JP2015028985A - 軟磁性体組成物およびその製造方法、磁芯、並びに、コイル型電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度に優れた軟磁性体組成物およびその製造方法、磁芯、並びに、コイル型電子部品を提供する。【解決手段】軟磁性体組成物は、複数の軟磁性合金粒子と、前記軟磁性合金粒子間に存在する粒界と、を有する軟磁性体組成物であって、前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され(但し、Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つ)、前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在する。【選択図】図3
Description
本発明は、軟磁性体組成物およびその製造方法、磁芯、並びに、コイル型電子部品に関する。
金属磁性体は、フェライトに比較して、高い飽和磁束密度が得られる等の利点がある。このような金属磁性体材料としては、軟磁性合金等を用いた磁性材料が知られている。
このような軟磁性合金は、磁性材料としての応用範囲を広げるため、小型化、薄層化するにあたり、成形体の機械的強度の向上が望まれていた。特許文献1では、Fe−Si−M系軟磁性体合金(但し、Mは、鉄より酸化しやすい金属元素)を用いた、強度の高い磁性材料が提案されている。
しかし、特許文献1において提案されている態様でも、未だ強度は十分ではなく、さらなる機械強度の向上が望まれていた。特に、このような磁性材料では、Fe−Si−M系軟磁性体合金におけるSiの含有量が増すほど、高抵抗・高透磁率となる一方で、成形性が悪化する問題があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、優れた強度を有する軟磁性体組成物およびその製造方法、磁芯、並びに、コイル型電子部品を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る軟磁性体組成物は、
複数の軟磁性合金粒子と、前記軟磁性合金粒子間に存在する粒界と、を有する軟磁性体組成物であって、
前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され、
前記Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在することを特徴とする。
複数の軟磁性合金粒子と、前記軟磁性合金粒子間に存在する粒界と、を有する軟磁性体組成物であって、
前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され、
前記Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在することを特徴とする。
本発明に係る軟磁性体組成物では、軟磁性合金粒子の粒界に、Znを含むガラス状相が存在することにより、優れた強度を発揮する。
好ましくは、前記粒界には、さらにSiが存在する。
好ましくは、前記粒界には、さらにBが存在する。
また、本発明に係る軟磁性体組成物の製造方法は、
軟磁性体合金粉末と、結晶化ガラスと、結合材とを混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を成形して、成形体を得る工程と、
前記成形体を加熱する工程と、を有することを特徴とする。
軟磁性体合金粉末と、結晶化ガラスと、結合材とを混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を成形して、成形体を得る工程と、
前記成形体を加熱する工程と、を有することを特徴とする。
好ましくは、本発明に係る軟磁性体組成物は、上記軟磁性体組成物の製造方法により得られる。
また、本発明に係る磁芯は、上記のいずれかに記載の軟磁性体組成物から構成される。
さらに、本発明に係るコイル型電子部品は、上記磁芯を有する。
コイル型電子部品としては、特に限定されないが、インダクタ部品、EMC用コイル部品、トランス部品等の電子部品が例示される。特に、携帯電話等のDC−DCコンバーター等に好適に用いることができる。
コイル型電子部品としては、特に限定されないが、インダクタ部品、EMC用コイル部品、トランス部品等の電子部品が例示される。特に、携帯電話等のDC−DCコンバーター等に好適に用いることができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
本実施形態に係るコイル型電子部品用の磁芯は、圧粉成形により成形される圧粉磁芯である。圧粉成形は、プレス機械の金型内に、軟磁性合金粉末を含む材料を充填し、所定の圧力で加圧して圧縮成形を施すことにより成形体を得る方法である。
本実施形態に係る磁芯の形状としては、図1に示したトロイダル型のほか、FT型、ET型、EI型、UU型、EE型、EER型、UI型、ドラム型、ポット型、カップ型等を例示することができる。この磁芯の周囲に巻き線を所定巻数だけ巻回することにより所望のコイル型電子部品を得ることができる。
本実施形態に係るコイル型電子部品用の磁心は、本実施形態に係る軟磁性体組成物で構成してある。
本実施形態に係る軟磁性体組成物は、複数の軟磁性合金粒子と、前記軟磁性合金粒子間に存在する粒界と、を有する軟磁性体組成物であって、
前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され、
前記Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在することを特徴とする。
前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され、
前記Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在することを特徴とする。
