JP7394982B2 - 低酸価を有する米糠ワックス酸化物 - Google Patents

低酸価を有する米糠ワックス酸化物 Download PDF

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Description

本発明は、低酸価を有する米糠ワックス酸化物、米糠ワックスからこの酸化生成物を製造する方法、並びに農業または林業の目的のためのあるいはプラスチック加工、ケア用品、印刷インキ及び/またはコーティングにおける添加剤としてのそれの使用に関する。また、本発明による米糠ワックス酸化物のケン化によって製造される、ケン化された米糠ワックス酸化物も対象である。
クロム硫酸を用いた化石及び非化石天然ワックスの酸化は、20世紀の初頭から知られており、そして現在でもなおも操業されている「ゲルストホーフェナー法(Gersthofener Verfahren)」において、1927年から化石モンタンワックスをベースとして工業的に行われている。化石モンタンワックスの他に、このクロム酸ベースの方法を用いて、再生可能な天然ワックス、例えばカルナバワックス及びキャンデリラワックスも酸化することができる。カルナバワックスのクロム酸酸化のための方法は、2004年にDE10231886(特許文献1)によって記載された。しかし、天然状態のカルナバワックス(ファットグレー、4号;メジウムイエロー、プライマリーイエロー及び蛍光、3号乃至1号)及び粗製モンタンワックス(黒)ははっきりと暗く着色されている。クロム硫酸を用いた酸化は、比較的淡いワックス製品をもたらす。しかし、使用されるクロム酸の量に依存して、これらの天然ワックスのクロム酸漂白は、多くの場合に、典型的には130~160mgKOH/gの範囲の高い酸価を招く。
クロム酸を用いた酸化では、ワックスエステルの解裂並びに生じたワックスアルコールのインサイチュー(in situ)の酸化が本質的に起こって、ワックス酸が生成する。酸価の高さは、遊離のワックス酸の含有率の目安である。このような酸化の典型的な転化率は、エステル基に関して50~90%の範囲である。このようにして漂白された天然ワックスは、所望の明色化に加えて、漂白されていないワックスと比べてより高いケン化価及び酸価を有し、これは、幾つかの用途では望ましくない。ワックス酸化物の酸価は、例えば、ワックス及び/またはワックス酸化物中に含まれる酸をアルコールでエステル化することによって、低下させることができる。
多くの場合、このエステル化は、多価アルコール、例えばエチレングリコール、ブチレングリコールまたはグリセリンを用いて行われる。しかしながら、プロセス経済の理由では不利な追加的なステップが伴う。
経済的に関心が持たれる天然ワックスの一つが米糠ワックスであり、これは、水稲(オリザ・サティバ)の加工において副生産物として多量に生じる。熟した稲の脱穀の時に、核に付いている外花穎を除去しそして他の頴成分を他の不純物と一緒に精米機で分離した後、米粒はなおも胚芽を含み、そしてシルバースキン(Silberhaut)によって覆われている。胚芽及びシルバースキンは、更なる加工ステップにおいて削られて除去され、そして磨かれた米の他に、米糠を与える。この米糖は脂質成分を含み、この脂質成分は、その主な部分が脂肪油から、そしてより少ない割合がワックス様成分からなる。このワックス様成分は、糠を圧搾または溶剤抽出して得られる油中に含まれ、ワックス様成分は、このような油から、低温下でのそれらの難溶性に基づいて例えば凍結することによって単離することができる。米糠ワックスの計算された潜在的な入手可能性は、Journal of Scientific & Industrial Research,2005,Vol.64,866-882(非特許文献1)によると、米油の他に同様に米糠ワックスを得るために全世界での米の総生産量を利用したとすると、1年あたり約300,000トンである。
米糠ワックスは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th ed.1996,Vol.A28,p.117(非特許文献2)によると、これまでは局地的にしか重要でないかまたは単に学術的な関心しか持たれていなかったワックスの部類に属する。化粧料中での米糠ワックスの使用(EP-A-1343454(特許文献2);Braeutigam,Lexikon der kosmetischen Rohstoffe,Norderstedt 2010,p.77(非特許文献3))、プラスチック中での加工助剤としての米糠ワックスの使用(特開平10-007862号公報(1998年)(特許文献3)、特開昭60-011553号公報(1985年)(特許文献4)、特開昭49-090739号公報(1974年)(特許文献5))、並びに印刷インキ及び電子写真用トナー中での米糠ワックスの使用(特開2010-020304号公報(2010年)(特許文献6))が開示されている。
米糠ワックスの化学組成は、多数の分析調査にもかかわらず、調査結果が一致しておらず、どうやら完全には解明されていない。これに対して、ワックスエステルからのワックスボディの組成は確かである。
米糠ワックスエステルは、主として、長鎖、飽和及び非分岐状のモノカルボン酸と、長鎖、非分岐状及び脂肪族モノアルコールとのモノエステルからなる(以下、「真性エステル」とも称する)。米糠ワックスエステルの酸部分では、C22及びC24の鎖長を有するベヘン酸及びリグノセリン酸が支配的であり、米糠ワックスエステルのアルコール部分では、C26、C28、C30、C32及びC34の鎖長が支配的である。その他、ワックスは、遊離の脂肪酸並びに他の構成分、例えばスクワレン、リン脂質及びステリルエステルを含み得る。
