JP2019218611A - リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法、及びリン酸表面処理軟磁性粉末 - Google Patents

リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法、及びリン酸表面処理軟磁性粉末 Download PDF

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良幸 道明
井上 健一
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Abstract

【課題】微粒の軟磁性粉末であっても十分に絶縁抵抗を高めることができる、リン酸表面処理の方法及びその関連技術を提供することを目的とする。【解決手段】Feを含む軟磁性粉末と、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液とを混合することで、前記軟磁性粉末を表面処理する表面処理工程を有する、リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁抵抗が高く磁気損失の低減されたリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法等に関する。
電子機器には、例えばインダクタなどの、圧粉磁心を有する磁性部品が取り付けられている。電子機器では、高性能化および小型化のために高周波化が図られており、それに伴って磁性部品を構成する圧粉磁心にも高周波化への対応が求められている。
圧粉磁心は一般的に、軟磁性粉末を必要に応じて樹脂などの結合材(バインダ)と複合化したうえで圧縮成型することで製造されているが、圧粉磁心(軟磁性粉末)のコアロス(磁気損失)のうち、渦電流損失は周波数の2乗に比例するため、高周波領域では特に問題となる。
渦電流損失を低減するために、軟磁性粉末を微粒化することや、粉末を構成する粒子表面に絶縁膜を形成して抵抗を高め、渦電流が流れにくくすることが考えられる。絶縁膜を形成する方法として、特許文献1にはFe系の軟磁性粉末の表面にシリカ系の絶縁皮膜を形成することが開示されている。また特許文献2には、軟磁性粉末をリン酸で表面処理することが開示されている。このリン酸表面処理の具体的な方法として特許文献2には、リン酸を水に溶解させて、軟磁性粉末に対して表面処理することが開示されている。なお、絶縁膜形成のためにリン酸の塩も広く利用されている。
特開2017−183681号公報 特開2017−004992号公報
特許文献1に開示されたシリカ系の絶縁皮膜と、特許文献2に開示されたリン酸表面処理とでは、前者の方が絶縁抵抗を高める効果に優れているが、どちらを行うかは軟磁性粉末を利用する磁性材料の用途(求められる磁気特性)に基づいて判断することになる。
本発明者らは渦電流損失を抑制するため粒子径が10μm以下のような微粒の軟磁性粉末についてリン酸表面処理を検討したところ、特許文献2に開示された、リン酸を水に溶解させて粉末を表面処理する方法では、軟磁性粉末の絶縁抵抗を高めることができなかった。
そこで本発明は、微粒の軟磁性粉末であっても十分に絶縁抵抗を高めることができる、リン酸表面処理の方法及びその関連技術を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液で表面処理を実施することにより、微粒の軟磁性粉末であっても十分に絶縁抵抗を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]Feを含む軟磁性粉末と、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液とを混合することで、前記軟磁性粉末を表面処理する表面処理工程を有する、リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[2]前記軟磁性粉末がFeを82質量%以上含む、[1]に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[3]前記軟磁性粉末が、Siを0.2〜8.0質量%、Crを0.05〜8.0質量%含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、[1]又は[2]に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[4]前記有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒及び炭化水素溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[3]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[5]前記軟磁性粉末100質量部に対して、前記リン酸及び/又はその塩を0.01〜1.0質量部使用する、[1]〜[4]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[6]前記リン酸の塩が、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸の鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[5]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[7]前記有機溶媒が、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール及びt−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール溶媒である、[1]〜[6]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[8]前記表面処理液におけるリン酸及び/又はその塩の濃度が2〜30質量%である、[1]〜「7」のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[9]前記軟磁性粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5〜10.0μmである、[1]〜[8]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
