JP2006117720A - 銅−鉛腐食抑制剤及び潤滑油組成物 - Google Patents

銅−鉛腐食抑制剤及び潤滑油組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 鉛−銅金属材料の腐食や腐食摩耗の抑制に効果的な腐食防止剤およびそれを添加した潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】 硫黄を含有しない有機酸(カルボン酸を除く)、アミン、及びアルコール性水酸基を有する化合物から選択される1種の化合物と、4〜6価のモリブデン化合物とを反応させた有機モリブデン化合物からなる銅−鉛含有金属腐食防止剤とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鉛と銅の腐食を同時に抑制する新規な添加剤およびこれらを用いた潤滑油組成物に関し、詳しくは特定の有機基を有するモリブデン化合物、およびこれらを所定量配合することにより製造される、銅と鉛の腐食を同時に抑制できる潤滑油組成物に関する。特に、内燃機関用潤滑油として好適に用いられる添加剤および潤滑油組成物に関する。
エンジン等の摺動材料は鉄系材料、アルミニウム系材料等が主として使用されているが、メインベアリングやコンロッドベアリングなどの摺動部、例えば軸受けメタル等には、アルミニウム、銅、すず、鉛等の金属材料の他、銅−鉛含有金属材料が使用されることがある。鉛を含有する金属材料は、疲労現象が少ないという優れた特長を有しているが、一方では、腐食摩耗が大きいという欠点がある。
これら腐食の原因としては、オイルの劣化による過酸化物の蓄積(例えば、非特許文献1)や空気中の分子状の酸素による直接酸化(例えば、非特許文献2〜4)の他、キノン、ジアセチル、酸化窒素、ニトロ化合物のような酸化生成物も酸と共存すると腐食を促進する(例えば、非特許文献5)ことが知られている。
実際の腐食は、これら多くの因子によって支配されているため複雑であるが、一般的には、
・ 潤滑油の酸化防止
・ 酸化性物質の破壊
・ 腐食性酸化生成物の生成抑制
・ 酸性物質の不活性化
・ 金属表面における防食被膜の形成
が重要である。
より具体的には、
・ ジチオリン酸亜鉛や硫化物のような過酸化物分解剤兼防食被膜形成剤
・ アミン系やフェノール系の連鎖停止型酸化防止剤
・ ベンゾトリアゾールのような防食被膜形成剤
・ 清浄分散剤のような酸中和剤
の添加による腐食防止効果が知られており、一般的に上記4種類の成分の大部分が併用される。
鉛を含有する摺動材料の腐食摩耗防止に対しては、ジチオリン酸亜鉛等の硫黄含有摩耗防止剤が極めて有効である。例えば、特許文献1には、他の成分と共にジアルキルジチオリン酸亜鉛が添加された、軸受メタルの腐食防止性に優れたエンジン油組成物が開示されている。
特開平07−268379号公報
しかし、ジチオリン酸亜鉛が配合された従来のエンジン油では、鉛系材料に対しては優れた鉛腐食摩耗防止効果が発揮されるものの、鉛以外の非鉄卑金属含有摺動材(例えば銅、すず、銀等)に対し硫化腐食を起こしやすいという問題があった。ジチオリン酸亜鉛の代替としてベンゾトリアゾール等の防食被膜形成剤が考えられるが、これは銅の腐食防止には有効であるものの、鉛の腐食防止には十分な効果を示さない。そのため、鉛−銅含有金属材料が用いられる部品の腐食を効果的に防止するためには、銅と鉛の両方に対して腐食防止性に優れた腐食防止剤を開発する必要があった。
そこで本発明は、鉛−銅含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方の腐食や腐食摩耗の抑制に効果的な腐食防止剤およびそれを添加した潤滑剤組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、潤滑油基油に上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定有機基を有するモリブデン化合物を配合することにより、銅および鉛の双方の腐食又は腐食摩耗を抑制しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、硫黄を含有しない有機酸(カルボン酸を除く)、アミン、及びアルコール性水酸基から選択される基を含有する化合物と、4〜6価のモリブデン化合物とを反応させた有機モリブデン化合物からなる銅−鉛含有金属腐食防止剤にある。
また、本発明は、潤滑油基油に、硫黄を含有しない有機酸(カルボン酸を除く)、アミン、及びアルコール性水酸基を有する化合物から選択される1種の化合物と、4〜6価のモリブデン化合物とを反応させた有機モリブデン化合物からなる銅−鉛含有金属腐食防止剤を含有することを特徴とする、銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方と接触する潤滑油組成物にある。
本発明の潤滑油組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。
また、本発明は摺動部に銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方が使用されている内燃機関用であることを特徴とする請求項2又は3に記載の潤滑油組成物にある。
また、本発明は銅−鉛含有金属材料を請求項2又は3に記載の潤滑油組成物に接触させて潤滑することを特徴とする銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方の腐食又は腐食摩耗抑制方法にある。
