JP4908546B2 - 圧粉磁心及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、軟磁性粉末からなる圧粉磁心およびその製造方法に関するものである。
OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源などの制御用電源には電子機器としてチョークコイルが用いられており、そのコアとして、フェライト磁心や圧粉磁心が使用されている。これらの中で、フェライト磁心は飽和磁束密度が小さいと言う欠点を有している。これに対して、金属粉末を成形して作製される圧粉磁心は、軟磁性フェライトに比べて高い飽和磁束密度を持つため、直流重畳特性に優れている。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で、大きな磁束密度を得ることが出来る磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。圧粉磁心を交流磁場で使用した場合、鉄損(Pc)と呼ばれるエネルギー損失が生じる。この鉄損は、下記[式1]の関係で表すことができる。この中で鉄損は、ヒステリシス損失(Ph)、渦電流損失(Pe)の和で表される。また、ヒステリシス損失(Ph)は動作周波数に比例し、渦電流損失(Pe)は動作周波数の2乗に比例する。そのため、ヒステリシス損失(Ph)は低周波側領域で支配的になり、渦電流損失(Pe)は高周波領域で支配的になる。圧粉磁心は、この鉄損の発生を小さくする磁気特性が求められている。
[数1]
Pc=Ph+Pe 、Ph=Kh×f、Pe=Ke×f2 … 式1
Kh:ヒステリシス損係数、Ke:渦電流損係数、f:周波数
圧粉磁心のヒステリシス損失(Ph)を低減するためには、磁壁の移動を容易にすればよく、そのためには軟磁性粉末粒子の保磁力を低下させればよい。なお、この保磁力を低下させることで、初透磁率の向上とヒステリシス損失(Ph)の低減が図れる。渦電流損失(Pe)は[式2]で示されるように、コアの比抵抗に反比例する。
[数2]
Ke=k1Bm2t2/ρ … 式2
k1:係数、Bm:磁束密度、t:粒子径(板材の場合厚さ)、ρ:比抵抗
このような、高密度成形された圧粉磁心の製造方法としては、リン酸塩処理を施した鉄粉を基材とする方法(例えば、特許文献1参照)や、鉄を主成分とする磁性粉末に絶縁被膜としてリン酸塩系の第1絶縁層とその上にシリコーン樹脂からなる第2絶縁層を設ける方法(例えば、特許文献2参照)や、軟磁性粉末の表面を樹脂を含有しない無機物の絶縁層で表面を絶縁被覆処理する方法(例えば、特許文献3参照)や、表面の前面または一部に合金成分の酸化物を備えるアトマイズ合金粉末に対して、絶縁層を被膜し、さらにその上にシリコーン樹脂層を形成する方法(例えば、特許文献4〜6参照)や、磁性粉末の粒子表面に2種類以上の金属酸化物粉末により絶縁被膜を形成する方法(例えば、特許文献7参照)が知られている。
特開2000−504785号公報 特開2006−5173号公報 特開2003−332116号公報 特開2006−128521号公報 特開2006−233295号公報 特開2007−194273号公報 特開2007−214366号公報
しかしながら、高密度成形された圧粉磁心は、高い磁束密度を有するが、成形時に多くの歪みが軟磁性粉末の粒子内に発生する。この歪みは圧粉磁心の保磁力を高めて、ヒステリシス損失(Ph)を増加させる。そのため、歪み除去を目的とした焼鈍作業を行う必要があるが、鉄を主成分とする軟磁性粉末では、500℃以上の高い焼鈍温度が必要となる。ところが、焼鈍温度を高くすると、粉末粒子間の絶縁破壊が発生しコアの比抵抗が大きくなり、渦電流損失(Pe)が増加して十分な焼鈍効果が得られない。
例えば、特許文献1に記載の発明では、リン酸塩系の絶縁処理において、焼鈍温度を500℃以上と高くすると、絶縁破壊をおこしてしまうため、渦電流損失(Pe)が増加して十分な効果が得られない問題点があった。
また、特許文献2の発明では、耐熱温度を500℃以上としているものの、粉末間の絶縁を評価するのに比抵抗で評価している。耐熱温度が500℃以上とは、圧粉磁心に500℃で30分間の焼鈍を施した後に、比抵抗が100μΩm以上であること。耐熱温度が600℃以上とは、圧粉磁心に600℃で30分間の焼鈍を施した後に比抵抗が10μΩm以上であることとしている。600℃で計算上10倍大きな渦電流損となっている。文献2では、400Hz,800Hzのような低い周波数では大きな問題とならないが、本特許で検討しているような20kHzという高い周波数では、600℃での比抵抗が10μΩm以上とは絶縁破壊をおこしているという評価となる。
特許文献3の発明では、絶縁層と絶縁粉末を指定しており、絶縁粉末の平均粒径で0.1〜10μmとなっている。この効果として成形後の熱処理温度を500〜900℃にしても絶縁層を破壊することなく、軟磁性粉末に残留する圧縮成形歪を開放することができるとしている。