[10]Feを含むコア粒子と、該コア粒子の表面を被覆する、リン酸及び/又はその塩からなるリン酸表面処理層とを有するリン酸表面処理軟磁性粉末であって、リンの含有量が150〜1200ppmであり、前記リン酸表面処理軟磁性粉末の、BET1点法により測定したBET比表面積(BET)とレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)との積を酸素含有量(O)で除した値(BET×D50/O)が、4.50(μm・m/g・質量%)以下である、リン酸表面処理軟磁性粉末。
[11]前記コア粒子がFeを82質量%以上含む、[10]に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
[12]前記コア粒子が、Siを0.2〜8.0質量%、Crを0.05〜8.0質量%含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、[10]又は[11]に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
[13]前記リン酸の塩が、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸の鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[10]〜[12]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
[14]レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5〜10.0μmである、[10]〜[13]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
[15]前記リン酸表面処理軟磁性粉末の下記圧粉抵抗試験により求められる体積抵抗率が2000Ω・cm以上である、[10]〜[14]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
圧粉抵抗試験:内径20mmの円筒形状の容器内に6gのリン酸表面処理軟磁性粉末を充填して軟磁性粉末層を形成し、この軟磁性粉末層の上面に20kNの荷重を加えて圧粉して圧粉体とし、圧粉された状態の圧粉体の厚さと抵抗を測定し、これら及び前記容器の内径から圧粉体の体積抵抗率を求める。
[16][10]〜[15]のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末とバインダとを含む、軟磁性材料。
[17][16]に記載の軟磁性材料を所定の形状に成型し、得られた成型物を加熱して圧粉磁心を得る、圧粉磁心の製造方法。
本発明によれば、微粒の軟磁性粉末であっても十分に絶縁抵抗を高めることができる、リン酸表面処理の方法及びその関連技術が提供される。
以下、本発明の一実施形態にかかるリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法、リン酸表面処理軟磁性粉末、軟磁性材料及び圧粉磁心の製造方法について説明する。
<リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法>
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法は、Fe(鉄)を含む軟磁性粉末と、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液とを混合することで、前記軟磁性粉末を表面処理する、表面処理工程を有している。
(軟磁性粉末)
前記軟磁性粉末は鉄粉であってもよいし、Feと他の金属元素との合金粉末であってもよい。合金粉末は、Fe以外の金属元素(1種であっても2種以上であってもよい)と、残部Fe及び不可避不純物からなる。この合金粉末におけるFeの含有量は、製造されるリン酸表面処理軟磁性粉末の機械特性や飽和磁化などの磁気特性の観点からは、82質量%以上であることが好ましく(通常99.7質量%以下である)、85〜99.2質量%であることがより好ましい。また、透磁率などの他の磁気特性に着目する場合、Feの含有量は82質量%未満であってもよい。合金粉末のFe以外の金属元素の具体例としては、Si(ケイ素)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、C(炭素)が挙げられる。
合金粉末の具体例としては、以下が挙げられる。
(1)Si(ケイ素)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる合金粉末:Siによりリン酸表面処理軟磁性粉末の透磁率を高めることができる。Siの含有量は、Feによる磁気特性や機械的特性を損なうことなく、透磁率を向上させる観点から0.2〜8.0質量%であることが好ましく、0.2〜7.0質量%であることがより好ましい。
(2)Si(ケイ素)及びCr(クロム)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる合金粉末:Siは(1)の場合と同様、リン酸表面処理軟磁性粉末の透磁率を高めることができ、Crは粉末の酸素含有量を低減して透磁率を高めることができる。Siの含有量は、0.2〜8.0質量%であることが好ましく、0.2〜7.0質量%であることがより好ましい。Crの含有量は、酸素含有量と、粉末が硬くなって充填性が悪化して透磁率が低くなることを防止する観点から、0.05〜8.0質量%であることが好ましく、0.07〜7.0質量%であることがより好ましい。
