JP7446807B2 - ギヤ油組成物 - Google Patents

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本発明はギヤ油組成物に関し、より詳しくは、例えば手動変速機用の潤滑油として好適に用いることのできるギヤ油組成物に関する。
変速機や終段変速機等の歯車装置において省燃費性を高める手段の一つとして、低粘度の基油に粘度指数向上剤を配合した低粘度の潤滑油を用いることが挙げられる。低粘度の潤滑油によれば、撹拌抵抗を低減してエネルギー効率を高めることが可能である。しかしながら、潤滑油を低粘度化すると油膜厚さが減少しやすくなるため、歯車装置の潤滑油にとって重要な性能である耐疲労性および極圧性が低下する傾向にある。
省燃費性を改善するもう一つの手段として、装置重量の低減が挙げられる。例えば変速機を小型化すれば装置重量は低減できるが、小型化された変速機で従来と同水準の軸出力を扱うためには、変速機を潤滑する潤滑油にはさらなるせん断安定性、極圧性、及び耐疲労性が求められる。終段変速機(ディファレンシャルギヤ)を潤滑する終段変速機油等、他の歯車装置の潤滑油にも同じことがいえる。
特許第5941530号公報 国際公開第2010/110442号公報 特許第3882154号公報
特許文献1には、(A)100℃における動粘度が2~6mm/s、%Cが0.5%以下、3級炭素分が7%以上である鉱油系基油に、(B)100℃における動粘度が6~160mm/sであるポリ-α-オレフィン及び/又はその水素化物を基油全量基準で2~40質量%、および(C)100℃における動粘度が2~10mm/sであるエステル系基油を基油全量基準で5~20質量%配合してなる基油と、(D)重量平均分子量が5,000~200,000のポリ(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤とを含有し、100℃における動粘度が10mm/s以下である、自動車用のギヤユニット用潤滑油組成物が記載されている。しかしながら、変速機等の歯車装置の小型化に伴う潤滑油に対する要求水準の向上を考慮すると、特許文献1に記載の組成物には、せん断安定性、極圧性(耐荷重能)、及び耐疲労性の点において、依然として改善の余地があった。
特許文献2には、(A)100℃における動粘度が2~20mm/sである鉱油および100℃における動粘度が2~20mm/sであるポリオレフィン系合成油から選ばれる1種以上からなる粘度指数が120以上の基油と、(B)数平均分子量が2,000~10,000であるエチレン-α-オレフィン共重合体と、(C)特定の硫黄含有化合物と、(D)有機モリブデン化合物と、(E)リン酸エステル系化合物、亜リン酸エステル系化合物、チオリン酸エステル系化合物、およびチオ亜リン酸エステル系化合物から選ばれる、炭素数2~24の炭化水素基を有するリン含有化合物とを含有し、組成物全量基準で、(B)成分の含有量が3~10質量%、(C)成分の含有量が硫黄原子換算で1.2~2.0質量%、(D)成分の含有量がモリブデン原子換算で100~300質量ppm、(E)成分の含有量がリン原子換算で0.15~0.2質量%であって、組成物中の硫黄原子とリン原子との質量比(S/P)が8~11である、ギヤ油組成物が記載されている。確かに潤滑油に(D)有機モリブデン化合物を配合すれば極圧性および耐摩耗性(摩耗防止性)を高めることは可能であるが、特許文献2に記載の組成物を手動変速機の潤滑油として用いることを考えると、有機モリブデン化合物がシンクロ特性に悪影響を与えるという問題があった。
本発明は、せん断安定性、極圧性(摩耗防止性)、及び耐疲労性をバランスよく高めた、手動変速機油として好ましく用いることのできるギヤ油組成物を提供することを課題とする。
本発明の一の実施形態は、(A)(A1)エステル系基油を基油全量基準で0.5~25質量%、及び、(A2)API基油分類グループII基油、API基油分類グループIII基油、若しくはAPI基油分類グループIV基油、又はそれらの混合物とを含む潤滑油基油と、(B)100℃における動粘度が500~3000mm/sであるエチレン-α-オレフィン共重合体を、組成物全量基準で1.0~10.0質量%と、(C)カルボキシ基を有するジチオリン酸トリエステル化合物を、組成物全量基準で0.1~1.5質量%とを含有することを特徴とする、ギヤ油組成物である。
本発明によれば、せん断安定性、極圧性(摩耗防止性)、及び耐疲労性をバランスよく高めた、手動変速機油として好ましく用いることのできるギヤ油組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。本明細書においては、特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、要素E及びEについて「E及び/又はE」という表記は「E若しくはE、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとし、要素E、…、E(Nは3以上の整数)について「E、…、EN-1、及び/又はE」という表記は「E、…、EN-1、若しくはE、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとする。また本明細書において、「アルカリ土類金属」にはマグネシウムも包含されるものとする。
<(A)潤滑油基油>
本発明のギヤ油組成物(以下において単に「組成物」ということがある。)における潤滑油基油(以下において「(A)成分」ということがある。)は、(A1)エステル系基油(以下において「基油(A1)」ということがある。)を基油全量基準で0.5~25質量%と、(A2)API基油分類グループII基油、API基油分類グループIII基油、若しくはAPI基油分類グループIV基油、又はそれらの混合物(以下において「基油(A2)ということがある。」)とを含んでなる。
基油(A1)としては有機酸エステルを用いることができる。基油(A1)の例としては、1価アルコール又は多価アルコールと1塩基酸又は多塩基酸とのエステル(下記(a)~(g))を挙げることができる。
(a)1価アルコールと1塩基酸とのエステル;
(b)多価アルコールと1塩基酸とのエステル;
(c)1価アルコールと多塩基酸とのエステル;
(d)多価アルコールと多塩基酸とのエステル;
(e)1価アルコール及び多価アルコールの混合物と、多塩基酸との混合エステル;
(f)多価アルコールと、1塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル;
(g)1価アルコール及び多価アルコールとの混合物と、1塩基酸及び多塩基酸の混合物との混合エステル。
1価アルコール又は多価アルコールの例としては、炭化水素基と1個又は2個以上のヒドロキシ基とを有する、炭素数1~30、好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数5~18の1価アルコール又は多価アルコールを挙げることができる。
1塩基酸又は多塩基酸の例としては、炭化水素基と1個又は2個以上のカルボキシ基とを有する、炭素数2~30、好ましくは炭素数4~20、より好ましくは炭素数6~18の1塩基酸又は多塩基酸を挙げることができる。
炭化水素基は、炭化水素分子から1つ以上の水素原子を取り除くことにより得られる。炭化水素の例としては、鎖式飽和脂肪族炭化水素(すなわちアルカン)、鎖式不飽和脂肪族炭化水素(すなわちアルケン)、環式飽和脂肪族炭化水素(すなわちシクロアルカン;1つ以上のアルキル置換基を有していても良い)、環式不飽和脂肪族炭化水素(すなわちシクロアルケン;1つ以上のアルキル置換基を有していても良い)、芳香族炭化水素(1つ以上のアルキル置換基を有していても良い)、等を挙げることができる。1価アルコール及び1塩基酸が有する1価の炭化水素基の例としては、これらの炭化水素分子から水素原子を1つ取り除くことにより得られる基を挙げることができる。多価アルコール及び多塩基酸が有する多価炭化水素基の例としては、これらの炭化水素分子から2つ以上の水素原子を取り除くことにより得られる基を挙げることができる。
1価アルコールの好ましい例としては、炭素数1~30の直鎖または分岐鎖アルキルモノアルコール;アリルアルコール、ブテノール、ヘキセノール、オクテノール、デセノール、ドデセノール、オクタデセノール(例えばオレイルアルコール等。)等の炭素数2~40の直鎖または分岐鎖アルケニルモノアルコール(二重結合の位置は任意であるが、ヒドロキシ基のα位以外であることが好ましい。)、及びこれらの混合物等が挙げられる。
多価アルコールの好ましい例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3-メチル-1,3-ブタンジオール)、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の、炭素数2~30の直鎖または分岐鎖アルカンジオール(ヒドロキシ基の置換位置は任意であるが、複数のヒドロキシ基が同一の炭素原子に結合していないことが好ましい);炭素数4~30の直鎖または分岐鎖アルケンジオール(ヒドロキシ基の置換位置は任意であるが、複数のヒドロキシ基が同一の炭素原子に結合していないことが好ましく;二重結合の位置は任意であるが、どのヒドロキシ基のα-位でもないことが好ましい。);グリセリン、トリメチロールアルカン(例えばトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等。)、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,3,5-ペンタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、3-メチル-1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ヘキサントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,3,6-ヘキサントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、ペンタメチルグリセリン(2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール)等の3価アルコール;エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4-ブタンテトロール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,5,6-ヘキサンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、アロース、タロース、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール等の6価アルコール;ポリグリセリン;及びこれらの脱水縮合物(分子内縮合化合物(例えばソルビタン、イソソルビド等。)、分子間縮合化合物(例えばソルビトールグリセリン縮合物等。)、又は自己縮合化合物(例えばグリセリンの2~8量体、ジトリメチロールプロパン等のトリメチロールアルカンの2~8量体、ジペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの2~4量体等。));並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
また、1価または多価アルコールとしては、上記1価または多価アルコールと、炭素数2~6、好ましくは炭素数2~4のアルキレンオキサイド又はその重合体もしくは共重合体との付加反応により得られる、アルコールのアルキレンオキサイド付加物を用いても良い。アルコールのアルキレンオキサイド付加物においては、原料アルコールのヒドロキシ基から水素原子が取り除かれ、該ヒドロキシ基の酸素原子と原料アルキレンオキサイド(又はその重合体もしくは共重合体)のエポキシド環の炭素原子との間に新たなC-O結合が形成されるとともに、原料アルキレンオキサイド(又はその重合体もしくは共重合体)のエポキシド環が開環することにより新たなヒドロキシ基が生成している。炭素数2~6のアルキレンオキサイドの例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-エポキシブタン(α-ブチレンオキサイド)、2,3-エポキシブタン(β-ブチレンオキサイド)、1,2-エポキシ-1-メチルプロパン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシヘキサン等が挙げられる。これらの中では、低摩擦性に優れる点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドがより好ましい。なお、2種以上のアルキレンオキサイドを用いた場合には、オキシアルキレン基の重合形式は特に制限されるものではなく、例えば2種以上のアルキレンオキサイドがランダム共重合していてもよく、また例えば2種以上のアルキレンオキサイドがブロック共重合していてもよい。また、ヒドロキシ基を2個以上(例えば2~6個等。)有する多価アルコールとアルキレンオキサイド(又はその重合体もしくは共重合体)との付加反応においては、原料多価アルコールの全てのヒドロキシ基が付加反応に関与してもよく、一部のヒドロキシル基のみが付加反応に関与してもよい。