この結果を詳細に調べると、表1のように渦電流損を15kHz,50mTで評価しており400℃〜900℃まで変化の無いデータとなっている。一方、比抵抗は特許文献3の発明である混合法では500℃で941μΩm,600℃で640μΩm,700℃で310μΩm,800で150μΩm,900℃で100μΩmと500℃と比較し600℃で68%,700℃で,800で33%,900で11%と激減している。渦電流損失(Pe)は[式2]により磁束密度の二乗に比例している。すなわち、特許文献3で述べているような50mTの場合、あまり影響がでてこないが150mTのような高磁束密度の場合には、鉄損に占める割合が大きくなり、この比抵抗の減少が大きな影響を及ぼす。
Figure 0004908546
さらに、特許文献4〜6の発明の、表面の前面または一部に合金成分の酸化物を備えるアトマイズ合金粉末に対して、絶縁層を被膜し、さらにその上にシリコーン樹脂層を形成する方法では、十分に鉄損が低下しなかった。また、各文献での鉄損は2kHz,0.5Tという低い周波数で議論されており、20kHzという高い周波数では式1)から明らかなように渦電流損失(Pe)が周波数の2乗に比例するため2kHzでの100倍となり僅かの絶縁破壊でも大きく渦電流損失(Pe)に影響する。
特許文献7の発明では、粉末の混合のみでは粉末単独の焼鈍により粉末が融着する。また、真空中での焼鈍ではコストアップとなる。さらに特許文献7中では、鉄損が低減されるとしているが、詳細な処理条件および評価時の測定条件等が明示されていない。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軟磁性粉末の表面に対して絶縁処理をおこなうことで、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度且つ渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、さらにヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することである。
上記目的をふまえ、本発明の圧粉磁心は、鉄を主成分とする軟磁性粉末の表面を、絶縁層として無機絶縁粉末が均一に分散された無機絶縁被膜により覆い、絶縁層で覆った軟磁性粉末を熱処理し、熱処理を施した軟磁性粉末を結着性絶縁樹脂で被覆し、その後、結着性絶縁樹脂を混合して得られた軟磁性粉末と潤滑性樹脂を混合し、その混合物を加圧成形して成形体を作製し、その成形体を焼鈍してなるものであり、前記熱処理を、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中で行うことにより作製され、前記結着性絶縁樹脂は、前記軟磁性粉末にシランカップリング剤を混合することで形成される1層目の絶縁層と、当該1層目の絶縁層を形成した前記軟磁性粉末にリコーンレジンを混合することで形成される2層目の絶縁層とから構成されたことを特徴とする。
なお、前記成形体を600℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍したり、平均粒経が7〜50nmの無機絶縁粉末を使用したり、無機絶縁粉末や無機絶縁被膜の融点が1500℃以上であったり、無機絶縁被膜がアルコキシドから作成されたりする圧粉磁心も本発明の一形態である。
以上のような本発明によれば、鉄を主成分とする軟磁性粉末の表面が、金属酸化物絶縁被膜とそれに均一に分散された無機絶縁粉末で覆われることにより、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末による絶縁層ができる。この絶縁層により、500℃以上の高い焼鈍温度で焼鈍しても、粉末粒子間の絶縁破壊が発生せず、渦電流損失(Pe)が増加を防止することができる。これにより、高い絶縁性能を有した高耐熱絶縁層を形成し、高周波及び高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定であり、且つヒステリシス損失(Ph)を低減した低損失な圧粉磁心とその製造方法を提供することができる。
本発明の圧粉磁心の製造方法を示すフローチャート。 本発明の実施例の第1の特性比較におけるMgO被膜の添加量と密度の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第1の特性比較におけるMgO被膜の添加量と鉄損(コアロス)の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第2の特性比較におけるAl被膜の添加量と密度の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第2の特性比較におけるAl被膜の添加量と鉄損(コアロス)の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度と鉄損(コアロス)の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度とヒステリシス損失(Ph)の関係を示したグラフ。 本発明の実施例の第4の特性比較における焼鈍温度と渦電流損失(Pe)の関係を示したグラフ。
[1.製造工程]
本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、図1に示す次のような各工程を有する。
