JP7096220B2 - 圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法 - Google Patents

圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法に関する。
リアクトルは、ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。このリアクトルのコアとして、例えば、圧粉磁心が使用される。圧粉磁心は、圧粉成形体を熱処理することで形成される。圧粉成形体は、まず、軟磁性粉末の粒子表面に絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程を行う。そして、粒子表面に絶縁被膜が形成された軟磁性粉末をプレス成形することにより圧粉成形体は成形される。
特開2019-125622号公報
この加圧成形する際は、10~20ton/cmという高い圧力で行われる。そのため、軟磁性粉末間の結着力が弱いと、圧粉成形体に欠けやクラックが生じ、場合によっては、圧粉成形体の脚が完全に取れてしまうなど、所望の形状の圧粉成形体にすら成形できない虞がある。特に、プレス形成する際に、圧粉成形体のプレス面に凹凸のような段差を有する場合には、プレス成形後の圧粉成形体の密度に疎密が生じる。そして、圧粉成形体の密度の低い場所と密度の高い場所の境界においてクラックが特に生じやすい。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軟磁性粉末間の結着力を高めて、圧粉成形体に欠けやクラックが発生することを抑制できる圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法を提供することにある。
本発明の圧粉成形体は、軟磁性粉末と、前記軟磁性粉末の粒子表面を覆う絶縁被膜と、前記絶縁被膜の表面を被覆し、アクリル樹脂から成る保形被膜と、を備え、前記アクリル樹脂の添加量は、前記軟磁性粉末に対して0.5wt%以上0.75wt%以下であり、前記アクリル樹脂のガラス転移点は、15度以上45度以下であること、を特徴とする。
また、本発明の圧粉成形体の製造方法は、軟磁性粉末の粒子表面に絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程と、前記絶縁被膜形成工程によって絶縁被膜が形成された軟磁性粉末にアクリル樹脂を添加し、前記絶縁被膜層の表面を前記アクリル樹脂で被覆する保形被膜形成工程と、前記保形被膜形成工程を経た前記軟磁性粉末を加圧成形する成形工程と、を備え、前記保形被膜形成工程において、前記アクリル樹脂の添加量は、前記軟磁性粉末に対して0.5wt%以上0.75wt%以下であり、前記アクリル樹脂のガラス転移点は、15度以上45度以下であること、を特徴とする。
本発明によれば、軟磁性粉末間の結着力を高めて、圧粉成形体に欠けやクラックが発生することを抑制できる圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法を得ることができる。
実施形態に係る圧粉成形体及び圧粉磁心の製造方法を示すフローチャートである。 プレス成形工程におけるプレス方向を示す模式図である。 プレス成形工程におけるプレス方向を示す模式図である。 プレス成形工程におけるプレス方向を示す模式図である。 アクリル樹脂のガラス転移点と粉砕割合の関係を示すグラフである。 第2の実施例におけるアクリル樹脂の添加量と粉砕割合の関係を示すグラフである。 第3の実施例におけるアクリル樹脂の添加量と粉砕割合の関係を示すグラフである。 第3の実施例におけるアクリル樹脂の添加量と鉄損の関係を示すグラフである。
本実施形態の圧粉成形体の構成について説明する。本実施形態の圧粉成形体は、軟磁性粉末、絶縁被膜及び保形被膜を有する。圧粉成形体は、絶縁被膜及び保形被膜によって被覆された軟磁性粉末を加圧成形することで成形される。圧粉成形体は、圧粉磁心を製造する工程の熱処理工程を経る前の成形体であり、この圧粉成形体に熱処理を施すことで圧粉磁心が形成される。圧粉磁心は、例えば、リアクトルのコアとして用いられる。なお、本実施形態の圧粉成形体は、軟磁性粉末、絶縁被膜及び保形被膜を有していたが、これに限定されず、例えば、ステアリン酸及びその金属塩並びにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアラマイド、エチレンビスステアレートアミドなどの潤滑剤等を添加してもよい。
