JP2010185126A - 複合軟磁性材料とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鉄粉末が本来有する高い飽和磁束密度を維持しながら、2.5〜8質量%Si-残Fe合金が有する高透磁率、低保磁力、低鉄損失の特性を併せ持つことができるようにした複合軟磁性材料とその製造方法の提供。
【解決手段】絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末とバインダーが混合圧密され、焼成されてなり、前記鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末が圧密された主相と、該主相の周囲に形成されたバインダーを主体とする粒界相とが具備されてなり、前記主相に占める2.5〜8質量%Si-残Fe合金の割合が10質量%以上、44質量%未満であり、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下である。
【選択図】図4

Description

本発明は、絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末をバインダーとともに混合圧密し、焼成してなる複合軟磁性材料とその製造方法に関する。
インバーターやトランスのコア、チョークコイルなどの電子機器用電磁気部品は、電子機器の小型化、高性能化に伴い、より厳しい材料特性が求められるようになってきている。このような部品に用いられる軟磁性材料として、従来、Fe-Si系合金やケイ素鋼などの金属磁性材料、フェライトなどの酸化物磁性材料が使用されてきた。しかし、Fe-Si合金の金属磁性材料は、粉末とした場合の硬度が高く、粉末成形により高密度化することが難しい問題がある。
例えば、粉末成形による高密度複合軟磁性材料の製造では、先ず、絶縁皮膜を有する金属軟磁性粉末と、必要に応じて添加される潤滑剤粉末とバインダーからなる原料粉末を金型のキャビティに充填した後、加圧成形することによって目的の形状の圧粉体を作製し、その後、圧粉体を焼成することによって複合軟磁性材料が製造されている。
従って、成形に用いる粉末自体の硬度が高い場合、圧粉体として高い圧密度を得ることが困難となり易い問題がある。例えば、2.5〜8質量%Si-残Fe合金は室温で加工する場合、塑性変形が極めて少なく、粉砕による微粉末化は可能であるが、板状には成形困難なものである。従って、磁心などの磁気部品に成形しようとして、粉末状体で成形しても、ほとんど塑性変形しないから、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末は添加した結合剤で単純に結びついている状態となっているのみであり、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末自体の透磁率は高くとも、圧粉磁心とした場合に高い透磁率を得ることができない問題がある。
そこで従来、酸化物磁性材料と金属磁性材料を混合し、複合化して、高性能化しようとする試みがなされている。
例えば、パーマロイなどの金属磁性粉末をフェライトなどの酸化物磁性材料で被覆し、その後に成形して熱処理する方法が知られている。(特許文献1参照)
また、アスペクト比を規定したFe-Si系合金粉末と扁平状Fe粉末混合し、圧密後に焼成処理してなる複合磁性材料が知られている。(特許文献2参照)
特開昭56−38402号公報 特開平6−236808号公報
前記パーマロイなどの金属磁性粉末をフェライトなどの酸化物磁性材料で被覆して製造される軟磁性複合材料は、熱処理するとそれらの界面で金属とフェライトが反応し易いので、磁気特性が劣化するという問題を有していた。
また、Fe−Si系合金粉末と他の軟磁性金属粉末を混合する方法にあっては、Fe−Si系合金粉末が非常に硬いために、圧縮性の良好な軟磁性金属粉末を混合したとしても、20ton/cm程度の高圧成形技術が必要となり、ダストコアなど、円筒形のような単純な形状の製品しか得られないという問題を有していた。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末に対して混合する鉄粉末の選定と、それらの添加量の範囲、それぞれの粒径範囲を好適に選択し、バインダーの条件等も加味して最適な配合とすることにより、鉄粉末が本来有する高い飽和磁束密度を維持しながら、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末が本来有する高透磁率、低保磁力、低鉄損失の特性を併せ持つことができるようにした複合軟磁性材料とその製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る複合軟磁性材料は、絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末とバインダーが混合圧密され、焼成されてなり、前記鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末が圧密され焼成された主相と、該主相の周囲に生成されたバインダーを主体とする粒界相とが具備されてなり、前記主相に占める2.5〜8質量%Si-残Fe合金の割合が10質量%以上、44質量%未満であり、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下であることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料において、前記鉄粉末を圧密し焼成してなる鉄主相の平均粒径を20〜50μm、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を圧密し焼成してなる合金主相の平均粒径を50〜120μmとすることができる。
