JP7415270B2 - 調光装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、調光装置の製造方法に関する。
従来、窓等の透光部材と組み合わせて用いられ、外来光の透過を制御する電子ブラインド等に利用可能な調光部材や、このような調光部材を用いた調光装置等が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような調光部材の1つに、液晶層を備える液晶フィルムが知られている。この液晶フィルムは、透明電極を含む透明な樹脂製の基材により液晶材料を挟持し、これをさらに直線偏光板により挟持する等して作成される。そして、液晶フィルムは、透明電極間に印加する電界を変化させることにより液晶の配向を変化させ、外来光の透過量を制御することができる。
特許第6135816号公報 特開2017-187810号公報
このような液晶フィルムを自動車のルーフウィンドウ、サイドウィンドウ等に利用可能な調光部材とする場合には、液晶フィルムを、中間膜を介して一対のガラスで挟み、合わせガラスとすることが好適である。しかしながら、液晶フィルムを挟み込んだ合わせガラスでは、各部材を一体に圧着する際にその表面にかかる圧力が均一でない場合や、使用するガラスや中間膜の形状が上下で一致しない場合、中間膜や液晶フィルムにシワが生じた場合等、液晶の不均一な分布により、局所的に液晶が多く存在する現象である液晶だまりが生じやすく、調光機能を有する合わせガラスとしての品質や外観が低下するという問題がある。
本実施の形態は、面内で液晶を均一に分散させ、局所的に液晶が多く存在する現象である液晶だまりの発生を抑制することが可能な、調光装置の製造方法を提供する。
本実施の形態による調光装置の製造方法は、第1透明基板と、第1中間体と、フィルムと、調光セルと、第2中間体と、第2透明基板とを有する積層体を作製する工程と、前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を脱気しつつ第1温度で加熱する工程と、前記積層体を前記真空バッグから取り出すとともに、前記積層体を加圧しつつ第2温度で加熱する工程と、を備え、前記第1温度は、前記第2温度よりも低い、調光装置の製造方法である。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記積層体を脱気しつつ第1温度で加熱する工程において、前記積層体は、-100kPa以上-10kPa以下の真空度で脱気され、前記第1温度は、50℃以上90℃以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記積層体を加圧しつつ第2温度で加熱する工程において、前記積層体は、0.1MPa以上1.3MPa以下で加圧され、前記第2温度は、90℃以上140℃以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法は、第1透明基板と、第1中間体と、フィルムと、調光セルと、第2中間体と、第2透明基板とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を第1真空度で脱気しつつ第1温度で加熱する工程と、前記積層体を前記真空バッグ中に配置し、前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程と、を備え、前記第2真空度は、前記第1真空度よりも低い、調光装置の製造方法である。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記第1真空度は、-100kPa以上-10kPa以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記第2真空度は、-10kPa以上-1kPa以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記第2温度は、前記第1温度よりも高くなっていても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記第1温度は、50℃以上90℃以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法は、第1透明基板と、第1中間体と、フィルムと、調光セルと、第2中間体と、第2透明基板とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程と、を備え、前記第2真空度は、-10kPa以上-1kPa以下である、調光装置の製造方法である。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程において、前記積層体は、0.1MPa以上0.8MPa以下で加圧され、前記第2温度は、90℃以上140℃以下であっても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法は、第1透明基板と、第1中間体と、フィルムと、調光セルと、第2中間体と、第2透明基板とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、前記連通孔を真空バッグの外方に連通させた状態で前記積層体を前記真空バッグ中に配置し、前記積層体を脱気しつつ加熱および加圧する工程と、を備えた、調光装置の製造方法である。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記積層体を脱気しつつ加熱および加圧する工程において、前記積層体は、-100kPa以上-10kPa以下の真空度で脱気され、前記積層体は、90℃以上140℃以下に加熱されるとともに、0.1MPa以上1.3MPa以下で加圧されても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記調光セルの一部と前記フィルムの一部とによって延長部が形成され、前記延長部は、平面視で前記第1透明基板及び前記第2透明基板の外方に延び、前記連通孔は、前記延長部に形成されていても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記連通孔を密封する工程を更に備えていても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記第1中間体は、ポリビニルブチラールを含んでいても良い。
本実施の形態による調光装置の製造方法において、前記調光セルと前記フィルムとの間に、スペーサーが配置されていても良い。
本開示の実施の形態によれば、面内で液晶を均一に分散させ、局所的に液晶が多く存在する現象である液晶だまりの発生を抑制することができる。
図1は、第1の実施の形態による調光装置を示す斜視図である。 図2は、第1の実施の形態による調光装置を示す断面図である。 図3は、第1の実施の形態による調光装置を示す分解斜視図である。 図4(a)-(d)は、第1の実施の形態による調光セルの製造方法を示す断面図である。 図5(a)-(c)は、第1の実施の形態による調光セルの製造方法を示す断面図である。 図6(a)-(d)は、第1の実施の形態による調光装置の製造方法を示す断面図である。 図7(a)-(c)は、調光装置の作製後、調光セルの液晶だまりが解消する際の作用を示す断面図である。 図8は、第1の実施の形態による調光装置の第1変形例を示す断面図である。 図9は、第1の実施の形態による調光装置の第2変形例を示す断面図である。 図10は、第1の実施の形態による調光装置の第3変形例を示す断面図である。 図11は、第1の実施の形態による調光装置の第3変形例を示す分解斜視図である。 図12は、第1の実施の形態による調光装置の第4変形例を示す分解斜視図である。 図13は、第1の実施の形態による調光装置の第5変形例を示す断面図である。 図14は、第1の実施の形態による調光装置の第5変形例を示す分解斜視図である。 図15は、第1の実施の形態による調光装置の第6変形例を示す分解斜視図である。 図16は、第1の実施の形態による調光装置の第7変形例を示す分解斜視図である。 図17は、第1の実施の形態による調光装置の第8変形例を示す分解斜視図である。 図18は、第1の実施の形態による調光装置の第9変形例を示す分解斜視図である。 図19は、第1の実施の形態による調光装置の第10変形例を示す分解斜視図である。 図20は、第1の実施の形態による調光装置の第11変形例を示す分解斜視図である。 図21は、第1の実施の形態による調光装置の第12変形例を示す分解斜視図である。 図22(a)-(d)は、第2の実施の形態による調光装置の製造方法を示す断面図である。 図23は、第2の実施の形態による調光装置の第1変形例を示す断面図である。 図24は、第2の実施の形態による調光装置の第2変形例を示す断面図である。 図25(a)-(c)は、第3の実施の形態による調光装置の製造方法を示す断面図である。
(第1の実施の形態)
以下、図1乃至図7を参照して一実施の形態について説明する。
以下に説明する調光装置10は、光の透過率の調整が求められる様々な技術分野に応用可能であり、適用範囲は特に限定されない。調光装置10は、例えば、建築物の窓ガラスや、ショーケース、屋内の透明パーテーション、車両のウインドウ等の調光を図る部位(外光が入射する部位、例えば、フロントや、サイド、リア、ルーフ等のウインドウ)に配置され、建築物や車両等の内側への入射光の光量を制御することができる。
なお以下に説明する調光装置10は、一実施の形態を例示しているに過ぎない。したがって例えば、調光装置10の構成要素として以下に挙げられている要素の一部が、他の要素に置換されてもよいし、含まれていなくてもよい。また以下に挙げられていない要素が、調光装置10の構成要素として含まれていてもよい。また図面中には、図示と理解のしやすさの便宜上、縮尺及び寸法比等を、実物のそれらから適宜変更又は誇張されている部分がある。
(調光装置)
図1は、本実施の形態による調光装置(合わせガラス)10を示す図である。本実施の形態による調光装置10は、その表面形状が曲面形状を有する3次元形状により構成されており、図1では、一例として、調光装置10が一方の面側に凸となる形状を有している。なお、調光装置10は、これに限らず、例えば、表面形状が平面状(すなわち、平板状)としてもよいし、その表面形状が曲面形状を有する2次元形状(例えば、円筒の一部を構成する形状)等としてもよい。ここで、3次元形状とは、単純な円筒面ではなく、平面を伸縮なしに変形させるだけでは構成できない曲面であり、単一の軸を中心として2次元的に曲がった2次元形状(2次元曲面)、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で2次元的に曲がった2次元形状(2次元曲面)とは区別されるものである。すなわち、3次元形状とは、互いに対して傾斜した複数の軸の各々を中心として、部分的に又は全体的に曲がっている面による形状である。また本明細書中、平面視とは、調光装置10の主たる面に対して垂直な方向から見た状態をいう。
図1に示すように、本実施の形態による調光装置10は、第1ガラス板(第1透明基板)11と、第1中間膜(第1中間体)13と、フィルム33と、調光セル20と、第2中間膜(第2中間体)14と、第2ガラス板(第2透明基板)12とを備えている。第1ガラス板11と、第1中間膜13と、フィルム33と、調光セル20と、第2中間膜14と、第2ガラス板12とは、この順番で積層配置されている。また、フィルム33と調光セル20との間に空隙層Gが設けられている。
図2は、本実施の形態による調光装置10の層構成を示す断面図であり、図3は、本実施の形態による調光装置10の層構成を示す分解斜視図である。なお、本実施の形態の調光装置10は、3次元形状の表面形状を有しているが、図2及び図3では、理解を容易にするために、調光装置10の表面形状が平面状である場合の図を示している。
図2に示すように、調光装置10は、第1ガラス板11と、第2ガラス板12と、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に配置された調光セル20とを備えている。調光セル20は、第1基材24と第1透明電極25と第1配向層26とを含む第1積層体21と、第2基材27と第2透明電極28と第2配向層29とを含む第2積層体22と、第1積層体21と第2積層体22との間に配置された液晶層23とを備えている。
