JP7443785B2 - 車両の挙動制御装置 - Google Patents

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本発明は、車両の挙動制御装置に関する。
特許文献1には、カーブ路に沿って車両を自動旋回させる挙動制御装置の一例が記載されている。この挙動制御装置では、車両の横加速度又はヨーレートが判定値を上回っているときに、制動力の付与によって車両を減速させる。
特開2018-95112号公報
車両が旋回する際には、車両がローリング運動して車両のロール角が変化する。近年では、車両旋回時における車両の乗員の快適性を向上させることが求められている。
上記課題を解決するための車両の挙動制御装置は、前輪に制動力が付与されるときには車両前部を上方に変位させる力であるアンチダイブ力が発生し、後輪に制動力が付与されるときには車両後部を下方に変位させる力であるアンチリフト力が発生する車両に適用される。この挙動制御装置は、前記車両に付与する制動力の要求値である車両要求制動力を取得する車両要求制動力取得部と、前記車両が旋回している状況下で前記車両要求制動力に従って前記車両に制動力が付与されているときに、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方を含む対象車輪に対する制動力の配分比率を調整することによって、当該車両のローリング運動を制御するロール制御部と、を備える。
本願発明者は、様々な実験やシミュレーションを行った結果、車両旋回時においてローリング運動を適切に制御することによって、車両旋回時における車両の乗員の快適性を向上させることができるという知見を得た。上記構成によれば、車両旋回時において制動力が車両に付与されているときには、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪の少なくとも一方に対する制動力の配分比率を調整することにより、車両のローリング運動が調整される。例えば、旋回時内側の後輪に対する制動力を調整する場合、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍に発生するアンチリフト力を調整することによって、車両旋回時におけるローリング運動が調整される。また例えば、旋回時外側の前輪に対する制動力を調整する場合、車両前部のうちの旋回時外側の前輪近傍に発生するアンチダイブ力を調整することによって、車両のローリング運動が調整される。したがって、上記構成によれば、車両旋回時における車両の乗員の快適性を向上させることができる。
車両の挙動制御装置の第1実施形態である制御装置の機能構成と、同制御装置を備える車両とを示す概略構成図。 同車両の旋回中にロール抑制制御が実施される様子を示す模式図。 同車両の旋回中に安定性優先制御が実施される様子を示す模式図。 第1実施形態において、制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 (a)~(g)は、第1実施形態において、車両の旋回中にロール抑制制御が実施される場合のタイミングチャート。 第2実施形態において、制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 車両の挙動制御装置の第3実施形態である制御装置の機能構成と、同制御装置を備える車両の構成の一部とを示す図。 第3実施形態において、制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 (a)~(g)は、第3実施形態において、車両の旋回中にロール抑制制御が実施される場合のタイミングチャート。 (a)~(g)は、第4実施形態において、車両の旋回中にロール抑制制御が実施される場合のタイミングチャート。 車両の挙動制御装置の第5実施形態である制御装置において、ロール制御部の機能構成を示すブロック図。 第5実施形態において、制御装置が実行する処理ルーチンを説明するフローチャート。 (a)~(g)は、第5実施形態において、車両の旋回中にロール促進制御が実施される場合のタイミングチャート。 変更例において、車両の旋回中にロール抑制制御が実施される様子を示す模式図。 変更例において、車両の旋回中に安定性優先制御が実施される様子を示す模式図。
(第1実施形態)
以下、車両の挙動制御装置の第1実施形態を図1~図5に従って説明する。
図1には、本実施形態の挙動制御装置である制御装置100を備える車両10が図示されている。車両10に設けられている複数の車輪のうちの左前輪FL及び右前輪FRは、エンジンなどの車両の動力源11から出力された駆動力がディファレンシャル12を介して入力される駆動輪である。複数の車輪のうちの左後輪RL及び右後輪RRは、従動輪である。
車両のステアリング装置20は、運転者によるステアリングホイール21の操作に応じ、転舵輪でもある前輪FL,FRの転舵角を調整する転舵アクチュエータ22を有している。転舵アクチュエータ22の作動は、制御装置100によって制御することもできる。制御装置100によって転舵アクチュエータ22を制御することにより、運転者が操舵を行っていないときでも前輪FL,FRの転舵角を制御することができる、すなわち車両10を自動旋回させることができる。
各車輪FL,FR,RL,RRには、制動機構30の作動によって制動力が付与される。各制動機構30は、ホイールシリンダ31内の液圧であるWC圧PWCが高いほど、車輪FL,FR,RL,RRと一体回転する回転体32に摩擦材33を押し付ける力が大きくなるように構成されている。そのため、車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力は、WC圧PWCが高いほど大きくなる。
車両の制動装置40は、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を調整する摩擦制動装置の一例である。制動装置40は、液圧発生装置41と、液圧発生装置41からブレーキ液が供給される制動アクチュエータ42とを備えている。液圧発生装置41には、ブレーキペダルなどの制動操作部材43が連結されている。そして、液圧発生装置41は、車両10の運転者による制動操作部材43の操作量である制動操作量に応じた液圧を発生する。制動アクチュエータ42は、各ホイールシリンダ31に接続されている。そのため、制動操作部材43が操作されると、制動操作量に応じた量のブレーキ液が各ホイールシリンダ31に供給される。すなわち、各車輪FL,FR,RL,RRに制動力が付与される。なお、制動機構30を作動させて車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を、「摩擦制動力」ともいう。
制動アクチュエータ42の作動は、制御装置100によって制御することができる。制御装置100によって制動アクチュエータ42を制御することにより、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を個別に制御することができる。
車両10には、操作量センサ110、車輪速度センサ111、前後加速度センサ112、横加速度センサ113、ヨーレートセンサ114、操舵角センサ115及びサスペンションストロークセンサ116などの各種のセンサが設けられている。これら各種のセンサ110~116からの信号は制御装置100に入力される。また、車両10には、車両10周辺の外部情報を取得するカメラ121やレーダからも信号が入力される。
操作量センサ110は、運転者の制動操作量INPを検出し、検出した制動操作量INPに応じた信号を出力する。制動操作量INPとしては、例えば、制動操作部材43のストローク量、及び、制動操作部材43に入力される操作力を挙げることができる。
車輪速度センサ111は、車輪FL,FR,RL,RR毎に設けられている。車輪速度センサ111は、対応する車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWを検出し、検出した車輪速度VWに応じた信号を出力する。そして、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWを基に、車両10の車体速度VSが算出される。ここでいう車体速度VSとは、車両10の前後方向への移動速度に相当する車輪の回転速度のことである。
前後加速度センサ112は、車両10の前後方向の加速度である前後加速度GXを検出し、検出した前後加速度GXに応じた信号を出力する。横加速度センサ113は、車両10の横方向の加速度である横加速度GYを検出し、検出した横加速度GYに応じた信号を出力する。ヨーレートセンサ114は、車両10のヨーレートYRを検出し、検出したヨーレートYRに応じた信号を出力する。操舵角センサ115は、ステアリングホイール21の操舵角STRを検出し、検出したSTRに応じた信号を出力する。
サスペンションストロークセンサ116は、車輪FL,FR,RL,RR毎に設けられている。サスペンションストロークセンサ116は、対応する車輪用のサスペンション15FL,15FR,15RL,15RRのストローク量SSを検出し、検出したストローク量SSに応じた信号を出力する。
制御装置100には、ナビゲーション装置131から車両10の走行経路の情報が入力される。走行経路の情報としては、例えば、走行経路の曲率半径、及び、走行経路の路面勾配を挙げることができる。ナビゲーション装置131は、車載のナビゲーション装置であってもよいし、ナビゲーション機能を有するタブレット端末であってもよい。
そして、制御装置100は、各種のセンサ111~116からの信号、カメラ121からの信号、及びナビゲーション装置131からの走行経路の情報を基に、各種の車両制御を実施する。
制動力の付与によって車両10が減速している場合、車両10がノーズダイブ側にピッチング運動する。ノーズダイブとは、車両10の前部を下方に変位させるとともに車両10の後部を上方に変位させることである。一方、車両10の前部を上方に変位させるとともに車両10の後部を下方に変位させることを、「ノーズリフト」という。
車両10がノーズダイブ側にピッチング運動すると、前輪側のばね上荷重が大きくなるため、各前輪用のサスペンション15FL,15FRを構成する前輪用スプリングが収縮するとともに、後輪側のばね上荷重が小さくなるため、各後輪用のサスペンション15RL,15RRを構成する後輪用スプリングが伸長する。ばね上荷重とは、車両重量及びピッチングモーメントによって車体からサスペンションに入力される垂直方向の荷重のことである。このように各サスペンション15FL,15FR,15RL,15RRのスプリングが動作すると、車両10では後輪用スプリングの復元力及び前輪用スプリングの復元力が発生する。
前輪FL,FRに制動力が付与されると、車両前部にアンチダイブ力FADが発生する。後輪RL,RRに制動力が付与されると、車両後部にアンチリフト力FALが発生する。アンチダイブ力FADとは、前輪FL,FRに制動力BPFL,BPFRが付与されるときに車両前部を上方に変位させる力のことである。アンチダイブ力FADは、前輪FL,FRに付与される制動力BPFL,BPFRが大きいほど大きくなる。アンチリフト力FALとは、後輪RL,RRに制動力BPRL,BPRRが付与されるときに車両後部を下方に変位させる力のことである。アンチリフト力FALは、後輪RL,RRに付与される制動力BPRL,BPRRが大きいほど大きくなる。本実施形態では、前輪用のサスペンション15FL,15FR及び後輪用のサスペンション15RL,15RRのジオメトリは、前輪FL,FRに付与する制動力BPFL,BPFRと後輪RL,RRに付与する制動力BPRL,BPRRとが互いに同じ値であるときには、アンチリフト力FALのほうがアンチダイブ力FADよりも大きくなるように設定されている。
車両10が旋回する場合、車両重心に遠心力が作用するため、旋回時外側の車輪側のばね上荷重が大きくなる一方で、旋回時内側の車輪のばね上荷重が小さくなる。図2に示すように車両10が右旋回する場合、左輪FL,RLが旋回時外側の車輪に相当し、右輪FR,RRが旋回時内側の車輪に相当する。車両10が旋回している場合、旋回時外側の車輪用のサスペンションを構成するスプリングは、ばね上荷重の増大に起因して収縮する。一方、旋回時内側の車輪用のサスペンションを構成するスプリングは、ばね上荷重の減少に起因して伸長する。その結果、車両10の旋回時には、車両10がローリング運動し、車両のロール角Φが変化する。
なお、旋回時に車両10に制動力が付与されていると、車両10ではローリング運動とピッチング運動との双方が行われる。その結果、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの旋回時外側の前輪のばね上荷重が最大となり、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの旋回時内側の後輪のばね上荷重が最小となる。
そのため、車両10の旋回時におけるロール角Φの変化を抑制するためには、旋回時外側の前輪に対する制動力の配分比率を高くするなどし、旋回時外側の前輪に付与する制動力を大きくすること、及び、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率を高くするなどし、旋回時内側の後輪に付与する制動力を大きくすることが有効である。本実施形態では、上述したようにアンチリフト力FALのほうがアンチダイブ力FADよりも大きくなりやすい。そのため、旋回時における車両10のローリング運動を抑制するロール抑制制御では、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率を高くするなどし、旋回時内側の後輪に付与する制動力をロール抑制制御の非実施時よりも大きくする。すなわち、図2に示すように車両10が右旋回する場合、ロール抑制制御では、例えば旋回時内側の後輪に該当する右後輪RRに対する制動力の配分比率を高くするなどし、右後輪RRに付与する制動力BPRRが、左前輪FLに付与する制動力BPFL、右前輪FRに付与する制動力BPFR及び左後輪RLに付与する制動力BPRLよりも大きくされる。
