポケットPtを、前記環状体7の円周方向複数箇所に有する冠形状である。この保持器5は、例えば、マグネシウム合金を射出成形して形成されている。また、この保持器5は各ポケットPtの内面を単調な同一曲率から成る球面とし、各ポケットPtに玉4がはめ込まれることにより、軸方向、径方向、および円周方向への拘束がなされる転動体案内形式に構成されている。
前記環状体7の前記ポケットPtの開放側の側面におけるポケットPtの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出する一対の爪8,8を、各ポケットPtに対して設けている。これら一対の爪8,8は、円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットPtの一部を構成する。換言すれば、一対の爪8,8の内面は、ポケット底面をなす球面と同一の曲率中心位置で且つ同一曲率半径の球面に沿って形成されている。環状体7のうち円周方向に隣合うポケットPt,Pt間の円環部9が、前記保持器5を環状に繋ぐ連結部となる。環状体7のうち、ポケットPtが設けられていないポケット背面側の他側面7bは、軸方向に垂直な平面に沿って設けられている。
図2(B)のA部に示すポケットPtの一対の爪8,8の軸方向突出量dAは、円周方向に隣接するポケットPtの爪8,8の軸方向突出量dBよりも低くなっている。図2(A),(B)に示すように、前記保持器5は、このような軸方向突出量が低い爪8,8を有するポケットPtAと、このポケットPtAの爪8,8の軸方向突出量よりも相対的に高い軸方向突出量の爪8,8を有するポケットPtBとが、円周方向に交互に設けられる。なお、ポケットPtBの爪8,8の軸方向突出量は、従来のものと同等である。ポケットPtAにおける爪8,8は、環状体7の一側面7aにおける内径側部分から外径側部分にわたって設けられ、ポケットPtBにおける爪8,8も、環状体7の一側面7aにおける内径側部分から外径側部分にわたって設けられる。
また、ポケットPtAにおけるポケット底面と、環状体7の他側面7bとの間の肉厚t1は、ポケットPtBにおけるポケット底面と、環状体7の他側面7bとの間の肉厚t2と同一厚さとなるように形成されている。ポケットPtAの曲率中心位置と、ポケットPtBの曲率中心位置とは、環状体7における同一の軸方向位置に定められ、ポケットPtA,PtBの曲率半径は同一に定められる。よって、ポケットPtA,PtBは千鳥なく形成される。
以上説明した構成によると、保持器5において、ポケットPtAにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dAを、ポケットPtBにおける一対の爪8,8の軸方向突出量dBよりも低くした爪8,8を設けたため、樹脂材料等よりも強度が高い、前記マグネシウム合金を適用し得る。このようなマグネシウム合金を適用した冠形保持器であっても、ポケットPtAの爪8,8の軸方向突出量dAを前記のようにポケットPtBの爪8,8に対して相対的に低くすることで、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、組立時の玉4のポケットPtへのはめ込みが容易となる。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器5とすることができる。それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの低減を図ることができる転がり軸受を実現し得る。
したがって、樹脂材料保持器と比較して、強度・耐熱性が高い保持器とすることができる。鉄板材料保持器と比較して、形状の自由度が高く、組立性に優れ、軽量な保持器5とすることができる。それ故、省エネルギー化に寄与することができ、高速回転にも使用することができ、且つ、製造コストの低減を図ることができる転がり軸受を実現し得る。
この発明の他の実施形態について説明する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図3に示すように、冠形保持器において、ポケットPtの一部を構成する一対の爪8,8を、前記複数箇所のうちの一部のポケットPtのみに設けても良い。この保持器5Aは、爪8,8が設けられていないポケットPtA1と、軸方向突出量が従来のものと同等の爪8,8を有するポケットPtBとが、円周方向に交互に設けられる。その他図2の保持器と同様の構成となっている。
この図3の構成によると、冠形保持器において、ポケットPtBのみに一対の爪8,8を設け、その他のポケットPtA1には爪8,8を設けない構成としたため、マグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、図2の保持器5よりも組立時の玉4のポケットPtへのはめ込みがさらに容易となる。その他前述の構成と同様の効果を奏する。
以下の説明においては、各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図3に示すように、冠形保持器において、ポケットPtの一部を構成する一対の爪8,8を、前記複数箇所のうちの一部のポケットPtのみに設けても良い。この保持器5Aは、爪8,8が設けられていないポケットPtA1と、軸方向突出量が従来のものと同等の爪8,8を有するポケットPtBとが、円周方向に交互に設けられる。その他図2の保持器と同様の構成となっている。
