JP7426207B2

JP7426207B2 - 印刷方法および印刷装置

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Description

本発明は、粒状物の表面に印刷を行う印刷方法および印刷装置に関する。

医薬品の一形態である錠剤の表面には、製品を識別するための文字やコードが印字される。このような文字やコードは、刻印により印字される場合もあるが、刻印では視認性が低いという問題があった。特に、近年では、後発医薬品の普及により錠剤の種類が多様化している。このため、錠剤を識別しやすくするために、錠剤の表面にインクジェット方式で鮮明な印字を行う技術が注目されている。

錠剤の表面にインクジェット方式で印刷を行う従来の印刷装置については、例えば、特許文献１に記載されている。

特開２０１８－１８６９６２号公報

特許文献１の印刷装置では、ベルトコンベアにより錠剤を搬送しつつ、複数のノズルから錠剤に向けて、インクの液滴（以下「インク滴」と称する）を吐出することにより、錠剤の表面に画像を印刷している。しかしながら、ベルトコンベアにより錠剤を搬送すると、ベルトコンベアのプーリの回転誤差や、ベルトの揺れなどによって、ごく微小な搬送誤差が生じる。その結果、各錠剤に対する印刷位置にも、周期性を有する微小な誤差が生じていた。

本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、錠剤等の粒状物をベルトコンベアにより搬送しつつ印刷を行う場合に、各粒状物に対する印刷の位置ずれを低減できる技術を提供することを目的とする。

上記課題を解決するため、本願の第１発明は、ベルトコンベアにより複数の粒状物を整列保持しつつ搬送しながら、搬送経路上の印刷位置において、前記粒状物の表面に印刷を行う印刷方法であって、ａ）前記印刷位置よりも前記搬送経路の下流側において、印刷後の前記粒状物の画像である印刷後画像を取得し、印刷前の前記粒状物の画像を用いずに前記印刷後画像に基づいて前記ベルトコンベアの搬送誤差を検出する工程と、ｂ）前記工程ａ）よりも後に、前記印刷位置よりも前記搬送経路の上流側において、印刷前の前記粒状物の画像である印刷前画像を取得する工程と、ｃ）前記工程ｂ）により取得された印刷前画像と、前記工程ａ）により検出された搬送誤差から算出される補正値とに基づいて、印刷データの座標を補正して、前記印刷位置における印刷を行う工程と、を有し、前記方法は、前記工程ａ）よりも前に、前記ベルトコンベアの前記搬送誤差の周期を記憶する工程をさらに有し、前記工程ａ）では、少なくとも前記周期よりも長い期間、前記搬送誤差を検出して、前記搬送誤差の時系列データを取得する。

本願の第２発明は、第１発明の印刷方法であって、前記工程ｃ）では、前記時系列データに含まれる搬送誤差から算出される少なくとも１周期分の補正値に基づいて、前記周期の整数倍後に相当する前記印刷データの座標を補正する。

本願の第３発明は、第１発明または第２発明の印刷方法であって、前記工程ａ）では、前記時系列データを移動平均により平滑化し、前記工程ｃ）では、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する。

本願の第４発明は、第１発明または第２発明の印刷方法であって、前記工程ａ）では、前記時系列データをローパスフィルタにより平滑化し、前記工程ｃ）では、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する。

本願の第５発明は、第１発明から第４発明までのいずれか１発明の印刷方法であって、前記ベルトコンベアは、一対のプーリと、前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、を有し、前記周期は、前記搬送ベルトの回動の周期である。

本願の第６発明は、第１発明から第４発明までのいずれか１発明の印刷方法であって、前記ベルトコンベアは、一対のプーリと、前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、を有し、前記周期は、前記プーリの回転の周期である。

本願の第７発明は、第１発明から第６発明までのいずれか１発明の印刷方法であって、前記工程ａ）では、前記印刷後画像における前記粒状物の重心位置と、前記印刷後画像における前記粒状物に印刷された画像の重心位置との差分に基づいて、前記搬送誤差を検出する。

本願の第８発明は、第１発明から第７発明までのいずれか１発明の印刷方法であって、前記搬送誤差は、前記ベルトコンベアの搬送方向および幅方向少なくともいずれかの搬送誤差を含む。