このようにロール抑制制御が実施されると、車両10の旋回時内側の後部で大きなアンチリフト力FALが発生する。その結果、車両10のローリング運動を抑制することができ、ひいては車両10のロール角Φの変化を抑制することができる。さらに、大きなアンチリフト力FALの発生により、車両10の減速時における車両10のピッチング運動を抑制することができ、ひいては車両10のピッチ角の変化を抑制することもできる。
ロール抑制制御を実施すると、左右の後輪RL,RRの間に制動力差ΔBPR(=BPRR-BPRL)が発生する。そのため、図2に示すように、車両10には、左右の後輪RL,RRの間に発生する制動力差ΔBPRに応じたヨーモーメントYM1が発生する。そのため、車両10の旋回半径が小さい場合や車両10の車体速度VSが大きい場合では、ロール抑制制御が実施されると、ヨーモーメントYM1の発生に起因して車両10の挙動の安定性が低下するおそれがある。本実施形態では、ヨーモーメントYM1は、車両10のオーバステア傾向を大きくする方向に作用する。
そのため、本実施形態では、車両10が緩やかに旋回すると判定できるときにはロール抑制制御が実施されるものの、車両10が緩やかに旋回すると判定できないときにはロール抑制制御が実施されない。すなわち、車両10が緩やかに旋回すると判定できないときには、安定性優先制御が実施される。
本実施形態で実施される安定性優先制御は、車両10のオーバステアを抑制する制御となっている。図3には、車両10の旋回時に安定性優先制御が実施されている場合の一例が図示されている。図3に示す例では、旋回時内側の後輪である右後輪RRに付与する制動力BPRRが旋回時外側の後輪である左後輪RLに付与する制動力BPRLよりも大きく、旋回時外側の前輪である左前輪FLに付与する制動力BPFLが旋回時内側の前輪である右前輪FRに付与する制動力BPFRよりも大きい。安定性優先制御の実施時に左右の後輪RL,RRの間に発生する制動力差ΔBPRは、ロール抑制制御の実施時に発生する制動力差ΔBPRよりも小さい。左右の後輪RL,RRの間に発生する制動力差ΔBPRに応じたヨーモーメントYM1は、車両10のオーバステア傾向を大きくする方向に作用するものである。一方、左右の前輪FL,FRの間に発生する制動力差ΔBPFに応じたヨーモーメントYM2は、車両10のアンダステア傾向を大きくする方向に作用するものである。つまり、ヨーモーメントYM1の向きとヨーモーメントYM2の向きとが互いに反対であるため、ヨーモーメントYM1がヨーモーメントYM2で相殺される。その結果、旋回時に車両10がオーバステアになりにくい。
次に、図1を参照し、制御装置100について説明する。
制御装置100は、旋回時の車両10の挙動を制御する機能部として、車両要求制動力取得部105、旋回状態判定部101、ロール制御部108、安定性優先制御部103及び減速スリップ判定部104を有している。
車両要求制動力取得部105は、車両10に付与する制動力の要求値である車両要求制動力BPRCを取得する。運転者が制動操作を行っている場合、車両要求制動力BPRCは、制動操作量INPが多いほど大きい。自動制動時では、車両要求制動力BPRCは、車両10の減速度の目標値XGTが大きいほど大きい。
旋回状態判定部101は、車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する。ここでいう「緩やかな旋回」とは、上記のロール抑制制御を実施しても、当該ロール抑制制御の実施によるヨーモーメントYM1の発生によって車両10の挙動の安定性が低下しない、又は、挙動の安定性の低下度合いが許容範囲に収まるような車両10の旋回のことをいう。車両10が低速走行する場合や車両10の旋回半径が大きいほど、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされやすい。
旋回状態判定部101は、車両10の旋回時における、ステアリングホイール21の操舵角、転舵輪である前輪FL,FRの切れ角、横加速度GY、ヨーレートYR及び車体スリップ角ASLを基に、車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する。また、車両10の車体速度VSが大きい状態で旋回する場合、左右の後輪RL,RRの間に発生する制動力差ΔBPRがあまり大きくなくても、大きなヨーモーメントYM1が発生して車両10の挙動が不安定化しやすい。そのため、旋回状態判定部101は、車両10の車体速度VSを基に、車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する。つまり、本実施形態では、操舵角、前輪FL,FRの切れ角、横加速度GY、ヨーレートYR、車体スリップ角ASL及び車体速度VSが、旋回時における車両10のヨーイング運動に影響を与えるパラメータ、すなわち車両10のヨーイング運動を示すパラメータに相当する。
また、旋回状態判定部101は、ナビゲーション装置131から入力された車両10の走行進路に関する情報に含まれる走行進路の曲率半径を基に、車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する。
なお、車両10が緩やかに旋回するか否かの判定の具体的な内容については後述する。
ロール制御部108は、ロール抑制制御部102を含んでいる。ロール抑制制御部102は、旋回状態判定部101によって車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされているときにロール抑制制御を実施する。ロール抑制制御の具体的な内容については後述する。
安定性優先制御部103は、車両10の旋回時において旋回状態判定部101によって車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされていないときに、安定性優先制御を実施する。
減速スリップ判定部104は、車輪FL,FR,RL,RRで減速スリップが発生しているか否かを判定する。減速スリップが発生しているか否かの判定の具体的な内容については後述する。
次に、図4を参照し、車両10が旋回する際に制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンは、自動運転によって車両10が走行する場合であっても、手動運転によって車両10が走行する場合であっても繰り返し実行される。ここでいう手動運転とは、操舵が手動である車両10の運転のことをいう。
図4に示すように、本処理ルーチンにおいて、ステップS11では、旋回状態判定部101によって、車両10が緩やかに旋回するか否かの判定が行われる。例えば、旋回状態判定部101は、以下に示す複数の条件の何れもが成立しているときに、車両10が緩やかに旋回するとの判定をなす。
(条件1)横加速度GYの絶対値が判定横加速度GYTh未満であること。
(条件2)ヨーレートYRの絶対値が判定ヨーレートYRTh未満であること。
(条件3)車両の車体スリップ角ASLの絶対値が判定スリップ角ASLTh未満であること。
(条件4)車両10の車体速度VSが判定車体速度VSTh未満であること。
判定横加速度GYTh、判定ヨーレートYRTh及び判定スリップ角ASLThなどの判定値は、ロール抑制制御の実施によってヨーモーメントYM1が発生した場合に車両10の挙動の安定性の低下度合いを許容範囲に収めることができるか否かの判断基準として設定されている。本実施形態では、上記の各判定値が、「第1所定値」に相当する。こうした判定値は予め設定された規定値で固定してもよいし、可変させてもよい。ロール抑制制御の実施時では、車両10の車体速度VSが大きいほど車両10の挙動の安定性が低下しやすい。そのため、上記の判定値を可変させる場合、車体速度VSが大きいほど判定値を小さくするようにしてもよい。
判定車体速度VSThは、ロール抑制制御の実施に起因して発生するヨーモーメントYM1が大きくなるか否かの判断基準として設定される。すなわち、車体速度VSが判定車体速度VSTh以上であるときにロール抑制制御を実施した場合、大きなヨーモーメントYM1の発生によって車両10の挙動の安定性の低下度合いが許容範囲を超える可能性がある。つまり、判定車体速度VSThもまた、「第1所定値」の一例である。
なお、本実施形態では、上記(条件1)~(条件4)のうちの少なくとも1つが成立しない場合であっても、車両10の走行進路の曲率半径が判定曲率半径よりも大きいときには、車両10が緩やかに旋回するとの判定をなすようにしてもよい。曲率半径が判定曲率半径よりも大きい場合、ロール抑制制御を実施しても車両10の挙動の安定性が低下しにくいと判断することができる。判定曲率半径についても予め設定された規定値で固定してもよいし、可変させてもよい。判定曲率半径を可変させる場合、車体速度VSが大きいほど判定曲率半径を大きくするようにしてもよい。
ステップS11において、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされてない場合(NO)、処理が後述するステップS14に移行される。一方、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされている場合(S11:YES)、処理が次のステップS12に移行される。ステップS12において、減速スリップ判定部104によって、各車輪FL,FR,RL,RRのスリップ量SLPが算出される。すなわち、減速スリップ判定部104は、車体速度VSから車輪FL,FR,RL,RRの車輪速度VWを引いた値を車輪FL,FR,RL,RRのスリップ量SLPとして算出する。続いて、次のステップS13では、減速スリップ判定部104によって、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪があるか否かの判定が行われる。判定スリップ量SLPThは、車輪FL,FR,RL,RRで減速スリップが発生しているか否かの判断基準として設定されている。すなわち、ステップS13では、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの少なくとも1つの車輪で減速スリップが発生しているか否かの判定を行っているともいうことができる。なお、判定スリップ量SLPThは、アンチロックブレーキ制御(ABS)の実施時に用いられるスリップ量の閾値と同じ値であってもよいし、当該閾値よりも小さい値であってもよい。
各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がある場合(S13:YES)、減速スリップが発生した車輪があると判断できるため、処理が次のステップS14に移行される。
ステップS14において、安定性優先制御部103によって、安定性優先制御が実施される。そして、次のステップS15において、制御フラグFLGにオフがセットされる。制御フラグFLGは、ロール抑制制御の実施中ではオンにセットされる一方で、ロール抑制制御が実施されないときにはオフがセットされる。また、制御フラグFLGは、初期値としてオフがセットされている。すなわち、車両10が旋回していないときには制御フラグFLGにオフがセットされる。ステップS15で制御フラグFLGにオフがセットされると、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS13において、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がない場合(NO)、減速スリップが発生した車輪がないということになるため、ロール抑制制御部102によって、ロール抑制制御が実施される。すなわち、まずはじめにステップS16の処理が実行される。ステップS16では、制御フラグFLGにオフがセットされているか否かの判定が行われる。制御フラグFLGにオフがセットされている場合(S16:YES)、処理が次のステップS17に移行される。一方、制御フラグFLGにオンがセットされている場合(S16:NO)、ステップS17の処理を実行することなく、処理がステップS18に移行される。
ステップS17において、車両10のロール角Φ及びロールレートΦRが算出される。ロール角Φは、各サスペンション15FL,15FR,15RL,15RRのストローク量SSを基に算出される。車両10にロール角センサが設けられている場合、当該ロール角センサからの検出信号を基に、車両10のロール角Φを算出するようにしてもよい。ロールレートΦRは、ロール角Φを時間微分することにより算出される。ロール角Φ及びロールレートΦRが算出されると、処理が次のステップS18に移行される。
ステップS18において、対象車輪として旋回時内側の後輪が選択され、旋回時内側の後輪に対する要求制動力である車輪要求制動力BPRTWがロール抑制制御の制御量として算出される。車輪要求制動力BPRTWは、ロール角Φと目標ロール角ΦThとの関係、及び、ロールレートΦRを基に算出される。目標ロール角ΦThは、ロール抑制制御の実施中におけるロール角Φの目標値である。そのため、車輪要求制動力BPRTWは、目標ロール角ΦThからロール角Φを引いた値であるロール角偏差ΔΦが大きいほど大きくなるように算出される。また、ロール抑制制御を実施しないと仮定した場合、ロールレートΦRが大きいほどロール角Φが大きくなりやすい。そのため、車輪要求制動力BPRTWは、ロールレートΦRが大きいほど大きくなるように算出される。