本実施形態に係る軟磁性体組成物によれば、上記構成を満足することにより、磁気特性(初期透磁率μi等)あるいは比抵抗を良好に維持しつつ、強度を向上させることができる。
本実施形態に係る軟磁性体組成物は、図2に示すように、複数の軟磁性合金粒子21と、軟磁性合金粒子間に存在する粒界30と、を有する。
図3に示すように、本実施形態において、Znを含むガラス状相40は、2つの粒子間に形成される粒界30または3つ以上の粒子の間に存在する粒界31(3重点など)に存在している。このようなZnを含むガラス状相の存在により、本実施形態に係る磁芯は、優れた強度を発揮する。
特に、粒界にZnを含むガラス状相が存在する本実施形態に係る軟磁性体組成物の場合には、粒界にZnを含むガラス状相が存在しない軟磁性体組成物の場合に比べて、強度の向上率が、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上となる。
本実施形態において、ガラス状相とは、好ましくは、主としてアモルファスガラスおよび/または結晶化ガラスにより構成される相である。より好ましくは、主として結晶化ガラスにより構成される相である。なお、このようなガラス状相は、軟磁性体合金を構成する成分やその他の成分(結合剤や添加剤等)に由来する金属、酸化物または複合酸化物の結晶を含んでいてもよい。
また、本実施形態において、ガラス状相は、Znを含む。このようなガラス状相において、Znの存在形態は特に限定されるものではないが、例えば、上記アモルファスガラスおよび/または結晶化ガラスの構成元素として含まれてもよいし、Znの金属、Znの酸化物、あるいは軟磁性体合金を構成する成分やその他の成分(結合剤や添加剤等)とZnとの複合酸化物等として、ガラス状相中に分散して存在していてもよい。
また、本実施形態に係る軟磁性体組成物では、好ましくは粒界にはさらにホウ素(B)が存在する。より好ましくは、Bは、Znを含むガラス状相に含まれる。Bの存在形態は特に限定されるものではないが、例えば、上記アモルファスガラスおよび/または結晶化ガラスの構成元素として含まれてもよいし、Bの酸化物、あるいは軟磁性体合金を構成する成分やその他の成分(結合剤や添加剤等)とBとの複合酸化物等として、ガラス状相中に分散して存在していてもよい。
なお、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、好ましくは、粒界におけるZnおよび/またはBの濃度は、軟磁性合金粒子内部よりも高く、さらに好ましくは、Znおよび/またはBは、軟磁性合金粒子内部には実質的に含まれない。
また、Znを含むガラス状相は、必ずしも軟磁性合金粒子の表面の全体を覆うように存在している必要はなく、軟磁性合金粒子の表面の一部に形成されていてもよい。
なお、図3では、便宜上、Znを含むガラス状相40を粒子状に示したが、必ずしも粒子状である必要はなく、例えば、軟磁性合金粒子21と粒界30との界面付近に層状に形成されていてもよい。
本実施形態において、Znを含むガラス状相が軟磁性合金粒子の表面および粒界に存在しているか否かを判断する方法としては、特に制限されず、たとえば、Znのマッピング画像を解析することで判断してもよい。
なお、軟磁性合金粒子と粒界との判別は、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて磁芯を観察することにより行うことができる。具体的には、誘電体層の断面をSTEMにより撮影し、明視野(BF)像を得る。この明視野像において軟磁性合金粒子と軟磁性合金粒子との間に存在し、該軟磁性合金粒子とは異なるコントラストを有する領域を粒界とする。異なるコントラストを有するか否かの判断は、目視により行ってもよいし、画像処理を行うソフトウェア等により判断してもよい。
また、磁芯の任意の断面から観測点を定めて、EDS解析若しくはEPMA解析を行うことによっても、粒界30にZnを含むガラス状相が存在することが確認できる。さらに、これらの解析によれば、合金粒子の内部やその表面における各種成分の濃度分布等も確認できる。また、STEM解析によれば、合金粒子の表面に形成された相が、アモルファスか結晶質かなどに関しても特定することが可能である。
なお、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、Zn以外の元素(B、Fe、Si、M等)についても、上記Znの場合と同様の方法により、軟磁性合金粒子の表面および粒界に各種元素が存在しているか否かを判断することができる。なお、Bについては、ICP解析若しくはEPMA解析を行うことによって、軟磁性合金粒子の表面および粒界に各種元素が存在しているか否かを判断することができる。
本実施形態に係る軟磁性体組成物において、亜鉛(Zn)の含有量は、軟磁性体合金100質量%に対して、ZnO換算で、0.05〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。上記のような範囲を満足させることにより、本実施形態に係る磁芯において、磁気特性(特に、初期透磁率μi)あるいは比抵抗を良好に維持しつつ、成形性(特に抗折強度)を向上させることができる。
また、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、ホウ素(B)の含有量は、軟磁性体合金100質量%に対して、B2O3換算で、0.05〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。上記のような範囲を満足させることにより、本実施形態に係る磁芯において、磁気特性(特に、初期透磁率μi)あるいは比抵抗を良好に維持しつつ、成形性(特に抗折強度)を向上させることができる。
本実施形態に係る軟磁性体組成物において、粒界にZnを含むガラス状相が存在しない場合には、十分な強度が得られない傾向にある。また、Znを含むガラス状相の割合が増すほど、強度が向上する傾向にあるが、多すぎる場合には、磁気特性(特に、初期透磁率μi)が低下する傾向にある。
