JP2024028991A - シリコン酸化物被覆軟磁性粉末 - Google Patents

シリコン酸化物被覆軟磁性粉末 Download PDF

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頼人 西澤
英史 藤田
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Abstract

【課題】絶縁性に優れるシリコン酸化物被覆層を粒子表面に有するシリコン酸化物被覆軟磁性粉末において、比表面積が小さいものを提供する。【解決手段】鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子の表面にシリコン酸化物被覆層を有する粒子で構成される軟磁性粉末であって、前記シリコン酸化物被覆層の平均膜厚が0.5~30nmであり、BET比表面積が1.0m2/g以下であり、レーザー回折・散乱法による体積基準の累積50%粒子径D50が1.0~15.0μmであるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。【選択図】なし

Description

本発明は、インダクタ、チョークコイル、トランス、リアクトル、モーターなどの電気電子部品の圧粉磁心の製造に適した、良好な絶縁性を有し、比表面積の小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末に関する。
従来、インダクタ、チョークコイル、トランス、リアクトル、モーターなどの磁心として、鉄粉や鉄を含有する合金粉末、金属間化合物粉末などの軟磁性粉末を用いた圧粉磁心が知られている。しかし、鉄粉や鉄合金粉末などの金属粉末は、フェライト粉などの化合物粉末と比べ導電性が高い。そのため、金属粉末を用いて磁心を製造する場合には、予め金属粉末粒子の表面に絶縁性の皮膜を形成しておき、その後、圧縮成形、熱処理を施す工程に供することが一般的である。
絶縁性の被覆としては従来種々のものが提案されている。高絶縁性の被覆としてシリコンの酸化物被覆が知られている。乾式法によりシリコン酸化物を被覆した軟磁性粉末としては、例えば特許文献1に、振動スパッタ装置により膜厚5~10nmのSiO被膜を形成したFe-Si-Cr-Ni合金粉末が開示されている。特許文献2に、メカノフュージョン法を用いてSiOを79重量%含むホウケイ酸アルカリガラスを被覆したFe-Si-Cr系磁性金属粉末が開示されている。湿式法によりシリコン酸化物を被覆した軟磁性粉末としては、例えば特許文献3に、テトラエトキシシランのIPA(イソプロパノール)溶液を用い、テトラエトキシシランの加水分解生成物を被覆した後、120℃で乾燥させたFe-6.5%Si粉末が開示されている。特許文献4に、硬磁性体であるFe-Pdコアを軟磁性体であるFeで被覆した磁性粉末にオルトケイ酸テトラエチル(テトラエトキシシラン)を用いて膜厚1~13nmのSiO皮膜を形成する技術が開示されている。
国際公開第2007/013436号 国際公開第2014/013896号 特開2009-231481号公報 特開2017-152609号公報
しかし、特許文献1に開示されているスパッタ法の場合には、粉末の表面に膜厚の極めて薄い薄膜を形成することが可能であるが、均一な薄膜を得ることは困難であり、絶縁性と磁気特性を両立させることはできなかった。特許文献2に開示されているメカノフュージョン法の場合には、得られる表面被覆は空隙の多いものであり、軟磁性粉末の表面が一部露出するため、良好な絶縁性が確保できないという問題があった。湿式法は生産性に優れるため、絶縁物を被覆した軟磁性粉末の工業的な製造方法として有望である。しかし、特許文献3で得られる絶縁物被覆軟磁性粉末は、被覆層の平均膜厚が大きく、磁性粉末の圧粉密度が低下するため磁気特性が悪化するという問題があった。特許文献4に開示されている技術では、還元熱処理を経由して絶縁物被覆硬磁性粉末を作製しており、この製法で合成したコート粒子は凝集を生じて磁性粉末の圧粉密度が低下するため、磁気特性が悪化するという問題があった。この場合、所定の磁気特性を得るためには圧粉磁心を大型化することとなり、製品の小型化の要望に応えられない。さらに特許文献4の手法では還元熱処理を経由してコアの表面に絶縁物被覆シェルを形成させる工程が必須であり、製造プロセスが煩雑になるという問題があった。
このような問題に鑑み、本出願人は、膜厚の均一性が良好で欠陥の少ないシリコン酸化物で被覆された軟磁性粉末粒子で構成されるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を開発し、特願2019-025026号に以下の発明を開示した。
鉄を20質量%以上含有する軟磁性粉末の粒子表面にシリコン酸化物の被覆層が形成されている粒子で構成されるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末であって、前記のシリコン酸化物被覆層層の平均膜厚が1nm以上30nm以下であり、下記(1)式で定義される被覆率Rが70%以上であり、圧粉密度が4.0g/cm以上である、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
R=Si×100/(Si+M) …(1)