第1ガラス板(第1透明基板)11及び第2ガラス板(第2透明基板)12は、それぞれ、調光装置10の表裏面に配置され、高い透光性を有する板ガラスである。第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、その表面形状が曲面形状を有する3次元形状であり、一方の面側に凸となる曲面形状を有する形状に予め形成されている(図1参照)。この場合、第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、第2ガラス板12側に対して第1ガラス板11側が凸状になるように形成されているが、これに限らず、第1ガラス板11側に対して第2ガラス板12側が凸状になるように形成されていても良い。また、本実施の形態では、第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、厚さが0.5mm以上4mm以下であり、一例として、いずれも厚さ2mmの板ガラスを用いている。第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、無機ガラスでも良く、樹脂ガラスでも良い。樹脂ガラスとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリル等を用いることができる。第1ガラス板11及び第2ガラス板12として無機ガラスを用いた場合、耐熱性、耐傷性に優れた調光装置10とすることができる。他方、第1ガラス板11及び第2ガラス板12として樹脂ガラスを用いた場合、調光装置10を軽量化することができる。さらに、第1ガラス板11及び第2ガラス板12には、必要に応じて、ハードコート等の表面処理がなされても良い。なお、第1ガラス板11及び第2ガラス板12に代えて、それぞれ透明な樹脂基材を用いても良い。
第1中間膜13は、第1ガラス板11とフィルム33とを接合させる部材である。同様に、第2中間膜14は、第2ガラス板12と調光セル20とを接合させる部材である。第1中間膜13及び第2中間膜14は、それぞれPVB(ポリビニルブチラール)を含んでいてもよく、本実施の形態では、第1中間膜13及び第2中間膜14は、それぞれPVB(ポリビニルブチラール)樹脂製のシートを用いている。なお、第1中間膜13及び第2中間膜14の素材としては、上記PVBに限らす、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)、COP(シクロオレフィンポリマー)等を用いてもよい。また、第1中間膜13及び第2中間膜14の厚さに関しても、その材料等に応じて適宜選択してよい。具体的には、第1中間膜13及び第2中間膜14の厚さは、300μm以上2.5mm以下としても良く、一例として厚さ760μmのものが用いられる。また、第1中間膜13及び第2中間膜14の大きさは、第1ガラス板11及び第2ガラス板12と同一の大きさであっても良く、第1ガラス板11及び第2ガラス板12よりも大きくてもよい。
また、図2及び図3に示すように、第1中間膜13及び第2中間膜14は、額縁中間膜16により互いに接続されている。額縁中間膜16は、平面視で額縁形状の中間膜であり、より具体的にはロ字形状(中央がくり抜かれた四角形形状)、またはロ字形状の一部を切断した形状を有する中間膜である。額縁中間膜16は、第1中間膜13及び第2中間膜14と同一の材料から構成されても良い。額縁中間膜16を設けることにより、調光セル20の側面又はその一部が調光装置10の側面に露出するのを防ぎ、また、調光装置10の側面からの水分等の侵入を抑止し、調光装置10の遮水性をより高めることができる。
具体的には、額縁中間膜16は、(平面視で)第1中間膜13及び第2中間膜14が調光セル20よりも大きい場合に、断面視において、調光セル20の厚み部分に形成される中間膜である。この額縁中間膜16は、平面視において調光セル20の周囲を取り囲むように形成され、第1中間膜13及び第2中間膜14の形状から調光セル20の形状をくり抜いた額縁状の中間膜である。この場合、第1中間膜13と第2中間膜14との間であって、調光セル20の周囲に相当する部分に、額縁中間膜16が形成されている。また第1中間膜13と第2中間膜14との間であって、フィルム33及び空隙層Gの周囲に相当する部分にも、額縁中間膜16が形成されている。
額縁中間膜16の外周は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外周と同一の大きさであっても良く、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外周よりも大きくても良い。また、額縁中間膜16の内周は、調光セル20の外周と同一の大きさであっても良く、調光セル20の外周よりも大きくても良い。また、額縁中間膜16の内周は、フィルム33の外周と同一の大きさであっても良く、フィルム33の外周よりも大きくても良い。なお、額縁中間膜16の幅W1(図3参照)は、0mm以上10mm以下程度とすることが好ましく、0mm超かつガラス幅の1/4以下程度とすることがより好ましい。あるいは、調光セル20の側面又はその一部が調光装置10の側面から露出しなければ、額縁中間膜16がなくてもよい。
調光セル20(調光フィルム、液晶フィルム)は、印加電圧を変化させることにより透過光の光量を制御することができるフィルムである。調光セル20は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に挟持されるように配置されている。この調光セル20は、二色性色素を使用したゲストホスト型の液晶層を有しており、液晶に印加する電界により透過光量を変化させる部材である。調光セル20は、フィルム状の第1積層体21と、フィルム状の第2積層体22と、第1積層体21と第2積層体22との間に配置された液晶層23とを備えている。
図2に示すように、第1積層体21は、第1基材24と、第1透明電極25と、第1配向層26とを積層して形成される。すなわち、第1中間膜13側から、第1基材24と、第1透明電極25と、第1配向層26とがこの順番で積層配置されている。また第2積層体22は、第2基材27と、第2透明電極28と、第2配向層29とを積層して形成される。すなわち、第2中間膜14側から、第2基材27と、第2透明電極28と、第2配向層29とがこの順番で積層配置されている。
さらに、第1積層体21と第2積層体22との間には、複数のビーズスペーサー31が配置されている。液晶層23は、第1積層体21及び第2積層体22の間において、複数のビーズスペーサー31の間に充填配置されている。複数のビーズスペーサー31は、それぞれ不規則的又は規則的に配置されていても良い。
調光セル20は、この第1積層体21及び第2積層体22に設けられた第1透明電極25及び第2透明電極28の駆動により、液晶層23に設けられたゲストホスト液晶組成物による液晶材料の配向を変化させ、これにより透過光の光量を変化させるものである。
第1基材24及び第2基材27は、透明な樹脂製であって、可撓性を有するフィルムを適用することができる。第1基材24及び第2基材27としては、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380nm以上800nm以下)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。透明樹脂フィルムの材料としては、特に、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が好ましい。また、第1基材24及び第2基材27として用いられる透明樹脂フィルムの厚みは、その材料にもよるが、その透明樹脂フィルムが可撓性を有する範囲内で適宜選択することができる。第1基材24及び第2基材27の厚みは、それぞれ50μm以上200μm以下としても良い。本実施の形態では、第1基材24及び第2基材27の一例として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが適用される。
第1透明電極25及び第2透明電極28は、それぞれ第1基材24及び第2基材27(透明樹脂フィルム)に積層される透明導電膜から構成されている。透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
酸化錫(SnO)系としてはネサ(酸化錫SnO)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。酸化インジウム(In)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。本実施の形態では、第1透明電極25及び第2透明電極28を構成する透明導電膜は、ITOにより形成されている。
ビーズスペーサー31は、液晶層23における外周部を除く部分の厚み(セルギャップ)を規定する部材である。本実施の形態では、ビーズスペーサー31として、球形状のビーズスペーサーを用いている。ビーズスペーサー31の直径は、1μm以上20μm以下、好ましくは3μm以上15μm以下の範囲としても良い。ビーズスペーサー31は、シリカ等による無機材料による構成、有機材料による構成、これらを組み合わせたコアシェル構造の構成等を広く適用することができる。また、このビーズスペーサーは、球形状による構成の他、円柱形状、楕円柱形状、多角柱形状等のロッド形状により構成してもよい。またビーズスペーサー31は、透明部材により製造されるが、必要に応じて着色した材料を適用して色味を調整するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、ビーズスペーサー31は、第2積層体22に設けられるが、これに限定されるものでなく、第1積層体21及び第2積層体22の両方、又は、第1積層体21にのみ設けられるようにしてもよい。また、ビーズスペーサー31は必ずしも設けられていなくてもよい。または、ビーズスペーサー31に代えて、あるいはビーズスペーサー31とともに、柱状のスペーサーを用いても良い。
第1配向層26及び第2配向層29は、液晶層23に含まれる液晶分子群を所望方向に配向させるための部材である。第1配向層26及び第2配向層29は、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができ、例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等を挙げることができる。本実施の形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。
なお、光配向層に代えて、ラビング配向層を用いてもよい。ラビング配向層に関しては、ラビング処理を行わないものとしてもよいし、ラビング処理を行い、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。なお、本実施の形態では、調光セル20は、第1配向層26及び第2配向層29を備えているが、これに限らず、第1配向層26及び第2配向層29を備えない形態としてもよい。
液晶層23には、ゲストホスト液晶組成物、二色性色素組成物を広く適用することができる。ゲストホスト液晶組成物にはカイラル剤を含有させるようにして、液晶材料を水平配向させた場合に液晶層23の厚み方向に螺旋形状に配向させるようにしてもよい。また、第1積層体21と第2積層体22との間において、液晶層23を取り囲むように、平面視で環状または枠状のシール材32が配置されている。このシール材32により、第1積層体21と第2積層体22とが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材32は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
調光セル20は、この遮光時におけるゲストホスト液晶組成物の配向が電界印加時となるように、第1配向層26及び第2配向層29を、一定の方向にプレチルトに係る配向規制力を設定した垂直配向層により構成し、これによりノーマリークリアとして構成される。なお、この透光時の設定を電界印加時としてノーマリーダークとして構成してもよい。ここで、ノーマリーダークとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最小となり、黒い画面になる構造である。ノーマリークリアとは、液晶に電圧がかかっていない時に透過率が最大となり、透明となる構造である。