1塩基酸としては、炭素数2~30の脂肪酸を用いることができる。脂肪酸は直鎖脂肪酸であってもよく、分岐鎖脂肪酸であってもよい。また脂肪酸は飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等の飽和脂肪酸;アクリル酸、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、ノナデセン酸、エイコセン酸、ヘンエイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等の不飽和脂肪酸;及びこれらの混合物等を挙げることができる。
脂肪酸の炭素数は好ましくは6~30、より好ましくは8~24であり、一の実施形態において8~18であり得る。脂肪酸の好ましい例としては、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、及びこれらの混合物等を挙げることができる。2種以上の脂肪酸を含有する混合物として、天然油脂由来の脂肪酸を用いてもよい。天然油脂由来の脂肪酸の例としては、ココナッツ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、キリ油脂肪酸、トール油脂肪酸、コーン油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ごま油脂肪酸、大豆油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、あまに油脂肪酸、魚油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これら天然油脂由来の脂肪酸は炭素数8~24の2種以上の脂肪酸の混合物である。
多塩基酸の例としては、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の、炭素数2~30、好ましくは炭素数4~30の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和脂肪族ジカルボン酸(不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和結合の位置は任意である。);プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、ノナントリカルボン酸、デカントリカルボン酸等の、直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和脂肪族トリカルボン酸(不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和結合の位置は任意である。);直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和脂肪族テトラカルボン酸(不飽和脂肪族炭化水素基における不飽和結合の位置は任意である。)等が挙げられる。
基油(A1)としては、上記(a)~(g)から選ばれる1種以上のエステル系基油を用いることができる。基油(A1)として1種のエステル系基油を単独で用いてもよく、2種以上のエステル系基油を組み合わせて用いてもよい。
基油(A1)の具体例としては、ブチルステアレート、オクチルラウレート等の、1価アルコールと1塩基酸とのエステル;ジトリデシルグルタレート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート、アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル)等の、1価アルコールと2塩基酸とのエステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンオレエート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等の、多価アルコールと1塩基酸とのエステル;トリメリット酸エステル等のポリエステル、等を挙げることができる。
基油(A1)としては、多価アルコールと1塩基酸とのエステル(上記(b))、若しくは1価アルコールと多塩基酸とのエステル(上記(c))、又はそれらの組み合わせを好ましく用いることができる。
多価アルコールと1塩基酸とのエステル(b)の好ましい例としては、トリメチロールアルカン(例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等。)、エリスリトール、及びペンタエリスリトールから選ばれる1種以上の脂肪族多価アルコールと、炭素数6~30、好ましくは炭素数8~24の1種以上の脂肪酸とのエステルを挙げることができる。
1価アルコールと多塩基酸とのエステル(c)の好ましい例としては、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、イソデカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール等の炭素数8~18の1種以上の脂肪族モノアルコールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数4~10の1種以上の脂肪族ジカルボン酸とのジエステルを挙げることができる。
基油(A1)の100℃における動粘度は好ましくは2~10mm/s、より好ましくは3~10mm/sであり、一の実施形態において8~10mm/sであり得る。基油(A1)の100℃における動粘度が上記範囲内であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。なお本明細書において、「100℃における動粘度」とは、ASTM D-445に規定される100℃での動粘度を意味する。
基油(A1)の流動点は特に制限されるものではないが、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、特に好ましくは-40℃以下である。基油(A1)の流動点が上記上限値以下であることにより、低温始動性および始動直後の省燃費性を高めることが可能になる。
基油(A1)の水酸基価は、好ましくは2.0~20.0mgKOH/g、より好ましくは3.0~17.0mgKOH/gであり、一の実施形態において9.0~17.0mgKOH/gであり得る。基油(A1)の水酸基価が上記下限値以上であることにより、基油分子の摺動面への吸着性が高まるため、摺動面における油膜厚さを増大させることが可能になる。また基油(A1)の水酸基価が上記上限値以下であることにより、基油(A1)の親油性が高まるので、組成物の貯蔵安定性を高めることが可能になる。なお本明細書において、基油(A1)の水酸基価は、JIS K0070に準拠して電位差滴定法により測定される水酸基価を意味する。
基油(A1)の酸価は、好ましくは0~3.0mgKOH/g、より好ましくは0~1.5mgKOH/gであり、一の実施形態において0~0.55mgKOH/gであり得る。基油(A1)の酸価が上記上限値以下であることにより、酸化安定性を高めることが可能になる。なお本明細書において、基油(A1)の酸価は、JIS K0070に準拠して電位差滴定法により測定される酸価を意味する。
(A)潤滑油基油(全基油)中の基油(A1)の含有量は、基油全量基準で0.5~25.0質量%であり、好ましくは1.0~20.0質量%であり、一の実施形態において3~15質量%、他の一の実施形態において4~12質量%であり得る。基油(A1)の含有量が上記範囲内であることにより、耐疲労性を高めることが可能になる。
基油(A2)としては、1種以上のAPI基油分類グループII基油(以下において単に「APIグループII基油」ということがある。)、1種以上のAPI基油分類グループIII基油(以下において単に「APIグループIII基油」ということがある。)、若しくは1種以上のAPI基油分類グループIV基油(以下において単に「APIグループIV基油」ということがある。)、又はそれらの混合物を特に制限なく用いることができる。APIグループII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。APIグループIII基油は、硫黄分が0.03質量%以上、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が120以上の鉱油系基油である。APIグループIV基油はポリα-オレフィン基油である。基油(A2)としては、1種の基油を単独で用いてもよく、2種以上の基油を組み合わせて用いてもよい。2種以上の基油を含む混合基油においては、それらの基油のAPI基油分類は同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。基油(A2)としては、1種以上のAPIグループIII基油、若しくは1種以上のAPIグループIV基油、またはそれらの混合物を用いることが好ましい。
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの1種もしくは2種以上の精製手段を適宜組み合わせて適用して得られる、パラフィン系またはナフテン系などの鉱油系基油を挙げることができる。APIグループII基油及びグループIII基油は通常、水素化分解プロセスを経て製造される。また鉱油系基油としては、ワックス異性化基油や、GTL WAX(ガストゥリキッド ワックス)を異性化する手法で製造される基油等も用いることができる
APIグループIV基油の例としては、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。
基油(A2)の100℃における動粘度は、好ましくは1.9~10.0mm/s、より好ましくは2.5~7.5mm/sである。基油(A2)の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。また基油(A2)の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。
(A)成分(全基油)中の基油(A2)の含有量は、基油全量基準で好ましくは75.0~99.5質量%、より好ましくは80.0~99.0質量%であり、一の実施形態において85~97質量%、さらに他の一の実施形態において88~96質量%であり得る。基油(A2)の含有量が上記範囲内であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。
一の実施形態において、(A)潤滑油基油は、基油(A1)及び基油(A2)に加えて、API基油分類グループI基油(以下において「APIグループI基油」ということがある。)、若しくはAPI基油分類グループV(以下において「APIグループV基油」ということがある。)基油のうちエステル系基油以外の基油、又はそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。APIグループI基油は、硫黄分が0.03質量%超、かつ/または、飽和分が90質量%未満であって、粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。エステル系基油以外のAPIグループV基油の例としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル、並びにこれらの混合物等を挙げることができる。
ただし、(A)成分(全基油)中の基油(A1)および基油(A2)の合計の含有量は、基油全量基準で好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%である。一の実施形態において、(A)潤滑油基油は、基油(A1)と基油(A2)とからなる。全基油中の基油(A1)および基油(A2)の合計の含有量が上記下限値以上であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。