ここでSiは、前記シリコン酸化物被覆軟磁性粉末についてX線光電子分光分析法(XPS)測定により得られたSiのモル分率、Mは前記の軟磁性粉末を構成する元素のうち、酸素を除く金属元素および非金属元素についてXPS測定により得られたモル分率の総和である。
上記発明によれば、絶縁性に優れ、かつ高い圧粉密度を得ることが可能なシリコン酸化物被覆軟磁性粉末が提供可能となった。しかしながら、絶縁性に優れる軟磁性粉末において、比表面積をコントロールする技術に関しては十分に検討されていなかった。
軟磁性粉末を用いて圧粉磁心を作製する際には、粉末を加圧成形する工程が必須となる。その加圧成形の工程では粉末粒子同士の流動性を十分に確保する必要があるので、通常、軟磁性粉末は樹脂と混合された後に加圧成形に供される。混合された樹脂は、粒子同士のバインダーとしても機能する。ただし、樹脂の混合量が多くなると、圧粉磁心中に樹脂が残留して磁気特性を低下させる要因となる。したがって、使用する樹脂の量は必要最小限に抑えることが求められる。必要な樹脂の量は、軟磁性粉末の比表面積に依存すると考えられる。粉末の比表面積を低下させることができると、粉末を加圧成形する際に必要となる樹脂の量を低減させる上で極めて有利となる。
優れた絶縁性と低い比表面積を両立させる技術は確立されていないのが現状である。
本発明は、膜厚の均一性が高く欠陥の少ない、薄くかつ絶縁性に優れるシリコン酸化物被覆層を粒子表面に有するシリコン酸化物被覆軟磁性粉末において、加圧成形時に必要な樹脂の量を低減する上で有利となる、比表面積が小さいものを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本明細書では以下の発明を開示する。
[1]鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子の表面にシリコン酸化物被覆層を有する粒子で構成される軟磁性粉末であって、前記シリコン酸化物被覆層の平均膜厚が0.5~30nmであり、BET比表面積が1.0m/g以下であるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
[2]質量4gの粉末試料に内径20mmの絶縁体シリンダー内で荷重20kNを付与して直径20mmの円板状の圧粉体試料を作製し、その圧粉体試料に荷重20kNを付与した状態で二重リング電極法により体積抵抗率を測定する試験に供したとき、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上となる上記[1]に記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
[3]レーザー回折・散乱法による体積基準の累積50%粒子径D50が1.0~15.0μmである上記[1]または[2]に記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
[4]BET比表面積が0.65m/g以下である上記[1]~[3]のいずれかに記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
[5]水含有量が1~40質量%である、水と有機溶媒との混合溶媒と、鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子で構成される原料粉末とを混合してスラリーを得る工程、
前記スラリーの温度を50~65℃に保持した状態で、そのスラリーにシリコンアルコキシドを添加し撹拌混合する工程、
前記の撹拌混合を終えたスラリーの温度を50~65℃に保持した状態で、そのスラリーに加水分解触媒を添加し、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるシリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを得る工程、
前記シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを固液分離して固形分を回収する工程、
回収された前記固形分を乾燥させることにより、シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子で構成される軟磁性粉末を得る工程、
を有する上記[1]~[4]のいずれかに記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末の製造方法。
[6]水含有量が1~40質量%である、水と有機溶媒との混合溶媒と、鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子で構成される原料粉末とを混合してスラリーを得る工程、
前記スラリーにシリコンアルコキシドを添加し撹拌混合する工程、
前記の撹拌混合を終えたスラリーに加水分解触媒を添加し、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるシリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを得る工程、
前記シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを固液分離して固形分を回収する工程、
