JP6836106B2 - 鉄基軟磁性体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄基軟磁性体の製造方法に関する。
当該技術分野においては、従来から、鉄基軟磁性体(圧粉磁心)の磁気特性(例えば、低保磁力、高透磁率、及び低損失)及び機械的強度を向上させるための技術開発が盛んに行われている。
例えば、電気絶縁性無機被膜によって被覆された電磁軟質鉄又は鉄基粉末と上記被膜の分解温度よりも低い気化温度を有し且つ金属を含まない有機潤滑剤との混合物を含む粉末組成物からなる圧粉成形体を、非還元性雰囲気下、上記潤滑剤の気化温度より高く且つ上記被覆の分解温度より低い温度に加熱して上記潤滑剤を除去した後、当該圧粉成形体を、水蒸気中、所定の温度に加熱する電磁軟質複合体部品の製造方法が知られている(特許文献1を参照。)。当該方法によれば、高い機械的強度を有する電磁軟質複合体部品を得ることができる。
更に、Al、Cr及びMnを含む鉄基軟磁性合金粉とバインダとの混合物から得られた成形体を熱処理して相対的にAlの比率が高い酸化物層を上記鉄基軟磁性合金粉の表面に形成させる磁心の製造方法が知られている(特許文献2を参照。)。当該方法によれば、高強度と高比抵抗とを兼備する磁心を得ることができる。
加えて、表面に絶縁皮膜を有する鉄基軟磁性粉末と酸素源放出化合物との混合物の圧縮成形体を加熱して上記鉄基軟磁性粉末の少なくとも表面を上記酸素源放出化合物によって酸化させる圧粉磁心の製造方法が知られている(特許文献3を参照。)。当該方法によれば、上記鉄基軟磁性粉末の表面と上記絶縁皮膜との強固な結合が形成され、高い機械的強度と高い比抵抗(絶縁性)とを兼備する圧粉磁心を得ることができる。
特許第4801734号明細書 特開2015−226000号公報 特開2012−253317号公報
上述した特許文献1及び特許文献2に記載の製造方法においては、酸素又は水蒸気が存在する雰囲気下にて鉄基軟磁性粉末を含む成形体を加熱して鉄基軟磁性粉末の表面(即ち、粒界)に酸化物層を形成させることにより、上記成形体の機械的強度を向上させる。しかしながら、これらの製造方法によれば、粒界を介して鉄基軟磁性粒子の内部にも酸素が拡散し、結果として得られる成形体の磁気特性に悪影響を及ぼす虞がある。
特許文献3に記載の製造方法においても、酸化雰囲気下で熱処理を行う場合は上記と同様の問題が発生する。しかしながら、圧縮成形体が酸素源放出化合物を含むため、不活性雰囲気下での熱処理によっても鉄基軟磁性粉末の表面を酸化させることが可能であり、この場合、上記問題は発生しない。しかしながら、特許文献3に記載の製造方法において使用される絶縁皮膜は、比較的低い機械的強度を有する燐酸系化成皮膜及び/又はシリコーン樹脂被膜である。従って、酸化により鉄基軟磁性粉末の表面と絶縁皮膜との強固な結合が形成されても、成形体としての機械的強度を十分に高めることは困難である。
ところで、本発明者は、鉄基軟磁性体の磁気特性及び機械的強度を向上させるための原材料として、フェライト粉末からなる被膜によって表面が被覆された鉄基軟磁性粒子を含む鉄基軟磁性粉末の開発をかねてより進めてきた。このような鉄基軟磁性粉末から製造される鉄基軟磁性体において、フェライト被膜は電気的絶縁性と磁性とを兼備するのみならず、機械的強度の向上に寄与する。
より具体的には、鉄基軟磁性体の製造過程における焼結時に、フェライト被膜を構成するフェライト粉末が被膜化することにより、フェライト被膜と鉄基軟磁性粒子とが反応して強固に結合する。しかしながら、この焼結時に鉄基軟磁性粒子の間を埋めていたフェライト粉末の見掛け体積が減少し、鉄基軟磁性粒子の境界に空隙が生ずる。このため、結果として得られる鉄基軟磁性体の機械的強度を十分に高めることが必要となる。
一方、上記のようなフェライト被覆を有する鉄基軟磁性粉末を前述したように酸化雰囲気下にて加熱して鉄基軟磁性粉末の表面(即ち、粒界)に酸化物層を形成させることにより、上記空隙を埋めて鉄基軟磁性体の機械的強度を向上させることができる。しかしながら、このように酸化雰囲気下にて鉄基軟磁性粉末の成形体を加熱すると、前述した従来技術と同様に、粒界を介して鉄基軟磁性粒子の内部にも酸素が拡散し、結果として得られる鉄基軟磁性体の磁気特性に影響を及ぼす虞がある。
上記のように、当該技術分野においては、鉄基軟磁性体(圧粉磁心)における磁気特性(例えば、低保磁力、高透磁率、及び低損失)及び機械的強度の向上に対する継続的な要求が存在する。
本発明は、上記課題を解決するために為されたものである。即ち、本発明は、鉄基軟磁性体(圧粉磁心)の磁気特性及び機械的強度を向上させることを1つの目的とする。
