JP2007251125A - 軟磁性合金圧密体及びその製造方法 - Google Patents

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宜郎 川下
Masaru Owada
優 大和田
Tetsuro Tayu
哲朗 田湯
Hironori Sakamoto
宏規 坂元
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Abstract

【課題】電気自動車やハイブリッド車等のモーターの磁心として好適に用いることができる軟磁性合金圧密体並びにその製造方法及びこれに用いる成形型を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成る軟磁性合金圧密体である。非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmである。軟磁性合金圧密体の製造方法である。平均粒径が5〜400μmの非晶質合金粉末の表面に絶縁物被膜を形成する工程(1)及び(1)工程で得られた粉末を加圧成形処理する工程(2)を含む。軟磁性合金圧密体を放電プラズマ焼結によって製造する際に用いる放電プラズマ焼結用成形型である。電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位とを有し、通電部位の電気伝導度が、他部位の電気伝導度より高い。
【選択図】なし

Description

本発明は、軟磁性合金圧密体及びその製造方法に係り、更に詳細には、例えば電気自動車やハイブリッド車等のモーターの磁心として好適に用いることができる軟磁性合金圧密体並びにその製造方法及びこれに用いる成形型に関する。
一般に、金属軟磁性材料は、高い飽和磁束密度と高透磁率とを有するが、電気抵抗率が低いため、渦電流損失が大きいことが知られている。一方、金属酸化物軟磁性材料は、金属軟磁性材料と比較して電気抵抗率は高く、渦電流損失は小さいが、飽和磁束密度が不十分であることが知られている。
このような事情から、双方の欠点を無くした軟磁性材料として、高い飽和磁束密度と高い電気抵抗率とを併有する複合軟磁性材料が開発されている。
例えば、常温での成形が容易な金属については、表面を絶縁物で被覆した金属粒子を冷間プレス成形し、歪取り熱処理を実施した製品が実用化されている。
また、常温での成形が困難な合金については、絶縁性のバインダーと金属粒子を混合して射出成形やプレス成形した製品が実用化されている。
しかしながら、これらは密度が低く、良好な磁気特性が得られないという問題があり、熱間成形による高密度化と絶縁膜の絶縁性維持が望まれている。
また、近年、モーター等の電気製品の小型化に伴い、これらの電気製品内の各種素子に用いられる磁心材料も小型化且つ高性能化が要求されており、従来用いられているフェライトなどの金属酸化物に替わって、磁束密度が高い鉄(Fe)にケイ素(Si)やコバルト(Co)、ニッケル(Ni)を含有させた高合金鋼を利用することが望まれている。
しかしながら、これら高合金鋼は金属であるため、上述したように金属酸化物と比較して電気抵抗率が低く、使用時の発熱量が多いという問題があり、モーターに使用した場合には、発熱によるロスが生じ、効率が低下することが知られている。
かかる問題点を克服するために、軟磁性金属粒子に高抵抗軟磁性物質を被覆してプラズマ活性化焼結する製造方法が提案されている(特許文献1参照。)。
また、無機絶縁物を被覆した金属粉末を熱間成型する製造方法が提案されている(特許文献2参照。)。
更に、金属ガラス粉末に絶縁処理を施し、加圧成形して得られる磁心が提案されている(特許文献3参照。)。
特開平4−226003号公報 特開平8−51010号公報 特開2002−151317号公報
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術においては、高抵抗軟磁性物質として各種フェライトや窒化鉄などが用いられており、これらは高温での焼結が可能である反面、必ずしも十分な電気絶縁性が得られないという問題があった。
また、特許文献2に記載の従来技術においては、絶縁皮膜として合金粉末より酸化物が不安定なものが使用されており、成形時に合金粉末が酸化され、磁気特性や絶縁性が劣化する問題が生じるおそれがあった。
更に、現状の高合金鋼は強度が高いため、成形温度が低い場合には緻密化が困難である一方、成形温度が高い場合には被覆した絶縁材が熱間成形中に合金と反応したり皮膜自体が変質して絶縁性を劣化させるという問題があった。
このような問題に対し、特許文献3に記載の従来技術においては、金属ガラスを用いることにより低温での圧密化に成功しているが、温度が低いので用いる原料粉末の配合によって密度がばらついたり、更には、粒子内に欠陥が残留する等の問題により、飽和磁束密度が劣化したり、満足な透磁率が得られない等の問題が生じることがあった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば電気自動車やハイブリッド車等のモーターの磁心として好適に用いることができる軟磁性合金圧密体並びにその製造方法及びこれに用いる成形型を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、所定の平均粒径である非晶質合金粉末に絶縁物皮膜を形成し、これを加圧成形処理することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の軟磁性合金圧密体は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成り、該非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであることを特徴とする。
また、本発明の軟磁性合金圧密体の第1の好適形態は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成り、該非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであり、且つ異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(1)