(3)Ni(ニッケル)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる軟磁性粉末:Niによりリン酸表面処理軟磁性粉末の透磁率を高めることができる。Niの含有量は、透磁率を向上させる観点から45〜85質量%であることが好ましい。
軟磁性粉末は、以上説明した元素以外に、その製造原料や製造工程に使用される装置・物質の影響などで微量(1000ppm以下)の不可避不純物を含むが、その例としては、H(水素)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Pd(パラジウム)、Mg(マグネシウム)、Co(コバルト)、Mo(モリブデン)、Zr(ジルコニウム)、C(炭素)、N(窒素)、O(酸素)、P(リン)、Cl(塩素)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、S(硫黄)、As(砒素)、B(硼素)、Sn(スズ)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Al(アルミニウム)が挙げられる。なお前記不可避不純物は、所与の目的を達成するために1000ppm以下程度のレベル、好ましくは50〜800ppmの量で軟磁性粉末中に含有させられる微量添加元素を包含するものとする。
以上説明した軟磁性粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)は、リン酸表面処理軟磁性粉末の渦電流損失を低減する観点から0.5〜10.0μmであることが好ましく、1.0〜5.0μmであることがより好ましい。
軟磁性粉末の酸素含有量は、リン酸表面処理軟磁性粉末の透磁率の観点から1.50質量%以下であることが好ましい(酸素含有量は通常0.02質量%以上である)。同様な観点から、酸素含有量は0.1〜1.0質量%であることがより好ましい。
軟磁性粉末の炭素含有量は、リン酸表面処理軟磁性粉末の磁気特性への悪影響を抑制する観点から、好ましくは0.001〜0.30質量%であり、より好ましくは0.003〜0.05質量%である。
軟磁性粉末のBET1点法により測定した比表面積(BET比表面積)は、リン酸表面処理軟磁性粉末の粒子表面への酸化物の発生を抑制して良好な透磁率を発揮する観点から、好ましくは0.15〜2.00m/gであり、より好ましくは0.20〜1.50m/gである。
軟磁性粉末のタップ密度は、リン酸表面処理軟磁性粉末の充填密度を高めて良好な透磁率を発揮する観点から、好ましくは2.0〜5.5g/cmであり、より好ましくは3.0〜4.8g/cmである。
また、軟磁性粉末の粒子形状は、特に限定されず、球状や略球状であってもよく、粒状や薄片状(フレーク状)、あるいは歪な形状(不定形)であってもよい。
以上説明した軟磁性粉末は従来公知の方法、例えばアトマイズ法やカルボニル法、湿式法により製造することができる。
(リン酸による表面処理)
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法では、上記軟磁性粉末の粒子をコア粒子として、これにリン酸及び/又はその塩で表面処理を行う。具体的には、軟磁性粉末と、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液とを混合することで表面処理を行う。リン酸とその塩は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用するリン酸は、化学式HPOで表される、いわゆるオルトリン酸である。またリン酸の塩としては、リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及び鉄塩(リン酸第一鉄及びリン酸第二鉄)が挙げられる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。
上記有機溶媒としては特に限定されないが、軟磁性粉末を良好に表面処理する観点から、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒及び炭化水素溶媒が好ましい。これらは単独溶媒として使用しても、混合溶媒として使用してもよい。また良好な表面処理の観点から、これらの中でもアルコール溶媒が特に好ましい。
前記アルコール溶媒の具体例としては、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール及びt−ブタノールが挙げられる。前記ケトン溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。前記エステル溶媒としては、酢酸エチルが挙げられる。前記エーテル溶媒としては、ジエチルエーテルが挙げられる。前記炭化水素溶媒としては、シクロヘキサン、パラフィン、イソパラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらは1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、軟磁性粉末をリン酸及び/又はその塩で良好に表面処理する観点から、エタノール、n−プロパノール及びi−プロパノールが特に好ましい。
本発明で使用する表面処理液は、このような有機溶媒にリン酸及び/又はその塩を溶解させた溶液あるいは分散させた分散液である。溶液となるか分散液となるかはリン酸及び/又はその塩と有機溶媒の組合せによる。溶液とは液体の均一な混合物である。分散液とは、リン酸及び/又はその塩が有機溶媒中に数nm〜数μm程度の粒子又は液滴として浮遊懸濁したものであり、これを静置してもリン酸及び/又はその塩と有機溶媒とで沈殿ないし層分離が起こらない。なお、溶液の方がリン酸及び/又はその塩が表面処理液中に均一に存在して、これを使用して均一な表面処理ができることから、表面処理液としては溶液状のものが好ましい。