精製及び脱油された米糠ワックス中のワックスエステルの含有率は一般的に96重量%超である。脱油されていない米糠ワックス中でも、ワックスエステルの含有率は、米糠油の含有率に依存して、わずか50重量%であり得る。米糠ワックスの「少量成分」として見なし得る更なる可変の成分は、詳しく規定されない「ダーク物質」、スクワレン並びに所謂「ガム」成分である。これらの成分は、大概は、色及び利用可能性の点でバラツキがありかつ再現困難な製品品質をまねく。
褐色の米糠ワックスの明色化のための通常の技術としては、過酸化水素を用いた旧来の漂白がそれに該当する。過酸化水素で漂白された米糠ワックスは黄色を帯びており、そしてそれらのエステル含有率及びそれらの酸価に関してはほぼ出発ワックスに相当する。このようなタイプは、主に、脱油及び精製された米糠ワックスとして市場で販売されているが、少量構成分が生成物中に残っているために、同様に製品品質にバラツキがある。
CN-A 108048222(特許文献7)、CN-A 108129302(特許文献8)及びCN-A 108191602(2018年)(特許文献9)は、米糠ワックス酸化物を記載しており、これは、ジクロム酸ナトリウムを用いた酸化によって脱油した米糠ワックスから製造され、多価アルコールでエステル化され(CN-A 108129302(特許文献8)及びCN-A 108191602(特許文献9))、次いでケン化される(CN-A 108191602(特許文献9))。しかし、製品の性質は記載されていない。エステル化されているため、酸化は高いに違いないことを前提とし得る。
EP-A 2909273(2015年)(特許文献10)は、酸化促進剤、例えばフッ素化アルキルスルホン酸、三塩化アルミニウムまたは塩酸の存在下でのあるいは格別激しい撹拌下でのクロム酸を用いた酸化によって製造される、米糠ワックスの酸化生成物を開示している。それによって、高い酸価を得ることが目的されている。EP-A 2909274(特許文献11)には、酸化の前にケン化された米糠ワックス酸化物が記載されている。この場合も、高い酸価が達成されている。
特公昭36-005526号(1961年)(特許文献12)では、溶剤含有ポリッシュ剤の製造方法が記載されており、そのポリッシュ剤中には、米糠ワックスをベースとする化学変性されたワックスが含まれている。この変性は、クロム酸またはジクロム酸塩を用いた粗製米糠ワックスの酸化によって行われる。この場合、40~45mgKOH/gの酸価が達成される。
DE10231886 EP-A-1343454 特開平10-007862号公報 特開昭60-011553号公報 特開昭49-090739号公報 特開2010-020304号公報 CN-A 108048222 CN-A 108129302 CN-A 108191602 EP-A 2909273 EP-A 2909274 特公昭36-005526号 DE4019167
Journal of Scientific & Industrial Research,2005,Vol.64,866-882 Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th ed.1996,Vol.A28,p.117 Braeutigam,Lexikon der kosmetischen Rohstoffe,Norderstedt 2010,p.77
40mgKOH/g未満の更に低い酸価を有する米糠ワックス酸化物を的確に提供する方法への要望がある。
驚くべきことに、米糠ワックスにおける多価アルコールと炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸とから形成されるポリエステルの割合が5重量%未満である場合に、米糠ワックスの酸化の際のプロセスパラメータを適切に選択することによって、DIN ISO2114(2002)に従い測定して40mgKOH/g未満、多くの場合に38mgKOH/g未満、しばしば30mgKOH/g未満の酸価を的確に達成できることがここに見出された。
それ故、本発明の対象の一つは、40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)を製造する方法であって、次のステップ:
i)多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されたポリエステルを、米糠ワックス(R)の全重量を基準にして5重量%未満の量で含む米糠ワックス(R)を用意するステップ;
ii)三酸化クロムと硫酸との混合物(M)を用意するステップ;
iii)撹拌下及び80~150℃の温度において米糠ワックス(R)と混合物(M)とを反応させることによって米糠ワックス(R)の酸化を実施して、米糠ワックス酸化物(O)を得るステップ;
iv)反応を終了し、そしてステップiii)で得られた反応混合物を、水性相から有機相が分かれるまで静置するステップ;
v)有機相を分離するステップ;
vi)任意選択的に、クロム化合物を含む残渣を有機相から除去して、米糠ワックス酸化物(O)を精製された形で得るステップ;
vii)任意選択的に、ステップii)からvi)の順序を繰り返し、この場合、米糠ワックス(R)の代わりに、米糠ワックス酸化物(O)を、場合により精製された形態で、使用するステップ、