本発明に係る複合軟磁性材料において、絶縁処理された鉄粉末として、Mg含有酸化物皮膜を具備してなる純鉄粉末を用いることができる。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末とバインダーを少なくとも混合圧密し、焼成することにより、前記鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末を圧密してなる主相と、該主相の周囲に形成されたバインダーを主体とする粒界相とを具備した複合軟磁性材料を製造するにあたり、絶縁処理された鉄粉末に対し、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の添加割合を10質量%以上、45質量%未満としてこれら粉末を混合圧密し、焼成することにより、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下の複合軟磁性材料を得ることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、平均粒径20〜50μmの絶縁処理された鉄粉末を用い、平均粒径50〜120μmの2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を用いることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、絶縁処理された鉄粉末として、Mg含有酸化物皮膜により絶縁処理された純鉄粉末を用いることを特徴とする。
本発明の複合軟磁性材料であるならば、絶縁処理した鉄粉末が有する高い飽和磁束密度を維持しながら、適量混合した2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末が有する低鉄損と低い保磁力と少ない渦電流損失を有効に得ることが可能となる。更に、本発明の複合軟磁性材料であるならば、従来の2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の成形に必要としていた高い成形力を要することなく一般的な粉末成形に必要な程度の圧力で圧密成形が可能で上述の特性を発揮できる複合軟磁性材料を提供することができる。
また、本発明において、絶縁処理した鉄粉末として、Mg含有酸化物皮膜により絶縁処理された純鉄粉末を用いるならば、高い飽和磁束密度と低鉄損と低い保磁力と少ない渦電流損失を確実に得ることが可能となる。
図1は、本発明に係る複合軟磁性材料の実施例において酸化物被覆純鉄粉末に配合する2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末の組成限定理由を示すもので、Fe−Si合金Si量と鉄損の関係を示す図である。 図2は、本発明に係る複合軟磁性材料の実施例において酸化物被覆純鉄粉末に対する2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末の配合比と飽和磁束密度の関係を示す図である。 図3は、本発明に係る複合軟磁性材料の実施例において、飽和磁束密度と損失の関係を示す図である。 図4は、本発明に係る複合軟磁性材料の実施例において酸化物被覆純鉄粉末に対する2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末の配合比と損失との関係を示す図である。
以下、本発明を適用した複合軟磁性材料とその製造方法について詳細に説明する。
本発明を用いて複合軟磁性材料を製造するには、例えばプレス成型機などの圧密装置を用い、複合軟磁性材料の原料粉末として例えばMgO系絶縁皮膜付き純鉄粉末と、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末に、バインダーと必要に応じて潤滑剤を添加し混合した混合粉末を圧密装置の金型のキャビティに充填した後に、加圧成形することによって所定形状の圧粉体を得ることができる。その後、得られた圧粉体を所定の温度範囲で焼成することにより目的の形状の複合軟磁性材料を得ることができる。
本発明において用いる絶縁処理済みの純鉄粉末とは、例えば、(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が純鉄粒子の表面に被覆形成されたMg含有酸化物被覆純鉄粉末、リン酸塩被覆純鉄粉末、またはシリカのゾルゲル溶液(シリケート)もしくはアルミナのゾルゲル溶液などの湿式溶液を添加し混合して純鉄粉末表面に被覆したのち乾燥して焼成した酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウム被覆純鉄粉末などを用いることができるが、これらに限るものではなく、絶縁被覆層で純鉄粉末を被覆した構造の絶縁処理済み純鉄粉末を広く適用することができる。