この表面処理液を使用した表面処理において、リン酸及び/又はその塩の使用量(リン酸とそのナトリウム塩など、複数種類を使用する場合はそれらの合計量)は、絶縁抵抗を高め磁気特性(透磁率など)の低下を防ぐ観点から、軟磁性粉末100質量部に対して好ましくは0.01〜1.0質量部であり、より好ましくは0.02〜0.5質量部である。
また、表面処理液におけるリン酸及び/又はその塩の濃度(複数種類を使用する場合は、各々の濃度の合計値)は、好ましくは2〜30質量%であり、より好ましくは3〜20質量%である。この場合、軟磁性粉末100質量部に対する表面処理液の使用量が0.5〜5.0質量部程度となり、表面処理を実施した後に乾燥を実施しなくともよく、製造工程の短縮化の点でメリットがある。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法における表面処理工程では、以上説明した表面処理液と軟磁性粉末とを混合する。混合の方法は特に限定されないが、前記の通り表面処理液の量を軟磁性粉末に対して少量とすることが好ましく、この場合に表面処理が好適に行えることから、コーヒーミル、ブレンダー、サンプルミル、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどの解砕機に軟磁性粉末と表面処理液を投入し、これらの混合を実施することが好ましい。
表面処理液と軟磁性粉末との混合の際の温度は特に制限されないが、室温(1〜30℃程度)で行うことができる。また混合の時間は、混合を行う装置に従い、軟磁性粉末をリン酸及び/又はその塩で十分に表面被覆できる範囲で適宜調整すればよい。一例として、コーヒーミルのようなステムの回転により解砕を実施する構造の解砕機により混合を実施する場合、周速30〜80m/sの速度で、前記周速(m/s)と解砕時間(秒)との積が、1000〜10000mとなる条件で解砕することができる。なお周速は、「円周率×ステム直径(mm)×回転数(rpm)÷60000」で計算することができる。また解砕時間とは、ステムを回転させて解砕を実行している時間である。
(その他の工程)
本発明のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法の実施の形態においては、当該粉末について乾燥工程を実施したり、安定化のためアニール工程を実施してもよい。これらの工程における雰囲気としては、窒素などの非酸化性雰囲気、大気雰囲気、真空雰囲気が挙げられる。またアニール工程における加熱温度は、例えば300〜1300℃である。
また、リン酸表面処理軟磁性粉末に対して分級を行い、粒度分布を調整してもよい。
<リン酸表面処理軟磁性粉末>
次に本発明の一実施形態にかかるリン酸表面処理軟磁性粉末について説明する。前記リン酸表面処理軟磁性粉末は、Fe(鉄)を含むコア粒子と、該コア粒子の表面を被覆する、リン酸及び/又はその塩からなるリン酸表面処理層とを有する。
前記コア粒子は、本発明の一実施形態にかかるリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法において説明した軟磁性粉末(を構成する粒子)と同様である。すなわち、コア粒子はFe及び不可避不純物からなるFe粒子であってもよいし、Feと他の金属元素との合金粒子であってもよい。合金粒子は、Fe以外の金属元素(1種であっても2種以上であってもよい)と、残部Fe及び不可避不純物からなる。コア粒子が合金粒子の場合、コア粒子におけるFeの含有量は、この粉末の機械特性や飽和磁化などの機械特性の観点から、82質量%以上であることが好ましく(通常99.7質量%以下である)、85〜99.2質量%であることがより好ましい。透磁率などの他の磁気特性に着目する場合、Feの含有量は82質量%未満であってもよい。
合金粒子のFe以外の金属元素の具体例としては、Si(ケイ素)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、B(ホウ素)、Al(アルミニウム)、C(炭素)が挙げられる。合金粒子の具体例は、リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法の実施の形態において説明した(1)〜(3)と同様である。
不可避不純物の例及び量は、リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法の実施の形態において軟磁性粉末について説明したものと同様である。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末においては、以上説明したコア粒子の表面を、リン酸及び/又はその塩(これらの具体例はリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法の実施の形態において説明したものと同様である)からなるリン酸表面処理層が被覆している。リン酸表面処理層は必ずしもコア粒子表面全体を被覆している必要はなく、下記で説明するリン酸表面処理軟磁性粉末のリンの含有量や、BET×D50/Oの要件を満たすように被覆していればよい。
軟磁性粉末の表面にリン酸表面処理層が存在するかどうかは、例えばガスクロマトグラフィー−質量分析法やX線光電子分光分析により検出することができる。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のリンの含有量は150〜1200ppmである。リンの含有量が150ppm未満では、リン酸表面処理による絶縁抵抗の上昇の効果が得られない。リン含有量が1200ppmより大きいと、透磁率などの磁気特性が低下する恐れがある。これらの観点から、本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のリンの含有量は、好ましくは200〜1000ppmであり、より好ましくは200〜900ppmである。