を含み、
但し、ステップiii)における酸化が、1~8時間の期間にわたって行われる、方法である。
ステップi)において用意される米糠ワックス(R)は、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス(R)の総重量を基準にして5重量%未満、好ましくは2重量%未満、特に好ましくは0.1~2重量%であることを条件に、任意の米糠ワックスであることができる。多価アルコールと脂肪族カルボン酸(C8~20)とから形成される多価エステルの割合が丁度5重量%またはそれより多い場合は、40mgKOH/g未満の酸化が達成された時には、ステップiv)では、相の分離が起こらないかまたは非常にゆっくりと相の分離が起こる。それにより、40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)の単離は技術的に困難になる。
多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの前記の望ましい割合は、粗製状態の米糠ワックス中に既に含まれ得るが、米糠ワックスの前処理によっても調節できる。好ましくは、前記の割合は、粗製状態の米糠ワックス(R)中に既に含まれる。この場合、米糠ワックス(R)が前処理されないことが好ましい。
これに対して、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの割合が5重量%以上である場合は、米糠ワックス(R)は、ステップi)での用意の前に前処理する必要がある。この場合、この前処理が、米糠ワックス(R)中に含まれるエステルのケン化を含まない場合が有利である。
その代わりに、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルを一種以上の有機溶剤で抽出することが好ましく、この場合、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの5重量%未満の望ましい割合が達成されるまで抽出が行われる。油脂を溶解することができる任意の有機溶剤、例えば酢酸エチルまたはアセトン、好ましくは酢酸エチルが適している。
多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルは、好ましくは、炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸のジ-及びトリグリセリド、特に、天然に米糠に含まれる油、とりわけ米糠油である。応じて、有機溶剤を用いた抽出は脱油であることができる。この場合、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの5重量%未満の割合は、米糠ワックスの油含有率とも称することができる。
好ましくは、米糠ワックス(R)は、多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成される粗製状態でのポリエステルの割合とは無関係に、酸化の前のいずれの時点でも、ケン化によって前処理されない。
ステップii)で用意される、三酸化クロムと硫酸との混合物(M)は、これが、米糠ワックスの酸化可能な構成分を酸化できることを条件に、任意の混合物であることができる。多くの場合に、三酸化クロムと硫酸とのこのような混合物は、クロム硫酸とも称される。
硫酸は、硫酸の割合が少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも96重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%の濃硫酸である。これは、任意選択的に発煙硫酸であることができ、すなわち追加的に三酸化硫黄を含むことができる。混合物(M)中の三酸化クロムの濃度は、好ましくは50~200g/L、特に好ましくは70~150g/L、就中特に好ましくは80~120g/Lである。
本発明による方法のステップiii)では、米糠ワックス酸化物(O)を得るために、米糠ワックス(R)の酸化が、撹拌下及び80~150℃、好ましくは90~140℃、特に好ましくは105~130℃の温度において米糠ワックス(R)を混合物(M)と反応させることによって行われる。
使用される全三酸化クロムと使用される米糠ワックス(R)との重量比は好ましくは1:5~6:5、特に1:3~1:1、特に好ましくは1:2~1:1である。比率が1:5未満である場合は、酸化が低い程度で起こり、米糠ワックスのかなりの明色化を引き起こす。比率が6:5を超える場合は、エステル結合の開裂が特に大きな規模で起こり、その結果、残りの条件に依存して、生成物における所望の酸価の遵守が困難となり得る。
このステップは、任意選択的に、複数のステップに分割することができる。例えば、ステップiii)は、混合物(M)の導入と、その後の米糠ワックス(R)の添加を含むことができる。その代わりに、ステップiii)は、米糠ワックス(R)の導入と、その後の混合物(M)の添加を含むことができる。この場合、それぞれ第二の成分(R)または(M)の添加は、例えば、少しずつ、連続的にまたは一回の仕込みで行うことができ、好ましくは少しずつまたは連続的に、特に好ましくは少しずつ行うことができる。
