以下に、本開示の実施の形態に係る電力変換装置、モータ駆動装置および空気調和機を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成例を示す第1の図である。電力変換装置1は、商用電源110および圧縮機315に接続される。電力変換装置1は、商用電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電力を所望の振幅および位相を有する第2の交流電力に変換し、圧縮機315に供給する。電力変換装置1は、整流部130と、昇圧部600と、電流検出部501と、平滑部200と、電流検出部502と、インバータ310と、電流検出部313a,313bと、制御部400と、を備える。なお、電力変換装置1では、整流部130、および昇圧部600によって整流昇圧部700を構成している。また、電力変換装置1、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2を構成している。
整流部130は、整流素子131~134によって構成されるブリッジ回路を有し、商用電源110から供給される電源電圧Vsの第1の交流電力を整流して出力する。整流部130は、全波整流を行うものである。
昇圧部600は、リアクトル631、スイッチング素子632、およびダイオード633を有する。昇圧部600は、制御部400の制御によって、スイッチング素子632をオンオフし、整流部130から出力された電力を昇圧し、昇圧した電力を平滑部200に出力する。本実施の形態において、昇圧部600は、制御部400によって、スイッチング素子632が連続的にスイッチング動作を行うフルPAM(Pulse Amplitude Modulation)で制御される。電力変換装置1は、昇圧部600によって商用電源110の力率改善制御を行い、平滑部200のコンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcを電源電圧Vsよりも高い電圧にする。
整流昇圧部700は、整流部130および昇圧部600によって、商用電源110から供給される第1の交流電力を整流するとともに、商用電源110から供給される第1の交流電力の電圧を昇圧する。本実施の形態では、整流昇圧部700において、整流部130および昇圧部600は直列に接続されている。
電流検出部501は、昇圧部600によって昇圧された電力の電流値を検出し、検出した電流値を制御部400に出力する。
平滑部200は、昇圧部600の出力端に接続される。平滑部200は、平滑素子としてコンデンサ210を有し、昇圧部600によって昇圧された電力を平滑化する。コンデンサ210は、例えば、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどである。コンデンサ210は、整流部130によって整流された電力を平滑化するような容量を有し、平滑化によりコンデンサ210に発生する電圧は商用電源110の全波整流波形形状ではなく、直流成分に商用電源110の周波数に応じた電圧リプルが重畳した波形形状となり、大きく脈動しない。この電圧リプルの周波数は、商用電源110が単相の場合は電源電圧Vsの周波数の2倍成分となり、商用電源110が三相の場合は6倍成分が主成分となる。商用電源110から入力される電力とインバータ310から出力される電力が変化しない場合、この電圧リプルの振幅はコンデンサ210の容量によって決まる。例えば、コンデンサ210に発生する電圧リプルの最大値が最小値の2倍未満となるような範囲で脈動している。
電流検出部502は、インバータ310に流れる電流の電流値を検出し、検出した電流値を制御部400に出力する。
インバータ310は、平滑部200、すなわちコンデンサ210の両端に接続される。インバータ310は、スイッチング素子311a~311f、および還流ダイオード312a~312fを有する。インバータ310は、制御部400の制御によってスイッチング素子311a~311fをオンオフし、整流昇圧部700および平滑部200から出力される電力を所望の振幅および位相を有する第2の交流電力に変換して、モータ314が搭載された機器である圧縮機315に出力する。電流検出部313a,313bは、各々、インバータ310から出力される3相の電流のうち1相の電流値を検出し、検出した電流値を制御部400に出力する。なお、制御部400は、インバータ310から出力される3相の電流値のうち2相の電流値を取得することで、インバータ310から出力される残りの1相の電流値を算出することができる。圧縮機315は、圧縮機駆動用のモータ314を有する負荷である。モータ314は、インバータ310から供給される第2の交流電力の振幅および位相に応じて回転し、圧縮動作を行う。例えば、圧縮機315が空気調和機などで使用される密閉型圧縮機の場合、圧縮機315の負荷トルクは定トルク負荷とみなせる場合が多い。モータ314について、図1ではモータ巻線がY結線の場合を示しているが、一例であり、これに限定されない。モータ314のモータ巻線は、Δ結線であってもよいし、Y結線とΔ結線とが切り替え可能な仕様であってもよい。
なお、電力変換装置1において、図1に示す各部の構成および配置は一例であり、各部の構成および配置は図1で示される例に限定されない。例えば、整流昇圧部700は、4つのスイッチング素子を備え、制御部400の制御によって4つのスイッチング素子をオンオフし、商用電源110から出力された第1の交流電力を整流するとともに昇圧し、昇圧した電力を平滑部200に出力してもよい。また、整流昇圧部700は、整流部130に対して昇圧部が並列に接続されるような構成であってもよい。
図2は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成例を示す第2の図である。電力変換装置1は、図1に示す電力変換装置1に対して、整流昇圧部700を整流昇圧部701に置き換えたものである。なお、電力変換装置1、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2を構成している。整流昇圧部701は、リアクトル631、スイッチング素子611~614、および各々がスイッチング素子611~614のうちの1つに並列に接続される整流素子621~624を有する。また、本構成のリアクトル631は、商用電源110と整流昇圧部701との片側接続線のみに挿入されているが、両側接続線に挿入されていてもよい。整流昇圧部701は、制御部400の制御によって、スイッチング素子611~614をオンオフし、商用電源110から出力された第1の交流電力を整流するとともに昇圧し、昇圧した電力を平滑部200に出力する。整流昇圧部701は、制御部400によって、スイッチング素子611~614が連続的にスイッチング動作を行うフルPAMで制御される。