本願の第９発明は、請求項１から請求項８までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、前記粒状物は錠剤である。

本願の第１０発明は、粒状物の表面に印刷を行う印刷装置であって、複数の前記粒状物を整列保持しつつ搬送するベルトコンベアと、前記ベルトコンベアの搬送経路上の印刷位置において、前記粒状物に対して印刷を行うヘッドと、前記印刷位置よりも前記搬送経路の上流側において、印刷前の前記粒状物の画像である印刷前画像を取得する第１画像取得部と、前記印刷位置よりも前記搬送経路の下流側において、印刷後の前記粒状物の画像である印刷後画像を取得する第２画像取得部と、前記ヘッド、前記第１画像取得部、および前記第２画像取得部と接続された制御部と、を備え、前記制御部は、ａ）前記印刷前画像を用いずに前記印刷後画像に基づいて、前記ベルトコンベアの搬送誤差を検出する処理と、ｂ）前記処理ａ）の後に取得される前記印刷前画像と、前記搬送誤差から算出される補正値とに基づいて、印刷データの座標を補正して、前記ヘッドに印刷を実行させる処理と、を実行し、前記制御部は、前記ベルトコンベアの前記搬送誤差の周期を記憶する記憶部を有し、前記処理ａ）において、少なくとも前記周期よりも長い期間、前記搬送誤差を検出して、前記搬送誤差の時系列データを前記記憶部に記憶する。

本願の第１１発明は、第１０発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記処理ｂ）において、前記時系列データに含まれる搬送誤差から算出される少なくとも１周期分の補正値に基づいて、前記周期の整数倍後に相当する前記印刷データの座標を補正する。

本願の第１２発明は、第１０発明または第１１発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記処理ａ）において、前記時系列データを移動平均により平滑化し、前記処理ｂ）において、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する。

本願の第１３発明は、第１０発明または第１１発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記処理ａ）において、前記時系列データをローパスフィルタにより平滑化し、前記処理ｂ）において、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する。

本願の第１４発明は、第１０発明から第１３発明までのいずれか１発明の印刷装置であって、前記ベルトコンベアは、一対のプーリと、前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、を有し、前記周期は、前記搬送ベルトの回動の周期である。

本願の第１５発明は、第１０発明から第１３発明までのいずれか１発明の印刷装置であって、前記ベルトコンベアは、一対のプーリと、前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、を有し、前記周期は、前記プーリの回転の周期である。

本願の第１６発明は、第１０発明から第１５発明までのいずれか１発明の印刷装置であって、前記制御部は、前記処理ａ）において、前記印刷後画像における前記粒状物の重心位置と、前記印刷後画像における前記粒状物に印刷された画像の重心位置との差分に基づいて、前記搬送誤差を検出する。

本願の第１７発明は、第１０発明から第１６発明までのいずれか１発明の印刷装置であって、前記搬送誤差は、前記ベルトコンベアの搬送方向および幅方向少なくともいずれかの搬送誤差を含む。

本願の第１８発明は、第１０発明から第１７発明までのいずれか１発明の印刷装置であって、前記粒状物は錠剤である。

本願の第１発明～第１８発明によれば、ベルトコンベアの搬送誤差を検出し、その搬送誤差から算出される補正値に基づいて、印刷データの座標を補正する。これにより、ベルトコンベアの搬送誤差を考慮した適正な位置に、印刷を行うことができる。その結果、各粒状物に対する印刷の位置ずれを低減できる。

特に、本願の第１発明～第１８発明によれば、少なくとも１周期分の搬送誤差を取得することにより、その後の各錠剤に対する印刷データの座標補正を、適切に行うことができる。

特に、本願の第３発明、第４発明、第１２発明、または第１３発明によれば、搬送誤差の時系列データを平滑化する。これにより、検出誤差の成分を排除した時系列データを得ることができる。したがって、平滑化後の時系列データに基づいて、より適切な補正値を算出できる。

