JP7441113B2 - 圧粉磁心 - Google Patents

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Description

本発明は、インダクタ、チョークコイル、トランス、リアクトルやモーターなどの電気電子部品に用いられる圧粉磁心に関する。
従来、インダクタ、チョークコイル、トランス、リアクトルやモーターなどの磁心として、鉄粉や鉄を含有する合金粉末、金属間化合物粉末などのFe系軟磁性粉末を用いた圧粉磁心が知られている。圧粉磁心は絶縁層を介して電磁鋼板を積層した積層電磁鋼板磁心と比較して、形状の自由度が高く、電磁鋼板の積層ではできない3次元形状の加工が容易であるとの特徴を有している。しかし、Fe系軟磁性粉末を用いた圧粉磁心は、フェライトを用いた圧粉磁心と比較して電気抵抗率が低いため、Fe系軟磁性粉末の表面に絶縁性の皮膜を被覆した後に、絶縁皮膜被覆Fe系軟磁性粉末とバインダーとなる有機樹脂を混合し、圧縮成形、熱処理を施して製造される。
しかし、圧縮成形のために有機樹脂のバインダーを使用すると、有機樹脂が非磁性物質であるために、圧粉磁心の磁気特性が劣化するという問題がある。また、有機樹脂のバインダーを使用すると副次的に、圧縮成形により圧粉磁心内に蓄積された残留応力を除去するために歪取り焼鈍をする際の温度が制限されるという問題もある。
有機樹脂のバインダーを使用しない圧粉磁心としては、例えば特許文献1には、無機物からなる絶縁層で表面が絶縁被覆処理されたFe系軟磁性粉末粒子からなる圧粉磁心が開示されている。なお、特許文献1に開示されている絶縁層の被覆方法は、Fe系軟磁性粉末と酸化物粉末とを混合することにより、当該Fe系軟磁性粉末表面に酸化物粉末をまぶす手法等である。
一方、Fe系軟磁性粉末への高絶縁性の被覆としては、従来シリコンの酸化物被覆が知られている。乾式法によりシリコン酸化物を被覆したFe系軟磁性粉末としては、例えば特許文献2に、振動スパッタ装置により膜厚5~10nmのSiO2被膜を形成したFe-Si-Cr-Ni合金粉末が開示されている。また、特許文献3には、メカノフュージョン法を用いてSiO2を79重量%含むホウケイ酸アルカリガラスを被覆したFe-Si-Cr系磁性金属粉末が開示されている。湿式法によりシリコン酸化物を被覆したFe系軟磁性粉末としては、例えば特許文献4に、テトラエトキシシランのIPA(イソプロパノール)溶液を用い、テトラエトキシシランの加水分解生成物を被覆した後、120℃で乾燥させたFe-6.5%Si粉末が開示されている。また、特許文献5には、硬磁性体であるFe-Pdコアを軟磁性体であるFeで被覆した磁性粉末にオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)を用いて膜厚が1~13nmのSiO2被膜を形成する技術が開示されている。
特開2003-332116号公報 国際公開第2007/013436号 国際公開第2014/013896号 特開2009-231481号公報 特開2017-152609号公報
しかし、特許文献1に開示されている圧粉磁心は、圧縮成形の際に有機樹脂のバインダーは使用していないが、圧粉磁心を形成するためのFe系軟磁性粉末の被覆層が不連続で空隙の多いものであるため、良好な絶縁性が得られないという問題があった。
特許文献2に開示されているスパッタ法の場合には、粉末の表面に膜厚の極めて薄い薄膜を形成することが可能であるが、均一な薄膜を得ることは困難であり、絶縁性と磁気特性を両立させることはできなかった。特許文献3~5に開示されているシリコン酸化物被覆は、良好な絶縁性を確保するためには膜厚を厚くする必要があり、絶縁性を向上させると磁気特性が劣化するという問題があった。また、特許文献2~5には、圧縮成形により圧粉磁心を製造する際に、有機樹脂のバインダーを使用しないという技術思想は見出せない。
本発明は、上記の問題点に鑑み、圧縮成形の際に有機樹脂のバインダーを使用することなく成形可能であり、かつ、高密度で低鉄損の圧粉磁心およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、鉄を20質量%以上含有するFe系軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物を被覆したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを圧縮成形した圧粉磁心であって、励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=50Hzで測定した鉄損が0.15W/kg以下である圧粉磁心が提供される。当該圧粉磁心は、渦電流損失が0.004W/kg未満であることが好ましい。