/r<1…(1)
の関係を満足することを特徴とする。
更に、本発明の軟磁性合金圧密体の第2の好適形態は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成り、該非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであり、且つ異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(2)
0.05≦r/r≦0.3…(2)
の関係を満足することを特徴とする。
また、本発明の軟磁性合金圧密体の第3の好適形態は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成り、該非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであり、且つ異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(2)
0.05≦r/r≦0.3…(2)
の関係を満足するものであって、第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)が5〜150μmであり、且つ当該非晶質合金粉末の全体積を基準として、該第2の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることを特徴とする。
更にまた、本発明の軟磁性合金圧密体の第4の好適形態は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成り、該非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであり、且つ異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(2)
0.05≦r/r≦0.3…(2)
の関係を満足するものであって、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)が150〜400μmであり、且つ当該非晶質合金粉末の全体積を基準として該第1の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることを特徴とする。
また、本発明の軟磁性合金圧密体の製造方法は、上記本発明の軟磁性合金圧密体を製造する方法であって、下記の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする。
(1)平均粒径が5〜400μmの非晶質合金粉末の表面に絶縁物被膜を形成する工程
(2)(1)工程で得られた粉末を加圧成形処理する工程
更に、本発明の放電プラズマ焼結用成形型は、軟磁性合金圧密体を放電プラズマ焼結によって製造する際に用いる放電プラズマ焼結用成形型であって、電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位とを有し、通電部位の電気伝導度が、他部位の電気伝導度より高いことを特徴とする。
更にまた、本発明の放電プラズマ焼結用成形型は、軟磁性合金圧密体を放電プラズマ焼結によって製造する際に用いる放電プラズマ焼結用成形型であって、電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位とを有し、通電部位と他部位との境界領域において、該通電部位及び他部位の少なくとも一方の境界表面に他の絶縁物被膜を有することを特徴とする。
本発明によれば、平均粒径が5〜400μmの非晶質合金粉末の表面に絶縁物被膜を形成し、得られた粉末を加圧成形処理することなどとしたため、例えば電気自動車やハイブリッド車等のモーターの磁心として好適に用いることができる軟磁性合金圧密体及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の軟磁性合金圧密体について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の軟磁性合金圧密体は、少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成るものである。
かかる非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmである。
このような構成とすることにより、飽和磁束密度と透磁率に優れた軟磁性合金圧密体となる。
一般に、軟磁性合金圧密体は、内部に生成した空隙によって密度が不足すると、十分な飽和磁束密度が得られないだけでなく、その空隙の増加と共に圧密体の強度も低下する。
そこで、上述したように非晶質合金粉末を用いることにより、非晶質合金は酸化物などと比較して変形が容易であるため、より緻密化させることができる。
また、一般に、軟磁性体は、保磁力が低いほど損失が小さくなる。そして、非晶質合金粉末を用いた軟磁性合金圧密体は、非晶質合金粉末の粒子径が小さくなると、軟磁性合金圧密体内部に含有される磁区の数が減少するため保磁力が高くなる。したがって、保磁力が高い粉末を用いた場合、損失が大きく透磁率の悪い成形体になることがある。
更に、非晶質合金粉末の粒子径が粗大であると、非晶質合金粉末内部に欠陥を含むものが多くなり、特にその粗大な粉末がアトマイズ粉末のような溶融金属(合金)を粉化した粉末である場合には、非晶質合金粉末を用いた軟磁性合金圧密体には、空孔が生成し易く透磁率が著しく低くなる。
したがって、用いる非晶質合金粉末の平均粒径は、上述したように5〜400μmであることを要し、10〜300μmであることが好ましく、15〜250μmであることがより好ましい。
ここで、「平均粒径」は、粒度分布の平均値を表したものであるが、値が過度に乖離した粒径のものが混在したものを使用すると、調製した際に所望する磁気特性が得られない(低再現性)ことがある。そこで、サイズを基準としたときに、用いた非晶質合金粉末が1種類であるとは、粒度分布のピークが1つであり、平均粒径の±20%の範囲内に全重量の80%以上の粉末粒径がおさまることをいい、好ましくは±15%の範囲内に全重量の80%以上の粉末粒径がおさまることをいう。
