JP7439382B2 - 合成樹脂製容器 - Google Patents

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Description

本発明は、合成樹脂製容器に関し、特に、軸方向の荷重に対する座屈強度が高められた合成樹脂製容器に関する。
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて有底筒状のプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
また、このような合成樹脂製容器にあっては、市場の要求に応えるべく多種多様の容器形状とされたものが知られている。例えば、特許文献1には、容器胴部に周方向に沿って凹溝部(ウェスト)を延設することによって、当該凹溝部に手指を掛けて容器を安定に把持できるようにした容器が開示されている。
特開2011-251711号公報
ところで、この種の容器にあっては、内容物を充填密封して市場に供給するに際し、例えば、輸送、保管時に箱積み状態とされたときの積圧により、軸方向に荷重が加わったりしても、そのような荷重に耐えて、座屈変形してしまわないようにすることが望まれる。このため、特許文献1では、軸方向の荷重に対する座屈強度を高めるために、容器胴部(上部胴部)に、所定の縦断面形状とされた横溝を、上下に間隔をあけて複数設けるようにしている。
しかしながら、特許文献1のように、複数の横溝を容器胴部に設けるとすると、市場の要求に応じて容器形状をデザインする上で、その自由度が損なわれてしまう。
そこで、本発明者らは、容器胴部に周方向に沿って凹溝部を延設し、当該凹溝部に手指を掛けて容器を安定に把持できるようにした容器について、かかる容器が、軸方向の荷重によって、どのようにして座屈変形するかについて検討した。本発明者らが検討した容器の一例を図5に示す。本発明者らの検討によれば、このような容器100にあっては、軸方向の荷重によって、凹溝部105が圧縮されて、凹溝部105の最深部に比べて周長(周方向に沿った長さ)が長い、凹溝部105の上方側の溝面と下方側の溝面とが、周方向に押し縮められるように変形するにつれて、図6に示すように、凹溝部105の溝面に撓みによるシワが発生し、このシワを起点に座屈が進行するという知見が得られた。
本発明者らは、このような知見に基づいて、さらなる検討を重ねた結果、上記の如き容器にあっては、凹溝部の溝面を撓み難くして、当該溝面におけるシワの発生を抑制することで、軸方向の荷重に対する座屈強度を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係る合成樹脂製容器は、円筒状に形成された胴部を備え、前記胴部は、周方向に沿って延設された凹溝部によって、上胴部と下胴部とに分けられ、前記凹溝部は、前記胴部に対して同心状に縮径するとともに、縦断面円弧状の溝底部と、前記上胴部の下端縁にR面取り部を介して連接する上側傾斜面と、前記下胴部の上端縁にR面取り部を介して連接する下側傾斜面とを含み、前記上側傾斜面と前記溝底部とが連接する位置に周方向に沿って円環状に条設された第一突条部と、前記下側傾斜面と前記溝底部とが連接する位置に周方向に沿って円環状に条設された第二突条部とが、前記凹溝部内に所定の間隔を以て平行に条設されている構成としてある。
本発明によれば、軸方向の荷重に対する座屈強度が高められた合成樹脂製容器を提供することができる。
本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。 図2のA-A端面図である。 本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の要部拡大端面図である。 比較例の概略を示す正面図である。 図5に示す容器が、軸方向の荷重により変形した状態を示す説明図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す斜視図、図2は、同正面図であり、図3は、図2のA-A端面図、図4は、図3において鎖線で囲む部分を拡大して示す要部拡大端面図である。
なお、図3、図4に示す端面図では、容器1の肉厚を省略している。
本実施形態において、容器1は、口部2、胴部3、及び底部4を備えており、胴部3が概ね円筒状に形成された、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有している。
このような容器1は、熱可塑性樹脂を使用して射出成形や圧縮成形などにより有底筒状のプリフォームを成形し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などにより所定の容器形状に成形することによって製造される。