前記Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を被覆したMg含有酸化物被覆純鉄粉末とは例えば以下の(A)〜(D)の製造方法にて得られる粉末である。
(A)純鉄粉末に酸化雰囲気中で室温〜500℃に保持する酸化処理を施した後、この粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱し、さらに必要に応じて酸化雰囲気中、温度:50〜400℃で加熱すると、純鉄粉末表面にMgを含む酸化絶縁被膜を有するMg含有酸化物被覆純鉄粒子が得られる。
(B)純鉄粉末に前述の酸化処理を施した後、一酸化ケイ素粉末を添加し混合した後または混合しながら真空雰囲気中、温度:600〜1200℃保持の条件で加熱し、さらにMg粉末を添加し混合した後または混合しながら真空雰囲気中、温度:400〜800℃保持の条件で加熱すると、純鉄粉末の表面にMg−Si含有酸化膜が形成されたMg−Si含有酸化物被膜純鉄粉末が得られる。
(C)純鉄粉末に前述の酸化処理を施した後、一酸化ケイ素粉末およびMg粉末を同時に添加し混合した後、または、混合しながら真空雰囲気中、温度:400〜1200℃保持の条件で加熱すると、純鉄粉末の表面にMg−Si含有酸化物膜が形成されたMg−Si含有酸化物被膜軟磁性粉末が得られる。
(D)純鉄粉末に前述の酸化処理を施した後、Mg粉末を添加し混合した後または混合しながら真空雰囲気中、温度:400〜800℃保持の条件で加熱すると純鉄粉末の表面にMg含有酸化膜が形成されたMg含有酸化物被覆純鉄粉末が得られる。
この粉末にさらに一酸化ケイ素粉末を添加し混合した後または混合しながら真空雰囲気中、温度:600〜1200℃保持の条件で加熱すると、純鉄粉末の表面にMg−Si含有酸化物膜が形成されたMg−Si含有酸化物被覆軟磁性粉末が得られる。
前記一酸化ケイ素粉末の添加量は0.01〜1質量%の範囲内にすることができ、前記Mg粉末の添加量を0.05〜1質量%の範囲内にすることができる。前記真空雰囲気は圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの真空雰囲気とすることができる。
これらの製造方法により得られたMg含有酸化物被覆純鉄粒子は、(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の被覆密着性が格段に優れたものとなり、この粒子をプレス成形して圧粉体を作製しても絶縁被膜が破壊し剥離することが少ない。
前述の酸化物被覆純鉄粉末は平均粒径:20〜50μmの範囲内にある粉末を使用することが好ましい。その理由は、平均粒径が小さすぎると、粉末の圧縮性が低下し、飽和磁束密度の値が低下するので好ましくなく、一方、平均粒径が大きすぎると、軟磁性粉末内部の渦電流が増大して高周波における透磁率が低下するおそれを生じやすいことによるものである。
前記酸化物被覆純鉄粉末に加え、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を用意する。
組成限定理由は2.5質量%以下Si合金では鉄損が十分低下せず、また8質量%以上Si合金だと磁束密度の低下が大きくなるため、この範囲とした。
この2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末として50〜120μmの粒径範囲の粉末を用いることができる。
これらの粉末を用意したならば、酸化物被覆純鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末にそれぞれバインダー材としてのシリコーンレジンなどのSiを含むバインダー材を個々に混合し、それぞれの粉末をシリコーン樹脂被覆粉末とする。
酸化物被覆純鉄粉末にバインダー材を被覆するには、0.01〜1質量%程度のバインダー材を添加して攪拌混合被覆した後、150〜250℃の範囲、より好ましくは200〜250℃の範囲に加熱して焼付け被覆することができる。2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末にバインダー材を被覆するには、0.05〜3質量%程度のバインダー材を添加して攪拌混合被覆した後、80〜250℃の範囲、より好ましくは100〜200℃の範囲に加熱して焼付け被覆することができる。
酸化物被覆純鉄粉末にバインダー材を被覆して焼き付ける場合、焼付け温度として、50〜250℃の範囲を選択できるが、この範囲を外れると150℃以下では成形時にバインダー材が剥離し、酸化物絶縁被覆を損傷することが原因と思われる比抵抗の低下が見られ、また、250℃を越えるとバインダー材が硬くなり、成形時の充填密度に低下が見られるので望ましくない。また、この範囲内であっても、より高い密度と比抵抗を得るために、200〜250℃の範囲の焼付け温度がより好ましい。
2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末にバインダー材を被覆して焼き付ける場合、焼付け温度として、150〜250℃の範囲を選択できるが、この範囲を外れると80℃以下であると成形時に密度の低下やばらつきが見られること、250℃を超える温度では比抵抗の低下が見られるので望ましくない。また、この範囲内であっても、より高い密度と比抵抗を得るために、100〜200℃の範囲の焼付け温度がより好ましい。
