JP5263653B2 - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、デジタル情報機器などに用いられるパワーチョークやトランス、リアクトル、回転機などの電気電子部品の磁性コアとして用いた際、高強度で良好な電気絶縁性を有しかつ低損失な、軟磁性金属圧粉磁心およびその製造方法に関する。
近年、デジタル情報機器の高周波化、大電流化に伴い、軟磁性金属粉末を用いたインダクタやノイズ対策部品が注目されている。特に10−100kHz帯域で駆動電流が10−100Aで使用される部品の用途が拡大している。また回転機コアやトランスコアなどの電気部品分野においても高密度化および小型化が求められている。このため、これらの電気電子部品に使用される軟磁性金属圧粉磁心、特に中高周波領域において優れた磁気的特性を有する軟磁性圧粉磁心の開発が進められている。軟磁性金属粉末を用いて作製される圧粉磁心は、従来から使用されていたフェライト磁心よりも高い飽和磁束密度を有しているため電子部品の小型化および大電流化に対しては有利である。
しかし、軟磁性金属粉末による圧粉磁心はフェライトと比較して電気抵抗率が低いため渦電流損失が大きいという欠点もある。それ故に、金属系圧粉磁心をコアとして用いた場合フェライトコアと比較して、特に数十kHZ以上の中高周波域での損失が大きくなる。またコアの発熱による温度上昇の問題もあり、電子部品としての実用化が困難であった。従来この問題を解決する手段として、損失を低減するために、例えば特許文献1のようにリン酸塩等の絶縁物で被覆することで軟磁性金属粉末表面を高電気抵抗率化し、コア内の渦電流の発生を抑制するという試みが提案されている。また非特許文献1においては、金属粉末の表面をMgO等の酸化物で被覆することにより粉末表面を高抵抗化し渦電流損失を低減する方法が提案されている。これらは、いずれも、粉末表面の電気抵抗を向上させることで渦電流損失を低減し、コア損失を低減することを目的としている。
ところで、コア全体の鉄損は一般にヒステリシス損失と渦電流損失の和で表される。一般的には、ヒステリシス損失は周波数の一乗、渦電流損失は周波数の二乗にそれぞれ比例して変化する。したがって、高周波域では渦電流損失の寄与がヒステリシス損失の寄与に比較し大きく渦電流損失を低減することがコア損失を低減するためには効果的な手段となる。一方モータコアやリアクトルコアなど比較的低中周波で用いられる機器については、渦電流損失だけでなくヒステリシス損失からの寄与も無視することが出来ない。したがって低中周波域では、渦電流損失だけでなくヒステリシス損失を低減することが、コア損失低減に有効である。
磁性コアのヒステリシス損失は、コアに磁界をオンオフした際のヒステリシスの大きさにより決定される。ヒステリシス損失を低減するためには、磁性粉末の保磁力を出来るだけ小さくすることが必要である。軟磁性粉末の保磁力は、磁界を印加した際の磁壁移動の容易さを反映したものであり、粒界や不純物介在物、圧粉磁心の成形時に生じた塑性変形による歪み、転位などがこれを妨げる要因となる。このため低ヒステリシス損失のコアを得るためには、Fe系の磁性粉末においては本来低保磁力の粉末を低圧で成形し、700℃以上、好ましくは900℃以上の高温において歪取り焼鈍を行うことが望まれる。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1等に記載の従来技術においては、800℃以上の高温で熱処理すると、渦電流の発生を抑制するために被覆した絶縁性物質が磁性粉末と反応したり、熱分解等を起こすことにより絶縁被膜が変質破壊し絶縁性が劣化するために、高温での熱処理を行うことができず、結晶粒径を大きくしたり、加工歪を完全に除去することが出来ないため、ヒステリシス損失を十分に低減させることができないという課題がある。
また従来の圧粉磁心は、絶縁被覆した磁性粉末に結合剤としてシリコン樹脂やアクリル樹脂を数重量%混合添加した後、1−2GPaの圧力を印加しプレス成形した後、400−600℃で歪取り焼鈍し圧粉磁心とするのが一般的であるが、樹脂バインダは400℃以上の熱処理により分解するため熱処理後の結合力が著しく低下するという問題点もある。以上のように圧粉磁心のコア鉄損低減にはヒステリシス損失と渦電流損失双方の低減が必要であり、そのために低保磁力な磁性粉末と高温熱処理に耐える絶縁被覆技術が要求されている。