この図3の構成によると、冠形保持器において、ポケットPtBのみに一対の爪8,8を設け、その他のポケットPtA1には爪8,8を設けない構成としたため、マグネシウム合金等を適用した冠形保持器であっても、射出成形時に金型から容易に取り出すことができ、図2の保持器5よりも組立時の玉4のポケットPtへのはめ込みがさらに容易となる。その他前述の構成と同様の効果を奏する。
図4(A),(B)に示すように、冠形保持器において、軸方向突出量が低い爪8,8を有するポケットPtAを、保持器軸方向を含む平面L1に対し対称に設けても良い。図4(A)の例では、ポケットPtが合計8個の冠形保持器5Bを示し、図4(B)の例では、ポケットPtが合計7個の冠形保持器5Bを示している。こられの構成によると、軸受内で保持器が不所望に傾いたり、位置ずれを起こしたりすることを防ぐことができる。したがって、軸受の高速回転化をより図れる。
図5(A)に示すように、冠形保持器において、前記爪8は、軸方向先端に向かうに従って、円周方向の肉厚が薄くなる先狭まり形状としても良い。この例では、ポケットPtAにおける一対の爪8,8を前記先狭まり形状つまり先細り形状にする。これと共に、前記ポケットPtAの爪8,8の軸方向突出量dAよりも大きい軸方向突出量dBの爪8,8を含むポケットPtBの前記爪8,8を前記先狭まり形状にしている。この場合、爪8,8の先端部を、図5(B)の従来の爪8よりも弾性変形し易くできる。これにより、従来の保持器よりも玉4のポケットPtへのはめ込みが容易となり、製造工数の低減を図れる。この場合、従来の保持器よりも爪8の先端部の肉厚が薄くなるが、樹脂材料等よりも強度の高いマグネシウム合金等を適用し得るため、このような爪8の先端部の肉厚が薄くなる保持器5Cを実用可能とできる。
図6の冠形保持器5Dは、図3の構成において、爪8,8が設けられていないポケットPtA1の内面を、径方向に沿う円筒形状D1とし、爪8,8が設けられている前記ポケットPtBの内面を球面形状としている。ポケットPtBで転動体案内されるため、ポケットPtA1の内面を径方向に沿う円筒形状D1にし得る。この場合、転がり軸受における一部の玉、つまりポケットPtA1にはめ込まれる玉を、円周方向にのみ拘束することが可能となる。これにより、保持器−玉間の摩擦抵抗を従来技術のものより低減させることができる。
上記とは逆に、爪8,8が設けられていない前記ポケットPtA1の内面を球面形状とし、爪8,8が設けられている前記ポケットPtBの内面を径方向に沿う円筒形状としても良い。この場合、ポケットPtBの爪8,8によって保持器5Aを軸方向に拘束し、ポケットPtA1の球面によって保持器5Aを径方向および周方向に拘束することができる。
上記とは逆に、爪8,8が設けられていない前記ポケットPtA1の内面を球面形状とし、爪8,8が設けられている前記ポケットPtBの内面を径方向に沿う円筒形状としても良い。この場合、ポケットPtBの爪8,8によって保持器5Aを軸方向に拘束し、ポケットPtA1の球面によって保持器5Aを径方向および周方向に拘束することができる。
図7(A)に示すように、ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側に片寄らせて設けても良い。同図の冠形保持器5Eは、例えば、図3の構成において、前記ポケットPtBの爪8,8を環状体7の一側面7aにおける外径側部分のみに設けている。この場合、軸受運転時、グリースが保持器の内径側部分で掻きとられることがないので、特に、外輪回転時のグリース漏れを防止することができる。
図7(B)に示すように、ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、内径側に片寄らせて設けても良い。同図の冠形保持器5Fは、例えば、図3の構成において、前記ポケットPtBの爪8,8を環状体7の一側面7aにおける内径側部分のみに設けている。この場合、高速回転時に遠心力で爪8,8が変形しても玉を案内することができる。
図7(B)に示すように、ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、内径側に片寄らせて設けても良い。同図の冠形保持器5Fは、例えば、図3の構成において、前記ポケットPtBの爪8,8を環状体7の一側面7aにおける内径側部分のみに設けている。この場合、高速回転時に遠心力で爪8,8が変形しても玉を案内することができる。
図8の冠形保持器5Gは、例えば、図3の構成において、前記ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける保持器ピッチ円直径PCD部分のみに設けている。この場合、他の保持器ピッチ円直径以外の位置で玉を拘束するものに比べて、玉とポケットPtのすきまを大きくしても同等の拘束性が得られ、グリースの引きずりトルクの低減に繋がる。
図9の冠形保持器5Hは、図8とは逆に、前記ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける外径側および内径側のみに設けている。つまり、ポケットPtBにおいて、環状体7の一側面7aにおける保持器ピッチ円直径PCD部分のみ、爪8,8が設けられていない形状となっている。この場合、軸受運転中に玉と保持器のすきまが小さくなっても、トルクが増加する主原因となる部分、すなわち環状体7の一側面7aにおける外径側部分と内径側部分との間の部分を、削除しているため、軸受運転時のトルク低減効果が得られる。