軟磁性粉末としては、鉄を主成分とする軟磁性粉末であって、Fe粉末、FeSi合金粉末、FeNi合金粉末、FeSiAl合金粉末(センダスト)、純鉄粉、非晶質合金粉末、ナノ結晶合金粉末、又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが使用できる。特に、FeSiAl合金粉末、非晶質合金粉末又はナノ結晶合金粉末が好ましい。これらの粉末は保形性が良くないため、本発明のように保形被膜を形成させる効果を顕著に得られる。保形性とは、プレス成型後における圧粉成形体の粉砕のしにくさをいい、保形性を向上させることで、圧粉成形体に生じるクラックや圧粉成形体が欠けることを抑制することができる。
絶縁被膜は、軟磁性粉末の粒子表面を被覆し、軟磁性粉末間の絶縁を図る。被覆の態様として、軟磁性粉末の1つ1つの粒子の表面を被覆する場合、いくつかの粒子が結合した結合粒子の表面を被覆する場合、粒子の全表面又は表面の一部を被覆する場合が含まれる。本実施形態では、絶縁被膜は、シランカップリング剤とシリコーンレジンを混合して成る混合層である。
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、イソシアヌレート系、エトキシシラン系、エメキシシラン系、メトキシシラン系を使用することができ、特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
シランカップリング剤の添加量としては、軟磁性粉末に対して、0.25wt%以上、1.0wt%以下が好ましい。シランカップリング剤の添加量をこの範囲にすることで、軟磁性粉末の流動性を向上させるとともに、成形された圧粉磁心の密度、磁気特性、強度特性を向上させることができる。
シリコーンレジンは、シロキサン結合(Si-O-Si)を主骨格に持つ樹脂である。シリコーンレジンを用いることで、絶縁被膜は可撓性に優れる。シリコーンレジンとしては、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等を用いることができる。この中でも特に、メチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、絶縁被膜は耐熱性に優れる。
シリコーンレジンの添加量は、軟磁性粉末に対して、1.0~2.0wt%であることが好ましい。添加量が1.0wt%より少ないと絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより磁気特性が低下する。添加量が4.0wt%より多いと圧粉磁心の密度低下を招く。
本実施形態では、絶縁被膜は、シランカップリング剤とシリコーンレジンとを混合して成る混合層としたが、混合せず、各別に絶縁被膜を形成してもよい。即ち、軟磁性粉末の粒子表面をシランカップリング剤よって被覆する第1の絶縁被膜を形成し、この第1の絶縁被膜をシリコーンレジンよって被覆する第2の絶縁被膜を形成してもよい。また、絶縁被膜は、シランカップリング剤を用いず、シリコーンレジンのみによって形成してもよい。さらに、絶縁被膜は、シランカップリング剤やシリコーンレジンに限定されず、例えば、シリコーンオリゴマーなど絶縁被膜として周知のものを用いることができる。
保形被膜は、軟磁性粉末の粒子表面に形成された絶縁被膜の表面を被覆する。被覆の態様としては、絶縁被膜が形成された軟磁性粉末を1つ1つ被覆する場合、いくつかの粒子が結合した結合粒子の被覆する場合が含まれる。また、保形被膜は、絶縁被膜が形成された全表面又は表面の一部を被覆する場合が含まれる。即ち、保形被膜は、絶縁被膜の表面を完全に覆っている必要はなく、絶縁被膜の表面の一部に付着している場合も含まれる。保形被膜を形成することにより、圧粉成形体の保形性が向上する。保形被膜は、アクリル樹脂から成る。
アクリル樹脂の添加量は、軟磁性粉末に対して0.5wt%以上1.5wt%以下である。添加量が0.5wt%より少ないと、保形性を向上させる効果が弱い。一方、添加量を1.5wt%よりも多いと、圧粉成形体の密度が低下するとともに、鉄損が増加する。
また、アクリル樹脂のガラス転移点は、45℃以下であることが好ましい。アクリル樹脂のガラス転移点を45℃以下にすることで、保形性を向上させることができる。より好ましくは、アクリル樹脂のガラス転移点が33℃以下である。ガラス転移点を33℃以下にすることで、保形性をより向上させることができる。このように、アクリル樹脂のガラス転移点Tgによって圧粉成形体の保形性に影響を与えた点については以下のように推察される。