本実施形態に係る軟磁性合金粒子は、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成されている。
ここで、上記Mは、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも1つである。
ここで、上記Mは、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも1つである。
中でも、本実施形態において、軟磁性合金粒子は、Fe−Si−Cr系軟磁性合金、Fe−Si−Al系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−Co系軟磁性合金、Fe−Ni−Si−Co−M系軟磁性合金が好ましく、より好ましくは、Fe−Si−Cr系軟磁性合金である。
このような軟磁性合金粒子を用いることにより、本実施形態に係る軟磁性体組成物は、磁気特性(初期透磁率μi等)あるいは比抵抗を良好に維持しつつ、成形性(特に抗折強度)を向上させることができる。また、加圧成形に際して、比較的低い成形圧により成形できることから、金型への負担のさらなる軽減を図ることができ、生産性を向上することができる。
上記Mがクロム(Cr)である場合には、Fe−Si−Cr系軟磁性合金において、ケイ素をSi換算で0.1〜9質量%、クロムをCr換算で0.1〜15質量%含有し、残部が鉄(Fe)で構成されていることが好ましい。さらに好ましくは、ケイ素をSi換算で1.4〜9質量%、特に好ましくは4.5〜8.5質量%、また、クロムをCr換算で1.5〜8質量%、特に好ましくは3〜7質量%含有し、残部が鉄(Fe)で構成されていることが好ましい。
上記Mがアルミニウム(Al)である場合には、Fe−Si−Al系軟磁性合金において、ケイ素をSi換算で0.1〜15質量%、アルミニウムをAl換算で0.1〜10質量%含有し、残部が鉄(Fe)で構成されていることが好ましい。
上記Mがコバルト(Co)である場合には、Fe−Ni−Si−Co系軟磁性合金において、ケイ素をSi換算で0.1〜3.0質量%、ニッケルをNi換算で40.0〜50.0質量%、コバルトをCo換算で0.1〜5.0質量%含有し、残部が鉄(Fe)で構成されていることが好ましい。
本実施形態に係る軟磁性合金粒子の平均結晶粒子径は、好ましくは30〜60μmである。平均結晶粒子径を上記の範囲とすることで、磁芯の薄層化を容易に実現することができる。
本実施形態に係る軟磁性体組成物において、軟磁性合金粒子21の表面(粒界30との界面)には、軟磁性合金粒子を構成する成分の一部を含む酸化物相が形成されていてもよい。
このような酸化物相は、特に限定されるものではなく、酸素と、酸素以外の元素を含む酸化物相であって、酸素以外の元素を2種以上含む複合酸化物相であってもよい。また、このような酸化物相および複合酸化物相としては、軟磁性合金粒子を構成する成分の一部を含むアモルファス相等が挙げられる。
なお、本発明において、酸化物相および複合酸化物相とは、アモルファス相、結晶相、およびこれらの混合相を含む広い概念である。
ここで、軟磁性合金粒子がFe−Si−Cr系軟磁性合金である場合には、上記酸化物相は、軟磁性合金粒子21の粒内よりもCrが多いSi−Cr複合酸化物相であってもよい。Si−Cr複合酸化物相は、特に限定されるものではないが、SiとCrを含有するアモルファス相等が挙げられる。
また、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、上記酸化物相は、Znを含むガラス状相を含んでいてもよい。このようなZnを含むガラス状相を含む酸化物相としては、例えば、アモルファス質の部分と結晶質が混在している酸化物相や、ガラス状相に含まれるZn等の成分が軟磁性合金粒子を構成する成分の一部と化学的に結合して形成される複合酸化物相等が挙げられる。
また、本実施形態において、上記酸化物相は、必ずしも軟磁性合金粒子の表面の全体を覆うように形成されている必要はなく、軟磁性合金粒子の表面の一部に形成されていてもよい。また、上記酸化物相の厚みは均一でなくてもよく、該組成も均質でなくてもよい。
また、本実施形態に係る軟磁性合金粒子の表面において、上記酸化物相の有無やその厚みは、軟磁性合金粒子の合金組成や、後述する磁芯(成形体)の製造方法における結合材の種類やその添加量、その他の添加成分、成形体の熱処理温度および雰囲気等の制御によって調整することができる。
なお、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、軟磁性合金粒子21は、隣接する軟磁性合金粒子21とは、上記酸化物相を介して直接的に連結されていてもよい。
本実施形態に係る軟磁性体組成物は、上記軟磁性体合金粒子の構成成分以外にも、炭素(C)および亜鉛(Zn)等の成分が含まれることがある。
なお、Cは、軟磁性体組成物の製造過程で用いられる有機化合物成分に由来すると考えられる。また、Znは、軟磁性体組成物を圧粉成形により得る際に、装置の抜き圧を低減させるために金型に添加するステアリン酸亜鉛に由来すると考えられる。
なお、Cは、軟磁性体組成物の製造過程で用いられる有機化合物成分に由来すると考えられる。また、Znは、軟磁性体組成物を圧粉成形により得る際に、装置の抜き圧を低減させるために金型に添加するステアリン酸亜鉛に由来すると考えられる。
本実施形態に係る軟磁性体組成物における、炭素(C)の含有量は、好ましくは0.05質量%未満であり、より好ましくは0.01〜0.04質量%である。Cの含有量が多すぎると、磁芯としての十分な強度が得られない傾向にある。
なお、本実施形態に係る軟磁性体組成物には、上記成分以外にも、不可避的不純物が含まれていてもよい。