図3は、実施の形態1に係る電力変換装置1の構成例を示す第3の図である。電力変換装置1は、図1に示す電力変換装置1に対して、整流昇圧部700を整流昇圧部702に置き換えたものである。なお、電力変換装置1、および圧縮機315が備えるモータ314によって、モータ駆動装置2を構成している。整流昇圧部702は、リアクトル120、整流部130、および昇圧部601を有する。図1に示す電力変換装置1において、昇圧部600は、整流部130の後段、すなわち電力変換装置1の内部で整流部130と直列に接続されていたが、昇圧部601は、電力変換装置1の内部で整流部130と並列に接続されている。昇圧部601は、整流素子621~624、およびスイッチング素子611を有する。昇圧部601は、制御部400の制御によって、スイッチング素子611をオンオフし、商用電源110から出力された第1の交流電力を昇圧し、昇圧した電力を整流部130に出力する。整流昇圧部702の昇圧部601は、制御部400の制御によって、商用電源110から供給される第1の交流電力の周波数の半周期に1回または複数回、スイッチング素子611のスイッチング動作を行う簡易スイッチングで制御される。
以降では、特に断らない限り、図1に示す電力変換装置1を例にして説明する。また、以降の説明において、電流検出部501,502,313a,313bをまとめて検出部と称することがある。また、電流検出部501,502,313a,313bで検出された電流値を検出値と称することがある。電力変換装置1は、前述の検出部以外の検出部を備えていてもよい。図1では省略しているが、電力変換装置1は、一般的にコンデンサ電圧Vdcを検出する検出部を備えている。電力変換装置1は、商用電源110から供給される第1の交流電力の電圧、電流などを検出する検出部を備えていてもよい。
制御部400は、電流検出部501から昇圧部600によって昇圧された電力の電流値を取得し、電流検出部502からインバータ310に流れる電流の電流値を取得し、電流検出部313a,313bからインバータ310によって変換された所望の振幅および位相を有する第2の交流電力の電流値を取得する。制御部400は、各検出部によって検出された検出値を用いて、整流昇圧部700の昇圧部600の動作、具体的には、昇圧部600が有するスイッチング素子632のオンオフを制御する。また、制御部400は、各検出部によって検出された検出値を用いて、インバータ310の動作、具体的には、インバータ310が有するスイッチング素子311a~311fのオンオフを制御する。本実施の形態において、制御部400は、整流昇圧部700の動作を制御する。制御部400は、整流昇圧部700の動作を制御し、商用電源110から供給される第1の交流電力の力率改善制御、および平滑部200のコンデンサ210の平均電圧制御を行う。また、制御部400は、整流昇圧部700から平滑部200のコンデンサ210に流入する電力の脈動に応じた脈動を含む第2の交流電力をインバータ310から負荷である圧縮機315に出力するようにインバータ310の動作を制御する。平滑部200のコンデンサ210に流入する電力の脈動に応じた脈動とは、例えば、平滑部200のコンデンサ210に流入する電力の脈動の周波数などによって変動する脈動である。これにより、制御部400は、平滑部200のコンデンサ210に流れる電流を抑制する。なお、制御部400は、各検出部から取得した全ての検出値を用いなくてもよく、一部の検出値を用いて制御を行ってもよい。
つづいて、電力変換装置1が備える制御部400の動作について説明する。本実施の形態では、電力変換装置1において、インバータ310および圧縮機315によって発生する負荷が一定の負荷とみなすことができ、平滑部200から出力される電流で見た場合、平滑部200に定電流負荷が接続されているものとして、以降の説明を行う。ここで、図1に示すように、昇圧部600から流れる電流を電流I1とし、インバータ310に流れる電流を電流I2とし、平滑部200から流れる電流を電流I3とする。電流I2は、電流I1と電流I3とを併せた電流となる。電流I3は、電流I2と電流I1との差分、すなわち電流I2-電流I1として表すことができる。電流I3は、平滑部200の放電方向を正方向とし、平滑部200の充電方向を負方向とする。すなわち、平滑部200には、電流が流入することもあり、電流が流出することもある。
図4は、比較例として、平滑部200で昇圧部600から出力される電流を平滑化し、インバータ310に流れる電流I2を一定にした場合の各電流I1~I3および平滑部200のコンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcの例を示す図である。上から順に、電流I1、電流I2、電流I3、および電流I3に応じて発生するコンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcを示している。電流I1,I2,I3の縦軸は電流値を示し、コンデンサ電圧Vdcの縦軸は電圧値を示している。横軸は全て時間tを示している。なお、電流I2,I3には、実際にはインバータ310のキャリア成分が重畳されるが、ここでは省略する。以降についても同様とする。図4に示すように、電力変換装置1において、仮に、昇圧部600から流れる電流I1が平滑部200によって十分に平滑化された場合、インバータ310に流れる電流I2は一定の電流値となる。しかしながら、平滑部200のコンデンサ210には、大きな電流I3が流れ、劣化の要因となる。そのため、本実施の形態では、電力変換装置1において、制御部400は、平滑部200に流れる電流I3を低減するように、インバータ310に流れる電流I2を制御、すなわちインバータ310の動作を制御する。