上記に鑑み、本発明に係る鉄基軟磁性体(圧粉磁心)の製造方法(以降、「本発明方法」と称される場合がある。)は、以下に列挙する混合工程、被覆工程、圧粉工程、及び焼結工程を含む。
混合工程:所定の第1温度以上の温度において酸素を放出する酸化剤とフェライト粉末とを混合することにより前記酸化剤と前記フェライト粉末との混合物であるフェライト混合粉末を調製する。
被覆工程:前記フェライト混合粉末を含むフェライト被膜によって鉄基軟磁性粒子の表面を被覆することにより前記フェライト被膜が表面に形成された前記鉄基軟磁性粒子である鉄基軟磁性粉末を調製する。
圧粉工程:前記鉄基軟磁性粉末を加圧して圧粉成形体を作製する。
焼結工程:前記第1温度よりも高く且つ前記フェライト粉末と前記鉄基軟磁性粒子との反応により前記フェライト被膜の電気的絶縁性が消失する温度である第2温度よりも低い温度において不活性雰囲気下で前記圧粉成形体を熱処理することにより前記圧粉成形体を構成する前記鉄基軟磁性粉末を焼結させる。
加えて、本発明粉末を使用する本発明方法によって得られる本発明に係る鉄基軟磁性体(圧粉磁心)(以降、「本発明コア」と称される場合がある。)は、フェライト被膜によって表面が被覆された鉄基軟磁性粒子からなる鉄基軟磁性体である。本発明コアは、1.0Tの振幅及び800Hzの周波数を有する交流磁界を前記鉄基軟磁性体に印加したときに常温において測定される鉄損が99W/kg以下であり、JIS Z 2507に則って測定される圧環強度が120MPa以上である。
以上のように、本発明コアは、向上された磁気特性及び機械的強度を有する鉄基軟磁性体である。即ち、本発明によれば、鉄基軟磁性体(圧粉磁心)の磁気特性及び機械的強度を向上させることができる。
フェライト被膜が酸化剤を含まない鉄基軟磁性粉末を不活性雰囲気(Arフロー)下で500℃において10分間に亘って熱処理した参考例に係る鉄基軟磁性体における粉末粒界近傍の組織を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真(二次電子像)である。 フェライト被膜が酸化剤を含まない鉄基軟磁性粉末を不活性雰囲気(Arフロー)下で600℃において10分間に亘って熱処理した比較例1に係る鉄基軟磁性体における粉末粒界近傍の組織を示すSEM写真(二次電子像)である。 フェライト被膜が酸化剤を含まない鉄基軟磁性粉末を大気雰囲気下で600℃において10分間に亘って熱処理した比較例2に係る鉄基軟磁性体の断面組織のSEM写真(反射電子像)である。 図3に示した比較例2に係る鉄基軟磁性体における粉末粒界近傍の組織を示すSEM写真(二次電子像)である。 フェライト被膜が酸化剤(MnO)を含む鉄基軟磁性粉末を不活性雰囲気(Arフロー)下で600℃において10分間に亘って熱処理した実施例1に係る鉄基軟磁性体における粉末粒界近傍の組織を示すSEM写真(二次電子像)である。 フェライト被膜が酸化剤(MnO)に加えてニッケル(Ni)の酸化物を含む鉄基軟磁性粉末を不活性雰囲気(Arフロー)下で600℃において10分間に亘って熱処理した実施例2に係る鉄基軟磁性体における粉末粒界近傍の組織を示すSEM写真(二次電子像)である。 実施例2に係る鉄基軟磁性体の断面組織の走査型透過電子顕微鏡(STEM)写真である。 図7に示したSTEM写真においてフェライト被膜中に認められる析出物(A)についてのエネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析結果を表すグラフである。 図7に示したSTEM写真におけるフェライト被膜のマトリックス(B)についてのエネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析結果を表すグラフである。
《第1実施形態》
以下、本発明の1つの実施形態に係る鉄基軟磁性粉末(以下、「第1粉末」と称される場合がある。)について説明する。
第1粉末は、鉄基軟磁性粒子と、前記鉄基軟磁性粒子の表面に形成されたフェライト被膜と、を備える鉄基軟磁性粉末である。
鉄基軟磁性粒子の主成分である「鉄」は典型的には純鉄であるが、必ずしも純鉄に限定されない。具体的には、例えば、純鉄、鉄−ケイ素合金、鉄−コバルト合金、鉄−アルミニウム合金、鉄−ケイ素−アルミニウム合金、及び鉄−ニッケル合金からなる群より選択される少なくとも1種を鉄基軟磁性粒子の主成分とすることができる。更に、鉄基軟磁性粒子の主成分である「鉄」は、結果として得られる鉄基軟磁性体の磁気特性に対する悪影響を及ぼさない限りにおいて、極少量の不純物(例えば、窒素(N)及び酸素(O)等)を含有していてもよい。