図9の冠形保持器5Hは、図8とは逆に、前記ポケットPtBの爪8,8を、環状体7の一側面7aにおける外径側および内径側のみに設けている。つまり、ポケットPtBにおいて、環状体7の一側面7aにおける保持器ピッチ円直径PCD部分のみ、爪8,8が設けられていない形状となっている。この場合、軸受運転中に玉と保持器のすきまが小さくなっても、トルクが増加する主原因となる部分、すなわち環状体7の一側面7aにおける外径側部分と内径側部分との間の部分を、削除しているため、軸受運転時のトルク低減効果が得られる。
図10の冠形保持器5Jは、環状体7のうち、ポケットPtが設けられていないポケット側面である他側面が、ポケットPtA1,ポケットPtB間に凹み10を有する波形形状とされている。環状体7の前記他側面のうち、ポケットPtA1およびポケットPtBがある箇所14は、同ポケットPtA1,ポケットPtBの内面に対し一定の肉厚を成す球面形状に形成されている。環状体7の前記他側面において、これら円周方向に繋がる凹み10および箇所14が波形形状となっている。換言すれば、冠形保持器において、環状体7の特に前記他側面を、鉄板波形保持器のような波形形状に射出成形している。この場合、保持器材料、保持器重量の低減を図れる。図10の例では、環状体7の他側面7bにおいて、内径面から外径面にわたって凹み10を設けているが、保持器の強度を考えた場合は、その凹み量は少ないことが望ましい。内輪外径面へのグリース付着の抑制には、内輪外径面と保持器の内径面との距離を長くすることも有効であることから、例えば、ポケットPtA1,ポケットPtB間の内径側のみ凹み10を設け、外径側に従来のような壁面を残す段差形状としても良い。
図11の冠形保持器5Kは、図3の構成において、環状体7の一側面7aに固体潤滑剤11を組み込んだものである。前記固体潤滑剤11として、例えば、超高分子ポリエチレン等の合成樹脂材にグリースを含有させた熱硬化型グリース(例えば「ポリルーブ」(登録商標)等を用いることができる。熱硬化型グリースは、例えば、ポリエチレン1〜95重量%、好ましくは30重量%以上と、石鹸または非石鹸増ちょうの潤滑グリース99〜5重量%との混合物を加熱して固形化したものである。(特許文献4参照)。
前記固体潤滑剤11は、ポケットPtA1の一部を構成するように環状体7の一側面7aに設けられ、且つ、ポケットPtBの爪8,8の先端部に面一状に形成されている。射出成形後の環状体7に、このような固体潤滑剤11を組み込むことができる。軸受運転時、前記固体潤滑剤11による潤滑効果を得ることができる。
固体潤滑剤11として、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン等を、前記と同様に環状体7の少なくとも一側面7aに設けても良い。
前記固体潤滑剤11は、ポケットPtA1の一部を構成するように環状体7の一側面7aに設けられ、且つ、ポケットPtBの爪8,8の先端部に面一状に形成されている。射出成形後の環状体7に、このような固体潤滑剤11を組み込むことができる。軸受運転時、前記固体潤滑剤11による潤滑効果を得ることができる。
固体潤滑剤11として、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレン等を、前記と同様に環状体7の少なくとも一側面7aに設けても良い。
図12(A),(B)の冠形保持器5L,5Mは、いずれかのポケットPtが、外径側に向かうに従って内径が広がるテーパ形状部12を含むものとしている。図12(A)では、ポケット全体がテーパ形状部12となっているのに対し、図12(B)では、いずれかのポケットPtにおいて、ポケットPtの内径側の一部にテーパ形状部12が形成され、このテーパ形状部12の外径側縁部に、円筒形状からなる円筒形状部13が繋がっている。なお、参考として、球面形状のポケットPtを有する保持器を図12(C)に示している。
ポケットPtにテーパ形状部12を有する保持器5L,5Mによると、軸受運転時つまり保持器5L,5Mに遠心力が働くとき、保持器5L,5MのポケットPtに対し玉4が前記テーパ形状部12に沿って外径側に相対的に変位する。これにより前記保持器5L,5Mの内径側の開口部付近で玉4を拘束することができる。
ポケットPtにテーパ形状部12を有する保持器5L,5Mによると、軸受運転時つまり保持器5L,5Mに遠心力が働くとき、保持器5L,5MのポケットPtに対し玉4が前記テーパ形状部12に沿って外径側に相対的に変位する。これにより前記保持器5L,5Mの内径側の開口部付近で玉4を拘束することができる。
マグネシウム合金は樹脂材料よりも強度が高いため、保持器断面積を小さくすることができる。例えば図13(A)に示すように、冠形保持器5Nを、玉ピッチ円PCDよりも内径側に設けても良い。参考として従来の保持器5Zを軸方向から見た図を図13(B)に示す。25重量%ガラス繊維配合66ナイロン樹脂の引張り強さが、170MPaであるのに対し、マグネシウム合金(AZ91D)の引張り強さは230MPaである。
玉ピッチ円PCDよりも内径側に保持器5Nが存在すると、軸受が高速回転したときに、保持器5Nを外径側に変形することを許容できるため、高速回転に適する。
