JP2010062424A - 電子部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末に、SiO2、B2O3、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性合金粉末の体積の10%未満になる様に添加して、金属磁性合金粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を形成する。この成形体は、真空、又は無酸素あるいは低酸素分圧の非酸化雰囲気中で700℃以上コイルの導体材料の融点未満の温度で焼成される。
【効果】 成形体内に形成されたコイルの抵抗を高くすることなく、成形体の絶縁抵抗を高くすることができる。
【選択図】 図1
Description
従って、本発明の電子部品の製造方法は、成形体を構成する金属磁性合金粉末の表面に形成されるガラス被膜の材料を前述の様な特定の材料にし、前述の様な特定の条件で金属磁性合金粉末に添加し、機械的処理を施すことにより、成形体を構成する金属磁性合金粉末の表面全体に十分な厚みのガラス被膜を形成することができる。そして、この表面全体にガラス被膜が形成された金属磁性合金粉末を用いて成形体を形成し、成形体を前述の様な特定の条件で焼成することにより、金属磁性合金粉末の表面全体に絶縁に必要な厚みを保った状態で、ガラス被膜同士を融着させて、ガラス被膜同士の隙間を無くすことができ、成形体の絶縁抵抗を高くすることができる。また、金属磁性合金粉末の表面に形成されるガラス被膜に、金属磁性合金粉末に含有する金属元素よりもイオン化傾向の小さな金属元素を含有していないので、金属磁性合金粉末に含有する金属元素と反応してガラスが分解したり、ガラス中の金属元素が金属として析出することがなく、成形体内に形成されたコイル導体の抵抗を小さくできる。
図1は、本発明に係る電子部品の斜視図であり、図1において、11A〜11Dは金属磁性体層、12A〜12Cは導体パターンである。
金属磁性体層11A〜11Dは、金属磁性体として、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末に、SiO2、B2O3、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性合金粉末の体積の10%未満になる様に添加し、機械的処理を施して、金属磁性合金粉末の表面をガラスで被覆したものが用いられる。また、導体パターン12A〜12Cは、銀、銀系、金、金系、銅、銅系等の金属材料をペースト状にした導体ペーストを用いて形成される。
金属磁性体層11Aの表面には、コイル用導体パターン12Aが形成される。このコイル用導体パターン12Aは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12A一端は金属磁性体層11Aの端面に引き出される。
金属磁性体層11Bの表面には、コイル用導体パターン12Bが形成される。このコイル用導体パターン12Bは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Bの一端は金属磁性体層11Bのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Aの他端に接続される。
金属磁性体層11Cの表面には、コイル用導体パターン12Cが形成される。このコイル用導体パターン12Cは1ターン未満分が形成される。コイル用導体パターン12Cの一端は金属磁性体層11Cのスルーホール内の導体を介してコイル用導体パターン12Bの他端に接続される。また、コイル用導体パターン12Cの他端は金属磁性体層11Cの端面に引き出される。
このコイル用導体パターン12Cが形成された金属磁性体層11Cの上には、コイル用導体パターンを保護するための金属磁性体層12Dが形成される。
この様にして金属磁性体層間のコイル用導体パターン12A〜12Cによって成形体内にコイルパターンが形成され、図2に示す様に成形体11の両端面に形成された外部端子13、14間に接続される。この成形体11は、400℃〜600℃で脱脂した後、真空、又は無酸素あるいは低酸素分圧の非酸化雰囲気中で700℃以上、コイルパターンの融点未満の温度で焼成される。