(A)潤滑油基油(全基油)の100℃における動粘度は、好ましくは2.5~7.5mm/s、より好ましくは2.9~7.0mm/sであり、一の実施形態において3.2~6.5mm/s、他の一の実施形態において4.0~6.5mm/s、さらに他の一の実施形態において4.0~5.5mm/sであり得る。全基油の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また全基油の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。
(A)潤滑油基油(全基油)の40℃における動粘度は、好ましくは8.0~40.0mm/s、より好ましくは10.0~35.0mm/sであり、一の実施形態において12.3~30.0mm/s、他の一の実施形態において15.0~30.0mm/s、さらに他の一の実施形態において15.0~25.0mm/sであり得る。全基油の40℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。また全基油の40℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。なお本明細書において「40℃における動粘度」とは、ASTM D-445に規定される40℃での動粘度を意味する。
(A)潤滑油基油(全基油)の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは105以上、さらに好ましくは110以上、特に好ましくは115以上、最も好ましくは120以上である。粘度指数が上記下限値以上であることにより、ギヤ油組成物の粘度-温度特性及び摩耗防止性を高めることが可能になるほか、省燃費性をさらに高めることが可能になる。なお、本明細書において粘度指数とは、JIS K 2283-1993に準拠して測定される粘度指数を意味する。
(A)潤滑油基油(全基油)中の硫黄分の含有量は、酸化安定性の観点から好ましくは0.03質量%(300質量ppm)以下、より好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下であり、1質量ppm以下であってもよい。
ギヤ油組成物中の(A)成分(全基油)の含有量は、組成物全量基準で、通常75~98質量%、好ましくは80~95質量%であり、一の実施形態において81~91質量%であり得る。
<(B)エチレン-α-オレフィン共重合体>
本発明のギヤ油組成物は、(B)100℃における動粘度が500~3000mm/sであるエチレン-α-オレフィン共重合体(以下において「(B)成分」ということがある。)を、組成物全量基準で1.0~10.0質量%含有する。
(B)成分は、エチレンと1種以上のα-オレフィンとの共重合体である。(B)成分としては、1種のエチレン-α-オレフィン共重合体を単独で用いてもよく、2種以上のエチレン-α-オレフィン共重合体を組み合わせて用いてもよい。(B)成分において、エチレンと共重合されるα-オレフィンの炭素数は好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。α-オレフィンの好ましい例としては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等を挙げることができ、これらの中でもプロピレンが特に好ましい。
エチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレン繰り返し単位の含有量は、共重合体の繰り返し単位の全量を基準(100mol%)として、好ましくは15~85mol%、より好ましくは20~80mol%である。共重合体中の単量体の配列は特に制限されるものではなく、例えばランダム共重合体であってもよく、また例えば交互共重合体であってもよく、また例えばブロック共重合体であってもよい。
(B)成分の100℃における動粘度は500~3000mm/sであり、好ましくは500~2200mm/sである。(B)成分の100℃における動粘度が上記範囲内であることにより、せん断安定性、耐疲労性、及び省燃費性を高めることが可能になる。また一の好ましい実施形態において、(B)成分の100℃動粘度は1500~3000mm/sであり得る。(B)成分の100℃動粘度が上記範囲内であることにより、耐疲労性をさらに高めることが可能になる。 他の好ましい実施形態において、(B)成分の100℃動粘度は500~1000mm/sであり得る。(B)成分の100℃動粘度が上記範囲内であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。
(B)成分の数平均分子量は好ましくは2000~8000であり、より好ましくは3000~7200であり、一の実施形態において5000~7200であり得る。(B)成分の数平均分子量が上記上限値以下であることにより、せん断安定性をさらに高めることが可能になる。また(B)成分の数平均分子量が上記下限値以上であることにより、より良好な粘度指数向上効果を得ることが可能になる。なお本明細書において、(B)成分の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(装置:Alliance2695(Waters社製)、カラム:上流側から順にGMHHR-M(東ソー社製)2本を直列に接続、溶離液(溶媒):テトラヒドロフラン、注入量:100μL、サンプル濃度:2.0質量%、流速:1mL/min、温度:25℃、検出器:示差屈折率(RI)検出器)により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
ギヤ油組成物中の(B)成分の含有量は、組成物全量基準で1.0~10.0質量%であり、好ましくは1.5~9.5質量%であり、一の実施形態において3.0~7.0質量%であり得る。(B)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、耐疲労性を高めることが可能になるほか、低滑り速度領域までトラクション係数を低減して省燃費性を高めることが可能になる。また(B)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、耐疲労性を高めることが可能になる。
<(C)カルボキシ基を有するジチオリン酸トリエステル化合物>
本発明のギヤ油組成物は、(C)カルボキシ基を有するジチオリン酸トリエステル化合物(以下において「(C)成分」ということがある。)を、組成物全量基準で0.1~1.5質量%含有する。
(C)成分としては、下記一般式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
Figure 0007446807000001
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数3~18のアルキル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数6~7のシクロアルキルメチル基、炭素数10~11のビシクロアルキルメチル基、炭素数10~11のトリシクロアルキルメチル基、フェニル基、若しくは炭素数7~24のアルキルフェニル基、又は相互に結合して2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
及びRについて、炭素数3~18のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。炭素数3~18のアルキル基の好ましい例としては、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、3-ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、2-エチルブチル基、1-メチルペンチル基、1,3-ジメチルブチル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、1-メチルヘキシル基、イソヘプチル基、1-メチルヘプチル基、1,1,3-トリメチルヘキシル基、及び1-メチルウンデシル基等を挙げることができる。これらの中でもイソプロピル基、イソブチル基、又は2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
及びRについて、炭素数5~12のシクロアルキル基の好ましい例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、及びシクロドデシル基を挙げることができる。これらの中でもシクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましく、シクロヘキシル基が特に好ましい。
及びRについて、炭素数6~7のシクロアルキルメチル基は、シクロペンチルメチル基又はシクロヘキシルメチル基であり、好ましくはシクロヘキシルメチル基である。
及びRについて、炭素数10~11のビシクロアルキルメチル基の好ましい例としては、デカリニルメチル基を挙げることができる。
及びRについて、炭素数10~11のトリシクロアルキルメチル基の好ましい例としては、下記一般式(2)又は(3)で表される基を挙げることができる。
Figure 0007446807000002
及びRについて、アルキルフェニル基の好ましい例としては、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ジ-tert-ブチルフェニル基、及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル基を挙げることができる。
及びRは同一の基であってもよく、2種以上の異なる基の組み合わせであってもよい。R及びRとしては、炭素数3~18のアルキル基、炭素数5~6のシクロアルキル基、又は炭素数7~18のアルキルフェニル基が好ましく、炭素数3~18のアルキル基が特に好ましい。
一般式(1)の化合物は、例えば下記一般式(4)で表される反応により製造することができる。
Figure 0007446807000003
一般式(4)で表される、アクリル酸またはメタクリル酸とジチオリン酸ジエステルとの反応は、例えばトルエン等の有機溶媒中で又はneat(無溶媒条件)で行うことができ、反応温度は例えば70~80℃、反応時間は例えば4~5時間とすることができる。
ギヤ油組成物中の(C)成分の含有量は、組成物全量基準で0.05~1.50質量%であり、好ましくは0.10~1.00質量%であり、一の実施形態において0.10~0.35質量%であり得る。(C)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、極圧性を高めることが可能になる。また(C)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、酸化安定性を高めることが可能になるほか、低滑り速度領域までトラクション係数を低減して省燃費性を高めることが可能になる。
<(D)金属系清浄剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は、(D)金属系清浄剤(以下において「(D)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(D)成分としては、潤滑油分野において既知の金属系清浄剤を特に制限なく用いることができ、例えばアルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属サリシレート等から選ばれる1種以上の金属系清浄剤を好ましく用いることができる。(D)成分としては1種の金属系清浄剤を単独で用いてもよく、2種以上の金属系清浄剤を組み合わせて用いてもよい。アルカリ土類金属としてはカルシウム又はマグネシウムが好ましい。一の実施形態において、カルシウムスルホネート及び/又はカルシウムサリシレートを(D)成分として好ましく用いることができる。
アルカリ土類金属フェネート清浄剤の好ましい例としては、以下の一般式(5)で示される化合物のアルカリ土類金属塩の過塩基性塩を挙げることができる。アルカリ土類金属としてはカルシウム又はマグネシウムが好ましい。
Figure 0007446807000004
一般式(5)中、Rは炭素数6~21の直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和のアルキル基又はアルケニル基を表し、aは重合度であって1~10の整数を表し、Aはスルフィド(-S-)基またはメチレン(-CH-)基を表し、bは1~3の整数を表す。なおRは2種以上の異なる基の組み合わせであってもよい。
