JP7161307B2 - 圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硬度に優れた圧粉磁心の製造方法に関するものである。
交流回路に使用されるリアクトルにおいて、電流がリアクトルに流れると、その周波数に応じて磁励音が発生する。リアクトルを使用する者にとって、磁励音は騒音となり、これを抑制する必要がある。磁励音の発生メカニズムのひとつとして、圧粉磁心に特有の、軟磁性粉末間に働く電磁吸引力が挙げられる。軟磁性粉末間に電磁吸引力が働くことで軟磁性粉末は振動し、隣り合う粒子とぶつかって磁励音が発生する。
これによる磁励音発生を抑制するためには、軟磁性粉末が電磁吸引力が発生しても動かない状態が望まれる。圧粉磁心には、軟磁性粉末を固着させる目的として、絶縁樹脂を添加しており、固着力はその絶縁樹脂の性能に左右される。その固着力は、圧粉磁心の強度へも影響を与える。つまり、強度の高い圧粉磁心は磁励音を抑制する効果が高いとされる。絶縁樹脂としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などが採用されている。
絶縁樹脂の性能を上げる目的として、絶縁樹脂の他に、有機材料の絶縁樹脂と無機材料の軟磁性粉末との接着力を強化すべく、特許文献1に記載のように、シランカップリング剤を添加する手段が挙げられる。確かに、特許文献1の圧粉磁心は強度に優れリアクトルの騒音防止にも効果がある。しかし、最近では、より強度の高い圧粉磁心の出現が要望されている。
特開2015-15364号公報 特開2009-259939号公報
シランカップリング剤は加水分解を起こしてシラノールを形成することで、軟磁性粉末とシリコーン樹脂との結着性能を向上するため、水分が不可欠とされる。そのため、夏場と冬場とで湿度の差が生じることによる季節要因が発生し、圧粉強度及びリアクトル騒音のバラツキが発生しているのが課題であった。
すなわち、湿度の高い夏場はシランカップリング剤が空気中の水と接触することにより十分加水分解され、その後の脱水縮合により、軟磁性粉末と絶縁樹脂とを強固に結着させることができる。一方、湿度の低い冬場は、シランカップリング剤等に接触する空気中の水が少ないことから、十分な加水分解や脱水縮合ができず、特に軟磁性粉末とシランカップリング剤との結着力が低下する。すると、圧粉磁心の製造時に混合粉末を加圧した場合、その圧力によって軟磁性粉末とシランカップリング剤が剥がれ、軟磁性粉末と絶縁樹脂間の密着性が低下し、得られた圧粉磁心の密度の低下、圧環強度の低下、更にはそれに伴うリアクトルの騒音発生や鉄損の上昇などの不都合が発生する。
圧粉磁心の強度向上に当たり水分を添加する手法として、特許文献2のように、軟磁性粉末と絶縁樹脂を混合する場合に、水とシランカップリング剤を混合した水溶液を添加することで、高密度の圧粉磁心を製造する提案がなされている。しかし、この従来技術では、強度は上がるものの、圧粉磁心の密度が下がり、磁気特性が悪化するなどの問題があった。その理由は、水溶液に含まれる水分によって、混合及び乾燥工程中に軟磁性粉末が酸化して錆が発生し、樹脂と軟磁性粉末の密着性の低下、及び圧粉磁心の高密度化を阻害することと推測される。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、磁気特性に優れ、強度が向上された圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明の圧粉磁心の製造方法は、次のような工程を有することを特徴とする。
(1)軟磁性粉末と、絶縁樹脂と、シランカップリング剤とを混合し、混合粉末を作製する。
(2)得られた前記混合粉末を加湿条件下で乾燥する。
(3)乾燥後の前記混合粉末を加圧成形する。
(4)乾燥工程における前記加湿条件が、前記混合粉末に含まれるシランカップリング剤に対して所定量の水を供給できる水蒸気量を有する加湿雰囲気中で前記混合粉末の乾燥を行うものである。
上記の目的を達成するため、本発明の圧粉磁心の製造方法は、次のような工程を有することを特徴とする。
(1)軟磁性粉末と、絶縁樹脂と、シランカップリング剤とを混合する。
(2)得られた混合粉末を加湿条件下で乾燥する。
(3)乾燥後の前記混合粉末を加圧成形する。
(4)前記加湿条件が、前記混合粉末の混合工程の終了後及び/または乾燥工程の初期に所定量の水を前記混合粉末に散布し、前記混合粉末の乾燥を行うものである。
本発明によれば、圧環強度に優れ、鉄損の少ないリアクトルを得ることのできる圧粉磁心の製造方法を提供することができる。