また、特許文献2では、Feを主成分とする粉末に、シリコーン樹脂と金属酸化物、ガラス等からなる顔料とを含有する皮膜を形成した鉄基粉末を形成し、有機物が分解する温度で焼結することにより得られる圧粉磁心が開示されている。この効果として、焼鈍後においても高い絶縁性と、高い強度を示す点が記載されている。
特開2003―282316号 特開2003―303711号 魚住学司ほか, 粉体粉末冶金協会平成17年度秋季大会講演概要(2005), p136
しかしながら未だ必要十分な、低コア損失を実現する低ヒステリシス損失で高温熱処理に耐える高電気抵抗で高強度が得られる圧粉磁心は得られていないのが現状である。
本発明の目的は上記問題を解決するため、高温熱処理が可能で低ヒステリシス損失、かつ、高電気抵抗、高強度の軟磁性金属圧粉磁心およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、軟磁性金属粉末に絶縁性酸化膜を付着させ、かつ無機バインダを用いて高温で焼鈍することなどにより粉末表面に絶縁性被膜を形成することで上記目的が達成できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の軟磁性金属圧粉磁心の製造方法は、Feを主成分とする軟磁性粉末をアルコキシド溶液中に浸漬して粉末表面に絶縁性酸化膜を形成した後、無機バインダを混合し、プレス成形した後、600℃以上で熱処理することを特徴とする。
絶縁性酸化膜の皮膜厚さを10nm以上1μm以下で形成し、かつ、熱処理を900℃以上1100℃以下で行うことが好ましい。酸化膜の厚さがこの範囲内で、かつ、1000℃近傍の温度で熱処理を行った時のみ、圧環強度の向上効果が得られる。好ましい絶縁性酸化膜の膜厚は、0.1μm以上0.9μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以上0.8μm以下である。また、好ましい熱処理温度は950℃以上1050℃以下である。また、成形圧力は0.6GPa以上で行うことが好ましい。
また、軟磁性粉末重量に対して、重量%で無機バインダを0.3重量%以上2.0重量%以下で混合することが好ましい。さらに好ましい無機バインダの添加量の範囲は、0.4〜1.8重量%である。
無機バインダは、コロイダルシリカ、アモルファスシリカ、溶融シリカ、水ガラス、シリコンエマルジョンの1種または2種以上から選択されるものが好ましい。また、軟磁性粉末重量に対して、有機樹脂バインダを2重量%以下(0を含まず)、潤滑剤を0.1重量%以上0.5重量%以下で混合することが好ましい。
アルコキシド溶液は、濃度が10mol/L以上、pHが6.0から12.0の範囲であるものが好ましい。
この製造方法により、Feを主成分とする軟磁性粉末をプレス成形後熱処理を施した成形体において、圧環強度が30MPa以上で、電気抵抗率が10Ωm以上であるものが得られる。この軟磁性粉末表面の全体あるいは一部に絶縁性酸化膜が形成されている。絶縁性酸化膜の厚さは10nm以上1μm以下であるものが好ましい。Feを主成分とする軟磁性粉末として、例えば、Fe粉、Fe−Si系粉末、Fe−Si−Al系粉末、Fe−Ni系粉末、Fe−Si−B系粉末、Fe系ナノ結晶粉末などの金属粉末を用いることができる。
Fe−Si系粉末、Fe−Si−Al系粉末、Fe−Ni系粉末であれば、Fe量は85原子%以上が好ましく、90原子%以上がさらに好ましい。Fe−Si−B系粉末、Fe系ナノ結晶粉末であれば、Fe量は65原子%以上が好ましく、さらには70原子%以上、さらには75原子%以上が好ましい。
前記の製造方法により、Feを主成分とする軟磁性粉末をプレス成形後熱処理を施した成形体として、圧環強度が30MPa以上で、電気抵抗率が10Ωm以上である圧粉磁心を得ることができる。圧環強度はJIS Z 2507で定められた圧環強さ試験方法で測定した値である。