印刷装置の構成を示した図である。ベルトコンベアの部分斜視図である。ヘッドの下面図である。制御部と印刷装置内の各部との接続を示したブロック図である。印刷処理の流れを示したフローチャートである。搬送誤差の検出の様子を概念的に示した図である。平滑化前の時系列データの例を示したグラフである。平滑化後の時系列データの例を示したグラフである。１つの行の錠剤に対する本印刷処理の流れを示したフローチャートである。

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。

＜１．印刷装置の全体構成＞
図１は、本発明の一実施形態に係る印刷装置１の構成を示した図である。この印刷装置１は、粒状物である複数の錠剤９を搬送しながら、各錠剤９の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。図１に示すように、本実施形態の印刷装置１は、ベルトコンベア１０、印刷部２０、第１画像取得部３０、第２画像取得部４０、および制御部５０を備えている。

ベルトコンベア１０は、複数の錠剤９を整列保持しつつ搬送する機構である。ベルトコンベア１０は、一対のプーリ１１と、一対のプーリ１１の間に掛け渡された環状の搬送ベルト１２とを有する。印刷装置１に投入された複数の錠剤９は、振動フィーダや搬送ドラム等により構成される搬入機構６０によって、等間隔に整列されるとともに、搬送ベルト１２の表面に供給される。一対のプーリ１１の一方は、搬送用モータ１３から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト１２が、図１中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ１１の他方は、搬送ベルト１２の回動に伴い従動回転する。

図２は、ベルトコンベア１０の部分斜視図である。図２に示すように、搬送ベルト１２には、複数の吸着孔１４が設けられている。複数の吸着孔１４は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図１に示すように、ベルトコンベア１０は、搬送ベルト１２の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構１５を有する。吸引機構１５を動作させると、搬送ベルト１２の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤９は、この負圧によって、吸着孔１４に吸着保持される。

このように、複数の錠剤９は、搬送ベルト１２の表面に、搬送方向および幅方向に整列した状態で保持される。そして、ベルトコンベア１０は、搬送ベルト１２を回動させることによって、複数の錠剤９を搬送方向に搬送する。後述する４つのヘッド２１の下方では、複数の錠剤９は、水平方向に搬送される。

また、図１に示すように、印刷装置１は、ベルトコンベア１０の下方に、不良品排出部７１および良品排出部７２を有する。不良品排出部７１および良品排出部７２は、第１画像取得部３０、印刷部２０、および第２画像取得部４０よりも、搬送経路の下流側に位置する。

不良品排出部７１は、搬送ベルト１２の内側に配置された不良品ブロー機構７１１と、不良品ブロー機構７１１から搬送ベルト１２をはさんで下方に配置された不良品回収部７１２とを有する。不良品ブロー機構７１１は、搬送ベルト１２の複数の吸着孔１４のうち、不良品と判断された錠剤９を保持する吸着孔１４のみに、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔１４が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔１４における錠剤９の吸着が解除され、搬送ベルト１２から不良品回収部７１２へ、不良品と判断された錠剤９が落下する。

良品排出部７２は、不良品排出部７１よりも搬送経路の下流側に配置される。良品排出部７２は、搬送ベルト１２の内側に配置された良品ブロー機構７２１と、良品ブロー機構７２１から搬送ベルト１２をはさんで下方に配置された良品回収部７２２とを有する。良品ブロー機構７２１は、搬送ベルト１２の複数の吸着孔１４へ向けて、気体を吹き付ける。そうすると、当該吸着孔１４が、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔１４における錠剤９の吸着が解除され、搬送ベルト１２から良品回収部７２２へ、良品と判断された錠剤９が落下する。

印刷部２０は、ベルトコンベア１０の搬送経路上の印刷位置Ｐ０において、錠剤９の表面に、インクジェット方式で画像を印刷する処理部である。図１に示すように、本実施形態の印刷部２０は、４つのヘッド２１を有する。４つのヘッド２１は、搬送ベルト１２の上方に位置し、錠剤９の搬送方向に沿って、一列に配置されている。４つのヘッド２１は、錠剤９の表面に向けて、互いに異なる色（例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色）のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤９の表面に、多色画像が記録される。なお、各ヘッド２１から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。