なお、本実施の形態の調光セル20は、ゲストホスト型の液晶層23を備える例を示したが、これに限られるものではない。調光セル20は、二色性色素組成物を用いないTN(Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane-Switching)方式等の液晶層23を備える構成としてもよい。このような液晶層23を備える場合、第1基材24及び第2基材27の表面にそれぞれ直線偏光層をさらに設けることで、調光フィルムとして機能させることができる。
本実施の形態において、調光セル20と第1中間膜13との間に、フィルム33が配置されている。このフィルム33は、調光セル20の第1基材24と第1中間膜13との間に配置されており、第1中間膜13に接合されている。フィルム33は、透明な樹脂製であって、可撓性を有する樹脂フィルムであっても良い。フィルム33としては、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380nm以上800nm以下)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。透明樹脂フィルムの材料としては、上述した第1基材24及び第2基材27に用いられる透明樹脂フィルムと同一のものを用いることができる。あるいは、フィルム33としては、赤外線(IR)反射フィルム、紫外線(UV)カットフィルムなどの機能性フィルムを用いても良い。さらに、フィルム33は、調光セル、AR(Anti-Reflection)フィルム、AG(Anti-Glare)フィルム、反射型偏光性フィルム、液晶以外の調光方式を有する調光フィルム、又は、デフロスター機能を有するフィルムであっても良い。また、フィルム33の厚みは、その材料にもよるが、例えば50μm以上250μm以下としても良く、100μm以上125μm以下とすることが好ましい。また、フィルム33の平面形状は、第1中間膜13及び第2中間膜14の平面形状よりも小さい。さらに、フィルム33の平面形状は、調光セル20全体の平面形状よりも大きくすることが好ましく、とりわけシール材32の内側に位置する液晶層23の平面形状よりも大きいことが好ましい。これにより、フィルム33が液晶層23の全体を覆うので、液晶層23の一部に局所的に液晶が多く存在する現象である液晶だまりの発生を面内全域で抑制することができる。あるいは、フィルム33の平面形状を、調光セル20のシール材32の内側(液晶層23)よりも小さくし、フィルム33が存在しない領域に液晶だまりを誘導してもよい。このようにして液晶だまりを誘導した部分(外周)は、調光装置10を車両のウィンドウ等に配置した場合に隠すことができる。また、フィルム33と調光セル20の間に、赤外線(IR)反射フィルム、紫外線(UV)カットフィルム、AR(Anti-Reflection)フィルム、AG(Anti-Glare)フィルム等の機能性フィルムを追加してもよい。この場合、機能性フィルムは、フィルム33や調光セル20に貼合わせてもよい。また、上記機能性フィルムは、第1中間膜13とフィルム33との間に追加してもよい。
さらに、調光セル20とフィルム33との間に、空隙層Gが設けられている。この空隙層Gは、調光セル20の第1基材24とフィルム33との間の空間に形成される。すなわち調光セル20の第1基材24とフィルム33とは互いに接合されることなく、厚み方向に一定の間隔を空けて配置されている。空隙層Gには、空気が充填されているが、これに限らず、窒素や不活性ガス等の気体が充填されていても良い。この空隙層Gの厚みは、例えば0μmより大きく10000μm以下であり、0.1μm以上100μm以下とすることが好ましい。空隙層Gの平面形状は、フィルム33の平面形状と略同一であっても良い。このように、調光セル20とフィルム33との間に空隙層Gが形成されることにより、後述するように、調光セル20のセルギャップ不良が減少し、液晶層23の一部に局所的に液晶が多く存在する現象である液晶だまりの発生を抑制することができる。また、調光セル20とフィルム33との間に空隙層Gが設けられることにより、調光装置10の断熱性が向上し、調光装置10を配置した車両や建物の保温性を高めることができる。また、調光装置10は、調光セル20を遮光状態にすると、調光セル20と空隙層Gの界面及びフィルム33と空隙層Gの界面での反射により、第1ガラス板11側から見ると、鏡面状に観察される。
図3に示すように、調光装置10は、調光コントローラ91に接続され、調光コントローラ91にはセンサ装置92及びユーザ操作部93が接続される。調光コントローラ91は、調光装置10の調光状態を制御し、調光装置10による光の遮断及び透過を切り換えたり、調光装置10における光の透過度を変えたりすることができる。具体的には、調光コントローラ91は、調光装置10の外部電極基板35に接続され、調光装置10の液晶層23に印加する電界を調整して液晶層23中の液晶分子の配向を変えることで、調光装置10による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。
調光コントローラ91は、任意の手法に基づいて液晶層23に印加する電界を調整できる。調光コントローラ91は、例えばセンサ装置92の測定結果やユーザ操作部93を介してユーザにより入力される指示(コマンド)に応じて、液晶層23に印加する電界を調整し、調光装置10による光の遮断及び透過を切り換えたり、光の透過度を変えたりすることができる。したがって調光コントローラ91は、液晶層23に印加する電界を、センサ装置92の測定結果に応じて自動的に調整してもよいし、ユーザ操作部93を介したユーザの指示に応じて手動的に調整してもよい。なおセンサ装置92による測定対象は特に限定されず、例えば使用環境の明るさを測定してもよく、この場合、調光装置10による光の遮断及び透過の切り換えや光の透過度の変更が使用環境の明るさに応じて行われる。また調光コントローラ91には、必ずしもセンサ装置92及びユーザ操作部93の両方が接続されている必要はなく、センサ装置92及びユーザ操作部93のうちのいずれか一方のみが接続されていてもよい。
外部電極基板35は、第1積層体21と第2積層体22とによって挟持されている。外部電極基板35が形成される領域において、第1積層体21及び第2積層体22は、面方向外側に向けて突出する電極用突出片36を有している。外部電極基板35は、電極用突出片36の内部に埋め込まれている。外部電極基板35及び電極用突出片36は、図3の矢印に示すように、額縁中間膜16と第2中間膜14との間に挟まれ、額縁中間膜16及び第2中間膜14から外方に突出する。しかしながら、これに限らず、外部電極基板35及び電極用突出片36は、額縁中間膜16と第1中間膜13との間に挟まれても良い。
(調光セルの製造方法)
次に、本実施の形態による調光装置10の調光セル20の製造方法について、図4(a)-(d)及び図5(a)-(c)を用いて説明する。図4(a)-(d)及び図5(a)-(c)は、本実施の形態による調光セル20の製造方法を示す断面図である。
まず、図4(a)に示すように、ロール状に供給された第2基材27を準備する。続いて、図4(b)に示すように、スパッタリング装置を使用したスパッタリング等によって、第2基材27上に例えばITOからなる第2透明電極28を形成する。このとき、透明電極を所定のパターン形状となるようにパターンニングしてもよい。
次に、図4(c)に示すように、第2透明電極28を形成した第2基材27上に第2配向層29に係る塗工液を塗工した後、露光し、第2配向層29を作製する。このようにして、第2基材27と、第2透明電極28と、第2配向層29とが積層された第2積層体22が準備される。
なお、図4(a)-(c)に示す工程と同様にして、第1基材24と、第1透明電極25と、第1配向層26とが積層された第1積層体21も準備する。
続いて、図4(d)に示すように、第2積層体22の第2配向層29上に、ビーズスペーサー31を配置する。このビーズスペーサー31の配置は、湿式/乾式散布に加え、種々の配置方法を広く適用することができる。例えば、ビーズスペーサー31を樹脂成分と共に溶剤に分散して製造した塗工液を部分的に塗工した後、乾燥、焼成の処理を順次実行することにより、第2配向層29上にランダムにビーズスペーサー31を配置して移動困難に保持しても良い。なお、図示していないが、このビーズスペーサー31の外周が第2配向層29で覆われるようにしても良い。具体的には、第2配向層29に係る塗工液にビーズスペーサー31を混合させて第2配向層29を形成することにより、ビーズスペーサー31が第2配向層29に薄く覆われて保持される形態にすることができる。
次に、図5(a)に示すように、第2積層体22の第2配向層29上にディスペンサを使用してシール材32を塗布する。このシール材32は、液晶層23を作製する部位を取り囲むように枠形状に塗布される。
次いで、図5(b)(c)に示すように、第2積層体22と第1積層体21とを互いに積層し、液晶層23を配置する。この間、まず図5(b)に示すように、シール材32によって囲まれた領域に液晶層23を構成する液晶を滴下する。このとき、液晶層23は、シール材32の内側であって、ビーズスペーサー31の周囲に充填される。
続いて、図5(c)に示すように、液晶層23を配置した第2積層体22と、予め準備した第1積層体21とを互いに積層して押圧する。その後、紫外線を照射することによりシール材32を半硬化させた後、加熱し、これにより第1積層体21と第2積層体22とを一体化する。その後、このようにして作製された第1積層体21と第2積層体22との積層体をトリミングすることにより所望の大きさに切断する。
なお、上述したように、液晶層23を配置した後、第2積層体22と第1積層体21とを互いに積層することが好ましいが、これに限らず、第2積層体22と第1積層体21とを互いに積層した後、液晶層23を配置するようにしても良い。その後、第1積層体21と第2積層体22との間に外部電極基板35(図3参照)を取り付けることにより、本実施の形態による調光セル20が得られる。
(調光装置の製造方法)
次に、本実施の形態による調光装置10の製造方法(合わせガラス加工方法)について、図6(a)-(d)を用いて説明する。図6(a)-(d)は、調光装置10の製造方法を示す断面図である。
まず、図6(a)に示すように、第1ガラス板11と、第1中間膜13と、フィルム33と、調光セル20と、第2中間膜14と、第2ガラス板12とを有する積層体30を作製する。この場合、第1ガラス板11及び第2ガラス板12を準備するとともに、第1ガラス板11及び第2ガラス板12によって第1中間膜13と額縁中間膜16とフィルム33と調光セル20と第2中間膜14とを挟み、積層体30を作製する。この際、積層体30において、フィルム33と調光セル20との間に空隙gが形成される。ここで、第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、予め、表面形状が3次元形状である曲面形状が賦形されている。
次に、積層体30をバッグ(真空バッグ)51中に配置し、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱する。
この際、まず、図6(b)に示すように、積層体30をバッグ51に封入する。バッグ51は、可撓性及び気密性を有するゴム製やシリコン製が好適である。また、このバッグ51には、通気管52が接続されている。
次に、図6(c)に示すように、バッグ51に積層体30を封入した後、バッグ51ごと積層体30を加熱装置53内へ配置する。加熱装置53として使用する装置は、積層体30に対して十分に加熱が行えるのであれば特に限定しないが、例えば、オーブンやオートクレーブ用の装置等が挙げられる。
続いて、第1温度T1及び所定の時間で、バッグ51ごと積層体30を加熱する。この場合、第1温度T1は、後述する第2温度T2よりも低くなっている。これにより、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱した際に、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16が完全に硬化してしまうことを抑制することができる。