この圧粉磁心は表面の全体あるいは一部に絶縁性酸化被膜が形成されたものが好ましく、その被膜の厚さは10nm以上1μm以下であることが好ましい。また、圧粉磁心を周波数が50kHz以下の環境下で用いる場合、この絶縁性酸化被膜の膜圧とすることで、圧粉磁心の磁心損失を下げることができる。詳細は実施例で記載する。
本発明により製造した軟磁性金属圧粉磁心を用いることにより、圧粉磁心(磁性コア)の熱処理後の圧環強度を30MPaとし、電気抵抗率を10Ωm以上にすることが可能である。また、渦電流損失とヒステリシス損失の双方を大幅に低減することが可能である。
高温焼鈍を行うことによりコア成形時に軟磁性金属粉末に加わった歪みの除去が十分になされるとともに、結晶粒径が大きくなるために粉末内での磁壁移動が容易となりヒステリシス損失が大幅に低減される。また渦電流の発生を抑制する絶縁性被膜に耐熱性があるため高温焼鈍により変質破壊されて絶縁性が劣化することなく高い電気抵抗率を保ち、渦電流損失の増大を抑制する。
また、1000℃以下で絶縁性酸化膜と結合する無機Si系バインダを添加することにより、絶縁性酸化膜とが高温焼鈍中に反応し粉末間の結合を強化し、熱処理後の圧粉磁心の圧環強度が増大する。
以下に本発明の軟磁性圧粉磁心およびその製造方法を具体的に説明する。本発明は、磁性粉末の表面に絶縁性酸化膜を付着させ、無機バインダ等を混合し、成形したあと高温で熱処理をすることによって得られる高強度、高電気抵抗率の圧粉磁心とその製造方法である。
原料となる軟磁性粉末はFeを主成分とするもので、具体的にはFe、Fe−Si、Fe−Si−Al、Fe−Ni、Fe基ナノ結晶粉末である。その製造方法としてはガスアトマイズ法、水アトマイズ法、その他の方法などいずれの方法でも構わない。また、軟磁性粉末の形状にはよらず、球状、偏平状、異形状などいずれの形状においても有効である。軟磁性粉末の粒径に関わらず本発明の効果は得られるが、同組成であれば粒径が大きい方が一つの結晶粒を大きくして保磁力を減少させることができるためヒステリシス損失が小さくなり、全体としての圧粉磁心の損失をより小さくできる傾向がある。
本発明の製造方法におけるアルコキシド溶液とは、付着させたい酸化物の原料となる金属アルコキシドをIPA、エタノールなどのアルコールに溶解させたものである。金属アルコキシドとしては、Mを金属元素として、メトキシドM(OCH)n、エトキシドM(OC)n、プロポキシドM(O・n−、i−C)nのようなアルキル鎖長が短いものを用いる。金属元素MはMg、Al、Si、Ca、Ti、Sr、Ba、Li、Na、K、St、Ge、Bi、Cu、Y、Zr、Taから選ばれる少なくとも一種の元素である。金属アルコキシドは、1種を単独に用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定した酸化物を形成する元素としては、Si、Ti、Zr、Alが特に好ましい。具体的にはSiのアルコキシド溶液であるテトラエトキシシランやテトラメトキシシラン、Tiのアルコキシド溶液であるチタンアルコキシドが好ましい。
金属アルコキシド溶液にアルミナ(Al2 3 )、シリカ(SiO2 )、マグネシア(MgO)等のセラミックス粒子が入っていても良いが、これらの含有量が多いと圧粉磁心の磁気特性が悪化するため、適宜選択して使用する必要がある。
また、金属アルコキシド溶液に絶縁性粘性物質を添加しても良い。この絶縁性粘性物質は、セラミックス粒子と共に添加することでその沈殿を防ぎ、金属アルコキシド溶液中に均一分散させる。その結果、軟磁性粉末の絶縁性が高まるという効果が得られる。絶縁性粘性物質には、合成粘性物質や、半合成粘性物質、天然粘性物質など、いずれも適宜用いることができる。合成粘性物質は、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系などいずれも使用可能である。半合成粘性物質には、例えばセルロース誘電体系粘性物質であるメチルセルロースなどが使用できる。天然粘性物質には植物粘質物と動物粘質物のどちらでも使用可能であり、アラビアゴムやゼラチンなどが使用できる。