前記フェライト被膜は、所定の第1温度以上の温度において酸素を放出する酸化剤とフェライト粉末との混合物であるフェライト混合粉末を含む。
上記酸化剤は、所定の第1温度以上の温度において酸素を放出することが可能である限り特に限定されない。このような酸化剤として特に好適な酸化剤は二酸化マンガン(MnO)である。二酸化マンガン(MnO)は、530℃以上の温度において酸素を放出する。即ち、この場合における第1温度は530℃である。二酸化マンガン(MnO)は、後述する焼結工程において加熱されて酸素を放出すると酸化マンガン(MnO)となる。この酸化マンガン(MnO)は、鉄(Fe)の酸化物との相性が良く、複合酸化物を生成するので、焼結工程において生ずる酸化物層において孤立すること無く、一様な酸化物となって鉄基軟磁性体の機械的強度の向上に寄与することができる。
上記フェライト粉末もまた特に限定されないが、典型的には、上記フェライト粉末としては、例えば、マグネシウム亜鉛フェライト、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、及びニッケル銅亜鉛フェライト等のスピネルフェライトが選択される。
詳しくは後述するように、本発明に係る鉄基軟磁性体の製造方法により第1粉末を使用して製造される鉄基軟磁性体においては、従来技術に係る鉄基軟磁性体と比べて、磁気特性(具体的には、磁束密度、保持力、及び鉄損)及び機械的強度(具体的には、圧環強度)が向上されている。即ち、鉄基軟磁性体の磁気特性及び機械的強度を向上させるという本発明の1つの目的は、第1粉末によって達成される。
《第2実施形態》
次に、本発明のもう1つの実施形態に係る鉄基軟磁性粉末(以下、「第2粉末」と称される場合がある。)について説明する。第2粉末は、前記フェライト粉末がニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含む点を除き、上述した第1粉末と同様である。
ニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含むフェライト粉末の具体例としては、例えば、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、及びニッケル銅亜鉛フェライト等を挙げることができる。
詳しくは後述するように、本発明に係る鉄基軟磁性体の製造方法により第2粉末を使用して製造される鉄基軟磁性体は、更に高い機械的強度(具体的には、高い圧環強度)を有する。これは、上記製造方法に含まれる焼結工程において、フェライト被膜の内部にニッケル(Ni)及び銅(Cu)の少なくとも何れか一方の金属が析出することに起因するものと考えられる。
《第3実施形態》
以下、本発明のもう1つの実施形態に係る鉄基軟磁性体の製造方法(以下、「第1方法」と称される場合がある。)について説明する。
第1方法は、以下に列挙する混合工程、被覆工程、圧粉工程、及び焼結工程を含む。
混合工程:所定の第1温度以上の温度において酸素を放出する酸化剤とフェライト粉末とを混合することにより前記酸化剤と前記フェライト粉末との混合物であるフェライト混合粉末を調製する。
酸化剤及びフェライト粉末については、上述した第1粉末に関して既に詳細に説明したので、ここでは説明を繰り返さない。また、上記混合工程における酸化剤とフェライト粉末との混合方法は、特に限定されず、当該技術分において周知の種々の混合方法及び混合機を使用することができる。
被覆工程:前記フェライト混合粉末を含むフェライト被膜によって鉄基軟磁性粒子の表面を被覆することにより前記フェライト被膜が表面に形成された前記鉄基軟磁性粒子である鉄基軟磁性粉末を調製する。
上記被覆工程において前記鉄基軟磁性粒子の表面に形成されるフェライト被膜の被覆量及び膜厚は、第1粉末からなる鉄基軟磁性体の用途等に応じて、適宜調整することができる。即ち、フェライト被膜の被覆量及び膜厚は、鉄基軟磁性粒子間の電気的絶縁性を確保することができる連続被膜を形成可能であり且つ第1粉末からなる鉄基軟磁性体に占める鉄基軟磁性粒子の割合が低下して全体としての透磁率の低下及びヒステリシス損失の増大を招なかい程度に適宜調整される。例えば、高い透磁率が要求されるモータのコアの原材料として第1粉末を使用する場合は、フェライト被膜の膜厚は、絶縁性を確保することが可能である限りにおいて、できるだけ薄くすることが望ましい。
フェライト被膜によって鉄基軟磁性粒子の表面を被覆するための具体的な手法は、十分な厚みを有するフェライト被膜を連続的且つ均一に形成して鉄基軟磁性粒子間の絶縁性を十分に達成することが可能である限り、特に限定されない。即ち、第1方法においては、例えば、圧縮、剪断、及び摩擦等の機械的エネルギーを鉄基軟磁性粒子及びフェライト粉末に作用させる被覆方法並びにフェライトのスラリーを鉄基軟磁性粒子に塗布する湿式の被覆方法等を採用することができる。