これらのバインダー材を被覆した酸化物被覆純鉄粉末に対し、バインダー材を被覆した2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を10〜44質量%の割合で混合し、圧密装置の金型に収容して金型温度80〜150℃にて8〜10ton/cm程度の成形圧力で目的の形状に温間成形して圧密体とする。
ここで用いる8〜10ton/cm程度の成形圧力は、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の圧密に使用する従来の20ton/cm程度の成形圧力よりも格段に低く、一般的な粉末成形法に利用する圧密力と同等レベルなので、一般的な成形圧力であっても2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を利用して本発明に係る優れた複合軟磁性材料の製造に利用できる。
その後、この圧密体を500℃〜800℃の温度で1時間程度、真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気(Ar、N2)中、または、非酸化雰囲気(H雰囲気)において焼成して目的の複合軟磁性材料を得ることができる。
前述の圧密処理と焼成処理によって絶縁処理を施した純鉄粉末は圧密されて鉄主相となり、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末は圧密されて2.5〜8質量%Si-残Fe合金主相となり、それらの鉄主相と2.5〜8質量%Si-残Fe合金主相とが構成する主相に対してそれらの粒界に存在するようにバインダー材が焼成された結果として生成する粒界相が存在する組織を呈し、目的の複合軟磁性材料を得ることができる。
以上説明の如く製造された複合軟磁性材料は、高周波域(10〜20kHz)において低損失であり、鉄損、ヒステリシス損、保磁力が低く、渦電流損失が少なく、比抵抗が高いという優れた軟磁気特性を有する。これは、純鉄粉末を絶縁性、密着性共に優れた前述の(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の被膜で覆い、好適な粒径範囲とした純鉄粉末に対し、好適な粒径範囲の適量の2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を混合し、圧密し、焼成して複合軟磁性材料としているので、圧密体として焼成した状態であっても、純鉄粉末が有する高い飽和磁束密度を維持しながら、2.5〜8質量%Si-残Fe合金が有する高透磁率、低保磁力、低鉄損失の特性を発揮できる複合軟磁性材料を提供できるためである。
なお、純鉄粉末の絶縁処理は前述の(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の被膜に限るものではなく、リン酸塩被覆純鉄粉末など、他の絶縁処理を施した被膜であっても同様の複合軟磁性材料を得ることができるのは勿論である。
前記の如く純鉄粉末と2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末を混合して圧密焼成してなる複合軟磁性材料は、2.5〜8質量%Si-残Fe合金に比べて軟質の純鉄粉末を適切な配合比で混合し、圧密し、焼成してなるので、8〜10ton/cm程度の成形圧力で充分な磁気特性を発揮する複合軟磁性材料とすることができる。
次に、絶縁処理を施した純鉄粉末に対し、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の添加割合を10質量%以上、44質量%未満の範囲としたことにより、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末が本来有する高周波域(10〜20kHz)において低損失であり、鉄損、ヒステリシス損、保磁力が低く、渦電流損失が少なく、比抵抗が高いという優れた軟磁気特性を得ることができる。2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の添加割合が前述の範囲を下回るとこれらの特性を有効に発揮することができなくなる。また、2.5〜8質量%Si-残Fe合金粉末の添加割合が多すぎると純鉄粉末の量が少なくなるので、高い飽和磁束密度を得難くなるとともに、成形時に必要な圧力が高くなり、前述の範囲の成形圧力では良好な密度が得難くなる。
本発明により得られる複合軟磁性材料を用いて構成される電磁気回路部品として、例えば、磁心、電動機コア、発電機コア、ソレノイドコア、イグニッションコア、リアクトルコア、トランスコア、チョークコイルコアまたは磁気センサコアなどへの利用が可能であり、いずれにおいても優れた特性を発揮し得る電磁気回路部品を提供できる。
そして、これら電磁気回路部品を組み込んだ電気機器には、電動機、発電機、ソレノイド、インジェクタ、電磁駆動弁、インバータ、コンバータ、変圧器、継電器、磁気センサシステム等があり、これら電気機器の高効率高性能化や小型軽量化に寄与するという効果がある。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
Mg酸化物被覆純鉄粉末として粒径D50(=20μm〜50μm)の粉末と、6.5質量%Si−残Fe合金粉末粒径としてD50(=50μm〜120μm)の粉末を用意した。粒径の測定には、LEED&NORTHRUP社製のMICROTRAC FRAを使用した。