回収された前記固形分を10kPa以下の圧力下で真空乾燥させることにより、シリコン酸化物に被覆された金属粒子で構成される軟磁性粉末を得る工程、
を有する上記[1]~[3]のいずれかに記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末の製造方法。
本発明によれば、絶縁性に優れ、かつ高い圧粉密度を有する圧粉磁心の製造に有利なシリコン酸化物被覆軟磁性粉末が提供される。そのシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は比表面積が小さいので、圧粉磁心などを得るための加圧成形において、必要な樹脂の量を低減することが可能となり、樹脂量を低減することによる磁気特性の向上効果や製造コスト低減効果が期待される。
[原料粉末]
本発明では、原料粉末として鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子で構成される軟磁性粉末を用いる。鉄を20質量%以上含有する軟磁性粉末としては、具体的には、純鉄粉(例えばカルボニル鉄粉)の他、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Al-Si合金(センダスト)、パーマロイ組成であるFe-Ni合金(Ni質量30~80質量%)等の鉄合金粉末が挙げられる。また、必要に応じてMo、Coが少量(10質量%以下)添加される場合がある。
原料粉末の磁気特性については特に規定しないが、保磁力Hcが低く、飽和磁化σsが高い軟磁性粉末であることが好ましい。Hcが高いと磁場を反転させる際のエネルギーロスが大きくなり、磁心には不適当である。原料粉末のHcは例えば3.98kA/m(約50Oe)以下であることが望ましい。使用する原料粉末のσsが低いと所定の磁気特性を有する磁心を構成するために必要な磁性粉の量が多くなり、磁心のサイズが大きくなってしまう。σsは例えば100Am/kg(100emu/g)以上であることが望ましい。
原料粉末の一次粒子の平均粒径も特に規定しないが、従来、一次粒子の平均粒径として0.80μm超え~5.0μm以下のものがあり、目的に応じてこの範囲の任意の一次粒子の平均粒径を有する軟磁性粉末を用いることができる。
[シリコン酸化物被覆層]
本発明に従うシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子(上記原料粉末の粒子)の表面にシリコン酸化物被覆層を有する粒子で構成される軟磁性粉末である。そのシリコン酸化物被覆層は、平均膜厚が0.5~30nmである。平均膜厚が0.5nm未満であると、良好な絶縁性を安定して確保することが難しくなる。平均膜厚は3nm以上としてもよい。シリコン酸化物被覆層の平均膜厚が厚くなるほど絶縁性は向上するが、反面、圧粉成形体においては非磁性相であるシリコン酸化物の存在割合が増えて磁気特性が低下しやすくなる。検討の結果、シリコン酸化物被覆層の平均膜厚は30nm以下とする必要があり、25nm以下であることがより好ましい。
シリコン酸化物被覆層の平均膜厚は後述の溶解法により測定すればよい。また、溶解法に代えて、シリコン酸化物被覆層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)、あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)により観察することにより平均膜厚を求めることもできる。その場合断面のTEM写真またはSEM写真を撮影し、ランダムに選択した粒子の測定点50箇所の平均値によって平均膜厚を求めるとよい。この方法によって求めた膜厚も、溶解法と同等となる。
[BET比表面積]
本発明では、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末のBET比表面積を1.0m/g以下に規定する。前述のように、粉末を加圧成形する工程では、通常、粉末粒子同士の流動性を確保するために樹脂が添加される。樹脂の使用量が不足すると円滑な圧粉成形ができない。比表面積の大きい粉末の場合は、樹脂の必要量が多くなる。樹脂の使用量が多いと圧粉磁心中に樹脂が残存して磁気特性の低下を招きやすくなる。種々検討の結果、絶縁性に優れるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末において、BET比表面積が1.0m/g以下に低減されているとき、樹脂使用量の低減効果が発揮できるものと考えられる。この効果の点からBET比表面積は0.8m/g以下であることがより好ましい。特に、絶縁性の高い被覆層を形成した軟磁性粉末において、BET比表面積が0.65m/g以下に低減されているとき、絶縁性と樹脂量低減とを高いレベルで両立させることができる。BET比表面積は0.60m/g以下であることが一層好ましい。このような絶縁性が高くかつBET比表面積が小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、後述の製造方法によって得ることができる。BET比表面積の下限は特に規定しないが、例えば0.1m/g以上、あるいは0.2m/g以上の範囲でコントロールすればよい。
本明細書でいうBET比表面積は、窒素とヘリウムの混合ガス(N:30体積%、He:70体積%)を用いたBET1点法により測定することができる。BET比表面積の測定方法の詳細は後述の実施例にて説明する。