さらに別の実施形態としては、軟磁性体組成物の粒界には、さらにSiが存在することが好ましい。これにより、高い磁気特性を維持しつつ、さらに強度を向上させることができる。特に、比較的低い成形圧で成形された場合であっても、磁芯として十分な強度を得ることができるため、金型への負担も低減され、生産性が向上する。
本実施形態に係る軟磁性体組成物において、Siは、2つの粒子間に形成される粒界30または3つ以上の粒子の間に存在する粒界31(3重点など)に、Siを含有する相として存在していると考えられる。
このようにSiを含有する相が粒界に存在することにより、本実施形態に係る磁芯は、比較的低い成形圧で成形された場合であっても、磁芯として十分な強度を得ることができる。さらに、このようなSiを含有する相は、粒界に存在することで絶縁体の役割を果たす。
本実施形態に係るSiを含有する相は、好ましくは、Si酸化物相あるいはSi複合酸化物相である。Si酸化物相およびSi複合酸化物相としては、特に限定されるものではないが、例えばSiを含有するアモルファス相、アモルファスシリコン、シリカ、Si−M複合酸化物等が挙げられる。
また、本実施形態に係る軟磁性体組成物において、Siを含有する相は、さらに軟磁性合金粒子21の表面(粒界30との界面)にも存在することが好ましい。
例えば、軟磁性合金粒子がFe−Si−Cr系軟磁性合金である場合、Siを含有する相としては、好ましくはSi―Cr複合酸化物相である。Si―Cr複合酸化物相は、特に限定されるものではないが、軟磁性合金粒子21の粒内よりもCrが多い。
本実施形態に係るSiを含有する相は、好ましくは、アモルファス質で構成されている。なお、一部が結晶質で構成されていてもよい。
本実施形態に係るSiを含有する相の厚みは、好ましくは、0.01〜0.2μm、より好ましくは、0.01〜0.1μmである。
なお、Siを含有する相は、必ずしも軟磁性合金粒子の表面の全体を覆うように形成されている必要はなく、軟磁性合金粒子の表面の一部に形成されていてもよい。また、Siを含有する相の厚みは均一でなくてもよく、該組成も均質でなくてもよい。
なお、Siを含有する相は、必ずしも軟磁性合金粒子の表面の全体を覆うように形成されている必要はなく、軟磁性合金粒子の表面の一部に形成されていてもよい。また、Siを含有する相の厚みは均一でなくてもよく、該組成も均質でなくてもよい。
本実施形態に係るSiを含有する相の有無やその厚みは、後述する磁芯の製造方法における、結合材の種類やその添加量、その他の添加成分、成形体の熱処理温度および雰囲気等により制御することができる。
次に、本実施形態に係る磁芯の製造方法の一例を説明する。
本実施形態の磁心は、軟磁性体合金粉末と、結合材(バインダ樹脂)とを含む成形体を熱処理することにより、作製することができる。以下、本実施形態の磁心の好ましい製造方法につき、詳述する。
本実施形態の磁心は、軟磁性体合金粉末と、結合材(バインダ樹脂)とを含む成形体を熱処理することにより、作製することができる。以下、本実施形態の磁心の好ましい製造方法につき、詳述する。
本実施形態に係る製造方法は、好ましくは、
軟磁性体合金粉末と、結晶化ガラスと、結合材とを混合し、混合物を得る工程と、
混合物を乾燥させて塊状の乾燥体を得た後、この乾燥体を粉砕することにより、造粒粉を形成する工程と、
混合物または造粒粉を、作製すべき磁心の形状に成形し、成形体を得る工程と、
得られた成形体を加熱することにより、結合材を硬化させ、圧粉磁心を得る工程と、を有する。
軟磁性体合金粉末と、結晶化ガラスと、結合材とを混合し、混合物を得る工程と、
混合物を乾燥させて塊状の乾燥体を得た後、この乾燥体を粉砕することにより、造粒粉を形成する工程と、
混合物または造粒粉を、作製すべき磁心の形状に成形し、成形体を得る工程と、
得られた成形体を加熱することにより、結合材を硬化させ、圧粉磁心を得る工程と、を有する。
本実施形態に係る製造方法により得られた磁芯は、特に抗折強度を向上させることができる。
このような効果が得られる理由は明らかではないが、次のような機構が考えられる。
成形体を加熱する工程において、結晶化ガラスが高温状態となり、軟磁性合金粒子の隙間(粒界領域)において軟化することで、金属粒子間の結合が強固となり、得られる磁芯の強度が向上すると考えられる。
成形体を加熱する工程において、結晶化ガラスが高温状態となり、軟磁性合金粒子の隙間(粒界領域)において軟化することで、金属粒子間の結合が強固となり、得られる磁芯の強度が向上すると考えられる。
軟磁性体合金粉末としては、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成された合金粒子を含有するものを用いることができる。
軟磁性合金粉末の形状は特に制限はないが、高い磁界域までインダクタンスを維持する観点から、球状又は楕円体状とすることが好ましい。これらの中では、圧粉磁芯の強度をより大きくする観点から、楕円体状が望ましい。また、軟磁性合金粉末の平均粒径は、好ましくは10〜80μm、より好ましくは30〜60μmである。平均粒径が小さすぎると透磁率が低くなり、軟磁性材料としての磁気特性が低下する傾向にあり、また、取り扱いが難しくなる。一方、平均粒径が大きすぎると、渦電流損失が大きくなると共に、異常損失が増大する傾向にある。
軟磁性合金粉末は、公知の軟磁性合金粉末の調製方法と同様の方法により得ることができる。この際、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転ディスク法等を用いて調製することができる。これらの中では、所望の磁気特性を有する軟磁性合金粉末を作製しやすくするため、水アトマイズ法が好ましい。
結晶化ガラスは、このような結晶化ガラスとしては、例えば、ホウケイ酸系ガラスやビスマス系ガラス等が挙げられる。
このような結晶化ガラスの添加量は、軟磁性体合金粉末100質量部に対して、好ましくは0.1〜10.0質量部、より好ましくは0.1〜5.0質量部である。上記範囲を満たすことにより、軟磁性組成物の粒界にガラス状相を効率よく形成することができ、磁芯の強度を向上させることができる。