これらのアルコキシド溶液と前記原料軟磁性粉末を混合する。混合の際、アルコキシド溶液の濃度が極端に小さいと金属粉末表面に付着する絶縁性酸化膜が十分ではなくなるため本発明の効果が得られない。したがって、アルコキシド溶液の濃度は10mol/L以上必要である。濃度に上限はないが、あまり高いと原料軟磁性粉末に付着せずに廃棄される分が増えるため、製造コスト上問題がある。より均一で緻密な酸化物を付着させるには、現実的には5mol/L程度以下、さらに膜厚が増大し過ぎないためには2mol/L程度以下であることが望ましい。
また、前記アルコキシド溶液と原料軟磁性粉末とを混合する時間は、短すぎると反応がほとんど進まず絶縁性酸化膜を付着させることが出来ないため、30分以上が好ましい。処理時間に上限はないが、反応が平衡に達するとそれ以上の付着はあまり望めないため効果がない。したがって、現実的には30分から5時間の範囲が好ましい。
なお、上述するアルコキシド溶液はpHにより反応の形態と速度が変化する。本目的にはpH6からpH12、好ましくはpH8.3からpH11であることがより望ましい。pH6以下では、原料磁性粉末より溶液中にFeの溶出が起こるため好ましくない。またpHが11以上では、付着量が過剰になり膜厚が増大し過ぎて特性に悪影響を与えるため好ましくない。
前記絶縁性酸化膜は必ずしも磁性粉末表面全体を覆っている必要はない。原料軟磁性粉末の形状、組成、表面状態やその製造の条件等により部分的に絶縁性酸化膜がなくとも絶縁、高強度の効果は十分に得られる。
また、絶縁性酸化膜の層が1μmを超える厚さになると、圧粉磁心のうちに金属粉末成分の占める割合が低くなり、高磁束密度が得られない。したがって、絶縁性酸化膜の厚みは1μm以下が好ましい。逆に薄すぎると電気伝導の抑制効果がなくなり、渦電流損失の増大を招いてしまうため、10nm以上の厚さが必要である。また、前記したように、特に0.1μm以上0.9μm以下の厚さで、かつ1000℃近傍の温度で熱処理することで、圧環強度が向上する。詳細は実施例にて述べる。
軟磁性粉末をアルコキシド溶液から取り出した後、粉末を乾燥させる。成形後に熱処理をする際、金属粉末に残留した溶媒や水などの蒸発による密度低下等を防ぐ効果がある。乾燥工程は一般的なもので、大気中、真空中、不活性雰囲気中いずれでもよく、溶媒や水が蒸発する温度(50℃〜300℃)で30分から10時間乾燥させれば良い。
上記工程により作製した軟磁性粉末に、無機バインダ、有機樹脂バインダ、潤滑剤を混合する。これらはそれぞれ、熱処理後の圧粉磁心の強度、成形時の圧粉磁心の強度、成形性改善を目的として添加されるものである。
無機バインダの添加量は0.3〜2.0%の範囲が好ましい。隣接した磁性粉末表面の絶縁性酸化膜と無機バインダ共存下において高温熱処理をすることにより圧粉磁心の圧環強度が向上する。いずれも一方のみでは十分な効果が得られない。無機バインダを添加しない場合、磁性粉末表面の絶縁性酸化膜間の結合形成が不十分で、また、一方無機バインダのみでは粉末間絶縁を得ることが出来ない。絶縁処理として、カオリン等の絶縁フィラーを混合する方法もあるが、この場合絶縁フィラーは磁性粉末表面に付着しているに過ぎず結合を形成していないため、無機バインダを添加しても磁性粉末間の結合強化には繋がらない。したがって、本発明の製造方法として示したように、磁性粉末表面に結合した絶縁性酸化膜と無機バインダの両者が高強度の圧粉磁心を得るためには必要であると考えられる。なお、添加量が多すぎると圧粉磁心の密度が減少し高い飽和磁束密度が得られなくなってしまうと共に、圧環強度の向上効果も得られない。したがって添加量は2%を超えないのが望ましい。無機バインダとして、無機Si系バインダが好ましい。
有機樹脂バインダとしては、アクリル系樹脂を水に分散させたアクリルエマルジョンが適している。成形時の圧粉磁心の強度を保つために必要である。熱処理時に昇華、熱分解により圧粉磁心より抜ける。添加量が多いとアモルファスシリカと同様に密度が低下し、また、熱処理時に圧粉磁心内にバインダが残り、圧環強度や磁気特性に悪影響を与えることがある。したがって添加量は2%以下が望ましい。
成形性を向上させるために加える潤滑剤は高級脂肪酸潤滑剤で、ステアリン酸ならびに、そのリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の塩である。価格、特性の面からステアリン酸亜鉛が好ましい。添加量は0.1−0.5%で、0.1%より少ないと金型からの抜出が困難になり、0.5%を超えると成形時の強度が低くなり、また熱処理時に十分に抜けきらず、圧環強度や磁気特性に悪影響を与えることがある。