本実施形態では、車両要求制動力BPRCに従って車両10に制動力が付与されている状況下でロール抑制制御が実施される。車両制動時のロール抑制制御では、車輪要求制動力BPRTWは、車両要求制動力BPRCを越えない範囲内で、ロール角Φと目標ロール角ΦThとの関係、及び、ロールレートΦRを基に算出される。ステップS18で算出される車輪要求制動力BPRTWは、ロール抑制制御の開始前での旋回時内側の後輪に付与する制動力よりも大きくなる。そのため、ロール抑制制御が実施されると、旋回時内側の後輪に付与する制動力は、車両要求制動力BPRCが変わっていなくてもロール抑制制御の開始前よりも大きくなる。すなわち、ロール抑制制御では、対象車輪である旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率がロール抑制制御の非実施時よりも高くなるということができる。より具体的には、ロール抑制制御では、ロール角偏差ΔΦが大きいほど、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率が高くなる。また、ロール抑制制御では、ロールレートΦRが大きいほど、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率が高くなる。
また、本実施形態では、車両10に制動力が付与されていないときでもロール抑制制御が実施されることもあり得る。車両10に制動力が付与されていない状況下で実施されるロール抑制制御のことを、「非制動時ロール抑制制御」という。非制動時ロール抑制制御でも、車両制動時のロール抑制制御と同様に、ロール角Φと目標ロール角ΦThとの関係、及び、ロールレートΦRを基に車輪要求制動力BPRTWが算出される。
そして、車輪要求制動力BPRTWの算出が完了すると、処理が次のステップS19に移行される。ステップS19において、自動運転中であるか否かの判定が行われる。自動運転中であるとの判定がなされている場合(S19:YES)、処理が後述するステップS21に移行される。一方、自動運転中であるとの判定がなされていない場合(S19:NO)、手動で操舵が行われているため、処理が次のステップS20に移行される。
ステップS20において、ステップS18で算出された車輪要求制動力BPRTWの減少補正が行われる。すなわち、ステップS18で算出された車輪要求制動力BPRTWに補正係数を乗算した値が車輪要求制動力BPRTWとして導出される。この場合、補正係数は、「0」よりも大きく、且つ「1」よりも小さい値である。つまり、手動で操舵が行われている場合のロール抑制制御では、自動運転時のロール抑制制御と比較し、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率の増大が抑制される。減少補正が行われると、処理が次のステップS21に移行される。
ステップS21において、旋回時内側の後輪への制動力の付与、又は旋回時内側の後輪に付与する制動力の増大に起因する車両10の加速度の変化を相殺する抑制制御量Zが算出される。車両制動時のロール抑制制御では、旋回時内側の後輪以外の他の車輪に対する制動力の総和が抑制制御量Zとして算出される。つまり、車両要求制動力BPRCから旋回時内側の後輪に対する制動力である車輪要求制動力BPRTWを差し引いた値が、抑制制御量Zとして算出される。そのため、車輪要求制動力BPRTWと抑制制御量Zとの和は、車両10の減速度の目標値XGTに応じた値となる。すなわち、車両10の減速度を目標値XGTとする総制動力を各車輪FL,FR,RL,RRに配分する際、旋回時内側の後輪に付与する制動力はロール抑制制御の実施前よりも増大される。その結果、総制動力のうち、旋回内側後輪に対する制動力が占める割合が、ロール抑制制御を実施しない場合と比較して大きくなる。一方、旋回内側後輪以外の車輪のいずれか、あるいは旋回内側後輪以外の複数の車輪については、付与される制動力が抑制され、総制動力のうち、当該車輪に対する制動力が示す割合は、ロール抑制制御を実施しない場合と比較して小さくなる。
一方、非制動時ロール抑制制御を実施する場合、非制動時ロール抑制制御の開始前では車両10に制動力が付与されていない。この場合、駆動輪である前輪FL,FRに入力される駆動力が、車輪要求制動力BPRTWに見合った分だけ大きくなるように、車両10の動力源11から出力される駆動力の増大量が抑制制御量Zとして算出される。
そして、抑制制御量Zが算出されると、処理が次のステップS22に移行される。ステップS22において、車輪要求制動力BPRTW及び抑制制御量Zを基に、制動装置40、すなわち制動アクチュエータ42が制御される。動力源11から出力される駆動力を増大させる場合、制動アクチュエータ42に加え、車両10の動力源11もまた制御される。そして、次のステップS23では、制御フラグFLGにオンがセットされる。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
次に、図5を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。図5には、自動運転での車両10の旋回時に制動力が付与される場合の一例が図示されている。図5に示す例では、車両10の旋回中におけるタイミングT11で車両10に制動力が付与されるようになり、その後のタイミングT13で車両10が停止する。
なお、図5(d)~(g)において、ロール抑制制御が実施される本実施形態における各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPFL,BPFR,BPRL,BPRRの推移が実線で示されている。一方、ロール抑制制御が実施されない比較例における各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPFL,BPFR,BPRL,BPRRの推移が破線で示されている。
図5(a)~(g)に示すように車両10の旋回中のタイミングT11で車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされると、ロール抑制制御が開始される。すると、対象車輪である旋回時内側の後輪に付与する制動力である車輪要求制動力BPRTWが算出される。この際、車輪要求制動力BPRTWは、旋回時内側の後輪以外の他の車輪に付与する制動力よりも大きい値に設定される。
ここで、比較例の場合では、図5(d)~(g)に破線で示すように、旋回時内側の後輪に付与する制動力が上記の車輪要求制動力BPRTWよりも大きくならない。そのため、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍で発生するアンチリフト力FALはあまり大きくならない。その結果、車両10のローリング運動を抑制することができず、車両10のロール角Φが大きくなってしまう。
この点、本実施形態では、比較例の場合と比較し、旋回時内側の後輪に大きな制動力が付与される。その結果、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍に、大きなアンチリフト力FALを発生させることができる。これにより、車両10のローリング運動が抑制される。したがって、自動運転によって車両10が緩やかに旋回する場合に、車両10のローリング運動を抑制することにより、車両10の乗員の快適性を向上させることができる。
また、ロール抑制制御の実施によって車両10のロール角Φの変化を抑制することにより、車載のカメラ121の画角の変化を抑制することができる。その結果、車両10の旋回時における、カメラ121から得られる情報の精度の低下を抑制することができる。
こうしたロール抑制制御では、車両10の前後加速度GXが減速度の目標値XGTとなるように、抑制制御量Z、すなわち旋回時内側の後輪以外の他の車輪に付与する制動力が調整される。そのため、旋回時内側の後輪に付与する制動力の増大に起因する車両10の減速を、他の車輪に付与する制動力の減少に起因する車両10の加速によって相殺することができる。これにより、ロール抑制制御の実施に起因して車両10の前後加速度GXが減速度の目標値XGTから乖離することを抑制できる。
図5には、制動力の付与によって車両10を減速させる場合にロール抑制制御を実施する一例が図示されている。しかし、車体速度VSを一定で保ったままで車両10が旋回する際に、すなわち減速度の目標値XGTが「0」である場合にロール抑制制御が実施されることもある。つまり、非制動時ロール抑制制御が実施されることがある。この場合、旋回時内側の後輪に制動力を付与して車両10のローリング運動を抑制する際には、車両10の動力源11から出力される駆動力が増大される。すなわち、旋回時内側の後輪への制動力の付与に起因する車両10の減速を、駆動輪である前輪FL,FRに入力される駆動力の増大に起因する車両10の加速によって相殺することができる。そのため、この場合であっても、非制動時ロール抑制制御の実施に起因して車両10の前後加速度GXが減速度の目標値XGTから乖離することを抑制できる。
ところで、車両10の旋回時にロール抑制制御が実施されているときに、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの少なくとも一つの車輪で減速スリップが発生することがある。特に、旋回時内側の後輪に入力される垂直荷重が他の車輪に入力される垂直荷重よりも小さいにも拘わらず、旋回時内側の後輪には比較的大きな制動力が付与される。その結果、旋回時内側の後輪で減速スリップが生じやすい。車両10の旋回中に車輪で減速スリップが生じると、車両10の挙動の安定性が低下しやすい。そこで、本実施形態では、ロール抑制制御の実施中に、少なくとも1つの車輪で減速スリップが発生したときには、ロール抑制制御の実施が終了される。
具体的には、ロール抑制制御が終了されると、安定性優先制御が開始される。本実施形態で実施されるロール抑制制御では車両10でオーバステア傾向が大きくなりやすい。そのため、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの少なくとも一つの車輪で減速スリップが発生した際には、車両10がオーバステア傾向を示している可能性がある。そのため、ロール抑制制御の実施中に車両10がオーバステア傾向を示していたとしても、ロール抑制制御を終了して安定性優先制御を実施することにより、車両10のオーバステア傾向を小さくすることができる。これにより、旋回時における車両10の挙動の安定性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、ロール抑制制御の実施中でも、図4に示したステップS11の判定が行われる。そして、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされなくなると、ロール抑制制御が終了されて安定性優先制御が実施されることとなる。このように安定性優先制御を実施することにより、ロール抑制制御の実施時に発生していたオーバステア傾向を小さくすることができる。その結果、旋回時における車両10の挙動の安定性の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態では、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(1)運転者による手動で操舵が行われている場合、運転者のフィーリング的には操舵に応じて車両10のロール角Φがある程度変化したほうが望ましい。そこで、本実施形態では、手動操舵によって車両10が旋回する場合におけるロール抑制制御では、自動運転によって車両10が旋回する場合におけるロール抑制制御の実施時よりも車輪要求制動力BPRTWが小さくされる。そのため、手動操舵時にあっては、ロール抑制制御の実施に伴う車両10のローリング運動の抑制効果が低減される。したがって、手動操舵によって車両10が旋回するときには、車両10のロール角Φの大幅な変化を抑制しつつ、操舵量に応じて車両10にローリング運動を行わせることができる。
(2)本実施形態で実施される安定性優先制御では、旋回時内側の後輪に付与する制動力を、ロール抑制制御の実施時よりは小さいものの、他の車輪に付与する制動力よりも大きい値とされる。そのため、安定性優先制御の実施時であっても、車両10のローリング運動を多少抑制することができる。
(3)車両10が旋回している場合、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされていない場合、ロール抑制制御ではなく安定性優先制御が実施される。そのため、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされていないときに、旋回中における車両10の挙動の安定性を高めることができる。
(第2実施形態)
次に、車両の挙動制御装置の第2実施形態を図6に従って説明する。第2実施形態では、手動による操舵時にはロール抑制制御を実施しない点が第1実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図6を参照し、挙動制御装置としての制御装置100が車両10の旋回時に実行する処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンは、自動運転によって車両10が走行する場合であっても、手動運転によって車両10が走行する場合であっても繰り返し実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS11において、旋回状態判定部101によって、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされてない場合(NO)、処理がステップS14に移行される。一方、旋回状態判定部101によって、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされている場合(S11:YES)、処理が次のステップS111に移行される。ステップS111において、自動走行中であるか否かの判定が行われる。運転者によって操舵が行われている場合は、自動走行中ではない。そして、自動走行中であるとの判定がなされていない場合(S111:NO)、処理がステップS14に移行される。一方、自動走行中であるとの判定がなされている場合(S111:YES)、処理がステップS12に移行される。