任意選択的に、添加の間の米糠ワックス(R)及び/または混合物(M)の温度は、前記の反応温度から外れてもよく、第二の成分の添加を行った後になってから初めて、80~150℃、好ましくは90~140℃、特に好ましくは105~130℃の必要な値に調節することができる。例えば、添加の時の温度は、70~130℃、好ましくは80~110℃の値を有することができる。好ましくは、添加の間の米糠ワックス(R)は溶融された形で存在する。
実施形態の一つでは、三酸化クロム及び硫酸からなる用意された混合物(M)を仕込み、そして70~130℃の温度に加温し、そして米糠ワックス(R)を固体の状態で少しずつ加える。添加を行った後、温度を80~150℃に調節し、そして酸化を実施する。
他の実施形態の一つでは、三酸化クロム及び硫酸からなる用意された混合物(M)を仕込み、そして70~130℃の温度に加温し、そして米糠ワックス(R)を溶融した状態で、好ましくは70~130℃の温度で少しずつ加える。添加を行った後、温度を80~150℃に調節し、そして酸化を実施する。
更なる実施形態の一つでは、米糠ワックス(R)を仕込み、そして70~130℃の温度で溶融し、そして三酸化クロム及び硫酸からなる混合物(M)を少しずつ低い温度で加える。添加を行った後、温度を80~150℃に調節し、そして酸化を実施する。
他の実施形態の一つでは、米糠ワックス(R)を仕込み、そして70~130℃の温度で溶融し、そして三酸化クロム及び硫酸からなる混合物(M)を高い温度で、好ましくは70~130℃の温度で少しずつ加える。添加を行った後、温度を80~150℃に調節し、そして酸化を実施する。
更に別の実施形態の一つでは、米糠ワックス(R)、及び三酸化クロムと硫酸からなる混合物(M)を室温で一緒に仕込み、そして80~150℃の温度にゆっくりと加温し、そしてこの温度で酸化を実施する。
少なくとも、80~150℃での酸化は、好ましくは米糠ワックス(R)及び/または混合物(M)の添加も、撹拌下に行われる。この場合、前記の攪拌は任意の方法で行うことができ、例えば、機械的に駆動される攪拌機または磁気的に駆動される攪拌機を用いて行うことができる。好ましくは、前記の攪拌は、機械的に駆動される攪拌機を用いて、特に好ましくはKPGスターラを含む機械的に駆動される攪拌機を用いて行われる。
ステップiii)における攪拌速度は、好ましくは100~500回転/分(一分間当たりの回転数)、特に好ましくは120~300回転/分、就中特に好ましくは170~250回転/分の範囲であり、というのも、100回転/分未満の攪拌速度では、効率的な酸化に必要な混合が与えられず、500回転/分を超える攪拌速度では、もはや分離できないエマルションが生成するリスクが高まるからである。
80~150℃の温度におけるステップiii)での米糠ワックスの酸化は1~8時間、好ましくは2~5時間、特に好ましくは3~4.5時間の期間にわたって行われる。
更に、米糠ワックス(R)及び混合物(M)からなる反応混合物に酸化促進剤を添加しないことが有利である、というのも、これは、多くの場合に、エステル結合の開裂を招き得、それ故、米糠ワックス酸化物(O)における酸価を高める虞があるからである。それ故、好ましくは、酸化促進剤、特に、乳化剤(例えば、アルカンスルホネート、フッ素化アルカンスルホネート)、界面活性剤、ポリマー型界面活性剤、窒素含有カチオン性界面活性剤、相間移動触媒、フェントン試薬金属塩、塩酸または類似物などの酸化促進剤は、酸化において使用されない。
所望の反応期間に到達した後、ステップiv)において反応を終了し、そして反応混合物を、有機相が水性相から分かれるまで静置する。「反応の終了」とは、攪拌を中断し及び加熱を終了することと理解されたい。
この時に、硫酸及びクロム化合物を含む沈降する水性相からの米糠ワックス酸化物(O)を含む浮上する有機相の分離が始まる。任意選択的に、反応混合物は、静置の前に、水性相から有機相が分かれた後にその有機相の分離を容易にする装置に移すことができる。このような装置の一例は、分液漏斗である。この目的のための他の装置は、当業者には既知であり、本発明において使用可能である。
ステップv)では、米糠ワックス酸化物を含む有機相が分離される。これは、例えば分液漏斗を用いて行うことができる。その代わりに、浮上している有機相を、適切な技術的手段を用いてすくい取ることもできる。また同様に、容器の縁からの有機相のデカンテーションも可能である。相分離による水性相からの有機相の分離のための手段は、原則的に当業者には既知であり、本発明において使用可能である。
更に、任意選択的に、ステップvi)において、クロム化合物を含む残渣を有機相から除去し、それにより、米糠ワックス酸化物を精製された形で得るために、米糠ワックス酸化物を含む分離された有機相を更に処理することができる。
この処理は、有機物質からの極性及び/または水溶性物質の分離に適した任意の方法で行うことができる。例えば、有機相のクロマトグラフィによる精製またはシリカゲルを通した濾過を行うことができる。
好ましくは、クロム化合物を含む残渣の除去は、シュウ酸及び/または硫酸の水溶液を用いた有機相の洗浄によって行われる。代替的に、クロム化合物を含む残渣の除去は、好ましくは、水を用いた有機相の洗浄によって行うことができる。代替的に、クロム化合物を含む残渣の除去は、好ましくは、有機相の遠心分離によって行うことができる。
ここで「洗浄」とは、それぞれ、ステップiv)及びv)による有機相と洗浄のための各々の剤との混合及びその後の相分離のことと解されたい。