また、第1温度T1は、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16の軟化温度以上の温度となっている。この第1温度T1は、50℃以上90℃以下であることが好ましく、一例として70℃であってもよい。第1温度T1が50℃以上であることにより、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を軟化させることができ、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12を仮圧着させることができる。また、第1温度T1が90℃以下であることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16が完全に硬化してしまうことを効果的に抑制することができる。また、第1中間膜13がPVB(ポリビニルブチラール)を含んでいる場合、第1温度T1は、60℃以上80℃以下であってもよい。
また、積層体30を加熱する時間は、例えば10分以上120分以下であってもよい。この場合、例えば、加熱装置53内の温度を室温から第1温度T1まで10分程度かけて上昇させてもよい。次に、加熱装置53内の温度を第1温度T1に維持した状態で、積層体30を1分以上60分以下程度、一例として2分加熱してもよい。その後、加熱装置53内の温度を第1温度T1から室温まで60分程度かけて低下させてもよい。
また、このとき、通気管52を介して不図示のポンプによりバッグ51内の空気を吸引する。これにより、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を抑制できる。
ここで、積層体30は、-100kPa以上-10kPa以下の真空度で脱気されてもよく、一例として-100kPaで脱気されてもよい。積層体30が-100kPa以上の真空度で脱気されることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。また、積層体30が-10kPa以下の真空度で脱気されることにより、積層体30の各部材間に残る空気を効果的に吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を効果的に抑制できる。なお、本明細書において、真空度とは、大気圧(0kPa)以下の静圧を意味し、ゲージ圧を用いて表す。また、本明細書において、「~kPa以上の真空度」とは、記号「~」で示される値以上の値によって定められる圧力に基づく真空度であることを意味する。すなわち、例えば、「-100kPa以上の真空度」とは、「-90kPaの真空度」を含む概念であり、例えば、「-100kPa以上の真空度で脱気される」とは、「-90kPaの真空度で脱気される」ことを含んでいる。同様に、「~kPa以下の真空度」とは、記号「~」で示される値以下の値によって定められる圧力に基づく真空度であることを意味する。例えば、「-10kPa以下の真空度」とは、「-20kPaの真空度」を含む概念であり、例えば、「-10kPa以下の真空度で脱気される」とは、「-20kPaの真空度で脱気される」ことを含んでいる。
このようにして、第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12が仮圧着された積層体30が得られる。なお、このとき、フィルム33と調光セル20とは互いに直接接合されない。
続いて、積層体30をバッグ51から取り出すとともに、積層体30を加圧しつつ第2温度で加熱する。
積層体30を加圧しつつ第2温度T2で加熱する場合、まず、図6(d)に示すように、加熱装置53からバッグ51及び積層体30を取り出し、さらにバッグ51から積層体30を取り出した後、積層体30を加熱・加圧装置54内へ配置する。加熱・加圧装置54として使用する装置は、積層体30に対して十分に加熱や加圧が行えるのであれば特に限定しないが、例えば、オーブンやオートクレーブ用の装置等が挙げられる。
ここで、上述したように、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12は、仮圧着されている。この場合、フィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されている場合がある。一方、上述したように、フィルム33と調光セル20とは互いに直接接合されていない。このため、フィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されていた場合であっても、積層体30をバッグ51から取り出すことにより、フィルム33と調光セル20との間に空気を侵入させることができる。これにより、空隙gが潰されていた場合であっても、フィルム33と調光セル20との間に空隙gを再度形成することができる。
続いて、第2温度T2及び所定の時間で、積層体30を加熱する。第2温度T2は、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16の軟化温度以上の温度となっている。この第2温度T2は、90℃以上140℃以下であってもよく、一例として、130℃であってもよい。第2温度T2が90℃以上であることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を効果的に硬化させることができる。また、第2温度T2が140℃以下であることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16等が、熱によって損傷を受けてしまうことを抑制することができる。また、第1中間膜13がPVB(ポリビニルブチラール)を含んでいる場合、第2温度T2は、120℃以上140℃以下であってもよい。
また、積層体30を加熱する時間は、例えば120分以上500分以下であってもよい。この場合、例えば、加熱・加圧装置54内の温度を室温から第2温度T2まで80分程度かけて上昇させてもよい。次に、加熱・加圧装置54内の温度を第2温度T2に維持した状態で、積層体30を60分以上70分以下程度、一例として50分加熱してもよい。その後、加熱・加圧装置54内の温度を第2温度T2から室温まで220分程度かけて低下させてもよい。
また、積層体30は、加熱・加圧装置54内で加圧される。この際、積層体30は、0.1MPa以上1.3MPa以下で加圧されてもよく、一例として、0.2Mpaで加圧されてもよい。積層体30が0.1MPa以上で加圧されることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を効果的に硬化させることができる。また、積層体30が1.3MPa以下で加圧されることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。なお、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16をより効果的に硬化させるために、積層体30が0.8MPa以上1.3MPa以下で加圧されてもよい。
このようにして、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16が溶融し、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12が圧着(本圧着)されて一体に接合され、調光装置10が得られる。なお、このとき、フィルム33と調光セル20とは互いに直接接合されることがない。また、積層体30を加圧しつつ第2温度で加熱する際、積層体30は、脱気されていない。このため、フィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されることなく、これらの間に空隙層Gが形成される。このような空隙層Gが設けられていることにより、調光装置10の製造後、調光セル20の液晶層23に加わる圧力が解放されるため、調光セル20内に液晶層23の偏在が存在していたとしても、この液晶層23の偏在が自然に解消される。
ところで、このようにして調光装置10を製造する合わせガラス加工の際、積層体30の各部材には圧力が加わる。この際、スペーサー(ビーズスペーサー31)が位置する部分では、本来のセルギャップ(液晶層23の厚み)を維持しているが、ビーズスペーサー31から離れると、本来のセルギャップの値よりも小さくなる。そして、このようなセルギャップにムラが生じると、調光装置10に外観不良が生じたり、調光機能が不均一化になったりする等、その品質が低下するおそれがある。
これに対して本実施の形態によれば、調光装置10の製造方法が、積層体30を真空バッグ51中に配置し、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程と、積層体30を真空バッグ51から取り出すとともに、積層体30を加圧しつつ第2温度T2で加熱する工程と、を備え、第1温度T1が、第2温度T2よりも低くなっている。この場合、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱することにより、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12を仮圧着することができる。また、仮圧着された積層体30を真空バッグ51から取り出すことにより、積層体30の仮圧着によってフィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されている場合であっても、フィルム33と調光セル20との間に空気を侵入させることができる。これにより、空隙gが潰されていた場合であっても、フィルム33と調光セル20との間に空隙gを再度形成することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間に、空隙層Gを設けることができる。これにより、調光セル20の液晶層23に液晶だまり(局所的に液晶が多く存在する現象)が生じていた場合でも、調光装置10の作製後、液晶層23に加わる圧力が解放された際、調光セル20が空隙層G内でセルギャップ(液晶層23の厚み)が均一になるように自然に移動する(図7(a)-(c)参照)。このため、調光セル20の液晶だまりが解消され、調光セル20の液晶層23を面内で均一に分布させることができ、調光装置10の品質や外観を高めることができる。
また、調光セル20とフィルム33との間に空隙層Gが設けられていることにより、調光装置10の断熱性を向上させ、調光装置10が設けられる車両や建造物の内部の保温性を高めることができる。
(変形例)
次に、図8乃至図21を参照して、本実施の形態の各種変形例について説明する。図8乃至図21は、それぞれ本実施の形態の変形例による調光装置を示す図である。図8乃至図21において、図1乃至図7に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(第1の変形例)
図8は、第1の変形例による調光装置10Aを示している。図8に示す調光装置10Aにおいて、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gに、複数のスペーサー34が設けられている。スペーサー34としては、上述した調光セル20のビーズスペーサー31と同様の構成をもつ球形状のビーズスペーサーを用いても良い。複数のスペーサー34は、平面視で規則的に配置されても良く、不規則に配置されても良い。この場合、スペーサー34の直径は、0μmより大きく10000μm以下の範囲としても良く、視認性の観点からは、1μm以上100μm以下の範囲とすることが好ましい。あるいは、スペーサー34としては、柱状のスペーサーを用いても良い。このように、空隙層Gにスペーサー34を配置することにより、空隙層Gの厚みを確保することができる。これにより、調光セル20とフィルム33とが貼りつかないようにし、液晶層23に虹状のムラや液晶だまりが生じることを抑えることができる。また、スペーサー34に代えて、あるいはスペーサー34とともに、フィルム33の表面を粗化することにより、調光セル20とフィルム33とが貼りつかないようにしてもよい。
ところで、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gに複数のスペーサー34を設けた場合、調光装置10Aの製造工程において、スペーサー34によって調光セル20が押圧されることにより、調光セル20の表面に凹凸形状が転写される可能性がある。具体的には、バッグ51内の真空度を高くしつつ、積層体30に対して高温及び高圧で、加熱及び加圧処理を施した場合に、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写される可能性が高くなる。そして、調光セル20の表面に凹凸形状が転写された場合、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうおそれがある。