また、より好ましくは、上記結晶化ガラスは、Znを含む。このような結晶化ガラスを用いることにより、得られる軟磁性組成物の粒界にZnを含むガラス状相を効率よく形成することができ、強度を向上しつつ、磁気特性(特に、初期透磁率μi)を高く維持できる。このようなZnを含む結晶化ガラスとしては、ホウケイ酸亜鉛系ガラスやビスマス亜鉛系ガラス等が挙げられる。
また、上記結晶化ガラスにおけるZnの含有量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30〜70モル%、さらに好ましくは30〜50モル%である。
また、さらに好ましくは、上記結晶化ガラスは、ホウ素(B)を含む。このような結晶化ガラスを用いることにより、強度を向上しつつ、磁気特性(特に、初期透磁率μi)を高く維持できる。このような結晶化ガラスとしては、ホウケイ酸系ガラスやビスマスホウ酸系ガラス等が挙げられる。
また、上記結晶化ガラスにおけるBの含有量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15〜30モル%である。
結合材としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば各種有機高分子樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及び水ガラス等が挙げられる。
中でも、本実施形態においては、好ましくは、結合材としてシリコーン樹脂を含むものを用いる。結合剤としてシリコーンを用いることにより、軟磁性組成物の粒界に、Siを含有する相が効果的に形成される。このような軟磁性体組成物により構成された磁芯は、比較的低い成形圧で成形した場合であっても、十分な強度を発揮する。
この場合、結合材は、シリコーン樹脂を単独で、又はその他の結合材との組み合わせで用いることができる。なお、軟磁性体組成物中の炭素(C)の含有量を0.05質量%未満に制限することが好ましい観点から、結合材は、主としてシリコーン樹脂からなるものを用いることが好ましい。軟磁性体組成物中のCの含有量が多すぎると、得られる磁芯の強度が低下する傾向にある。
結合材の添加量は、必要とされる磁芯の特性に応じては異なるが、好ましくは軟磁性体合金粉末100重量部に対して、1〜10重量部添加することができ、より好ましくは軟磁性体合金粉末100重量部に対して、3〜9重量部である。結合材の添加量が多すぎると、透磁率が低下し、損失が大きくなる傾向にある。一方、結合材の添加量が少なすぎると、絶縁を確保し難くなる傾向にある。
シリコーン樹脂の添加量は、好ましくは軟磁性体合金粉末100重量部に対して、3〜9重量部である。シリコーン樹脂の添加量が少なすぎると、軟磁性組成物の粒界にSiを含有する相が形成されにくくなり、成形品としての強度が低下する傾向にある。
また、前記混合物または造粒粉には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。
有機溶媒としては、結合材を溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、酢酸エチル等の各種溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、結合材を溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム、酢酸エチル等の各種溶媒が挙げられる。
また、前記混合物または造粒粉には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて各種添加剤、潤滑剤、可塑剤、チキソ剤等を添加してもよい。
潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中では、いわゆるスプリングバックが小さいという観点から、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
潤滑剤を用いる場合には、その添加量は、好ましくは軟磁性体合金粉末100重量部に対して、0.1〜0.9重量部であり、より好ましくは軟磁性体合金粉末100重量部に対して、0.3〜0.7重量部である。潤滑剤が少なすぎると、成形後の脱型が困難となり、成形クラックが生じやすい傾向にある。一方、潤滑剤が多すぎると、成形密度の低下を招き、透磁率が減少してしまう。
特に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を用いる場合には、得られる軟磁性体組成物中の、亜鉛(Zn)の含有量が、0.004〜0.2質量%の範囲内となる、添加量を調整することが好ましい。Znの含有量が多すぎると、磁芯としての十分な強度が得られない傾向にある傾向がある。
混合物を得る方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知の方法により、軟磁性体合金粉末と結合材と有機溶媒とを混合して得られる。なお、必要に応じて各種添加材を添加してもよい。
混合に際しては、例えば、加圧ニーダ、アタライタ、振動ミル、ボールミル、Vミキサー等の混合機や、流動造粒機、転動造粒機等の造粒機を用いることができる。
また、混合処理の温度および時間としては、好ましくは室温で1〜30分間程度である。
混合に際しては、例えば、加圧ニーダ、アタライタ、振動ミル、ボールミル、Vミキサー等の混合機や、流動造粒機、転動造粒機等の造粒機を用いることができる。
また、混合処理の温度および時間としては、好ましくは室温で1〜30分間程度である。
造粒粉を得る方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知の方法により、混合物を乾燥した後、乾燥した混合物を解砕して得られる。
乾燥処理の温度および時間としては、好ましくは室温〜200℃程度で、5〜60分間である。