上記工程により製造した軟磁性粉末を成形後、600℃以上で熱処理を行う。これにより、本発明の軟磁性金属粉末製造のための熱処理工程とコアの歪取り焼鈍工程を同一にして、高温で歪取り焼鈍を行うことが可能である。圧粉磁心の強度を大きくするためには800℃以上、さらに、低ヒステリシス損失の圧粉磁心を得るためには900℃以上の高温熱処理がより好ましい。熱処理の時間は30分から2時間程度でよい。熱処理雰囲気は非酸化性雰囲気が好ましい。
(実施例1−9)
Fe−6.5%Siからなる組成で、平均粒径80μmの軟磁性原料粉末500gを、テトラアルコキシシラン(関東化学)/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて、3時間攪拌した。その後、軟磁性粉末とテトラアルコキシシラン/IPA溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。得られた軟磁性粉末に、コロイダルシリカ(日産化学工業)0.5wt%、アクリルエマルジョン(昭和高分子)1.5wt%を混合し攪拌乾燥させ、さらにステアリン酸亜鉛0.3wt%を混合した。こうして得られた軟磁性粉末を室温下、1200MPaで圧縮成形し、外径14mm、内径8mm、高さ4.5mmのリング試料を作製し、これを窒素ガス中、800℃で2時間の熱処理を行った。
(比較例1−4)
実施例1と同じ原料粉末に、コロイダルシリカ1.2wt%、アクリルエマルジョン1.5wt%、ステアリン酸亜鉛0.3wt%を同様に混合し、成形、熱処理を行った。
(比較例5−8)
実施例1と同じ原料粉末に絶縁物としてカオリン0.5wt%を加え、コロイダルシリカ1.2wt%、アクリルエマルジョン1.5wt%、ステアリン酸亜鉛0.3wt%を同様に混合し、成形、熱処理を行った。
(比較例9−13)
実施例1と同じ原料粉末に実施例1と同様のアルコキシド溶液による処理を行った後、アクリルエマルジョン1.5wt%、ステアリン酸亜鉛0.3wt%を同様に混合し、成形、熱処理を行った。
上記のように得られた圧粉磁心の圧環強度と電気抵抗率を測定した。圧環強度は島津製作所製オートグラフ(AG−50kNG)により測定した圧縮力から算出した。電気抵抗率はリング試料のプレス面に銀ペーストを塗り、岩崎通信機社製デジタルマルチメータ(VOAC7521)を用いて2端子法にて測定した。各粉末とその圧環強度、電気抵抗率の値を表1に記す。
Figure 0005263653
実施例1、比較例1、比較例9に示されるように、圧環強度、電気抵抗率共に高い値を示すためには、アルコキシド溶液による被覆処理、無機シリカ系バインダがそれぞれ単独では不十分であり、その両方が必要であることがわかる。
また、比較例5に示したように、アルコキシド溶液による被覆処理を行う代わりに絶縁物としてカオリンを混合しても比較的高い電気抵抗率が得られるが、圧環強度が非常に低い値となる。アルコキシド溶液により生成したシリカは金属粉末表面に化学的に結合しているが、カオリンは混合しただけであるため金属粉末表面に付着しているに過ぎず、したがって圧環強度が低くなると考えられる。
比較例9−13に示したように、無機系バインダの添加量は少なすぎても多すぎても共に圧環強度は低くなる。バインダ添加量が少ないと金属粉末間を結びつける結合箇所が不足し、添加量が多いと成形時の圧縮性が悪くなるためと考えられる。
表2に被膜の厚さと圧環強度、電気抵抗率の関係を示した。アルコキシド/IPA溶液のアルコキシド濃度を変えることにより、被膜の厚さを変えた。被膜がより厚い方が絶縁性を確保できるため電気抵抗率が大きくなり、渦電流損失を抑えることができるが、膜厚が1μmを超えると圧粉磁心の密度低下が著しくなるため高磁束密度が得られず、圧環強度も低下する。
Figure 0005263653
絶縁性酸化膜の厚さと、成形後の熱処理温度による圧環強度への影響を調べた。絶縁性酸化膜の厚さを変えた以外は、実施例1と同様にして得られたリング試料を窒素ガス中、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃の条件で2時間の熱処理を行った。結果を図1に示す。