アクリル樹脂が被覆された軟磁性粉末をプレス成形する際、プレスする摩擦熱によって室温よりも温度が上昇する。この上昇した温度とアクリル樹脂のガラス転移点Tgとの差が大きくなるほど、アクリル樹脂が溶けやすくなる。アクリル樹脂が溶けた状態でプレス成形を行うことで、アクリル樹脂に被覆された軟磁性粉末がより密に結着される。そのため、ガラス転移点Tgが高いアクリル樹脂よりも低い方が、軟磁性粉末の結着性が強まり、粉砕割合が低減できたと推察される。
なお、アクリル樹脂のガラス転移点は、15℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が15℃以下になると、常温でもアクリル樹脂が溶け出してしまうため、プレス成形を行う前、保形被膜を形成した直後から溶け出してしまい、軟磁性粉末の流れ性が低下する。そのため、プレス形成するために保形被膜が形成された軟磁性粉末を金型に供給する時間が掛かり、作業性が悪化する虞がある。
また、保形被膜は、主成分がアクリル樹脂であればよく、他の添加物が含有されていてもよい。保形被膜にアクリル樹脂以外の他の添加物が添加されている場合であっても、ガラス転移点の温度は、アクリル樹脂のガラス転移点の温度が45℃以下であればよい。
次に、本実施形態に係る圧粉成形体及び圧粉磁心の製造方法について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の圧粉成形体及び圧粉磁心の製造工程を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の圧粉成形体及び圧粉磁心の製造方法は、(1)絶縁被膜形成工程、(2)保形被膜形成工程、(3)潤滑剤混合工程、(4)プレス成形工程、(5)熱処理工程を有する。
(1)絶縁被膜形成工程
絶縁被膜形成工程は、軟磁性粉末の粒子表面に絶縁被膜を形成する工程である。本実施形態の絶縁被膜形成工程においては、具体的に、軟磁性粉末に、シランカップリング剤及びシリコーンレジンを添加し混合させ、乾燥させることで、軟磁性粉末の粒子表面にシランカップリング及びシリコーンレジンの混合物から成る絶縁被膜が形成される。乾燥温度としては、100℃以上300℃以下であることが好ましい。また、乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば、2時間程度である。なお、シランカップリング剤とシリコーンレジンの添加方法は、シランカップリング剤とシリコーンレジンを混合した上で軟磁性粉末に添加して混合させてもよいし、まず軟磁性粉末にシランカップリング剤を添加し、その後シリコーンレジンを添加して混合させてもよい。
(2)保形被膜形成工程
保形被膜形成工程は、絶縁被膜の表面にアクリル樹脂を被覆させる工程である。絶縁被膜を形成した軟磁性粉末にアクリル樹脂を混合し、乾燥させることで絶縁被膜の表面にアクリル樹脂から成る保形被膜が形成される。乾燥温度としては、25℃以上150℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下であることが好ましい。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なるが、例えば、2時間程度である。アクリル樹脂から成る保形被膜で被覆することで、粉末間の結着力が向上し、保形性が向上する。
(3)潤滑剤混合工程
潤滑剤混合工程では、アクリル樹脂で被覆された軟磁性粉末に対し、潤滑剤を添加し、混合する工程である。潤滑剤として、ステアリン酸及びその金属塩並びにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアラマイド、エチレンビスステアレートアミドなどのワックスが使用できる。潤滑剤の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.1wt%~0.6wt%程度であることが好ましい。潤滑剤を添加することで、軟磁性粉末間の滑りをよくすることができるので、成形密度を向上させることができる。なお、さらに好ましくは、潤滑剤の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.2wt%~0.5wt%程度である。この範囲にすることで、軟磁性粉末間の滑りをより向上させることができる。
(4)プレス成形工程