また、軟磁性合金圧密体の磁気異方性は小さいことが好ましいので、用いる非晶質合金粉末は、その形状が球状であることが望ましく、このような球状の非晶質合金粉末は、例えばアトマイズ法により容易に作製することができるが、これらの形状や製法に限定されるものではない。
更に、用いる非晶質合金粉末の含有成分やその組成は特に限定されるものではないが、磁気特性が良好であり、広い低温度範囲(例えば350〜600℃)で非晶質(ガラス)状態となるものが望ましい。例えば、次式(3)
ΔTx=Tx−Tg…(3)
(式中のTxは結晶化開始温度、Tgはガラス転移温度を示す。)で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上であるFe、Ni又はCo、及びこれらの任意の組合わせに係る金属元素を主成分とする非晶質合金粉末を用いることが好適である。
典型的には、Ni、Co及びSiを含有したFe基合金、いわゆる鉄心材料を好適に用いることができる。
なお、非晶質合金粉末としては含有成分やその組成が異なる複数の非晶質合金粉末を混在させたものを用いてもよい。
更にまた、絶縁物被膜は、所望の絶縁性を有していれば、その成分や膜厚について特に限定されるものではないが、その成分としては、例えば酸化ケイ素(SiO)やアルミナ(Al)、マグネシア(MgO)などを適用することができ、また膜厚は、例えば0.01〜2μm、好ましくは0.05〜1μmであればよい。
ここで、加圧成形処理工程は、所望の圧密体が得られれば特に限定されるものではないが、例えば従来公知のホットプレスやプラズマ放電焼結、熱間静水圧焼結(HIP)などの方法により行なうことができる。また、処理条件は、用いる非晶質合金粉末などの組成により異なるものと考えられ、特に限定されるものではないが、例えば成形圧力は50MPa〜980MPa、好ましくは100MPa〜500MPa、成形温度は350〜600℃、好ましくは370〜500℃、より好ましくは400〜500℃で、アルゴン(Ar)などの不活性ガス雰囲気や真空中の雰囲気とすればよい。また、ホットプレス法の場合には、典型的には成形圧力200〜600MPa、成形温度400〜500℃で、0.1Pa以下の真空雰囲気とすればよく、プラズマ放電焼結法の場合には、典型的には成形圧力100〜500MPa、成形温度400〜500℃で、0.1Pa以下の真空雰囲気とすればよく、HIP法の場合には、典型的には成形圧力100MPa〜1000MPa、成形温度450〜500℃とすればよい。
また、本発明においては、加圧成形処理工程において加熱処理工程を含み、その加熱処理工程の前処理工程として、少なくとも1種の非晶質合金粉末に対して磁場中で振動を与えた後、少なくとも1種の非晶質合金粉末を磁場中で仮成形する処理をする工程を経ることが望ましい。
このような処理工程を経ると、金型中において粒径の異なる非晶質合金粉末の重力による偏りをより小さくして均一に分散させることができ、得られる軟磁性合金圧密体がより均質なものとなる。
ここで、前処理工程における処理条件は、磁場強度を大きくすると装置が大掛かりで不経済であり、磁場強度が小さいと、粉末に対して重力の影響が無視できないので目的とする効果が得られ難い。また、用いる非晶質合金粉末などの組成により異なるものと考えられ、特に限定されるものではないが、典型的には磁場は40000〜2000000A/m、好ましくは60000〜1000000A/m、より好ましくは80000〜400000A/mとすればよく、与える振動は、金型中の非晶質合金粉末を圧縮して型込めできる程度であればよく、例えば従来公知の振動造型機のような装置を用いて与えればよい。
更に、本発明においては、非晶質合金粉末は、異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、かかる第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(1)
/r<1…(1)
の関係を満足することが好ましく、次式(2)
0.05≦r/r≦0.3…(2)
の関係を満足することがより好ましい。
上述したように、用いる原料粉末は非晶質ガラス合金であるので、酸化物と比較して変形が容易であり、特に金属ガラス状態では超塑性状態が発現して緻密化が進行するが、各粉末の変形量が過剰となると、特定の方位に組織の集合化が生じて透磁率が低くなることがある。また、軟磁性合金圧密体を使用する際の周波数領域の範囲によって、より好適な非晶質合金粉末の平均粒径の範囲がある。
そこで、より広い周波数領域の範囲において、十分な飽和磁束密度を得るためには、第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが上記式(1)の関係を満足することが望ましく、更には、それぞれの粉末の過剰な変形を抑制し得るという観点から上記式(2)の関係を満足することが好ましい。
なお、本発明においては、第3またはそれ以上の非晶質合金粉末を含んでいてもよい。
また、本発明においては、第2の非晶質合金粉末(相対的に平均粒径が小さい粉末)として、平均粒径(r)が5〜150μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜60μmである第2の非晶質合金粉末を用いる場合には、非晶質合金粉末の全体積を基準として、かかる第2の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることが更に好ましい。
このような構成とした軟磁性合金圧密体は、周波数が高い領域(例えば1GHz以上)における使用において、特に優れた磁気特性を示す。
これは、粒径が小さい非晶質合金粉末が多い方が、周波数が高い領域では損失低減効果が大きく、混在させた非晶質合金粉末のうち、相対的に平均粒径が小さい粉末の形状がそのまま保たれ易く、相対的に平均粒径が大きい粉末が主に変形しやすいためであると考えられる。
更に、本発明においては、第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度に対して、第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度が10K以上低いことが好ましく、特に10〜30K低いことが好ましい。このような非晶質合金粉末は、上述したような第2の非晶質合金粉末(相対的に平均粒径が小さい粉末)として、平均粒径(r)が5〜150μmである第2の非晶質合金粉末を用いる場合に、特に効果的である。