図３は、１つのヘッド２１の下面図である。図３には、搬送ベルト１２と、搬送ベルト１２に保持された複数の錠剤９とが、二点鎖線で示されている。図３中に拡大して示したように、ヘッド２１の下面である吐出面２１０には、インク滴を吐出可能な複数のノズル２１１が設けられている。本実施形態では、ヘッド２１の下面に、複数のノズル２１１が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各ノズル２１１は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のノズル２１１を二次元的に配置すれば、各ノズル２１１の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のノズル２１１は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。

ノズル２１１からのインク滴の吐出方式には、例えば、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、ノズル２１１内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してノズル２１１内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル方式であってもよい。

第１画像取得部３０は、印刷前の錠剤９の画像（以下「印刷前画像」と称する）を取得する部位である。第１画像取得部３０は、搬入機構６０よりも搬送経路の下流側かつ印刷位置Ｐ０よりも搬送経路の上流側の第１撮像位置Ｐ１において、搬送ベルト１２により搬送される複数の錠剤９を、上方から撮影する。第１画像取得部３０には、例えば、ＣＣＤやＣＭＯＳ等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。撮影により取得された画像は、第１画像取得部３０から後述する制御部５０へ送信される。制御部５０は、第１画像取得部３０から得られた画像に基づいて、各吸着孔１４における錠剤９の有無、錠剤９の位置、錠剤９の姿勢、および錠剤９に欠け等の欠陥が無いかどうか等を検査する。

第２画像取得部４０は、印刷後の錠剤９の画像（以下「印刷後画像」と称する）を取得する部位である。第２画像取得部４０は、印刷位置Ｐ０よりも搬送経路の下流側かつ不良品排出部７１よりも搬送経路の上流側の第２撮像位置Ｐ２において、搬送ベルト１２により搬送される複数の錠剤９を、上方から撮影する。第２画像取得部４０には、例えば、ＣＣＤやＣＭＯＳ等の撮像素子が幅方向に配列されたラインセンサが用いられる。撮影により取得された画像は、第２画像取得部４０から後述する制御部５０へ送信される。制御部５０は、第２画像取得部４０から得られた画像に基づいて、錠剤９の表面に形成された印刷画像の良否を検査する。

制御部５０は、印刷装置１内の各部を動作制御するための手段である。図４は、制御部５０と、印刷装置１内の各部との接続を示したブロック図である。図４中に概念的に示したように、制御部５０は、ＣＰＵ等のプロセッサ５１、ＲＡＭ等のメモリ５２、およびハードディスクドライブ等の記憶部５３を有するコンピュータにより構成される。記憶部５３内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラム５３１が、インストールされている。

また、図４に示すように、制御部５０は、上述したベルトコンベア１０（搬送用モータ１３、吸引機構１５を含む）、印刷部２０（４つのヘッド２１を含む）、第１画像取得部３０、第２画像取得部４０、搬入機構６０、不良品ブロー機構７１１、および良品ブロー機構７２１と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部５０は、記憶部５３に記憶されたコンピュータプログラム５３１やデータをメモリ５２に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラム５３１に基づいて、プロセッサ５１が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤９に対する印刷処理が進行する。

また、図４に示すように、制御部５０は、表示部５４および入力部５５を有する。表示部５４は、印刷装置１の動作に関する種々の情報を画面上に表示する。表示部５４には、例えば、液晶ディスプレイや、有機ＥＬディスプレイが用いられる。入力部５５は、ユーザの操作入力を受け付ける。入力部５５には、例えば、キーボードやマウスが用いられる。印刷装置１のユーザは、表示部５４の画面を確認しながら、入力部５５を操作することにより、制御部５０へ種々の情報を入力することができる。

なお、表示部５４の機能と、入力部５５の機能とが、タッチパネルディスプレイなどの単一のデバイスにより実現されていてもよい。

＜２．印刷処理について＞
続いて、上述した印刷装置１における印刷処理について、説明する。なお、以下では、搬送ベルト１２の複数の吸着孔１４の幅方向の一並びを「行」と称する。図２に示すように、搬送ベルト１２は、１行あたり数個（図２の例では６つ）の吸着孔１４を有し、このような吸着孔１４の行が、搬送方向に複数配列されている。