[圧粉体試料での体積抵抗率]
本発明に従うシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、特願2019-025026号に開示のものと同様、粒子が薄く均質性の高いシリコン酸化物被覆層に覆われている。被覆量が少ない(すなわち平均膜厚が小さい)場合であっても、膜厚の均一性が高い被覆層であれば、軟磁性金属粒子の露出部分あるいは被覆層の膜厚が極めて薄い部分の存在に起因する絶縁性の低下が防止され、圧粉体を構成したときに高い体積抵抗率を呈する。ここでは、シリコン酸化物被覆層の膜厚の均一性を評価する指標として、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末を用いた圧粉体試料について測定される体積抵抗率を適用する。具体的には以下の試験方法を適用する。
(圧粉体試料での体積抵抗率測定の試験方法)
質量4gの粉末試料に内径20mmの絶縁体シリンダー内で荷重20kNを付与して直径20mmの円板状の圧粉体試料を作製し、その圧粉体試料に荷重20kNを付与した状態で二重リング電極法により体積抵抗率を測定する。
この試験において、平均膜厚0.5~30nmのシリコン酸化物被覆層を有する軟磁性粉末の体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上となるとき、その粉末は非常に均一性の高いシリコン酸化物被覆層を有していると評価することができる。上記体積抵抗率は5.0×10Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率の上限値は特に限定されるものではないが、通常1.0×1012Ω・cm以下である。
なお、均一性の高いシリコン酸化物被覆層を特定する指標として、特願2019-025026号に開示した上述の(1)式に定義される被覆率Rを採用することもできる。この場合、被覆率Rが70%以上であることが好ましい。本発明に従えば被覆率Rが70%以上のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得ることができる。なお、(1)式を適用するためのXPS測定方法については特願2019-025026号に記載される通りである。
[体積基準累積50%粒子径]
シリコン酸化物被覆軟磁性粉末の粒子径については、レーザー回折・散乱法による体積基準の累積50%粒子径D50が1.0~15.0μmであることが望ましい。D50が小さすぎると粒子が二次凝集を生じやすくなり、圧粉密度の低下を招く要因となる。その場合、透磁率が低くなってしまう。D50が大きくなるとインダクタにおいて高周波時の磁気損失が増加しやすい。D50が1.5~10.0μmであることがより好ましく、1.8~8.0μmであることがさらに好ましい。
[圧粉密度]
シリコン酸化物被覆軟磁性粉末の圧粉密度は、63.66MPaの圧力を付与して得られる圧粉体において、4.0g/cm以上であることが好ましい。5.0g/cm以上であることがより好ましい。圧粉密度は圧粉磁心の透磁率に影響する。圧粉密度が低ければ圧粉磁心の透磁率が低くなり、結果的に所定の透磁率を得るために圧粉磁心のサイズが大きくなってしまう。圧粉密度は高い方がよいが、軟磁性粉末の組成から、実質的には8.0g/cm以下となる。圧粉密度を測定するための圧粉体の作製は、上述の体積抵抗率測定試験と同様、質量4gの粉末試料を内径20mmのシリンダーに入れ、荷重20kNを付与してする方法が採用できる。この場合、荷重20kNで63.66MPaに相当する圧力が付与される。
[製造工程]
本発明に従うシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、以下の工程を利用して製造することができる。
(1)水含有量が1~40質量%である、水と有機溶媒との混合溶媒と、鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子で構成される原料粉末とを混合してスラリーを得る工程、
(2)前記スラリーにシリコンアルコキシドを添加し撹拌混合する工程、
(3)前記の撹拌混合を終えたスラリーに加水分解触媒を添加し、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるシリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを得る工程、
(4)前記シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子のスラリーを固液分離して固形分を回収する工程、
(5)回収された前記固形分を乾燥させることにより、シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子で構成される軟磁性粉末を得る工程。
発明者らは、絶縁性に優れるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末において、BET比表面積を小さい値にコントロールする手法として、以下の2つのパターンが採用できることを見出した。
(パターン1)