なお、粒径の小さい粉末は、内部の磁壁が少なく、場合によっては、単磁区になり保磁力が高く、透磁率を損うものも存在する。本発明においては、そのような非晶質合金粉末は可能な限り用いないようにするが、上述したような構成とすることで、不要な歪の導入や、異方性の発現による透磁率の低減が防止できるので、相対的に平均粒径が小さい粉末の磁気特性が保たれ、全体的な磁気特性向上に寄与していると考えられる。
一方、本発明においては、第1の非晶質合金粉末(相対的に平均粒径が大きい粉末)として、平均粒径(r)が150〜400μm、好ましくは200〜400μmである第1の非晶質合金粉末を用いる場合には、非晶質合金粉末の全体積を基準として、かかる第1の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、80体積%以上であることが更に好ましい。一方、相対的に平均粒径が小さい粉末を混在させない場合には、[1]空隙が大きくなり密度が高くならない、[2]相対的に平均粒径が大きい粉末の変形量が大きくなる、ということがあるので、第1の非晶質合金粉末の含有率が95体積%以下であることが好ましい。
このような構成とした軟磁性合金圧密体は、周波数が低い領域(例えば100MHz以下)における使用において、特に優れた磁気特性を示す。
これは、粒径が大きい非晶質合金粉末が多い方が、周波数が低い領域では損失低減効果が大きく、混在させた非晶質合金粉末のうち、粒径が小さい粉末が粒径が大きい粉末の空隙に充填され、相対的に平均粒径が大きい粉末の形状が保たれたまま緻密化がされ易いためと考えられる。
更に、本発明においては、第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度に対して、第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度が10K以上低いことが好ましく、特に10〜30K低いことが好ましい。このような非晶質合金粉末は、上述したような第1の非晶質合金粉末(相対的に平均粒径が大きい粉末)として、平均粒径(r)が150〜400μmである第1の非晶質合金粉末を用いる場合に、特に効果的である。
これは、不要な歪の導入や、異方性の発現による透磁率の低減が防止できるので、相対的に平均粒径が小さい粉末の磁気特性が保たれ、全体的な磁気特性向上に寄与していると考えられる。
更にまた、本発明においては、加圧成形処理工程の成形温度が第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度と第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度との間の温度であると共に、平均プレス歪速度が0.0001〜1S−1であることが好ましい、より好ましくは0.0005〜0.1S−1である。
成形温度を上述の範囲に規定することにより、第1の非晶質合金粉末又は第2の非晶質粉末のうち磁気特性を維持したい粉末の変形量を低減することができる。
また、平均プレス歪速度が1S−1を超えると絶縁物被膜の変形が非晶質合金粉末の変形に追随できずに被膜の破損が大きくないし多くなり、また非晶質合金粉末の変形抵抗自体が大きくなり金型と加圧成形処理装置(例えば、プラズマ放電焼結装置。)の負担が大きくなることがある一方、平均プレス歪速度が0.0001S−1未満のように過度に遅すぎると生産性が損われることがある。
次に、本発明の軟磁性合金圧密体の製造方法について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の軟磁性合金圧密体の製造方法は、上記本発明の軟磁性合金圧密体を製造する方法であって、(1)平均粒径が5〜400μmである非晶質合金粉末に絶縁物被膜を形成する工程、(2)(1)工程で得られた粉末を加圧成形処理する工程、を含む製造方法である。
このような製造方法により作製された軟磁性合金圧密体は、優れた飽和磁束密度と透磁率を有するものとなる。
更に、上記のような絶縁物被膜は、例えば以下の製造方法により形成することができる。即ち、平均粒径5〜400μmの非晶質合金粉末を絶縁物前駆体含有溶液に浸漬し、乾燥させて非晶質合金粉末表面に絶縁物前駆体を被覆担持させる。この過程は、被覆量と溶液濃度に応じて、浸漬、乾燥を繰り返すことができる。
次いで、この絶縁物前駆体を被覆担持した粉末を加熱して、絶縁物前駆体を焼成する。絶縁物前駆体は焼成中に、化学反応と溶解により絶縁物被膜に変化する。
このような粉末を用いることにより、より優れた飽和磁束密度と透磁率を併有する軟磁性合金圧密体を得ることができる。
また、本発明においては、上記(2)工程において、放電プラズマ焼結によって、非晶質合金粉末を加圧成形することが望ましい。
非晶質合金粉末は、結晶化を抑制するため、成形時の入熱量が小さいことが望ましいことから、例えば昇温速度が比較的速い放電プラズマ焼結を好適な方法として挙げることができる。
次に、本発明の放電プラズマ焼結用成形型について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の放電プラズマ焼結用成形型は、本発明の軟磁性合金圧密体の製造方法の一例である放電プラズマ焼結を適用する製造方法において好適に用いられる成形型であって、電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位とを有し、通電部位の電気伝導度が、他部位の電気伝導度より高いものである。
用いる放電プラズマ用成形型の導電性が高いと、効果的に非晶質合金粉末に電流が流れず、成形体の表面付近の電流が成形型を通過するため、成形体に温度ムラが生じることがある。
したがって、放電プラズマ焼結において用いる成形型(例えば、ダイとパンチとなどを組み合せたもの。)は、電流が流れる電極から非晶質合金粉末までの通電部位の電気伝導度を他部位の電気伝導度より高くすることにより、成形型に電流が放散するのを抑制し、成形体に温度ムラが生じ難くなる。