本発明ではまた、鉄を20質量%以上含有するFe系軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物を被覆したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを圧縮成形した圧粉磁心であって、励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=1000Hzで測定した鉄損が3W/kg以下、より好ましくは鉄損が2.2W/kg以下である圧粉磁心が提供される。当該圧粉磁心は、励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=1000Hzで測定したヒステリシス損失が1.6W/kg以下であることが好ましい。
上記の圧粉磁心はいずれも、圧粉成形体の密度が7.30g/cm3以上であることが好ましい。
本発明ではさらに、Fe系軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物を被覆したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを圧縮成形して得られる圧粉磁心の製造方法であって、水と有機溶媒を混合し、水を1質量%以上40質量%以下含む混合溶媒を準備する工程と、前記の混合溶媒に鉄を20質量%以上含有するFe系軟磁性粉末を添加し、Fe系軟磁性粉末の分散したスラリーを得る分散工程と、前記のFe系軟磁性粉末を分散したスラリーにシリコンアルコキシドを添加するアルコキシド添加工程と、前記のシリコンアルコキシドを添加した磁性粉末を分散したスラリーに、シリコンアルコキシドの加水分解触媒を添加し、シリコン化合物を被覆したFe系軟磁性粉末の分散したスラリーを得る加水分解触媒添加工程と、前記のシリコン化合物を被覆したFe系軟磁性粉末の分散したスラリーを固液分離し、シリコン化合物を被覆したFe系軟磁性粉末を得る回収工程と、前記のシリコン化合物を被覆したFe系軟磁性粉末を乾燥する乾燥工程と、前記の乾燥したシリコン化合物を被覆したFe系軟磁性粉末を、成形型に充填し、加圧成形する成形工程を有する圧粉磁心の製造方法が提供される。
前記の圧粉磁心の製造方法においては、前記の成形工程に引き続き、成形工程により得られた圧粉磁心を、大気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、または還元雰囲気下で熱処理する焼鈍工程を設けても構わない。前記の焼鈍工程は、窒素雰囲気下、または窒素を含む還元雰囲気下で行うことが好ましく、体積比率で50%以上100%以下の窒素を含む雰囲気下で行うことがより好ましい。
本発明の製造方法を用いることにより、圧縮成形の際に有機樹脂のバインダーを使用することなく成形可能であり、かつ、高密度で低鉄損の圧粉磁心を製造することが可能になった。
[軟磁性粉末]
本発明においては、出発物質として鉄を20質量%以上含有する軟磁性粉末を用いる。出発物質としての軟磁性粉末は、鉄を50質量%以上含有するものが好ましく、鉄を90質量%以上含有するものがさらに好ましい。鉄を98質量%以上含有する、いわゆる鉄粉がより好ましい。鉄を20質量%以上含有する軟磁性粉末としては、具体的には、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Al-Si合金(センダスト)、パーマロイ組成であるFe-Ni合金(Ni質量30~80質量%)等が挙げられる。また、必要に応じてMo、Coが少量(10質量%以下)添加される場合がある。Moを添加した合金は結晶構造がアモルファスになることから、特にアモルファス粉と呼ばれることがある。
以下、本明細書においては、特に断らない限り、「鉄を20質量%以上含有する軟磁性粉末」を単に「Fe系軟磁性粉末」と呼ぶ。本発明においては前記のFe系軟磁性粉末の磁気特性については特に規定しないが、保磁力(Hc)が低く、飽和磁化(σs)が高い粉末が好ましい。Hcは低いほどよく3.98kA/m(約50(Oe))以下が好ましい。Hcが3.98kA/mを超えると磁場を反転させる際のエネルギーロスが大きくなり、磁心には不適当である。
また、σsは高い方が良く、100Am2/kg(100emu/g)以上が好ましい。飽和磁化が100Am2/kg未満では、磁性粉が多量に必要になり、必然的に磁心のサイズが大きくなってしまうので好ましくない。
本発明においては前記のFe系軟磁性粉末の一次粒子の平均粒径も特に規定しないが、従来圧粉磁心に使用されているものを適宜選択して用いればよい。
[シリコン酸化物被覆]
本発明においては、シリコンアルコキシドを用いた湿式の被覆法により、前記のFe系軟磁性粉末の表面に絶縁性のシリコン酸化物を被覆する。シリコンアルコキシドを用いた被覆法は、一般にゾル-ゲル法と呼ばれる手法であり、乾式法と比較して大量生産性に優れたものである。
シリコンアルコキシドを加水分解すると、アルコキシ基の一部または全てが水酸基(OH基)と置換し、シラノール誘導体となる。本発明においては、このシラノール誘導体により前記のFe系軟磁性粉末表面を被覆するが、被覆されたシラノール誘導体は、加熱すると縮合または重合することによりポリシロキサン構造を取り、ポリシロキサン構造をさらに加熱するとシリカ(SiO2)になる。本発明においては、有機物であるアルコキシ基の一部が残存するシラノール誘導体被覆からシリカ被覆までを総称してシリコン酸化物被覆と呼ぶ。