図5は、実施の形態1に係る電力変換装置1の制御部400がインバータ310の動作を制御して平滑部200に流れる電流I3を低減したときの各電流I1~I3および平滑部200のコンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcの例を示す図である。上から順に、電流I1、電流I2、電流I3、および電流I3に応じて発生するコンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcを示している。電流I1,I2,I3の縦軸は電流値を示し、コンデンサ電圧Vdcの縦軸は電圧値を示している。横軸は全て時間tを示している。電力変換装置1の制御部400は、図5に示すような電流I2がインバータ310に流れるようにインバータ310の動作を制御することによって、図4の例と比較して、昇圧部600から平滑部200に流れ込む電流の周波数成分を低減し、平滑部200に流れる電流I3を低減することができる。具体的には、制御部400は、電流I1の周波数成分を主成分とした脈動電流を含む電流I2がインバータ310に流れるようにインバータ310の動作を制御する。
電流I1の周波数成分は、商用電源110から供給される交流電流の周波数、整流部130の構成、および昇圧部600のスイッチング素子632のスイッチング速度によって決定される。そのため、制御部400は、電流I2に重畳する脈動電流の周波数成分を、予め定めた振幅および位相を有する成分とすることができる。電流I2に重畳される脈動電流の周波数成分は、電流I1の周波数成分の相似波形となる。制御部400は、電流I2に重畳する脈動電流の周波数成分を電流I1の周波数成分に近付けていくに連れて、平滑部200に流れる電流I3を低減し、コンデンサ電圧Vdcに発生する脈動電圧を低減することができる。
制御部400が、インバータ310の動作を制御することによってインバータ310に流れる電流の脈動を制御することは、インバータ310から圧縮機315に出力される第2の交流電力の脈動を制御することと同じである。制御部400は、インバータ310から出力される第2の交流電力に含まれる脈動が、整流昇圧部700から出力される電力の脈動よりも小さくなるようにインバータ310の動作を制御する。制御部400は、コンデンサ電圧Vdcの電圧リプル、すなわちコンデンサ210に発生する電圧リプルが、インバータ310から出力される第2の交流電力にコンデンサ210に流入する電力の脈動に応じた脈動が含まれないときのコンデンサ210に発生する電圧リプルよりも小さくなるように、インバータ310から出力される第2の交流電力に含まれる脈動の振幅および位相を制御する。インバータ310から出力される第2の交流電力にコンデンサ210に流入する電力の脈動に応じた脈動が含まれないときとは、図4に示すような制御のことである。
なお、商用電源110から供給される交流電流については、特に限定されず、単相であってもよいし、3相であってもよい。制御部400は、電流I2に重畳する脈動電流の周波数成分について、商用電源110から供給される第1の交流電力に応じて決定すればよい。具体的には、制御部400は、インバータ310に流れる電流I2の脈動波形を、商用電源110から供給される第1の交流電力が単相の場合は第1の交流電力の周波数の2倍の周波数成分、または商用電源110から供給される第1の交流電力が3相の場合は第1の交流電力の周波数の6倍の周波数成分を主成分とする脈動波形に直流分を加算した形状に制御する。脈動波形は、例えば、正弦波の絶対値の形状、または正弦波の形状とする。この場合、制御部400は、正弦波の周波数の整数倍の成分のうち少なくとも1つの周波数成分を予め規定された振幅として脈動波形に加算してもよい。また、脈動波形は、矩形波の形状、または三角波の形状であってもよい。この場合、制御部400は、脈動波形の振幅および位相を予め規定された値としてもよい。
制御部400は、コンデンサ210にかかる電圧またはコンデンサ210に流れる電流を用いて、インバータ310から出力される第2の交流電力に含まれる脈動の脈動量を演算してもよいし、商用電源110から供給される第1の交流電力の電圧または電流を用いて、インバータ310から出力される第2の交流電力に含まれる脈動の脈動量を演算してもよい。
また、制御部400は、商用電源110から供給される第1の交流電力の周波数成分と異なる周波数成分を含む第2の交流電力をインバータ310から圧縮機315に出力させるようにインバータ310を制御する場合、インバータ310から圧縮機315に出力される第2の交流電力に含まれる周波数成分を、昇圧部600のスイッチング素子632をオンオフするための駆動信号に重畳させてもよい。すなわち、制御部400は、インバータ310から圧縮機315に出力する第2の交流電力の電力脈動のうち、商用電源110から供給される第1の交流電力が単相の場合は第1の交流電力の周波数の2倍の周波数成分、または商用電源110から供給される第1の交流電力が3相の場合は第1の交流電力の周波数の6倍の周波数成分以外の変動周波数成分を含む電力が整流昇圧部700から出力されるように、整流昇圧部700の動作、具体的には、昇圧部600のスイッチング素子632の動作を制御する。制御部400は、変動周波数成分を、商用電源110に対する指令値を用いて制御してもよいし、変動周波数成分を、商用電源110から供給される第1の交流電力の周波数の40次までの整数倍の成分としない、または規定された値、例えば、所望の規格値以下になるように制御してもよい。
つぎに、電力変換装置1が冷凍サイクル適用機器に搭載された場合における、電力変換装置1の動作について説明する。例えば、電力変換装置1が冷凍サイクル適用機器である空気調和機に搭載された場合、電力変換装置1の運転モードは、空気調和機の動作状態によって大きく変化する。例えば、空気調和機が空調制御対象とする室内において、ユーザの設定温度、すなわちユーザの所望温度と現在の室内温度との温度差が大きい場合、空気調和機に搭載された電力変換装置1の負荷は大きくなる。一方、ユーザの所望温度と現在の室内温度との温度差が小さい場合、空気調和機に搭載された電力変換装置1の負荷は小さくなる。また、空気調和機の運転状態によって平滑部200に流れる電流I3が十分小さい場合、制御部400は、前述のような、平滑部200に流れる電流I3を低減し、コンデンサ電圧Vdcに発生する脈動電圧を低減する制御を敢えて行わなくてもよいことも考えられる。そのため、電力変換装置1において、制御部400は、負荷の動作状態である負荷状態に応じて前述した各種の制御を行い、運転モードを判定する。負荷とは、インバータ310、モータ314、およびモータ314が搭載された機器である。モータ314が搭載された機器とは、例えば、前述の圧縮機315、空気調和機に搭載されたファンなどであるが、これらに限定されない。
図6は、実施の形態1に係る電力変換装置1の運転モードおよび運転モードの内容を示す第1の図である。図7は、実施の形態1に係る電力変換装置1の運転モードおよび運転モードの内容を示す第2の図である。図6は電力変換装置1において昇圧部600の昇圧動作オフの場合の運転モードを示す図であり、図7は電力変換装置1において昇圧部600の昇圧動作オンの場合の運転モードを示す図である。