また、本発明においては、特に限定されるものではないが、電流を流す通電部位の電気伝導度に対する非晶質合金粉末の電気伝導度の比が1/100〜100であり、且つ通電部位以外の他部位の電気伝導度が、非晶質合金粉末の電気伝導度の1/10以下であるものが好ましい。
通電部位の電気伝導度に対する非晶質合金粉末の電気伝導度の比が、1/100〜100である材料で構成し、それ以外の他部位を電気伝導度が非晶質合金粉末の電気伝導度に対し、1/10以下である材料で構成することにより、流した電流が、成形型に放散するのを抑制し、効率的な緻密化を実現し得る成形型となる。
ここで、電流と熱の放散状態について図面を用いて説明する。
図1(a)は従来の放電プラズマ用成形型における電流と熱の放散状態を示す模式的説明図であり、同図(b)は本発明の放電プラズマ用成形型の一例における電流と熱の放散状態を示す模式的説明図である。
同図(a)に示すように、従来の実施形態においては、成形型10aが電気伝導度が高いパンチ12aとダイ14aとで構成されており、同図(a)中において破線で示すように、電流がダイ14aに放散され、それに伴う放熱(同図(a)中矢印Aで示す)も多いため、成形体1aにおいて温度ムラが生じ易かったが、同図(b)に示すように、本実施形態においては、成形型10bが電気伝導度が高いパンチ12bと比較的電気伝導度が低いダイ14bとで構成されており、同図(b)中において破線で示すように、電流がダイ14bに放散されるのが抑制されており、それに伴う放熱も少ないため、成形体1bにおいて温度ムラが生じ難くなっている。
一方、本発明の他の放電プラズマ焼結用成形型は、本発明の軟磁性合金圧密体の製造方法の一例である放電プラズマ焼結を適用する製造方法において好適に用いられる他の成形型であって、電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位とを有し、通電部位と他部位との境界領域において、通電部位及び他部位の少なくとも一方の境界表面に他の絶縁物被膜を有するものである。
このような構成とすることによって、上記したものと同様の効果を得ることができる。
上述した他の絶縁物被膜としては、例えば窒化チタン(TiN)被膜やSiO被膜などを蒸着などにより形成し、電気絶縁性を有するような状態としたものを挙げることができる。
なお、成形型における電気を流さない他部位の材質としては、金属より熱伝導性が小さいセラミックなどを好適に用いることができ、これにより、成形体から成形型への放熱を抑制し、加熱時の成形体内の温度分布を均一化することができ、結晶化領域を生じることなく、大型の成形体を得ることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[非晶質合金粉末の準備]
鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)ケイ素(Si)、鉄(Fe)−炭素(C)合金、鉄(Fe)−リン(P)合金を所定量秤量し、高周波溶解炉を用いてアルゴン(Ar)ガス中で溶解した。そして、組成がFe76Ga9.5Si2.5となるインゴットを作製した。
得られたインゴットをアルゴン雰囲気、減圧(10−5Pa)下で溶解し、Arガスで噴霧してガスアトマイズを行なった。
ガスアトマイズによって得られた粉末は、X線解析の結果、急冷された非晶質合金粉末となっていた。
得られた粉末は、平均粒径の±20%以内におさまるように篩を用いて分級した。なお、粒度は、レーザ回折方式粒度分布測定装置で測定して決定した。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC解析)により白金坩堝を用いてAr気流中で測定して決定した。
(実施例1)
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末10g当たり、5mLのポリシザラン溶液(アクアミカ社製)を塗布し、ドライヤーで乾燥し、100℃で1時間保持して、絶縁物である酸化ケイ素(SiO)の被膜を有する非晶質合金粉末を得た。
絶縁物被膜を有する非晶質合金粉末13gを秤量して、プレス面が外径30mm、内径20mmである円環状の金型に充填し、1.6MA/mの磁場中で、成形温度は室温、成形圧力は0.05GPaで仮成形した。
得られた仮成形体を真空中でプラズマ放電焼結法により下記の要領で加圧成形処理して、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
具体的には、一定の成形圧力0.05GPaを保持しつつ、昇温速度25℃/分で室温から480℃まで昇温した。次いで、成形温度480℃で1分間保持した。更に、徐々に荷重を大きくして0.5GPaまで5秒で到達させた。この間の平均歪速度は0.1S−1であった。しかる後、荷重負荷を開放して冷却し、軟磁性合金圧密体を得た。なお、冷却中も室温になるまで真空を保持した。
得られた軟磁性合金圧密体を表面研磨して、本例の軟磁性合金圧密体を得た(寸法:外径30mm、内径20mm、厚み4mm)。
(実施例2)
平均粒径が80μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末を用いた以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例3)
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が10μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が40体積%及び60体積%となるように混合して用い、加圧成形処理における成形温度を460℃とした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。なお、2種類の粉末の比重が同等とみなせたので、ここでは質量により測定した(以下の実施例及び比較例において同様。)。
(実施例4)
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が55μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が25体積%及び75体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例5)