シリコンアルコキシドとしては、例えばトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシラン等を使用することができるが、軟磁性粒子への濡れ性が良く、均一な被覆層を形成できるので、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランを使用することが好ましい。
[膜厚]
本発明においては、シリコン酸化物被覆層の平均膜厚は特に規定するものではないが、1nm以上60nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましい。膜厚が1nm未満では、被覆層中に欠陥が多く存在し、絶縁性を確保することが困難になる。一方、膜厚が60nmを超えると絶縁性は向上するが、シリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末に占める非磁性成分であるシリコン酸化物被覆層の体積割合が増加して、磁気特性が悪化するために好ましくない。シリコン酸化物被覆層の平均膜厚は溶解法により測定することができる。また、溶解法によって測定が難しい場合は、シリコン酸化物被覆層の断面を透過電子顕微鏡(TEM)観察もしくは走査電子顕微鏡(SEM)観察により平均膜厚を求めることができる。その場合断面のTEM写真またはSEM写真を撮影し、任意粒子の測定点50箇所の平均値によって平均膜厚を求めることができる。この方法によって求めた膜厚も、溶解法と同等となる。
[混合溶媒および分散工程]
本発明の製造方法においては、公知の機械的手段により撹拌することにより、水と有機溶媒の混合溶媒中にFe系軟磁性粉末を分散させた状態で、ゾル-ゲル法によりFe系軟磁性粉末表面にシリコン酸化物を被覆するが、その被覆に先立ち、当該混合溶媒中でFe系軟磁性粉末を含むスラリーを保持する分散工程を設ける。Fe系軟磁性粉末の表面には当該Fe系軟磁性粉末の主成分であるFeの極めて薄い酸化物が存在するが、この分散工程では、当該Fe酸化物が混合溶媒中に含まれる水により水和される。水和したFe酸化物表面は一種の固体酸であり、ブレンシュテッド酸として弱酸と類似の挙動を示すため、次工程において混合溶媒中にFe系軟磁性粉末を含むスラリーにシリコンアルコキシドを添加した際に、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるシラノール誘導体とFe系軟磁性粉末表面との反応性が向上する。
混合溶媒中の水の含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。水の含有量が1質量%未満では、前述したFe酸化物を水和する作用が不足する。水の含有量が40質量%を超えると、シリコンアルコキシドの加水分解速度が速くなり、均一なシリコン酸化物被覆層が得られなくなるので、それぞれ好ましくない。
混合溶媒に用いる有機溶媒としては、水と親和性のあるメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコールを用いることが好ましい。ただし、有機溶媒の溶解度パラメータが水のそれに近すぎると、混合溶媒中の水の反応性が低下するので、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール、2-ブタノール(secブタノール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブタノール)、2-メチル-2-プロパノール(t-ブタノール)、1-ペンタノール、2-ペンタノール、イソペンタノール、t-ペンタノール、ヘキサノール等を用いることがより好ましい。
本発明においては、分散工程の反応温度は特に規定するものではないが、20℃以上70℃以下とすることが好ましい。反応温度が20℃未満では、Fe酸化物の水和反応の速度が遅くなるので好ましくない。また、反応温度が70℃を超えると、次工程のアルコキシド添加工程において、添加したシリコンアルコキシドの加水分解反応速度が増大し、シリコン酸化物被覆層の均一性が悪化するので好ましくない。本発明においては、分散工程の保持時間も特に規定するものではないが、Fe酸化物の水和反応が均一に起こるように、例えば保持時間が1min以上30min以下になるような条件を採用することができる。
[アルコキシド添加工程]
前記の分散工程により得られた混合溶媒中にFe系軟磁性粉末を分散させたスラリーを、公知の機械的手段により撹拌しながら、シリコンアルコキシドを添加した後、その状態でスラリーを一定時間保持する。シリコンアルコキシドとしては、前述のように、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシラン等を使用することができる。