乾燥処理の温度および時間としては、好ましくは室温〜200℃程度で、5〜60分間である。
必要に応じて、造粒粉には、潤滑剤を添加することができる。造粒粉に潤滑剤を添加した後、5〜60分間混合することが望ましい。
成形体を得る方法としては、特に限定されるものではないが、従来公知の方法により、所望する形状のキャビティを有する成形金型を用い、そのキャビティ内に混合物または造粒粉を充填し、所定の成形温度及び所定の成形圧力でその混合物を圧縮成形することが好ましい。
圧縮成形における成形条件は特に限定されず、軟磁性合金粉末の形状及び寸法や、圧粉磁芯の形状、寸法及び密度などに応じて適宜決定すればよい。例えば、通常、最大圧力は100〜1000MPa程度、好ましくは400〜800MPa程度とし、最大圧力に保持する時間は0.5秒間〜1分間程度とする。
なお、成形圧力が低すぎると、成形による高密度化及び高透磁率化を図り難くなる共に、十分な機械的強度が得られにくい傾向にある。一方、成形時の成形圧が高すぎると、圧力印加効果が飽和する傾向にあるとともに、製造コストが増加して生産性及び経済性が損なわれ得る傾向にあり、また、成形金型が劣化し易くなり耐久性が低下する傾向にある。
成形温度は、特に限定されないが、通常、室温〜200℃程度が好ましい。なお、成形時の成形温度を上げるほど成形体の密度は上がる傾向にあるが、高すぎると軟磁性合金粒子の酸化が促進されて、得られる圧粉磁芯の性能が劣化する傾向にあり、また、製造コストが増加して生産性及び経済性が損なわれ得る。
成形後に得られる成形体を熱処理する方法は、公知の方法により行えばよく、特に限定されないが、一般的には、成形により任意の形状に成形された成形体を、アニール炉を用いて所定の温度で熱処理することにより行うことが好ましい。
熱処理時の処理温度は、特に限定されないが、通常、600〜900℃程度が好ましく、より好ましくは700〜850℃である。熱処理時の処理温度が高すぎても、また低すぎても磁芯としての十分な強度が得られない傾向にある
熱処理工程は、酸素含有雰囲気下にて行うことが好ましい。ここで、酸素含有雰囲気とは、特に限定されるものではないが、大気雰囲気(通常、20.95%の酸素を含む)、または、アルゴンや窒素等の不活性ガスとの混合雰囲気等が挙げられる。好ましくは大気雰囲気下である。酸素含有雰囲気下で熱処理することで軟磁性体組成物の粒界にSiを含有する相を効果的に形成することができる。
また、このようにして得られた圧粉磁芯は、成形密度が5.50g/cm3 以上であることが好ましい。成形密度が5.50g/cm3 以上に、高密度化された圧粉磁芯は、高透磁率、高強度、高コア抵抗、低コアロスといった各種性能においても優れる傾向にある。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態では、混合物または造粒粉を圧粉成形することで磁芯(圧粉磁芯)を製造しているが、上記混合物をシート状成形して積層することにより磁芯を製造してもよい。また、乾式成形の他、湿式成形、押出成形などにより成形体を得てもよい。
また、上述した実施形態では、軟磁性体組成物の粒界にSiを含有する相を形成するため、結合材としてシリコーン樹脂を用いているが、シリコーン樹脂に代えて、添加剤としてシリカゲルやシリカ粒子等のSi含有成分を用いてもよい。
その他、必要に応じて、成形体をガラスコートあるいは樹脂含浸することも可能である。これにより、磁芯の強度をさらに向上させることができる。
また、上述した実施形態では、本実施形態に係る磁芯を、コイル型電子部品として用いるが、特に制限されることはなく、モーター、スイッチング電源、DC−DCコンバーター、トランス、チョークコイル等の各種電子部品の磁心としても好適に用いることができる。中でも、携帯用DC−DCコンバーターとしてより好適である。
さらに、上述した実施形態では、磁芯を本発明に係る軟磁性体組成物で構成しているが、磁芯以外にも、電子部品の素体本体や、その他の成形体を、本発明に係る軟磁性体組成物で構成してもよい。
以下、実施例により発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
試料1について
[軟磁性合金粉末の調製]
まず、Fe単体、Cr単体及びSi単体のインゴット、チャンク(塊)、又はショット(粒子)を準備した。次にそれらをFe89.5質量%、Si6.5質量%およびCr4.0質量%の組成となるように混合して、水アトマイズ装置内に配置されたルツボに収容した。次いで、不活性雰囲気中、ルツボ外部に設けたワークコイルを用いて、ルツボを高周波誘導により1600℃以上まで加熱し、ルツボ中のインゴット、チャンク又はショットを溶融、混合して融液を得た。
試料1について
[軟磁性合金粉末の調製]
まず、Fe単体、Cr単体及びSi単体のインゴット、チャンク(塊)、又はショット(粒子)を準備した。次にそれらをFe89.5質量%、Si6.5質量%およびCr4.0質量%の組成となるように混合して、水アトマイズ装置内に配置されたルツボに収容した。次いで、不活性雰囲気中、ルツボ外部に設けたワークコイルを用いて、ルツボを高周波誘導により1600℃以上まで加熱し、ルツボ中のインゴット、チャンク又はショットを溶融、混合して融液を得た。
次いで、ルツボに設けられたノズルから、ルツボ内の融液を噴出すると同時に、噴出した融液に高圧(50MPa)水流を衝突させて急冷することにより、Fe−Si−Cr系粒子からなる軟磁性合金粉末(平均粒径;50μm)を作製した。
得られた軟磁性合金粉末を、蛍光X線分析法により組成分析した結果、仕込み組成と一致していることが確認できた。
[圧粉磁芯の作製]
得られた軟磁性合金粉末100重量部に対し、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコン(株)製:SR2414LV)6重量部を添加し、これらを加圧ニーダにより室温で30分間混合した。次いで、混合物を空気中において150℃で20分間乾燥した。乾燥後の磁性粉末に、それらの軟磁性合金粉末100重量部に対し、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成製:ジンクステアレート)0.5重量部を添加し、Vミキサーにより10分間混合した。