図５は、印刷装置１における印刷処理の流れを示したフローチャートである。

この印刷装置１では、まず、ユーザが、入力部５５を操作して、ベルトコンベア１０の搬送誤差の周期Ｒｔと、後述する移動平均の算出範囲Ｒｍとを、制御部５０へ入力する（ステップＳ１）。

ステップＳ１では、ユーザは、例えば、搬送ベルト１２の回動の周期、またはプーリ１１の回転の周期を、ベルトコンベア１０の搬送誤差の周期Ｒｔとして入力する。より具体的には、ユーザは、搬送ベルト１２が１周回動する間に、第２撮像位置Ｐ２を通過する吸着孔１４の行数、または、プーリ１１が１回転する間に、第２撮像位置Ｐ２を通過する吸着孔１４の行数を、周期Ｒｔとして入力する。ただし、ベルトコンベア１０の搬送誤差が、他の周期で発生することが分かっている場合は、その既知の周期に相当する行数を、周期Ｒｔとして入力してもよい。また、ユーザは、移動平均の算出範囲Ｒｍとして、周期Ｒｔよりも十分に小さい行数（例えば、周期Ｒｔの１／４倍よりも小さい行数）を入力する。制御部５０は、入力された周期Ｒｔおよび算出範囲Ｒｍを記憶部５３に記憶させる。

周期Ｒｔおよび算出範囲Ｒｍの入力が完了すると、制御部５０は、印刷装置１の各部を動作制御することにより、初期データ取得処理を実行する（ステップＳ２）。この初期データ取得処理では、複数の錠剤９をベルトコンベア１０により搬送しつつ、印刷部２０による印刷処理を実行する。そして、第２画像取得部４０により取得される印刷後画像に基づいて、制御部５０が、ベルトコンベア１０の搬送誤差を検出する。

図６は、搬送誤差の検出の様子を概念的に示した図である。図６のように、制御部５０は、印刷後画像における錠剤９の重心位置Ｇ１と、錠剤９に印刷された画像の重心位置Ｇ２との差分ｄ（ｄｘ，ｄｙ）を、搬送誤差として検出する。差分ｄには、搬送方向の差分ｄｘと、幅方向の差分ｄｙとが含まれる。ただし、制御部５０は、搬送方向の差分ｄｘと幅方向の差分ｄｙとを、それぞれ所定の計算式に代入するなどして、各方向の搬送誤差を算出してもよい。制御部５０は、検出された搬送誤差を記憶部５３に記憶させる。

制御部５０は、１行分の搬送誤差の検出（ステップＳ２１）が完了すると、ステップＳ１で入力された１周期Ｒｔの行数分の搬送誤差のデータを取得できたか否かを判定する（ステップＳ２２）。そして、まだ１周期Ｒｔの行数分の搬送誤差のデータを取得できていない場合には（ステップＳ２２：Ｎｏ）、ステップＳ２１に戻り、引き続き、次の１行分の搬送誤差の検出を行う。

やがて、１周期Ｒｔの行数分の搬送誤差のデータの取得が完了すると（ステップＳ２２：Ｙｅｓ）、制御部５０の記憶部５３には、１周期Ｒｔ分の搬送誤差の時系列データが蓄積される。図７は、時系列データの例を示したグラフである。図７の横軸は行数であり、縦軸は搬送誤差である。なお、図７では、周期性の理解のために、数周期分の時系列データを示している。

図７のように、搬送誤差の時系列データＤ１は、全体として周期的に変化している。しかしながら、この時点では、搬送誤差の時系列データＤ１に、検出誤差などの要因による短周期の変動（高周波成分）が含まれる。制御部５０は、この短周期の変動を除去するために、時系列データＤ１を、移動平均により平滑化する（ステップＳ３）。具体的には、時系列データＤ１の各行の搬送誤差を、その行を含む算出範囲Ｒｍの搬送誤差の平均値に置き換える。算出範囲Ｒｍには、ステップＳ１で入力された行数が適用される。また、算出範囲Ｒｍは、算出対象となる行を先頭とする複数行の範囲としてもよく、あるいは、算出対象となる行の前後に亘る複数行の範囲としてもよい。この移動平均の処理により、図８に示すように、平滑化された時系列データＤ２が得られる。