一般式(5)におけるRの炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは9~15である。Rの炭素数が上記下限値以上であることにより、基油に対する溶解性を高めることができる。またRの炭素数が上記上限値以下であることにより製造が容易になる。
一般式(5)における重合度aは、好ましくは1~3である。重合度aがこの範囲内であることにより、耐熱性を高めることができる。
アルカリ土類金属スルホネート清浄剤の好ましい例としては、アルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、またはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。アルキル芳香族化合物の重量平均分子量は好ましくは400~1500である。アルカリ土類金属としてはカルシウム又はマグネシウムが好ましい。
アルキル芳香族スルホン酸の例としては、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸の例としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が挙げられる。また、合成スルホン酸の一例としては、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントにおける副生成物を回収すること、または、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものを挙げることができる。合成スルホン酸の他の一例としては、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したものを挙げることができる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては、例えば発煙硫酸や無水硫酸等の公知のスルホン化剤を特に制限なく用いることができる。
アルカリ土類金属サリシレート清浄剤の好ましい例としては、アルカリ土類金属サリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。アルカリ土類金属としてはカルシウム又はマグネシウムが好ましい。アルカリ土類金属サリシレートの好ましい例としては、下記一般式(6)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000005
一般式(6)中、Rはそれぞれ独立に炭素数14~30のアルキル基またはアルケニル基を表し、Mはアルカリ土類金属を表し、cは1又は2を表し、好ましくは1である。なおc=2である場合、Rは異なる基の組み合わせであってもよい。
アルカリ土類金属サリシレート清浄剤の好ましい一形態としては、上記一般式(6)においてc=1であるアルカリ土類金属サリシレートまたはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。
アルカリ土類金属サリシレートの製造方法は特に制限されるものではなく、公知のモノアルキルサリシレートの製造方法等を用いることができる。例えば、フェノールを出発原料として、オレフィンを用いてアルキレーションし、次いで炭酸ガス等でカルボキシレーションして得たモノアルキルサリチル酸、あるいは、サリチル酸を出発原料として、当量の上記オレフィンを用いてアルキレーションして得られたモノアルキルサリチル酸等に、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基を反応させること、又は、これらのモノアルキルサリチル酸等を一旦ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と金属交換させること等により、アルカリ土類金属サリシレートを得ることができる。
(D)成分は、炭酸塩(例えば炭酸カルシウムや炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩。)で過塩基化されていてもよく、ホウ酸塩(例えばホウ酸カルシウムやホウ酸マグネシウム等のアルカリ土類金属ホウ酸塩。)で過塩基化されていてもよい。
アルカリ土類金属炭酸塩で過塩基化された金属系清浄剤を得る方法は特に限定されるものではないが、例えば、炭酸ガスの存在下で、金属系清浄剤(例えばアルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属サリシレート等。)の中性塩をアルカリ土類金属の塩基(例えばアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物等。)と反応させることにより得ることができる。
アルカリ土類金属ホウ酸塩で過塩基化された金属系清浄剤を得る方法は特に限定されるものではないが、ホウ酸または無水ホウ酸及び任意的にホウ酸塩の存在下で、金属系清浄剤(例えばアルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属サリシレート等。)の中性塩をアルカリ土類金属の塩基(例えばアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物等。)と反応させることにより得ることができる。ホウ酸はオルトホウ酸であってもよく、縮合ホウ酸(例えば二ホウ酸、三ホウ酸、四ホウ酸、メタホウ酸等。)であってもよい。ホウ酸塩としては、これらのホウ酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩を好ましく用いることができる。ホウ酸塩は中性塩であってもよく、酸性塩であってもよい。ホウ酸および/またはホウ酸塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ギヤ油組成物中の(D)成分の含有量は、組成物全量基準で金属量として好ましくは0.1~0.5質量%、より好ましくは0.2~0.4質量%であり、一の実施形態において0.3~0.4質量%であり得る。(D)成分の含有量が上記範囲内であることにより、清浄化性能および塩基価維持性を高めることが可能になるとともに、シンクロナイザーリングの摩擦特性を改善することが可能になる。
<(E)窒素含有無灰分散剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は、(E)窒素含有無灰分散剤(以下において「(E)成分」ということがある。)をさらに含み得る。
(E)成分としては、例えば、以下の(E-1)~(E-3)から選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。
(E-1)アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドまたはその変性物(以下において「成分(E-1)」ということがある。)、
(E-2)アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミンまたはその変性物(以下において「成分(E-2)」ということがある。)、
(E-3)アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミンまたはその変性物(以下において「成分(E-3)」ということがある。)。
(E)成分としては、成分(E-1)を特に好ましく用いることができる。
成分(E-1)のうち、アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの例としては、下記一般式(7)または(8)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000006
式(7)中、Rは炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を示し、dは1~5、好ましくは2~4の整数を示す。Rの炭素数は好ましくは60~350である。
式(8)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を示し、異なる基の組み合わせであってもよい。また、eは0~4、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の整数を示す。R及びRの炭素数は好ましくは60~350である。
式(7)及び式(8)におけるR~Rの炭素数が上記下限値以上であることにより、潤滑油基油に対する良好な溶解性を得ることができる。一方、R~Rの炭素数が上記上限値以下であることにより、ギヤ油組成物の低温流動性を高めることができる。
式(7)及び式(8)におけるアルキル基またはアルケニル基(R~R)は直鎖状でも分枝状でもよく、好ましくは、例えば、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基を挙げることができる。なかでも慣用的にポリイソブチレンと呼ばれるイソブテンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基またはアルケニル基や、ポリブテニル基が最も好ましい。
式(7)及び式(8)におけるアルキル基またはアルケニル基(R~R)の好適な数平均分子量は800~3500である。
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドには、ポリアミン鎖の一方の末端のみに無水コハク酸が付加した、式(7)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミン鎖の両末端に無水コハク酸が付加した、式(8)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含される。本発明のギヤ油組成物には、モノタイプのコハク酸イミド及びビスタイプのコハク酸イミドのいずれが含まれていてもよく、それらの両方が混合物として含まれていてもよい。(E-1)成分中のビスタイプのコハク酸イミド又はその変性物の含有量は、(E-1)成分の全量を基準(100質量%)として好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの製法は、特に制限されるものではない。該コハク酸イミドは例えば、炭素数40~400のアルキル又はアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物と、ポリアミンとの反応により縮合反応生成物として得ることができる。(E-1)成分としては、該縮合生成物をそのまま用いてもよく、該縮合生成物を後述する誘導体に変換して用いてもよい。アルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物とポリアミンとの縮合生成物は、ポリアミン鎖の両末端がイミド化された、ビスタイプのコハク酸イミド(一般式(8)参照。)であってもよく、ポリアミン鎖の一方の末端のみがイミド化された、モノタイプのコハク酸イミド(一般式(7)参照。)であってもよく、それらの混合物であってもよい。ここで、炭素数40~400のアルケニル基を有するアルケニルコハク酸無水物は例えば、炭素数40~400のオレフィンと無水マレイン酸とを100~200℃で反応させることにより得ることができる。また、該アルケニルコハク酸無水物をさらに水素添加反応に供することにより、炭素数40~400のアルキル基を有するアルキルコハク酸無水物を得ることができる。ポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン、並びにそれらの混合物を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上を含むポリアミン原料を好ましく用いることができる。ポリアミン原料はエチレンジアミンをさらに含有してもよく、含有しなくてもよいが、縮合生成物またはその誘導体の分散剤としての性能を高める観点からは、ポリアミン原料中のエチレンジアミンの含有量は、ポリアミン全量基準で好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%である。炭素数40~400のアルキル若しくはアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物と、2種以上のポリアミンの混合物との縮合反応生成物として得られるコハク酸イミドは、一般式(7)又は(8)において異なるd又はeを有する化合物の混合物である。
(E-1)成分の重量平均分子量は1000~20000、より好ましくは2000~20000、さらに好ましくは3000~15000であり、一の実施形態において4000~9000であり得る。