圧粉磁心の圧環強度と水蒸気量の関係を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。本実施形態は、軟磁性粉末と絶縁樹脂の混合工程において、溶剤に溶かしたシランカップリング剤を添加する。混合工程では、軟磁性粉末に加えて、無機絶縁粉末及び/または潤滑剤を添加することもできる。
(1)軟磁性粉末
軟磁性粉末としては、純鉄粉、センダスト(Fe-Si-Al合金)粉、Fe-Si合金粉、Fe-Ni合金粉などが使用できる。他に、軟磁性粉末として、FeBPN(NはCu,Ag,Au,Pt,Pdから選ばれる1種以上の元素)が使用できる。軟磁性粉末は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水・ガスアトマイズ法により製造されるものを使用できるが、特に、水アトマイズ法によるものが好ましい。水アトマイズ法は、現状、もっとも入手性が良く低コストである。水アトマイズ法を使用した場合は、その粒子形状がいびつであるので、それを加圧成形した粉末成形体の機械的強度を向上させやすい。軟磁性粉末の平均粒径は30μm~100μmが好ましい。
(2)絶縁樹脂
絶縁樹脂は、軟磁性粉末に添加する。絶縁樹脂としては、常温で軟磁性粉末を加圧した場合に、ある程度緻密化された状態の成形体が得られ、しかも、その成形体に過大な力が加わらない限り、所定の形状を維持することのできる程度の粘性のある樹脂を用いる。
例として、シリコーン系樹脂、ワックスなどが挙げられる。シリコーン系の樹脂としては、メチルフェニル系シリコーン樹脂が好ましい。メチルフェニル系シリコーン樹脂の添加量は、軟磁性粉末に対して0.75wt%~2.0wt%が適量である。これよりも少なければ成形体の強度が不足して割れが発生したり、軟磁性粒子間の絶縁性が低下して渦電流損失の増加による磁気特性が低下する。これより多いと、密度低下による最大磁束密度の低下、ヒステリシス損失の増加による磁気特性が低下する問題が発生する。
その他の絶縁樹脂として、アクリル酸共重合樹脂(EAA)エマルジョンを使用することができる。混合するアクリル酸共重合樹脂(EAA)エマルジョンの添加量は合金粉末に対して0.5wt%~2.0wt%であり、その場合の乾燥温度と乾燥時間は、80℃~150℃で2時間である。アクリル酸共重合樹脂(EAA)エマルジョンの代りに、PVA(ポリビニルアルコール)水溶液(12%水溶液)を使用しても良い。PVA(ポリビニルアルコール)水溶液(12%水溶液)の添加量は、軟磁性粉末に対して0.5~3.0wt%が適量である。また、PVB(ポリビニルブチラール)の水溶液(12%水溶液)を用いても良く、キシレン、ブタノール等の溶剤に溶かして使用しても良い。その場合の軟磁性粉末に対する添加量は、PVAと同様である。
(3)シランカップリング剤
絶縁樹脂の混合工程において、シランカップリング剤を加える。シランカップリング剤の種類としては、アミノ系のシランカップリング剤を使用することができ、特に、γ-アミノプロピルトリエトキシシランが良い。軟磁性粉末に対するシランカップリング剤の添加量は、0.25wt%~1.0wt%が好ましい。軟磁性粉末にこの範囲のシランカップリング剤を添加することで、成形された圧粉磁心の密度の標準偏差、磁気特性、強度特性を向上させることができる。
(4)潤滑剤
潤滑剤として、ステアリン酸及びその金属塩ならびにエチレンビスステアラマイドなどのワックスが使用できる。これらを混合することにより、粉末同士の滑りを良くすることができるので、混合時の密度を向上させ成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。潤滑剤の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.1wt%~1.0wt%程度が好ましく、一般的には、0.5wt%程度である。
(5)無機絶縁粉末
軟磁性粉末に混合する無機絶縁粉末としては、融点が1000℃以上の無機絶縁粉末であるアルミナ粉末、マグネシア粉末、シリカ粉末、チタニア粉末、ジルコニア粉末の少なくとも1種類以上であることが好ましい。融点が1000℃以上の無機絶縁粉末を使用するのは、軟磁性粉末をアトマイズ法にて生産する際に発生する機械的歪みを取り除く目的で行う軟磁性粉末に対する熱処理工程で加えられる熱により、無機絶縁粉末が焼結し圧粉磁心の材料として使用できなくなることを防止するためである。