本発明の腐食防止剤は、鉛および銅の両方に対する腐食防止性に優れている。したがって、これを添加した潤滑剤組成物は、銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方の腐食又は腐食摩耗を同時に効果的に抑制することができる。また、本発明の腐食防止剤を、鉛の腐食又は腐食摩耗防止に有効とされるジチオリン酸亜鉛をリン量として0.08質量%以下、好ましくは0.05質量%以下とした場合、あるいはこれの代わりに潤滑油組成物に使用することで、低硫黄化、さらには低リン化、無リン化、低灰化を図ることができ、ロングドレイン性にも優れたものとすることができる。従って銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方と接触する内燃機関用潤滑油、特に銅−鉛系摺動材料を備えたディーゼルエンジン油、ガスエンジン油としてだけでなく、銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方と潤滑油が接触する潤滑システムを有する装置用潤滑油、例えば、自動変速機、手動変速機、無段変速機、ギヤ等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
本発明の銅−鉛含有金属腐食防止剤は、硫黄を含有しない有機酸(カルボン酸を除く)、アミン、及びアルコール性水酸基を有する化合物から選択される1種の化合物と、4〜6価のモリブデン化合物とを反応させた有機モリブデン化合物((A)成分)である。
硫黄を含有しない有機酸としては、一般式(1)および一般式(2)で表されるリン含有酸が挙げられる。
Figure 2006117720
(式(1)中、nは1又は0を示し、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、少なくとも1つは水素原子である。)
Figure 2006117720
(式(2)中、nは1又は0を示し、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示し、少なくとも1つは水素原子である。)
上記一般式(1)、(2)中、R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい。)を挙げることができる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である。)を挙げることができる。
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である。)を挙げることができる。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である。)を挙げることができる。
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい。)を挙げることができる。
上記R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(1)で表されるリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸、上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル、及びこれらの混合物などが挙げられる。
一般式(2)で表されるリン含有酸としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸、上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステル、及びこれらの混合物などが挙げられる。
アミンとしては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミンが挙げられる。より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい);メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やN−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、及びプロパノールアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分岐状でもよい)を有するアルカノールアミン;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。これらアミンの中でも、第1級アミン、第2級アミン、アルカノールアミンが好ましい。
また、アミンが有する炭化水素基の炭素数は、好ましくは4以上であり、より好ましくは4〜30であり、特に好ましくは8〜18である。アミン化合物の炭化水素基の炭素数が4未満であると、溶解性が悪化する傾向にある。また、アミン化合物の炭素数を30以下とすることにより、有機モリブデン化合物中におけるモリブデン含量を相対的に高めることができ、少量の配合で本発明の効果より高めることができる。
アルコール性水酸基を含有する化合物としては、1価アルコール、多価アルコール、他価アルコールの部分エステルもしくは部分エーテル化合物、アルコール性水酸基を有する窒素化合物(アルカノールアミド等)などのいずれであってもよい。
一価アルコールとしては、通常炭素数1〜24、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものが用いられ、このようなアルコールとしては直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものであっても不飽和のものであってもよい。炭素数1〜24のアルコールとしては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、直鎖状又は分岐状のプロパノール、直鎖状又は分岐状のブタノール、直鎖状又は分岐状のペンタノール、直鎖状又は分岐状のヘキサノール、直鎖状又は分岐状のヘプタノール、直鎖状又は分岐状のオクタノール、直鎖状又は分岐状のノナノール、直鎖状又は分岐状のデカノール、直鎖状又は分岐状のウンデカノール、直鎖状又は分岐状のドデカノール、直鎖状又は分岐状のトリデカノール、直鎖状又は分岐状のテトラデカノール、直鎖状又は分岐状のペンタデカノール、直鎖状又は分岐状のヘキサデカノール、直鎖状又は分岐状のヘプタデカノール、直鎖状又は分岐状のオクタデカノール、直鎖状又は分岐状のノナデカノール、直鎖状又は分岐状のイコサノール、直鎖状又は分岐状のヘンイコサノール、直鎖状又は分岐状のトリコサノール、直鎖状又は分岐状のテトラコサノール及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10価の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトール及びこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、多価アルコールの部分エステルとしては、上記多価アルコールの説明において例示された多価アルコールが有する水酸基の一部がヒドロカルビルエステル化された化合物等が挙げられ、中でもグリセリンモノオレート、グリセリンジオレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンジオレートが好ましい。