昇圧動作は、高回転によるモータ314の駆動範囲を確保するため、昇圧部600が商用電源110から供給される電源電圧Vsを昇圧させる動作である。具体的には、制御部400が、昇圧部600のスイッチング素子632のオンオフを制御する。
振動抑制制御は、モータ314の1回転中における圧縮機315などの機械的な機構に起因する負荷トルク変動によって振動が発生する場合に、インバータ310から与えるトルクを負荷トルク変動に合わせることで振動を抑制する制御である。
過変調制御は、モータ314を高回転領域で駆動可能とする駆動のため、インバータ310の出力電圧を大きくする制御である。電力変換装置1は、商用電源110を利用する場合、供給電圧に限りがある。そのため、電力変換装置1は、モータ314を高速回転する場合、供給電圧よりもモータ314の起電力が大きくなり回転が困難となるため、インバータ310からの出力電圧を歪ませて、具体的には3次の高調波成分を含めることで出力電圧の基本波成分を少し持ち上げる。これにより、電力変換装置1は、モータ314の高回転領域を増やすことができる。
定トルク制御は、インバータ310からモータ314に与えるトルクを一定とする制御である。定トルク制御は、定電流制御とも呼ばれる。負荷トルク変動を有するシステムであっても、比較的負荷が軽い領域で運転する場合にはそれほど振動量は大きくない。そのため、インバータ310から与えるトルクを一定とすることで、モータ314の電流波形が正弦波状、すなわち脈動を有さない波形となり、高効率運転ができる。なお、高負荷領域であっても振動が許容できる場合には、定トルク制御を使用可能である。
電源脈動補償制御は、前述のように平滑部200のコンデンサ210に流れる電源脈動に起因するリプル電流を抑制する制御である。電源脈動に起因するリプル電流はコンデンサ210をスルーし、負荷に電力を伝達することで、コンデンサ210のストレスを軽減することができる。
運転モード、すなわち制御部400による電力変換装置1の運転は、整流昇圧部700の動作、モータ314またはモータ314が搭載された機器の振動を低減する振動抑制制御、インバータ310の過変調制御、モータ314に対する定トルク制御、およびコンデンサ210の充放電電流を抑制する電源脈動補償制御、の各有無の組み合わせにより定まる。図6および図7に示す各制御の有無については、制御部400が、負荷状態に応じて判定する。すなわち、制御部400は、負荷状態に応じて、各制御の有無を判定し、運転モードを維持または切り替える。なお、図6および図7の例では、運転モードの具体的な内容として5つの項目を挙げたが、一例であり、これらに限定されない。5つの項目のうち一部の項目を制御の対象にしてもよいし、5つの項目以外の項目をさらに制御の対象にしてもよい。5つの項目以外の項目とは、例えば、弱め磁束制御がある。すなわち、運転には、弱め磁束制御が含まれてもよい。弱め磁束制御は、モータ314に負のd軸電流を与えて見かけ上の起電力を小さくすることで、モータ314の高回転領域を広げる制御である。
電力変換装置1は、負荷状態について、電流値、例えば、電流検出部501の検出値によって電流I1を検出し、電流検出部502の検出値によって電流I2を検出することができる。また、電力変換装置1は、負荷状態について、温度、例えば、空気調和機に搭載される場合、空気調和機が備える室内機の温度センサの検出値、室外機の温度センサの検出値などによって温度を検出することができる。なお、電力変換装置1は、インバータ310の基板周辺に温度センサを備えてインバータ310の基板周辺の温度を検出してもよいし、モータ314の周辺に温度センサを備えてモータ314の周辺の温度を検出してもよい。また、電力変換装置1は、負荷状態について、運転速度、例えば、圧縮機315のモータ314、空気調和機に搭載される図示しないファンなどの運転速度を、制御部400の制御の過程で生成される指令値、または制御部400の制御の過程で運転周波数から推定される推定値などから直接的、または間接的に検出することができる。このように、負荷状態は、インバータ310またはモータ314または圧縮機315を検出対象とした物理量を検出する検出部の検出値、制御部400の制御の過程で生成される指令値、および制御部400の制御の過程で推定される推定値のうち少なくとも1つによって得られる。物理量は、前述の電流値、温度の他、例えば、電圧値などであってもよい。
以下、電力変換装置1が冷凍サイクル適用機器として空気調和機に搭載される場合における、図6および図7に示す各運転モードの概要について説明する。
運転モード1は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード1は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動も小さく、またモータ電圧飽和にも至らず、且つ負荷電流脈動、電源電流脈動も小さい場合の運転等に用いる。
運転モード2は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード2は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動も小さく、またモータ電圧飽和にも至らず、且つ負荷電流脈動も小さいが、電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード3は、昇圧動作無し、振動抑制制御有り、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード3は、昇圧動作は行わず、モータ電圧飽和にも至らず、また負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、メカ起因の振動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード4は、昇圧動作無し、振動抑制制御有り、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード4は、昇圧動作は行わず、モータ電圧飽和にも至らず、また負荷電流脈動も小さいが、メカ起因の振動と電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード5は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード5は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さく、また負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード6は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード6は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さく、また負荷電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策と電源電流脈動抑制を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード7は、昇圧動作無し、振動抑制制御有り、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード7は、昇圧動作は行わず、負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、メカ起因の振動抑制とモータ電圧飽和対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード8は、昇圧動作無し、振動抑制制御有り、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード8は、昇圧動作は行わず、負荷電流脈動は小さいが、メカ起因の振動を抑制し、モータ電圧飽和対策と電源電流脈動対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード9は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード9は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さく、またモータ電圧飽和に至っておらず、且つ電源電流脈動も小さいが、負荷電流脈動による効率低下を抑制(省エネ運転)したい場合の運転等に用いる。
運転モード10は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード10は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さく、またモータ電圧飽和に至っていないが、負荷電流脈動による効率低下を抑え(省エネ運転)、電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード11は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード11は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さく、また電源電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行い、負荷電流脈動による効率低下を抑えたい(省エネ運転)場合の運転等に用いる。
運転モード12は、昇圧動作無し、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード12は、昇圧動作は行わず、メカ起因の振動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行い、負荷電流脈動による効率低下を抑え(省エネ運転)、且つ電源電流脈動対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード13は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード13は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動も小さく、またモータ電圧飽和にも至らず、且つ負荷電流脈動・電源電流脈動も小さい場合の運転等に用いる。
運転モード14は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード14は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、モータ電圧飽和にも至らず、また負荷電流脈動も小さいが、電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード15は、昇圧動作有り、振動抑制制御有り、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード15は、昇圧動作を行う際、モータ電圧飽和にも至らず、また負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、メカ起因の振動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード16は、昇圧動作有り、振動抑制制御有り、過変調制御無し、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード16は、昇圧動作を行う際、モータ電圧飽和にも至らず、また負荷電流脈動も小さいが、メカ起因の振動と電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード17は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード17は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、また負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード18は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード18は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、また負荷電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策と電源電流脈動抑制を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード19は、昇圧動作有り、振動抑制制御有り、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード19は、昇圧動作を行う際、負荷電流脈動や電源電流脈動は小さいが、メカ起因の振動を抑制し、モータ電圧飽和対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード20は、昇圧動作有り、振動抑制制御有り、過変調制御有り、定トルク制御無し、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード20は、昇圧動作を行う際、負荷電流脈動は小さいが、メカ起因の振動を抑制し、モータ電圧飽和対策と電源電流脈動対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード21は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード21は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、またモータ電圧飽和に至っておらず、且つ電源電流脈動も小さいが、負荷電流脈動による効率低下を抑制したい(省エネ運転)場合の運転等に用いる。
運転モード22は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御無し、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード22は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、またモータ電圧飽和に至っていないが、負荷電流脈動による効率低下を抑え(省エネ運転)、電源電流脈動を抑制したい場合の運転等に用いる。
運転モード23は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御無しの組み合わせである。運転モード23は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さく、また電源電流脈動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行い、負荷電流脈動による効率低下を抑えたい(省エネ運転)場合の運転等に用いる。
運転モード24は、昇圧動作有り、振動抑制制御無し、過変調制御有り、定トルク制御有り、および電源脈動補償制御有りの組み合わせである。運転モード24は、昇圧動作を行う際、メカ起因の振動は小さいが、モータ電圧飽和対策を行い、負荷電流脈動による効率低下を抑え(省エネ運転)、且つ電源電流脈動対策を行いたい場合の運転等に用いる。
運転モード1から運転モード24において、制御部400は、例えば、コンデンサ210の容量に応じて電源脈動補償制御の有無を決定することができる。また、制御部400は、モータ314が搭載された機器、すなわち圧縮機315の仕事量に応じて振動抑制制御の有無を決定することができる。
ここで、電力変換装置1は、前述のように空気調和機に搭載される場合、空気調和機の空調条件に応じて運転モードを判定することも可能である。図8は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機のハードウェア構成の例を示す第1の図である。図9は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機のハードウェア構成の例を示す第2の図である。図8は、電力変換装置1に接続される商用電源110が単相電源の場合を示し、図9は、電力変換装置1に接続される商用電源110が三相電源の場合を示している。図8および図9において、構成要素は、電源相数、コンバータ、コンデンサ210、モータ314、およびメカ機構である。なお、図8および図9では、電源相数、およびコンバータを併せて直流電源装置としている。
電源相数について、商用電源110などの電源には単相および多相がある。多相の場合、三相が一般的である。単相電源は、家電製品など、比較的小さな電気製品で用いられる。三相電源は、産業用の電気機器など、比較的大きな電気製品で用いられる。空気調和機において単相電源を用いる機種は、主にルームエアコン、業務用エアコンなどがある。空気調和機において三相電源を用いる機種は、主に業務用エアコン、業務用マルチエアコンなどがある。
コンバータは、交流電力を直流電力に変換する部分であり、例えば、前述の整流昇圧部700,701,702である。コンバータには、整流することで直流電力に変換するパッシブ構成、整流前または整流後にスイッチングすることで直流電圧を可変する、または電源力率、電源高調波などを改善するスイッチ系(以下、SW系と称する。)がある。パッシブ構成の場合、主にリアクトルと整流器で構成される。パッシブ構成は、図1に示す電力変換装置1の整流昇圧部700からスイッチング素子632を削除したような構成である。SW系の場合、主にリアクトル、整流器、スイッチング素子、逆流防止素子などで構成される。SW系の構成によっては、スイッチング素子および逆流防止素子が整流器の役割を兼ねる場合もある。SW系の動作としては、電源周期に対し部分的にスイッチングを行う部分SW系と、電源周期に対し全域でスイッチングを行うフルSW系とがある。部分SW系は、前述の簡易スイッチングであり、スイッチング素子に対する動作を切り替える。フルSW系は、前述のフルPAMであり、スイッチング素子を常に動作させる。部分SW系とフルSW系とは、例えば、電源高調波の規制によって用途が区別される。例えば、電源高調波の規制が比較的厳しい地域へ出荷する機種については、フルSW系で常にコンバータを動作させ、軽負荷および高負荷の場合においてともに電源高調波を改善する。一方で、電源高調波の規制が比較的厳しくない地域へ出荷する機種については、部分SW系で必要な負荷領域のみコンバータを動作させ、電源高調波を改善する。部分SW系とフルSW系とは、例えば、空気調和機の運転範囲によって用途が区別される。空気調和機の高負荷領域の運転範囲拡大のためには、負荷に印加する直流電圧を昇圧する必要があるので、昇圧比を高くできるフルSW系が好ましい。常にコンバータを動作させるフルSW系は、リアクトルのインダクタンス値を小さくできるメリットがあるが、スイッチング損失が発生するデメリットがある。必要な負荷領域のみコンバータを動作させる部分SW系は、スイッチング損失を小さくできるメリットがあるが、リアクトルのインダクタンス値を大きくする必要があるデメリットがある。