熱処理温度を1000℃としたものは、絶縁性酸化膜の厚さが0.1〜1μmの範囲内で圧環強度が向上している。熱処理温度が900℃、1100℃のものは若干ながら同様の傾向があるが、熱処理温度が800℃、1200℃のものでは絶縁性酸膜の膜厚が厚くなるにつれ圧環強度が低下している。
これは、アモルファス状態のシリカの溶融温度が800℃付近であるため、それより高温の1000℃近傍にすることでシリカ間の融着が起こり強度が大きくなるためと推察される。さらに高い1200℃近傍になるとシリカの結晶化が始まり微細クラックが入りやすくなるため強度が低下するものと察される。
また、圧粉体のコア強度は主に次の3つの強度で決まると考えられる。(1)金属粉末とシリカ被膜間の強度、(2)シリカ被膜の強度、(3)被覆された粉末間の強度。(3)の強度は基本的に熱処理で決まるので膜厚に対して影響を受けないが、膜厚が薄いと成形プレスにより上記(1)の強度が低下し、厚いと被膜自体にクラックが入りやすいため上記(2)の強度が低下するものと思われる。そのため、上記の特定の製造条件でのみ両者のバランスがとれ、圧環強度が向上することになったと推測される。
絶縁性酸化膜の厚さと適用する周波数が磁心損失に与える影響を調べた。表2に、磁場Bm=50mT、周波数f=50kHzの環境下で測定した圧粉磁心の磁心損失と、磁場Bm=30mT、周波数f=1MHzの環境下で測定した圧粉磁心の磁心損失を示す。圧粉磁心は、絶縁性酸化膜の厚さを0.03μm〜1.2μmの範囲で変え、それ以外は実施例1と同様にして製造したものである。
Figure 0005263653
圧粉磁心を低い周波数の環境下で使用した場合、絶縁性酸化膜の膜圧が0.03μmのものは絶縁性が損なわれて磁心損失が増大している。また、膜圧が1.2μmのものは磁心内の磁性体体積比率が下がってヒステリシス損失が損なわれ、同様に磁心損失が増大している。対して、周波数1MHzの環境下で使用した場合には、膜圧が薄くなるほど磁心損失が増大する傾向がある。
50kHz以下の低周波環境下でこの圧粉磁心を用いる場合には、前記のように絶縁性酸化膜の膜圧を制御したことによって、機械的強度が向上する効果以外に、磁心損失を低減させる効果も得られる。
熱処理温度、絶縁性酸化膜の厚さと圧環強度との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. Feを主成分とする軟磁性粉末をテトラエトキシシラン溶液中に浸漬して粉末表面の全体あるいは一部にシリカ膜を皮膜厚さ10nm以上1μm以下で形成した後、コロイダルシリカ、アモルファスシリカ、シリコンエマルジョンの1種または2種以上から選択される無機バインダを0.3重量%以上2.0重量%以下で混合し、プレス成形した後、600℃以上で熱処理することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記熱処理を900℃以上1100℃以下で行うことを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記の軟磁性粉末重量に対して、有機樹脂バインダを2重量%以下(0を含まず)、潤滑剤を0.1重量%以上0.5重量%以下で混合することを特徴とする請求項1または2に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. Feを主成分とする軟磁性粉末をプレス成形後熱処理を施した成形体において、前記軟磁性粉末表面の全体あるいは一部にシリカ膜が皮膜厚さ10nm以上1μm以下で形成されており、コロイダルシリカ、アモルファスシリカ、シリコンエマルジョンの1種または2種以上から選択される無機バインダを0.3重量%以上2.0重量%以下で混合されており、圧環強度が30MPa以上で、電気抵抗率が10 6 Ωm以上であることを特徴とする圧粉磁心。
  5. 前記圧粉磁心は、周波数が50kHz以下の環境下で用いられるものであることを特徴とする請求項4に記載の圧粉磁心。
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