圧粉工程:前記鉄基軟磁性粉末を加圧して圧粉成形体を作製する。
上記圧粉工程においては、例えば、上記混合工程及び被覆工程を経て製造された(酸化剤含有フェライト被膜が表面に形成された鉄基軟磁性粒子からなる)鉄基軟磁性粉末を金型のキャビティ内に充填する。そして、当該キャビティ内に充填された鉄基軟磁性粉末に加圧することにより圧粉成形体が作製される。この際、例えばステアリン酸亜鉛水溶液等の潤滑剤を使用する温間型潤滑成形法を採用してもよい。鉄基軟磁性粉末の加圧は、周知の加圧装置によって行うことができる。加圧時の荷重(加圧力)が高いほど、圧粉成形体の密度を高くすることができる。
焼結工程:前記第1温度よりも高く且つ前記フェライト粉末と前記鉄基軟磁性粒子との反応により前記フェライト被膜の電気的絶縁性が消失する温度である第2温度よりも低い温度において不活性雰囲気下で前記圧粉成形体を熱処理することにより前記圧粉成形体を構成する前記鉄基軟磁性粉末を焼結させる。
上記焼結工程においては、上記圧粉工程において作製された圧粉成形体を焼結して焼結体とする。圧粉工程における加圧のみでは、フェライト被膜を介した鉄基軟磁性粒子間に強い結合力を達成することはできず、鉄基軟磁性体の機械的強度は低い。しかしながら、焼結によって当該粒子間の結合を強めることにより、鉄基軟磁性体の機械的強度を増大させることができる。また、鉄基軟磁性粒子の表面を被覆しているフェライト被膜は、上述したようにフェライト粉末によって形成されている。焼結工程においては、これらのフェライト粉末同士の結合及び粒子成長が起こる。これもまた、鉄基軟磁性体の機械的強度の向上に寄与する。
また、上記圧粉工程において作製された圧粉成形体においては、圧粉成形時の加圧に起因する歪みが蓄積されているため、そのままの状態ではヒステリシス損失が大きい。上記焼結工程は、この歪みを除去するための焼き鈍し処理としても位置付けられる。これにより、ヒステリシス損失を低減し、第1粉末からなる鉄基軟磁性体全体としての鉄損を低減することができる。
ところで、一般に、フェライト被膜によって表面が被覆された鉄基軟磁性粒子からなる鉄基軟磁性粉末の圧粉成形体においては、上記焼結工程における熱処理温度(焼結温度)が高いほど、焼結体の機械的強度が増大し且つ保磁力が低下する傾向がある。従って、焼結温度が過度に低いと、このような効果を十分に得ることができない。
加えて、上記焼結工程は不活性雰囲気下において行われる。従って、上記焼結工程において鉄基軟磁性粉末の表面(即ち、粒界)に酸化物層を形成させることにより鉄基軟磁性体の機械的強度を向上させるためには、フェライト被膜中に含まれる酸化剤から酸素を放出させる必要がある。従って、上記焼結工程においては、酸化剤が酸素を放出することができる最低温度(即ち、第1温度)よりも高い温度において不活性雰囲気下で圧粉成形体を熱処理する。
一方、焼結温度が過度に高いと、フェライトの還元が進行すると共に鉄基軟磁性粒子の内部酸化が進行し、FeO(酸化鉄)が生成される。FeOは常温で常磁性であり、導電性を有し、強度が低いことから、鉄基軟磁性体中にFeO相が多量に存在すると、透磁率の低下、渦電流損失の増大、及び機械的強度の低下を招く。つまり、焼結温度を高めると、鉄系軟磁性粒子の粒界にFeOが多量に生成されて、フェライト膜(絶縁膜)が劣化する。このように絶縁膜が劣化すると、鉄系軟磁性粒子間の絶縁性を維持することができず、当該軟磁性体の渦電流損失の増大を招く虞がある。従って、上記焼結工程においては、このようにフェライト粉末と鉄基軟磁性粒子との反応によりフェライト被膜の電気的絶縁性が消失する温度である(即ち、第2温度)よりも低い温度において不活性雰囲気下で圧粉成形体を熱処理する。
以上のように、上記焼結工程においては、第1温度よりも高く且つ第2温度よりも低い温度において不活性雰囲気下で圧粉成形体を熱処理することにより圧粉成形体を構成する鉄基軟磁性粉末を焼結させる。これにより、フェライト粉末と鉄基軟磁性粒子との反応に起因する鉄基軟磁性体の透磁率の低下、渦電流損失の増大及び機械的強度の低下並びにフェライト被膜の電気的絶縁性の劣化を抑制しつつ、フェライト被膜中に含まれる酸化剤から酸素を放出させることができる。その結果、鉄基軟磁性粉末の表面(即ち、粒界)に酸化物層を形成させて、鉄基軟磁性体の機械的強度を向上させることができる。