また、多価アルコールの部分エーテルとしては、上記多価アルコールの説明において例示された多価アルコールが有する水酸基の一部がヒドロカルビルエーテル化された化合物、多価アルコール同士の縮合によりエーテル結合が形成された化合物(ソルビタン縮合物等)などが挙げられる。
また、アルコール性水酸基を有する窒素化合物としては、アミンの例示として既に上述したアルカノールアミンの他、アルカノールアミンのアミノ基がアミド化されたアルカノールアミド等が挙げられ、ラウリルジエタノールアミド、ミリスチルジエタノールアミド、パルミチルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等が例示できる。
モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO・nHO)、モリブデン酸(HMoO)、モリブデン酸アルカリ金属塩(MMoO;Mはアルカリ金属塩を示す)、モリブデン酸アンモニウム((NHMoO又は(NH[Mo24]・4HO)、MoCl、MoOCl、MoOCl、MoOBr、MoCl等のモリブデン化合物が挙げられる。これらのモリブデン化合物の中でも、目的化合物の収率の点から、4〜6価、特に6価のモリブデン化合物が好ましい。更に、入手性の点から、6価のモリブデン化合物の中でも、三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸のアルカリ金属塩、及びモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
本発明の有機モリブデン化合物(A)は、具体的には、有機酸のモリブデン塩、モリブデンのアミン錯体、アルコールのモリブデン塩等として得ることができる。また、強酸であるモリブデン酸をアルコール性と反応させる場合には、モリブデン酸のアルコールエステルとして得ることができる。
本発明の有機モリブデン化合物(A)の好ましい例としては、具体的には、
(A1)炭素数3〜30のアルキル基を少なくとも1つ有する(亜)リン酸モノエステル、(亜)リン酸ジエステル、(亜)ホスホン酸、(亜)ホスホン酸モノエステルから選ばれる1種のリン含有酸と、前記モリブデン化合物との塩、
(A2)炭素数3〜30のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つ有する1級アミン、2級アミン、アルカノールアミンから選ばれる1種のアミン化合物と、前記モリブデン化合物との錯体、
(A3)炭素数3〜30の1価アルコール、多価アルコール、多アルコールの部分エステル又は部分エーテルから選ばれる少なくとも1種のアルコール性水酸基を有するアルコール類と、前記モリブデン化合物との塩又はエステル、
(A4)炭素数3〜30のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1つとアルコール性水酸基を有するアミド化合物と、前記モリブデン化合物との塩又はエステル等が挙げることができる。
上述した有機モリブデン化合物(A)を腐食防止剤として潤滑油組成物に添加することで、銅−鉛含有金属、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方の腐食又は腐食摩耗防止に極めて有効な潤滑油組成物とすることができる。有機モリブデン化合物(A)を潤滑油組成物に添加する場合、その量は、潤滑油組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは30質量ppm以上、更に好ましくは100質量ppm以上であり、また、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは600質量ppm以下、更に好ましくは400質量ppm以下である。モリブデン元素換算で10質量ppm未満であると腐食防止性能が十分に発揮されず、また1000質量ppmを越えても含有量の増加に見合う効果が得られない傾向にある。
本発明において、銅−鉛含有金属材料としては、本発明の潤滑油と接触する金属表面に銅および鉛が存在する限りにおいて何ら制限はなく、鉛−銅合金、あるいは、銅−鉛合金を各種金属基材表面に被覆した金属材料が挙げられる。また、鉛−銅金属材料には、その表面に非銅−鉛含有金属材料が被覆されていても、使用過程においてその被覆面が摩耗して当該銅−鉛含有金属材料が露出し、本発明の潤滑油と接触する可能性がある場合も含まれる。また、本発明には、銅含有金属材料と鉛含有金属材料のそれぞれが本発明の潤滑油と同時に接触する場合又はその可能性がある場合も含まれる。
銅−鉛合金としては、例えば、鉛−銅合金、鉛−スズ−銅合金、鉛−アルミニウム−銅合金、鉛−アルミニウム−珪素−銅合金、鉛−アルミニウム−スズ−銅合金、鉛−アルミニウム−珪素−スズ−銅合金等が挙げられる。具体的には、鉛を5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%含有する鉛−銅含有合金が挙げられる。
腐食防止剤が添加される潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油、合成系基油が使用できる。鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
鉱油系基油中の硫黄分は特に制限はなく、通常0〜1.5質量%であるが、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.005質量%以下である。潤滑油基油の硫黄分を低減することで、銅の腐食をより抑制できるとともに、よりロングドレイン性に優れ、内燃機関用潤滑油として使用する場合には、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避可能な低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
また、鉱油系基油の飽和分は、特に制限はないが、通常50〜100質量%であり、酸化安定性、ロングドレイン性に優れる点で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
なお、上記飽和分とは、ASTM D2549に準拠して測定した飽和分を意味する。
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
本発明における潤滑油基油としては、上記鉱油系基油、上記合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
本発明において用いる潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、より好ましくは16mm/s以下である。一方、その動粘度は、3mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは5mm/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が3mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きく、ロングドレイン性に劣るだけでなく、内燃機関用潤滑油として使用した場合、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定されたものである。
潤滑油基油の粘度指数は特に制限はないが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるようにその値は、80以上であることが好ましく、さらに好ましくは100以上であり、さらに好ましくは120以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、ノルマルパラフィン、スラックワックスやGTLワックス等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油のような135〜180程度のものやコンプレックスエステル系基油やHVI−PAO系基油のような150〜250程度のものも使用することができる。潤滑油基油の粘度指数が80未満では、低温粘度特性が悪化するため好ましくない。
本発明の潤滑油組成物には、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤や有機金属系酸化防止剤等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の劣化成分の生成・蓄積をより抑制することができ、本発明の組成物の、銅−鉛含有金属の腐食又は腐食摩耗防止性能を高めるだけでなく、塩基価維持性をより高めることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用してもよい。
上記フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、有機金属酸化防止剤は組み合わせて配合してもよい。
本発明の潤滑油組成物において酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。その含有量が20質量%を超える場合は、配合量に見合った十分な性能が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、銅−鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性能をより長期間維持することが可能となる点で、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上である。
本発明の潤滑油組成物は、金属系清浄剤を含有することが好ましい。金属系清浄剤としては、スルホネート系清浄剤、フィネート系清浄剤、サリシレート系清浄剤、カルボキシレート系清浄剤等が挙げられる。
スルホネート系清浄剤としては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルフォン化することによって得られるアルキル芳香族スルフォン酸の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルフォン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルフォン酸や合成スルフォン酸等が挙げられる。
石油スルフォン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルフォン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルフォン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化したりすることにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルフォン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルフォン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルフォン化する際のスルフォン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
