JP2015095570A - 低騒音リアクトル、圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軟磁性粉末に絶縁微粉末、結着性絶縁樹脂を混合した後、その混合物を所定の形状に成形し、その成形体を熱処理してなる圧粉磁心において、前記絶縁微粉末のモース硬度が7以上で、その添加量が0.05wt%〜1.0wt%とする。前記結着性絶縁樹脂は、シリコーン樹脂とシランカップリング剤の混合物としても良く、特に、前記結着性絶縁樹脂をメチルフェニル系シリコーン樹脂とすることが好ましい。
【選択図】図1
Description
Kh:ヒステリシス損係数、Ke:渦電流損係数、f:周波数
Ke=k1(Bm2・t2)/ρ…式2
k1:係数、Bm:磁束密度、t:粒子径(板材の場合厚さ)、ρ:比抵抗
(1)軟磁性粉末に絶縁微粉末、結着性絶縁樹脂を混合した後、その混合物を所定の形状に成形し、その成形体を熱処理して圧粉磁心を作製する。
(2)絶縁微粉末のモース硬度が7以上で、その添加量が0.05wt%〜1.0wt%とする。
(3)結着性絶縁樹脂の添加量に対する絶縁微粉末の添加量の比率を、0.03〜0.5とすることが好ましい。
(4)結着性絶縁樹脂として、シリコーン樹脂とシランカップリング剤の混合物を使用することができる。
(5)結着性絶縁樹脂がメチルフェニル系シリコーン樹脂であることが好ましい。
(6)シランカップリング剤が、アミノシラン系、エポキシシラン系、又はイソシアヌレート系のシランカップリング剤であることが好ましい。
(8)軟磁性粉末が、Fe―Si−Al合金粉末又はFe―Si合金粉末であることが好ましい。
(9)軟磁性粉末の粉末硬度が、100MPa以上であることが好ましい。
(10)絶縁微粉末が、Al2O3又はSiO2であることが好ましい。
(1)軟磁性粉末の粉末硬度は100MPa以上であること。
(2)軟磁性粉末がFe―Si−Al合金粉末であり、前記熱処理工程は、大気雰囲気で熱処理すること。
(3)前記軟磁性粉末がFe―Si−Al合金粉末であり、前記加圧成型工程よりも前に、前記第1混合工程で得られた混合物に対し熱処理を行わないこと。
(4)前記軟磁性粉末がFe―Si合金粉末であり、前記第1混合工程と前記加圧成型工程との間において、前記第1混合工程以降に得られた混合粉末を熱処理すること。
(5)絶縁微粉末が、Al2O3又はSiO2であることが好ましい。
軟磁性粉末としては、センダスト(Fe−Si−Al合金)粉、Fe−Si合金粉、純鉄粉などが使用できる。
絶縁微粉末は、モース硬度が7以上のものを用いる。例えば、モース硬度が7.0のSiO2、モース硬度が9.0のAl2O3を用いる。絶縁微粉末の添加量は、0.05wt%〜1.0wt%であることが好ましい。0.05wt%未満であると低騒音効果が得られない。1.0wt%超であると、透磁率が低下することでディップル電流が大きくなり、振動が大きくなって騒音が増加する。絶縁微粉末の平均粒径は、その上限値が0.50μmであることが好ましい。0.50μm超であると密度低下を招き、透磁率が低下してしまう。なお、下限値は特に限定されないが、例えば、0.02μmとすることができる。
結着性絶縁樹脂は、軟磁性粉末と絶縁微粉末の混合粉に添加する。結着性絶縁樹脂としては、常温で軟磁性粉末と絶縁微粉末の混合物を加圧した場合に、ある程度緻密化された状態の成形体が得られ、しかも、その成形体に過大な力が加わらない限り、所定の形状を維持することのできる程度の粘性のある樹脂を用いる。
潤滑性樹脂として、ステアリン酸及びその金属塩ならびにエチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。潤滑性樹脂を混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上させ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。潤滑性樹脂の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.1wt%〜1.0wt%程度が好ましく、一般的には、0.5wt%程度である。
本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、次のような各工程を有する。
(a)軟磁性粉末に対して絶縁微粉末を混合する第1混合工程。
(b)第1混合工程で得られた混合物に対し結着性絶縁樹脂を混合する第2混合工程。
(c)第2混合工程で得られた混合物を加圧成型する加圧成型工程。
(d)加圧成型工程で得られた成形体を熱処理する熱処理工程。
(a)第1混合工程
第1混合工程では、例えば、平均粒径が20μm〜100μmの軟磁性粉末に対して、その0.05wt%〜1.0wt%の絶縁微粉末を添加して混合する。
軟磁性粉末と絶縁微粉末の混合物に対して、軟磁性粉末に対して0.75wt%〜2.0wt%の結着性絶縁樹脂と、0.1wt%〜1.0wt%の潤滑性樹脂とを添加して、更に混合する。