Mg酸化物被覆純鉄粉末は、純鉄粉末に対して大気中220℃にて加熱処理を行って表面に酸化膜を形成し、この軟磁性粉末に対して0.3質量%のMg粉末を配合し、この配合粉末を造粒転動攪拌混合装置によって真空中、650℃にて1時間転動することにより膜厚30nmの(Mg,Fe)Oで示されるMg含有酸化物皮膜を形成した絶縁処理済み純鉄粉末を用いた。
他の絶縁被覆純鉄粉末として、へガネスジャパン製リン酸鉄被覆鉄粉S110iを用意し、比較例試料として被覆を施していない純鉄粉末も同等の粒径の粉末を用意した。
これらの粉末にバインダー材としてのシリコーン樹脂を0.5質量%添加混合し、250℃にて焼き付け、一方、2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末の代表例として、6.5質量%Si−残Fe合金粉末はシリコーン樹脂を1質量%添加混合し、150℃に加熱して焼き付けを行った。引き続いてこれらの各粉末のうち、Mg酸化物被覆純鉄粉末と6.5質量%Si−残Fe合金粉末をMg酸化物被覆純鉄粉末に対する6.5質量%Si−残Fe合金粉末の割合において、0質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%の割合で混合し分けた試料を各々準備し、これらの各試料を成形温度150℃、8ton/cmの成形圧力で外形35mm、内径25mm、高さ5mmのリング形状に圧密し、各試料を作成した。
得られた試料について、6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比(酸化物被覆純鉄粉末に対する配合比、質量%)を表1に表示するとともに、各試料の密度(g/cm)、μmax、磁場10kA/m時の飽和磁束密度(B10kA/m:T)、保磁力(Hc:A/m)、鉄損を測定した結果を表1に併せて示す。
Figure 2010185126
図1は酸化物被覆純鉄粉末の配合に用いるSi−残Fe合金粉末の組成の限定理由を示す図である。
これら2〜9質量%Si-Fe合金(2質量%Si-Fe合金、2.5質量%Si-Fe合金、3質量%Si-Fe合金、5質量%Si-Fe合金、6.5質量%Si-Fe合金、7質量%Si-Fe合金、8質量%Si-Fe合金、9質量%Si-Fe合金)を酸化物被覆純鉄粉末に対し40質量%配合した混合粉末から作製した試料の鉄損値は図1に示す結果から、2.5質量%以下Si合金では鉄損が十分低下せず、また8質量%以上Si合金だと鉄損値は良好だが磁束密度の低下が大きくなるため、2.5質量%Si〜8質量%Siを本発明の範囲とした。
図2は表1に示す酸化物被覆純鉄粉末に対する上記代表例としての6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比と飽和磁束密度(B10k)の関係をプロットした図である。
図2に示す結果から、飽和磁束密度については配合比45質量%以上になると顕著に低下するので、酸化物被覆純鉄粉末に対する6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比は磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上とするためには、10質量%以上、44質量%未満が好ましく、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1Tを得るためには質量10%以上、40質量%以下がより好ましい範囲と思われる。
図3は表1に示す磁場10kA/m時の磁束密度と鉄損(磁束密度0.1T、周波数10kHz時)の関係をプロットした図である。
図3に示す結果から、6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合により磁束密度を低下させることなく、鉄損を低減する効果を得られることが判る。
図4は表1に示す酸化物被覆純鉄粉末に対する6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比と損失との関係をプロットした図である。
図4に示す結果から、配合比10質量%以上が損失については好ましい範囲と思われる。図4に示す如く6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比において10質量%以上において、鉄損(磁束密度0.1T、周波数10kHz時)20W/kg以下を実現できる。
次に、純鉄粉末にシリコーン樹脂を0.5質量%混合して250℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆純鉄粉末に対し、シリコーン樹脂を1質量%混合して200℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆6.5質量%Si−残Fe合金粉末を30質量%配合し、これらを混合して成形温度150℃、8ton/cmの成形圧力で圧密し、その後、500℃あるいは650℃にて焼成して各試料を作成した。各試料の比抵抗の測定値を以下の表2に示す。
Figure 2010185126
表2に示す結果から、良好な鉄損(数値が小)とし、ヒステリシス損を下げるためには、焼成温度は高い方が好ましく、焼成温度500℃にて良好な比抵抗が得られるが、より良好な鉄損を得るには、650℃の焼成温度が好ましい。