(1)軟磁性粉末に対して無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜を形成する第1の絶縁工程(ステップ1)。
(2)第1の絶縁工程で絶縁処理を施した粉末に対して熱処理を施す熱処理工程(ステップ2)。
(3)熱処理工程を経た粉末を結着性絶縁樹脂で被覆する第2の絶縁工程(ステップ3)。
(4)第2の絶縁工程で絶縁処理を施した粉末に対して、潤滑剤を混合する混合工程(ステップ4)。
(5)混合工程を経た混合物を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程(ステップ5)。
(6)成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程(ステップ6)。
以下、各工程を具体的に説明する。
(1)第1の絶縁工程
第1の絶縁工程では、鉄を主成分とする軟磁性粉末の表面を覆う絶縁層を形成するために、鉄を主成分とする軟磁性粉末と無機絶縁粉末とを混合し、その混合物の表面に無機絶縁被膜を形成する。
まず、鉄を主成分とする軟磁性粉末に無機絶縁粉末を添加し、それをポットミル容器を回転させ均一に混合する。この混合方法においては、粉末に内部歪が入らないように混合することが求められる。この時、軟磁性粉末の平均粒径が30〜100μmの範囲のものが好ましい。この範囲より平均粒径が大きいと渦電流損失(Pe)が増大し、一方、この範囲より平均粒径が小さいと、密度低下によるヒステリシス損失(Ph)が増加する。軟磁性粉末は、水アトマイズ製法、ガスアトマイズ製法、水ガスアトマイズ製法などで作製した粉末を利用することができる。
無機絶縁粉末の比表面積は、34〜300m/gとする。これよりも大きいと軟磁性粉末同士に隙間が生じて、密度が低下して透磁率、コアロス及び直流重畳特性が劣化する。また、無機絶縁粉末の粒子の平均粒経は、7〜50nmとする。これよりも小さい粒径の無機絶縁粉末は、製造が困難であり、これよりも大きいと軟磁性粉末同士に隙間が生じて、密度が低下して透磁率、鉄損(コアロス)及び直流重畳特性が劣化する。また、無機絶縁粉末の添加量は、0.25〜1.0wt%が好ましい。0.25wt%未満であると、後述する熱処理工程において、凝固が起こり粉末同士が融着してしまう。融点が高い無機絶縁粉末を使用し凝固が起こらなかった場合でも、絶縁性能が十分発揮できず、高い焼鈍温度では渦電流損失(Pe)が著しく増加する。また、1.0wt%を超えると絶縁性能は発揮されるが、成形密度が7.24g/cm未満となり渦電流損失(Pe)以外の磁気特性が低下してしまう。無機絶縁粉末としては、融点が1500℃以上であるMgO粉末(融点2800℃)、Al粉末(融点2046℃)、TiO粉末(融点1640℃)、CaO粉末(融点2572℃)の少なくとも1種以上であることが望ましい。
次に、無機絶縁粉末で均一に覆われた軟磁性粉末の表面に、無機絶縁被膜を形成することにより絶縁層を形成する。無機絶縁被膜は、アルコキシド溶液を用いたゾル−ゲル法により作製することができる。この方法では、無機絶縁粉末で覆われた軟磁性粉末の表面に、金属のアルコキシド溶液を均一に塗布し、その後、空気中の水分と反応(加水分解)させ、それを乾燥させることにより無機絶縁被膜を形成する。この時、無機絶縁被膜は、前記軟磁性粉末の0.008〜0.400wt%が好ましい。添加量が0.008wt%未満であると、効果が十分に発揮できず、渦電流損失(Pe)が増加する。また、添加量が0.400wt%を超えても、絶縁性能は発揮され成形密度は低下することはないが、添加量を増やしても絶縁性能の向上は見られない。無機絶縁被膜としては、融点が1500℃超であるMgO(融点2800℃)、Al(融点2046℃)、TiO(融点1640℃)、CaO(融点2572℃)の少なくとも1種以上であることが望ましい。
また、表面を無機絶縁粉末覆われた軟磁性粉末に、金属のアルコキシド溶液を塗布することにより絶縁層を作成したが、軟磁性粉末に、無機絶縁粉末を混合したアルコキシド溶液とを塗布することにより、絶縁層を形成することも可能である。無機絶縁粉末が混合したアルコキシド溶液を塗布することにより、製造工程を短くすることができる。
(2)熱処理工程
熱処理工程では、前記第1の絶縁工程を経た粉末を1000℃以上且つ軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の還元雰囲気中で熱処理を行う。
1000℃以上の温度で熱処理を行うことで、軟磁性粉末内に存在する歪みの除去や、結晶粒界などの欠陥の除去や、軟磁性粉末粒子中の結晶粒子の成長(拡大)をさせることができる。これにより、磁壁移動が容易となり、保磁力を小さくし、ヒステリシス損失(Ph)を低減すると共に、成形後の焼鈍温度を高くすることもできる。この熱処理温度が1000℃未満であると、焼鈍温度を高くしても圧粉磁心のヒステリシス損失(Ph)があまり低下せず鉄損の低減には寄与しない。このとき、第1の絶縁層は、粉末同士が融着することを防止するが、軟磁性粉末が焼結してしまう温度で熱処理を行うと、軟磁性粉末が焼結し固まってしまい、圧粉磁心の材料として使用できなくなるという問題点がある。