上記(2)の工程でシリコンアルコキシドを添加し撹拌混合するときのスラリー温度、および上記(3)の工程で加水分解触媒を添加してシリコンアルコキシドの加水分解生成物を被覆させるときのスラリー温度を、50~65℃に保持する。
(パターン2)
上記(5)の工程において、固形分を乾燥させる際に、真空乾燥を行う。
これらパターン1、2の少なくとも1つを適用すればよい。ただし、BET比表面積を0.65m/g以下にコントロールするためには、上記パターン1を採用する。
[分散工程]
上記(1)の工程を「分散工程」と呼ぶ。鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子で構成される原料粉末を用意する。この原料粉末の表面にはFeの極めて薄い酸化物膜が存在する。溶媒としては、水と有機溶媒との混合溶媒を用意する。この分散工程では、このFeの酸化物膜を混合溶媒中に含まれる水により水和させる。水和したFe酸化物の表面は一種の固体酸であり、ブレンシュテッド酸として弱酸と類似の挙動を示すため、次工程においてシリコンアルコキシドを添加した際に、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるシラノール誘導体と原料粉末粒子の表面との反応性が向上する。
混合溶媒中の水の含有量が少ないと原料粉末粒子表面のFe酸化物を水和する作用が不足する。水の含有量が多いとシリコンアルコキシドの加水分解速度が速くなり、均一性の高いシリコン酸化物被覆層を形成することが難しくなる。本発明では、水含有量が1~40質量%の範囲にある混合溶媒を適用する。混合溶媒中の水含有量は5~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
混合溶媒に用いる有機溶媒としては、水と親和性のあるメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコールを用いることが好ましい。ただし、有機溶媒の溶解度パラメータが水のそれに近いと、混合溶媒中での水の反応性が低下する傾向を示すので、炭素数3~6の脂肪族アルコール、例えば1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールを用いることがより好ましい。
分散工程の反応温度は特に規定するものではないが、例えば20~70℃とすることが好ましい。分散工程の保持時間も特に規定するものではないが、Fe酸化物の水和反応が均一に起こるように、1~30分の撹拌によってスラリーを得ることが好ましい。
[アルコキシド添加工程]
上記(2)の工程を「アルコキシド添加工程」と呼ぶ。シリコンアルコキシドを用いた被覆法は、一般にゾル-ゲル法と呼ばれる手法であり、乾式法と比較して大量生産性に優れたものである。上記の分散工程により得られたスラリーを、公知の機械的手段により撹拌しながら、シリコンアルコキシドを添加した後、その状態でスラリーを一定時間保持する。発明者らの研究によれば、BET比表面積の小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得るために、本工程でのスラリーの温度を50~65℃に保持することが極めて効果的であることがわかった(上記パターン1の手法)。細孔分布を調査した結果、この温度域でシリコンアルコキシドを添加して撹拌を維持すると、マイクロ孔(2nm以下の大きさの細孔)の形成が著しく低減されたシリコン酸化物被覆が形成される。マイクロ孔の形成が少なくなることに起因して、結果的にBET比表面積の小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末が得られるものと考えられる。上記パターン1の手法を適用する場合、本工程での反応時間は例えば1~30分の範囲で設定すればよい。
この工程でスラリーの温度を50~65℃に保持することにこだわらなくても、後述の工程で真空乾燥を行う手法を適用することによってBET比表面積の小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得ることが可能である(上記パターン2の手法)。ただし、反応温度が低すぎると原料粉末表面とシラノール誘導体との反応速度が遅くなる。反応温度が高すぎると添加したシリコンアルコキシドの加水分解反応速度が増大し、シリコン酸化物被覆層の均一性が悪化しやすくなる。上記パターン2の手法を適用する場合、この工程でのスラリー温度は20~70℃の範囲とすることが好ましい。その場合、本工程での反応時間は例えば1~30分の範囲で設定すればよい。
シリコンアルコキシドを加水分解すると、アルコキシ基の一部または全部が水酸基(OH基)と置換し、シラノール誘導体となる。本発明においては、このシラノール誘導体により前記の原料粉末粒子の表面を被覆する。粒子表面を被覆したシラノール誘導体は、加熱すると縮合または重合することによりポリシロキサン構造をとり、ポリシロキサン構造をさらに加熱するとシリカ(SiO)になる。本明細書においては、有機物であるアルコキシ基の一部が残存するシラノール誘導体被覆からシリカ被覆までを総称してシリコン酸化物被覆と呼ぶ。
本工程で添加したシリコンアルコキシドは、混合溶媒中に含まれる水の作用により加水分解してシラノール誘導体になる。生成したシラノール誘導体は、縮合、化学吸着等により、原料粉末粒子表面にシラノール誘導体の反応層を形成する。本工程では、加水分解触媒を添加していないので、シリコンアルコキシドの加水分解が緩やかに起こるため、前記のシラノール誘導体の反応層が均一に形成されるものと考えられる。