加圧成型工程では、第2混合工程を経た混合物を金型内に充填して、加圧成形する。その場合、金型温度は常温が好ましいが、80℃までの範囲であっても構わない。すなわち、ここでの常温とは、5℃〜35℃までの範囲をいうが、5℃〜80℃の範囲であっても構わない。成形圧力は、例えば、900MPa〜1700MPaである。
成形体に対する熱処理は、軟磁性粉末の種類に応じて所定雰囲気において所定温度で行う。いずれの場合も加熱温度は600℃以上であり、加熱保持時間は2時間〜4時間程度である。熱処理雰囲気は、軟磁性粉末がFe−Si−Al合金粉末の場合は、窒素雰囲気若しくは大気雰囲気である。特に大気雰囲気の方が作製されたリアクトルの騒音が低くなるため好ましい。Fe−Si合金粉末、純鉄粉の場合は、それぞれ窒素雰囲気、10%〜30%水素ガスなどの還元雰囲気が好ましい。また、熱処理温度は、上げ過ぎると絶縁破壊を起こし、渦電流損失が増加する。そのため、鉄損の増加を抑制する観点からFe−Si−Al合金粉末及びFe−Si合金粉末の場合、600℃〜750℃が好ましく、特にFe−Si−Al合金粉末は600℃〜725℃がより好ましい。純鉄粉の場合は、500℃〜650℃であっても良い。これらの温度範囲にすることで作製されたリアクトルの騒音が低くなる。
測定項目は、透磁率、鉄損、及び騒音である。作製された各圧粉磁心のサンプルに対して、φ2.6mmの銅線で42ターンの巻線を施してリアクトルを作製した。騒音測定用の圧粉磁心は、外径φ77.8mm、内径49.2mm、高さ30mmとした。また、作製したリアクトルの透磁率及び鉄損を下記の条件で算出し、下記の条件でリアクトルから発生する騒音について測定した。
透磁率及び鉄損の測定条件は、周波数100kHz、最大磁束密度Bm=50mTとした。透磁率は、鉄損Pcv測定時に最大磁束密度Bmを設定したときの振幅透磁率とした。鉄損については、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8232)を用いて算出した。この算出は、鉄損の周波数曲線を次の(1)〜(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損係数、渦電流損失係数を算出することで行った。
Ph =Kh×f…(2)
Pe =Ke×f2…(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損係数
Ke :渦電流損係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
騒音測定について、その測定装置、測定環境、測定方法等を以下に示す。
[騒音評価装置とソフトウェア]
(1) 測定装置 SOUND LEBEL METER NL-31 …リオン株式会社製
(2) 測定環境 無響箱(暗騒音は25dB) KM-1…株式会社アコー製
(3) パワーアンプ(音源) HIGH SPEED POWER AMPLIFIER/BIPOLAR POWER SUPPLY 4025…NF ELECTRONIC INSTRUMENTS社製
(4) 発振器 80MHz Function/Arbitrary Waveform Generator 33250A…アジレント・テクノロジー株式会社製
(5) 分析処理ソフト SA-01 CATSYSSA Ver3.5…リオン株式会社製
(1) 太陽光発電用パワーコンディショナに接続
(2) マイク距離:測定サンプルから10mmとした。
(3) 測定サンプルを無響箱内に設置し、騒音測定用のマイクの距離はサンプルから10mmとした。
圧粉磁心のサンプルは、下記のように、(a)絶縁微粉末のモース硬度、(b)絶縁微粉末の添加量、(c)結着性絶縁樹脂の種類の観点から作製した。また、(d)軟磁性粉末の粉末熱処理、(e)絶縁微粉末の粒径の観点からも作製した。これらの作製方法と、その結果について下記に順に示す。
硬度100MPaのFeSiAl合金粉末(平均粒子径40μm)の粉末に対して、絶縁微粉末(表1に示す種類と添加量)、潤滑剤0.3wt%を混合し、次にシランカップリング剤1.0wt%、メチルフェニル系シリコーンレジンを1.0wt%混合し、150℃で2時間の加熱乾燥を行い、さらに潤滑剤0.3wt%を混合した。
絶縁微粉末の種類と添加量を表2に示す条件とし、上記(a)と同様の手順で圧粉磁心を作製した。
絶縁微粉末の種類と添加量、及び結着性絶縁樹脂(シリコーン樹脂、シランカップリング剤)の種類と添加量を、表3に示す条件とし、上記(a)と同様の手順で圧粉磁心を作製した。
軟磁性粉末の粉末熱処理の有無による騒音抑制効果についても検証した。軟磁性粉末の粉末熱処理とは、第2混合工程を行う前段階における第1混合工程で得られた混合物に対する熱処理である。軟磁性粉末として、Fe―Si−Al合金粉末、Fe―6.5%Si合金粉末を用いた場合の圧粉磁心の作製方法と、その結果を以下にそれぞれ順に示す。