成分(E-2)のうち、アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミンの例としては、下記式(9)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000007
式(9)中、Rは炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を表し、fは1~5、好ましくは2~4の整数を表す。Rの炭素数は好ましくは60~350である。
成分(E-2)の製法は特に制限されるものではない。例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、又はエチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンを、フェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドと、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンとをマンニッヒ反応により反応させる方法を挙げることができる。
成分(E-3)のうちアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミンの例としては、下記式(10)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000008
式(10)中、R10は炭素数40~400以下のアルキル基またはアルケニル基を表し、gは1~5、好ましくは2~4の整数を表す。R10の炭素数は好ましくは60~350である。
成分(E-3)の製法は特に制限されるものではない。例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテンまたはエチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させる方法が挙げられる。
成分(E-1)~成分(E-3)における変性物(変性化合物)の例としては、(i)含酸素有機化合物による変性化合物、(ii)ホウ酸変性化合物、(iii)リン酸変性化合物、(iv)硫黄変性化合物、及び(v)これらのうち2種以上の変性の組み合わせによる変性化合物、を挙げることができる。
(i)含酸素有機化合物による変性化合物は、上述のアルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、ベンジルアミンまたはポリアミン(以下「上述の含窒素化合物」という。)に、脂肪酸等の炭素数1~30のモノカルボン酸、炭素数2~30のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等。)、これらの無水物もしくはエステル化合物、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、又はヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートを作用させたことにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている変性化合物である。
(ii)ホウ素変性化合物は、上述の含窒素化合物にホウ酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている変性化合物である。
(iii)リン酸変性化合物は、上述の含窒素化合物にリン酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている変性化合物である。
(iv)硫黄変性化合物は、上述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させることにより得られる変性化合物である。
(v)2種以上の変性の組み合わせによる変性化合物は、上述の含窒素化合物に含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせて施すことにより得ることができる。
これら(i)~(v)の誘導体の中でも、アルケニルコハク酸イミドのホウ酸変性化合物、特にビスタイプのアルケニルコハク酸イミドのホウ酸変性化合物を好ましく用いることができる。
ギヤ油組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.1~3.0質量%であり、一の実施形態において0.1~1.0質量%であり得る。(E)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、ギヤ油組成物の耐コーキング性を十分に向上させるとともに、添加剤の溶解性を高めることができる。また(E)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、省燃費性をより高く維持することが可能になる。
一の実施形態において、(E)成分は、ホウ酸変性コハク酸イミド無灰分散剤であってもよい。他の一の実施形態において、(E)成分は、1種以上のホウ酸変性コハク酸イミド無灰分散剤と、ホウ酸変性されていない1種以上のコハク酸イミド無灰分散剤との組み合わせであってもよい。他の一の実施形態において、(E)成分は、ホウ酸変性されていない1種以上のコハク酸イミド無灰分散剤であってもよい。
<(F)硫黄含有極圧剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は、(C)成分以外の1種以上の硫黄含有極圧剤(以下において「(F)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(C)成分以外の硫黄含有極圧剤の例としては、チアジアゾール化合物、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビル(ポリ)サルファイド、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物、硫化鉱油、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物等の公知の硫黄含有極圧剤およびリン-硫黄系添加剤を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上の添加剤を(F)成分として好ましく用いることができる。硫黄含有添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なおリン-硫黄系添加剤は後述する(G)成分の含有量にも寄与するものとする。なお後述するように組成物中のモリブデン含有量を低減する観点から、(F)成分としては、チアジアゾール化合物、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビル(ポリ)サルファイド、アルキルチオカルバモイル化合物、チオカーバメート化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物、硫化鉱油、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、及びジチオリン酸亜鉛化合物から選ばれる1種以上の添加剤を用いることが好ましい。
チアジアゾール化合物の好ましい例としては、下記一般式(11)で表される1,3,4-チアジアゾール化合物、下記一般式(12)で表される1,2,4-チアジアゾール化合物、及び下記一般式(13)で表される1,2,3-チアジアゾール化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000009
Figure 0007446807000010
Figure 0007446807000011
(一般式(11)~(13)中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~20のヒドロカルビル基を表し;h及びiは同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に0~8の整数を表す。)
硫化油脂は、硫黄や硫黄含有化合物と油脂(ラード油、鯨油、植物油、魚油等)とを反応させて得られる生成物である。硫化油脂中の硫黄含有量は特に制限はないが、通常5~30重量%である。
硫化脂肪酸としては、不飽和脂肪酸を任意の方法で硫化することにより得られる生成物を用いることができ、その例としては硫化オレイン酸などを挙げることができる。
硫化エステルとしては、不飽和脂肪酸エステル(例えば、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸など)と各種アルコールとを反応させて得られる生成物。)を任意の方法で硫化することにより得られる生成物を用いることができ、その例としては硫化オレイン酸メチル、硫化米ぬか脂肪酸オクチル等を挙げることができる。
硫化オレフィンの例としては、下記一般式(14)で表される化合物を挙げることができる。この化合物は、炭素数2~15のオレフィンまたはその2~4量体を、硫黄、塩化硫黄等の硫化剤と反応させることによって得ることができる。該オレフィンとしては、プロピレン、イソブテン、ジイソブテン等を好ましく用いることができる。
Figure 0007446807000012
(一般式(14)中、R13は炭素数2~15のアルケニル基を表し、R14は炭素数2~15のアルキル基又はアルケニル基を表し、jは1~8の整数を示す。)
ジヒドロカルビル(ポリ)サルファイドは、下記一般式(15)で表される化合物である。ここで、R15及びR16がアルキル基の場合、硫化アルキルと称されることがある。
Figure 0007446807000013
(一般式(15)中、R15及びR16は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基(直鎖でも分岐鎖でもよく、環状構造を有していてもよい。)、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基、又は炭素数7~20のアリールアルキル基を表し、kは1~8の整数を表す。)
アルキルチオカルバモイル化合物の例としては、下記一般式(16)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000014
(一般式(16)中、R17~R20は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基を表し、lは1~8の整数を表す。)
アルキルチオカーバメート化合物の例としては、下記一般式(17)で示される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000015
(一般式(17)中、R21~R24は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1~20のアルキル基を示し、R25は炭素数1~10のアルキレン基を示す。)
チオテルペン化合物としては、例えば、五硫化リンとピネンの反応物を挙げることができる。
ジアルキルチオジプロピオネート化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等を挙げることができる。
硫化鉱油は、鉱油に単体硫黄を溶解させることにより得られる物質である。硫化鉱油に用いられる鉱油は特に制限されるものではないが、その例としては、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分に対して、公知の精製処理を適宜組み合わせて施すことにより精製されたパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよい。硫化鉱油中の硫黄含有量は特に制限されるものではないが、硫化鉱油全量を基準として通常0.05~1.0重量%である。
ジチオカルバミン酸亜鉛化合物としては下記一般式(18)で表される化合物を用いることができ、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物としては下記一般式(19)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0007446807000016
(一般式(18)中、R26~R29は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表す。)
Figure 0007446807000017