シリコンアルコキシドとしては、例えばトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリブトキシシラン等を使用することができる。なかでもテトラエトキシシラン(TEOS)は、上述の原料粉末粒子との濡れ性が良く、均一な被覆層を形成しやすいので、特に好適である。
本工程で添加したシリコンアルコキシドは、ほぼ全量シリコン酸化物被覆層の形成に用いられるので、その添加量はシリコン酸化物被覆層の平均膜厚に換算して0.5~30nmになる量とする。シリコンアルコキシドの添加量は、具体的には以下の方法により決定する。
スラリー中に含まれる原料粉末の質量をGp(g)、当該原料粉末のBET比表面積(本工程での被覆処理に供する前のBET比表面積)をS(m/g)、シリコン酸化物被覆層の目標膜厚をt(nm)とすると、シリコン酸化物被覆層の全体積はV=Gp×S×t(10-5)である。シリコン酸化物被覆層の密度をd=2.65(g/cm=10g/m)とすると、シリコン酸化物被覆層の質量はGc=0.1V×d(g)となる。したがって、シリコン酸化物被覆層に含まれるSiのモル数はGcをSiOの分子量60.08で割った値として求められる。本発明の製造方法においては、上記の目標膜厚t(nm)に対応するモル数のシリコンアルコキシドをスラリー中に添加する。
なお、収束イオンビーム(FIB)加工装置を用いてシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を切断し、透過電子顕微鏡(TEM)観察により測定したシリコン酸化物被覆層の平均膜厚は、シリコン酸化物被覆層の密度をd=2.65(g/cm)として後述する溶解法により求めた膜厚と精度良く一致することが確認されている。
[加水分解触媒添加工程]
上記(3)の工程を「加水分解触媒添加工程」と呼ぶ。前記のアルコキシド添加工程で原料粉末粒子表面にシラノール誘導体の反応層を形成させた粒子が分散しているスラリーを、公知の機械的手段により撹拌しながら、シリコンアルコキシドの加水分解を促進させるための触媒(加水分解触媒)を添加する。本工程においては、加水分解触媒の添加により、シリコンアルコキシドの加水分解反応が促進され、シリコン酸化物被覆層の成膜速度が増大する。
加水分解触媒には塩基性触媒を用いることが好ましい。酸触媒を用いると、軟磁性金属粒子の成分であるFeが溶解する場合がある。塩基性触媒としては、シリコン酸化物被覆層中に不純物が残存し難いことと入手の容易さから、アンモニア水を用いることが好ましい。加水分解触媒添加工程の反応温度は、上記パターン1の手法を適用する場合には50~65℃に保持するが、上記パターン2の手法を適用する場合には特にこだわる必要はなく、前工程であるアルコキシド添加工程の反応温度と同一で構わない。加水分解触媒添加工程の反応時間は特に規定するものではないが、長時間の反応時間は経済的に不利になるので、反応時間が例えば5~200分となるように条件を設定するとよい。
[固液分離工程]
上記(4)の工程を「固液分離工程」と呼ぶ。前記の加水分解触媒添加工程を終えた粉末が分散しているスラリーから、シリコン酸化物で被覆された粒子で構成される粉末を固形分として回収する。固液分離手段としては、濾過、遠心分離、デカンテーション等の公知の固液分離手段を用いることができる。固液分離時には、凝集剤を添加し固液分離しても構わない。
[乾燥工程]
上記(5)の工程を「乾燥工程」と呼ぶ。回収された前記固形分を乾燥させることにより、シリコン酸化物に被覆された軟磁性金属粒子で構成される軟磁性粉末の乾燥物を得る。上記(2)、(3)の工程で上記パターン1の手法を採用した場合には、本工程での乾燥手法には特にこだわる必要はない。例えば、大気雰囲気下で乾燥させることができる。軟磁性粉末の酸化を抑制したい場合には不活性ガス雰囲気中や真空中で乾燥させるとよい。乾燥時の温度は80℃以上とすることが好ましい。シリコン酸化物被覆層が剥がれないように、400℃以下の温度とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましい。このようにして、BET比表面積が例えば0.65m/g以下と非常に小さいシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得ることができる。
一方、上記(2)、(3)の工程で保持温度に特にこだわらない上記パターン2の手法を採用した場合は、本工程で真空乾燥を採用する。具体的には、10kPa以下の圧力下に真空引きされた容器内で、所定温度に加熱することによって乾燥させる。加熱温度は上記と同様に80~400℃の範囲とすることが好ましく、80~150℃の範囲がより好ましい。真空乾燥の処理時間は例えば12~24時間の範囲で設定すればよい。この方法によって、BET比表面積が1.0m/g以下であるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得ることができる。真空乾燥によってBET比表面積の低減が可能になるメカニズムについては、現時点では未解明である。
各例において、以下の測定方法を採用した。