アルカリ土類金属スルホネートとしては、例えば、下記一般式(3)又は(4)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006117720
式中、R、Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜30、好ましくは8〜25の直鎖または分枝アルキル基を示し、Mは、アルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。
フィネート系清浄剤としては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
アルカリ土類金属フィネートとしては、例えば下記の一般式(5)〜(7)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006117720
式中、R、R10、R11、R12、R13及びR14は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖または分枝アルキル基を示し、M、M及びMは、それぞれアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを、xは1〜2の整数を示す。
サリシレート系清浄剤としては、より具体的には、炭素数4〜32、好ましくは6〜19又は炭素数20〜30の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸の金属塩、好ましくはアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
アルカリ土類金属サリシレートとしては、例えば、下記の一般式(8)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006117720
式中、R15、R16は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は炭素数1〜32の直鎖または分枝アルキル基を示し、少なくともどちらか一方が炭素数8〜32、好ましくは14〜32の直鎖または分枝アルキル基であり、Mはアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。アルカリ土類金属サリシレートとしては、R15、R16の一方が水素、他方が炭素数14〜32、好ましくは炭素数14〜19又は炭素数20〜30の直鎖αオレフィンから誘導される第2級アルキル基であるアルカリ土類金属サリシレートが好ましい。
また、アルカリ土類金属スルホネート系清浄剤、アルカリ土類金属フィネート系清浄剤及びアルカリ土類金属サリシレート系清浄剤には、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させたりすること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。
これらの金属系清浄剤の金属比は特に制限はなく、通常1〜40であるが、本発明においては、鉛の腐食又は腐食摩耗を抑制しやすい点で、好ましくは2以上、より好ましくは2.6以上のものを少なくとも1種配合することが好ましい。また、安定性の点から、その金属比は好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
本発明における金属系清浄剤としては、塩基価維持性に優れる点で、アルカリ土類金属サリシレートを使用することが好ましく、鉛の腐食又は腐食摩耗に悪影響を及ぼす炭素数14〜19の直鎖αオレフィンから誘導される第2級アルキル基を1つ有するアルカリ土類金属サリシレート(モノアルキルタイプ)を85モル%以上、好ましくは90モル%以上含むアルカリ土類金属サリシレートを使用する場合に、有機モリブデン化合物(A)を併用することで著しく鉛の腐食又は腐食摩耗が改善され、塩基価維持性と鉛の腐食又は腐食摩耗抑制を両立しうる。この場合のアルカリ土類金属サリシレートの金属比は1.5〜15、好ましくは2.6〜5であることが望ましい。
また、本発明における金属系清浄剤としては、鉛の腐食又は腐食摩耗をより抑制できる点で、金属比が1〜20、好ましくは5〜15のアルカリ土類金属スルホネートを使用することが好ましく、塩基価維持性をさらに高めるために必要に応じて金属比が1.5以下、好ましくは1.3以下の上記アルカリ土類金属サリシレートを併用することが好ましい。この場合、金属比1.5以下のアルカリ土類金属サリシレートを使用することで、貯蔵安定性にも優れた組成物を得ることができる。
なお、ここでいう金属比とは、金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(モル%)/せっけん基含有量(モル%)で表され、せっけん基とは、サリチル酸基、スルホン酸基等を示す。
本発明の潤滑油組成物において、金属系清浄剤を含有させる場合、その含有量は特に限定されないが、通常、潤滑油組成物全量基準で、金属量として0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、組成物の硫酸灰分を低減する観点から、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。
本発明の潤滑油組成物は、上記構成により銅−鉛含有金属の腐食又は腐食摩耗を抑制しうる組成物とすることができるが、その性能をさらに向上させるために、又は、その他の目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、無灰分散剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体が挙げられる。ここでいう含窒素化合物としては、例えばコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、マンニッヒ塩基等が挙げられ、その誘導体としては、これら含窒素化合物にホウ酸、ホウ酸塩等のホウ素化合物、(チオ)リン酸、(チオ)リン酸塩等のリン化合物、有機酸、ヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネート等を作用させた誘導体等が挙げられる。本発明においては、これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる
本発明においては、数平均分子量が700〜3500、より好ましくは1000〜2000、特に好ましくは1200〜1500のオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基、特にポリ(イソ)ブテニル基を有する無灰分散剤であることが好ましく、中でもコハク酸イミド及び/又はそのホウ素化合物誘導体、特にコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体であることが最も好ましい。
本発明において、無灰分散剤を配合する場合の含有量は、特に制限はないが、通常組成物全量基準で0.1〜20質量%、好ましくは3〜15質量%である。また、無灰分散剤としてコハク酸イミドのホウ素化合物誘導体を含有させる場合、そのホウ素量に特に制限はないが、組成物全量基準で、ホウ素量として0.005質量%以上となるように含有させることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、当該ホウ素化合物誘導体の含有量が多くなると、シール材への影響や硫酸灰分の増加が懸念されるため、その含有量は、ホウ素量として好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、さらに好ましくは0.06質量%以下、特に好ましくは0.04質量%以下あるいはそれ未満である。
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられ、通常0.1〜5質量%の範囲で含有させることが可能である。
摩耗防止剤としては、リン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤あるいはホウ素含有摩耗防止剤等、潤滑油に一般に使用される任意の摩耗防止剤を何ら制限なく使用することができる。
リン含有摩耗防止剤としては、リンを分子中に含有する摩耗防止剤であれば特に制限はない。
本発明におけるリン含有摩耗防止剤としては、一般式(9)で表されるリン化合物、一般式(10)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩((A1)成分を除く)、それらのアミン塩あるいはこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
Figure 2006117720
(一般式(9)において、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R17、R18及びR19は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
Figure 2006117720
(一般式(10)において、X、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)を示し、R20、R21及びR22は、それぞれ個別に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。)
上記R17〜R22で表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができ、具体的には上述の一般式(1)、(2)のR〜Rで挙げた置換基と同じものを例示することができる。
上記R17〜R22で表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、さらに好ましくは炭素数3〜18、さらに好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
一般式(9)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
亜リン酸、モノチオ亜リン酸、ジチオ亜リン酸、トリチオ亜リン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、ジチオ亜リン酸モノエステル、トリチオ亜リン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、ジチオ亜リン酸ジエステル、トリチオ亜リン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、ジチオ亜リン酸トリエステル、トリチオ亜リン酸トリエステル;及びこれらの混合物。
本発明においては、銅の腐食又は腐食摩耗防止性に優れ、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(9)のX〜Xは、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。
一般式(10)で表されるリン化合物としては、例えば、以下のリン化合物を挙げることができる。
リン酸、モノチオリン酸、ジチオリン酸、トリチオリン酸、テトラチオリン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、ジチオリン酸モノエステル、トリチオリン酸モノエステル、テトラチオリン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、ジチオリン酸ジエステル、トリチオリン酸ジエステル、テトラチオリン酸ジエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル、ジチオリン酸トリエステル、トリチオリン酸トリエステル、テトラチオリン酸トリエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を1〜3つ有するホスホン酸、ホスホン酸モノエステル、ホスホン酸ジエステル;炭素数1〜4の(ポリ)オキシアルキレン基を有する上記リン化合物;β−ジチオホスホリル化プロピオン酸やジチオリン酸とオレフィンシクロペンタジエン又は(メチル)メタクリル酸との反応物等の上記リン化合物の誘導体;及びこれらの混合物。