(一般式(19)中、R30~R33は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表し、X~Xはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。)
ジチオリン酸亜鉛化合物としては、下記一般式(20)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0007446807000018
(一般式(20)中、R34~R37は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数3~18のヒドロカルビル基を表す。)
ジチオリン酸モリブデン化合物の一例としては、下記一般式(21)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007446807000019
(一般式(21)中、R38~R41は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に炭素数1以上のヒドロカルビル基を表し、X~Xはそれぞれ独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。)
一般式(21)の化合物は2核モリブデン錯体であるが、ジチオリン酸モリブデン化合物は当該形態に限定されない。例えば単核モリブデン錯体や3核以上の多核モリブデン錯体である形態のジチオリン酸モリブデン化合物を用いることも可能である。
ギヤ油組成物が(F)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で硫黄量として好ましくは0.3~2.5質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%であり、一の実施形態において0.5~1.3質量%であり得る。(F)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、極圧性および耐疲労性をさらに高めることが可能になる。また(F)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、耐摩耗性、耐疲労性、酸化安定性、及びシンクロナイザーリングの摩擦特性をさらに改善することが可能になる。
<(G)リン含有摩耗防止剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は、(C)成分および(F)成分以外の1種以上のリン含有摩耗防止剤(以下において「(G)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(G)成分としては例えば、(F)成分として上記説明したリン-硫黄系添加剤のほか、下記一般式(22)で表される化合物、下記一般式(23)で表される化合物、並びにそれらの金属塩およびアンモニウム塩等のリン含有摩耗防止剤を挙げることができる。リン含有添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお(G)成分が硫黄元素を含む場合、その含有量は上記(F)成分の含有量にも寄与するものとする。
Figure 0007446807000020
(一般式(22)中、X、X10、及びX11は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R42は炭素数1~30の炭化水素基を表し;R43及びR44はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表し;R42、R43、及びR44は同一でも相互に異なっていてもよい。)
Figure 0007446807000021
(一般式(23)中、X12、X13、X14、及びX15は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R45は炭素数1~30の炭化水素基を表し;R46及びR47はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~30の炭化水素基を表し;R45、R46、及びR47は同一でも相互に異なっていてもよい。)
一般式(22)及び(23)における炭素数1~30の炭化水素基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基等を挙げることができる。炭化水素基は好ましくは、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数6~24のアリール基であり、一の実施形態において炭素数3~18、さらに好ましくは炭素数4~12のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である。
一般式(22)又は(23)で表されるリン化合物と金属塩を形成する金属の例としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、もしくは亜鉛、又はそれらの組み合わせが好ましい。
一般式(22)又は(23)で表されるリン化合物とアンモニウム塩を形成する含窒素化合物の例としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、及びアルカノールアミンを挙げることができる。より具体的には、下記一般式(24)で表される含窒素化合物;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;及びこれらの組み合わせ、等を挙げることができる。
Figure 0007446807000022
(一般式(24)中、R48~R50はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のヒドロカルビル基、又はヒドロキシ基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基を表し;R48~R50のうち少なくとも1つは炭素数1~8のヒドロカルビル基、又はヒドロキシ基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基である。)
リン含有添加剤としては、上記した化合物の中でも、リン酸エステル化合物および/または亜リン酸エステル化合物を好ましく用いることができ、中でも炭素数4~18のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基を有する、リン酸トリエステル、若しくは亜リン酸ジエステル若しくはそのアンモニウム塩、又はそれらの組み合わせを特に好ましく用いることができる。
ギヤ油組成物が(G)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準でリン量として好ましくは0.05~0.25質量%、より好ましくは0.10~0.20質量%であり、一の実施形態において0.13~0.20質量%であり得る。(G)成分の含有量が上記下限値以上であることにより、耐摩耗性および耐疲労性をさらに高めることが可能になる。また(G)成分の含有量が上記上限値以下であることにより、極圧性および耐疲労性をさらに高めることが可能になる。
<(H)油性剤系摩擦調整剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は、(H)油性剤系摩擦調整剤(以下において「(H)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(H)成分としては、例えば、炭素数6以上の炭化水素基と、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる1種以上のヘテロ元素を含む官能基とを分子中に有する、炭素数6~50の化合物を用いることができる。一の実施形態において、炭素数8~36の脂肪族ヒドロカルビル又は脂肪族ヒドロカルビルカルボニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等の化合物を(H)成分として好ましく用いることができる。
アミン系摩擦調整剤の例としては、炭素数8~30、好ましくは12~24、より好ましくは12~20の、アルキル又はアルケニル基、好ましくは直鎖アルキル又は直鎖アルケニル基を有する、脂肪族アミン化合物を挙げることができる。
アミド系摩擦調整剤の例としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸、好ましくは直鎖脂肪酸と、アンモニア、脂肪族モノアミン、又は脂肪族ポリアミンとの縮合生成物を挙げることができる。
アミド系摩擦調整剤の一例としては、炭素数8~30、好ましくは12~24のアルキルカルボニル又はアルケニルカルボニル基を有する脂肪酸アミド化合物を挙げることができる。該アミド化合物は、例えば、炭素数8~30、好ましくは12~24の脂肪酸またはその酸塩化物と、脂肪族第1級もしくは第2級アミン化合物、脂肪族第1級もしくは第2級アルカノールアミン化合物、又はアンモニアとの縮合反応により得ることができる。上記アミン化合物およびアルカノールアミン化合物は、好ましくは炭素数1~30の脂肪族基、より好ましくは炭素数1~10の脂肪族基、さらに好ましくは炭素数1~4の脂肪族基を有し、一の実施形態において炭素数1又は2の脂肪族基を有する。
脂肪酸アミド摩擦調整剤の例としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ヤシ油脂肪酸アミド、炭素数12~13の合成混合脂肪酸アミド、等を挙げることができる。
アミド系摩擦調整剤の他の例としては、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24のアルキル若しくはアルケニル基または炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24のアルキルカルボニル若しくはアルケニルカルボニル基を有する、脂肪酸ヒドラジド、脂肪族セミカルバジド、脂肪族ウレア、脂肪酸ウレイド、脂肪族アロファン酸アミド、及びそれらの誘導体(変性化合物)、等を挙げることができる。アミド系摩擦調整剤の誘導体(変性化合物)の例としては、上記のアミド化合物とホウ酸またはホウ酸塩とを反応させることにより得られるホウ酸変性化合物を挙げることができる。
脂肪族ウレア摩擦調整剤の例としては、ドデシルウレア、トリデシルウレア、テトラデシルウレア、ペンタデシルウレア、ヘキサデシルウレア、ヘプタデシルウレア、オクタデシルウレア、オレイルウレア等の、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24、より好ましくは炭素数12~20のアルキル又はアルケニル基を有する脂肪族ウレア化合物、及びそれらの酸変性誘導体(酸変性化合物、例えばホウ酸変性化合物等。)を挙げることができる。
脂肪酸ヒドラジド摩擦調整剤の例としては、ドデカン酸ヒドラジド、トリデカン酸ヒドラジド、テトラデカン酸ヒドラジド、ペンタデカン酸ヒドラジド、ヘキサデカン酸ヒドラジド、ヘプタデカン酸ヒドラジド、オクタデカン酸ヒドラジド、オレイン酸ヒドラジド、エルカ酸ヒドラジド等の、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24のアルキルカルボニル又はアルケニルカルボニル基を有する脂肪酸ヒドラジド化合物、及びそれらの酸変性誘導体(酸変性化合物、例えばホウ酸変性化合物等。)を挙げることができる。
アミド系摩擦調整剤の他の例としては、炭素数1~30のヒドロキシ置換アルキル又はアルケニル基を有する脂肪族ヒドロキシ酸のアミド化合物を挙げることができる。該アミド化合物は、例えば、上記脂肪族ヒドロキシ酸と、脂肪族第1級もしくは第2級アミン化合物、又は脂肪族第1級もしくは第2級アルカノールアミン化合物との縮合反応により得ることができる。上記脂肪族ヒドロキシ酸が有するヒドロキシ置換アルキル又はアルケニル基の炭素数は好ましくは1~10、より好ましくは1~4であり、一の実施形態において1又は2である。上記脂肪族ヒドロキシ酸は好ましくは直鎖脂肪族α-ヒドロキシ酸であり、一の実施形態においてグリコール酸である。上記アミン化合物およびアルカノールアミン化合物は、好ましくは炭素数1~30の脂肪族基、より好ましくは炭素数10~30の脂肪族基、さらに好ましくは炭素数12~24の脂肪族基、特に好ましくは炭素数12~20の脂肪族基を有する。
アミド系摩擦調整剤の他の例としては、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24の脂肪酸と、アミノ酸とのアミド化合物(N-アシル化アミノ酸)を挙げることができる。N-アシル化アミノ酸摩擦調整剤の例としては、N-アシル化N-メチルグリシン(例えばN-オレオイル-N-メチルグリシン等。)を挙げることができる。