尚、上述したように、上記のような酸化剤として特に好適な酸化剤は二酸化マンガン(MnO)である。この場合、前記第1温度は530℃であり、前記第2温度は700℃である。即ち、この場合、上記焼結工程においては、530℃よりも高く且つ700℃よりも低い温度において不活性雰囲気下で圧粉成形体を熱処理することにより圧粉成形体を構成する鉄基軟磁性粉末を焼結させる。
〈第2実施形態の変形例1〉
上記被覆工程において、ミクロン(μm)オーダーの厚みを有するフェライト被膜を連続的且つ均一に形成して鉄基軟磁性粒子間の絶縁性を十分に達成する観点からは、機械的エネルギーを利用する被覆方法が望ましい。従って、上記第1方法の1つの変形例に含まれる被覆工程においては、前記鉄基軟磁性粒子と前記フェライト混合粉末との混合物に機械的エネルギーを作用させることにより、前記鉄基軟磁性粒子の表面に前記フェライト被膜を形成する。
上記被覆工程において鉄基軟磁性粒子の表面にフェライト膜を形成するための具体的な手法としては、例えば、メカノフュージョン法を挙げることができる。当業者に周知であるように、メカノフュージョン法とは、機械的エネルギーを利用して、ある物質を他の物質の表面に融着させる乾式処理法である。
具体的には、絶縁性の達成に必要な膜厚(被覆量)に対応する比率にて鉄基軟磁性粒子とフェライト粒子とを混合し、内部にプレスヘッドが配設されたロータ内に当該混合粉末を充填する。そして、所定の条件(例えば、ロータ回転数、温度、及び周囲雰囲気)において、このロータを回転させることにより、プレスヘッドとロータの内壁との間で圧縮、剪断、及び摩擦等の機械的エネルギーを当該混合物に作用させる。これにより、所望の膜厚を有するフェライト被膜を鉄基軟磁性粒子の表面に形成することができる。
《第4実施形態》
次に、本発明のもう1つの実施形態に係る鉄基軟磁性体の製造方法(以下、「第2方法」と称される場合がある。)について説明する。第2方法においては、前記フェライト粉末がニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含む。即ち、第2方法において使用される鉄基軟磁性粉末は、上述した「第2粉末」である。この点を除き、第2方法は、上述した第1方法と同様である。
第2粉末について上述したように、ニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含むフェライト粉末の具体例としては、例えば、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、及びニッケル銅亜鉛フェライト等を挙げることができる。
詳しくは後述するように、第2方法により第2粉末を使用して製造される鉄基軟磁性体は、更に高い機械的強度(具体的には、高い圧環強度)を有する。これは、第2方法に含まれる焼結工程において、フェライト被膜の内部にニッケル(Ni)及び銅(Cu)の少なくとも何れか一方の金属が析出することに起因するものと考えられる。
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る鉄基軟磁性体(以下、「第1コア」と称される場合がある。)について説明する。
第1コアは、フェライト被膜によって表面が被覆された鉄基軟磁性粒子からなる鉄基軟磁性体である。上記鉄基軟磁性粒子及び上記鉄基軟磁性粒子から第1コアを製造する方法の詳細については既に上述したので、ここでは説明を繰り返さない。
また、第1コアは、1.0Tの振幅及び800Hzの周波数を有する交流磁界を前記鉄基軟磁性体に印加したときに常温において測定される鉄損が99W/kg以下である。この「鉄損」は、当業者に周知であるように、ヒステリシス損失と渦電流損失との和である。第1コアにおいては、上述したフェライト被膜の形成(被覆工程)及び/又は鉄基軟磁性粉末の圧粉成形(圧粉工程)において鉄基軟磁性粒子に作用する応力等に起因する内部歪みが上述した焼結工程における熱処理(焼き鈍し処理)によって緩和される。その結果、第1コアを圧粉磁心として使用するときのヒステリシス損失が低減される。
更に、第1コアの製造方法に含まれる焼結工程においては、フェライト粉末と鉄基軟磁性粒子との反応によりフェライト被膜の電気的絶縁性が消失する温度である第2温度よりも低い温度において不活性雰囲気下で圧粉成形体を熱処理する。従って、フェライト被膜の電気的絶縁性が維持されるので、同様の構成を有する従来技術に係る鉄基軟磁性体と比べて、渦電流損失もまた低減される。その結果、第1コアは99W/kg以下という低い鉄損を達成することができる。