また、本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のBET1点法により測定したBET比表面積(BET)とレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)との積を酸素含有量(O)で除した値(BET×D50/O)は、4.50(μm・m/g・質量%)以下と小さい。この粉末におけるコア粒子はFeを含んでいるため、一般的に酸化されやすく、一定量の酸素を含有している。この酸素はコア粒子表面にも存在しており酸化物として凹凸を形成する。このような場合、粉末の比表面積は大きくなるが、本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末においてはリン酸による均一な表面処理がなされており、BET1点法に使用される窒素ガス等の不活性ガスが吸着しにくくなっているか、酸化物による凹凸が平滑化されていると考えられ、酸素含有量に対する比表面積の比が小さくなっている。なお、比表面積は粉末の粒子径が大きくなると小さくなるので、比表面積の粒子径による変動を除くため、本発明においてはBET比表面積に粒子径を乗じた値を酸素含有量で割るものとし、BET×D50/Oというパラメータを採用した。
リン酸表面処理層が均一で高い絶縁抵抗を達成する観点から、BET×D50/Oは好ましくは2.00〜4.40(μm・m/g・質量%)であり、より好ましくは3.00〜4.30(μm・m/g・質量%)である。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)は、微粒粉として渦電流損失を低減する観点から0.5〜10.0μmであることが好ましく、1.0〜5.0μmであることがより好ましい。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のBET1点法により測定した比表面積(BET比表面積)は、粉末の粒子表面への酸化物の発生を抑制して良好な透磁率を発揮する観点から、好ましくは0.15〜2.00m/gであり、より好ましくは0.20〜1.50m/gである。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の酸素含有量は、透磁率の観点から1.80質量%以下であることが好ましい(酸素含有量は通常0.05質量%以上である)。同様な観点から、酸素含有量は0.15〜1.30質量%であることがより好ましい。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の炭素含有量は、磁気特性への悪影響を抑制する観点から、好ましくは0.001〜0.30質量%であり、より好ましくは0.003〜0.05質量%である。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末のタップ密度は、粉末の充填密度を高めて良好な透磁率を発揮する観点から、好ましくは2.0〜5.5g/cmであり、より好ましくは3.0〜4.8g/cmである。
また、本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の形状は、特に限定されず、球状や略球状であってもよく、粒状や薄片状(フレーク状)、あるいは歪な形状(不定形)であってもよい。
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末は絶縁抵抗に優れており、具体的には、この粉末の下記圧粉抵抗試験により求められる体積抵抗率は、好ましくは2000Ω・cm以上であり、より好ましくは2500〜20000Ω・cmである。
圧粉抵抗試験:内径20mmの円筒形状の容器内に6gのリン酸表面処理軟磁性粉末を充填して軟磁性粉末層を形成し、この軟磁性粉末層の上面に20kNの荷重を加えて圧粉して圧粉体とし、圧粉された状態(20kNの荷重が加えられたまま)の圧粉体の厚さと抵抗を測定し、これら及び前記容器の内径から圧粉体の体積抵抗率を求める。圧粉抵抗試験の詳細については、後述の実施例にて説明する。
また、本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の、実施例で後述する磁気特性の測定方法により求められる保磁力Hc及び飽和磁化σsは、その組成により変わるが、例を挙げると以下の通りである。
(イ)コア粒子がSi(ケイ素)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる合金コア粒子(上記(1)の合金粉末と同様な合金粒子)の場合、及び、Si(ケイ素)及びCr(クロム)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる合金コア粒子(上記(2)の合金粉末と同様な合金粒子)の場合:保磁力Hcは好ましくは12〜30Oeであり、飽和磁化σsは好ましくは170〜218emu/gである。
(ロ)コア粒子がNi(ニッケル)を含み、残部Fe及び不可避不純物からなる合金コア粒子(上記(3)の合金粉末と同様な合金粒子)の場合: 保磁力Hcは好ましくは12〜30Oeであり、飽和磁化σsは好ましくは120〜170emu/gである。
以上説明した本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末は、例えば本発明の実施の形態のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法の実施の形態により製造することができる。
<軟磁性材料>
本実施形態のリン酸表面処理軟磁性粉末は絶縁抵抗に優れ渦電流損失が低減されているため、(特に高周波領域で使用される)軟磁性材料に好適に適用することができる。例えば前記軟磁性粉末をバインダ(絶縁樹脂及び/又は無機バインダ)と混合し、造粒することで、粒状の複合体粉末(軟磁性材料)を得ることができる。軟磁性材料におけるリン酸表面処理軟磁性粉末の含有量は、良好な透磁率を達成する観点から、80〜99.9質量%であることが好ましい。同様な観点から、前記バインダの前記軟磁性材料における含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましい。