(BET比表面積)
BET比表面積は、株式会社マウンテック製のMacsorbを使用して、測定器内に105℃で20分間窒素ガスを流して脱気した後、窒素とヘリウムの混合ガス(N:30体積%、He:70体積%)を流しながら、BET1点法により測定した。
(TAP密度)
粉末試料を内径6mm×高さ11.9mmの有底円筒形のダイに容積の80%まで充填して粉末層を形成し、この粉末層の上面に0.160N/mの圧力を均一に加え、この圧力で粉末がこれ以上密に充填されなくなるまで前記粉末層を圧縮した後、粉末層の高さを測定し、この粉末層の高さの測定値と、充填された粉末の重量とから、粉末の密度を求め、これを粉末試料のタップ密度とした。
(Si含有量)
溶解法により、以下のように分析を行った。まず、粉末試料(原料粉末またはシリコン酸化物被覆軟磁性粉末)に塩酸と過塩素酸を加えて加熱分解し、過塩素酸の白煙が発生するまで加熱した。引き続き加熱して乾固させた。放冷後、水と塩酸を加えて加温して可溶性塩類を溶解させた。続いて、不溶解残渣を、ろ紙を用いてろ過し、残渣をろ紙ごとるつぼに移し、乾燥、灰化させた。放冷後、るつぼごと秤量した。少量の硫酸とフッ化水素酸を加え、加熱して乾固させた後、強熱した。放冷後、るつぼごと秤量した。そして、1回目の秤量値から2回目の秤量値を差し引き、重量差をSiOとして算出し、その値から粉末試料中のSi含有量を求めた。
(炭素含有量)
粉末試料(原料粉末またはシリコン酸化物被覆軟磁性粉末)中の炭素含有量を炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-22V)により測定した。
(酸素含有量)
粉末試料(原料粉末またはシリコン酸化物被覆軟磁性粉末)中の酸素含有量を酸素・窒素・水素分析装置(株式会社堀場製作所製のEMGA-920)により測定した。
(粒度分布)
レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置;HELOS & RODOS(気流式の分散モジュール))を使用して、分散圧5bar(0.5MPa)で体積基準の累積10%粒子径(D10)、累積25%粒子径(D25)、累積50%粒子径(D50)、累積75%粒子径(D75)、累積90%粒子径(D90)、累積99%粒子径(D99)を求めた。
(圧粉体試料の体積抵抗率)
粉末試料(シリコン酸化物被覆軟磁性粉末)を使用した圧粉体試料の体積抵抗率は、三菱化学アナリテック株式会社製粉体抵抗測定ユニット(MCP-PD51)、三菱化学アナリテック株式会社製高抵抗抵抗率測定ユニット(MCP-HT450)、三菱化学アナリテック株式会社製高抵抗粉体測定システムソフトウェアを用いて二重リング電極法により測定した。圧粉体試料は、粉末試料4.0gを、三菱化学アナリテック株式会社製粉体抵抗測定ユニット(MCP-PD51)に装備された内径20mmの絶縁体シリンダー内に入れ、荷重20kNで鉛直方向に加圧することにより作製した。圧粉体試料は直径20mmの円板状となり、20kNの荷重により付与される圧力は63.66MPaである。この圧粉体試料に荷重20kNを付与したままの状態で、上下の電極により電気抵抗を測定し、二重リング電極法による体積抵抗率を求めた。
なお、原料粉末の場合には、MCP-PD51、三菱化学アナリテック株式会社製低抵抗率測定ユニット(MCP-T610)、三菱化学アナリテック株式会社製低抵抗粉体測定システムソフトウェアを用いて、上記と同様の圧粉体試料について荷重20kNを付与したままの状態で四端子法により体積抵抗率を求めた。
(圧粉密度)
上記の体積抵抗率の測定に用いた圧粉体試料の厚さを測定し、圧粉体試料の質量と体積から63.66MPa加圧成形による圧粉体の圧粉密度を求めた。
(シリコン酸化物被覆層の平均膜厚)
上記の方法で測定したシリコン酸化物被覆軟磁性粉末のSi含有量をA(質量%)とすると、シリコン酸化物被覆層の質量割合B(質量%)は、Si原子量とSiO分子量から、次式により算出される。
B=A×SiO分子量/Si原子量=A×60.08/28.09
シリコン酸化物被覆層の密度をd(g/cm)、原料粉末(シリコン酸化物の被覆処理を施す前の粉末)のBET比表面積をS(m/g)とすると、シリコン酸化物被覆層の平均膜厚t(nm)は次式で表される。
t=10×B/(d×S)
ここで、dの値として2.65(g/cm)を採用することができる。右辺の10は単位換算係数である。
(粉末の磁気特性)
高温超電導型VSM(東英工業社製VSM-5HSC-6T)を用い、印加磁場798kA/m(10kOe)、M測定レンジ0.002A・m(2emu)、ステップビット300bit、時定数0.03秒、ウエイトタイム0.2秒で磁気特性を測定した。B-H曲線により、保磁力Hc、飽和磁化σs、角形比SQ、反転磁界分布SFDを求めた。
《実施例1》
原料粉末として、カルボニル鉄粉(BET比表面積:0.67m/g、レーザー回折・散乱法による体積基準の累積50%粒子径D50:5.4μm、圧粉密度:6.3g/cm)を用意した。
(1)分散工程
5000mLの反応容器に、常温下で純水455gとイソプロピルアルコール(IPA)2640gを投入し、撹拌羽を用いて混合して混合溶媒を作製した。この混合溶媒に上記の原料粉末1650gを添加して、液温を40℃に調整し、380rpmで5分間撹拌することによってスラリーを得た。