好ましい実施形態の一つでは、クロム化合物を含む残渣の除去は、シュウ酸及び硫酸の水溶液を用いて有機相を一回または複数回洗浄し、その後に、水を用いて有機相を一回または複数回洗浄することによって行われる。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、クロム化合物を含む残渣の除去は、シュウ酸及び硫酸の水溶液を用いて有機相を一回または複数回洗浄し、その後に、有機相を遠心分離することによって行われる。
更に別の好ましい実施形態の一つでは、クロム化合物を含む残渣の除去は、水を用いて有機相を一回または複数回洗浄し、その後に、有機相を遠心分離することによって行われる。
格別好ましい実施形態の一つでは、クロム化合物を含む残渣の除去は、シュウ酸及び硫酸の水溶液を用いて有機相を一回または複数回洗浄し、その後に、水を用いて有機相を一回または複数回洗浄し、その後に有機相を遠心分離することによって行われる。
任意選択的に、ステップvii)において、ステップii)からvi)の順序を繰り返すことができ、この際、米糠ワックス(R)の代わりに、米糠ワックス酸化物(O)が、場合によっては精製された形で使用される。この場合、ステップii)~vi)の第一回目の実施では、用意した全三酸化クロムの少なくとも半分を使用し、そしてステップii)からvi)の繰り返し(複数回可)の際に残りの部分を使用する。好ましくは、ステップii)からvi)の順序は繰り返されない。
本発明の更に別の対象の一つは、本発明による方法に従い製造された、(DIN ISO2114(2002)に従い測定して)40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)である。好ましくは、該米糠ワックス酸化物は、38mgKOH/g未満、多くの場合に30mgKOH/g未満、特に好ましくは10~27mgKOH/gの酸価を有する。
本発明による米糠ワックス酸化物(O)は、多価アルコールと炭素原子数が22~36の脂肪族カルボン酸とから形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして好ましくは5重量%未満、特に好ましくは3重量%未満、就中特に好ましくは1重量%未満である。
一実施形態では、該米糠ワックス酸化物(O)は、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~25重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~10重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして50~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
を含む。
好ましい一実施形態では、該米糠ワックス酸化物(O)は、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~15重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~7重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~4重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして65~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
を含む。
好ましい一実施形態では、該米糠ワックス酸化物(O)は、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~10重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~3重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして75~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
を含む。
また同様に、40mgKOH/g未満の酸価を有し、かつ多価アルコールと炭素原子数が22~36の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして5重量%未満である、米糠ワックス酸化物(O)であって、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~25重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~10重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして50~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分、
を含む米糠ワックス酸化物(O)も本発明の対象である。
この場合、好ましくは、リグノセリン酸は、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして最大で5重量%、特に好ましくは最大で3重量%の割合で、米糠ワックス酸化物(O)中に含まれる。
重量割合及び鎖長分布は、例えば、ガスクロマトグラフィにより測定することができる。
更に、本発明による米糠ワックス酸化物は、DIN ISO2176(1997)に従い測定して典型的には70℃と90℃との間、好ましくは75℃と80℃との間の滴点を有する。