ステップS12において、減速スリップ判定部104によって、各車輪FL,FR,RL,RRのスリップ量SLPが算出される。続いて、次のステップS13において、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がある場合(YES)、処理が次のステップS14に移行される。
ステップS14において、安定性優先制御部103によって、安定性優先制御が実施される。そして、次のステップS15において、制御フラグFLGにオフがセットされる。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS13において、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がない場合(NO)、ロール抑制制御部102によって、ロール抑制制御が実施される。すなわち、まずはじめにステップS16の処理が実行される。ステップS16において、制御フラグFLGにオフがセットされている場合(YES)、処理がステップS17に移行される。一方、制御フラグFLGにオンがセットされている場合(S16:NO)、処理がステップS18に移行される。
ステップS17において、車両10のロール角Φ及びロールレートΦRが算出され、次のステップS18において、対象車輪である旋回時内側の後輪に対する車輪要求制動力BPRTWが、ロール抑制制御の制御量として算出される。そして、次のステップS21において、抑制制御量Zが算出される。続いて、ステップS22において、車輪要求制動力BPRTW及び抑制制御量Zを基に、制動装置40、すなわち制動アクチュエータ42が制御される。動力源11から出力される駆動力を増大させる場合、制動アクチュエータ42に加え、車両10の動力源11もまた制御される。そして、ステップS23では、制御フラグFLGにオンがセットされる。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
本実施形態では、上記第1実施形態の場合とは異なり、運転者による操舵によって車両10が旋回する場合、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされていたとしてもロール抑制制御が実施されない。これにより、手動の操舵に応じたローリング運動を車両10に行わせることにより、操舵によって車両挙動が適切に変化するというフィーリングを運転者に与えることができる。
(第3実施形態)
次に、車両の挙動制御装置の第3実施形態を図7~図9に従って説明する。第3実施形態では、回生制動力と摩擦制動力とを協調させる点が第1実施形態及び第2実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第1実施形態及び第2実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態及び第2実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図7には、制御装置100を備える車両10Aが図示されている。車両10Aは、制動装置40に加え、前輪用のモータジェネレータMG1と、後輪用のモータジェネレータMG2とを備えている。モータジェネレータMG1は、車両10Aを加速させる際には駆動力を両前輪FL,FRに付与し、車両10Aを減速させる際には回生制動力BPRを両前輪FL,FRに付与することができる。モータジェネレータMG1の発電量に応じた回生制動力BPRが、各前輪FL,FRに付与される。この際、左前輪FLに付与される回生制動力BPRの大きさは、右前輪FRに付与される回生制動力BPRの大きさと等しい。同様に、モータジェネレータMG2は、車両10Aを加速させる際には駆動力を両後輪RL,RRに付与し、車両10Aを減速させる際には回生制動力BPRを両後輪RL,RRに付与することができる。モータジェネレータMG2の発電量に応じた回生制動力BPRが、各後輪RL,RRに付与される。この際、左後輪RLに付与される回生制動力BPRの大きさは、右後輪RRに付与される回生制動力BPRの大きさと等しい。本実施形態では、モータジェネレータMG1が、両前輪FL,FRに付与する回生制動力BPRを調整する「回生装置」の一例である。また、モータジェネレータMG2が、後輪RL,RRに付与する回生制動力BPRを調整する「回生装置」の一例である。
次に、図8を参照し、車両10Aが旋回する際に制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、車両旋回中で車両10Aに制動力が付与されているのであれば、自動運転によって車両10Aが走行する場合であっても、手動運転によって車両10Aが走行する場合であっても繰り返し実行される。
図8に示すように、本処理ルーチンにおいて、ステップS31では、上記ステップS11と同様に、旋回状態判定部101によって、車両10が緩やかに旋回するか否かの判定が行われる。車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされてない場合(S31:NO)、処理が後述するステップS34に移行される。一方、車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされている場合(S31:YES)、処理が次のステップS32に移行される。ステップS32において、減速スリップ判定部104によって、各車輪FL,FR,RL,RRのスリップ量SLPが算出される。続いて、ステップS33では、減速スリップ判定部104によって、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪があるか否かの判定が行われる。各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がある場合(S33:YES)、減速スリップが発生した車輪があると判断できるため、処理が次のステップS34に移行される。
ステップS34において、安定性優先制御部103によって、安定性優先制御が実施される。車両10Aは、各車輪FL,FR,RL,RRに回生制動力BPRを付与することができる。そのため、安定性優先制御では、前輪FL,FR及び後輪RL,RRのうちの少なくとも一方に回生制動力を付与してもよい。このように安定性優先制御が実施されると、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS33において、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がない場合(NO)、減速スリップが発生した車輪がないということになるため、ロール抑制制御部102によって、ロール抑制制御が実施される。すなわち、まずはじめにステップS36の処理が実行される。ステップS36では、後述する増大処理の実行条件が成立しているか否かの判定が行われる。例えば、実行条件は、前後加速度GXが減少していることを含む。例えば、前後加速度GXの減少速度が判定減少速度以上である場合は、前後加速度GXが減少していると判定できる。判定減少速度は、車両10Aの減速度が大きくなっているか否かの判断基準として設定される。よって、前後加速度GXの減少速度が判定減少速度未満である場合は、前後加速度GXが減少していると判定できない。そして、増大処理の実行条件が成立しているとの判定がなされている場合(S36:YES)、処理が次のステップS37に移行される。
ステップS37において、ロール抑制制御の増大処理が実行される。ロール抑制制御部102は、増大処理では、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの対象車輪に対する制動力の配分比率を増大させる一方で、各車輪FL,FR,RL,RRのうちの対象車輪以外の車輪に対する制動力の配分比率を減少させる。
図9を参照し、増大処理の一例を説明する。図9におけるタイミングT21からタイミングT22までの期間が、増大処理の実行期間である。図9(d),(e),(f),(g)において、破線は、ロール抑制制御を実施しない場合における回生制動力BPRの推移を示している。細い実線は、ロール抑制制御を実施する場合における回生制動力BPRの推移を示している。すなわち、タイミングT21からタイミングT22までの期間では車両要求制動力BPRCが増大されるため、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力が増大される。しかし、増大処理では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの増大速度が、ロール抑制制御の非実施時と比較して小さい。また、車両要求制動力BPRCと、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの合計との差を、不足制動力とした場合、増大処理では、不足制動力が大きいほど対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが大きくされる。
本実施形態では、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪の双方が対象車輪である。そのため、対象車輪ではない旋回時外側の後輪及び旋回時内側の前輪には、摩擦制動力BPF及び回生制動力BPRのうちの回生制動力BPRのみが付与される一方で、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪には、摩擦制動力BPFと回生制動力BPRとの双方が付与される。すなわち、増大処理では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの合計と、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFの合計との和が車両要求制動力BPRCと等しくなるように、制動アクチュエータ42及び各モータジェネレータMG1,MG2が制御される。これにより、対象車輪に付与する制動力が増大される一方で、対象車輪ではない車輪に付与する制動力が減少される。なお、この場合、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの要求値が、「ロール抑制制御の制御量」の一例である。
ちなみに、前輪用のサスペンション15FL,15FR及び後輪用のサスペンション15RL,15RRのジオメトリの関係上、旋回時内側の後輪に付与する制動力を大きくするほど、車両10Aのローリング運動の抑制効果を高くできる。そのため、車両10Aのローリング運動を抑制するためには、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPFを、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFよりも大きくすることが好ましい。しかし、旋回時内側の後輪に付与する制動力BPと、旋回時外側の前輪に付与する制動力BPとの差分が大きいと、増大処理の実行によって発生するヨーモーメントが大きくなり、車両10Aの挙動の安定性の低下が懸念される。そのため、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFは、増大処理の実行に伴う車両10Aの挙動の安定性の低下度合いを許容範囲に収めることができるようにそれぞれ設定される。
図8に戻り、増大処理が実行されると、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS36において、実行条件が成立しているとの判定がなされていない場合(NO)、処理が後述するステップS38に移行される。ステップS38において、後述する減少処理の実行条件が成立しているか否かの判定が行われる。例えば、実行条件は、前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFThよりも大きいことの双方を含む。本実施形態では、切替判定値BPFThとして「0」が設定される。例えば、前後加速度GXの減少速度が判定減少速度未満である場合は、前後加速度GXが減少していないと判定できる。そして、前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFThよりも大きいことの何れもが成立している場合、減少処理の実行条件が成立しているとの判定がなされ(S38:YES)、処理が次のステップS39に移行される。
ステップS39において、ロール抑制制御の減少処理が実行される。ロール抑制制御部102は、減少処理では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFを切替判定値BPFThまで減少させることによって対象車輪に付与する制動力の配分比率を小さくする。また、ロール抑制制御部102は、減少処理では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRを増大させることによって、対象車輪ではない車輪に付与する制動力の配分比率を大きくする。
図9を参照し、減少処理の一例を説明する。図9におけるタイミングT22からタイミングT23までの期間が、減少処理の実行期間である。図9に示す例では、タイミングT22からタイミングT23までの期間では車両要求制動力BPRCが増大されない。そして、減少処理では、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ減少される。この際の摩擦制動力BPFの減少速度は、増大処理の実行時における摩擦制動力BPFの増大速度よりも大きい。なお、減少処理の実行時における摩擦制動力BPFの減少速度は、増大処理の実行時における摩擦制動力BPFの増大速度と同じであってもよいし、当該増大速度よりも小さくてもよい。