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が38μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が20体積%及び80体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例6)
平均粒径が270μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が13μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が60体積%及び40体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例7)
平均粒径が270μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が80μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%及び25体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例8)
平均粒径が270μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が55μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が80体積%及び20体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例9)
平均粒径が80μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が20μm、ガラス転移温度が435℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が85体積%及び15体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例10)
平均粒径が80μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が20μm、ガラス転移温度が435℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が15体積%及び85体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例11)
平均粒径が330μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が95μm、ガラス転移温度が435℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%及び25体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例12)
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が95μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が50体積%及び50体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例13)
平均粒径が150μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末、平均粒径が20μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末、及び平均粒径が8μm、ガラス転移温度が435℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%、15体積%及び10体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例14)
平均粒径が150μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が20μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%及び25体積%となるように混合して用い、加圧成形処理における平均歪速度を0.05S−1とした以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例15)
平均粒径が150μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が20μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%及び25体積%となるように混合して用い、加圧成形処理における平均歪速度を0.008S−1とした以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(実施例16)
平均粒径が150μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末及び平均粒径が20μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末を、それぞれの含有率が75体積%及び25体積%となるように混合して用いた以外は、実施例3と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(比較例1)
平均粒径が80μm、ガラス転移温度が470℃の非晶質合金粉末を用いたこと及び絶縁物である酸化ケイ素(SiO)被膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(比較例2)
平均粒径が185μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を用いたこと及び絶縁物である酸化ケイ素(SiO)被膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(比較例3)
平均粒径が420μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