好ましくは、本発明による米糠ワックス酸化物は、従来の酸化物(例えばモンタンワックスベース)と比べて、格別明るい色乃至白色を有する。この色は、DIN6162(2014)に従い測定したヨウ素色値に基づいて決定できる。これは、本発明による米糠ワックス酸化物において、20未満、好ましくは6未満、特に2未満である。
好ましくは、本発明による米糠ワックス酸化物は、10mm-1未満、好ましくは5mm-1未満、特に好ましくは3mm-1未満の、DIN51579(2010)に従い測定される針貫入値(NPZ)を有する。
好ましくは、米糠ワックスの酸化によって、DIN ISO3681(2007)に従い測定されるケン化価が、最大で40%、好ましくは最大で30%、特に好ましくは最大で20%高まる。ケン化価の上昇は、ワックスエステルの解裂及びその後のワックスアルコールから酸への酸化によって機構的に説明することができる。追加的に、不飽和炭素-炭素結合の一部が酸化剤によって解裂され、同様に酸へと酸化される。
そのため、ケン化価は、既知のようにケン化価が変化しないケン化とは区別される及び単に製品の明色化が起こる他の漂白プロセスとは区別される、実際に起こった酸化の目安でもある。例えば、過酸化水素を用いた米糠ワックスの漂白は、本発明の意味においてはワックスの化学的変性を起こさない。なぜならば、この場合、着色性の不純物及び副成分のみが除去され、ワックス構造本体は変化しないからである。
本発明による米糠ワックス酸化物(O)は、300℃の温度に達するまでの(加熱速度:5℃/分)質量損失が典型的には15%未満、好ましくは10%未満であるDIN51006(2005)に従い測定して格別良好な熱安定性を特徴とする。
本発明の更に別の対象は、前記の米糠ワックス酸化物(O)を、金属水酸化物(例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)及びZn(OH)など)、金属酸化物(例えば、CaOなど)、金属炭酸塩(例えば、NaCO、CaCOなど)または水性アルカリ液(例えば、NaOH、KOHなど)からなる群から選択される塩基性金属塩でケン化することによって製造されるケン化された米糠ワックス酸化物(V)である。好ましいものは、アルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ土類金属水酸化物、特にNaOH、KOH及び/またはCa(OH)である。
対応する製造指示は、例えばDE4019167(特許文献13)に記載されている。好ましくは、該ケン化された生成物は、再生可能な原料ベースと比べると、300℃の温度の達成までの(加熱速度:5℃/分)質量損失が10%未満、好ましくは5%未満のDIN51006(2005)に従い測定される格別良好な熱安定性を特色とする。
同様に、本発明の対象は、農業または林業の目的のためのあるいはプラスチック加工、ケア用品、印刷インキ及び/またはコーティングにおける添加剤としての、本発明による米糠ワックス酸化物(O)または本発明によるケン化された米糠ワックス酸化物(V)の使用である。
本発明を、以下の例及び請求項によって更に詳しく説明する。
物質の特徴付け:
モンタンワックス及びモンタンワックス誘導体の特徴付けにも使用される表1に記載の標準法を、米糠ワックス、米糠ワックス酸化物及び米糠ワックスの更に別の誘導体の特性値の決定のために使用する。
Figure 0007394982000001
鎖長分布
米糠ワックス酸化物の構成分の鎖長分布はガスクロマトグラフィにより決定した。比較物質として、炭素鎖長がC6及びC36の間のワックス酸及びワックスアルコールを使用した。C44~C58のワックスエステルはモデル物質の組み合わせによって調製した。米糠ワックスのガスクロマトグラフィのピークを確定するために、ワックス試料にそれぞれ規定量の個々の成分を加え、そして対応するピークの面積の大きな増加を観察した。測定条件を表2に示す。
Figure 0007394982000002
原料としては、それぞれ粗製状態の五種の異なる米糠ワックス(RBW1~5)を使用した。粗製状態のこれらの米糠ワックスの特性を表3に示す。
Figure 0007394982000003
例1~9
スターラ、温度センサ、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた3L反応容器に、硫酸中の三酸化クロム(濃度:100gCrO/L)を表4に記載した量で仕込み、そして100℃に加温した。次いで、粗製状態の溶融(90℃)した米糠ワックスを少しずつ加えた。反応混合物の温度を110℃に調節し、そしてKPGスターラを用いて4時間、約200回転/分で攪拌した。加熱及び攪拌を中止した。相が分かれたら直ぐに、水性相を分離して除いた。
有機相を、シュウ酸及び硫酸の水溶液で洗浄し、次いで水で洗浄してクロム残渣を除去し、温かい遠心ガラス管に排出し、そして遠心分離した。
例2、3、4及び9(比較例)では、酸化の後に相の分離は認めることができなかった。酸化の条件及び米糠ワックス酸化物の性質を表4に示す。
例1について測定された鎖長分布を図1に示す。
Figure 0007394982000004
例10及び11
スターラ、温度センサ、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた1L反応容器中に、例1からの米糠ワックス酸化物を窒素雰囲気下に溶融し、そして表5に記載した量のCa(OH)と混合する。この反応混合物を、規定の酸価に達するまで攪拌し、次いでこの反応混合物を高温の状態で圧力濾過する。
Figure 0007394982000005