玉ピッチ円PCDよりも内径側に保持器5Nが存在すると、軸受が高速回転したときに、保持器5Nを外径側に変形することを許容できるため、高速回転に適する。
図14の冠形保持器5Pは、環状体7の円環部9のみを径方向に小さくしている。つまり、円周方向に隣接するポケットPt,Pt間に設けられる円環部9の径方向寸法d1を、ポケットPtの径方向寸法d2よりも小さくしている。この場合、保持器5Pがねじれやすくなり、転がり軸受への保持器5Pの組込み性が良好となる。したがって、製造工数の低減を図れる。
図15の冠形保持器5Qは、前記と同様に組込み性を向上させるため、環状体7の一側面7aにスリット状の凹み部SLを設けている。凹み部SLは、環状体7の円環部9における爪8付近に形成され、環状体7の一側面7aから軸方向に延びる。また、円環部9の内径側部分から外径側部分にわたって設けられている。前記軸方向のスリット深さShは、各ポケットPtのポケット底面P1よりも浅くなる位置に定められている。すなわち冠形保持器5Qの凹み部SLがある位置を保持器軸心を含む平面で切断して見た断面積(スリット部保持器断面積)が、前記ポケット底面P1がある位置を前記平面で切断して見た断面積(ポケット底部断面積)より大きくすることが可能なスリット深さShが好ましい。前記スリット部保持器断面積が前記ポケット底部断面積より大きければ、強度面、成形時の金型内への充填面で特に問題にならない。
鋼球から成る玉4に代えて、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスの焼結体から成る玉4としても良い。この場合、一般的に用いられている鋼球を組み込んだ軸受よりも、高速化することが可能となる。セラミックスから成る玉は鋼球よりも軽く、硬いため、特に本発明のいずれかの保持器と併用することで、より安定した高速回転を行うことが可能となる。
セラミックス焼結材としては、特に軸受寿命および軽量化の観点から、耐疲労剥離性に優れる窒化珪素系材料(密度3.5g/cm3以下)が好ましい。
組み込む窒化珪素系セラミックス製転動体として、燃焼合成法から製造されるサイアロンセラミックス球を用いることで、通常の窒化珪素(Si3N4)からなるセラミックス球よりも、省エネルギーで製造することが可能で且つ組成によって例えば密度3.1〜3.3g/cm3程度により軽量化することが可能となる。このため、軸受製造における環境負荷をより抑えることができる。前記サイアロンの化学組成はSi6−ZALZOZN8−Zで一般的には示される。
セラミックス焼結材としては、特に軸受寿命および軽量化の観点から、耐疲労剥離性に優れる窒化珪素系材料(密度3.5g/cm3以下)が好ましい。
組み込む窒化珪素系セラミックス製転動体として、燃焼合成法から製造されるサイアロンセラミックス球を用いることで、通常の窒化珪素(Si3N4)からなるセラミックス球よりも、省エネルギーで製造することが可能で且つ組成によって例えば密度3.1〜3.3g/cm3程度により軽量化することが可能となる。このため、軸受製造における環境負荷をより抑えることができる。前記サイアロンの化学組成はSi6−ZALZOZN8−Zで一般的には示される。
樹脂材料よりも強度が高いマグネシウム合金から成る保持器を、転がり軸受に組み込むことが可能となるので、高速用途に適したものとできる。転動体としてセラミックスの焼結体から成る玉を適用することで、軸受に絶縁性を持たせることができる。特に高速モータに適する。
保持器材料は、マグネシウム合金だけに限定されるものではない。保持器は、マグネシウム合金以外で鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品であっても良い。
保持器重量が鉄板保持器の重量よりも小さいので、揺動条件での使用に適している。特に、ロボットの関節部分の軸受や、ハードディスクドライブピボット、高精度のフィードバック制御を行っているアプリケーションに適する。
保持器材料は、マグネシウム合金だけに限定されるものではない。保持器は、マグネシウム合金以外で鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品であっても良い。
保持器重量が鉄板保持器の重量よりも小さいので、揺動条件での使用に適している。特に、ロボットの関節部分の軸受や、ハードディスクドライブピボット、高精度のフィードバック制御を行っているアプリケーションに適する。
1…転がり軸受
2…内輪
3…外輪
4…玉
5…保持器
7…環状体
8…爪
9…円環部
12…テーパ形状部
Pt…ポケット
SL…凹み部
2…内輪
3…外輪
4…玉
5…保持器
7…環状体
8…爪
9…円環部
12…テーパ形状部
Pt…ポケット
SL…凹み部
Claims (24)
- 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、
前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を各ポケットに対して設け、
いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした前記爪を設けたことを特徴とする転がり軸受。 - 内外輪間に介在する複数の玉が保持器に保持された転がり軸受において、