続いて、制御部５０は、印刷データを補正するための補正値を設定する（ステップＳ４）。ここでは、制御部５０は、平滑化された時系列データＤ２を参照し、行ごとに、搬送誤差を打ち消す方向の補正値を設定する。例えば、搬送誤差が（ｄｘ，ｄｙ）の場合、補正値は（－ｄｘ，－ｄｙ）とすればよい。ただし、各行の搬送誤差を、より複雑な計算式に代入して、補正値を算出してもよい。制御部５０は、算出された１周期Ｒｔ分の補正値を、記憶部５３に記憶させる。

その後、制御部５０は、印刷データの座標を補正値に従って補正しながら、後続の複数の錠剤９に対する印刷処理（本印刷処理）を行う（ステップＳ５）。図９は、１つの行の錠剤９に対する本印刷処理の流れを示したフローチャートである。

図９に示すように、本印刷処理では、まず、第１画像取得部３０が、印刷前の錠剤９を撮影して、印刷前画像を取得する（ステップＳ５１）。取得された印刷前画像は、第１画像取得部３０から制御部５０へ送信される。続いて、制御部５０は、受信した印刷前画像に対応する行の補正値を、記憶部５３から読み出す（ステップＳ５２）。ここで、「対応する行」とは、周期Ｒｔにおける同位相の行を意味する。すなわち、制御部５０は、１周期分の時系列データＤ２から算出された１周期分の補正値を、それぞれ、周期Ｒｔの整数倍後の行の印刷を行うときに読み出す。

続いて、制御部５０は、印刷前画像と、記憶部５３から読み出された補正値とに基づいて、その行の印刷データの座標を補正する（ステップＳ５３）。具体的には、まず、印刷前画像に基づいて、搬送される錠剤９の位置および回転角度を検出する。そして、その錠剤９に対して印刷すべき印刷データの座標を、検出された位置および回転角度に応じて、移動および回転させる。その後、制御部５０は、上述した補正値に従って、印刷データの座標を更にずらす。本実施形態では、補正値は、搬送方向の成分と幅方向の成分とを有する。このため、補正値による座標の補正は、搬送方向および幅方向の２方向に対して行われる。

その後、制御部５０は、補正後の印刷データに基づいて、印刷部２０のヘッド２１に、インクの吐出を実行させる（ステップＳ５４）。

以上のように、この印刷装置１では、ベルトコンベア１０の搬送誤差を検出し、その搬送誤差から算出される補正値に基づいて、印刷データの座標を補正する。これにより、ベルトコンベア１０の搬送誤差を考慮した適正な位置に、印刷を行うことができる。その結果、各錠剤９に対する印刷の位置ずれを低減できる。

特に、本実施形態の印刷装置１では、本印刷処理を行う前に、１周期分の搬送誤差の時系列データを取得する。このように、少なくとも１周期分の搬送誤差を事前に取得することにより、その後の各錠剤９に対する印刷データの座標補正を、適切に行うことができる。

また、本実施形態の印刷装置１では、取得した搬送誤差の時系列データを、移動平均により平滑化する。これにより、検出誤差の成分を排除した時系列データを得ることができる。したがって、より適切な補正値を算出できる。

＜３．変形例＞
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。

上記の実施形態では、ステップＳ２の初期データ取得処理において、１周期分の搬送誤差を取得した。しかしながら、この初期データ取得処理において、１周期よりも長い期間の搬送誤差を取得してもよい。例えば、初期データ取得処理において、２周期分の搬送誤差を取得してもよい。そして、ステップＳ４において、１周期目の時系列データと２周期目の時系列データとの平均値に基づいて、より精度の高い補正値を算出してもよい。

また、上記の実施形態では、ステップＳ５の本印刷処理よりも前に、補正値の設定を完了していた。しかしながら、本印刷処理の実行中にも、さらに搬送誤差の時系列データを取得して、補正値を逐次更新してもよい。その場合、本印刷処理を行いながら、第２画像取得部４０から取得される印刷後画像に基づいて、ベルトコンベア１０の搬送誤差の時系列データを更新する。そして、更新された時系列データに基づいて算出される補正値を使って、その後の本印刷処理における印刷データの座標補正を行えばよい。