得られた軟磁性合金粉末100重量部に対し、シリコーン樹脂(東レダウコーニングシリコン(株)製:SR2414LV)6重量部を添加し、これらを加圧ニーダにより室温で30分間混合した。次いで、混合物を空気中において150℃で20分間乾燥した。乾燥後の磁性粉末に、それらの軟磁性合金粉末100重量部に対し、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成製:ジンクステアレート)0.5重量部を添加し、Vミキサーにより10分間混合した。
続いて、得られた混合物を、5mm×5mm×10mmの角形サンプルに成形し、成形体を作製した。なお、成形圧は600MPaとした。加圧後の成形体を750℃で60分間、大気中で熱処理することにより、シリコーン樹脂を硬化させて、圧粉磁芯を得た。
[各種評価]
<粒界の観察>
まず、圧粉磁芯を切断した。この切断面について、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察し、軟磁性体合金粒子と粒界との判別を行った。
<粒界の観察>
まず、圧粉磁芯を切断した。この切断面について、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察し、軟磁性体合金粒子と粒界との判別を行った。
<3点曲げ強さ試験(抗折強度)>
圧粉磁芯サンプルに対し、JIS R1601の規定に従い、3点曲げ強さ試験を行った。3点曲げ強さは、試験片を一定距離に配置された2支点上に置き、支店間の中央の1点に荷重を加えて折れた時の最大曲げ応力(kg/mm2 )である。
圧粉磁芯サンプルに対し、JIS R1601の規定に従い、3点曲げ強さ試験を行った。3点曲げ強さは、試験片を一定距離に配置された2支点上に置き、支店間の中央の1点に荷重を加えて折れた時の最大曲げ応力(kg/mm2 )である。
<初期透磁率(μi)>
圧粉磁芯サンプルに、銅線ワイヤを10ターン巻きつけ、LCRメーター(ヒューレットパッカード 4284A)を使用して、初期透磁率μiを測定した。測定条件としては、測定周波数1MHz、測定温度23℃、測定レベル0.4A/mとした。
圧粉磁芯サンプルに、銅線ワイヤを10ターン巻きつけ、LCRメーター(ヒューレットパッカード 4284A)を使用して、初期透磁率μiを測定した。測定条件としては、測定周波数1MHz、測定温度23℃、測定レベル0.4A/mとした。
試料2〜試料7ついて
試料2〜試料7は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスA(市販のホウケイ酸亜鉛系結晶化ガラス、平均粒径1.5μm、膨張係数63.0×10−7、軟化温度590℃、結晶化温度705℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
試料2〜試料7は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスA(市販のホウケイ酸亜鉛系結晶化ガラス、平均粒径1.5μm、膨張係数63.0×10−7、軟化温度590℃、結晶化温度705℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
試料8〜試料13ついて
試料8〜試料13は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスB(市販のホウケイ酸亜鉛系結晶化ガラス、平均粒径4.1μm、膨張係数57.0×10−7、軟化温度661℃、結晶化温度771℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
試料8〜試料13は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスB(市販のホウケイ酸亜鉛系結晶化ガラス、平均粒径4.1μm、膨張係数57.0×10−7、軟化温度661℃、結晶化温度771℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
試料14〜試料19ついて
試料14〜試料19は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスC(市販のビスマス系結晶化ガラス、平均粒径3.2μm、膨張係数67.8×10−7、軟化温度578℃、結晶化温度731℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
試料14〜試料19は、圧粉磁芯の作製において、軟磁性合金粉末100重量部に対し、表1に示す値となるようにガラスC(市販のビスマス系結晶化ガラス、平均粒径3.2μm、膨張係数67.8×10−7、軟化温度578℃、結晶化温度731℃)を添加した以外は、試料1と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作製し、同様の評価を行った。表1に結果を示す。
なお、各ガラスA〜Cの組成は、次の通りである。ガラスAは、15〜30質量%のB2 O3 と、50〜70質量%のZnOと、5〜25質量%のSiO2 と、その他の成分を含む。ガラスBは、15〜30質量%のB2 O3 と、50〜70質量%のZnOと、5〜25質量%のSiO2 と、その他の成分を含む。ガラスCは、50〜60質量%のBi2 O3 と、5〜20質量%のB2 O3 と、10〜20質量%のZnOと、1〜10質量%のSiO2 と、その他の成分を含む。
また、抗折強度は、磁芯を構成する金属や結合材の種類によっても異なるため、本実施例では、11.7kg/mm2 以上を良好とした。