前記保持器は、環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状であり、前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を、前記複数箇所のうちの一部のポケットのみに設けたことを特徴とする転がり軸受。 - 請求項1または請求項2において、前記保持器は、鉄よりも軽い金属材料を射出成形して成る射出成形品である転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記爪は、軸方向先端に向かうに従って、円周方向の肉厚が薄くなる先狭まり形状とした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記保持器のいずれかのポケットを、保持器軸方向を含む平面に対し対称に設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記保持器における複数箇所のポケットのうち一部のポケットを、径方向に沿う円筒形状とした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記保持器のいずれかのポケットは、外径側に向かうに従って内径が広がるテーパ形状部を含むものとした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記爪を、前記環状体の一側面の径方向寸法よりも短く形成した転がり軸受。
- 請求項8において、前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側に片寄らせて設けた転がり軸受。
- 請求項8において、前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、内径側に片寄らせて設けた転がり軸受。
- 請求項8において、前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、保持器ピッチ円直径部分のみに設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記爪を、前記環状体の一側面における径方向幅のうちの一部の幅寸法とし、外径側および内径側のみに設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、前記環状体のうち、ポケットが設けられていない側面である他側面が、ポケット間に凹みを有する波形形状とされた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、前記保持器の全体を、玉ピッチ円よりも内径側に設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、前記環状体のうち、円周方向に隣接するポケット間に設けられる円環部の径方向寸法を、前記ポケットの径方向寸法よりも小さくした転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、前記環状体の一側面に、スリット状の凹み部を設けた転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項16のいずれか1項において、前記保持器に、固体潤滑剤を組み込んだ転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項17のいずれか1項において、前記保持器は、マグネシウム合金を射出成形して成る射出成形品である転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項18のいずれか1項において、前記玉がセラミックスから成る転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項19のいずれか1項において、前記転がり軸受が、モータロータを支持する軸受である転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項19のいずれか1項において、前記転がり軸受が、ロボット関節用軸受に用いられる転がり軸受。
- 請求項1ないし請求項19のいずれか1項において、前記転がり軸受が、ハードディスクドライブピボット用軸受に用いられる転がり軸受。
- 環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状の保持器において、
前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を各ポケットに対して設け、
いずれかのポケットにおける一対の爪の軸方向突出量を、他のポケットにおける一対の爪の軸方向突出量よりも低くした前記爪を設けたことを特徴とする冠形保持器。 - 環状体の一側面に一部が開放されて内部に玉を保持するポケットを、前記環状体の円周方向複数箇所に有する冠形状の保持器において、
前記環状体の前記ポケットの開放側の側面におけるポケットの円周方向の両端からそれぞれ軸方向に突出して円周方向に対向し、互いの間で前記ポケットの一部を構成する一対の爪を、前記複数箇所のうちの一部のポケットのみに設けたことを特徴とする冠形保持器。
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