(3)第2の絶縁工程
前記熱処理工程で熱処理を施した粉末の表面に、絶縁層を形成する第2の絶縁工程では、2種類の結着性絶縁樹脂を2度に分けて被覆することにより2層構造の絶縁層を形成する。まず、2層構造の1層目の絶縁層として、前記熱処理工程を経た粉末とシランカップリング剤とを混合し、加熱乾燥を行うことにより絶縁層を形成する。その外側に2層目の絶縁層として、1層目の絶縁層を形成した粉末とシリコーンレジンを混合し、加熱乾燥を行うことにより絶縁層を形成する。これを乾燥後、目開き300μmの篩いで解砕をおこない造粒粉を作成する。
シランカップリング剤による第1層目の絶縁層では、前記無機絶縁粉末を均一に分散させると共に、無機絶縁粉末と軟磁性粉末との密着力を高めることができる。この時のシランカップリング剤の添加量は、0.1〜0.5wt%が最適である。これより少ないと、無機絶縁粉末と軟磁性粉末とを十分に密着させることができなくなり、効果が十分に発揮されない。また、適量より多いと、成形密度の低下を引き起こすため、焼鈍後の磁気特性を劣化させる問題が発生する。
シリコーンレジンによる第2層目の絶縁層では、絶縁性能を向上させると共に、成形時に金型と粉末との接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することができる。また、シリコーンレジンの添加量は、0.1〜0.75wt%が最適である。これより少ないと、絶縁性能の低下、成形時コア壁面への縦筋が発生する。これより多いと、成形密度の低下を引き起こし焼鈍後の磁気特性を劣化させる問題が発生する。
(4)混合工程
前記第2の絶縁工程を経た造粒粉に潤滑剤を混合し、成形粉を作成する混合工程では、絶縁層を形成した粉末と、前記軟磁性粉末に対して0.2〜0.8wt%の潤滑剤とを混合する。ここで潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸塩、ステアリン酸石鹸、エチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。これらを混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上することができ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。
混合する潤滑樹脂の量は、前記軟磁性粉末に対して0.1〜0.8wt%とする。これよりも少なければ十分な効果を得ることができず、成形時コア壁面への縦筋の発生、抜き圧が高く最悪上パンチが抜けなくなる。また、これより多いと、密度低下による最大磁束密度の低下、ヒステリシス損失(Ph)の増加による磁気特性が低下する問題が発生する。
(5)成形工程
成形工程では、前記混合工程で作成した成形粉を、金型に投入しダイ・フローティング法による1軸成形を行うことにより成形体を形成する。この時、結着性絶縁樹脂は、成形時のバインダーとして作用する。成形時の圧力は、本発明において1500MPa前後が好ましい。
(6)焼鈍工程
焼鈍工程では、前記成形体に対して、NガスやN+Hガスなどの非酸化性雰囲気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破壊される温度以下で、焼鈍処理を行うことで圧粉磁心が作製される。600℃以上で焼鈍処理を行うのは、成形時に軟磁性粉末の粒子内に発生する歪みを除去するためである。鉄を主成分とする軟磁性粉末では、この歪みを除去するには、高い焼鈍温度が必要であり、600℃で焼鈍することにより、効果的に歪みを除去することができる。また、絶縁膜が破壊される温度以下で焼鈍処理を行うのは、成形工程での歪みを開放すると共に、焼鈍処理時の熱により軟磁性粉末の周囲に被覆した絶縁膜が破れることを防止するためである。すなわち、焼鈍温度を上げ過ぎると、この軟磁性粉末に被覆した絶縁膜が破れ、絶縁性能の劣化から渦電流損失(Pe)が大きく増加してしまう。それにより、磁気特性が低下するという問題が発生する。
熱処理が行われると、昇温時の温度が350℃程度になるとSi基に直結しているメチル基が熱分解する。その後、シリカ(SiO)層として、軟磁性粉末表面に残り、これが強固なバインダーかつ絶縁膜となる。圧粉磁心の熱処理を行うことで、緻密で強固なシリカ層となるため、高温で熱処理をおこなっても絶縁性が劣化しないで、酸化などによるヒステリシス損失(Ph)の増加が起きない。また、熱処理を行うことにより、熱分解してメチル基が炭素として残ることがないので、機械的強度が改善出来る。
[1.測定項目]
測定項目として、透磁率と最大磁束密度と直流重畳特性を次のような手法により測定する。透磁率は、作製された圧粉磁心に1次巻線(20ターン)を施し、インピーダンスアナライザー(アジレントテクノロジー:4294A)を使用することで、20kHz、0.5Vにおけるインダクタンスから算出した。