これに対して、上述したように、本実施の形態による調光装置の製造方法は、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程と、積層体30をバッグ51から取り出すとともに、積層体30を加圧しつつ第2温度T2で加熱する工程と、を備えており、第1温度T1が、第2温度T2よりも低くなっている。このため、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程においては、第1温度T1が第2温度T2よりも低いため、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。また、積層体30を加圧しつつ第2温度T2で加熱する工程では、積層体30をバッグ51から取り出しているため、スペーサー34によって調光セル20が押圧されることを抑制することができ、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gに複数のスペーサー34を設けた場合であっても、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。
(第2の変形例)
図9は、第2の変形例による調光装置10Bを示している。図9に示す調光装置10Bにおいて、調光セル20と第2中間膜14との間に、追加のフィルム33Aが配置されている。また調光セル20と追加のフィルム33Aとの間に、空隙層Gが設けられている。追加のフィルム33Aとしては、フィルム33と同様の構成をもつものを用いても良い。このように、調光セル20の両面側(第1中間膜13側及び第2中間膜14側)にそれぞれ空隙層Gが設けられていることにより、調光セル20の液晶層23の流動性を高め、液晶層23に液晶だまりが生じることをより効果的に抑制することができる。また、調光セル20に対して第1ガラス板11側、第2ガラス板12側の双方にフィルムがあるため、調光セルを遮光状態としたときに、第1ガラス板11側、第2ガラス板12側のどちらから見ても、同様の鏡面状に観察される。
(第3の変形例)
図10及び図11は、第3の変形例による調光装置10Cを示している。図10及び図11に示す調光装置10Cにおいて、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、延長部61が形成されている。この延長部61は、調光装置10Cから面方向外側に向けて突出する。また延長部61は、平面視で略長方形形状を有し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外方に延びている。この場合、調光セル20の第1基材24は、外方に突出する突出片24aを有し、フィルム33は、外方に突出する突出片33aを有する。延長部61は、調光セル20の突出片24aとフィルム33の突出片33aとにより構成される。延長部61を構成する第1基材24の突出片24aとフィルム33の突出片33aとは、互いに同一形状を有する。
本実施の形態において、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62が設けられている。この連通孔62は、延長部61の内部に形成されており、具体的には、延長部61における第1基材24とフィルム33との間の隙間に設けられる。この場合、合わせガラス加工時に調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gから空気が抜けた場合でも、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光セル20の液晶層23に液晶だまりが生じることを抑えることができる。調光セル20とフィルム33との間に空隙層Gを復元した後、連通孔62を接着剤又は液状の中間膜等により密封してもよい。延長部61(延長部61)を設ける場所は限定されないが、しわ等の発生を抑えるため、調光セル20の角部近傍以外とすることが好ましい。
また、延長部61の幅W2(図11)は5mm以上40mm以下とすることが好ましく、10mm以上20mm以下とすることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、延長部61の幅W2を狭く抑え、連通孔62の歪みによる液晶溜まりを発生しにくくすることができる。また実施の形態において、少なくとも連通孔62が形成される部分の額縁中間膜16の幅W3(図10、図11)を他の部分よりも狭くすることが望ましい。具体的には、額縁中間膜16の幅W3を0mm以上10mm以下程度とすることが好ましい。これにより、連通孔62による空気の通り道を広く確保することができ、液晶溜まりを改善しやすくすることができる。また、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gに複数のスペーサー34を設ける場合(図8)、延長部61にもスペーサー34を設けることが好ましい。なお、連通孔62は、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを互いに連通させることができるものであればよい。例えば、延長部61が、調光セル20の第1基材24及びフィルム33の一辺全体に渡って形成されていてもよい。
(第4の変形例)
図12は、第4の変形例による調光装置10Dを示している。図12に示す調光装置10Dにおいて、第3の変形例(図10及び図11)と同様に、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、延長部61が形成されている。この延長部61は、調光装置10Dから面方向外側に向けて突出する。また、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62が設けられている。本変形例において、額縁中間膜16は、調光セル20の第1基材24(第2基材27)とフィルム33の4つの辺のうち連通孔62が設けられた一辺が欠けた平面視コの字形状を有している。このように、連通孔62が設けられた一辺に額縁中間膜16が存在しないことにより、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入しやすくすることができる。額縁中間膜16の平面形状は、コの字形状のほか、例えば、(i)連通孔62が設けられた部分のみが欠けた額縁形状、(ii)対向する二辺のみの形状(「=」字形状)、(iii)四隅のみにそれぞれドット状に設けられた形状、(iv)四隅のみにそれぞれL字状に設けられた形状、(v)対角線上の2つの角部のみに設けられた形状、(vi)四隅のみを除いた形状等であっても良い。このほかの構成は、図10及び図11に示す第3の変形例の構成と略同様である。
(第5の変形例)
図13及び図14は、第5の変形例による調光装置10Eを示している。図13及び図14に示す調光装置10Eにおいて、調光セル20とフィルム33との間に、連通管63が配置されている。この連通管63は、調光装置10Eから面方向外側に向けて突出する。すなわち、連通管63は、細長い管形状を有し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外方に延びている。この場合、連通管63は、調光セル20の第1基材24とフィルム33との間に挟持されている。また、本変形例において、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62Aが設けられている。この連通孔62Aは、連通管63の径方向内側に形成される。この場合、合わせガラス加工時に調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gから空気が抜けた場合でも、連通孔62Aから空気を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光セル20の液晶層23に液晶だまりが生じることを抑えることができる。
(第6の変形例)
図15は、第6の変形例による調光装置10Fを示している。図15に示す調光装置10Fにおいて、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、複数(2つ)の延長部61A、61Bが形成されている。2つの延長部61A、61Bは、それぞれ調光装置10Fから面方向外側に向けて突出する。すなわち、各延長部61A、61Bは、平面視で略長方形形状を有し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外方に延びている。2つの延長部61A、61Bは、調光装置10Fの同一の辺上に位置しているが、これに限らず、異なる辺上に位置していても良い。この場合、各延長部61A、61Bは、それぞれ第1基材24の突出片24aとフィルム33の突出片33aとによって形成されている。本変形例において、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62B、62Cが設けられている。この連通孔62B、62Cは、それぞれ延長部61A、61Bに形成されており、具体的には、延長部61A、61Bにおける第1基材24とフィルム33との間の隙間に設けられる。このように、複数(2つ)の連通孔(通気孔)62B、62Cを設けることにより、合わせガラス加工時に調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gから空気が抜けた場合でも、連通孔62B、62Cから空気を注入して空隙層Gを容易に復元することができる。このほか、各延長部61A、61Bの構成は、図10及び図11に示す延長部61の構成と略同一である。
(第7の変形例)
図16は、第7の変形例による調光装置10Gを示している。図16に示す調光装置10Gにおいて、調光セル20と第2中間膜14との間に、追加のフィルム33Aが配置されている。調光セル20と追加のフィルム33Aとの間には、空隙層Gが設けられている。また、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、延長部61Cが形成されている。この延長部61Cは、それぞれ調光装置10Gから面方向外側に向けて突出する。すなわち、延長部61Cは、平面視で略長方形形状を有し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外方に延びている。この場合、延長部61Cは、第1基材24の突出片24a、第2基材27の突出片27a、フィルム33の突出片33a及び追加のフィルム33Aの突出片33bによって形成されている。本変形例において、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62Dが設けられている。この連通孔62Dは、延長部61Cにおける第1基材24とフィルム33との間の隙間に設けられる。また、調光セル20と追加のフィルム33Aとの間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62Eが設けられている。この連通孔62Eは、延長部61Cにおける第1基材24と追加のフィルム33Aとの間の隙間に設けられる。このほか、延長部61Cの構成は、図10及び図11に示す延長部61の構成と略同一である。
(第8の変形例)
図17は、第8の変形例による調光装置10Hを示している。図17に示す調光装置10Hにおいて、調光セル20と第2中間膜14との間に、追加のフィルム33Aが配置されている。調光セル20と追加のフィルム33Aとの間には、空隙層Gが設けられている。また、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、複数(2つ)の延長部61D、61Eが形成されている。2つの延長部61D、61Eは、それぞれ調光装置10Hから面方向外側に向けて突出する。すなわち、各延長部61D、61Eは、平面視で略長方形形状を有し、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の外方に延びている。この場合、一方の延長部61Dは、第1基材24の突出片24aとフィルム33の突出片33aとによって形成されている。また、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62Fが設けられている。この連通孔62Fは、一方の延長部61Dに形成されており、具体的には、延長部61Dにおける第1基材24とフィルム33との間の隙間に設けられる。他方の延長部61Eは、第2基材27の突出片27aと追加のフィルム33Aの突出片33bとによって形成されている。また、調光セル20と追加のフィルム33Aとの間の空隙層Gと、外気とを連通する連通孔(通気孔)62Gが設けられている。この連通孔62Gは、他方の延長部61Eに形成されており、具体的には、他方の延長部61Eにおける第2基材27と追加のフィルム33Aとの間の隙間に設けられる。このほか、延長部61D、61Eの構成は、図10及び図11に示す延長部61の構成と略同一である。