硬度100MPaのFeSiAl合金粉末(平均粒子径40μm)の粉末に対して、絶縁微粉末0.6wt%混合した混合粉に対し、還元雰囲気水素30%の環境下において、下記表4の温度で熱処理を施した。
硬度390MPaのFe―6.5%Si合金粉末(平均粒子径20μm)の粉末に対して、絶縁微粉末0.2wt%混合した混合粉に対し、還元雰囲気水素100%の環境下において、下記表5の温度で熱処理を施した。
絶縁微粉末の粒径を下記表6のようにして、上記(a)と同様の手順で圧粉磁心を作製した。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
(2)前記(a)の絶縁微粉末の混合(第1混合工程)と、(b)の結着性絶縁樹脂の混合(第2混合工程)を同時に行うことも可能である。軟磁性粉末(Fe―Si合金粉末)に対する粉末熱処理は、第1混合工程と第2混合工程の間だけでなく、第2混合工程と加圧成型工程との間に行っても上記と同様の効果を奏する。
Claims (16)
- 軟磁性粉末に絶縁微粉末、結着性絶縁樹脂を混合した後、その混合物を所定の形状に成形し、その成形体を熱処理してなる圧粉磁心において、
前記絶縁微粉末のモース硬度が7以上で、その添加量が0.05wt%〜1.0wt%であることを特徴とする圧粉磁心。 - 前記結着性絶縁樹脂の添加量に対する前記絶縁微粉末の添加量の比率が、0.03〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁心。
- 前記結着性絶縁樹脂が、シリコーン樹脂とシランカップリング剤の混合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧粉磁心。
- 前記結着性絶縁樹脂がメチルフェニル系シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記シランカップリング剤が、アミノシラン系、エポキシシラン系、又はイソシアヌレート系のシランカップリング剤であることを特徴とする請求項3に記載の圧粉磁心。
- 前記軟磁性粉末の平均粒径が20μm〜100μmであり、前記絶縁微粉末の平均粒径の上限値が0.50μmであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記軟磁性粉末が、Fe―Si−Al合金粉末又はFe―Si合金粉末であることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記軟磁性粉末の粉末硬度が、100MPa以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記絶縁微粉末が、Al2O3又はSiO2であることを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の圧粉磁心。
- 前記請求項1〜前記請求項9の何れかに記載の圧粉磁心に対して、コイルを巻回して構成したことを特徴とする低騒音リアクトル。
- 軟磁性粉末に対して絶縁微粉末を混合する第1混合工程と、
前記第1混合工程で得られた混合物に対し結着性絶縁樹脂を混合する第2混合工程と、
前記第2混合工程で得られた混合物を加圧成型する加圧成型工程と、
前記加圧成型工程で得られた成形体を600℃以上の温度で熱処理する熱処理工程と、を有し、
前記第1混合工程において、前記絶縁微粉末のモース硬度が7以上で、その添加量が0.05wt%〜1.0wt%であることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。 - 前記軟磁性粉末の粉末硬度が100MPa以上であることを特徴とする請求項11に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 前記軟磁性粉末がFe―Si−Al合金粉末であり、
前記熱処理工程は、大気雰囲気で熱処理することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の圧粉磁心の製造方法。 - 前記軟磁性粉末がFe―Si−Al合金粉末であり、前記加圧成型工程よりも前に、前記第1混合工程で得られた混合物に対し熱処理を行わないことを特徴とする請求項11〜請求項13の何れか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
- 前記軟磁性粉末がFe―Si合金粉末であり、
前記第1混合工程と前記加圧成型工程との間において、前記第1混合工程以降に得られた混合粉末を熱処理することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の圧粉磁心の製造方法。 - 前記絶縁微粉末が、Al2O3又はSiO2であることを特徴とする請求項11〜請求項15の何れか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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