鉄損(コアロス)は、圧粉磁心に1次巻線(20ターン)及び2次巻線(3ターン)を施し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて、周波数20kHz、最大磁束密度Bm=0.15Tの条件下で鉄損(Pc)を測定した。そして、鉄損からヒステリシス損失(Ph)と渦電流損失(Pe)を算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を式1で最小2乗法により、ヒステリシス損係数(Kh)、渦電流損係数(Ke)を算出することで行った。
[2.第1の特性比較(無機絶縁被膜の有無の比較)]
第1の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に添加する無機絶縁被膜の有無の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、下記の処理を行うことにより作製した。
項目Aでは比較例1として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.3wt%、ポットミルで12時間混合した。その後、1000℃で熱処理を行った。
項目Bでは実施例1〜2として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.3wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.24〜0.4wt%形成した。その後、1000℃で熱処理を行った。
項目Cでは比較例2として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.5wt%、ポットミルで12時間混合した。その後、1100℃で熱処理を行った。
項目Dでは実施例3〜7として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.5wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.008〜0.400wt%形成した。その後、1100℃で熱処理を行った。
これらの項目A〜Dの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.5wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表2は、この項目A〜Dについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類、比表面積及び添加量、無機絶縁被膜の添加量及び熱処理工程時の熱処理温度を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
Figure 0004908546
表2から判るように、軟磁性粉末と0.3wt%の無機絶縁粉末とを混合した比較例1及び実施例1,2を比較すると、無機絶縁粉末のみを添加した比較例1より、無機絶縁粉末を添加し無機絶縁被膜を形成した実施例1,2の方が、渦電流損失(Pe)が低下している。これにより、全体での鉄損(コアロス)も低下していることが判る。同様に、軟磁性粉末と0.5wt%の無機絶縁粉末とを混合した比較例2及び実施例3〜7を比較でも、無機絶縁粉末のみを添加した比較例2より、無機絶縁粉末を添加し無機絶縁被膜を形成した実施例3〜7の方が、渦電流損失(Pe)が低下している。これにより、全体での鉄損(コアロス)も低下していることが判る。
また、無機絶縁被膜の添加量と密度の関係を示した図2からは、密度は、無機絶縁被膜の添加量が変化しても、大きな影響を受けないことがわかる。また、無機絶縁被膜の添加量と鉄損(コアロス)の関係を示した図3からは、ヒステリシス損失(Ph)及び鉄損(コアロス)は、無機絶縁被膜を形成することで減少するが、無機絶縁被膜の量を増やしても、効果は一定であることが判る。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜0.008〜0.400wt%形成することにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[3.第2の特性比較(無機絶縁粉末の添加量の比較)]
第2の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対する無機絶縁粉末の添加量の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、下記の処理を行うことにより作製した。
項目Eでは8〜13及び比較例3として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として比表面積が100m/gのAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.25〜1.50wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.24wt%形成した。その後、1100℃で熱処理を行った。