本工程で添加したシリコンアルコキシドは、混合溶媒中に含まれる水の作用により加水分解してシラノール誘導体になる。生成したシラノール誘導体は、縮合、化学吸着等により、Fe系軟磁性粉末表面にシラノール誘導体の反応層を形成する。本工程では、加水分解触媒を添加していないので、シリコンアルコキシドの加水分解が緩やかに起こるため、前記のシラノール誘導体の反応層が均一に形成されるものと考えられる。
本工程で添加したシリコンアルコキシドは、ほぼ全量シリコン酸化物被覆層の形成に用いられるので、その添加量はシリコン酸化物被覆層の平均膜厚に換算して1nm以上30nmになる量とする。シリコンアルコキシドの添加量は、具体的には以下の方法により決定する。
スラリー中に含まれるFe系軟磁性粉末の質量をGp(g)、当該Fe系軟磁性粉末の被覆前のBET比表面積をS(m2/g)、シリコン酸化物被覆層の目標膜厚をt(nm)とすると、シリコン酸化物被覆層の全体積はV=Gp×S×t(10-53)であり、シリコン酸化物被覆層の密度をd=2.65(g/cm3=106g/m3)とすると、シリコン酸化物被覆層の質量はGc=0.1V×d(g)となる。したがって、シリコン酸化物被覆層に含まれるSiのモル数はGcをSiO2の分子量60.08で割った値として求められる。本発明の製造方法においては、上記の目標膜厚t(nm)に対応するモル数のシリコンアルコキシドを混合溶媒中にFe系軟磁性粉末を分散させたスラリー中に添加する。
なお、収束イオンビーム(FIB)加工装置を用いてシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末を切断し、透過電子顕微鏡(TEM)観察により測定したシリコン酸化物被覆層の平均膜厚は、シリコン酸化物被覆層の密度をd=2.65(g/cm3)として後述する溶解法により求めた膜厚と精度良く一致することが確認されている。
本発明においては、アルコキシド添加工程の反応温度は特に規定するものではないが、20℃以上70℃以下とすることが好ましい。反応を加速する観点からは、より好ましくは、35℃以上70℃以下である。反応温度が20℃未満では、Fe系軟磁性粉末表面とシラノール誘導体との反応の速度が遅くなるので好ましくない。また、反応温度が70℃を超えると、添加したシリコンアルコキシドの加水分解反応速度が増大し、シリコン酸化物被覆層の均一性が悪化するので好ましくない。本発明においては、アルコキシド添加工程の反応時間も特に規定するものではないが、Fe系軟磁性粉末表面とシラノール誘導体との反応が均一に起こるように、反応時間が10min以下になるように条件を適宜選択する。
[加水分解触媒添加工程]
本発明の製造方法においては、前記のアルコキシド添加工程においてFe系軟磁性粉末表面にシラノール誘導体の反応層を形成した後、混合溶媒中にFe系軟磁性粉末を分散させたスラリーを公知の機械的手段により撹拌しながら、シリコンアルコキシドの加水分解触媒を添加する。本工程においては、加水分解触媒の添加により、シリコンアルコキシドの加水分解反応が促進され、シリコン酸化物被覆層の成膜速度が増大する。なお、本工程以降は、通常のゾル-ゲル法による成膜法と同一の手法になる。
加水分解触媒はアルカリ触媒を用いる。酸触媒を用いると、軟磁性粉の主成分であるFeが溶解するので好ましくない。アルカリ触媒としては、シリコン酸化物被覆層中に不純物が残存し難いことと入手の容易さから、アンモニア水を用いることが好ましい。
本発明においては、加水分解触媒添加工程の反応温度は特に規定するものではなく、前工程であるアルコキシド添加工程の反応温度と同一で構わない。また、本発明においては、加水分解触媒添加工程の反応時間も特に規定するものではないが、長時間の反応時間は経済的に不利になるので、例えば反応時間が5min以上120min以下になるように条件を設定することができる。
[固液分離および乾燥]
前記までの一連の工程で得られたシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末を含むスラリーから、公知の固液分離手段を用いてシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末を回収する。固液分離手段としては、濾過、遠心分離、デカンテーション等の公知の固液分離手段を用いることができる。固液分離時には、凝集剤を添加し固液分離しても構わない。
回収したシリコン被覆軟磁性粉は大気雰囲気、80℃以上の温度で乾燥する。80℃以上で乾燥を行うと、シリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末の水分含有量を0.25質量%以下に低減することができる。乾燥温度としては85℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、シリコン酸化物被覆が剥がれないように、乾燥温度は400℃以下であることが好ましく、150℃以下がより好ましい。軟磁性粉の酸化を抑制したい場合は、窒素またはアルゴンまたはヘリウムまたはそれらの混合ガスなどの不活性ガス雰囲気や真空雰囲気で乾燥する。