また、上記の実施形態では、ステップＳ３において、搬送誤差の時系列データを、移動平均により平滑化していた。しかしながら、移動平均とは異なる方法で、時系列データを平滑化してもよい。例えば、搬送誤差の時系列データを、ローパスフィルタにより平滑化してもよい。

また、上記の実施形態では、ステップＳ２において、ベルトコンベア１０の搬送方向および幅方向の２方向の搬送誤差を検出し、ステップＳ５においても、印刷データの座標を、搬送方向および幅方向の２方向において補正していた。しかしながら、ステップＳ２において、搬送方向および幅方向のいずれか１方向の搬送誤差のみを検出してもよい。例えば、搬送方向の搬送誤差が無視できる程度に小さい場合には、ステップＳ２において、幅方向の搬送誤差のみを検出し、ステップＳ５において、印刷データの座標を、幅方向にのみ補正してもよい。

また、印刷装置１は、上記の実施形態の構成に加えて、錠剤９に付着したインクを乾燥させる乾燥機構を有していてもよい。乾燥機構は、印刷部２０よりも搬送方向の下流側、かつ、不良品排出部７１よりも搬送方向の上流側に設けるとよい。乾燥機構には、例えば、搬送ベルト１２により搬送される錠剤９に向けて熱風を吹き付ける機構とすればよい。

また、上記の実施形態では、印刷部２０に、４つのヘッド２１が設けられていた。しかしながら、印刷部２０に含まれるヘッド２１の数は、１～３つであってもよく、５つ以上であってもよい。

また、本発明において処理対象となる「粒状物」は、必ずしも医薬品としての錠剤には限定されない。本発明の印刷装置および印刷方法は、健康食品としての錠剤や、ラムネ等の錠菓に対して、印刷を行うものであってもよい。

その他、印刷装置および印刷方法の細部については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変更を加えることが可能である。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。

１印刷装置
９錠剤
１０ベルトコンベア
１１プーリ
１２搬送ベルト
１３搬送用モータ
１４吸着孔
１５吸引機構
２０印刷部
２１ヘッド
３０第１画像取得部
４０第２画像取得部
５０制御部
Ｄ１，Ｄ２時系列データ
Ｇ１，Ｇ２重心位置
Ｐ０印刷位置
Ｐ１第１撮像位置
Ｐ２第２撮像位置

