JP2011017057A - アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体、およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 MHz帯域の高周波で損失の低い材料を提供する。
【解決手段】 アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムからなる粉末と、酸化鉄粉末とを混合する工程と、得られた混合粉を成形して成形体を得る工程と、酸化鉄を固相還元するために前記成形体を不活性ガス雰囲気中で熱処理する反応熱処理工程と、熱処理された成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結する焼結熱処理工程とを有することを特徴とするアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の製造方法。
【選択図】 図2

Description

本発明は、アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体、およびその製造方法に関する。
金属の軟磁性材料としてFe系合金やアモルファス合金が用いられており、インダクタ素子やトランス等の磁心材料、ノイズ対策シートの磁性コアなどに適用されている。近年の電子部品においては小型で高周波でも低損失で駆動することが要求されており、動作電流は大電流化する傾向にある。これらの要求に応えるためには従来のフェライトに比べて飽和磁化が大きく直流重畳特性に優れた金属軟磁性材料を用いることが望まれている。しかし金属材料は電気抵抗が低いために渦電流が流れやすく、数百kHzの高周波磁界の下では損失が大きくなってしまい(実部の透磁率が低下してしまい)軟磁性材料として用いることが困難であった。これを解決するべく、たとえばFe系合金の粉末間を樹脂によって絶縁した状態で成形することで、50kHzの高周波でもコアロスの低い圧粉磁心が開発されている(特許文献1)。特許文献1は、30MHzの高周波のQは記述しているが、MHzの高周波の損失を具体的に開示してはいない。
特開2006−274300号公報(表1)
金属粉末の粒径を小さくしていくと絶縁性が向上するため高周波でも渦電流損失を抑制することができる。しかし金属粉末は微粒径化すると酸化劣化しやすくなり取り扱いが困難となるだけでなく、酸化皮膜の体積比が増大して保磁力の増大が無視できなくなる。その結果、ヒステリシス損失が渦電流損失の抑制分以上に増大してしまう。したがって、金属軟磁性材料はフェライト材料に比べて高い飽和磁化を有するものの、耐食性や絶縁性に課題があり、MHz帯域の高周波での使用が困難であった。
そこで、本発明の目的は、MHz帯域の高周波で損失の低い材料を提供することである。
本発明のアルミニウム酸化物と鉄複合の焼結体は、アルミニウム酸化物相と粒状の鉄相を有し、前記アルミニウム酸化物中に粒状の鉄相が分散していることを特徴とする。アルミニウム酸化物は高い絶縁性(〜1014Ω・m)を有するため、高い絶縁性と高い飽和磁化を備えたアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体を提供することができる。
前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の飽和磁化は60Am/kg以上、2×10Am/kg以下であることが好ましい。より好ましくは飽和磁化を60Am/kg以上、205Am/kg以下とする。飽和磁化が60Am/kg未満であるとフェライトと同等の磁化となり優位性が無くなる。さらに鉄の含有率が低くなり実用的でない。飽和磁化が2×10Am/kgを超えるとアルミニウム酸化物の含有率が少なくなり、鉄を十分被覆することができず耐食性が低下してしまう。さらに絶縁性が低下してしまう。より好ましくは90Am/kg以上、190Am/kg以下である。この範囲であれば十分な鉄含有量を有し、優れた耐食性および高い絶縁性を兼ね備える。
また、前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体において、前記粒状の鉄相の平均粒径は0.005μm以上、1μm未満であることが好ましい。0.005μm未満であるとFeの結晶化が十分ではなく、あるいはbcc構造のFeが生成しにくく十分な磁化が発現されない。一方、粒状の鉄相の粒径が1μm以上であると粒内に渦電流が流れやすくなり鉄損が大きくなるので好ましくない。さらに粒径の粗大化は鉄相同士の間隔を広げ、複合焼結体に分散する鉄相の密度を減少させる。これは粒状の鉄相同士の磁気的な結合を弱め、透磁率の低下につながるので好ましくない。前記粒状の鉄相の平均粒径はより好ましくは0.01μm以上、0.5μm未満である。この範囲であればフェライトよりも高い飽和磁化を有し且つ高い絶縁性を備えることができる。さらに複合焼結体中の粒状の鉄相の密度が高く磁気的に結合した状態となり、実用的な透磁率が得られる。