[Si含有量の測定]
Siの含有量の測定は重量法によって行った。試料に塩酸と過塩素酸を加えて加熱分解し、過塩素酸の白煙が発生するまで加熱する。引き続き加熱して乾固させる。放冷後、水と塩酸を加えて加温して可溶性塩類を溶解させる。不溶解残渣をろ紙を用いてろ過し、残渣をろ紙ごとるつぼに移し、乾燥、灰化させる。放冷後にるつぼごと秤量する。少量の硫酸とフッ化水素酸を加え、加熱して乾固させた後、強熱する。放冷後にるつぼごと秤量する。1回目の秤量値から2回目の秤量値を差し引き、重量差をSiO2として計算してSi濃度を求める。
[シリコン酸化物被覆層の平均膜厚の算出]
上記の方法で測定したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のSi含有量をA(質量%)とすると、シリコン酸化物被覆層の質量割合をB(質量%)は、Siの原子量とSiO2の分子量から、以下の式により算出される。
B=A×SiO2の分子量/Siの原子量=A×60.08/28.09
さらに、前述のS(m2/g)およびd(g/cm3)を用いると、シリコン酸化物被覆層の平均膜厚t(nm)は以下の式で表される。なお、下式の10は換算係数である。
t(nm)=10×B/(d×S)
前述のように、dの値を2.65g/cm3として算出したシリコン酸化物被覆層の平均膜厚は、TEM観察結果とよく一致する。
[体積抵抗率の測定]
シリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末の体積抵抗率の測定は、三菱化学アナリテック株式会社製粉体抵抗測定ユニット(MCP-PD51)、三菱化学アナリテック株式会社製高抵抗抵抗率計ハイレスタUP(MCP-HT450)、三菱化学アナリテック株式会社製高抵抗粉体測定システムソフトウェアを用い、二重リング電極法により、粉末1.0gを13~64MPa(4~20kN)で垂直に加圧し、電圧を印加した状態で測定することにより求めた。なお、二重リング電極法に用いるサンプルの、上方からの投影面積は314mm2である。
[レーザー回折式粒度分布測定]
Fe系軟磁性粉末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置(SYMPATEC社製のヘロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS))により測定した。同装置により体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)を求め、累積50%粒子径(D50)を平均粒子径とした。
[BET比表面積の測定方法]
BET比表面積は、株式会社マウンテック製のMacsorb model-1210を用いて、BET一点法により求めた。
[成形工程]
前記の固液分離および乾燥までの一連の工程により得られたシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末を、金型を用いて圧縮成形することにより圧粉成形体が得られる。本発明の特長は、圧縮成形の際に有機樹脂のバインダーを用いず、実質的にシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを用いて圧縮成形を行った場合においても、圧粉成形体が得られ、その圧粉成形体を圧粉磁心として用いることが可能なことである。圧粉成形体への熱処理が省略可能であれば、圧粉磁心の製造コストを低減することが可能になる。
本発明において、有機樹脂のバインダーを用いなくても圧縮成形が可能な理由は必ずしも明確ではないが、前記の乾燥工程における乾燥温度が低く、シリコン酸化物被覆層が熱力学的安定相であるSiO2まで完全には変化せず、シラノール基が一部残存しているためと考えられる。シラノール基はOHを含むため、圧縮成形の際にOHを介して水素結合が生成し、シリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末同士が結合するものと考えられる。
また、バインダーを用いないことにより、軟磁性粉末の粒子間距離が狭まり、圧粉成形体の密度が高くなる。これによって比透磁率の向上と鉄損の低下がもたらされ、圧粉磁心の性能向上に寄与する。
圧縮成形の条件としては、従来用いられている加圧力として0.5GPa~1.5GPaを、そのまま用いることができる。
後述する本発明の実施例においては、外径18mm、内径8mmのリング状金型を用い、金型潤滑成形法により各種特性の測定試料を作製した。
[焼鈍工程]
前記までの工程で得られた圧粉成形体は、前述のように、そのままで圧粉磁心として使用することが可能であるが、当該圧粉成形体にさらに熱処理を施しても良い。圧粉体に熱処理を施すと、圧縮成形により圧粉成形体に蓄積された残留応力が減少し、圧粉磁心の磁気特性が向上する。また、本発明の圧粉磁心の場合には、熱処理によりシラノール基の残留するシリコン酸化物被覆層がSiO2に変化して絶縁性が向上するため、結果として圧粉磁心の磁気特性が向上する。熱処理の温度は、500℃以上が好ましく、800℃以下が好ましい。