(第9の変形例)
図18は、第9の変形例による調光装置10Iを示している。図18に示す調光装置10Iにおいて、調光セル20の周縁とフィルム33の周縁とが、シール材64により互いに接着されている。このシール材64は、空隙層Gの周縁に沿って設けられている。シール材64としては、上述した調光セル20のシール材32と同様の材料を用いることができ、シール材32と同様の材料以外にもエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。シール材64の幅W4は、0.1mm以上50mm以下としても良い。このシール材64は、調光セル20の第1基材24の周縁に沿って塗布され、調光セル20とフィルム33とをラミネートした後、例えば紫外線(UV)又は熱によって硬化することにより形成されても良い。なお、シール材64は、調光セル20及びフィルム33の周縁略全体に設けられていても良く、調光セル20及びフィルム33の周縁の一部のみに設けられても良い。このように、調光セル20及びフィルム33を一体化させることにより、調光セル20及びフィルム33の剛性が高まり、しわの発生や液晶だまりの発生を抑制することができる。また、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、額縁中間膜16とが直接触れることがなくなるため、空気等による額縁中間膜16の劣化が抑制される。さらに、調光セル20及びフィルム33が一体化しているため、これらを積層する工程を簡略化することができる。また、図18において、調光セル20とフィルム33との間隔をシール材64により調整することができるので、調光セル20の表面で反射した光とフィルム33の表面で反射した光が干渉し、虹ムラが生じることを防止することができる。この場合、シール材64にスペーサー(例えば上述したビーズスペーサー31と同様のもの)を混入し、調光セル20とフィルム33との間隔を調整してもよい。
(第10の変形例)
図19は、第10の変形例による調光装置10Jを示している。図19に示す調光装置10Jにおいて、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、延長部61が形成されている。また、調光セル20の周縁とフィルム33の周縁とが、シール材64により互いに接着されている。このシール材64は、延長部61の幅方向両端縁にも形成されており、延長部61において、調光セル20の第1基材24とフィルム33とがシール材64により互いに接着されている。なお、延長部61の基端部にはシール材64が設けられておらず、連通孔62と空隙層Gとの連通が阻害されることはない。
(第11の変形例)
図20は、第11の変形例による調光装置10Kを示している。図20に示す調光装置10Kにおいて、調光セル20の一部とフィルム33の一部とにより、延長部61が形成されている。また、調光セル20とフィルム33の対向する2辺が、それぞれシール材64により互いに接着されている。具体的には、調光セル20とフィルム33の4つの辺のうち、延長部61が形成された辺と、延長部61が形成された辺に対向する辺がそれぞれシール材64により接着されている。さらに、延長部61において、調光セル20の第1基材24とフィルム33とがシール材64により互いに接着されている。このシール材64は、延長部61の幅方向両端縁にも形成されている。このほかの構成は、図19に示す構成と略同様である。
(第12の変形例)
図21は、第12の変形例による調光装置10Lを示している。図21に示す調光装置10Lにおいて、額縁中間膜16の一部が切り欠かれて連通孔(通気孔)62Hが形成されている。この連通孔62Hは、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gと、外気とを連通する。この連通孔62Hは、額縁中間膜16を幅方向に除去したような形状を有する。また連通孔62Hは、額縁中間膜16の両方に形成されていなくても良く、額縁中間膜16のいずれか一方のみに形成されていても良い。この場合、合わせガラス加工時に調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gから空気が抜けた場合でも、連通孔62Hから空気を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光セル20の液晶層23に液晶だまりが生じることを抑えることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図22を参照して第2の実施の形態について説明する。図22に示す第2の実施の形態は、主として、積層体30を第2温度T2で加熱および加圧する際に、積層体30を第2真空度で脱気する点が第1の実施の形態と異なるものである。図22において、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、まず、図22(a)に示すように、第1ガラス板11と、第1中間膜13と、フィルム33と、調光セル20と、第2中間膜14と、第2ガラス板12とを有するとともに、フィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられている、積層体30を作製する。
次に、積層体30をバッグ(真空バッグ)51中に配置し、積層体30を第1真空度で脱気しつつ第1温度T1で加熱する。
この際、まず、図22(b)に示すように、積層体30をバッグ51に封入する。
次に、図22(c)に示すように、バッグ51に積層体30を封入した後、バッグ51ごと積層体30を加熱装置53内へ配置する。
続いて、第1温度T1及び所定の時間で、バッグ51ごと積層体30を加熱する。積層体30を加熱する時間は、例えば10分以上120分以下であってもよい。この場合、例えば、加熱装置53内の温度を室温から第1温度T1まで10分程度かけて上昇させてもよい。次に、加熱装置53内の温度を第1温度T1に維持した状態で、積層体30を1分以上60分以下程度、一例として2分加熱してもよい。その後、加熱装置53内の温度を第1温度T1から室温まで60分程度かけて低下させてもよい。
また、このとき、通気管52を介して不図示のポンプによりバッグ51内の空気を吸引して積層体30を第1真空度で脱気する。この場合、第1真空度は、-100kPa以上-10kPa以下であってもよく、一例として-100kPaであってもよい。第1真空度が-100kPa以上であることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。また、第1真空度が-10kPa以下であることにより、積層体30の各部材間に残る空気を効果的に吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を効果的に抑制できる。
このようにして、第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12が仮圧着された積層体30が得られる。
続いて、積層体30をバッグ51内に配置し、積層体30を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する。この場合、第2温度T2は、第1温度T1よりも高くなっている。これにより、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱した際に、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を効果的に硬化させることができる。
積層体30を第2温度で加熱および加圧する場合、まず、図22(d)に示すように、仮圧着された積層体30をバッグ51から取り出すことなく、バッグ51ごと積層体30を加熱・加圧装置54内へ配置する。
続いて、第2温度T2及び所定の時間で、バッグ51ごと積層体30を加熱する。積層体30を加熱する時間は、例えば120分以上500分以下であってもよい。この場合、例えば、加熱・加圧装置54内の温度を室温から第2温度T2まで80分程度かけて上昇させてもよい。次に、加熱・加圧装置54内の温度を第2温度T2に維持した状態で、積層体30を60分以上70分以下程度、一例として50分加熱してもよい。その後、加熱・加圧装置54内の温度を第2温度T2から室温まで220分程度かけて低下させてもよい。
また、積層体30は、加熱・加圧装置54内で加圧される。この際、積層体30は、0.1MPa以上0.8MPa以下で加圧されてもよく、一例として0.2MPaで加圧されてもよい。本実施の形態では、上述した第1の実施の形態とは異なり、積層体30を加熱・加圧装置54内で加圧する際に、後述するようにバッグ51内の空気を吸引して積層体30を第2真空度で脱気する。このため、積層体30を加熱・加圧装置54内で加圧する際の圧力の上限値を0.8MPaとすることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを効果的に抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間の空隙層Gに複数のスペーサー34(図8参照)を設けた場合であっても、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。
ここで、本実施の形態では、通気管52を介して不図示のポンプによりバッグ51内の空気を吸引して積層体30を第2真空度で脱気する。このように、積層体30を第2温度で加熱および加圧する場合に、積層体30を第2真空度で脱気することにより、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を抑制できる。また、この第2真空度は、第1真空度よりも低くなっている。すなわち、第2真空度で積層体30を脱気する場合、積層体30は、第1真空度で脱気される場合と比較して、高い圧力で脱気される。これにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間にスペーサー34(図8)を設け、かつ、積層体30に対して高温及び高圧で、加熱及び加圧処理を施した場合であっても、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。このため、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。
この場合、第2真空度は、-10kPa以上-1kPa以下であってもよく、一例として-1kPaであってもよい。第2真空度が-10kPa以上であることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。また、第2真空度が-1kPa以下であることにより、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を効果的に抑制できる。