加えて、第1コアは、JIS Z 2507に則って測定される圧環強度が120MPa以上である。これは、上述したように、焼結工程において、フェライト粉末の見掛け体積の減少に起因して鉄基軟磁性粒子の境界に生ずる空隙が、酸化剤から放出される酸素によって生成される酸化物層によって充填されることに起因する。
〈第5実施形態の変形例1〉
また、上記のように焼結工程においては、例えば大気中の酸素ではなく、フェライト被膜に含まれる酸化剤から放出される酸素によって酸化物層が生成される。従って、第1コアにおいては、鉄基軟磁性粒子の内部にまで酸素が拡散し、結果として得られる成形体の磁気特性に悪影響が及ぶ可能性を低減することができる。
その結果、本発明の第5実施形態の好ましい変形例に係る第1コアは、8kA/mの外部磁場における磁束密度が1.62T以上であり、保磁力が211A/m以下である。
上記のように、第1コアは、向上された磁気特性及び機械的強度を有する鉄基軟磁性体である。このような鉄基軟磁性体は、例えばトランス及びモータ等のコア(圧粉磁心)として好適に使用することができる。
《第6実施形態》
次に、本発明のもう1つの実施形態に係る鉄基軟磁性体(以下、「第2コア」と称される場合がある。)について説明する。第2コアにおいては、前記フェライト被膜は、その内部に析出したニッケル(Ni)及び銅(Cu)の少なくとも何れか一方の金属を含む。この点を除き、第2コアは、上述した第1コアと同様である。
上記ニッケル(Ni)及び銅(Cu)の少なくとも何れか一方の金属は、焼結工程においてフェライト被膜の内部に析出したものと考えられる。これにより、第2コアは、第一コアと比べて、更に高い機械的強度(具体的には、高い圧環強度)を有する。
〈第6実施形態の変形例1〉
その結果、本発明の第6実施形態の好ましい変形例に係る第2コアは、JIS Z 2507に則って測定される圧環強度が151MPa以上である。
上記のように、第2コアは、更に向上された磁気特性及び機械的強度を有する鉄基軟磁性体である。このような鉄基軟磁性体は、例えばトランス及びモータ等のコア(圧粉磁心)として更に好適に使用することができる。
〈第6実施形態の変形例2〉
更に、本発明の第6実施形態のもう1つの好ましい変形例に係る第2コアにおいては、8kA/mの外部磁場における磁束密度が1.65T以上である。即ち、当該変形例に係る第2コアは、より一層向上された磁気特性及び機械的強度を有する鉄基軟磁性体である。このような鉄基軟磁性体は、例えばトランス及びモータ等のコア(圧粉磁心)として更により好適に使用することができる。
以上のように、本発明によれば、鉄基軟磁性体の磁気特性及び機械的強度を向上させることができる。
1.各種鉄基軟磁性体サンプルの製造
(a)原材料
各種鉄基軟磁性体サンプルの全てにおいて、鉄基軟磁性粒子として水アトマイズ純鉄粉(ヘガネス・ジャパン株式会社、ABC100.30)を採用した。以下の表1に列挙するように、参考例、比較例1及び2、並びに実施例1に係るサンプルについてはマグネシウム亜鉛フェライト(MgZn)を、実施例2に係るサンプルについてはニッケル亜鉛フェライト(NiZn)(JFEケミカル株式会社、KNI−106)を、そして実施例3に係るサンプルについてはニッケル銅亜鉛フェライト(NiCuZn)(戸田工業株式会社、FRX−952)を、それぞれフェライト粉末として採用した。また、実施例1乃至3に係るサンプルについては、二酸化マンガン(MnO)を酸化剤として採用した。
(b)鉄基軟磁性粉末の調製
実施例1乃至3に係る各種鉄基軟磁性体サンプルについては、それぞれのフェライト粉末と酸化剤とを1:1の質量比にて混合して、フェライト混合粉末を調製した(混合工程)。
次に、上述した鉄基軟磁性粒子(純鉄粉)1000gに対して各種フェライト粉末(参考例並びに比較例1及び2)及び各種フェライト混合粉末(実施例1乃至3)3gをAr雰囲気のグローブボックス内において混合した。その後、上記グローブボックスから混合物を取り出し、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製)の内部に充填し、当該装置により、それぞれの鉄基軟磁性粒子の表面にフェライト被膜を被覆して、各種鉄基軟磁性粉末を調製した。尚、何れのサンプルについても、1000rpmのロータ回転速度、室温(水冷)、及びArフロー雰囲気において40分間に亘ってフェライト被覆処理を実施した(被覆工程)。
(c)鉄基軟磁性体の調製
上記のようにして調製された各種鉄基軟磁性粉末(フェライト被膜によって表面が被覆された鉄基軟磁性粒子)を使用して、リング状の鉄基軟磁性体試料(外径:約20mmφ、内径:約14mmφ、厚さ:約5mm)をそれぞれ圧粉成形した(圧粉工程)。圧粉成形には、温間型潤滑成形法(温度:130℃、加圧力:1200MPa、潤滑剤:ステアリン酸亜鉛水溶液)を採用した。