有機樹脂のバインダーを使用した従来の圧粉磁心の場合、当該バインダーの熱分解を防止するため、通常、550℃程度までしか加熱できないが、本発明の場合には有機樹脂のバインダーを使用していないため、550~800℃の温度範囲まで加熱することが可能であり、磁気特性の向上した圧粉磁心が得られる。
熱処理の雰囲気としては、大気雰囲気、窒素またはアルゴンまたはヘリウムまたはそれらの混合ガスなどの不活性ガス雰囲気や、水素または一酸化炭素、または水素と不活性ガスや一酸化炭素と不活性ガスの混合ガスなどの還元雰囲気を用いることができる。不活性ガスとしては、製造コストの観点から、窒素を用いることが好ましい。
なお、大気雰囲気下で焼鈍を行うと、Fe系軟磁性粉末の酸化による体積膨張が起こる可能性があるので、より圧粉磁心の鉄損を低減することのできる窒素あるいは水素、水素と窒素の混合ガスを用いることが好ましい。
Fe系軟磁性粉末の酸化による体積膨張を防ぎ、より圧粉磁心の鉄損を低減することができる不活性ガス雰囲気下や、水素または水素と不活性ガスの混合ガスなどの還元雰囲気下で焼鈍を行うことが好ましく、窒素雰囲気下あるいは水素雰囲気下、水素と窒素の混合ガス雰囲気下で焼鈍を行うことが好ましい。
混合ガスを用いる場合には、窒素の体積比率が50%以上であることが好ましい。窒素の体積比率は70%以上が好ましく、さらには、80%以上が好ましいが、上述のように純窒素を用いても構わない。
圧粉成形体を上記の熱処理温度に保持する保持時間は10分~180分とすることで、より圧粉磁心の鉄損を低減できるため好ましい。より好ましくは15分~130分である。
上記の熱処理温度に保持する時間を90分以上にすると、後述するヒステリシス損失をより低減することができるため、電子部品の動作周波数が1~1000Hzの低周波領域での動作使用を目的とした場合に好ましい。また、上記の熱処理温度に保持する時間を90分未満にすると、渦電流損失をより低減することができるため、電子部品の動作周波数が1000Hz~10MHzの高周波領域での動作使用を目的とした場合に好ましい。その場合、渦電流損失をより低減する観点からは、前記の熱処理温度に保持する時間は60分以下とすることが好ましい。
圧粉成形体を室温から所定の熱処理温度にまで昇温する場合の昇温速度は特に規定はされないが、5℃/min~20℃/minにすることが好ましい。
[鉄損の測定]
鉄損には磁心の比抵抗値と関係の大きい渦電流損失と、軟磁性粉末製造のプロセス履歴に影響を受けるヒステリシス損失とがあり、下記(1)式で表される。
W=We+Wh=(k1m 22/ρ)f2+k2m 1.6f …(1)
ここで、第一項が渦電流損失We、第二項がヒステリシス損失Whであり、fは周波数、Bmは励磁磁束密度、ρは比抵抗値、tは材料の厚み、k1,k2は係数である。
測定試料は外径16mm、内径8mm、厚さ約4mmのリング形状とし、当該リング試料に励磁コイル50ターン、Bコイル50ターンの巻き線を施して測定を行った。鉄損をヒステリシス損失と渦電流損失に分離するために、Bm=0.1Tにおいて直流磁化曲線を測定し、直流ヒステリシス損失を得た後,50Hzおよび1000Hzの交流磁化曲線を測定して渦電流損失を算出した。直流磁化装置は理研電子(株)のBHS-40を用いた。交流磁気特性測定には,発振器に(株)エヌエフ回路設計ブロックのWAVE FACTORY 1948、パワーアンプに(株)エヌエフ回路設計ブロックの4025、波形記録装置に(株)横河電機製作所のDL750 を使用した。
本発明の圧粉磁心においては、Bm=0.1T、f=50Hzで測定した鉄損が0.15W/kg以下であることが好ましい。鉄損が0.15W/kgを超えると、インダクタ、モーターコアなどの電子部品の効率(印加電力の消費ロス)が低下するため好ましくない。本発明においては、上記の測定条件における鉄損の下限値は特に規定するものではないが、0.05W/kg程度のものが得られる。また、渦電流損失は0.004W/kg未満であることが好ましい。渦電流損失が0.004W/kg以上であると、電子部品の動作周波数が高周波になった場合に渦電流損失が増大し、鉄損を悪化させ、電子部品の効率を大きく悪化させるため好ましくない。本発明においては、渦電流損失の下限値は特に規定するものではないが、0.0001W/kg程度のものが得られる。
本発明の圧粉磁心においては、Bm=0.1T、f=1000Hzで測定した鉄損が3W/kg以下であることが好ましい。鉄損が3W/kgを超えると、インダクタ、モーターコアなどの電子部品の効率が低下するため好ましくない。本発明においては、上記の測定条件における鉄損の下限値は特に規定するものではないが、1.2W/kg程度のものが得られる。本発明の圧粉磁心においては、Bm=0.1T、f=1000Hzで測定したヒステリシス損失は、2.5W/kg以下が好ましい。さらに好ましくは1.6W/kg 以下が好ましい。また、渦電流損失は1.1W/kg未満であることが好ましい。渦電流損失が1.1W/kg以上であると、電子部品の動作周波数が高周波になった場合に渦電流損失が増大し、鉄損を悪化させ、電子部品の効率を大きく悪化させるため好ましくない。本発明においては、渦電流損失の下限値は特に規定するものではないが、0.05W/kg程度のものが得られる。