また、減少処理では、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFの減少に伴って、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが増大される。これにより、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力の合計が車両要求制動力BPRCと等しい状態が維持される。
図8に戻り、減少処理が実行されると、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS38において、前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFThよりも大きいことの少なくとも一方が非成立である場合、実行条件が成立しているとの判定がなされず(NO)、処理が後述するステップS40に移行される。ステップS40において、後述する保持処理の実行条件が成立しているか否かの判定が行われる。例えば、実行条件は、前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFTh以下であることの双方を含む。前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFTh以下であることの何れもが成立している場合、保持処理の実行条件が成立しているとの判定がなされ(S40:YES)、処理が次のステップS41に移行される。一方、前後加速度GXが減少していないと判定できること、及び、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが切替判定値BPFTh以下であることの少なくとも一方が非成立である場合、実行条件が成立しているとの判定がなされず(S40:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。
ステップS41において、ロール抑制制御の保持処理が実行される。ロール抑制制御部102は、保持処理では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFを切替判定値BPFTh以下の状態で保持させる一方で、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPの合計が車両要求制動力BPRCと等しい状態を保持する。本実施形態では、切替判定値BPFThとして「0」が設定されている。そのため、減少処理によって対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの全てを回生制動力BPRに置き換えることが可能となる。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
なお、車輪FL,FR,RL,RRに回生制動力BPRを付与して車両10Aを減速させる場合、車体速度VSがすり替え判定速度VSTh1まで低下すると、回生制動力BPRを摩擦制動力BPFにすり替えるすり替え制御が実施される。すなわち、図9に示すように、タイミングT24で車体速度VSがすり替え判定速度VSTh1に達すると、すり替え制御の開始条件が成立したとの判定がなされ、ロール抑制制御が終了され、すり替え制御が開始される。
次に、図9を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。図9に示す例は、右及び左の何れか一方に車両10Aが旋回しているときに車両10Aに制動力が付与される場合である。すなわち、車両10Aの減速途中で車両10Aの旋回方向が変わらない。
図9(a)~(g)に示すように、車両10Aの旋回中のタイミングT21から車両10に制動力が付与される。このとき、車両10Aが緩やかに旋回しているとの判定がなされ、且つ、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がない場合、ロール抑制制御の実施が開始される。すると、タイミングT21からタイミングT22まで期間では、増大処理の実行によって、対象車輪である旋回時内側の後輪に付与する制動力BP、すなわち摩擦制動力BPFと回生制動力BPRとの合計が増大される。また、対象車輪である旋回時外側の前輪に付与する制動力BP、すなわち摩擦制動力BPFと回生制動力BPRとの合計が増大される。旋回時内側の後輪に付与する制動力を増大させることにより、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍に発生するアンチリフト力を、ロール抑制制御の非実施時と比較して増大させることができる。また、旋回時外側の前輪に付与する制動力を増大させることにより、車両前部のうちの旋回時外側の前輪近傍に発生するアンチダイブ力を、ロール抑制制御の非実施時と比較して増大させることができる。これにより、本実施形態では、車両10Aに回生制動力が付与される場合であっても、車両旋回時におけるローリング運動を抑制でき、ひいては車両旋回時における車両10Aの乗員の快適性を向上させることができる。
本実施形態では、対角線上に配置される旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪に対する制動力をそれぞれ増大させている。そのため、旋回時内側の後輪に付与する制動力の増大によって発生するヨーモーメントを、旋回時外側の前輪に付与する制動力の増大によって発生するヨーモーメントによって相殺できる。これにより、ロール抑制制御の実施に起因する旋回時における車両10Aの挙動の安定性の低下を抑制できる。
なお、増大処理では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFを増大させた分、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRを減少させている。これにより、ロール抑制制御の実施に起因する車両10Aの前後加速度GXの変化を抑制できる。
本実施形態で実施されるロール抑制制御では、増大処理の実行によって対象車輪に付与する摩擦制動力BPFを増大させた後のタイミングT22からタイミングT23までの期間では、減少処理の実行によって対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが減少される。また、摩擦制動力BPFの減少に伴って、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが増大される。このように減少処理を実行し、タイミングT23から保持処理を開始させることにより、車両10Aの制動時における回生エネルギの回収効率の低下を抑制できる。
(第4実施形態)
次に、車両の挙動制御装置の第4実施形態を図10に従って説明する。第4実施形態では、ロール抑制制御の内容が第3実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第3実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、上記各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態で実施されるロール抑制制御は、増大処理、減少処理及び保持処理を含む。そして、上記第3実施形態で説明したとおり、車両旋回中で車両10Aに制動力BPが付与されている場合において、車両10Aが緩やかに旋回しているとの判定がなされ(図8のS31:YES)、各車輪FL,FR,RL,RRの中に、スリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となる車輪がない場合(図8のS32:NO)、ロール抑制制御が実施される。
増大処理の実行条件が成立しているときには、増大処理が実行される。増大処理の実行条件が成立していない状況下で減少処理の実行条件が成立しているときには、減少処理が実行される。増大処理の実行条件及び減少処理の実行条件の何れもが成立していない状況下で保持処理の実行条件が成立しているときには、保持処理が実行される。
ただし、増大処理の実行条件の内容が、上記第3実施形態の場合と異なる。すなわち、図10(a)~(g)に示すように、増大処理の実行条件は、車両10Aの横加速度GYの絶対値が増大していることを含む。例えば、横加速度GYの絶対値の増大速度が第1判定速度以上である場合には、横加速度GYの絶対値が増大していると判定できる。なお、本実施形態における増大処理の実行条件は、車両10Aの前後加速度GXが減少していると判定できることを含んでいない。
また、減少処理の実行条件の内容もまた、上記第3実施形態の場合と異なる。すなわち、減少処理の実行条件は、車両10Aの横加速度GYの絶対値が減少していることを含む。例えば、横加速度GYの絶対値の減少速度が第2判定速度以上である場合には、横加速度GYの絶対値が減少していると判定できる。なお、本実施形態における減少処理の実行条件は、前後加速度GXが減少していないと判定できることを含んでいない。
また、保持処理の実行条件の内容もまた、上記第3実施形態の場合と異なる。すなわち、保持処理の実行条件は、車両10Aの横加速度GYが変化していないと判定できることを含む。例えば、横加速度GYの絶対値の増大速度が第1判定速度以上であり、且つ横加速度GYの絶対値の減少速度が第2判定速度以上である場合には、横加速度GYが変化していないと判定できる。なお、本実施形態における減少処理の実行条件は、前後加速度GXが減少していないと判定できることを含んでいない。
次に、図10を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。図10に示す例は、車両10Aが車線変更をする場合などのように車両制動中に車両10Aの旋回方向が変更される場合である。図10(d),(e),(f),(g)において、破線は、ロール抑制制御を実施しない場合の回生制動力BPRの推移であり、細い実線は、ロール抑制制御を実施する場合の回生制動力BPRの推移である。また、太い実線は、ロール抑制制御を実施する場合の摩擦制動力BPFの推移である。
図10(a)~(g)に示すように、タイミングT31から車両10Aへの制動力が付与されるようになる。図10に示す例では、各車輪FL,FR,RL,RRに回生制動力BPRが付与される。そして、タイミングT32から車両10Aの横加速度GYが正の方向に変化するようなヨーモーメントが車両10Aに発生する。すると、横加速度GYが大きくなる。
本実施形態では、タイミングT32からロール抑制制御の実施が開始される。すなわち、タイミングT32からタイミングT33までの期間では、増大処理の実行条件が成立するため、増大処理が実行される。増大処理では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが減少され、且つ、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFが増大される。図10に示す例では、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪の双方が対象車輪であるため、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ増大される。これにより、対象車輪ではない旋回時外側の後輪に付与する制動力、及び、旋回時内側の前輪に付与する制動力がそれぞれ減少され、且つ、旋回時内側の後輪に付与する制動力、及び、旋回時外側の前輪に付与する制動力がそれぞれ増大される。すると、旋回時内側の後輪に付与する制動力の増大によって、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍に発生するアンチリフト力を、ロール抑制制御の非実施時と比較して増大させることができる。また、旋回時外側の前輪に付与する制動力の増大によって、車両前部のうちの旋回時外側の前輪近傍に発生するアンチダイブ力を、ロール抑制制御の非実施時と比較して増大させることができる。これにより、本実施形態では、車両10Aに回生制動力が付与される場合であっても、車両旋回時におけるローリング運動を抑制でき、ひいては車両旋回時における車両10Aの乗員の快適性を向上させることができる。
図10に示す例では、タイミングT33からは横加速度GYが小さくなる方向のヨーモーメントが車両10Aに発生する。その結果、横加速度GYの絶対値が小さくなるため、減少処理の実行条件が成立し、増大処理が終了されて減少処理が実行されるようになる。横加速度GYの絶対値が小さくなるということは、車両10Aに作用する遠心力が小さくなることを意味する。すなわち、車両10Aのローリング運動を抑制する力を小さくしてもよくなる。そして、減少処理の実行によって、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ減少される。また、こうした摩擦制動力BPFの減少に伴い、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが増大される。このように横加速度GYの絶対値の減少に合わせ、対象車輪に付与する制動力を減少させることにより、車両10Aのローリング運動が調整される。
そして、タイミングT34で横加速度GYの正負が反転する。すなわち、タイミングT34からは横加速度GYの絶対値が大きくなる。すると、増大処理の実行条件が成立するため、減少処理が終了されて増大処理が開始される。タイミングT34以降における車両10Aの旋回方向は、タイミングT34以前における車両10Aの旋回方向と逆方向である。そのため、タイミングT34から開始される増大処理では、タイミングT32から開始された増大処理の実行時とは異なる車輪が対象車輪として選択される。例えば、タイミングT32から開始された増大処理の実行時には右前輪FRと左後輪RLが対象車輪として選択されていた場合、タイミングT34から開始される増大処理では、左前輪FLと右後輪RRが対象車輪として選択される。