項目Eの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.5wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表3は、項目Eについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した無機絶縁粉末の種類、比表面積及び添加量、無機絶縁被膜の添加量及び熱処理工程時の熱処理温度を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
Figure 0004908546
表3から判るように、無機絶縁粉末の添加量を増やしていくに従って、密度が低下していくことが判る。また、鉄損(コアロス)は、密度が低下するに従って、ヒステリシス損失(Ph)が増加する。また、密度低下は、直流重畳特性の劣化の原因となるので、無機絶縁粉末の添加量は、1.0wt%以下が望ましい。
また、無機絶縁粉末の添加量と密度の関係を示した図4からは、密度は、無機絶縁粉末の添加量が多くなると低下することが判る。また、無機絶縁粉末の添加量と鉄損(コアロス)の関係を示した図5からは、ヒステリシス損失(Ph)及び鉄損(コアロス)は、無機絶縁粉末の添加量を増やすことにより増加することが判る。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉に1.0wt%以下の無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜を形成することにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[4.第3の特性比較(無機絶縁粉末の添加量の比較)]
第3の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対する無機絶縁粉末の種類の比較を行った。使用したAl粉末の粒子径は13nm、MgO粉末の粒子径は50nmである。
凝固の具合を評価する試料として、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、Al粉末、MgO粉末を添加した後、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を形成した。これらの試料を、1000℃〜1100℃の水素25%(残り75%は、窒素)の還元雰囲気で熱処理を行って凝固の度合いを評価した。
表4〜6は、熱処理温度が1000〜1100℃の温度の場合に、Al粉末の添加量と、MgO被膜の添加量を変化させた場合の凝固の度合を表した表である。表の中の◎は焼結せずそのままで使用可能、○は軽くほぐすだけで使用可能、△は、粉砕が必要、×は粉砕が不可能を示している。
Figure 0004908546
Figure 0004908546
Figure 0004908546
表4〜6からは、Al粉末と、MgO粉末を比較するとAl粉末の方が、少ない添加量でも凝固しにくいことが判る。表4からは、1000℃の温度で熱処理をする場合、無機絶縁被膜を形成するとAl粉末の添加量が0.25〜0.5wt%では、粉砕作業を必要しないことがわかる。表5,6からは、1100℃の温度で熱処理をする場合、無機絶縁被膜を形成するとAl粉末またはMgO粉末の添加量が0.5wt%以上では、粉砕作業を必要しないことがわかる。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末を添加し、その表面に無機絶縁被膜を形成すると、熱処理温度が高い場合においても、粉末同士が融着を防止することができる。このときの無機絶縁粉末の添加量は、1000℃の温度で熱処理をする場合、無機絶縁粉末の添加量は0.25〜0.5wt%が好ましい。また、1100℃の温度で熱処理をする場合、無機絶縁粉末の添加量が0.5wt%以上が好適である。これにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[5.第4の特性比較(焼鈍温度の比較)]
第4の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対する無機絶縁粉末の添加量の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、下記の処理を行うことにより作製した。
項目Fでは比較例4〜7として、純鉄の水アトマイズ粉にリン酸塩被膜処理を施した後、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.2wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。
項目G〜Jでは実施例14〜29として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末としてAlを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.5wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.24wt%形成した。その後、1000〜1150℃の還元雰囲気中で熱処理を行った。そして、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.6wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。