前記絶縁樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。前記無機バインダの具体例としては、シリカバインダー、アルミナバインダーが挙げられる。さらに、前記軟磁性材料は必要に応じてワックス、滑剤などのその他の成分を含んでもよい。
<圧粉磁心>
本実施形態の軟磁性材料を所定の形状に成型して加熱することで、圧粉磁心を製造することができる。より具体的には、本実施形態の軟磁性材料を所定形状の金型に入れて成型し、得られた成型物を加圧し加熱することで圧粉磁心を得る。当該圧粉磁心においては渦電流損失が十分低減されているため、この圧粉磁心を有する磁性部品を、高周波領域で動作するインダクタなどの電子機器に取り付けることができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<鉄合金粉末1の製造>
タンディッシュ炉中で、純鉄(純度:99.8質量%以上)14kgとシリコンメタル(純度:99質量%以上)1.01kgとリン鉄(リン割合:26質量%、残部鉄)28gとを窒素雰囲気下において1700℃に加熱して溶解した溶湯を、窒素雰囲気下(酸素濃度300ppm以下)においてタンディッシュ炉の底部から落下させながら、水圧150MPa、水量160L/分で高圧水(pH12.0、電位107mV(標準電極電位))を吹き付けて急冷凝固させ、得られたスラリーを固液分離し、分離された固形物を真空雰囲気下、40℃で40時間乾燥した。なお、高圧水のpH測定時の標準物質は以下の通りである。
pH4.01(25℃):フタル酸塩pH標準液
pH6.86(25℃):中性りん酸塩pH標準液
pH9.18(25℃):ほう酸塩pH標準液
得られた乾燥粉末を解砕し、風力分級して、本実施例及び以下の比較例のリン酸表面処理の元粉である、略球状の鉄合金粉末1を得た。この鉄合金粉末1のFe、Si及びPの組成を求めたところ、Feの含有量は94.1質量%、Siの含有量は6.2質量%、Pの含有量は0.05質量%(500ppm)であった。なお、これらの定量は以下のようにして行った。
Feは、滴定法により、JIS M8263(クロム鉱石−鉄定量方法)に準拠して、以下のように分析を行った。まず、試料(鉄合金粉末1)0.1gに硫酸と塩酸を加えて加熱分解し、硫酸の白煙が発生するまで加熱した。放冷後、水と塩酸を加えて加温して可溶性塩類を溶解させた。そして、得られた試料溶液に温水を加えて液量を120〜130mL程度にし、液温を90〜95℃程度にしてからインジゴカルミン溶液を数滴加え、塩化チタン(III)溶液を試料溶液の色が黄緑から青、次いで無色透明になるまで加えた。引き続き試料溶液が青色の状態を5秒間保持するまで二クロム酸カリウム溶液を加えた。この試料溶液中の鉄(II)を、自動滴定装置を用いて二クロム酸カリウム標準溶液で滴定し、Fe量を求めた。
Siは、重量法により、以下のように分析を行った。まず、試料(鉄合金粉末1)に塩酸と過塩素酸を加えて加熱分解し、過塩素酸の白煙が発生するまで加熱した。引き続き加熱して乾固させた。放冷後、水と塩酸を加えて加温して可溶性塩類を溶解させた。続いて、不溶解残渣を、ろ紙を用いてろ過し、残渣をろ紙ごとるつぼに移し、乾燥、灰化させた。放冷後、るつぼごと秤量した。少量の硫酸とフッ化水素酸を加え、加熱して乾固させた後、強熱した。放冷後、るつぼごと秤量した。そして、1回目の秤量値から2回目の秤量値を差し引き、重量差をSiOとして計算してSi量を求めた。
Pは、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSPS3520V)によって分析した。
このように各元素の定量方法が異なるため、定量された各元素の含有量の合計が100質量%を超える場合もある。
<リン酸による表面処理>
リン酸1gとソルミックスAP−7(日本アルコール販売株式会社製のアルコール溶媒)9gを混合し、リン酸濃度10質量%のリン酸溶液を作製した。なお、ソルミックスAP−7は、規格がエタノール含有量85.5±1.0質量%、イソプロピルアルコール(i−プロパノール、IPA)含有量5.0質量%未満、ノルマルプロピルアルコール(n−プロピルアルコール、NPA)含有量9.6±0.5質量%、水含有量0.2質量%以下の、アルコールの混合溶媒である。
次に、上記で得られた鉄合金粉末1 80gに対して前記リン酸溶液を0.893g添加し、これらをコーヒーミル(ステム直径:60mm)に入れ、室温にて、回転数約14000rpm(周速:約44m/s)で20秒間の混合を2回行うことによって(周速(44m/s)と混合時間(40秒)との積は1760m)、リン酸で表面処理された鉄合金粉末を得た。この合金粉末の形状は略球状であった。
得られたリン酸表面処理鉄合金粉末と、表面処理の元粉である鉄合金粉末1について、BET比表面積(BET)、酸素含有量(O)、リン含有量(P)、炭素含有量(C)、タップ密度(TAP)、粒度分布、圧粉抵抗、磁気特性を測定した。結果は後記表1及び2に示した。
BET比表面積は、BET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用して、測定器内に105℃で20分間窒素ガスを流して脱気した後、窒素とヘリウムの混合ガス(N:30体積%、He:70体積%)を流しながら、BET1点法により測定した。
酸素含有量は、酸素・窒素・水素分析装置(株式会社堀場製作所製のEMGA−920)により測定した。
リン含有量は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSPS3520V)によって分析した。
炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA−220V)により測定した。