次に、6.5質量%Si−残Fe合金粉末にシリコーン樹脂を1質量%混合して150℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆6.5質量%Si−残Fe合金粉末に対し、シリコーン樹脂を0.5質量%混合して150℃、200℃、250℃、270℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆絶縁鉄粉を6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比が30質量%になるように配合し、これらを成形温度150℃、8ton/cmの成形圧力で圧密し、その後、650℃にて焼成して各試料を作成した。各試料の密度、比抵抗および鉄損の測定値を以下の表3に示す。
Figure 2010185126
表3に示す試験結果から、純鉄粉末に対するシリコーン樹脂の焼付け温度は150〜250℃の範囲を選択できるが、より好ましくは、200〜250℃の範囲であることが判る。
純鉄粉末にシリコーン樹脂を0.5質量%混合して250℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆純鉄粉末と、シリコーン樹脂を1質量%混合して50℃、80℃、100℃、150℃、200℃、250℃、270℃で焼き付けたシリコーン樹脂被覆2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末を6.5質量%Si−残Fe合金粉末の配合比が30質量%になるように配合し、これらを成形温度150℃、8ton/cmの成形圧力で圧密し、その後、650℃にて焼成して各試料を作成した。各試料の密度、比抵抗および鉄損の測定値を以下の表4に示す。
Figure 2010185126
表4に示す試験結果から、6.5質量%Si−残Fe合金粉末におけるシリコーン樹脂の焼付け温度は80〜250℃の範囲を選択できるが、より好ましくは、100〜200℃の範囲であることが判る。
以上説明の試験結果から、本発明を実施することで、純鉄粉末に2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末を添加し、8ton/cmの成形圧力で圧密することによって、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下である優れた軟磁気特性の複合軟磁性材料を製造できることが明らかになった。

Claims (6)

  1. 絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末とバインダーが混合圧密され、焼成されてなり、前記鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末が圧密され焼成された主相と、該主相の周囲に生成されたバインダーを主体とする粒界相とが具備されてなり、前記主相に占める2.5〜8質量%Si−残Fe合金の割合が10質量%以上、44質量%未満であり、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下であることを特徴とする複合軟磁性材料。
  2. 前記絶縁処理された鉄粉末を圧密し焼成してなる鉄主相の平均粒径が20〜50μm、2〜8質量%Si−残Fe合金粉末を圧密し焼成してなる2.5〜8質量%Si−残Fe合金主相の平均粒径が50〜120μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合軟磁性材料。
  3. 絶縁処理された鉄粉末が、Mg含有酸化物皮膜を具備してなる純鉄粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合軟磁性材料。
  4. 絶縁処理された鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末とバインダーを少なくとも混合圧密し、焼成することにより、前記鉄粉末と2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末を圧密し焼成してなる主相と、該主相の周囲に生成されたバインダーを主体とする粒界相とを具備した複合軟磁性材料を製造するにあたり、
    絶縁処理された鉄粉末に対し、2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末の添加割合を10質量%以上、44質量%未満としてこれら粉末を混合圧密し、焼成することにより、磁場10kA/m時の飽和磁束密度1.1T以上、保磁力220A/m以下、鉄損(0.1T、10kHz時)20W/kg以下の複合軟磁性材料を得ることを特徴とする複合軟磁性材料の製造方法。
  5. 平均粒径20〜50μmの絶縁処理された鉄粉末を用い、平均粒径50〜120μmの2.5〜8質量%Si−残Fe合金粉末を用いることを特徴とする請求項4に記載の複合軟磁性材料の製造方法。
  6. 絶縁処理された鉄粉末として、Mg含有酸化物皮膜により絶縁処理された純鉄粉末を用いることを特徴とする請求項4または5に記載の複合軟磁性材料。
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