(2)アルコキシド添加工程
前記スラリーに 小容量ビーカーに分取したテトラエトキシシラン(TEOS:和光純薬工業社製、特級試薬)54.0gを一挙に添加した。小容量ビーカーに付着したTEOSは、IPA220gで洗い落とし、スラリー中に加えた。TEOS添加後、スラリーの温度を40℃に維持して撹拌を5分間継続し、TEOSの加水分解生成物と原料粉末粒子表面との反応を行わせた。
(3)加水分解触媒添加工程
その後、28質量%アンモニア水1135gを12.6g/minの添加速度でスラリー中に連続添加した。アンモニア水の添加終了後、撹拌を行いながら2時間保持して、軟磁性粉末の表面にシリコン酸化物被覆層を形成させた。ここまで、スラリーの温度は40℃に維持した。
(4)固液分離工程
その後、スラリーを加圧濾過装置により固液分離して固形分を回収した。
(5)乾燥工程
回収された固形分を1kPa以下に真空引きされたチャンバー内で100℃に加熱することにより真空乾燥させた。
以上の工程にてシリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得た。得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末について上述の各測定を行った。結果を表1に示す。
《実施例2~4》
実施例1と同様の原料粉末を用いて、上記(1)~(5)の工程を実施し、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得た。ただし、実施例2~4では(1)の分散工程においてスラリーを得る際の液温を40℃から60℃に変更し、(3)の加水分解触媒添加工程を終了するまでスラリーの温度を60℃に維持した。
また、(5)の乾燥工程において、以下の条件を採用した。
実施例2:100℃の大気雰囲気
実施例3:100℃の窒素ガス雰囲気
実施例4:100℃での真空乾燥(実施例1と同様条件)
以上に記載した実施例1からの変更箇所を除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末について上述の各測定を行った。結果を表1に示す。
《比較例1、2》
実施例1と同様の原料粉末を用いて、上記(1)~(5)の工程を実施し、シリコン酸化物被覆軟磁性粉末を得た。ただし、比較例1、2では(5)の乾燥工程において、以下の条件を採用した。
比較例1:100℃の大気雰囲気
比較例2:100℃の窒素ガス雰囲気
乾燥条件を上記のようにしたことを除き、実施例1と同様の条件で実験を行った。得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末について上述の各測定を行った。結果を表1に示す。
《対照例》
原料粉末(実施例1に記載したカルボニル鉄粉)についても、上述の各測定を行っている。その結果を表1に示す。
Figure 2024028991000001
比較例1、2のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、シリコン酸化物被覆時のスラリー温度が低く、乾燥工程のガス雰囲気を大気(比較例1)あるいは窒素ガス(比較例2)としたので、BET比表面積が高かった。
実施例1のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、乾燥工程のガス雰囲気を真空としたので、比較例のものと比べ、BET比表面積を低減することができた。
実施例2~4のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末は、シリコン酸化物被覆時のスラリー温度を本発明規定範囲に高めたので、乾燥工程でのガス雰囲気にかかわらず、実施例1よりもさらに低いBET比表面積を実現できた。
なお、比較例1、2、実施例1~4で得られたシリコン酸化物被覆軟磁性粉末はいずれも、63.66MPa圧粉体試料での体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上となる優れた絶縁性を有し、かつ63.66MPa圧粉体試料の圧粉密度も十分に高い値であった。

Claims (3)

  1. 鉄含有量が20質量%以上である軟磁性金属粒子の表面にシリコン酸化物被覆層を有する粒子で構成される軟磁性粉末であって、前記シリコン酸化物被覆層の平均膜厚が0.5~30nmであり、BET比表面積が1.0m/g以下であり、レーザー回折・散乱法による体積基準の累積50%粒子径D50が1.0~15.0μmであるシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
  2. 質量4gの粉末試料に内径20mmの絶縁体シリンダー内で荷重20kNを付与して直径20mmの円板状の圧粉体試料を作製し、その圧粉体試料に荷重20kNを付与した状態で二重リング電極法により体積抵抗率を測定する試験に供したとき、体積抵抗率が1.0×10Ω・cm以上となる請求項1に記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
  3. BET比表面積が0.65m/g以下である請求項1または2に記載のシリコン酸化物被覆軟磁性粉末。
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