無機絶縁粉末の比表面積は65~130m2/g(粒子径にすれば7~200nm)が好ましく、より好ましくは100~130m2/g(粒子径で7~50nm)である。無機絶縁粉末の比表面積が大きいほうが、粒子径が小さくなる。粒子径が小さいほうが、軟磁性粉末間に無機絶縁粉末が隙間なく入り込み、密度の高い絶縁被膜が形成され、圧粉磁心成形時の歪が緩和される。一方、無機絶縁粉末の比表面積が大きすぎると、粒子径が小さくなりすぎて製造が困難となる。
無機絶縁粉末の添加量は、軟磁性粉末に対して0.5~2.0wt%とする。これより少なければ絶縁性能が十分に発揮できず、高い熱処理温度では渦電流損失が著しく増加する場合がある。一方、これより多いと絶縁性能は発揮できるが、成形密度が低くなり、渦電流損失以外の磁気特性が低下するという問題点が生じる場合がある。無機絶縁粉末を添加する場合は、後述する絶縁樹脂の混合工程前に、無機絶縁粉末の混合工程を設け添加・混合する。
(5)製造方法
本実施形態のコアの製造方法は、次のような各工程を有する。
(a)軟磁性粉末に絶縁樹脂とシランカップリング剤を添加して混合する工程。
(b)混合された軟磁性粉末と絶縁樹脂を加湿状態で乾燥する工程。
(c)乾燥された混合物を、加圧して成形体を作製する工程。
(d)得られた成形体を加熱する熱処理工程。
以下、各工程について、詳細に説明する。
(a)混合工程
混合粉末を作製する混合工程では、例えば、平均粒径が30μm~100μmの軟磁性粉末に対して、その0.75wt%~2.0wt%の絶縁樹脂を添加して、混合する。この混合工程において、前記のシランカップリング剤を加える。軟磁性粉末に対するシランカップリング剤の添加量は、0.25wt%~1.0wt%が好ましい。混合は、造粒機、混合機(W型、V型)、ポットミル等を使用して行う。
(b)乾燥工程
乾燥工程では、絶縁樹脂やシランカップリング剤などに含まれている溶剤などの揮発成分を蒸散させる。本発明においては、この乾燥工程において、混合粉末に含まれるシランカップリング剤を加湿することを特徴とする。乾燥温度は、100℃~300℃が好ましい。乾燥温度が100℃より小さいと絶縁樹脂による被膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなり、損失の増大を招く。一方、乾燥温度300℃より大きいと粉末が酸化することによりヒステリシス損失が高くなり、損失の増大を招く。乾燥時間は、1~3時間が好ましい。
シランカップリング剤は、水分により加水分解されてシラノールとなり、部分的に縮合してオリゴマー状態となる。続いて、無機材料の表面に水素結合的に吸着し、乾燥処理時に脱水縮合反応して強固な化学結合となる。従って、シランカップリング剤における無機材料と化学結合する反応基の数と同等の水分子量が必要となる。シランカップリング剤の分子量をX、シランカップリング剤における無機材料との反応基の数をY、水の分子量をZとする。必要とされる水の量Pは、シランカップリング剤添加量Qとすると下式で示される。
P=((Y×Z)/X)×Q
加湿の方法としては、次のものが採用できる。
(1)乾燥室内を一定の加湿雰囲気とする方法。すなわち、混合粉末に含まれるシランカップリング剤に対して、所定の水蒸気量を有する加湿雰囲気中で混合粉末の乾燥を行う。所定の水蒸気量は、シランカップリング剤の反応基が加水分解するために必要な水分量を供給できる量である。加湿雰囲気とする期間は、乾燥工程の初期から継続してあるいは断続的に行うことができる。ただし、シランカップリング剤に対する十分な加湿が行われた後は、加湿雰囲気から除湿雰囲気に変更すると共に加熱を行って余分な水を蒸散させ、シランカップリング剤の脱水縮合が円滑に進むようにする。
水蒸気量としては、大気中の飽和水蒸気量が20g/m以上で、圧環強度30MPa以上の強度を有する圧粉磁心が得られる。例えば、夏季の室温25℃、湿度100%の飽和水蒸気量は23g/m、冬季の室温20℃、湿度100%の飽和水蒸気量が17g/mであることから、通常の室温では、シランカップリング剤の反応基が効果的に加水分解するには不十分である。そこで、本発明では、30MPa以上の強度を有する圧粉磁心を得るためには飽和水蒸気量が20g/m以上となるように乾燥工程の雰囲気の温度と湿度を調整することで、必要な加湿量を得る。
(2)混合粉末の混合工程の終了後及び/または乾燥工程の初期に所定の水分量を混合粉末に散布し、混合粉末の乾燥を行う方法。すなわち、混合粉末に対して水をミスト状またはスプレー状に散布したり、或いは細かな水滴として滴下させることにより、混合粉末全体に水を供給し、シランカップリング剤と水とを接触させる。この場合、混合機による粉末の撹拌が継続しているため、水が混合粉末全体に行き渡る。一方、軟磁性粉末と絶縁樹脂を混合すると、混合の初期では軟磁性粉末の表面が空気中に露出しているが、徐々に絶縁樹脂やシランカップリング剤によって被覆され、混合工程が終期に近付くと軟磁性粉末の表面は絶縁樹脂によって覆われることになる。そのため、シランカップリング剤の水溶液を混合工程の初期から添加する場合のように、水と軟磁性粉末が直接接触することが無く、軟磁性粉末に錆が発生するおそれがない。