前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体は高い絶縁性を有するため、高周波における損失が小さい。すなわち100MHzの交流磁界中で測定した複素透磁率において実部透磁率と虚部透磁率の比率で表される損失係数tanδが0.35以下であることを特徴とする。この範囲であれば損失が小さく実用的である。
tanδ=虚部透磁率/実部透磁率
また前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体は高い飽和磁化を有するため、直流重畳特性に優れる。すなわち前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体に巻き線を施し、重畳電流を0Aから20Aまで変えて流した際に、20Aにおけるインダクタンスは、0Aにおけるインダクタンスに対して、80%超、100%以下の値であることを特徴とする。
前記アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の製造方法において、その原料粉末はアルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末と酸化鉄粉末とを用いる。そしてアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体を製造する工程は、これら混合物を成形する成形工程と、混合物において酸化鉄をアルミニウムで還元させる反応熱処理工程と、成形体の焼結を行う焼結熱処理工程の3工程を備える。前記原料粉末の混合粉を成形してから反応熱処理後に焼結熱処理を行っても良いし、反応と焼結を同時に行っても良い。また混合粉を反応熱処理して得た粉末を成形した後に焼結熱処理を行っても良い。
酸化鉄を還元するための反応熱処理温度は800℃以上、1400℃未満が好ましい。800℃未満であると還元反応が十分に進行しない。また1400℃以上で熱処理すると還元された鉄が焼結してしまい、粒状の鉄相の粒径が粗大化してしまう。より好ましくは850℃以上、1200℃以下である。この範囲であれば粒径を粗大化させることなく十分な還元反応を実施することができる。
また焼結熱処理における熱処理温度は800℃以上、1400℃未満が好ましい。800℃未満であると焼結が不十分となる。一方、1400℃以上で熱処理すると還元された粒状の鉄相が焼結粒成長してしまい粒径が粗大化してしまうので好ましくない。
本発明によれば、MHz帯域の高周波で損失の低い材料およびその製造方法を提供することができる。
実施例1の粉砕粉のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例1の複合焼結体の走査型電子顕微鏡写真である。 図2の写真に分析点とスケールを表示した図である。
本発明は、アルミニウム酸化物と鉄粒子を有し、アルミニウム酸化物相中に鉄相が分散していることを特徴とするアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体である。アルミニウム酸化物相中に前記鉄相が分散している形態は、アルミニウム酸化物が粒状の鉄相を包含している状態であり、鉄粒子の周囲に球形等のアルミニウム粒子が配置されている形態とは異なる。ここでいうアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体は、微粒子としての形態とは異なり、アルミニウム酸化物と鉄を有するバルク状の構造体である。したがって、アルミニウム酸化物(Al)の焼結体と同様の用途に用いることができる。また、鉄を含有させることによって、かかる構造体に、磁界を利用した吸着能や、高周波磁界を利用した加熱能を付与することができる。
アルミニウム酸化物に分散している粒状の鉄相の平均粒径は0.005μm以上、1μm未満が好ましい。そして鉄相はbcc構造のα相であることが好ましい。これは磁性を十分に発現するためである。粒状の鉄相の粒径が0.005μm未満であるとbcc構造のα相が安定して得られない。また1μm以上に粗大化すると粒状の鉄相内部に渦電流が発生し、渦電流損失が現れるので好ましくない。bcc構造の鉄相が磁気的に結合しながら均一に分散した複合焼結体を得るためには、粒状の鉄相の平均粒径は0.01μm以上、0.1μm未満がより好ましい。
アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体における鉄含有率は28mass%以上、94mass%以下が好ましい。粒状の鉄相の粒径が上記範囲のもとで、鉄相間の磁気的結合を維持するためには鉄相の間隔が交換結合長に相当する30nm以下であることが好ましい。鉄相の間隔を30nm以下に保つことで分散している粒状の鉄相は磁気的に孤立することなく、焼結体として高い透磁率を得ることができる。このような複合組織を実現するための鉄含有率は28mass%以上、94mass%以下である。したがって飽和磁化の好適範囲は60A・m/kg以上、2×10A・m/kg以下となる。飽和磁化が2×10A・m/kgを超えるとアルミニウム酸化物相による粒状の鉄相の被覆が不十分となり耐食性が低下してしまう。
本発明のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体は、絶縁体であるアルミナ酸化物(抵抗率:10Ω・m)をマトリックスとしているため、高い電気抵抗が得られる。抵抗率ρは金属系の圧粉磁心材料と同等である0.01Ω・m以上、より好ましくは0.1Ω・m以上、さらに好ましくはNiZnフェライトと同等の1×10Ω・m以上であることが好ましい。抵抗率ρが高いことにより高周波磁界の下で発生する渦電流が抑制され、鉄損を抑制することができる。
交流磁界の下で測定される複素透磁率から求められる損失係数tanδ(=虚部透磁率/実部透磁率)は高周波でより小さいことが好ましい。周波数100MHzにおけるtanδは0.35以下が好ましい。この範囲であれはMHz帯域で適用可能である。前記複素透磁率はインピーダンスアナライザーなどで測定することができる。
また当該アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体をインダクタ素子として適用する場合はコイルに流す電流が大電流であってもその性能が安定していることが望まれる。例えば当該焼結体に巻きつけたコイルに流す重畳電流が20Aである時のインダクタンスは重畳電流0Aの時のインダクタンスに比べて減少率が20%未満であることが好適である。
本発明に係るアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体は、アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末と酸化鉄粉末との混合物を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体を非酸化性不活性ガス雰囲気中で熱処理する熱処理工程とを有する製造工程によって得られる。熱処理工程においては酸化鉄粉をアルミニウムで固相還元する反応熱処理工程と、反応後の粉末を焼結する焼結熱処理工程を含んでいる。また前記素原料であるアルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末と酸化鉄粉末とを予め反応熱処理工程にて反応させた粉末を成形し、焼結することもできる。この場合は成形工程の前に反応後の粉末から磁性粉末だけを磁気分離操作によって精製しておくことも可能である。また成形の際に高分子のバインダーや焼結助剤を添加することも可能である。特にバインダーを添加した場合は、バインダーの融点を考慮して脱脂熱処理工程を追加しても構わない。
アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末と酸化鉄粉末との混合には、乳鉢、V型ミキサー、ライカイ機、ボールミルなどの混合装置を用いればよい。アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末と酸化鉄粉末との配合比率は、酸化鉄を十分還元することができるアルミニウムが含まれていればよい。例えばAlとFeの場合は質量比で30mass%と70mass%とすればよい。アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末は、アルミニウム粉末や炭化アルミニウム、窒化アルミニウムなどの化合物粉末が用いられるがこの限りではなく、酸化鉄を還元するに足るアルミニウム化合物であれば当該用途に適する。アルミナなどの酸化アルミニウム粉末は当該用途には適さない。