容器1を製造するにあたり、使用する熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどが好適である。特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが、好適に使用される。また、ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
口部2は、内容物の注ぎ口となる円筒状の部位である。かかる口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山が設けられている。
また、胴部3は、容器1の高さ方向の大半を占める部位であり、周方向に沿って延設された凹溝部5によって、口部2側に位置する上胴部3aと、底部4側に位置する下胴部3bとに分けられている。
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向であって、軸方向に一致する方向をいうものとし、図2に示す状態で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
図示する例において、上胴部3aは、上方側が縮径して口部2に連続するように形成されている。
下胴部3bは、胴径Dが高さ方向に沿ってほぼ一定となるように形成されているとともに、下胴部3bの周面には、内容物を充填密封する際の内圧変化を吸収して、容器1の不均等な変形を抑制するために、内圧に応じて変形可能な複数(図示する例では八つ)の内圧調整パネルPが、周方向に沿って均等に設けられている。
胴部3を上胴部3aと下胴部3bとに分ける凹溝部5は、縦断面円弧状の溝底部5cを含み、上側傾斜面5aが、上胴部3aの下端縁にR面取り部5dを介して連接し、下側傾斜面5bが、下胴部3bの上端縁にR面取り部5eを介して連接するように設けられている。換言すれば、図示する例において、凹溝部5は、高さ方向に沿って上から順に連接された、R面取り部5d、上側傾斜面5a、溝底部5c、下側傾斜面5b、R面取り部5eからなっている。
このような凹溝部5を周方向に沿って延設することで、容器1を把持する際に、当該凹溝部5に手指(例えば、親指と人差し指)を掛けて、容器1を安定に把持することができる。その際、手指の収まりが良くなるように、上側傾斜面5a及び下側傾斜面5bの軸方向に対する傾斜角度α,β(図4参照)は、14~45°であるのが好ましい。
なお、上側傾斜面5a及び下側傾斜面5bは、図示するように、縦断面が直線状となるように形成するに限らず、手指の収まりを損なわない範囲で縦断面が曲線状となるように形成してもよい。
また、図示する例では、上側傾斜面5aと溝底部5cとが連接する位置(溝底部5cの最深部に対して上方)に、第一突条部6を周方向に沿って条設するとともに、下側傾斜面5bと溝底部5cとが連接する位置(溝底部5cの最深部に対して下方)に、第二突条部7を周方向に沿って条設してある。
前述したように、図5に示す容器100にあっては、軸方向の荷重によって、凹溝部105が圧縮されて、凹溝部105の最深部に比べて周長が長い、凹溝部105の上方側の溝面と下方側の溝面とが、周方向に押し縮められるように変形するにつれて、凹溝部105の溝面に撓みによるシワが発生し、このシワを起点に座屈が進行する。
これに対して、本実施形態によれば、図5に示す容器100と同様にして設けられた凹溝部5内に、溝底部5cの最深部に対して上方に位置する第一突条部6と、溝底部5cの最深部に対して下方に位置する第二突条部7とを、所定の間隔を以て周方向に沿って平行に条設することによって、凹溝部5の溝面を撓み難くして、シワの発生を抑制することができ、その結果、軸方向の荷重に対する座屈強度を高めることができる。
図示する例では、容器外方に突出する突条として、第一突条部6と第二突条部7とを設けているが、凹溝部5の溝面を撓み難くすることができれば、これらは、容器内方に突出する突条として設けることもできる。
第一突条部6と第二突条部7とを凹溝部5内に平行に条設するにあたり、第一突条部6と第二突条部7との離間距離dは、凹溝部5の溝幅Wの15~54%とするのが好ましい。このようにすることで、より有効に、凹溝部5の溝面を撓み難くすることができる。さらに、凹溝部5の溝面を撓み難くする上で、第一突条部6と第二突条部7とは、凹溝部5の最深部に対して等間隔となるように条設するのが好ましく、第一突条部6の幅w、及び第二突条部7の幅wは、2~5mmであるのが好ましく、第一突条部6の突出高さh、及び第二突条部7の突出高さhは、0.3~1.2mmであるのが好ましい。