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)を製造する方法であって、次のステップ:
i)多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されたポリエステルを、米糠ワックス(R)の全重量を基準にして5重量%未満の量で含む米糠ワックス(R)を用意するステップ;
ii)三酸化クロムと硫酸との混合物(M)を用意するステップ;
iii)撹拌下及び80~150℃の温度において米糠ワックス(R)と混合物(M)とを反応させることによって米糠ワックス(R)の酸化を実施して、米糠ワックス酸化物(O)を得るステップ;
iv)反応を終了し、そしてステップiii)で得られた反応混合物を、水性相から有機相が分かれるまで静置するステップ;
v)有機相を分離するステップ;
vi)任意選択的に、クロム化合物を含む残渣を有機相から除去して、米糠ワックス酸化物(O)を精製された形で得るステップ;
vii)任意選択的に、ステップii)からvi)の順序を繰り返し、この場合、米糠ワックス(R)の代わりに、米糠ワックス酸化物(O)を、場合により精製された形態で、使用するステップ、
を含み、
但し、ステップiii)における酸化が、1~8時間の期間にわたって行われる、方法。
2. 使用される全三酸化クロムと使用される米糠ワックス(R)との重量比が1:5~6:5である、前記1.に記載の方法。
3. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及びシュウ酸及び/または硫酸の水溶液を用いた有機相の洗浄を含む、前記1.または2.に記載の方法。
4. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及び水を用いた有機相の洗浄を含む、前記1.~3.のいずれか一つに記載の方法。
5. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及び有機相の遠心分離を含む、前記1.~4.のいずれか一つに記載の方法。
6. 混合物(M)中の三酸化クロムの濃度が50~200g/Lである、前記1.~5.のいずれか一つに記載の方法。
7. ステップiii)における酸化が2~5時間の期間にわたって行われる、前記1.~6.のいずれか一つに記載の方法。
8. ステップiii)における撹拌速度が100回転/分と500回転/分との間である、前記1.~7.のいずれか一つに記載の方法。
9. 追加的な酸化促進剤が反応混合物に加えられない、前記1.~8.のいずれか一つに記載の方法。
10. 前記1.~9.のいずれか一つに記載の方法に従い製造される、40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)。
11. 多価アルコールと炭素原子数が22~36の脂肪族カルボン酸とから形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして5重量%未満である、前記10.に記載の米糠ワックス酸化物(O)。
12. 前記10.または11.に記載の米糠ワックス酸化物(O)であって、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~25重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~10重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして50~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
を含む、米糠ワックス酸化物(O)。
13. 40mgKOH/g未満の酸価を有し、かつ多価アルコールと炭素原子数が22~36の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして5重量%未満である、米糠ワックス酸化物(O)であって、
a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~25重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~10重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして50~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
を含む、米糠ワックス酸化物(O)。
14. 米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして最大で5重量%のリグノセリン酸を含む、前記10.~13.のいずれか一つに記載の米糠ワックス酸化物(O)。
15. 前記10.~14.のいずれか一つに記載の米糠ワックス酸化物(O)を塩基性金属塩、好ましくはアルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ土類金属水酸化物を用いてケン化することによって製造される、ケン化された米糠ワックス酸化物(V)。
16. 農業または林業の目的のためのあるいはプラスチック加工、ケア用品、印刷インキ及び/またはコーティングにおける添加剤としての、前記10.~14.のいずれか一つに記載の米糠ワックス酸化物(O)または前記15.に記載のケン化された米糠ワックス酸化物(V)の使用。

Claims (13)