プレス成形工程では、絶縁被膜及び保形被膜が形成された軟磁性粉末を加圧成形することにより、成形体を形成する。成形時の圧力は10~20ton/cmであり、平均で12~15ton/cm程度が好ましい。本工程を経ることで、圧粉成形体が作製される。
本実施形態において成形する圧粉成形体の形状は、図2に示すように、概略E字型形状の圧粉成形体である。そして、このプレス成形工程では、図2の矢印で示すように、圧粉成形体の脚の延び方向と同一の方向でプレスする。つまり、圧粉成形体のプレス面は、段差を有する。ここでいう段差とは、プレス面の凹凸のことであり、プレス成形後の圧粉成形体における凸部(プレス面間の長さが長い部分)の密度が低くなり、凹部(プレス面間の長さが短い部分)の密度が高くなる程度の凹凸のことを指す。また、プレス面とは、プレス方向と直交する圧粉成形体の端面であり、凹部、凸部ともにプレス面となる。
プレス面に段差を有する場合、プレス面間の長さが短い部分は高密度になり、プレス面間の長さが長い部分は低密度になりやすい。そのため、低密度の場所と高密度の場所の境界にクラックが生じやすい。
しかし、本実施形態では、アクリル樹脂を0.5wt%以上1.5wt%以下添加させることで、粉末間の結着力を向上させることができる。そのため、成形後の圧粉成形体の保形性を向上させることができるので、プレス面に段差を有する場合であっても、プレス成形工程後における圧粉成形体にクラックが生じることを抑制することができる。
なお、本実施形態では、図2に示すように、概略E字型形状の圧粉成形体の脚の延び方向と同一の方向でプレスしたが、プレス方向はこれに限定されない。例えば、図3に示すように中脚の高さが外脚の高さよりも低い概略E字型形状の圧粉成形体の場合、図3の矢印のように、圧粉成形体の脚の延び方向に直交する方向でプレスを行ってもよい。このプレス方向であっても、プレス面は段差を有することになる。また、図4に示すような所謂PQ型のコアの場合も図4に示す矢印のようにプレスすると、プレス面に段差を有することになる。図3及び図4のようにプレスする場合であっても、保形被膜を形成することで保形性が向上するため、圧粉成形体にクラックが生じることを抑制することができる。
(5)熱処理工程
熱処理工程では、成形工程を経た圧粉成形体に対して、Nガス中、N+Hガス非酸化性雰囲気中又は大気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破壊される温度(例えば、900℃とする)以下で、熱処理を行う。この熱処理工程を経ることで圧粉磁心が作製される。
(第1の実施例)
(アクリル樹脂のガラス転移点Tgによる比較)
第1の実施例について、説明する。第1の実施例では、保形被膜となるアクリル樹脂の種類を変えて、試料となる圧粉成形体を作製した。この圧粉成形体は下記のように作製した。
(1)絶縁被膜形成工程
平均粒子径(メジアン径(D50))が25μmのFeSiAl合金粉末に対して、シランカップリング剤を0.5wt%、シリコーンレジンを1.5wt%、混合した。その後、乾燥温度150℃で2時間乾燥させ、凝集を解消する目的で目開き250μmの篩に通した。
(2)保形被膜形成工程
絶縁被膜形成工程によりシランカップリング剤及びシリコーンレジンで被覆されたFeSiAl合金粉末に、表1に示す5種類のアクリル樹脂A~Eを0.50wt%混合した。その後、乾燥温度110℃で2時間乾燥させ、凝集を解消する目的で目開き250μmの篩に通した。
Figure 0007096220000001
(3)潤滑剤混合工程
保形被膜形成工程によりアクリル樹脂で更に被覆されたFeSiAl合金粉末に、粉末状の潤滑剤(Acrawax(登録商標))を0.4wt%添加、混合した。
(4)プレス成形
潤滑剤混合工程を経たFeSiAl合金粉末を、金型を用いて、室温において加圧成形を行い、外径16.5mm、内径11.0mm、高さ5.0mmの各圧粉成形体を得た。加圧成形の圧力は、15ton/cmで行った。
以上のように作製した各圧粉成形体の重量及び粉砕量を測定した。圧粉成形体の重量とは、プレス成形を経た後の重量であり、本実施例においては、軟磁性粉末、絶縁被膜、保形被膜及び潤滑剤の合計の重量である。粉砕量は、振動ふるい機(KFC-500-1DC)を用い、目開き850μmの篩の上に圧粉成形体を載せて、30秒間振動させた際に、篩の下に落ちた重量を測定した。圧粉成形体の重量及び粉砕量の測定は、秤(AS PRO ASP123F)を用いた。振動は、電動機(200V、0.4kW)、周波数(50Hz)という条件で行った。
各圧粉成形体の重量及び粉砕量の測定結果を表2及び図5に示す。図5は、アクリル樹脂のガラス転移点Tgと粉砕割合の関係を示すグラフである。