また、凹溝部5の溝幅Wは、平均的な人の手の大きさを考慮して、指一本分程度の幅とするのが好ましく、例えば、18~35mmとすることができる。
また、第一突条部6と第二突条部7とを凹溝部5内に平行に条設することに加えて、縦断面円弧状の溝底部5cを含むように凹溝部5を設けることで、荷重が解除されたときに、軸方向に圧縮された凹溝部5が、弾性的に元の形状に復元し易くなるようにすることができる。このとき、弾性的な復元性が、より有効に発揮されるように、溝底部5cの縦断面における曲率半径は、7~17mmであるのが好ましい。
また、図示する例では、容器1の高さ方向中央部に対して上方寄りの位置に凹溝部5を延設しているが、凹溝部5を延設する位置は、当該凹溝部5に手指を掛けて、容器1をバランス良く安定して把持できれば特に限定されない。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
[実施例]
図1~図4に示す容器1について、容器1の高さH:約230mm、胴部3の最大胴径D:約80mm、凹溝部5の溝幅W:約28mm、第一突条部6の幅w:約2.7mm、第一突条部6の突出高さh:約0.7mm、第二突条部7の幅w:約2.7mm、第二突条部7の突出高さh:約0.7mm、第一突条部6と第二突条部7との離間距離d:約7mm、溝底部5cの縦断面における曲率半径:約9mmとなるように、重量約27gのポリエチレンテレフタレート製プリフォームを用いてブロー成形した。
得られた容器1に、約800mLの水を充填密封して、軸方向の荷重を加えていったところ、荷重が増加しても凹溝部5の変形は抑制されており、荷重約1037N、圧縮量約11.2mmで上胴部3aの上方側が座屈するまで、凹溝部5に著しい変形は認められなかった。
また、容器1が座屈する手前で荷重を解除したところ、容器1は元の形状に復元し、凹溝部5に変形した痕跡は認められなかった。
[比較例]
図5に示す容器100について、第一突条部6と第二突条部7を設けなかった以外は、実施例と同様にしてブロー成形した。
得られた容器100に、約800mLの水を充填密封して、軸方向の荷重を加えていったところ、荷重を加えた初期から凹溝部105の変形が進み、荷重約220Nで、図6に示すようなシワが凹溝部105の溝面に発生し、荷重約300Nで、凹溝部105から座屈した。
また、容器100が座屈する手前で荷重を解除したところ、凹溝部105の溝面にシワが残ってしまい、元の形状には復元しなかった。
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
例えば、図示する例は、本発明に係る合成樹脂製容器の一例であり、縦断面円弧状の溝底部5cを含む凹溝部5が、胴部3に周方向に沿って延設され、凹溝部5内に、溝底部5cの最深部に対して上方に位置する第一突条部と、溝底部5cの最深部に対して下方に位置する第二突条部とが、所定の間隔を以て周方向に沿って平行に条設されていれば、これ以外の細部の構成は、図示する例に限定されることなく適宜変更することができる。
1 容器
2 口部
3 胴部
3a 上胴部
3b 下胴部
4 底部
5 凹溝部
5a 上側傾斜面
5b 下側傾斜面
5c 溝底部
6 第一突条部
7 第二突条部

Claims (3)

  1. 円筒状に形成された胴部を備え、
    前記胴部は、周方向に沿って延設された凹溝部によって、上胴部と下胴部とに分けられ、
    前記凹溝部は、前記胴部に対して同心状に縮径するとともに、縦断面円弧状の溝底部と、前記上胴部の下端縁にR面取り部を介して連接する上側傾斜面と、前記下胴部の上端縁にR面取り部を介して連接する下側傾斜面とを含み、
    前記上側傾斜面と前記溝底部とが連接する位置に周方向に沿って円環状に条設された第一突条部と、前記下側傾斜面と前記溝底部とが連接する位置に周方向に沿って円環状に条設された第二突条部とが、前記凹溝部内に所定の間隔を以て平行に条設されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
  2. 前記第一突条部と前記第二突条部との離間距離が、前記凹溝部の溝幅の15~54%である請求項1に記載の合成樹脂製容器。
  3. 前記溝底部の縦断面における曲率半径が、7~17mmである請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
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