タイミングT34から開始される増大処理では、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ増大される。これにより、対象車輪ではない旋回時外側の後輪に付与する制動力、及び、旋回時内側の前輪に付与する制動力がそれぞれ減少され、且つ、旋回時内側の後輪に付与する制動力、及び、旋回時外側の前輪に付与する制動力がそれぞれ増大される。その結果、車両旋回時におけるローリング運動を抑制できる。
タイミングT35からは横加速度GYが大きくなる方向のヨーモーメントが車両10Aに発生する。その結果、横加速度GYの絶対値が小さくなるため、減少処理の実行条件が成立し、増大処理が終了されて減少処理が実行されるようになる。すると、減少処理の実行によって、旋回時内側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時外側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ減少される。また、こうした摩擦制動力BPFの減少に伴い、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが増大される。このように横加速度GYの絶対値の減少に合わせ、対象車輪に付与する制動力を減少させることにより、車両10Aのローリング運動が調整される。
そして、タイミングT36からは横加速度GYがほとんど変化しなくなる。すなわち、横加速度GYの変化速度が閾値以下である状態が保持されるため、横加速度GYの絶対値が変化していないとの判定がなされるようになる。すると、保持条件が成立するため、減少処理が終了されて保持処理が開始される。保持処理では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFを切替判定値BPFTh以下の状態が保持される一方で、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの合計が車両要求制動力BPRCと等しい状態が保持される。
なお、タイミングT37ですり替え制御の実施条件が成立する。そのため、ロール抑制制御が終了され、すり替え制御の実施が開始される。
(第5実施形態)
次に、車両の挙動制御装置の第5実施形態を図11~図13に従って説明する。第5実施形態では、車両旋回中におけるローリング運動の調整の手法が上記各実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、上記各実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、上記各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図11に示すように、ロール制御部108は、ロール抑制制御部102に加え、ロール促進制御部106を含む。ロール促進制御部106は、旋回状態判定部101によって車両10が緩やかに旋回するとの判定がなされているときにロール促進制御を実施する。ロール促進制御は、ロール抑制制御とは異なり、車両10Aのローリング運動を促進する制御である。なお、ロール促進制御は、運転者による制動操作量の減少などに起因して車両要求制動力BPRCが減少されるときに実施される制御である。
ここで、本件発明者は、様々な実験やシミュレーションを行った結果、制動力の付与される車両10Aの旋回時において車両制動力が減少されるときには、車両10Aの乗員の快適性を向上させる上ではローリング運動を抑えるのではなくローリング運動を促進させる方がよいという知見を得た。そのため、本実施形態では、制動力の付与される車両10Aの旋回時において車両要求制動力BPRCが減少されるときには、ロール促進制御が実施される。
次に、図12を参照し、車両10Aの旋回時にロール促進制御を実施する場合に制御装置100が実行する処理ルーチンについて説明する。なお、本処理ルーチンは、自動運転によって車両10Aが走行する場合であっても、手動運転によって車両10Aが走行する場合であっても繰り返し実行される。
図12に示すように、本処理ルーチンにおいて、ステップS51では、上記ステップS11と同様に、旋回状態判定部101によって、車両10Aが緩やかに旋回するか否かの判定が行われる。車両10Aが緩やかに旋回するとの判定がなされている場合(S51:YES)、処理が次のステップS52に移行される。ステップS52において、車両10Aに制動力が付与されているか否かが判定される。車両要求制動力BPRCが「0」よりも大きい場合は、車両10Aに制動力が付与されていると判定される。一方、車両要求制動力BPRCが「0」と等しい場合は、車両10Aに制動力が付与されていると判定されない。そして、車両10Aに制動力が付与されているとの判定がなされている場合(S52:YES)、処理が次のステップS53に移行される。ステップS53において、車両要求制動力BPRCが減少しているか否かの判定が行われる。例えば、車両要求制動力BPRCの減少速度が判定速度以上である場合には、車両要求制動力BPRCが減少していると判定される。一方、車両要求制動力BPRCの減少速度が判定速度未満である場合には、車両要求制動力BPRCが減少していると判定されない。車両要求制動力BPRCが減少しているとの判定がなされている場合(S53:YES)、ロール促進制御部106によって、ロール促進制御が実施される。
本実施形態で実施されるロール促進制御は、第1処理と、第1処理の次に実行される第2処理とを含む。そのため、ロール促進制御では、ステップS54において所定の切替条件が成立しているか否かの判定が行われる。切替条件とは、実行する処理を第1処理から第2処理に切り替えるか否かを判断するための条件である。本実施形態では、切替条件は、車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが切替判定値BPRTh以下になることを含む。本実施形態では、切替判定値BPRThとして「0」が設定されている。
切替条件が成立しているとの判定がなされていない場合(S54:NO)、処理が次のステップS55に移行される。そして、ステップS55において、第1処理が実行される。第1処理では、対象車輪に付与する制動力の減少速度が対象車輪ではない車輪に付与する制動力の減少速度よりも大きくなるように、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPが調整される。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、切替条件が成立しているとの判定がなされている場合(S54:YES)、処理が次のステップS56に移行される。ステップS56において、第2処理が実行される。第1処理から第2処理への移行時点で未だ制動力が付与されている車輪を減少用車輪とした場合、第2処理では、減少車輪に付与する制動力を減少させる。本実施形態では、対象車輪ではない車輪が、減少用車輪に該当する。そして、本処理ルーチンが一旦終了される。
なお、ステップS51の判定の結果、ステップS52の判定の結果、及びステップS53の判定の結果の何れかが否定判定(NO)である場合、本処理ルーチンが一旦終了される。そのため、ロール促進制御の実施中において、ステップS52又はステップS53の判定が否定判定となった場合、ロール促進制御が終了されることになる。
次に、図13を参照し、ロール促進制御の第1処理及び第2処理について詳しく説明する。図13(d),(e),(f),(g)において、破線は、ロール促進制御を実施しない場合の回生制動力BPRの推移であり、細い実線は、ロール促進制御を実施する場合の回生制動力BPRの推移である。また、太い実線は、ロール促進制御を実施する場合の摩擦制動力BPFの推移である。
図13に示す例では、車両制動中におけるタイミングT42からは、車両10Aが旋回し始め、且つ車両要求制動力BPRCが減少し始める。そのため、タイミングT42からロール促進制御が実施される。すなわち、タイミングT42からタイミングT43までの期間が、第1処理の実行期間である。本実施形態では、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪の双方が、対象車輪である。そのため、第1処理では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度がロール促進制御の非実施時よりも大きくなるように、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRが減少される。その結果、第1処理では、旋回時内側の後輪に付与する回生制動力BPRの減少速度をロール促進制御の非実施時よりも大きくでき、旋回時外側の前輪に付与する回生制動力BPRの減少速度をロール促進制御の非実施時よりも大きくできる。
このように対象車輪に付与する制動力を早期に減少させることにより、車両10Aのローリング運動を抑制する力を早期に小さくできる。すなわち、旋回時内側の後輪に付与する制動力を早期に小さくすることにより、車両後部のうちの旋回時内側の後輪近傍に発生するアンチリフト力を、ロール促進制御の非実施時と比較して早期に小さくできる。また、旋回時外側の前輪に付与する制動力を早期に小さくすることにより、車両前部のうちの旋回時外側の前輪近傍に発生するアンチダイブ力を、ロール促進制御の非実施時と比較して早期に小さくできる。これにより、車両旋回時におけるローリング運動が促進される。
なお、第1処理では、車両要求制動力BPRCと、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの合計との差を基に、対象車輪ではない車輪に付与する摩擦制動力BPFが調整される。すなわち、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの合計と、旋回時外側の後輪に付与する摩擦制動力BPFと、旋回時内側の前輪に付与する摩擦制動力BPFとの和が、車両要求制動力BPRCと等しくなるように、旋回時外側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時内側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ調整される。すなわち、旋回時外側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時内側の前輪に付与する摩擦制動力BPFがそれぞれ増大される。これにより、対象車輪である旋回時内側の後輪に付与する制動力の減少速度が、対象車輪ではない旋回時外側の後輪に付与する制動力の減少速度よりも大きくなる。また、対象車輪である旋回時外側の前輪に付与する制動力の減少速度が、対象車輪ではない旋回時内側の前輪に付与する制動力の減少速度よりも大きくなる。
図13に示す例では、タイミングT43で対象車輪に付与する回生制動力BPRが切替判定値BPRTh以下となり、切替条件が成立する。そのため、第1処理が終了され、第2処理が開始される。本実施形態では、第2処理の開始時点では、対象車輪には制動力が付与されていない一方で、対象車輪ではない車輪には制動力が付与された状態となっている。そのため、第2処理では、対象車輪ではない車輪、すなわち旋回時外側の後輪に付与する制動力及び旋回時内側の前輪に付与する制動力がそれぞれ減少される。図13に示す例では、旋回時外側の後輪及び旋回時内側の前輪には、摩擦制動力BPFが付与されている一方で、回生制動力BPRは付与されていない。よって、旋回時外側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時内側の前輪に付与する摩擦制動力BPFが、車両要求制動力BPRCの減少に応じてそれぞれ減少される。そのため、第2処理の実行中であっても、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPの合計と、車両要求制動力BPRCとが一致している状態が維持される。
そして、車両要求制動力BPRCが「0」となるタイミングT44で、第2処理の実行によって、旋回時外側の後輪に付与する摩擦制動力BPF、及び、旋回時内側の前輪に付与する摩擦制動力BPFが、それぞれ「0」となる。そのため、タイミングT44でロール促進制御が終了される。
次に、図13を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。図13に示す例は、制動力が付与された状態で車両10Aが旋回を開始し、且つ旋回途中で車両10Aへの制動力の付与が開始される場合である。
図13(a)~(g)に示すように、タイミングT41で車両10Aに制動力が付与され始める。図13に示す例では、各車輪FL,FR,RL,RRに回生制動力BPRが付与される。各車輪FL,FR,RL,RRへの制動力の付与によって車両10Aが減速している最中のタイミングT42から車両10Aが旋回し始める。また、車両要求制動力BPRCが減少し始める。この際、車両10Aが緩やかに旋回しているとの判定がなされていると、ロール促進制御の実施が開始される。
ここで、車両10Aが旋回している最中で車両10Aへの制動力の付与が解消され、車両10Aが加速するような場合において、ロール促進制御を実施しない比較例について考える。このような比較例では、図13(c)に示すように車両旋回中に横加速度GYの絶対値の増大、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力BPの減少に起因するアンチダイブ力やアンチリフト力の変化に起因し、車両旋回中に車両10Aのロール角Φが変動するおそれがある。すなわち、制動力の減少期間ではロール角Φが変化し続けることになり、この点で車両10Aの乗員が不快に感じるおそれがある。