コンデンサ210は、前述のように、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどである。モータ314は、前述のように圧縮機315に搭載される。
メカ機構は、圧縮機315の機構を示すものである。空気調和機で使用される圧縮機315には、ロータリー圧縮機、スクロール圧縮機などがある。ロータリー圧縮機には、シングルロータリ方式、ツインロータリ方式と呼ばれる方式がある。シングルロータリ方式は、シリンダーを1つ有する構造であり、回転周期の1fの振動が顕著に表れる。ツインロータリ方式は、シリンダーを2つ有する構造であり、回転周期の2fの振動が顕著に表れる。スクロール圧縮機は、スクロール方式として、固定スクロール方式、揺動スクロール方式などと呼ばれる渦巻体を持つ方式である。スクロール圧縮機は、回転周期の1f~3fの振動が顕著に表れるが、振動のピークは分散している。振動の面では、シングルロータリ方式、ツインロータリ方式、スクロール方式の順で大きいという傾向がある。コストの面では、シングルロータリ方式、ツインロータリ方式、スクロール方式の順で低いという傾向がある。
図10から図33は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機において、図8に示した単相電源に対応した機種の構成における空調条件と、図6および図7に示した運転モードとの関係を示す図である。図10から図33の詳細については後述する。図34は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の冷房運転時の消費電力の変化の例を示す図である。図35は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の暖房運転時の消費電力の変化の例を示す図である。図34および図35において、横軸は時間を示し、縦軸は消費電力を示している。図10から図33で示される空気調和機としての空調条件は、冷房中間、冷房定格、暖房中間、暖房定格、および暖房低温があり、さらに、定格負荷領域である冷房定格および暖房定格、さらに高負荷領域である暖房低温の空調条件から保護に入るモードを加えて記載している。なお、冷房中間および暖房中間の空調条件をまとめて中間負荷領域としている。
図34に示すように、ユーザ操作によって冷房動作モードに入った運転開始直後は、室内温度と設定された温度とが離れている状態である。圧縮機315は、モータ314が高速回転で運転し、仕事量が多い状態である。このような状態が冷房定格と呼ばれる空調条件を表し、消費電力は高い状態にある。冷房定格で十分に動作を行った時点では、室内温度と設定された温度とが近くなった状態である。圧縮機315は、モータ314が低速回転に移行して運転し、仕事量が少ない状態となる。このような状態が冷房中間と呼ばれる空調条件を表し、消費電力は低い状態にある。また、冷房定格の負荷条件において、熱サイクルの温度を保護するなどの目的で、圧縮機315のモータ314の回転数を高速回転から低速回転に一時的に移行する場合がある。このような保護動作を行った場合、モータ314が低速回転ではあるが、圧縮機315の仕事量が比較的大きい状態となる。
また、図35に示すように、ユーザ操作によって暖房動作モードに入った運転開始直後は、室内温度と設定された温度とが離れている状態である。圧縮機315は、モータ314が高速回転で運転し、仕事量が多い状態である。このような状態が暖房定格と呼ばれる空調条件を表し、消費電力は高い状態にある。暖房運転においては、暖房定格時よりも外気温が低い環境での動作モードである、暖房低温と呼ばれる空調条件が存在する。暖房低温は、暖房定格よりも負荷が大きく、消費電力はさらに高い状態にある。また、暖房定格、暖房低温などの空調条件において、熱サイクルの温度を保護するなどの目的で、圧縮機315のモータ314の回転数を高速回転から低速回転に一時的に移行する場合がある。このような保護動作を行った場合、モータ314が低速回転ではあるが、圧縮機315の仕事量が比較的大きい状態となる。さらに、暖房運転においては、室外機の熱交換器部分に霜が付く着霜という現象がある。着霜すると熱交換がうまく行えず、負荷が大きくなるうえに空気調和機の空調効果が得られにくくなる。そこで、除霜と呼ばれる霜取りの運転が入ることがある。除霜運転自体の消費電力は小さいものの、除霜運転の間室内の暖房運転は行えないため、室温が下がり、復帰後は比較的負荷が大きい状態での運転となる。
これらの空調条件の変化に対する運転モードの切り替えについて説明する。なお、空気調和機を主体にして説明するが、空調条件に応じて運転モードを切り替える制御は、実際には電力変換装置1の制御部400が行っている。制御部400は、空気調和機の空調条件に応じて運転する。空調条件には、冷房中間、冷房定格、暖房中間、暖房定格、および暖房低温のうち少なくとも1つが含まれる。制御部400は、空調条件について、空気調和機に対するユーザの設定、空気調和機の室外機が設置される室外の温度、空気調和機の室内機が設置される室内の温度、空気調和機の運転時間などから直接的、または間接的に取得することができる。制御部400は、これらの全てを用いて空調条件を得てもよいし、少なくとも1つによって得てもよい。
図10は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成101の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成101は、単相電源に対応した中でも比較的簡素なハードウェア構成となっている。直流電源装置部分は、単相に対応した整流器と、整流器の前段または後段にリアクトルを設けたパッシブ構成のコンバータと、を備える。構成101の直流電源装置部分は、図1に示す電力変換装置1の整流昇圧部700からスイッチング素子632、ダイオード633などを削除したような構成である。コンデンサ210の容量は比較的大きい。圧縮機315のモータ314の起電力は比較的大きい。圧縮機315のメカ機構は、シングルロータリなどとし、機械的脈動は比較的大きい。