Figure 0007096220000002
表2に示す「密度」は、見かけ密度である。即ち、作製した圧粉成形体の外径、内径、及び高さを測り、これらの値から各圧粉成形体の体積(cm)を、π×(外径-内径)×高さに基づき算出した。そして、各圧粉成形体の重量を測定し、測定した重量を算出した体積で除して密度を算出した。
表2及び図5に示すように、ガラス転移点Tgが高い方が粉砕割合が多く、ガラス転移点Tgが低くなるにつれて粉砕割合が減少する傾向がある。ガラス転移点Tgが45℃と最も高い実施例1においても、粉砕割合は10%を大きく下回っており、保形性を向上させることができ、圧粉成形体に生じるクラックや欠けを抑制できることが示されている。特に、ガラス転移点Tgが33℃の実施例3と45℃の実施例1を比べると、実施例3の方が実施例1よりも粉砕割合が大幅に減少し、保形性が向上していることが分かる。このことから、アクリル樹脂のガラス転移点Tgは、33℃以下である方がより好ましい。
(第2の実施例)
(アクリル樹脂の添加量による比較)
第2の実施例について説明する。第2の実施例は、保形被膜として表1に示すアクリル樹脂Aのみを用いて、アクリル樹脂Aの添加量を変えて圧粉成形体を作製した。アクリル樹脂の添加量は、表3に示すように0.00wt%~2.00wt%とした。圧粉成形体の作製方法は、第1の実施例と同様である。そして、第1の実施例と同様の方法で、圧粉成形体の重量及び粉砕量を測定した。
第2の実施例の測定結果を表3及び図6に示す。図6は、本実施例におけるアクリル樹脂の添加量と粉砕割合の関係を示すグラフである。
Figure 0007096220000003
表3及び図6に示すように、アクリル樹脂を添加していない比較例1及び0.25wt%を添加した比較例2の粉砕量は、実施例1の粉砕量の倍以上となり、粉砕割合も10%以上と大きくなっている。一方、アクリル樹脂を0.5wt%以上添加した実施例1、実施例6~8及び比較例3の粉砕割合は10%以下と粉砕量が少ない。このことから、アクリル樹脂の添加量は、0.5wt%以上である方が、圧粉成形体の保形性を向上させることができる。
特に、注目すべき点は、アクリル樹脂を一定量添加することで、圧粉成形体の密度が増加している点である。表3を見ると、アクリル樹脂を添加していない比較例1から1.00wt%添加した実施例7までは、密度が上昇し、1.00wt%よりも多く添加すると、密度が低下している。
一般的には、樹脂を添加すると密度は低下すると言われている。しかし、一定量のアクリル樹脂を添加した場合には、アクリル樹脂に被覆された粉末がより結着して結合するため、密度が増加したと推察される。
もっとも、アクリル樹脂を2.00wt%添加した比較例3の密度は、アクリル樹脂を添加していない比較例1よりも低下している。これは、アクリル樹脂のスプリングバックによって密度が低下したものと推察される。即ち、アクリル樹脂は弾性を有するので、プレス成形後に圧粉成形体を金型から抜いたときに、元の形状に戻ろうとスプリングバックが起こる。このスプリングバックよって、プレス成形によって結合した粉末が分離してしまい、密度が低下する。そして、このスプリングバックの力は、アクリル樹脂の添加量が多いほど大きくなる。そのため、アクリル樹脂を2.00wt%添加した比較例3の密度が低下したと考えられる。以上の点を踏まえると、アクリル樹脂の添加量は、0.5wt%以上1.5wt%以下にすることで、圧粉成形体の保形性を向上させつつ、密度の増加を図ることができる。
(第3の実施例)
(アクリル樹脂の添加量と鉄損の比較)
第3の実施例は、保形被膜として表1に示すアクリル樹脂Cを用いて圧粉成形体を作製した。アクリル樹脂の添加量は、表4に示すように0.00wt%~3.00wt%とした。また、第3の実施例で使用した軟磁性粉末は、平均粒子径(メジアン径(D50))が19μmのFeSiAl合金粉末を使用した。試料となる圧粉成形体の作製方法は、第1の実施例と同様である。
第3の実施例では、第1の実施例と同様の方法で圧粉成形体の重量及び粉砕量を測定した以外に、鉄損Pcv及び透磁率μも測定した。透磁率及び鉄損の測定条件は、周波数100kHz、最大磁束密度Bm=100mTとした。鉄損については、φ0.5mmの銅線で1次巻線17ターン、2次巻線17ターンの巻線を巻回し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY-8219)を用いて算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を次の(1)~(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損失係数、渦電流損失係数を算出することで行った。