次に、このガラスで被覆された金属磁性合金粉末を樹脂のバインダに混合し、ペースト状にして金属磁性体ペーストが形成される。樹脂のバインダは、例えば、ポリビニルブチラルが用いられ、バインダと金属磁性合金粉の重量比が2.5%になる様に調整される。
続いて、この金属磁性体ペーストと銀粒子をペースト状にした導体ペーストを交互に印刷して成形体が形成され、この成形体内にコイルパターンが形成される。
さらに、この成形体に5t/cm2の圧力を加えた後、大気中において400℃の温度で脱脂し、酸素濃度が100ppm未満の窒素雰囲気中において700℃以上の温度で焼成される。
そして、この成形体内に形成されたコイルパターンが、成形体の両端面に形成された外部端子間に接続される。
また、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末の表面全体に機械的方法でガラスの被膜を形成した平均粒径が約20μmの金属磁性合金粉末にバインダとしてポリビニルブチラルを2.5wt%添加し、造粒し、これを金型にいれ、圧力を5t/cm2加え、直径7.2mm、断面積40.72mm2、厚み2mmの円柱状の成形体を形成し、これを空気中において400℃の温度で2時間脱脂した後、窒素雰囲気中においてピーク温度を800℃又は900℃にして20分保持して焼成し、これに測定用端子を形成して試料とし、それぞれの焼成温度における、ガラスの軟化温度を異ならせた試料の絶縁抵抗を測定したところ、図5(A)、(B)に示す様に、○で示される酸化ビスマス系ガラスは窒素雰囲気中の焼成温度が800℃、900℃いずれの場合も絶縁抵抗が104Ω・m以上あり、●で示される酸化亜鉛系ガラスは窒素雰囲気中の焼成温度が800℃の場合の絶縁抵抗が104Ω・m以上あるのに対して、■で示されるリン酸系ガラス、◆で示される硼珪酸系ガラス、◇で示されるアルカリ金属酸化物が添加されている硼珪酸系ガラス、×で示されるアルカリ金属酸化物が添加されている酸化ビスマス系ガラスは窒素雰囲気中の焼成温度が800℃、900℃のいずれの場合にも絶縁抵抗が104Ω・m未満となった。なお、図5(A)は窒素雰囲気中において800℃で焼成したもののガラスの軟化温度と絶縁抵抗率を表すグラフ、図5(B)は窒素雰囲気中において900℃で焼成したもののガラスの軟化温度と絶縁抵抗率を表すグラフであり、いずれも横軸はガラスの軟化温度、縦軸は絶縁抵抗率を示している。
さらに、この成形体中における金属磁性合金粉末の表面のガラスの被覆状態を調べるために、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末の表面全体に機械的方法でガラスの被膜を形成し、これを空気中において400℃の温度で2時間脱脂した後、窒素雰囲気中においてピーク温度を800℃又は900℃にして20分保持して焼成した焼成粉末を室温で濃度5%の食塩水に72時間浸漬する塩水実験を行ったところ、図6に示す様に、軟化温度が607℃の酸化ビスマス系ガラスを用いてCr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末の表面全体を被覆し、窒素雰囲気中において800℃で焼成したものと、軟化温度が597℃の酸化亜鉛系ガラスを用いてCr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末の表面全体を被覆し、窒素雰囲気中において800℃又は900℃で焼成したもの以外は錆びが発生した。
この時、窒素雰囲気中において800℃又は900℃で焼成した時の金属磁性合金と酸化ビスマス系ガラスの反応生成物の有無、窒素雰囲気中において800℃又は900℃で焼成した時の金属磁性合金と酸化亜鉛系ガラスの反応生成物の有無を調べるために、それぞれのガラス粉を金型にいれ、圧力を1t/cm2加えて形成した直径7.2mm、断面積40.72mm2、厚さ2mmのガラスペレットをCr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金からなる基板上に搭載し、空気中において400℃で2時間熱処理を施した後、窒素雰囲気中において焼成のピーク温度を800℃又は900℃にして20分保持して焼成してそれぞれの試料の断面をSEMで観察したところ、酸化ビスマス系ガラスを用いたものがいずれの焼成温度の場合もビスマスリッチ相とビスマスプアー相に分離しているのに対し、酸化亜鉛系ガラスを用いたものはいずれの焼成温度の場合も組成の偏りは見られなかった。酸化ビスマス系ガラスを用いたものについてX線解析測定したところ金属ビスマスのピークが確認された。また、この酸化ビスマス系ガラスを用いたものの試料上に銀粒子のペレットを搭載し、再度窒素雰囲気中において800℃又は900℃で焼成したところ、銀が溶融した形成が見られ、その銀の導体抵抗は銀の物性値の約10倍となった。