タップ密度(TAP)は、特開2007−263860号公報に記載された方法と同様に、鉄合金粉末1又はリン酸表面処理鉄合金粉末(以下これらをまとめて「鉄合金粉末」という)を内径6mm×高さ11.9mmの有底円筒形のダイに容積の80%まで充填して鉄合金粉末層を形成し、この鉄合金粉末層の上面に0.160N/mの圧力を均一に加え、この圧力で鉄合金粉末がこれ以上密に充填されなくなるまで前記鉄合金粉末層を圧縮した後、鉄合金粉末層の高さを測定し、この鉄合金粉末層の高さの測定値と、充填された鉄合金粉末の重量とから、鉄合金粉末の密度を求め、これを鉄合金粉末のタップ密度とした。
粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のへロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS(気流式の乾燥モジュール)))により分散圧5barで測定した。
圧粉抵抗は、抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック社製の粉体抵抗測定システム MCP−PD51型)を使用して測定した。具体的には、内径20mmの円筒状の測定容器内に6gの鉄合金粉末を充填して鉄合金粉末層を形成した後、この鉄合金粉末層の上面に20kNの荷重を加えて圧粉して圧粉体とし、圧粉された状態(20kNの荷重が加えられたまま)の圧粉体の厚さと抵抗を測定し、これら及び前記測定容器の内径から圧粉体の体積抵抗率を算出した。また、鉄合金粉末の重量(6g)と圧粉体の厚さから、圧粉体の見掛密度も求めた。
[磁気特性(飽和磁化及び保磁力)の測定]
高感度型振動試料型磁力計(東英工業株式会社製:VSM−P7−15型)を用い、印加磁界(10kOe)、M測定レンジ(50emu)、ステップビット100bit、時定数0.03sec、ウエイトタイム0.1secで鉄合金粉末の磁気特性を測定した。B−H曲線により、飽和磁化σs及び保磁力Hcを求めた。なお、処理定数はメーカー指定に従った。具体的には下記の通りである。
交点検出:最小二乗法 M平均点数 0 H平均点数 0
Ms Width:8 Mr Width:8 Hc Width:8 SFD Width:8 S.Star Width:8
サンプリング時間(秒):90
2点補正 P1(Oe):1000
2点補正 P2(Oe):4500
[比較例1]
純水796gに苛性ソーダ0.32gを添加し、40℃に温度調整しながら撹拌して苛性ソーダ水溶液を作製した。アルカリ性としたのは、鉄合金粉末1の酸化を防止するためである。苛性ソーダ水溶液に鉄合金粉末1 30gを添加して水溶液中に分散させた後、その水溶液にリン酸0.10gを添加し、60分間撹拌し、混合した。その後、得られたスラリーを濾過し、得られた残渣を真空雰囲気下で40℃で10時間乾燥させて、リン酸で表面処理された比較例1の鉄合金粉末を得た。この合金粉末の形状は略球状だった。
このリン酸表面処理鉄合金粉末について、実施例1と同様に、BET比表面積(BET)、酸素含有量(O)、リン含有量(P)、炭素含有量(C)、タップ密度(TAP)、粒度分布、圧粉抵抗、磁気特性を測定した。結果は後記表1及び2に示した通りである。
[実施例2]
<鉄合金粉末2の製造>
タンディッシュ炉中で、純鉄(純度:99.8質量%以上)13.44kgとシリコンメタル(純度:99質量%以上)0.552kgとフェロクロム(クロム割合:67質量%、残部鉄)1.006kgとを窒素雰囲気下(酸素濃度300ppm以下)において1700℃に加熱して溶解した以外は<鉄合金粉末1の製造>と同様にして、本実施例のリン酸表面処理の元粉である、略球状の鉄合金粉末2を製造した。
この鉄合金粉末2のFe、Si及びCrの組成を求めたところ、Feの含有量は91.6質量%、Siの含有量は3.6質量%、Crの含有量は4.6質量%であった。なお、Fe及びSiの量は実施例1における鉄合金粉末1の場合と同様な方法で測定し、Crの量は誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSPS3520V)によって分析した。
<リン酸による表面処理>
リン酸1.0gとソルミックスAP−7(日本アルコール販売(株)製のアルコール溶媒)9.0gを混合し、リン酸濃度10質量%のリン酸溶液を作製した。
次に、上記で得られた鉄合金粉末2 80gに対して前記リン酸溶液を0.893g添加し、これらをコーヒーミル(ステム直径:60mm)に入れ、回転数約14000rpm(周速:約44m/s)で20秒間の混合を2回行うことによって(周速(44m/s)と混合時間(40秒)との積は1760m)、リン酸で表面処理された鉄合金粉末を得た。この合金粉末の形状は略球状だった。
得られたリン酸表面処理鉄合金粉末と、表面処理の元粉である鉄合金粉末2について、実施例1の場合と同様にして、BET比表面積(BET)、酸素含有量(O)、リン含有量(P)、炭素含有量(C)、タップ密度(TAP)、粒度分布、圧粉抵抗、磁気特性を測定した。
以上の鉄合金粉末1及び2、実施例1及び2並びに比較例1の各種測定結果を下記表1及び2に示す。
Figure 2019218611
Figure 2019218611
鉄合金粉末1(FeSiPの組成)に対して、本発明で規定される方法、すなわちリン酸をアルコールに溶解させたリン酸溶液でリン酸表面処理することで(実施例1)、BET×D50/Oが4.50(μm・m/g・wt%)以下のリン酸表面処理鉄合金粉末が得られ、この粉末は圧粉抵抗(体積抵抗率)が4823Ω・cmと高かった。
しかし、水中で鉄合金粉末1をリン酸表面処理した場合(比較例1)には、得られたリン酸表面処理鉄合金粉末のBET×D50/Oは実施例1のものよりも大きく、圧粉抵抗は45Ω・cmと表面処理前の元粉である鉄合金粉末1よりも小さくなってしまった。このように抵抗の低い軟磁性粉末では、大きな渦電流損失が生じるものと考えられる。なお、鉄合金粉末1、実施例1のリン酸表面処理鉄合金粉末及び比較例1のリン酸表面処理鉄合金粉末では圧粉体の密度がほぼ同じであるので、これらの粉末の充填性はほぼ同様と考えられる。そのため、これらの粉末の圧粉抵抗の違いは、粉末の充填性によるものではなく、BET×D50/Oが所定値以下であるかどうか(リン酸表面処理が均一になされているかどうか)によるものと考えられる。