このようにして、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16が溶融し、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12が圧着(本圧着)されて一体に接合され、調光装置10が得られる。なお、このとき、フィルム33と調光セル20とは互いに直接接合されることがない。また、積層体30には、フィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられている。このため、仮圧着後にフィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されていた場合であっても、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光装置10の製造後、調光セル20の液晶層23に加わる圧力が解放されるため、調光セル20内に液晶層23の偏在が存在していたとしても、この液晶層23の偏在が自然に解消される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、調光装置10の製造方法が、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を第1真空度で脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程と、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を第2真空度で脱気しつつ第2温度T2で加熱および加圧する工程と、を備え、第2真空度が、第1真空度よりも低くなっている。この場合、積層体30を脱気しつつ第1温度T1で加熱することにより、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12を仮圧着することができる。また、積層体30に、フィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられている。このため、仮圧着後にフィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されていた場合であっても、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光セル20の液晶だまりが解消され、調光セル20の液晶層23を面内で均一に分布させることができ、調光装置10の品質や外観を高めることができる。
また、積層体30を第2真空度で脱気しつつ第2温度T2で加熱および加圧することにより、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を抑制できる。また、この第2真空度は、第1真空度よりも低くなっている。これにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間にスペーサー34(図8)を設け、かつ、積層体30に対して高温及び高圧で、加熱及び加圧処理を施した場合であっても、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。このため、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。
なお、上述した実施の形態において、調光装置10の製造方法が、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を第1真空度で脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程と、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を第2真空度で脱気しつつ第2温度T2で加熱および加圧する工程と、を備えている例について説明したが、これに限られない。例えば、調光装置10の製造方法が、積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を第1真空度で脱気しつつ第1温度T1で加熱する工程を備えていなくても良い。
また、上述した実施の形態において、積層体30に連通孔62が設けられている例について説明したが、これに限られない。例えば、図示はしないが、積層体30に、連通孔62A~62H(図13乃至図17及び図21)が設けられていても良い。
(変形例)
次に、図23及び図24を参照して、本実施の形態の各種変形例について説明する。図23及び図24は、それぞれ本実施の形態の変形例による調光装置を示す図である。図23及び図24において、図1乃至図7に示す第1の実施の形態、図8乃至図21に示す変形例および図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
(第1の変形例)
図23は、第1の変形例による調光装置10Mを示している。図23に示す調光装置10Mにおいて、調光セル20とフィルム33との間に、流動性樹脂層Lが設けられている。この流動性樹脂層Lは、調光セル20とフィルム33との間の空間に封入されている。流動性樹脂層Lは、例えば、第1中間膜13及び第2中間膜14よりも低い温度で軟化する透明樹脂であり、未硬化の液体であってもゲル状であってもよい。また、流動性樹脂層Lの屈折率は、フィルム33に合わせられていることが好ましい。このような流動性樹脂層Lとしては、例えばグリセリン等を用いることができる。また流動性樹脂層Lは、流動性液体層であってもよい。流動性樹脂層Lの厚さは、0μmより大きく10000μm以下としても良い。このように、調光セル20とフィルム33との間に流動性樹脂層Lを設けることにより、合わせガラス加工後に流動性樹脂層Lを流動させることができる。これにより、調光セル20の液晶層23の厚みを均一化し、液晶だまりの発生を抑えることができる。
なお、調光セル20とフィルム33との間に流動性樹脂層Lを封入する場合、上述した図10乃至図17及び図19乃至図21に示す連通孔62~62Hから流動性樹脂層Lを注入しても良い。とりわけ、積層体30に2つの連通孔(通気孔)62B、62C(図15)が設けられている例では、一方の連通孔62A(62B)から調光セル20とフィルム33との間に流動性樹脂層Lを封入する場合、他方の連通孔62B(62A)から真空引きすることができ、流動性樹脂層Lをスムーズに封入することができる。また、流動性樹脂層Lを封入後、連通孔62~62Hを接着剤又は液状の中間膜等により密封してもよい。この場合、連通孔62~62Hは、額縁中間膜16の素材又はシーリング材を用いて塞がれることが好ましい。
また、上述した図19に示す例の場合、延長部61から調光セル20とフィルム33との間の空間に流動性樹脂層Lを封入する際に、この空間を陰圧とした状態で、延長部61の先端を流動性樹脂層Lの入った容器に浸漬することにより、流動性樹脂層Lを空間にスムーズに封入することができる。このため、調光セル20の辺全体を流動性樹脂層Lの入った容器に浸漬する必要が生じない。なお、調光セル20及びフィルム33を構成する4辺のうち、延長部61の存在しない3辺に沿って、平面視コ字状にシール材64を形成しても良い。この場合、調光セル20及びフィルム33の延長部61の存在する辺全体を流動性樹脂層Lの入った容器に浸漬し、調光セル20とフィルム33との間の空間に流動性樹脂層Lを封入しても良い。
(第2の変形例)
図24は、第2の変形例による調光装置10Nを示している。図24に示す調光装置10Nにおいて、調光セル20とフィルム33との間に、透明な硬化性樹脂層38が設けられている。この硬化性樹脂層38は、調光セル20とフィルム33との間の空間に充填された後、硬化されている。このような硬化性樹脂層38としては、例えば熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂等を用いることができる。硬化性樹脂層38の厚さは、0μmより大きく10000μm以下としても良い。この硬化性樹脂層38は、合わせガラス加工後に調光セル20とフィルム33との間に充填され、その後、熱又は紫外線等によって硬化される。このように、調光セル20とフィルム33との間に硬化性樹脂層38を設けることにより、合わせガラス加工の直後には、未硬化の硬化性樹脂層38を流動させることができる。これにより、調光セル20の液晶層23の厚みを均一化し、液晶だまりの発生を抑えることができる。その後、硬化性樹脂層38を硬化させることにより、硬化性樹脂層38の剛性によって調光セル20の液晶層23を第2ガラス板12側に保持することができる。これにより、調光装置10Bを縦置きした際に、液晶層23の一部が重力によって鉛直方向下方に落下してしまうことを抑えることができる。
なお、調光セル20とフィルム33との間に硬化性樹脂層38を封入する場合、上述した図10乃至図17及び図19乃至図21に示す連通孔62~62Hから硬化性樹脂層38を注入しても良い。とりわけ、積層体30に2つの連通孔(通気孔)62B、62C(図15)が設けられている例では、一方の連通孔62A(62B)から調光セル20とフィルム33との間に硬化性樹脂層38を封入する場合、他方の連通孔62B(62A)から真空引きすることができ、硬化性樹脂層38をスムーズに封入することができる。また、硬化性樹脂層38を封入後、連通孔62~62Hを接着剤又は液状の中間膜等により密封してもよい。この場合、連通孔62~62Hは、額縁中間膜16の素材又はシーリング材を用いて塞がれることが好ましい。
また、上述した図19に示す例の場合、延長部61から調光セル20とフィルム33との間の空間に硬化性樹脂層38を封入する際に、この空間を陰圧とした状態で、延長部61の先端を硬化性樹脂層38の入った容器に浸漬することにより、硬化性樹脂層38を空間にスムーズに封入することができる。このため、調光セル20の辺全体を硬化性樹脂層38の入った容器に浸漬する必要が生じない。なお、調光セル20及びフィルム33を構成する4辺のうち、延長部61の存在しない3辺に沿って、平面視コ字状にシール材64を形成しても良い。この場合、調光セル20及びフィルム33の延長部61の存在する辺全体を硬化性樹脂層38の入った容器に浸漬し、調光セル20とフィルム33との間の空間に硬化性樹脂層38を封入しても良い。
(第3の実施の形態)
次に、図25を参照して第3の実施の形態について説明する。図25に示す第3の実施の形態は、主として、連通孔62をバッグ51の外方に連通させた状態で積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を脱気しつつ加熱および加圧する点が第1の実施の形態と異なるものである。図25において、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、まず、図25(a)に示すように、第1ガラス板11と、第1中間膜13と、フィルム33と、調光セル20と、第2中間膜14と、第2ガラス板12とを有するとともに、フィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられている、積層体30を作製する。なお、この場合、積層体30において、図19に示す調光装置10Jと同様に、調光セル20の周縁とフィルム33の周縁とが、シール材64により互いに接着され、このシール材64が、延長部61の幅方向両端縁にも形成されていることが好ましい。これにより、後述するように、連通孔62をバッグ(真空バッグ)51の外方に連通させた状態で積層体30をバッグ51中に配置した場合であっても、積層体30を脱気することができる。
次に、連通孔62をバッグ(真空バッグ)51の外方に連通させた状態で積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を脱気しつつ加熱および加圧する。
この際、まず、図25(b)に示すように、積層体30をバッグ51に封入する。この際、積層体30の連通孔62がバッグ51の外方と連通するように、積層体30をバッグ51に封入する。
次に、図25(c)に示すように、バッグ51に積層体30を封入した後、バッグ51ごと積層体30を加熱装置53内へ配置する。
続いて、所定の温度及び時間で、バッグ51ごと積層体30を加熱する。積層体30の加熱温度は、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16の軟化温度以上の温度となっている。この場合、積層体30は、90℃以上140℃以下に加熱されてもよく、一例として、130℃で加熱されてもよい。加熱温度が90℃以上であることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を効果的に硬化させることができる。また、加熱温度が140℃以下であることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16等が、熱によって損傷を受けてしまうことを抑制することができる。また、第1中間膜13がPVB(ポリビニルブチラール)を含んでいる場合、加熱温度は、120℃以上140℃以下であってもよい。
また、積層体30を加熱する時間は、例えば120分以上500分以下であってもよい。この場合、例えば、加熱・加圧装置54内の温度を室温から上述した加熱温度まで80分程度かけて上昇させてもよい。次に、加熱・加圧装置54内の温度を上述した加熱温度に維持した状態で、積層体30を60分以上70分以下程度、一例として50分加熱してもよい。その後、加熱・加圧装置54内の温度を上述した加熱温度から室温まで220分程度かけて低下させてもよい。