脂肪酸エステル摩擦調整剤の例としては、グリセリン等の多価アルコールの一部のヒドロキシ基が、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24の脂肪酸でエステル化された部分エステルを挙げることができる。
脂肪族アルコール摩擦調整剤の例としては、炭素数8~30、好ましくは炭素数12~24脂肪族アルコールを挙げることができる。そのような脂肪族アルコールは、脂肪酸のカルボキシ基を還元することにより好ましく得ることができる。
脂肪族エーテル摩擦調整剤の例としては、上記脂肪族アルコール化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド又はそのオリゴマーを反応させることにより得られる、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物を挙げることができる。
(H)成分を含む形態のギヤ油組成物によれば、該ギヤ油組成物を手動変速機油として用いた場合に、静摩擦係数の低減により、シンクロナイザーリングのシンクロコーンからの滑り出しが良好になると同時に、浮動歯車とスリーブの回転数を一致させた後に浮動歯車のスプラインの歯にスリーブの歯を押し込む際の抵抗が低減されるので、変速フィーリングが改善される。
ギヤ油組成物が(H)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、好ましくは0.05~1.00質量%、より好ましくは0.10~0.50質量%であり、一の実施形態において0.12~0.40質量%であり得る。
<(I)酸化防止剤>
一の好ましい実施形態において、ギヤ油組成物は酸化防止剤(以下において「(I)成分」ということがある。)をさらに含み得る。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の、潤滑油分野において公知の酸化防止剤を特に制限なく用いることができる。
芳香族アミン系酸化防止剤の例としては、アルキル化α-ナフチルアミン等の第1級芳香族アミン化合物;及び、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン等の第2級芳香族アミン化合物、を挙げることができる。芳香族アミン系酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、若しくはアルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、又はそれらの組み合わせを好ましく用いることができる。
ヒンダードアミン系酸化防止剤の例としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体を挙げることができる。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体としては、4-位に置換基を有する2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体が好ましい。また、2個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格が、それぞれの4-位の置換基を介して結合していてもよい。また2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格のN-位は無置換であってもよく、該N-位に炭素数1~4のアルキル基が置換していてもよい。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格は好ましくは2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格である。
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位の置換基としては、アシロキシ基(R51COO-)、アルコキシ基(R51O-)、アルキルアミノ基(R51NH-)、アシルアミノ基(R51CONH-)、等を挙げることができる。R51は好ましくは炭素数1~30、より好ましくは炭素数1~24、さらに好ましくは炭素数1~20の炭化水素基である。炭化水素基の例としてはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等を挙げることができる。
2個の2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格が、それぞれの4-位の置換基を介して結合する場合の置換基としては、ヒドロカルビレンビス(カルボニルオキシ)基(-OOC-R52-COO-)、ヒドロカルビレンジアミノ基(-HN-R52-NH-)、ヒドロカルビレンビス(カルボニルアミノ)基(-HNCO-R52-CONH-)、等を挙げることができる。R52は好ましくは炭素数1~30のヒドロカルビレン基であり、より好ましくはアルキレン基である。
2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位の置換基としては、アシロキシ基が好ましい。2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格の4-位にアシロキシ基を有する化合物の一例としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとカルボン酸とのエステルを挙げることができる。該カルボン酸の例としては、炭素数8~20の直鎖又は分岐鎖脂肪族カルボン酸を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤の例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);4,4’-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール);2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチル)フェノール;4,4’-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド;2,2’-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トリデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];オクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;3-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノール脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
ギヤ油組成物が(I)成分を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で好ましくは0.1~5.0質量%、より好ましくは0.1~1.5質量%であり、一の実施形態において0.1~1.0質量%であり得る。
<その他の添加剤>
一の実施形態において、ギヤ油組成物は、(F)成分および(G)成分以外の有機モリブデン化合物、(F)成分以外の腐食防止剤、防錆剤、(F)成分以外の金属不活性化剤、抗乳化剤、消泡剤、及び着色剤から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み得る。
(F)成分及び(G)成分以外の有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン化合物(例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩またはアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等。)と、硫黄含有有機化合物(例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等。)又はその他の有機化合物との錯体等;および、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等の、硫黄を含有する有機モリブデン化合物を挙げることができる。なお有機モリブデン化合物は、単核モリブデン化合物であってもよく、二核モリブデン化合物や三核モリブデン化合物等の多核モリブデン化合物であってもよい。
また、(F)成分及び(G)成分以外のモリブデン系摩擦調整剤として、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることもできる。構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン-アミン錯体、モリブデン-コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩などが挙げられ、中でも、モリブデン-アミン錯体、有機酸のモリブデン塩およびアルコールのモリブデン塩が好ましい。
ギヤ油組成物は有機モリブデン化合物を含有してもよく、含有しなくてもよいが、ギヤ油組成物中の有機モリブデン化合物の合計の含有量は、組成物全量基準でモリブデン量として好ましくは100質量ppm未満、より好ましくは70質量ppm未満であり、一の実施形態において50質量ppm未満であり得る。有機モリブデン化合物の含有量が上記上限値未満であることにより、ギヤ油組成物を手動変速機油として用いた際の変速フィーリングを改善することが可能になる。
(F)成分以外の腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を用いることができる。ギヤ油組成物が(F)成分以外の腐食防止剤を含有する場合、その含有量は、ギヤ油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等の公知の防錆剤を特に制限なく使用可能である。ギヤ油組成物がこれらの防錆剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.1重量%以上2.0重量%以下である。
(F)成分以外の金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を用いることができる。ギヤ油組成物がこれらの金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.05重量%以上1.0重量%以下である。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を特に制限なく使用可能である。ギヤ油組成物がこれらの抗乳化剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.1重量%以上1.0重量%以下である。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を用いることができる。ギヤ油組成物がこれらの消泡剤を含有する場合、その含有量は、組成物全量基準で、通常0.001質量%以上0.01質量%以下である。
着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を特に制限なく使用可能である。
ポリ(メタ)アクリレート化合物は、潤滑油分野において粘度指数向上剤および/または流動点降下剤として公知の添加剤である。ギヤ油組成物はポリ(メタ)アクリレート化合物を含有してもよく、含有しなくてもよい。ただし、ギヤ油組成物中のポリ(メタ)アクリレート化合物の合計の含有量は、組成物全量基準で好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.8質量%未満であり、一の実施形態において0.6質量%未満であり得る。ポリ(メタ)アクリレート化合物の含有量が上記上限値未満であることにより、せん断安定性をさらに高めることが可能になる。
<ギヤ油組成物の性状>
ギヤ油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは20~80mm/s、より好ましくは30~60mm/sであり、一の実施形態において34~58mm/sであり得る。ギヤ油組成物の40℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。またギヤ油組成物の40℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐焼付き性および疲労寿命をさらに高めることが可能になる。