これに対し、本実施形態では、車両旋回中において車両要求制動力BPRCが減少される際にロール促進制御が実施される。ロール促進制御の第1処理では、対象車輪である旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪に付与する制動力が早期に減少される一方で、対象車輪ではない旋回時外側の後輪及び旋回時外側の前輪に付与する制動力が減少されにくくなる。そのため、旋回時外側の後輪に付与する制動力の減少の抑制、若しくは当該制動力の増大によって、車両後部のうちの旋回時外側の後輪近傍に発生するアンチリフト力を、ロール促進制御の非実施時と比較して増大させることができる。また、旋回時内側の前輪に付与する制動力の減少の抑制、若しくは当該制動力の増大によって、車両前部のうちの旋回時内側の前輪近傍に発生するアンチダイブ力を、ロール促進制御の非実施時と比較して増大させることができる。その結果、車両要求制動力BPRCの減少の初期の段階で、車両10Aのロール角Φが大きい状態で維持できるようになる。これにより、車両要求制動力BPRCの減少中における車両10Aのロール角Φの変動が抑制され、ひいては車両10Aの乗員の快適性を向上できる。特に、例えば制動力の減少とロール角Φの増大とが重なるような車両10Aの旋回時にロール促進制御を実施することにより、車体の旋回時外側の前部及び旋回時内側の後部の上下動が抑制され、結果として、乗員の快適性を向上させることができる。なお、制動力の減少とロール角Φの増大とが重なるように車両10Aが旋回する場合としては、例えば、車両10Aに制動力を付与しつつ車両10Aに直進させる状態から、車両10Aを旋回させる状態に移行する場合、及び、制動力を付与しつつ車両10Aを旋回させる状態で、制動力を減少させつつ旋回の度合いを強める場合を挙げることができる。旋回の度合いを強めるとは、ステアリングホイールの操舵角の増大などに起因して車両10AのヨーレートYRや横加速度GYの絶対値が大きくなることを意味する。
ただし、本実施形態では、対象車輪に付与する制動力BPが「0」になると、第1処理から第2処理に移行されるため、旋回時外側の前輪に付与する制動力及び旋回時内側の後輪に付与する制動力がそれぞれ減少される。
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第2実施形態において、手動操舵時にあっては、安定性優先制御も実施しないようにしてもよい。
・上記第1実施形態で実施されるロール抑制制御では、手動操舵時に車輪要求制動力BPRTWの減少補正を行わないようにしてもよい。
・車両10の走行する路面のμ値が低いほど、車輪FL,FR,RL,RRに制動力を付与したときに車輪FL,FR,RL,RRが減速スリップしやすい。そこで、路面のμ値を推定したり、μ値を取得したりすることができる場合、路面のμ値が判定μ値以下であるときには、ロール抑制制御によって旋回時内側の後輪に大きな制動力を付与すると当該車輪で減速スリップが発生する可能性があると判断し、ロール抑制制御を実施しないようにしてもよい。また、ロール抑制制御を実施するとしても、対象車輪に対する車輪要求制動力BPRTWを、路面のμ値の低さに応じて減少補正するようにしてもよい。
・ロール抑制制御の実施によって対象車輪に制動力を付与したり、対象車輪に付与する制動力を大きくしたりした場合にあっては、ロール抑制制御の実施による車両10の減速をある程度許容してもよい。すなわち、対象車輪に付与する制動力の増大、又は対象車輪への制動力の付与が行われる場合に、車両10の動力源11から出力される駆動力の調整を行わなくてもよい。特に、非制動時ロール抑制制御の実施によって対象車輪に制動力が付与される場合、車両10の動力源11から出力される駆動力の調整を行わなくてもよい。
・上記各実施形態では、ロール抑制制御の開始時点におけるロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRを基に、旋回時内側の後輪に対する車輪要求制動力BPRTWを算出している。しかし、ロール角偏差ΔΦを考慮して車輪要求制動力BPRTWを算出するのであれば、車輪要求制動力BPRTWの算出にロールレートΦRを用いなくてもよい。反対に、ロールレートΦRを考慮して車輪要求制動力BPRTWを算出するのであれば、車輪要求制動力BPRTWの算出にロール角偏差ΔΦを用いなくてもよい。
・上記各実施形態において、車両のロールレートΦRの変化速度であるロール角加速度を基に、車輪要求制動力BPRTWを算出するようにしてもよい。例えば、ロール角加速度が大きいほど、車輪要求制動力BPRTWが大きくなるように車輪要求制動力BPRTWを算出するようにしてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態では、ロール抑制制御の開始時点におけるロール角偏差ΔΦを入力とするフィードフォワード制御によって車輪要求制動力BPRTWを算出するようにしている。しかし、ロール抑制制御では、ロール角偏差ΔΦを逐次監視し、ロール角偏差ΔΦに応じて車輪要求制動力BPRTWを可変させてもよい。例えば、ロール角偏差ΔΦが「0」に近づくように車輪要求制動力BPRTWを可変させてもよい。この場合、ロール角偏差ΔΦが「0」となると、車輪要求制動力BPRTWが保持されることになる。
・上記第1実施形態及び第2実施形態では、ロール抑制制御の開始時点におけるロールレートΦRを入力とするフィードフォワード制御によって車輪要求制動力BPRTWを算出するようにしている。しかし、ロール抑制制御では、ロールレートΦRとロールレートの目標値との偏差を逐次監視し、当該偏差に応じて車輪要求制動力BPRTWを可変させてもよい。例えば、当該偏差が「0」に近づくように車輪要求制動力BPRTWを可変させてもよい。この場合、当該偏差が「0」となると、車輪要求制動力BPRTWが保持されることになる。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、旋回時内側の後輪に対する車輪要求制動力BPRTWを、ロール抑制制御の開始前での制動力と予め設定された規定値との和としてもよい。
・上記第3実施形態及び第4実施形態において、ロール抑制制御の増大処理の開始時点におけるロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRを基に、増大処理中における対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を決めるようにしてもよい。この場合、増大処理中における対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度が一定値で保持される。一方、増大処理中にあっては、ロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRを逐次監視し、ロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRの変化を基に、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を可変させるようにしてもよい。例えば、ロール角偏差ΔΦが「0」に近づくように、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を可変させてもよい。この場合、増大処理中では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度が変わることもある。
・上記第5実施形態において、ロール促進制御の第1処理の開始時点におけるロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRを基に、第1処理中における対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を決めるようにしてもよい。この場合、第1処理中における対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度が一定値で保持される。一方、第1処理中にあっては、ロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRを逐次監視し、ロール角偏差ΔΦ及びロールレートΦRの変化を基に、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を可変させるようにしてもよい。例えば、ロール角偏差ΔΦが「0」に近づくように、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度、及び、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力BPRの減少速度を可変させてもよい。この場合、第1処理中では、対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大速度が変わることもある。
・上記第3実施形態及び第4実施形態において、切替判定値BPFThとして、「0」よりも大きい値を設定してもよい。これにより、例えば前後加速度GXが減少していない状態が続いている場合、減少処理によって対象車輪に付与する摩擦制動力BFPが切替判定値BPFTh以下まで減少されると、実行される処理が減少処理から保持処理に移行され、対象車輪に付与する摩擦制動力BFPが保持されるようになる。その結果、保持処理中においても対象車輪に付与する摩擦制動力BFPに応じたロール抑制効果が維持される。
・上記第5実施形態において、切替判定値BPRThとして「0」よりも大きい値を設定してもよい。
・上記第5実施形態において、ロール促進制御の実施条件として、車両10Aの旋回の度合いが強くなってロール角Φが増大していることを加えてもよい。例えば、所定期間中におけるヨーレートYRの絶対値の増大量が判定値以上であること、所定期間における横加速度GYの絶対値の増大量が判定値以上であること、及び、所定期間における操舵角STRの増大量が判定値以上であることの何れか1つが成立したときに、旋回の度合いが強くなったと判定してもよい。また、これらの何れもが成立したときに、旋回の度合いが強くなったと判定してもよい。
・上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態では、車両10,10Aが緩やかに旋回するとの判定がなされていない場合、安定性優先制御が実施されるようになっている。しかし、当該判定がなされていない場合では、ロール抑制制御を実施しないのであれば安定性優先制御も実施しなくてもよい。
・車両10,10Aが穏やかに旋回すると判定する境界に近い旋回領域では、それよりも緩やかな旋回領域に比べ、対象車輪に対する車輪要求制動力BPRTWの増大を抑制するようにしてもよい。例えば、ヨーレートYRの絶対値が判定ヨーレートYRTh(第1所定値)よりも小さい判定ヨーレートYRTh2(第2所定値)以上である場合、ヨーレートYRの絶対値が判定ヨーレートYRTh2未満の場合と比較し、ロール角偏差ΔΦに対する車輪要求制動力BPRTWが小さく算出されるようにしてもよい。
・前輪用のサスペンション15FL,15FR及び後輪用のサスペンション15RL,15RRのジオメトリが、前輪FL,FRに付与する制動力と後輪RL,RRに付与する制動力とが互いに同じ値であるときには、アンチダイブ力FADのほうがアンチリフト力FALよりも大きくなるように設定されていることがある。この場合に実施されるロール抑制制御では、旋回時外側の前輪を対象車輪として選択し、旋回時外側の前輪に付与する制動力の調整を通じて車両のローリング運動を抑制することが好ましい。
例えば図14に示すように車両10Bが右旋回する場合、ロール抑制制御では、旋回時外側の前輪に該当する左前輪FLに付与する制動力BPFLが、右前輪FRに付与する制動力BPFR、左後輪RLに付与する制動力BPRL及び右後輪RRに付与する制動力BPRRの何れよりも大きくされる。このようなロール抑制制御が実施されると、車両10Bの旋回時外側の前部で大きなアンチダイブ力FADが発生する。その結果、車両10Bのローリング運動を抑制することができ、ひいては車両10Bのロール角Φの変化を抑制することができる。さらに、大きなアンチダイブ力FADの発生により、車両10Bの減速時における車両10Bのピッチング運動を抑制することができ、ひいては車両10Bのピッチ角の変化を抑制することもできる。
ロール抑制制御によって旋回時外側の前輪に大きな制動力が付与されると、車両がアンダステア傾向を示しやすい。そのため、当該変更例で実施される安定性優先制御は、車両のアンダステアを抑制する制御である。例えば、車両のアンダステアを抑制する安定性優先制御では、旋回時外側の前輪に付与する制動力を旋回時内側の前輪に付与する制動力よりも大きくするとともに、旋回時内側の後輪に付与する制動力を旋回時外側の後輪に付与する制動力よりも大きくする。例えば図15に示すように車両10Bが右旋回する場合、安定性優先制御では、旋回時外側の前輪である左前輪FLに付与する制動力BPFLが旋回時内側の前輪である右前輪FRに付与する制動力BPFRよりも大きく、旋回時内側の後輪である右後輪RRに付与する制動力BPRRが旋回時外側の後輪である左後輪RLに付与する制動力BPRLよりも大きい。安定性優先制御の実施時に左右の前輪FL,FRの間に発生する制動力差ΔBPFは、ロール抑制制御の実施時に発生する制動力差ΔBPFよりも小さい。左右の前輪FL,FRの間に発生する制動力差ΔBPFに応じたヨーモーメントYM2は、車両10Bのアンダステア傾向を大きくする方向に作用するものである。一方、左右の後輪RL,RRの間に発生する制動力差ΔBPRに応じたヨーモーメントYM1は、車両10Bのオーバステア傾向を大きくする方向に作用するものである。つまり、ヨーモーメントYM2の向きとヨーモーメントYM1の向きとが互いに反対であるため、ヨーモーメントYM2がヨーモーメントYM1で相殺される。その結果、旋回時に車両10Bがアンダステアになりにくい。