また、積層体30は、加熱・加圧装置54内で加圧される。この際、積層体30は、0.1MPa以上1.3MPa以下、好ましくは0.8MPa以上1.3MPa以下で加圧されてもよく、一例として0.8MPaで加熱されてもよい。積層体30が0.1MPa以上で加圧されることにより、積層体30の第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16を効果的に硬化させることができる。また、積層体30が1.3MPa以下で加圧されることにより、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。
さらに、このとき、通気管52を介して不図示のポンプによりバッグ51内の空気を吸引して積層体30を脱気する。このように、積層体30を加熱および加圧する場合に、積層体30を脱気することにより、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を抑制できる。また、この際、積層体30は、連通孔62をバッグ(真空バッグ)51の外方に連通させた状態でバッグ51中に配置されている。このため、積層体30を脱気した場合であっても、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間にスペーサー34(図8)を設け、かつ、積層体30に対して高温及び高圧で、加熱及び加圧処理を施した場合であっても、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。このため、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。
この場合、積層体30は、-100kPa以上-10kPa以下、一例として-100kPaで脱気されてもよい。積層体30が-10kPa以下で脱気されることにより、積層体30の各部材間に残る空気を効果的に吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を効果的に抑制できる。
このようにして、第1中間膜13、第2中間膜14及び額縁中間膜16が溶融し、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12が圧着されて一体に接合され、調光装置10が得られる。なお、このとき、フィルム33と調光セル20とは互いに直接接合されることがない。また、積層体30には、フィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられている。このため、フィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されていた場合であっても、積層体30の第1ガラス板11、第1中間膜13、額縁中間膜16、フィルム33、調光セル20、第2中間膜14及び第2ガラス板12を圧着(本圧着)した後に、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光装置10の製造後、調光セル20の液晶層23に加わる圧力が解放されるため、調光セル20内に液晶層23の偏在が存在していたとしても、この液晶層23の偏在が自然に解消される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、調光装置10の製造方法が、連通孔62をバッグ51の外方に連通させた状態で積層体30をバッグ51中に配置し、積層体30を脱気しつつ加熱および加圧する工程を備えている。これにより、積層体30を脱気しつつ加熱および加圧した場合であっても、調光セル20とフィルム33とが密着し過ぎてしまうことを抑制することができる。このため、調光セル20とフィルム33との間にスペーサー34(図8)を設け、かつ、積層体30に対して高温及び高圧で、加熱及び加圧処理を施した場合であっても、スペーサー34に起因して、調光セル20の表面に凹凸形状が転写されることを抑制することができる。このため、調光セル20に、ゆず肌状のムラが生じてしまうことを抑制することができる。また、積層体30を加熱および加圧する際に、積層体30を脱気しているため、積層体30の各部材間に残る空気を吸引し、調光装置10の内部に気泡等が残ることによる圧着不良を抑制できる。
また、積層体30にはフィルム33と調光セル20との間の空間と、外気とを連通する連通孔62が設けられているため、圧着後にフィルム33と調光セル20との間に形成された空隙gが潰されていた場合であっても、連通孔62から空気又は窒素等の気体を注入して空隙層Gを復元することができる。これにより、調光セル20の液晶だまりが解消され、調光セル20の液晶層23を面内で均一に分布させることができ、調光装置10の品質や外観を高めることができる。
上記各実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
10、10A~10N 調光装置
11 第1ガラス板
12 第2ガラス板
13 第1中間膜
14 第2中間膜
20 調光セル
30 積層体
33 フィルム
34 スペーサー
51 バッグ
61、61A~61E 延長部
62、62A~61H 連通孔
63 連通管

Claims (17)

  1. 調光装置の製造方法において、
    第1透明基板と、フィルムと、液晶層を含む調光セルと、第2透明基板と、前記第1透明基板と前記フィルムとを接合させる第1中間膜と、前記調光セルと前記第2透明基板とを接合させる第2中間膜とを有し、前記フィルムと前記調光セルとの間に、空気が侵入可能な空隙が形成された積層体を作製する工程と、
    前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を脱気しつつ第1温度で加熱する工程と、
    前記積層体を前記真空バッグから取り出すことにより、前記フィルムと前記調光セルとの間に空気を侵入させるとともに、前記積層体を加圧しつつ第2温度で加熱する工程と、を備え、
    前記第1温度は、前記第2温度よりも低く、
    前記調光装置は、前記第1透明基板と、前記第1中間膜と、前記フィルムと、前記調光セルと、前記第2中間膜と、前記第2透明基板とをこの順に備え、
    前記調光装置において、前記フィルムと前記調光セルとの間に空隙層が設けられている、調光装置の製造方法。
  2. 前記積層体を脱気しつつ第1温度で加熱する工程において、前記積層体は、-100kPa以上-10kPa以下の真空度で脱気され、前記第1温度は、50℃以上90℃以下である、請求項1に記載の調光装置の製造方法。
  3. 前記積層体を加圧しつつ第2温度で加熱する工程において、前記積層体は、0.1MPa以上1.3MPa以下で加圧され、前記第2温度は、90℃以上140℃以下である、請求項1または2に記載の調光装置の製造方法。
  4. 調光装置の製造方法において、
    第1透明基板と、フィルムと、液晶層を含む調光セルと、第2透明基板と、前記第1透明基板と前記フィルムとを接合させる第1中間膜と、前記調光セルと前記第2透明基板とを接合させる第2中間膜とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、
    前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を第1真空度で脱気しつつ第1温度で加熱する工程と、
    前記積層体を前記真空バッグ中に配置し、前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程と、を備え、
    前記第2真空度は、前記第1真空度よりも低く、
    前記調光装置は、前記第1透明基板と、前記第1中間膜と、前記フィルムと、前記調光セルと、前記第2中間膜と、前記第2透明基板とをこの順に備え、
    前記調光装置において、前記フィルムと前記調光セルとの間に空隙層が設けられている、調光装置の製造方法。
  5. 前記第1真空度は、-100kPa以上-10kPa以下である、請求項4に記載の調光装置の製造方法。
  6. 前記第2真空度は、-10kPa以上-1kPa以下である、請求項4または5に記載の調光装置の製造方法。
  7. 前記第2温度は、前記第1温度よりも高い、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  8. 前記第1温度は、50℃以上90℃以下である、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  9. 調光装置の製造方法において、
    第1透明基板と、フィルムと、液晶層を含む調光セルと、第2透明基板と、前記第1透明基板と前記フィルムとを接合させる第1中間膜と、前記調光セルと前記第2透明基板とを接合させる第2中間膜とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、
    前記積層体を真空バッグ中に配置し、前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程と、を備え、
    前記第2真空度は、-10kPa以上-1kPa以下であり、
    前記調光装置は、前記第1透明基板と、前記第1中間膜と、前記フィルムと、前記調光セルと、前記第2中間膜と、前記第2透明基板とをこの順に備え、
    前記調光装置において、前記フィルムと前記調光セルとの間に空隙層が設けられている、調光装置の製造方法。
  10. 前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程において、前記積層体は、0.1MPa以上0.8MPa以下で加圧され、前記第2温度は、90℃以上140℃以下である、請求項4乃至9のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  11. 前記積層体を第2真空度で脱気しつつ第2温度で加熱および加圧する工程の後に、前記連通孔を密封する工程を更に備える、請求項4乃至10のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  12. 調光装置の製造方法において、
    第1透明基板と、フィルムと、液晶層を含む調光セルと、第2透明基板と、前記第1透明基板と前記フィルムとを接合させる第1中間膜と、前記調光セルと前記第2透明基板とを接合させる第2中間膜とを有するとともに、前記フィルムと前記調光セルとの間の空間と、外気とを連通する連通孔が設けられている、積層体を作製する工程と、
    前記連通孔を真空バッグの外方に連通させた状態で前記積層体を前記真空バッグ中に配置し、前記積層体を脱気しつつ加熱および加圧する工程と、を備え
    前記調光装置は、前記第1透明基板と、前記第1中間膜と、前記フィルムと、前記調光セルと、前記第2中間膜と、前記第2透明基板とをこの順に備え、
    前記調光装置において、前記フィルムと前記調光セルとの間に空隙層が設けられている、調光装置の製造方法。
  13. 前記積層体を脱気しつつ加熱および加圧する工程において、前記積層体は、-100kPa以上-10kPa以下の真空度で脱気され、前記積層体は、90℃以上140℃以下に加熱されるとともに、0.1MPa以上1.3MPa以下で加圧される、請求項12に記載の調光装置の製造方法。
  14. 前記積層体を脱気しつつ加熱および加圧する工程の後に、前記連通孔を密封する工程を更に備える、請求項12または13に記載の調光装置の製造方法。
  15. 前記調光セルの一部と前記フィルムの一部とによって延長部が形成され、前記延長部は、平面視で前記第1透明基板及び前記第2透明基板の外方に延び、前記連通孔は、前記延長部に形成されている、請求項4乃至14のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  16. 前記第1中間膜及び前記第2中間膜は、ポリビニルブチラールを含む、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
  17. 前記調光セルと前記フィルムとの間に、スペーサーが配置されている、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の調光装置の製造方法。
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