(比較例4)
平均粒径が800μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本例の軟磁性合金圧密体を得た。
上記各例の軟磁性合金圧密体の仕様及び製造条件を表1に示す。
Figure 2007251125
[性能評価]
上記各例の軟磁性合金圧密体の渦電流損失、透磁率、飽和磁束密度及び密度を下記の要領で測定した。得られた結果を表2に示す。
(渦電流損失)
周波数1kHz、飽和磁束密度1Tの条件下で測定した。表中の結果は、比較例1の渦電流損失を基準値(100)としたときの相対値である。
(透磁率)
周波数1kHz、飽和磁束密度1Tの条件下で測定した。
(飽和磁束密度)
10000kA/mの磁場中で測定した。
(密度)
軟磁性合金圧密体の寸法及び質量から算出した。
Figure 2007251125
表1及び表2より、本発明の範囲に属する実施例1〜16は、本発明外の比較例1〜4と比較して、優れた飽和磁束密度と透磁率を併有し、渦電流損失が低減されていることが分かる。
更に、表1及び表2より、飽和磁束密度と透磁率が優れているので、従来より高性能なモーターが製造できる。また、モーターの小型化にも寄与可能である。同時に、渦電流損失が低減されていることから、電気自動車やハイブリッド車等のモーターの磁心として、ラジエーター等の冷却設備の負荷低減や回転数を高速化したモーターに好適に用いることができることが分かる。
現時点においては、渦電流損失を低減させ、高い飽和磁束密度及び高い透磁率を両立させる観点から、実施例5や9が最も良好な結果をもたらすものと思われる。
次いで、本発明の放電プラズマ焼結用成形型を作製し、その性能を評価した。具体的には、以下の各例に記載した操作を行い、これを用いて軟磁性合金圧密体を作製し、その性能を評価した。
(実施例17)
パンチとして超硬製のものを用い、ダイとして超硬製のものを用い、割り型として酸化ジルコニウム(Zr)製のものを用い、図2に示すような本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。なお、パンチ面は20mm×20mmになるように設計した。
図2は、放電プラズマ焼結用成形型の上面図及び半割断面図である
同図に示すように、成形型20は、パンチ22とダイ24と割り型26とを備える。同図中の符号2は成形体を示す。また、符号26aは割り型の表面を示す。
(実施例18)
パンチとして超硬製のものを用い、ダイとして酸化ジルコニウム(Zr)製のものを用い、割り型として酸化ジルコニウム(Zr)製のものを用いた以外は、実施例17と同様の操作を繰り返し、本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。
(実施例19)
パンチとして超硬製のものを用い、ダイとして超硬製のものを用い、割り型として表面にTiN被膜を真空蒸着にて形成した超硬製のものを用いた以外は、実施例17と同様の操作を繰り返し、本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。
(実施例20)
パンチとして超硬製のものを用い、ダイとして超硬製のものを用い、割り型として表面にSiO被膜を真空蒸着にて形成した超硬製のものを用いた以外は、実施例17と同様の操作を繰り返し、本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。
(比較例5)
パンチ、ダイ及び割り型として超硬製のものを用いた以外は、実施例17と同様の操作を繰り返し、本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。
(比較例6)
パンチ、ダイ及び割り型としてハイス製のものを用いた以外は、実施例17と同様の操作を繰り返し、本例の放電プラズマ焼結用成形型を作製した。
上記各例の仕様を表3に示す。
Figure 2007251125
[性能評価]
上記各例の放電プラズマ焼結用成形型を用いて、下記の操作によって、軟磁性合金圧密体を作製した。
(非晶質合金粉末の準備)
Fe、Ga、B、Si、Fe−C合金、Fe−P合金を所定量秤量し、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解した。そして、組成がFe76Ga9.5Si2.5となるインゴットを作製した。
得られたインゴットをアルゴン雰囲気、減圧(10−5Pa)下で溶解し、Arガスで噴霧してガスアトマイズを行なった。
ガスアトマイズによって得られた粉末は、X線解析の結果、急冷された非晶質合金粉末となっていた。
得られた粉末は、平均粒径の±20%以内におさまるように篩を用いて分級した。なお、粒度は、レーザ回折方式粒度分布測定装置で測定して決定した。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC解析)により白金坩堝を用いてAr気流中で測定して決定した。
平均粒径が190μm、ガラス転移温度が465℃の非晶質合金粉末10g当たり、5mLのポリシザラン溶液(アクアミカ社製)を塗布し、ドライヤーで乾燥し、100℃で1時間保持して、絶縁物である酸化ケイ素(SiO)の被膜を有する非晶質合金粉末を得た。また、平均粒径10μm、ガラス転移温度が440℃の非晶質合金粉末10g当たり、5mLのポリシザラン溶液(アクアミカ社製)を塗布し、ドライヤーで乾燥し、100℃で1時間保持して、絶縁物である酸化ケイ素(SiO)の被膜を有する非晶質合金粉末を得た。
(軟磁性合金圧密体の作製)
これらをそれぞれの含有率が40体積%及び60体積%となるように混合した。
絶縁物被膜を有する非晶質合金粉末10gを秤量して、各例の成形型に充填し、1.6MA/mの磁場中で、成形温度は室温、成形圧力は0.05GPaで仮成形した。
得られた仮成形体を真空中でプラズマ放電焼結法により下記の要領で加圧成形処理して、各例の成形型を用いて軟磁性合金圧密体を得た。
具体的には、一定の成形圧力0.05GPaを保持しつつ、昇温速度25℃/分で室温から460℃まで昇温した。次いで、成形温度460℃で1分間保持した。更に、徐々に荷重を大きくして0.5GPaまで5秒で到達させた。この間の平均歪速度は0.1S−1であった。しかる後、荷重負荷を開放して冷却し、軟磁性合金圧密体を得た(20mm×20mm、厚み約4mm)。なお、冷却中も室温になるまで真空を保持した。
得られた軟磁性合金圧密体の密度をアルキメデス法にて測定した。得られた結果を表3に併記する。
表3より、本発明の放電プラズマ焼結用成形型を用いて作製した軟磁性合金圧密体は、密度が高いことが分かる。即ち、このような放電プラズマ焼結用成形型又はこれを備えた放電プラズマ焼結装置を用い、放電プラズマ焼結を適用した製造方法により、軟磁性合金圧密体を製造することにより、優れた飽和磁束密度と高い透磁率を維持しつつ、渦電流損失が大幅に低減された高密度である軟磁性合金圧密体を得ることができる。
従来の放電プラズマ用成形型及び本発明の放電プラズマ用成形型の一例における電流と熱の放散状態を示す模式的説明図(a)及び(b)である。 成形型の構成を示す上面図(a)及び半割断面図(b)である。
符号の説明
1a,1b,2 成形体
10a,10b,20 成形型
12a,12b,22 パンチ
14a,14b,24 ダイ
26 割り型

Claims (14)

  1. 少なくとも1種の非晶質合金粉末を加圧成形処理して成る軟磁性合金圧密体において、
    上記非晶質合金粉末は、その表面に絶縁物被膜を有すると共に、その平均粒径が5〜400μmであることを特徴とする軟磁性合金圧密体。
  2. 上記加圧成形処理が加熱処理を含み、該加熱処理の前処理として、上記少なくとも1種の非晶質合金粉末に対して磁場中で振動を与えた後、上記少なくとも1種の非晶質合金粉末を磁場中で仮成形する処理をすることを特徴とする請求項1に記載の軟磁性合金圧密体。
  3. 上記非晶質合金粉末は、異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(1)
    /r<1…(1)
    の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性合金圧密体。
  4. 上記非晶質合金粉末は、異なる粒度分布を有する第1及び第2の非晶質合金粉末を含み、該第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)と該第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)とが次式(2)
    0.05≦r/r≦0.3…(2)
    の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性合金圧密体。
  5. 上記第2の非晶質合金粉末の平均粒径(r)が5〜150μmであり、且つ上記非晶質合金粉末の全体積を基準として該第2の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることを特徴とする請求項3又は4に記載の軟磁性合金圧密体。
  6. 上記第1の非晶質合金粉末の平均粒径(r)が150〜400μmであり、且つ上記非晶質合金粉末の全体積を基準として該第1の非晶質合金粉末の含有率が50体積%以上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つの項に記載の軟磁性合金圧密体。
  7. 上記第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度に対して、上記第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度が10K以上低いことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つの項に記載の軟磁性合金圧密体。
  8. 上記第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度に対して、上記第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度が10K以上低いことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つの項に記載の軟磁性合金圧密体。
  9. 上記加圧成形の成形温度が上記第1の非晶質合金粉末のガラス転移温度と上記第2の非晶質合金粉末のガラス転移温度との間の温度であると共に、上記加圧成形の平均プレス歪速度が0.0001〜1S−1であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つの項に記載の軟磁性合金圧密体。
  10. 請求項1〜9のいずれか1つの項に記載の軟磁性合金圧密体の製造方法であって、下記の工程(1)及び(2)
    (1)平均粒径が5〜400μmの非晶質合金粉末の表面に絶縁物被膜を形成する工程、
    (2)(1)工程で得られた粉末を加圧成形する工程、
    を含むことを特徴とする軟磁性合金圧密体の製造方法。
  11. 上記(2)工程において、放電プラスマ焼結によって上記(1)工程で得られた粉末を加圧成形することを特徴とする請求項10に記載の軟磁性合金圧密体の製造方法。
  12. 軟磁性合金圧密体を放電プラズマ焼結によって製造する際に用いる放電プラズマ焼結用成形型であって、
    電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位と、を有し、
    上記通電部位の電気伝導度が、上記他部位の電気伝導度より高いことを特徴とする放電プラズマ焼結用成形型。
  13. 上記通電部位の電気伝導度に対する非晶質合金粉末の電気伝導度の比が1/100〜100であり、且つ上記通電部位以外の他部位の電気伝導度が、非晶質合金粉末の電気伝導度の1/10以下であることを特徴とする請求項12に記載の放電プラズマ焼結用成形型。
  14. 軟磁性合金圧密体を放電プラズマ焼結によって製造する際に用いる放電プラズマ焼結用成形型であって、
    電流を流す通電部位と、該通電部位以外の他部位と、を有し、
    上記通電部位と上記他部位との境界領域において、該通電部位及び他部位の少なくとも一方の境界表面に他の絶縁物被膜を有することを特徴とする放電プラズマ焼結用成形型。
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