項目F〜Jの試料に対して、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、500〜650℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表7は、項目F〜Jについて、粉末の処理温度、焼鈍温度、密度、透磁率及び磁気特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
Figure 0004908546
表7からは、軟磁性粉末の表面にリン酸塩被膜による絶縁層を設けた比較例4〜7では、焼鈍温度が550℃を超えると、ヒステリシス損失(Ph)及び渦電流損失(Pe)が急激に増加していることが判る。また、軟磁性粉末の表面に無機絶縁粉末と無機絶縁被膜により絶縁層を成形した実施例14〜29では、焼鈍温度が650℃になっても、ヒステリシス損失(Ph)及び渦電流損失(Pe)が急激に増加することがないことがわかる。
また、焼鈍温度と鉄損の関係を示した図6〜8からは、比較例4〜7では、焼鈍温度が550℃を超えるとヒステリシス損失(Ph)が著しく増加することにより、鉄損(コアロス)が著しく増加していることが判る。実施例14〜29では、熱処理温度が1000℃より高くするに従ってヒステリシス損失(Ph)が低下することにより、鉄損(コアロス)が低下するが、1100℃と1150℃では殆ど差が無いことが判る。図8からは、比較例4〜7では、焼鈍温度が550℃を超えると渦電流損失(Pe)が著しく増加することが判る。実施例14〜29では、渦電流損失(Pe)に殆ど差が無いことが判る。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜を形成した後に、1000℃以上の還元雰囲気中で熱処理を行うことにより、焼鈍温度が600℃以上の場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。
[6.第5の特性比較(無機絶縁粉末の種類の比較)]
第5の特性比較では、粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対する無機絶縁粉末の種類の添加量の比較を行った。本特性比較で使用する試料は、軟磁性粉末として粒径75μm以下の純鉄の水アトマイズ粉に対して、下記の処理を行うことにより作製した。
項目Kでは比較例30,31及び比較例8として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として粒子径が49〜210nmのMgOを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50〜0.75wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.24wt%形成した。その後、1050℃の還元雰囲気中で熱処理を行った。
項目Lでは比較例9として、純鉄の水アトマイズ粉に無機絶縁粉末として粒子径が7nmのSiOを、純鉄の水アトマイズ粉に対して0.50wt%、ポットミルで12時間混合し、MgO被膜を0.24wt%形成した。その後、950℃の還元雰囲気中で熱処理を行った。
これらの項目K,Lの試料に対して、シランカップリング剤を0.1wt%混合し80℃で12時間乾燥し、さらにシリコーンレジンを0.5wt%混合し180℃で2時間の加熱乾燥を行った。その後、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.4wt%を混合した。これを、室温にて1500MPaの圧力で加圧成形し、外径16mm、内径8mm、高さ5mmのリング状をなす成形体を作製した。この成形体を、窒素90%(残り10%は水素)の窒素雰囲気中にて、600℃で2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。
表8は、この項目K,Lについて、純鉄の水アトマイズ粉末に添加した第1の絶縁層、熱処理温度、第2の絶縁層、焼鈍温度、密度、透磁率及び磁気特性を示した表である。この表の中で磁気特性としては、密度、透磁率、単位体積あたりの鉄損(コアロス)(Pc,Ph,Pe)を測定した。
Figure 0004908546
表8から判るように、無機絶縁粉末としてMgOを使用した実施例30,31及び比較例8と、無機絶縁粉末としてSiOを使用した比較例9を比較すると、比較例9の方が、ヒステリシス損失(Ph)及び鉄損(コアロス)が高くなっていることが判る。これは、無機絶縁粉末として、融点が低いSiO粉末を使用したため、粉末同士が凝固してしまうため熱処理温度を高くすることができなかったためである。
また、無機絶縁粉末としてMgOを使用した実施例31と比較例8とを比較すると、MgO粉末の粒径が49nmの実施例31とMgO粉末の粒径が210nmの比較例8では、比較例8の方が、密度及び透磁率が低下し、鉄損(コアロス)が増加することが判る。これは、無機絶縁粉末の粒径が50nmより大きくなると、軟磁性粉末同士に隙間が生じるためである。