この水の散布は、乾燥工程の初期に行うこともできる。すなわち、乾燥工程では、混合粉末をテーブルやベルトコンベアなどの平坦物の表面に広げることで溶剤や潤滑剤などの蒸散を促進する。そこで、薄く広がった混合粉末の上から、水を散布あるいは滴下させることで、シランカップリング剤と水を接触させる。乾燥工程における水の散布量や滴下量は、余分な水は乾燥工程終盤までには蒸散されるので、前記の式で示した「必要とされる水の量P」よりも十分に多いことが好ましい。例えば、シランカップリング剤500gに対して反応基の加水分解を促進するために必要な水は500g×16(水の分子量)/221(シランカップリング剤の分子量)=81.5gであるが、実際には、250g程度散布するのが望ましい。
(c)成形工程
成形工程では、絶縁樹脂を添加した混合物に、さらに潤滑剤を添加して混合した後、これらの混合物を金型内に充填して、加圧成形する。その場合、金型温度は常温が好ましいが、80℃までの範囲であっても構わない。すなわち、ここでの常温とは、5℃~35℃までの範囲をいうが、5℃~80℃の範囲であっても構わない。成形圧力は、例えば、800MPa~1700MPaである。成形時に混合粉末が金型内に円滑に充填されるように、前記の潤滑剤を添加することができる。
(d)熱処理工程
熱処理工程では、成形工程を経た成形体に対して、NガスやN+Hガスなどの非酸化性雰囲気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破壊される温度(例えば、850℃または950℃とする)以下で、熱処理を行うことで圧粉磁心が作製される。絶縁被膜が破壊される温度以下で熱処理を行うのは、成形工程での歪みを開放すると共に、熱処理時の熱により軟磁性粉末の周囲に被覆した絶縁被膜が破れることを防止するためである。一方、熱処理温度を上げ過ぎると、この軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破れることにより、絶縁性能の劣化から渦電流損失が大きく増加してしまう。それにより、磁気特性が低下するという問題が発生する。
純鉄粉末(平均粒子径40μm)の粉末に対して、シランカップリング剤0.5wt%、メチルフェニル系シリコーン樹脂を1.8wt%混合し、その後、加湿時要件の異なる従来例1、比較例1,2及び実施例1~4の各サンプルについて、150℃で2時間の加熱乾燥を行い、混合粉末を作成した。各サンプルの加湿条件は表2に記載の通りである。
乾燥後の各サンプルの混合粉末について、さらに潤滑剤0.45wt%を混合した。これを室温にて1500MPaの圧力で加圧成型し、外形16.5mm、内径11.0mm、高さ5.0mmのリング状の成型体を作製し、2時間の熱処理を行い、圧粉磁心を作製した。得られた圧粉磁心に対して、φ0.6mmの銅線を一次側30ターン、二次側30ターン巻回してリアクトルを作製し、10kHz,100mTの測定条件によって、圧粉磁心の圧環強度、鉄損及び密度を測定した。圧環強度測定は、単位MPa、JIS Z 2507に基づき測定した。
Figure 0007161307000001
この表1から分かるように、同じ純鉄粉末、シランカップリング剤、メチルフェニル系シリコーン樹脂を使用した場合でも、加湿条件を代えることで得られる圧粉磁心の圧環強度、鉄損及び密度が異なる。すなわち、加湿を行わなかった従来例1では、圧環強度が不足している。
比較例1は、磁性粉末にシランカップリング剤を混合する工程においてシランカップリング剤の代わりに、磁性粉末に対して0.5wt%の水と磁性粉末に対して0.5wt%のシランカップリング剤を混合した水溶液を用いた。その結果、密度が低下し密度も得られない結果となり、混合工程での水の添加では効果が得られないことが確認できる。比較例2は、シランカップリング剤の混合工程前に磁性粉末にシランカップリング剤と同量の磁性粉末に対して0.5wt%の水を直接添加する工程を追加した。その結果、強度向上の効果は得られるが、水が直接磁性粉末に触れることによりサビの影響が発生し、損失が悪化していることが確認できる。