・上記各実施形態において、旋回時に車両に付与される制動力が大きいほど、すなわち車両の減速度が大きいほど、ロール抑制制御を実施した際に車両の挙動の安定性が低下しやすい。そこで、車両の制動力が第1所定値の一例である判定制動力以上であるときには車両が緩やかに旋回するとの判定をなさないようにし、車両の制動力が判定制動力未満であるときには車両が緩やかに旋回するとの判定をなすようにしてもよい。
・ロール抑制制御では、旋回時内側の後輪に対する制動力の配分比率をロール抑制制御の非実施時よりも高くするとともに、旋回時外側の前輪に対する制動力の配分比率をロール抑制制御の非実施時よりも高くするようにしてもよい。
・上記各実施形態では、車両旋回時にあっては、車両に制動力が付与されていないときでもロール抑制制御が実施される。しかし、車両旋回時であっても車両に制動力が付与されていないときには、ロール抑制制御を実施しないようにしてもよい。
・ロール抑制制御を実施する上記各実施形態では、ロール抑制制御の実施中に、少なくとも1つの車輪のスリップ量SLPが判定スリップ量SLPTh以上となると、ロール抑制制御が終了されて安定性優先制御が開始される。このような場合、ロール抑制制御を終了して安定性優先制御を開始させるまでの間に、移行制御を実施するようにしてもよい。例えば、移行制御は、各アクチュエータの制御量を、ロール抑制制御の制御量から安定性優先制御の制御量に向けて徐々に変化させる制御である。
・上記第3実施形態及び第4実施形態において、ロール抑制制御の実施では、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪のうち一方の車輪のみを対象車輪としてもよい。
・上記第3実施形態において、ロール抑制制御は、増大処理と保持処理とを含むのであれば、減少処理を含まなくてもよい。この場合、増大処理によって対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大が完了し、増大処理の実行条件が非成立になると、保持処理の実行によって、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を保持するようにしてもよい。
・上記第3実施形態及び第4実施形態において、手動での操舵時には、ロール抑制制御を実施しないようにしてもよい。また、手動での操舵時には、増大処理の実行に伴う対象車輪に付与する摩擦制動力BPFの増大量を、自動運転時と比較して少なくしてもよい。
・上記第3実施形態及び第4実施形態において、制御装置100を、両前輪FL,FRに回生制動力BPRを付与するモータジェネレータMG1を備える一方で両後輪RL,RRに回生制動力BPRを付与するモータジェネレータMG2を備えない車両に適用してもよい。また、制御装置100を、モータジェネレータMG1を備えない一方でモータジェネレータMG2を備える車両に適用してもよい。
・上記第5実施形態において、制御装置100を、モータジェネレータMG1を備える一方でモータジェネレータMG2を備えない車両に適用してもよい。また、制御装置100を、モータジェネレータMG1を備えない一方でモータジェネレータMG2を備える車両に適用してもよい。
・上記第5実施形態において、ロール促進制御の実施では、旋回時内側の後輪及び旋回時外側の前輪のうち一方の車輪のみを対象車輪としてもよい。
・上記各実施形態において、上記(条件1)~(条件4)のうちの少なくとも1つの条件が非成立の場合には、車両が緩やかに旋回するとの判定をなさないようにしてもよい。
また、上記(条件1)~(条件4)のうちの少なくとも一部の条件が成立しているときには、車両が緩やかに旋回するとの判定をなすようにしてもよい。
・車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する際の条件として、上記(条件1)~(条件4)以外の他の条件を含ませてもよい。他の条件としては、例えば、横加速度GYの変化速度ΔGYの絶対値が、判定横加速度変化速度ΔGYTh未満であること、及び、ヨーレートYRの変化速度ΔYRの絶対値が判定ヨーレート変化速度ΔYRTh未満であることを挙げることができる。こうした条件を用いる場合、(条件1)~(条件4)の少なくとも1つを、車両10が緩やかに旋回するか否かを判定する際の条件から削除してもよい。
・制動装置は、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力を個別に制御できるものであれば、任意の構成であってもよい。例えば、制動装置は、ブレーキ液を用いずに、車輪FL,FR,RL,RRに摩擦制動力を付与することのできる電動制動装置であってもよい。また、車輪FL,FR,RL,RR毎にモータ、すなわちインホイールモータが設けられている車両にあっては、車両制動時に各モータで回生制動力を発生させることができる。すなわち、当該車両では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力を個別に調整することができる。そこで、上記第1実施形態及び第2実施形態において、車両として、各車輪FL,FR,RL,RRに対してモータが個別に設けられる車両を適用する場合、ロール抑制制御では、各車輪FL,FR,RL,RRに付与する回生制動力を個別に調整するようにしてもよい。
・制御装置が適用される車両の駆動方式は、後輪駆動方式であってもよいし、前輪駆動方式であってもよい。
・制御装置100は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御装置100は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制御装置100は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。ASICとは「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAとは「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制御装置100は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
次に、上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記パラメータは、ステアリングホイール21の操舵角、転舵輪の切れ角、車両の横方向加速度、車両のヨーレート、及び、車両の車体スリップ角の少なくとも1つであることが好ましい。この場合、当該パラメータの絶対値が判定値未満であるときに、車両が緩やかに旋回するとの判定をなすことができる。
(ロ)前記パラメータは、車両の車体速度、及び、車両の制動力の少なくとも1つである。この場合、当該パラメータの絶対値が判定値未満であるときに、車両が緩やかに旋回するとの判定をなすことができる。
10,10A,10B…車両
11…動力源
40…制動装置
100…挙動制御装置としての制御装置
101…旋回状態判定部
103…安定性優先制御部
105…車両要求制動力取得部
108…ロール制御部
FL,FR…前輪
RL,RR…後輪
MG1,MG2…回生装置としてのモータジェネレータ

Claims (14)

  1. 前輪に制動力が付与されるときには車両前部を上方に変位させる力であるアンチダイブ力が発生し、後輪に制動力が付与されるときには車両後部を下方に変位させる力であるアンチリフト力が発生する車両に適用され、
    前記車両に付与する制動力の要求値である車両要求制動力を取得する車両要求制動力取得部と、
    前記車両が旋回している状況下で前記車両要求制動力に従って前記車両に制動力が付与されているときに、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方を含む対象車輪に対する制動力の配分比率を調整することによって、当該車両のローリング運動を抑制するロール抑制制御を実施するロール制御部と、を備え、
    前記ロール制御部は、前記車両の挙動の安定性が低下しない、又は前記車両の挙動の安定性の低下度合いが許容範囲に収まることで、前記車両が緩やかに旋回するとの判定がなされており、且つ前記前輪及び前記後輪の中に、スリップ量が、減速スリップが発生しているか否かの判断基準として設定されている判定スリップ量以上となる車輪がない場合に、前記ロール抑制制御を実施する
    車両の挙動制御装置。
  2. 記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に対する制動力の配分比率を、前記ロール抑制制御の非実施時よりも高くする
    請求項1に記載の車両の挙動制御装置。
  3. 前記ロール制御部は、前記車両のヨーイング運動を示すパラメータが第1所定値未満であるときに、前記ロール抑制制御を実施する
    請求項2に記載の車両の挙動制御装置。
  4. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記パラメータが大きいほど前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に対する制動力の配分比率を高くする
    請求項3に記載の車両の挙動制御装置。
  5. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記パラメータが前記第1所定値未満の第2所定値以上であるときには、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に対する制動力の配分比率の増大を抑制する
    請求項4に記載の車両の挙動制御装置。
  6. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に付与する制動力を、当該ロール抑制制御を実施しないときよりも大きくする
    請求項2~請求項5のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  7. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、当該ロール抑制制御の開始時における前記車両のロール角から目標ロール角を引いた値が大きいほど、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に付与する制動力を大きくする
    請求項2~請求項6のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  8. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、当該ロール抑制制御の開始時における前記車両のロールレートが大きいほど、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に付与する制動力を大きくする
    請求項2~請求項7のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  9. 前記ロール制御部は、自動運転によって前記車両が旋回する場合には前記ロール抑制制御の実施を許可する一方、手動操舵によって前記車両が旋回する場合には前記ロール抑制制御の実施を許可しない
    請求項2~請求項8のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  10. 前記ロール制御部は、手動操舵によって前記車両が旋回するときにおける前記ロール抑制制御の制御量を、自動運転によって前記車両が旋回するときにおける前記ロール抑制制御の制御量よりも少なくする
    請求項2~請求項8のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  11. 前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御の実施中に前記車両の各車輪のうちの少なくとも1つの車輪で減速スリップが発生したときには当該ロール抑制制御を終了する
    請求項2~請求項10のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  12. 前記車両は、前記各車輪に付与する摩擦制動力を調整する摩擦制動装置と、前記各車輪のうちの2つの前輪に付与する回生制動力を調整する回生装置と、を備えるものであり、
    前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記車両の旋回時内側の前輪には、前記摩擦制動力及び前記回生制動力のうちの前記回生制動力のみが付与され、前記車両の旋回時外側の前輪には前記摩擦制動力及び前記回生制動力の双方が付与されるように、前記摩擦制動装置及び前記回生装置を制御する
    請求項2~請求項11のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  13. 前記車両は、前記各車輪に付与する摩擦制動力を調整する摩擦制動装置と、前記各車輪のうちの2つの後輪に付与する回生制動力を調整する回生装置と、を備えるものであり、
    前記ロール制御部は、前記ロール抑制制御では、前記車両の旋回時外側の後輪には、前記摩擦制動力及び前記回生制動力のうちの前記回生制動力のみが付与され、前記車両の旋回時内側の後輪には前記摩擦制動力及び前記回生制動力の双方が付与されるように、前記摩擦制動装置及び前記回生装置を制御する
    請求項2~請求項11のうち何れか一項に記載の車両の挙動制御装置。
  14. 前記ロール制御部は、車両旋回時に前記車両の制動力が減少されるときに、前記車両のローリング運動を促進するロール促進制御を実施するようになっており、
    前記ロール制御部は、前記ロール促進制御では、前記車両の旋回時内側の後輪及び前記車両の旋回時外側の前輪の少なくとも一方に対する制動力の配分比率を、前記ロール促進制御の非実施時よりも低くする
    請求項1に記載の車両の挙動制御装置。
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