本発明においては、銅の腐食又は腐食摩耗防止性に優れ、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能をより高めるために、一般式(10)のX〜Xは、2つ以上が酸素原子であることが好ましく、3つ以上が酸素原子であることがさらに好ましく、それらの全てが酸素原子であることが特に好ましい。なお、これらX、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。
一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物の塩としては、リン化合物に金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩を挙げることができる。
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属及び亜鉛が好ましい。
上記リン化合物の金属塩は、金属の価数やリン化合物のOH基あるいはSH基の数に応じその構造が異なり、従ってその構造については何ら限定されないが、例えば、酸化亜鉛1モルとリン酸ジエステル(OH基が1つ)2モルを反応させた場合、下記一般式(11)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 2006117720
また、例えば、酸化亜鉛1モルとリン酸モノエステル(OH基が2つ)1モルとを反応させた場合、下記一般式(12)で表される構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
Figure 2006117720
上記窒素化合物としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられ、具体的には、上述した有機モリブデン化合物を構成するアミン化合物と同じ物が例示できる。
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい。)が好ましい例として挙げることができる。
リン含有摩耗防止剤としては、一般式(9)におけるX、X及びXが全て酸素原子であるリン化合物の金属塩及び一般式(10)におけるX、X、X及びXが全て酸素原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)であるリン化合物の金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性、低摩擦性等に優れる点で好ましい。
また、リン含有摩耗防止剤が、一般式(10)におけるX、X、X及びXの全てが酸素原子(X、X及びXの1つ又は2つが単結合又は(ポリ)オキシアルキレン基でもよい。)であり、R20、R21及びR22がそれぞれ個別に炭素数1〜30の炭化水素基であるリン化合物であることが、酸化安定性、高温清浄性等のロングドレイン性に優れ、さらなる低摩擦性、さらなる低灰化が可能となる点で好ましい。
これらの成分の中では、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2つ有するホスホン酸モノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有するリン酸トリエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3つ有するホスホン酸ジエステルであることが好ましい。これらの成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。
本発明の潤滑油組成物において上記リン含有摩耗防止剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準でリン元素換算量として0.005質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.02質量%以上であり、一方、その含有量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.08質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。リン含有摩耗防止剤の含有量が、リン元素として0.005質量%未満の場合は、摩耗防止性に対して効果がなく好ましくなく、一方、その含有量が、リン元素として0.1質量%を超える場合では、排ガス後処理装置への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、リン含有摩耗防止剤としてジチオリン酸亜鉛等の硫黄及びリン含有摩耗防止剤を含有させる場合、銅の腐食又は腐食摩耗を抑制できる点で、これらの含有量を組成物全量基準で、リン元素換算量として0.06質量%以下、好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以下、あるいはこれらを配合しない、低硫黄化及びロングドレイン化された潤滑油組成物とすることができる。
硫黄含有摩耗防止剤としては、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物等が挙げられる。これら硫黄含有化合物は、0.005〜5質量%の範囲で本発明の組成物に含有させることが可能であるが、銅の腐食又は腐食摩耗を抑制できる点で、これらの含有量を0.15質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、特に0.05質量%以下、あるいはこれらを配合しない、低硫黄化及びロングドレイン化された潤滑油組成物とすることができる。