実施例1ではシランカップリング剤に対して、同量の水(磁性粉末に対して0.5wt%の水)を乾燥工程前に添加し、乾燥工程を行ったその結果、損失・密度の悪化は無く、強度向上が確認できる。実施例2と実施例3ではさらに添加する水の量を増やして特性の確認を行った。すなわち、実施例2ではシランカップリング剤に対して、実施例1の2倍の水(磁性粉末に対して1.0wt%の水)を添加した。実施例3ではシランカップリング剤に対して、実施例1の4倍の水(磁性粉末に対して2.0wt%の水)を添加した。添加する水の量を増加させた場合でも、シランカップリング剤の反応基の数は決まっているため効果が得られ過剰に添加されても悪影響が無いことが確認できる。これにより、水を必要量より多く添加しておくことが可能となり、次工程までの時間に揮発してしまう水の量を考慮した水の添加が可能となる。実施例4では炉の中を100℃の飽和水蒸気量である594mの加湿雰囲気として粉末の乾燥工程を行った。その結果、損失・密度の悪化は無く、強度向上が確認できる。
このように本実施例によれば、乾燥工程直前または造粒工程後から乾燥工程前までの間に水を添加すること、または、乾燥を加湿雰囲気中で行うことで、乾燥工程でのシランカップリング剤の加水分解時に充分な水分を供給することができる。これにより軟磁性粉末表面とシランカップリング剤の密着性が向上し、圧粉磁心の強度が向上する。また、混合工程後であるため軟磁性粉末表面はシランカップリング剤と絶縁樹脂に覆われている。そのため軟磁性粉末が直接水に触れにくくなり、軟磁性粉末のサビによる損失の悪化、透磁率の低下を抑制することができる。
表2は、出願人の実験による水蒸気量と圧環強度の関係を示すデータである。図1は、表2のデータを、縦軸を圧環強度、横軸を水蒸気量として表したグラフである。このグラフから分かるように、目標とする圧環強度を15MPa以上とすると、8.6g/m3以上の水蒸気量があればよい。すなわち、圧粉磁心の強度は高い方が良いことから、前記表1に示す実施例は、より高い強度を想定してシランカップリング剤の反応基の加水分解が確実に行われるように高い加湿量を与えたが、一般的なリアクトルにおいては圧環強度が15MPa以上であれば十分なことから、8.6g/m3以上の水蒸気量があればよい。
Figure 0007161307000002
[他の実施形態]
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

Claims (6)

  1. 軟磁性粉末と、絶縁樹脂と、シランカップリング剤とを混合し、混合粉末を作製し、
    得られた前記混合粉末を加湿条件下で乾燥して、
    乾燥後の前記混合粉末を加圧成形し、
    乾燥工程における前記加湿条件が、前記混合粉末に含まれるシランカップリング剤に対して所定量の水を供給できる水蒸気量を有する加湿雰囲気中で前記混合粉末の乾燥を行うものであることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 軟磁性粉末と、絶縁樹脂と、シランカップリング剤とを混合し、
    得られた混合粉末を加湿条件下で乾燥して、
    乾燥後の前記混合粉末を加圧成形し、
    前記加湿条件が、前記混合粉末の混合工程の終了後及び/または乾燥工程の初期に所定量の水を前記混合粉末に散布し、前記混合粉末の乾燥を行うものであることを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記所定量の水が、シランカップリング剤の分子量をX、シランカップリング剤における無機材料との反応基の数をY、水の分子量をZ、最低限必要とされる水の量P、シランカップリング剤添加量Qとすると、下式で示される水分量である請求項または請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
    P=((Y×Z)/X)×Q
  4. 前記軟磁性粉末が、純鉄、FeSi合金、FeNi合金またはFeSiAl合金であることを特徴とする請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記絶縁樹脂が、メチルフェニル系シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  6. 前記軟磁性粉末に、絶縁樹脂を混合するに当たり、無機絶縁粉末を添加したことを特徴とする請求項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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