  1. 40mgKOH/g未満の酸価を有する米糠ワックス酸化物(O)を製造する方法であって、次のステップ:
    i)多価アルコール及び炭素原子数が8~20の脂肪族カルボン酸から形成されたポリエステルを、米糠ワックス(R)の全重量を基準にして5重量%未満の量で含む米糠ワックス(R)を用意するステップ;
    ii)三酸化クロムと硫酸との混合物(M)を用意するステップ;
    iii)撹拌下及び80~150℃の温度において米糠ワックス(R)と混合物(M)とを反応させることによって米糠ワックス(R)の酸化を実施して、米糠ワックス酸化物(O)を得るステップ;
    iv)反応を終了し、そしてステップiii)で得られた反応混合物を、水性相から有機相が分かれるまで静置するステップ;
    v)有機相を分離するステップ;
    vi)任意選択的に、クロム化合物を含む残渣を有機相から除去して、米糠ワックス酸化物(O)を精製された形で得るステップ;
    vii)任意選択的に、ステップii)からvi)の順序を繰り返し、この場合、米糠ワックス(R)の代わりに、米糠ワックス酸化物(O)を、場合により精製された形態で、使用するステップ、
    を含み、
    但し、ステップiii)における酸化が、1~8時間の期間にわたって行われ、及び
    使用される全三酸化クロムと使用される米糠ワックス(R)との重量比が1:5~6:5である、方法。
  2. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及びシュウ酸及び/または硫酸の水溶液を用いた有機相の洗浄を含む、請求項に記載の方法。
  3. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及び水を用いた有機相の洗浄を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. ステップvi)におけるクロム化合物を含む残渣の除去が行われ、及び有機相の遠心分離を含む、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
  5. 混合物(M)中の三酸化クロムの濃度が50~200g/Lである、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
  6. ステップiii)における酸化が2~5時間の期間にわたって行われる、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
  7. ステップiii)における撹拌速度が100回転/分と500回転/分との間である、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
  8. 追加的な酸化促進剤が反応混合物に加えられない、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
  9. 40mgKOH/g未満の酸価を有し、かつ多価アルコールと炭素原子数が22~36の脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステルの割合が、米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして5重量%未満である、米糠ワックス酸化物(O)であって、
    a)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして3~25重量%の、炭素原子数が8~36の遊離の脂肪族カルボン酸;
    b)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~10重量%の、炭素原子数が24~36の遊離の脂肪族アルコール;
    c)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~5重量%の、炭素原子数が10~30の遊離の脂肪族ジカルボン酸;
    d)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして50~97重量%の、炭素原子数が42~64の真性エステル;及び
    e)米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして0~15重量%の、米糠ワックス中に含まれる更に別の天然構成分;
    を含む、米糠ワックス酸化物(O)。
  10. 米糠ワックス酸化物(O)の総重量を基準にして最大で5重量%のリグノセリン酸を含む、請求項に記載の米糠ワックス酸化物(O)。
  11. 請求項9または10に記載の米糠ワックス酸化物(O)を塩基性金属塩を用いてケン化することによって製造される、ケン化された米糠ワックス酸化物(V)。
  12. 請求項9または10に記載の米糠ワックス酸化物(O)をアルカリ金属水酸化物及び/またはアルカリ土類金属水酸化物を用いてケン化することによって製造される、ケン化された米糠ワックス酸化物(V)。
  13. 農業または林業の目的のためのあるいはプラスチック加工、ケア用品、印刷インキ及び/またはコーティングにおける添加剤としての、請求項9または10に記載の米糠ワックス酸化物(O)または請求項11または12に記載のケン化された米糠ワックス酸化物(V)の使用。
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