ギヤ油組成物の100℃における動粘度は、好ましくは4.0~15.0mm/s、より好ましくは6.0~13.0mm/sであり、一の実施形態において6.9~11.2mm/sであり得る。ギヤ油組成物の100℃における動粘度が上記上限値以下であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。またギヤ油組成物の100℃における動粘度が上記下限値以上であることにより、耐焼付き性および疲労寿命をさらに高めることが可能になる。
ギヤ油組成物の粘度指数は好ましくは150以上、より好ましくは160以上である。ギヤ油組成物の粘度指数の上限値は特に制限されるものではないが、通常300以下であり、一の実施形態において200以下であり得る。ギヤ油組成物の粘度指数が上記下限値以上であることにより、省燃費性を高めることが可能になる。
(用途)
本発明のギヤ油組成物は、せん断安定性、極圧性、及び耐疲労性がバランスよく高められているので、手動変速機油(例えば自動車用手動変速機油等。)として好ましく用いることができるほか、ディファレンシャルギヤの潤滑油(例えば自動車用終段変速機油)としても好ましく用いることができる。また例えば、自動車用手動変速機とディファレンシャルギヤとの共通潤滑油、すなわち手動変速機油と終段変速機油との兼用油としても好ましく用いることができる。ギヤ油組成物をそのような共通潤滑油として用いることは、ギヤ油組成物を手動変速機に供給することと、該ギヤ油組成物をディファレンシャルギヤに供給することとを含む。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1~19及び比較例1~5>
表1~4に示されるように、本発明のギヤ油組成物(実施例1~19)、及び比較用のギヤ油組成物(比較例1~5)をそれぞれ調製した。表中、「基油組成」の項目において「mass%」は基油全量基準での質量%を意味し、他の項目において「mass%」は組成物全量基準での質量%を意味する。成分の詳細は次の通りである。
((A)潤滑油基油)
A1-1:エステル基油(トリメチロールプロパンとオレイン酸とのエステル、水酸基価:16.6mgKOH/g、酸価:0.51mgKOH/g、動粘度(40℃):49.1mm/s、動粘度(100℃):9.7mm/s、粘度指数:187)
A1-2:エステル基油(トリメチロールプロパンとオレイン酸とのエステル、水酸基価:9.46mgKOH/g、酸価:1.01mgKOH/g、動粘度(40℃):48.7mm/s、動粘度(100℃):9.8mm/s、粘度指数:192)
A1-3:エステル基油(アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル)、水酸基価:3.22mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、動粘度(40℃):11.0mm/s、動粘度(100℃):3.1mm/s、粘度指数:146)
A2-4:ワックス異性化基油(Group III、動粘度(40℃):15.7mm/s、動粘度(100℃):3.8mm/s、粘度指数:143、硫黄分:1質量ppm未満)
A2-5:ポリα-オレフィン(Group IV、動粘度(40℃):5.0mm/s、動粘度(100℃):1.7mm/s)
A2-6:ポリα-オレフィン(Group IV、動粘度(40℃):18.4mm/s、動粘度(100℃):4.1mm/s、粘度指数:124)
A2-7:ポリα-オレフィン(Group IV、動粘度(40℃):66.0mm/s、動粘度(100℃):10.0mm/s、粘度指数:137)
A2-8:ポリα-オレフィン(Group IV、動粘度(40℃):412mm/s、動粘度(100℃):50mm/s、粘度指数:186)
((B)ポリマー)
B-1:エチレン-プロピレン共重合体、数平均分子量:7200、動粘度(100℃):2000mm/s、粘度指数:300
B-2:エチレン-プロピレン共重合体、数平均分子量:5100,動粘度(100℃):600mm/s、粘度指数:240
-3:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:40,000
((C)ジチオリン酸エステル化合物)
C-1:一般式(1)で表されるジチオリン酸トリエステル化合物、R=R=イソブチル基、R=メチル基
((P)他の添加剤)
P-1:(D)成分としてCa系清浄剤を組成物全量基準で4.25質量%(Ca量として3400質量ppm);(E)成分として非ホウ素化窒素含有無灰分散剤を組成物全量基準で0.51質量%;(F)成分として硫化オレフィン(S量:46.0質量%)を組成物全量基準で0.9質量%、及び、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を組成物全量基準で1.56質量%;(G)成分として亜リン酸ジエステルのドデシルアミン塩を組成物全量基準で0.5質量%、及び、リン酸エステルを組成物全量基準で0.03質量%;(H)成分としてアミン系摩擦調整剤を組成物全量基準で0.35質量%;(I)成分としてアミン系酸化防止剤を組成物全量基準で0.25質量%;並びに、消泡剤としてポリジメチルシリコーンを組成物全量基準で80質量ppm含有する性能添加剤パッケージ
Figure 0007446807000023
Figure 0007446807000024
Figure 0007446807000025
(高速四球試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、JPI-5S-40-93に準拠した高速四球試験により、回転数1800rpmで最終非焼付荷重(LNSL)を測定した。LNSLの値が高いほど、ギヤ油組成物の極圧性(耐摩耗性)が高いことを意味する。結果を表1~4に示している。
(EHL試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、EHL試験機(PCS社製EHD2油膜厚さ計測器)を用いて、光干渉法により、弾性流体潤滑状態での油膜厚さを測定した。測定条件は次の通りである。
鋼球:PCS製Standard Ball(材質:SUJ-2)、直径19.05mm
ディスク:ガラス基板と、ガラス基板の表面にコーティングされたクロム層と、クロム層の表面にコーティングされたシリカ層とを有するガラスディスク
油温:60℃
荷重:20N
平均ヘルツ圧:0.54GPa
周速:0.001~3m/s
滑り率:0%
結果を表1~4に示している。本試験で測定された油膜厚さが厚いほど、油膜保持性に優れることを意味する。
(ユニスチール試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、ユニスチール転がり疲労試験機(3連式高温転がり疲れ試験機(TRF-1000/3-01H)、株式会社東京試験機製)を用いて、ユニスチール試験(イギリス石油学会法:IP305/79)によりスラストベアリングの転がり疲労寿命を測定した。スラストニードルベアリング(NSK製FNTA-2542C)の片側の軌道輪を平坦な試験片(材質:SUJ2)で置き換えてなる試験軸受について、荷重7000N、面圧2GPa、回転数1410rpm、油温120℃の条件下で、ころ又は試験片のいずれかが疲労損傷するまでの時間を測定した。なお、ユニスチール転がり疲労試験機に備えられた振動加速度計により測定される試験部の振動加速度が1.5m/sに達したとき、疲労損傷が発生したと判断した。10回の繰り返し試験における疲労損傷までの時間から、ワイブルプロットにより疲労寿命を50%寿命(L50:累積確率が50%になる時間)として算出した。結果を表1~4に示している。本試験で測定された50%寿命が長いほど、耐疲労性が良好であることを意味する。
(MTM試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、MTMトラクション計測器(PCS Instruments社製)を用いて、ボールオンディスク摩擦試験を行い、トラクション係数を測定した。測定条件は次の通りである。
ボール及びディスク:標準試験片(AISI52100規格)
油温:80℃
荷重:30N
周速:3000mm/s~50mm/s
すべり率:50%
測定されたトラクション係数に基づき、周速1000mm/sにおけるトラクション係数μ(1000)の、周速300mm/sにおけるトラクション係数μ(300)に対する比μ(1000)/μ(300)を算出した。結果を表1~4に示している。算出された比μ(1000)/μ(300)が1に近いほど、低滑り速度領域までトラクション係数が低減され、省燃費性が良好であることを意味する。
(ISOT酸化安定性試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、JIS K2514に準拠したISOT試験により酸化安定性を評価した。油温150℃で96時間試験を行い、試験後の酸価の増加(mgKOH/g)を測定した。結果を表1~4に示している。試験後の酸価の増加が少ないほど、酸化安定性が良好であることを意味する。
(せん断安定性試験)
ギヤ油組成物のそれぞれについて、JPI-5S-29-88に準拠したせん断安定度試験により、ギヤ油組成物のせん断安定性を評価した。試料油に振動子から周波数10kHz、振動子の振れ幅28μmの超音波を1時間照射し、超音波照射後の試料油の100℃における動粘度の、超音波照射前の試料油の100℃における動粘度に対する低下率(%)を算出した。結果を表1~4に示している。動粘度の低下率が低いほど、せん断安定性が高くせん断安定性が良好であることを意味する。
(評価結果)
実施例1~18のギヤ油組成物は、せん断安定性、極圧性(摩耗防止性)、及び耐疲労性だけでなく、油膜厚さ、酸化安定性、及び省燃費性においても良好な結果を示した。
(B)成分を含有しない比較例1および2のギヤ油組成物は、耐疲労性において劣った結果を示しただけでなく、油膜厚さ及び省燃費性においても劣った結果を示した。
(A)成分を含有しない比較例3のギヤ油組成物は、耐疲労性において劣った結果を示した。
(C)成分を含有しない比較例4のギヤ油組成物は、極圧性(耐摩耗性)において劣った結果を示した。
ポリマーとして(B)成分に代えてポリメタクリレートを含有する比較例5のギヤ油組成物は、せん断安定性において劣った結果を示しただけでなく、油膜厚さ及び省燃費性においても劣った結果を示した。

Claims (5)

  1. (A)(A1)エステル系基油を基油全量基準で0.5~25質量%、及び、(A2)API基油分類グループII基油、API基油分類グループIII基油、若しくはAPI基油分類グループIV基油、又はそれらの混合物を含む潤滑油基油と、
    (B)100℃における動粘度が500~3000mm/sであるエチレン-α-オレフィン共重合体を、組成物全量基準で1.0~10.0質量%と、
    (C)カルボキシ基を有するジチオリン酸トリエステル化合物を、組成物全量基準で0.35~1.5質量%と
    を含有し、
    有機モリブデン化合物を含有しない、
    ギヤ油組成物。
  2. 前記(C)成分が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のギヤ油組成物。
    Figure 0007446807000027
    (一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数3~18のアルキル基、炭素数5~12のシクロアルキル基、炭素数6~7のシクロアルキルメチル基、炭素数10~11のビシクロアルキルメチル基、炭素数10~11のトリシクロアルキルメチル基、フェニル基、若しくは炭素数7~24のアルキルフェニル基、又は相互に結合して2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
  3. 前記(A)潤滑油基油の100℃における動粘度が3.0~6.5mm/sであり、
    組成物の40℃における動粘度が34~58mm/sである、
    請求項1又は2に記載のギヤ油組成物。
  4. ポリ(メタ)アクリレート化合物を、組成物全量基準で1質量%未満含有するか、又は含有しない、請求項1~3のいずれかに記載のギヤ油組成物。
  5. 自動車用手動変速機の潤滑に用いられる、請求項1~4のいずれかに記載のギヤ油組成物。
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