上記アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムから成る粉末の粒径は0.001〜100μmが好ましい。混合を均一に行う観点から、より好ましくは0.001〜10μmである。酸化鉄粉末はFe、Fe、FeOなどから選択されるが、原料費が安価であるという点でFeが好適である。上記酸化鉄粉末の粒径は0.01〜1μmが好ましい。粒径0.01μm未満の酸化鉄粉末は凝集が激しく取り扱いが困難である上、原料コストが上昇してしまう。粒径が1μmを越える酸化鉄粉末は比表面積が小さくなるため、反応熱処理時に還元が不十分となる場合がある。
熱処理は非酸化性不活性ガス雰囲気中で行う。非酸化性不活性ガス雰囲気は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンまたはこれらの混合ガスでもよいが、コストの観点からは窒素、アルゴンまたはこれらの混合ガス雰囲気が好ましい。窒素ガス雰囲気がさらに好ましい。
反応熱処理温度は800℃以上、1400℃未満が好ましい。800℃未満であると還元反応の進行が不十分である。また1400℃以上の高温では還元された粒状の鉄相の焼結粒成長が懸念される。また焼結熱処理温度は500℃以上、1400℃未満が好ましい。より好ましくは800℃以上、1400℃未満が好ましい。本発明のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体では、原料混合物を反応前に成形する。あるいは反応熱処理後の粉末を成形する。成形は金型を用いてプレス機にて所定の寸法形状に成形してもよいし、バインダーと混合してシート成形してもよい。
上記本発明のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の製造方法は、アルミニウム酸化物以外の酸化物と鉄との複合部材の製造方法にも適用できる。例えば上記還元反応も含め、元素M2を含む粉末において、酸化物の標準生成自由エネルギーがΔGM1−O>ΔGM2−Oの関係を満足するものであればM1酸化物を還元することができる。ここでΔGMi−OとはMi酸化物の標準生成エネルギーの値を表している(iは1または2)。
例えば、M1酸化物としてFeを考えた場合、ΔGFe2O3=−740kJ/molよりも小さいΔGM2−Oを有するものは、Al、CeO、Ce、Co、Cr、Ga、HfO、In、Mn、Mn、Nb、TiO、Ti、Ti、V、V、V、SiO、ZrO、Sc、Y、Ta、希土類元素の酸化物各種、などが挙げられる。すなわち元素M2はAl、Ce、Co、Cr、Ga、Hf、In、Mn、Nb、Ti、V、Si、Zr、Sc、Y、Ta、各希土類元素、の中から選択されるのが好ましく、M2を含む粉末であればFeを還元することができる。また、M2を含む粉末は、異種または同種のM2を含む2種類以上の粉末を使用してもよい。特にAl、Mn、Nb、Ti、Vについては、Al、Mn、Nb、Ti、Ti、V、VのΔGFe2O3が小さく、酸化鉄を還元しやすいのでM2元素として好ましい。これらの元素を含む粉末と酸化鉄粉末の混合物を本発明と同様に処理することによって、これらの元素の酸化物と鉄の複合焼結体を得ることができる。
以下、本願発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本願発明がかかる実施例に必ずしも限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒径60nmのα−Fe粉(堺化学工業株式会社製:FRO−6)と平均粒径3μmのAl粉(添川理化学製)を質量比で7:3となるように秤量し、ボールミル混合機で1000分間混合した。得られた混合粉を大気中、室温にて24時間乾燥後、乳鉢でバインダーを添加して混練し、500メッシュの篩で造粒した。造粒粉を200MPaの圧力で成形し、内径3mm、外径7mmのリング形状の成形体、および直方体形状の成形体を得た。成形体をアルミナ製の板上に載せ、窒素ガス中にて1200℃で2時間の熱処理を行ない、バルク状の複合焼結体を得た。
得られた複合焼結体を粉砕した粉砕粉について測定した、粉末X線回折パターンを図1に示す。図1から粉砕粉中の生成物はα−Fe、Al(コランダム)、少量のAlNおよびFeAlに同定された。AlNは成形体表面が熱処理中に雰囲気ガスであるNと反応し、生成したものと考えられる。なお、X線回折パターンにおいて、酸化鉄(Fe)のピークは確認されなかった。