上記のようにして得られた各種圧粉成形体を、不活性ガス(Ar)雰囲気中、600℃(但し、参考例のみ500℃)の温度において10分間に亘って熱処理(焼き鈍し処理)に付すことにより、参考例、比較例1及び2、並びに実施例1乃至3に係る焼結体(鉄基軟磁性体)をそれぞれ製造した。
2.各種鉄基軟磁性体サンプルの評価
上記のようにして得られた各種鉄基軟磁性体サンプルにつき、以下の(a)乃至(c)に列挙する評価をそれぞれ行った(但し、参考例に係るサンプルについては(b)の磁気特性は測定しなかった)。これらの評価結果もまた、上述した各鉄基軟磁性体サンプルの原材料及び熱処理条件と共に、上述した表1に列挙した。
(a)粉末粒界の組織観察
各種鉄基軟磁性体サンプルの一部を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織観察を実施した。実施例2に係る鉄基軟磁性体については、その断面組織の走査型透過電子顕微鏡(STEM)による組織観察及びエネルギー分散型X線分光(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectrometry)による元素分析を実施した。
(b)磁気特性
各種鉄基軟磁性体サンプル(但し、参考例を除く)のそれぞれにつき、直流B−Hカーブトレーサ(理研電子株式会社製)を使用して、8kA/mの外部磁場(Hm)における磁束密度Bm[T]及び保磁力Hc[A/m]を測定した。磁束密度Bmが大きいほど透磁率が高く、保磁力Hcが小さいほど鉄損(ヒステリシス損失)が低いと判断することができる。
また、交流B−Hアナライザー(岩通計測株式会社製)を使用して、1.0Tの振幅及び800Hzの周波数を有する交流磁界を各種鉄基軟磁性体サンプル(但し、参考例を除く)に印加した場合における鉄損を測定し、ヒステリシス損失(ヒス損)と渦電流損失(渦電流損)とに分離した。
(c)圧環強度
JIS Z 2507に則り、各種鉄基軟磁性体サンプルの圧環強度を測定した。
3.各種鉄基軟磁性体サンプルの評価結果
(a)参考例
先ず、参考例に係るサンプルについては、図1に示す粉末粒界近傍のSEM画像からも明らかであるように、比較例1と同様に調製された鉄基軟磁性粉末を使用したにもかかわらず、焼結工程における熱処理温度が500℃であるために、フェライト被膜と純鉄粉との焼結が殆ど進行せず、フェライト粉末が凝集した状態のまま被膜化(緻密化)も進行しなかった。その結果、圧環強度は約50MPaに留まった。
(b)比較例1
比較例1に係るサンプルについては、図2に示す粉末粒界近傍のSEM画像からも明らかであるように、焼結工程における熱処理温度が600℃であり、フェライト被膜は、純鉄粉との焼結の進行に伴い、緻密な被膜へと変化した。しかしながら、鉄基軟磁性粉末の焼結に伴う体積変化により粉末粒界に空隙が生じている。このため、フェライト被膜と鉄基軟磁性粒子との結合は強いものの、フェライト被膜を介する鉄基軟磁性粒子同士の結合は弱く、圧環強度は89MPaに留まった。
(c)比較例2
比較例2に係るサンプルは、焼結工程における熱処理を大気雰囲気中において行った点を除き、比較例1と同様の原材料及び条件にて調製されたサンプルである。図3に示す断面組織のSEM画像からも明らかであるように、比較例2に係るサンプルにおいては、幅広い粉末粒界が確認された。これは、大気雰囲気中での熱処理に起因して、サンプルの表面から粉末粒界を通じて酸素が内部まで進入し、鉄基軟磁性粒子(純鉄粉)の表面を酸化して、酸化物の生成により体積の増加により粉末粒界の幅が広がったと考えられる。その結果、図4に示す粉末粒界近傍のSEM画像からも明らかであるように、比較例2に係るサンプルにおいては、粉末粒界に空隙は認められず、圧環強度も138MPaへと大幅に増大した。
しかしながら、磁気特性については、最大磁束密度(Bm)の低下及び保磁力(Hc)の増大が認められた。これは、焼結工程における熱処理を大気雰囲気中において行ったために粉末粒界に酸素が過剰に供給され、鉄基軟磁性粒子(純鉄粉)における不純物としての酸素の濃度が増大したためと考えられる。
(d)実施例1
実施例1に係るサンプルは、フェライト被膜が酸化剤である二酸化マンガン(MnO)を含む点を除き、比較例1と同様の原材料及び条件にて調製されたサンプルである。図5に示す断面組織のSEM画像からも明らかであるように、実施例1に係るサンプルにおいては、比較例2のような磁気特性の劣化を伴うこと無く、比較例1と比べて圧環強度の向上が認められた。