本発明の効果は、FeSiCrの組成の鉄合金粉末2についても確認された(実施例2)。

Claims (17)

  1. Feを含む軟磁性粉末と、リン酸及び/又はその塩並びに有機溶媒を含む表面処理液とを混合することで、前記軟磁性粉末を表面処理する表面処理工程を有する、リン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  2. 前記軟磁性粉末がFeを82質量%以上含む、請求項1に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  3. 前記軟磁性粉末が、Siを0.2〜8.0質量%、Crを0.05〜8.0質量%含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、請求項1又は2に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  4. 前記有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒及び炭化水素溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  5. 前記軟磁性粉末100質量部に対して、前記リン酸及び/又はその塩を0.01〜1.0質量部使用する、請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  6. 前記リン酸の塩が、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸の鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜5のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  7. 前記有機溶媒が、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール及びt−ブタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール溶媒である、請求項1〜6のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  8. 前記表面処理液におけるリン酸及び/又はその塩の濃度が2〜30質量%である、請求項1〜7のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  9. 前記軟磁性粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5〜10.0μmである、請求項1〜8のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末の製造方法。
  10. Feを含むコア粒子と、該コア粒子の表面を被覆する、リン酸及び/又はその塩からなるリン酸表面処理層とを有するリン酸表面処理軟磁性粉末であって、
    リンの含有量が150〜1200ppmであり、
    前記リン酸表面処理軟磁性粉末の、BET1点法により測定したBET比表面積(BET)とレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)との積を酸素含有量(O)で除した値(BET×D50/O)が、4.50(μm・m/g・質量%)以下である、
    リン酸表面処理軟磁性粉末。
  11. 前記コア粒子がFeを82質量%以上含む、請求項10に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
  12. 前記コア粒子が、Siを0.2〜8.0質量%、Crを0.05〜8.0質量%含み、残部Fe及び不可避不純物からなる、請求項10又は11に記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
  13. 前記リン酸の塩が、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩及びリン酸の鉄塩からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項10〜12のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
  14. レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)が0.5〜10.0μmである、請求項10〜13のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
  15. 前記リン酸表面処理軟磁性粉末の下記圧粉抵抗試験により求められる体積抵抗率が2000Ω・cm以上である、請求項10〜14のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末。
    圧粉抵抗試験:内径20mmの円筒形状の容器内に6gのリン酸表面処理軟磁性粉末を充填して軟磁性粉末層を形成し、この軟磁性粉末層の上面に20kNの荷重を加えて圧粉して圧粉体とし、圧粉された状態の圧粉体の厚さと抵抗を測定し、これら及び前記容器の内径から圧粉体の体積抵抗率を求める。
  16. 請求項10〜15のいずれかに記載のリン酸表面処理軟磁性粉末とバインダとを含む、軟磁性材料。
  17. 請求項16に記載の軟磁性材料を所定の形状に成型し、得られた成型物を加熱して圧粉磁心を得る、圧粉磁心の製造方法。
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