上記複合焼結体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図2に示す。図2の(a)は低倍率の観察像、(b)は高倍率の観察像である。Fe及びAlの同定はEDX分析により実施した。図3は、図2に分析点とスケールを記入した図である。図3中、白く見える分析点1および分析点2ではFeが検出されるとともに、酸素Oは0.0at%と検出されなかった。図3中でグレーに見える分析点3〜5ではAlとOが主として検出されており、これらの領域はAl相であることが確認できた。図2、3から1μm未満の微細な粒状のFe相がAl中に分散していることがわかる。また、最大径が10μmを超える、細長い粒形状のFe相も形成されている。この結果から、SEM観察した試料中にはFeおよびAlが形成しており、粒状のFeがAlマトリックス中に分散していることが確認できた。以上、粉末X線回折測定及びSEM解析により、熱処理後の上記試料はアルミニウム酸化物(Al)中に粒状のFe相が結晶粒として分散した構造を有する複合焼結体であることが確認された。
更に、上記複合焼結体を粉砕した粉砕粉の磁気特性をVSM(振動型磁力計)により測定した。最大印加磁界を1.6MA/mとして測定した結果、飽和磁化Msは97A・m/kg、保磁力Hcは3.7kA/mであった。飽和磁化の値はバルクFeの飽和磁化値(=218A・m/kg)の44.5%に相当するため、本実施例の複合部材のFe含有率は質量比で44.5%である。なお、複合焼結体の密度をアルキメデス法で測定した結果、3.8×10kg/mであった。更に、複合焼結体の電気的な抵抗率を測定した。測定用試料として、外径13mm、高さ5mmの円柱状の複合焼結体を作製し、その上面と下面を研磨した。抵抗率の測定には抵抗率計(MITSUBISHI CHEMICAL CORPORATION製:Hiresta−UP MCP−HT450)を使用し、印加電圧10V、印加時間30秒で測定した。その結果、抵抗率は9.38×10Ω・mであり、高抵抗の複合焼結体が得られていることがわかる。
(実施例2)
出発原料として、前記FRO−6の代りに平均粒径50nmのα−Fe粉(ケミライト工業製:CM−1000)を用いた以外は実施例1と同様にして、リング形状のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体を得た。このリング形状の複合焼結体について複素透磁率をインピーダンスアナライザー(アジレント製:4291B)を用いて測定し、100MHzにおけるtanδを求めた。得られた結果を表1に示す。また、リング形状の複合焼結体に銅線を15ターン巻き、高周波用インダクタとして、LCRメータ(アジレント製:4284A)で直流重畳特性を測定するべく、重畳電流を0〜20Aの範囲で変化させて、周波数1MHzにてインダクタンス(L)を測定した。重畳電流20Aの時のインダクタンスL20Aと重畳電流0Aの時のインダクタンスL0Aの差をL0Aで規格化したΔL(%)を表1にまとめた。
ΔL=100×(L20A−L0A)/L0A
(実施例3)
実施例2と同様にしてリング形状の複合焼結体をもう1つ作製し、得られた高周波用インダクタについて、tanδを測定すると0.31であった。
(実施例4)
熱処理温度を1000℃とした以外は実施例2と同様にしてリング形状の複合焼結体を作製し、得られた高周波用インダクタについて、tanδ、ΔLを求めた。結果を表1にまとめた。
(実施例5)
熱処理温度を900℃とした以外は実施例2と同様にしてリング形状の複合焼結体を作製し、得られた高周波用インダクタについて、tanδ、ΔLを求めた。結果を表1にまとめた。
(実施例6)
出発原料として、平均粒径50nmのα−Fe粉(ケミライト工業製:CM−1000)と平均粒径20nmのAlN粉((株)ATR製)を質量比で5:5となるように秤量した以外は実施例2と同様にして、造粒粉を作製し、成形体を作製し、複合焼結体を得た。この複合焼結体の磁気特性を実施例1と同様に測定したところ、飽和磁化Msは80A・m/kgであった。得られた高周波用インダクタについて、tanδを実施例2と同様にして評価したところ、0.01であった。
(実施例7)
実施例1と同様にしてリング形状の成形体を作製した。得られた成形体をアルミナ製の板上に載せ、不活性な窒素ガス中で熱処理を開始した。1000℃で2時間保持する反応熱処理によって、Feを固相還元してFe粒子を生成させ、同時にアルミニウムを酸化してアルミニウム酸化物を生成させる反応と隣り合うアルミニウム酸化物同士を焼結させてアルミニウム酸化物を一体のバルク状と為す焼結熱処理を行い、アルミニウム酸化物相中に粒状のFe相が分散した複合焼結体を得た。
(実施例8)