これは、フェライト被膜に含まれる酸化剤から酸素の放出により、粉末粒界においてのみ限定的な酸化が起こり、鉄基軟磁性粒子における酸素濃度の増大を低減しつつ、粉末粒界における酸化物の生成による強度の向上を達成することができたと考えられる。
(e)実施例2
実施例2に係るサンプルは、フェライト被膜を構成するフェライトがニッケル亜鉛フェライト(NiZn)である点を除き、実施例1と同様の原材料及び条件にて調製されたサンプルである。図6に示す断面組織のSEM画像からも明らかであるように、実施例2に係るサンプルにおいては、フェライト被膜の中に微小な析出物が存在する。
そこで、上記析出物をSTEMによって観察し(図7)、析出物(A)及びその周囲のマトリックス(B)につき、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による元素分析を行った。これらのEDX分析の結果を、それぞれ図8及び図9に示す。析出物(A)の分析結果においてはニッケル(Ni)に該当するピークが認められるのに対し、マトリックス(B)の分析結果においてはニッケル(Ni)に該当するピークは認められなかった。このような分析結果から、上記析出物はニッケル(Ni)が濃化した金属性の鉄(Fe)であると判断される。
その結果、実施例2に係るサンプルにおいては、比較例1及び2に係るサンプルと比較して、良好な磁気特性を維持しつつ、圧環強度が大幅に向上した。
(f)実施例3
実施例3に係るサンプルは、フェライト被膜を構成するフェライトがニッケル銅亜鉛フェライト(NiCuZn)である点を除き、実施例2と同様の原材料及び条件にて調製されたサンプルである。表1に示す評価結果からも明らかであるように、実施例3に係るサンプルにおいても、比較例1及び2に係るサンプルと比較して、良好な磁気特性を維持しつつ、圧環強度が大幅に向上した。
以上のことから、本発明によれば、高い最大磁束密度(透磁率)及び低い保磁力並びに低い鉄損を維持しつつ、高い機械的強度(圧環強度)を達成し得る鉄基軟磁性体を提供することができることが確認された。更に、ニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含むフェライト粉末を使用することにより、鉄基軟磁性体の機械的強度が更に向上されることも確認された。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施態様及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。

Claims (4)

  1. 所定の第1温度以上の温度において酸素を放出する酸化剤とフェライト粉末とを混合することにより前記酸化剤と前記フェライト粉末との混合物であるフェライト混合粉末を調製する混合工程と、
    前記フェライト混合粉末を含むフェライト被膜によって鉄基軟磁性粒子の表面を被覆することにより前記フェライト被膜が表面に形成された前記鉄基軟磁性粒子である鉄基軟磁性粉末を調製する被覆工程と、
    前記鉄基軟磁性粉末を加圧して圧粉成形体を作製する圧粉工程と、
    前記第1温度よりも高く且つ前記フェライト粉末と前記鉄基軟磁性粒子との反応により前記フェライト被膜の電気的絶縁性が消失する温度である第2温度よりも低い温度において不活性雰囲気下で前記圧粉成形体を熱処理することにより前記圧粉成形体を構成する前記鉄基軟磁性粉末を焼結させると共に前記鉄基軟磁性粒子の表面に酸化物層を形成させる焼結工程と、
    を含む、
    鉄基軟磁性体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の鉄基軟磁性体の製造方法において、
    前記被覆工程において、前記鉄基軟磁性粒子と前記フェライト混合粉末との混合物に機械的エネルギーを作用させることにより、前記鉄基軟磁性粒子の表面に前記フェライト被膜を形成する、
    鉄基軟磁性体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の鉄基軟磁性体の製造方法において、
    前記酸化剤は二酸化マンガン(MnO)であり、
    前記第1温度は530℃であり、
    前記第2温度は700℃である、
    鉄基軟磁性体の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の鉄基軟磁性体の製造方法であって、
    前記フェライト粉末はニッケル(Ni)の酸化物及び銅(Cu)の酸化物の少なくとも何れか一方を更に含む、
    鉄基軟磁性体の製造方法。
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