STEM観察およびEDS解析の結果、試料2〜試料19の粒界には、Znを含むガラス状相が存在すること、試料1の粒界には、Znを含むガラス状相が存在しないことが確認された。
表1に示されるように、粒界にZnを含むガラス状相が存在する試料2〜試料19では、Znを含むガラス状相が存在しない試料1に比べて、強度が向上することが確認された。その向上率(試料1に対する向上率)は、高いものでは5〜30%程度であることが確認された。
(実施例2)
試料21〜試料26ついて
試料21〜試料26は、バインダ樹脂として、非シリコーン系樹脂である(ナガセケムテックス(株)製造:DENATITE XNR 4338)を用いた以外は、試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16とそれぞれ同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
試料21〜試料26ついて
試料21〜試料26は、バインダ樹脂として、非シリコーン系樹脂である(ナガセケムテックス(株)製造:DENATITE XNR 4338)を用いた以外は、試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16とそれぞれ同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
STEM観察およびEDS解析の結果、試料22〜試料26の粒界には、Znを含むガラス状相が存在すること、試料21の粒界には、Znを含むガラス状相が存在しないことが確認された。
表2に示されるように、粒界にZnを含むガラス状相が存在する試料22〜試料26では、Znを含むガラス状相が存在しない試料21に比べて、強度が大幅に向上することが確認された。特に、その向上率(試料21に対する向上率)は、高いものでは5〜30%程度であることが確認された。
(実施例3)
試料31〜試料36ついて
試料31〜試料36は、軟磁性合金粉末として、Fe84.7質量%、Si9.7質量%およびAl5.6質量%の組成で構成された軟磁性合金粉末を用いた以外は、実施例1の試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。表3に結果を示す。
試料31〜試料36ついて
試料31〜試料36は、軟磁性合金粉末として、Fe84.7質量%、Si9.7質量%およびAl5.6質量%の組成で構成された軟磁性合金粉末を用いた以外は、実施例1の試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。表3に結果を示す。
試料37〜試料42について
試料37〜試料42は、軟磁性合金粉末として、Fe49.2質量%、Ni44.0質量%、Si2.3質量%およびCo4.5質量%の組成で構成された軟磁性合金粉末を用いた以外は、それぞれ実施例1の試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。表3に結果を示す。
試料37〜試料42は、軟磁性合金粉末として、Fe49.2質量%、Ni44.0質量%、Si2.3質量%およびCo4.5質量%の組成で構成された軟磁性合金粉末を用いた以外は、それぞれ実施例1の試料1、試料2、試料4、試料7、試料10、および試料16と同様の方法で圧粉磁芯サンプルを作成し、同様の評価を行った。表3に結果を示す。
なお、抗折強度は、磁芯を構成する金属や結合材の種類によっても異なるため、本実施例において、Fe−Si−Al系軟磁性合金から構成される磁芯の場合では、抗折強度は6.9kg/mm2 以上を良好とし、Fe−Ni−Si−Co系軟磁性合金から構成される磁芯の場合では、抗折強度は11.0kg/mm2 以上を良好とした。
STEM観察およびEDS解析の結果、試料32〜試料36および試料38〜試料42の粒界には、Znを含むガラス状相が存在すること、試料31および試料37の粒界には、Znを含むガラス状相が存在しないことが確認された。
表3に示されるように、粒界にZnを含むガラス状相が存在する試料32〜試料36および試料38〜試料42では、Znを含むガラス状相が存在しない試料31および試料37に比べて、強度が向上することが確認された。
これらの結果から、本発明によれば、軟磁性体合金組成物を構成する合金種が変わった場合であっても、強度を向上できることが確認された。
21… 軟磁性合金粒子
30、31… 粒界
40… Znを含むガラス状相
30、31… 粒界
40… Znを含むガラス状相
Claims (7)
- 複数の軟磁性合金粒子と、前記軟磁性合金粒子間に存在する粒界と、を有する軟磁性体組成物であって、
前記軟磁性合金粒子が、Fe−Si−M系軟磁性合金またはFe−Ni−Si−M系軟磁性合金で構成され、
前記Mは、Cr,Al,Ti,CoおよびNiから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粒界には、Znを含むガラス状相が存在することを特徴とする軟磁性体組成物。 - 前記粒界には、さらにSiが存在することを特徴とする請求項1に記載の軟磁性体組成物。
- 前記粒界には、さらにBが存在することを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性体組成物。
- 軟磁性体合金粉末と、結晶化ガラスと、結合材とを混合して、混合物を得る工程と、
前記混合物を成形して、成形体を得る工程と、
前記成形体を加熱する工程と、を有することを特徴とする軟磁性体組成物の製造方法。 - 請求項4に記載の製造方法により得られることを特徴とする軟磁性体組成物。
- 請求項1〜3および請求項5のいずれかに記載の軟磁性体組成物から構成されることを特徴とする磁芯。
- 請求項6に記載の磁芯を有することを特徴とするコイル型電子部品。
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