[密度の測定]
成形体密度は、リング状圧粉成形体の重量をリング状圧粉成形体の内径と外径および厚みから計算した体積で割ることにより算出した。
[実施例1]
200mLの反応容器に、室温下で純水21gとイソプロピルアルコール(IPA)120gを投入し、撹拌羽根を用いて混合して混合溶媒を作成した後に、当該混合溶媒に軟磁性粉末としてFe粉末(山陽特殊製鋼(株)製、BET比表面積:0.024m2/g、平均粒径51μm)75gを添加して、軟磁性粉末の分散したスラリーを得た。なお、出発物質として用いたFe粉末の磁気特性を表1に示す。その後、当該スラリーを600rpmの撹拌速度で撹拌しながら、室温から40℃まで昇温させた。この間、分散工程における当該スラリーの保持時間は15minである。
前記の混合溶媒中に軟磁性粉末が分散した撹拌下のスラリーに、少量ビーカーに分取したテトラエトキシシラン(TEOS:和光純薬工業社特級試薬)0.67gを一気に添加した。少量ビーカーの器壁に付着したTEOSは、IPA5gを用いて洗い落とし、反応容器中に加えた。TEOS添加後、撹拌を5min継続し、TEOSの加水分解生成物と軟磁性粉末表面との反応を行わせた。
引き続き、前記のTEOSを添加後5min保持したスラリーに、28質量%アンモニア水13gを1g/minの添加速度で添加した。アンモニア水の添加終了後、撹拌を行いながらスラリーを1h保持し、軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物被覆層を形成させた。その後、加圧濾過装置を用いてスラリーを濾別し、120℃で3h真空乾燥して、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得た。
得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末の組成分析を行い、シリコン酸化物被覆層の膜厚t(nm)を算出したところ、膜厚tは40nmであった。また、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末の粒度分布と圧粉体の体積抵抗率を測定した結果を表2に示す。
次に、得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末4.5gを、リング状コアを作製するための金型に充填し、最初に120kN(約0.8GPa)の加圧をした後、減圧する。次に200kN(約1.3GPa)の加圧と減圧を4回繰り返して、外径16mm、内径8mm、厚さ約4mmのリング状コアを作製した。成形方法は金型潤滑成形法を用い、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛をエタノールで分散させたものを磁性粉が接触する金型の部分に塗布した。作製したリング状コアを用いて、ヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に示す。
上記のリング状コアの成形体密度は7.65g/cm3であり、純鉄の密度7.87g/cm3に近い値になった。これは、本発明の製造法により得られるシリコン酸化物被覆層の厚さが40nmと極めて薄い値であることによる。
0.1T/50Hzで測定した鉄損および渦電流損失、0.1T/1000Hzで測定した鉄損および渦電流損失はそれぞれ、0.125W/kg、0.0002W/kg、2.565W/kg、0.076W/kgであり、後述する比較例1で得られたリング状コアについてのそれらよりも良好な値を示した。
[比較例1]
実施例1と同じFe粉末50gに対して、バインダーであるシランカップリング剤(モメンディブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製:SILQUEST A-1100 SILANE)0.1gを計量し、耐薬品性の容器にFe粉末とシランカップリング剤を投入し、シリコーンゴム製のヘラを用いて混合することで、シランカップリング剤で処理したFe粉末を得た。さらにシリコーン樹脂(東レダウコーニング社製:SR2400)0.25gとトルエンを1:1で混合した混合物を加え、シリコーンゴム製のヘラでトルエンがほぼ揮発するまで混ぜ続けた。得られたシリコーン樹脂被覆Fe粉末を乾燥機に移し大気雰囲気中、70℃で2h加熱してシリコーン樹脂を硬化させた後、目開き300μmのメッシュで篩別を行ってシリコーン樹脂被覆軟磁性粉末を得た。このシリコーン樹脂被覆軟磁性粉末4.5gを用いて実施例1と同様に加圧成形を行ってリング状コアを作製した。得られたリング状コアについてヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。バインダーの存在下で加圧成形を行った本比較例の場合、得られたリング状コアの諸特性は、バインダーなしの実施例1のそれらよりも劣ったものであった。