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる。)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20質量%である。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
なお、本発明の潤滑油組成物は、硫黄を含有しない腐食防止剤を含有するものであり、必要に応じて全硫黄含有量が0.3質量%以下の低硫黄潤滑油組成物とすることができ、潤滑油基油や各種添加剤の選択によって、組成物の全硫黄含有量が0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、特に0.05質量%以下あるいは0.01質量%以下、実質的に硫黄を含有しない潤滑油組成物を得ることも可能である。
また、本発明の潤滑油組成物は、金属を含有する添加剤の含有量を調整することで、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下とすることも可能であり、排ガス浄化装置や燃焼室への堆積を抑制する観点から、好ましくは0.8質量%、さらに好ましくは0.6質量%以下、特に0.5質量%以下とすることが望ましい。
本発明の潤滑油組成物は、低硫黄であり、銅−鉛含有金属材料の腐食又は腐食摩耗防止性に優れるだけでなく、低摩擦性、ロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性等)及び高温清浄性にも優れ、内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができ、低硫黄、さらには低リン、低灰分の潤滑油とすることで、特に排ガス後処理装置を装着した内燃機関に好適である。また、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下の燃料(例えばガソリン、軽油、灯油、アルコール、ジメチルエーテル、LPG、天然ガス等)を用いる内燃機関用潤滑油に好適である。特に銅−鉛含有摺動材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方を有するディーゼルエンジン用やガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。中でも、ガスエンジン用潤滑油として特に好ましく使用することができる。
また、本発明の銅−鉛含有金属材料、あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方と接触する潤滑油組成物は、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1〜10、比較例1〜5)
表1に示されるように本発明の潤滑油組成物(実施例1〜10)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜5)をそれぞれ調製した。
Figure 2006117720
得られた各組成物に対して、下記の評価試験を行った。
(NOx吸収試験による鉛溶出量の経時変化)
日本トライボロジー会議予稿集1992、10、465に準拠した条件(140℃、NOx:1185ppm)にて銅片を入れた試験油にNOxガスを吹き込み、強制劣化させたときの鉛溶出量の経時変化を測定した。鉛の溶出量が少ないほど、鉛の腐食を抑制しうることを示す。なお、NOx吸収試験による強制劣化により、潤滑油の劣化、特に内燃機関用潤滑油の劣化に伴う劣化生成物が腐食に与える影響を短時間で確認することができる。
(ISOTによる銅溶出量の経時変化)
JIS−K2514に準拠した条件(165.5℃)にて、銅試験片を入れた試験油における、96時間後の銅の溶出量を測定した。銅の溶出量が少ないほど、銅の腐食を抑制しうることを示す。
表1から明らかなとおり、有機モリブデン化合物を含まない比較例1の組成物及び本発明に規定する化合物でないモリブデン化合物を含む比較例2〜4の組成物は、全体的に鉛の溶出量が非常に多かった。また、比較例2と3では、銅の溶出量も非常に多い。逆に、ジチオリン酸亜鉛がリン量として0.08質量%添加された比較例5では、鉛の溶出は抑えられているものの、銅の溶出量が非常に多かった。この結果から、従来の腐食防止剤では、鉛と銅の腐食を同時に防止することが困難であることがわかる。
一方、本発明のモリブデン化合物(A)を含む実施例1〜10の組成物では、比較例と比べて鉛と銅の溶出量が共に低い。このことから、本発明のモリブデン化合物を含む組成物では、銅と鉛の腐食抑制が両立されていることがわかる。

Claims (5)

  1. 硫黄を含有しない有機酸(カルボン酸を除く)、アミン、及びアルコール性水酸基を有する化合物から選択される1種の化合物と、4〜6価のモリブデン化合物とを反応させた有機モリブデン化合物からなる銅−鉛含有金属腐食防止剤。
  2. 潤滑油基油に、請求項1に記載の銅−鉛含有金属腐食防止剤を含有することを特徴とする、銅−鉛含有金属材料あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方と接触する潤滑油組成物。
  3. さらに酸化防止剤を含有することを特徴とする、請求項2に記載の潤滑油組成物。
  4. 摺動部に銅−鉛含有金属材料あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方が使用されている内燃機関用であることを特徴とする請求項2又は3に記載の潤滑油組成物。
  5. 銅−鉛含有金属材料あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方を請求項2又は3に記載の潤滑油組成物に接触させて潤滑することを特徴とする銅−鉛含有金属材料あるいは銅含有金属材料と鉛含有金属材料の両方の腐食又は腐食摩耗抑制方法。
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