Claims

ベルトコンベアにより複数の粒状物を整列保持しつつ搬送しながら、搬送経路上の印刷位置において、前記粒状物の表面に印刷を行う印刷方法であって、
ａ）前記印刷位置よりも前記搬送経路の下流側において、印刷後の前記粒状物の画像である印刷後画像を取得し、印刷前の前記粒状物の画像を用いずに前記印刷後画像に基づいて前記ベルトコンベアの搬送誤差を検出する工程と、
ｂ）前記工程ａ）よりも後に、前記印刷位置よりも前記搬送経路の上流側において、印刷前の前記粒状物の画像である印刷前画像を取得する工程と、
ｃ）前記工程ｂ）により取得された印刷前画像と、前記工程ａ）により検出された搬送誤差から算出される補正値とに基づいて、印刷データの座標を補正して、前記印刷位置における印刷を行う工程と、
を有し、
前記方法は、
前記工程ａ）よりも前に、
前記ベルトコンベアの前記搬送誤差の周期を記憶する工程
をさらに有し、
前記工程ａ）では、少なくとも前記周期よりも長い期間、前記搬送誤差を検出して、前記搬送誤差の時系列データを取得する、印刷方法。
請求項１に記載の印刷方法であって、
前記工程ｃ）では、前記時系列データに含まれる搬送誤差から算出される少なくとも１周期分の補正値に基づいて、前記周期の整数倍後に相当する前記印刷データの座標を補正する、印刷方法。
請求項１または請求項２に記載の印刷方法であって、
前記工程ａ）では、前記時系列データを移動平均により平滑化し、
前記工程ｃ）では、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する、印刷方法。
請求項１または請求項２に記載の印刷方法であって、
前記工程ａ）では、前記時系列データをローパスフィルタにより平滑化し、
前記工程ｃ）では、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する、印刷方法。
請求項１から請求項４までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、
前記ベルトコンベアは、
一対のプーリと、
前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、
を有し、
前記周期は、前記搬送ベルトの回動の周期である、印刷方法。
請求項１から請求項４までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、
前記ベルトコンベアは、
一対のプーリと、
前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、
を有し、
前記周期は、前記プーリの回転の周期である、印刷方法。
請求項１から請求項６までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、
前記工程ａ）では、前記印刷後画像における前記粒状物の重心位置と、前記印刷後画像における前記粒状物に印刷された画像の重心位置との差分に基づいて、前記搬送誤差を検出する、印刷方法。
請求項１から請求項７までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、
前記搬送誤差は、前記ベルトコンベアの搬送方向および幅方向少なくともいずれかの搬送誤差を含む、印刷方法。
請求項１から請求項８までのいずれか１項に記載の印刷方法であって、
前記粒状物は錠剤である、印刷方法。
粒状物の表面に印刷を行う印刷装置であって、
複数の前記粒状物を整列保持しつつ搬送するベルトコンベアと、
前記ベルトコンベアの搬送経路上の印刷位置において、前記粒状物に対して印刷を行うヘッドと、
前記印刷位置よりも前記搬送経路の上流側において、印刷前の前記粒状物の画像である印刷前画像を取得する第１画像取得部と、
前記印刷位置よりも前記搬送経路の下流側において、印刷後の前記粒状物の画像である印刷後画像を取得する第２画像取得部と、
前記ヘッド、前記第１画像取得部、および前記第２画像取得部と接続された制御部と、
を備え、
前記制御部は、
ａ）前記印刷前画像を用いずに前記印刷後画像に基づいて、前記ベルトコンベアの搬送誤差を検出する処理と、
ｂ）前記処理ａ）の後に取得される前記印刷前画像と、前記搬送誤差から算出される補正値とに基づいて、印刷データの座標を補正して、前記ヘッドに印刷を実行させる処理と、
を実行し、
前記制御部は、
前記ベルトコンベアの前記搬送誤差の周期を記憶する記憶部
を有し、
前記処理ａ）において、少なくとも前記周期よりも長い期間、前記搬送誤差を検出して、前記搬送誤差の時系列データを前記記憶部に記憶する、印刷装置。
請求項１０に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記処理ｂ）において、前記時系列データに含まれる搬送誤差から算出される少なくとも１周期分の補正値に基づいて、前記周期の整数倍後に相当する前記印刷データの座標を補正する、印刷装置。
請求項１０または請求項１１に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記処理ａ）において、前記時系列データを移動平均により平滑化し、
前記処理ｂ）において、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する、印刷装置。
請求項１０または請求項１１に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記処理ａ）において、前記時系列データをローパスフィルタにより平滑化し、
前記処理ｂ）において、前記平滑化後の時系列データに含まれる搬送誤差から算出される補正値に基づいて、前記印刷データの座標を補正する、印刷装置。
請求項１０から請求項１３までのいずれか１項に記載の印刷装置であって、
前記ベルトコンベアは、
一対のプーリと、
前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、
を有し、
前記周期は、前記搬送ベルトの回動の周期である、印刷装置。
請求項１０から請求項１３までのいずれか１項に記載の印刷装置であって、
前記ベルトコンベアは、
一対のプーリと、
前記一対のプーリに掛け渡された環状の搬送ベルトと、
を有し、
前記周期は、前記プーリの回転の周期である、印刷装置。
請求項１０から請求項１５までのいずれか１項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記処理ａ）において、前記印刷後画像における前記粒状物の重心位置と、前記印刷後画像における前記粒状物に印刷された画像の重心位置との差分に基づいて、前記搬送誤差を検出する、印刷装置。
請求項１０から請求項１６までのいずれか１項に記載の印刷装置であって、
前記搬送誤差は、前記ベルトコンベアの搬送方向および幅方向少なくともいずれかの搬送誤差を含む、印刷装置。
請求項１０から請求項１７までのいずれか１項に記載の印刷装置であって、
前記粒状物は錠剤である、印刷装置。