[比較例2]
実施例1に使用したのと同じFe粉末75gに、平均粒径1.51μmのシリカ粉末を混合したのち、実施例1と同じ条件で加圧成形を行ったが、リング状コアを作製できなかった。そのため、ヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定することはできなかった。
[比較例3]
平均粒径14nmのコロイダルシリカ(日本化学工業社製:シリカドール20)2.93gと水50gの混合溶液に実施例に使用したのと同じFe粉末75gを混合し5min間撹拌した後、50℃で8h真空乾燥を行い、さらに大気中120℃で4h乾燥を行ってシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得た。このシリコン酸化物被覆軟磁性粉末に、実施例1と同じ条件で加圧成形を行ったが、リング状コアを作製できなかった。そのため、ヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定することはできなかった。
[実施例2]
卓上型ガス準雰囲気炉(東京理化器械製:KDF-009GS)を使用し、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行う焼鈍工程を行った。焼鈍工程の熱処理は、電気炉内の雰囲気を大気雰囲気とし、室温から昇温速度10℃/minで600℃まで昇温し、その後、600℃で20分保持したのち、自然冷却を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
[実施例3]
熱処理の雰囲気を窒素雰囲気とした以外は、実施例2同じ条件で、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
[実施例4]
熱処理の雰囲気を窒素と水素の体積比率が窒素:水素=8:2である混合ガス雰囲気とした以外は、実施例2同じ条件で、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
[実施例5]
熱処理の最高温度を500℃、保持時間を120分とした以外は実施例4同じ条件で、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
[実施例6]
熱処理の最高温度を600℃とした以外は実施例5と同じ条件で、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
熱処理の最高温度を750℃とした以外は実施例5と同じ条件で、実施例1と同様の手順で作製したリング状コアに熱処理を行った。
得られた焼鈍工程後のリング状コアについてBm=0.1T、f=1000Hzでヒステリシス損失、渦電流損失、比透磁率、成形体密度を測定した。測定結果を表3に併せて示す。実施例1よりもヒステリシス損失と鉄損が低下し、比透磁率も向上した。
Figure 0007441113000001
Figure 0007441113000002
Figure 0007441113000003

Claims (6)

  1. 鉄を20質量%以上含有するFe系軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物を被覆したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを圧縮成形した圧粉磁心であって、励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=50Hzで測定した鉄損が0.15W/kg以下である圧粉磁心。
  2. 渦電流損失が0.004W/kg未満である、請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 鉄を20質量%以上含有するFe系軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物を被覆したシリコン酸化物被覆Fe系軟磁性粉末のみを圧縮成形した圧粉磁心であって、励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=1000Hzで測定した鉄損が3W/kg以下である圧粉磁心。
  4. 鉄損が2.2W/kg以下である請求項3に記載の圧粉磁心。
  5. 励磁磁束密度Bm=0.1T、周波数f=1000Hzで測定したヒステリシス損失が1.6W/kg以下である請求項3に記載の圧粉磁心。
  6. 圧粉成形体の密度が7.30g/cm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
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