またさらに、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末の粒子系と酸化亜鉛系ガラスの量を変えて作成した試料について、窒素雰囲気中における焼成のピーク温度と絶縁抵抗の率の関係を調べた結果、図7に示す様に、金属磁性合金粉末の粒子系やガラス量に関して広範囲の値にわたって高絶縁抵抗であることが確認できた。なお、図7において、横軸は窒素雰囲気中における焼成のピーク温度、縦軸は絶縁抵抗率を示している。
本発明の電子部品の製造方法の様に、Fe−Cr−Si系金属磁性合金の粉末に、SiO2、B2O3、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性合金粉末の体積の10%未満になる様に添加し、機械的処理を施すことにより金属磁性合金粉末の表面をガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を形成し、加圧した後、真空、又は無酸素あるいは低酸素分圧の非酸化雰囲気中で700℃以上コイルの導体材料の融点未満の温度で焼成することにより、コイルの抵抗を小さくし、かつ、成形体の絶縁抵抗を大きくできる。
従って、この様な本発明の電子部品は、従来の積層タイプの電子部品よりも直流重畳特性を改善することができると共に、絶縁抵抗が高く、損失の少ないパワーインダクタを形成することができた。
コイル82は、巻線を螺旋状に巻回して形成され、周りが金属磁性の成形体81で覆われる。コイル82の両端は、成形体81の端面から引き出され、底面に折り曲げられる。
成形体81は、金属磁性体として、Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金(いわゆる、Fe−Cr−Si系金属磁性合金)の粉末に、SiO2、B2O3、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が金属磁性合金粉末の体積の10%未満になる様に添加し、機械的処理を施して、金属磁性合金粉末の表面をガラスで被覆したものが用いられる。このガラスで被覆された金属磁性合金粉を樹脂に混合し、これを加圧成形して形成される。この成形体81は、400℃〜600℃で脱脂した後、真空、又は無酸素あるいは低酸素分圧の非酸化雰囲気中で700℃以上、コイルの融点未満の温度で焼成される。
次に、このガラスで被覆された金属磁性合金粉は、樹脂のバインダに混合され、造粒される。樹脂のバインダは、例えば、ポリビニルブチラルが用いられ、バインダと金属磁性合金粉の重量比が2.5%になる様に調整される。
続いて、コイルが収納された金型内にこの樹脂のバインダに混合された金属磁性合金粉を注入し、これに5t/cm2の圧力を加えて成形体が形成される。
次に、この成形体は、大気中において400℃の温度で脱脂した後、酸素濃度が100ppm未満の窒素雰囲気中において700℃以上、コイルの融点未満の温度で焼成される。
12A〜12C 導体パターン
Claims (2)
- Cr、Si及び、鉄を含有する金属磁性合金粉末に、SiO2、B2O3、ZnOを主成分とし、かつ、軟化温度が600±50℃のガラスをその体積が該金属磁性合金粉末の体積の10%未満になる様に添加して、該金属磁性合金粉末の表面を該ガラスで被覆した金属磁性体を用いてコイルを内蔵した成形体を形成し、該成形体が、真空、又は無酸素あるいは低酸素分圧の非酸化雰囲気中で700℃以上該コイルの導体材料の融点未満の温度で焼成されたことを特徴とする電子部品の製造方法。
- 前記成形体は、前記金属磁性合金粉末の表面を前記ガラスで被覆した前記金属磁性体を用いた金属磁性体層と導体パターンを積層して形成される請求項1に記載の電子部品の製造方法。
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