Pcv =Kh×f+Ke×f・・(1)
Ph =Kh×f・・(2)
Pe =Ke×f・・(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損失係数
Ke :渦電流損失係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
透磁率は、鉄損Pcv測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とし、LCRメータ(アジレント・テクノロジー株式会社製:4284A)を使用して算出した。なお、下記表4に示す「μ0」は、直流を重畳させていない状態、即ち、磁界の強さが0H(A/m)の時の初透磁率を示す。表4の「μ12k」は、磁界の強さが12kH(A/m)の時の透磁率を示す。
第3の実施例の測定結果を表4及び図7、8に示す。図7は、本実施例におけるアクリル樹脂の添加量と粉砕割合を示すグラフである。図8は、アクリル樹脂の添加量と鉄損の関係を示すグラフである。
Figure 0007096220000004
表4及び図7に示すように、アクリル樹脂の添加量を多くするほど粉砕割合が低下している。一方で、鉄損に着目すると、図8に示すように、アクリル樹脂の添加量が多くなるほど鉄損は増加している。特に、アクリル樹脂を1.50wt%添加した実施例12の鉄損は、277(kw/m)と良好な数値を保っているが、2.00wt%添加した比較例5の鉄損は、329(kw/m)となっており、その差は50(kw/m)程度あり、極端に増加している。よって、アクリル樹脂の添加量を1.50wt%以下にすることで、良好な鉄損特性を維持することができる。
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

Claims (6)

  1. 軟磁性粉末と、
    前記軟磁性粉末の粒子表面を覆う絶縁被膜と、
    前記絶縁被膜の表面を被覆し、アクリル樹脂から成る保形被膜と、
    を備え、
    前記アクリル樹脂の添加量は、前記軟磁性粉末に対して0.5wt%以上0.75wt%以下であり、
    前記アクリル樹脂のガラス転移点は、15度以上45度以下であること、
    を特徴とする圧粉成形体。
  2. 前記アクリル樹脂のガラス転移点は、33度以下であること、
    を特徴とする請求項1に記載に圧粉成形体。
  3. プレス成形された際に、プレスされる端面であるプレス面を備え、
    前記プレス面は、段差を有すること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の圧粉成形体。
  4. 前記軟磁性粉末は、非晶質軟磁性粉末、FeSiAl合金又はナノ結晶合金であること、
    を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の圧粉成形体。
  5. 目開き850μmの篩の上に圧粉成形体を載せて、30秒間振動を与えた場合に、前記圧粉成形体が粉砕した重量の割合が、当該圧粉成形体の重量に対して6.7%以下であること、
    を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の圧粉成形体。
  6. 軟磁性粉末の粒子表面に絶縁被膜を形成する絶縁被膜形成工程と、
    前記絶縁被膜形成工程によって絶縁被膜が形成された軟磁性粉末にアクリル樹脂を添加し、前記絶縁被膜の表面を前記アクリル樹脂で被覆する保形被膜形成工程と、
    前記保形被膜形成工程を経た前記軟磁性粉末を加圧成形する成形工程と、
    を備え、
    前記保形被膜形成工程において、
    前記アクリル樹脂の添加量は、前記軟磁性粉末に対して0.5wt%以上0.75wt%以下であり、
    記アクリル樹脂のガラス転移点は、15度以上45度以下であること、
    を特徴とする圧粉成形体の製造方法。
JP2019172155A 2019-09-20 2019-09-20 圧粉成形体及び圧粉成形体の製造方法 Active JP7096220B2 (ja)

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