以上により、純鉄の水アトマイズ粉に、融点が1500℃以上で粒径が7〜50nmの無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜を形成することにより、焼鈍温度が高い場合においても、高周波数・高磁束密度でも渦電流損失(Pe)が一定(増大しない)であり、なおかつヒステリシス損失(Ph)を低減することにより低損失な圧粉磁心と、その製造方法を提供することができる。

Claims (14)

  1. 無機絶縁粉末が均一に分散された無機絶縁被膜により、表面に絶縁層を形成した鉄を主成分とする軟磁性粉末に対して熱処理を施し、
    熱処理を施した軟磁性粉末に対して、結着性絶縁樹脂を被覆することで造粒粉を作成し、
    結着性絶縁樹脂を被覆した造粒粉と潤滑性樹脂とを混合することで成形粉を作成し、
    前記成形粉を加圧成形して成形体を作成し、前記成形体を焼鈍してなる圧粉磁心において、
    前記熱処理を、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中で行うことにより作製され
    前記結着性絶縁樹脂は、前記軟磁性粉末にシランカップリング剤を混合することで形成される1層目の絶縁層と、当該1層目の絶縁層を形成した前記軟磁性粉末にシリコーンレジンを混合することで形成される2層目の絶縁層とから構成されたことを特徴とする圧粉磁心。
  2. 前記成形体が、600℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍されることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
  3. 前記無機絶縁粉末の平均粒経が7〜50nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧粉磁心。
  4. 前記無機絶縁粉末の融点が1500℃以上あることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  5. 前記無機絶縁被膜を形成する金属酸化物の融点が1500℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  6. 前記無機絶縁被膜が、アルコキシドから作成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  7. 前記無機絶縁粉末の添加量が0.25〜1.0wt%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧粉磁心。
  8. 軟磁性粉末に対して無機絶縁粉末を混合し、その表面に無機絶縁被膜形成する第1絶縁工程と、
    第1絶縁工程を経た粉末に対して熱処理を施す熱処理工程と、
    熱処理工程を経た粉末を結着性絶縁樹脂で被覆し造粒粉を作成する第2の絶縁工程と、
    結着性絶縁樹脂で被覆した造粒粉に対して、潤滑剤を混合し成形粉を作成する第2混合工程と、
    第2混合工程を経た成形粉を、加圧成形処理して成形体を作製する成形工程と、
    成形工程を経た成形体を焼鈍処理する焼鈍工程とを有する圧粉磁心の製造方法において、
    熱処理工程において、1000℃以上且つ軟磁性粉末の融点以下の温度の還元雰囲気中で熱処理が行われ
    前記第2の絶縁工程では前記軟磁性粉末にシランカップリング剤を混合することで1層目の絶縁層が形成され、当該1層目の絶縁層を形成した前記軟磁性粉末にシリコーンレジンを混合することで2層目の絶縁層が形成されることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  9. 前記焼鈍工程において、600℃以上且つ前記軟磁性粉末が焼結を開始する温度以下の非酸化性雰囲気中で焼鈍されることを特徴とする請求項8に記載の圧粉磁心の製造方法。
  10. 前記無機絶縁粉末の平均粒経が7〜50nmであることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の圧粉磁心の製造方法。
  11. 前記無機絶縁粉末の融点が1500℃以上あることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  12. 前記無機絶縁被膜を形成する金属酸化物の融点が1500℃以上であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  13. 前記無機絶縁被膜が、アルコキシドから作成されることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  14. 前記無機絶縁粉末の添加量が0.25〜1.0wt%であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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