Fe粉末をアルミニウム粉末により固相還元して粒状のFe相が分散したアルミニウム酸化物粉末を得るべく、実施例1と同様の混合粉を不活性な窒素ガス中で1000℃で反応熱処理し、熱処理粉を作製した。得られた熱処理粉を実施例1と同様に造粒して成形し、リング形状の成形体を作製した。ついで、成形体中のアルミニウム酸化物同士が焼結するよう、得られた成形体を窒素ガス中で1000℃で焼結熱処理することにより、アルミニウム酸化物相中に粒状のFe相が分散した複合焼結体を得た。
(実施例9)
実施例6と同様にしてリング形状の成形体を作製した。得られた成形体をアルミナ製の板上に載せ、不活性な窒素ガス中で反応熱処理を開始した。1000℃で2時間保持する熱処理によって、Feを固相還元してFe粒子を生成させ、同時にアルミニウムを酸化してアルミニウム酸化物を生成させる反応と隣り合うアルミニウム酸化物同士を焼結させてアルミニウム酸化物を一体のバルク状と為す焼結熱処理を行い、アルミニウム酸化物相中に粒状のFe相が分散した複合焼結体を得た。
(実施例10)
Feを固相還元してアルミニウム酸化物に被覆されたFe粒子を形成するよう、実施例6と同様の混合粉を不活性な窒素ガス中で反応熱処理し、熱処理粉を作製した。得られた熱処理粉を実施例1と同様に造粒して成形し、リング形状の成形体を作製した。ついで、成形体中のアルミニウム酸化物同士が焼結するよう、得られた成形体を窒素ガス中で1000℃で焼結熱処理することにより、アルミニウム酸化物相中に粒状のFe相が分散した複合焼結体を得た。
1〜5:分析点

Claims (6)

  1. アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムからなる粉末と、酸化鉄粉末とを混合する工程と、
    得られた混合粉を成形して成形体を得る工程と、
    酸化鉄を固相還元するために前記成形体を不活性ガス雰囲気中で熱処理する反応熱処理工程と、
    熱処理された成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結する焼結熱処理工程とを有することを特徴とするアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の製造方法。
  2. アルミニウムを主成分とする化合物またはアルミニウムからなる粉末と、酸化鉄粉末とを混合する工程と、
    得られた混合粉を、酸化鉄を固相還元するために、不活性ガス雰囲気中で熱処理する反応熱処理工程と、
    熱処理された混合粉を成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体を不活性ガス雰囲気中で焼結する焼結熱処理工程とを有することを特徴とするアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体の製造方法。
  3. アルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体であって、
    アルミニウム酸化物相中に鉄相が分散しており、
    前記鉄相は、アルミニウムで酸化鉄を固相還元して形成された還元鉄であり、
    前記アルミニウム酸化物相は、アルミニウム化合物またはアルミニウムを酸化して形成された酸化物であり、
    100MHzでの損失係数tanδが0.35以下であることを特徴とするアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体。
  4. 飽和磁化の値が60Am/kg以上、2×10Am/kg以下であることを特徴とする、請求項3に記載のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体。
  5. 前記アルミニウム酸化物相中に平均粒径0.005μm以上、1μm未満の粒状の鉄相が分散していることを特徴とする、請求項3または4に記載のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体。
  6. 巻き線を施して1MHzの周波数でインダクタンスを測定する際に、巻き線に20Aの電流を重畳させたときのインダクタンスの値が、巻き線に0Aの電流を重畳させたときのインダクタンスの80%超、100%以下であることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれかに記載のアルミニウム酸化物と鉄の複合焼結体。
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