空気調和機は、構成101で冷房運転を行うケースでは、運転開始直後に冷房定格で運転するため、運転モード1での運転となる。空気調和機は、その後、室内温度と設定された温度とが近づくと、例えば、差分に閾値を設けるなどの切替条件で冷房定格から冷房中間に切り替えるが、低速運転となってメカ機構起因の振動が顕著に表れるため、振動抑制制御有りの運転モード3に切り替える。空気調和機は、保護に入る場合、運転モード7に切り替える。また、空気調和機は、暖房運転を行うケースでは、運転開始直後に暖房定格で運転するため、運転モード1での運転となる。または、空気調和機は、外気温によっては暖房低温で運転するため、運転モード5で運転する。空気調和機は、その後、室内温度と設定された温度とが近づくと、例えば、差分に閾値を設けるなどの切替条件で暖房定格から暖房中間に切り替えるが、低速運転となってメカ機構起因の振動が顕著に表れるため、振動抑制制御有りの運転モード3に切り替える。空気調和機は、保護に入る場合、運転モード7に切り替える。空気調和機は、除霜運転の前後では、負荷が大きい状態であるので外気温に応じて、運転モード1または運転モード5にて運転を行う。このように、空気調和機は、構成101においては、運転モード1、運転モード3、運転モード5、および運転モード7を切り替えることで、各空調条件に最適な製品動作を提供することが可能となる。
図11は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成102の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成102は、構成101に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成102の場合、中間負荷領域のときに運転モード1で運転を行う点が構成101の場合と異なる。
図12は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成103の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成103は、構成101に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成103の場合、定格負荷領域および暖房低温のときに運転モード11で運転を行う点が構成101の場合と異なる。
図13は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成104の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成104は、構成103に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成104の場合、中間負荷領域のときに運転モード9で運転を行う点が構成103の場合と異なる。
図14は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成105の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成105は、構成101に対し、コンデンサ210の容量を小さくした構成である。空気調和機は、構成105の場合、電源脈動補償制御の有無が構成101の場合と異なる。その結果、空気調和機は、構成101の場合の運転モード1、運転モード3、運転モード5、および運転モード7に対して、構成105の場合は運転モード2、運転モード4、運転モード6、および運転モード8で運転を行う。
図15は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成106の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成106は、構成105に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成106の場合、中間負荷領域のときに運転モード2で運転を行う点が構成105の場合と異なる。
図16は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成107の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成107は、構成105に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成107の場合、定格負荷領域および暖房低温のときに運転モード12で運転を行う点が構成105の場合と異なる。
図17は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成108の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成108は、構成107に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成108の場合、中間負荷領域のときに運転モード10で運転を行う点が構成107の場合と異なる。
図18は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成109の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成109は、構成101に対し、コンバータをパッシブ構成から部分SW系に変更した構成である。空気調和機は、構成109の場合、昇圧動作の有無が構成101の場合と異なる。その結果、空気調和機は、構成101の場合の運転モード1、運転モード3、運転モード5、および運転モード7に対して、構成109の場合は運転モード13、運転モード3、運転モード17、および運転モード19で運転を行う。
図19は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成110の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成110は、構成109に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成110の場合、中間負荷領域のときに運転モード1で運転を行う点が構成109の場合と異なる。
図20は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成111の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成111は、構成109に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成111の場合、定格負荷領域のときに運転モード21で運転を行い、暖房低温のときに運転モード23で運転を行う点が構成109の場合と異なる。
図21は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成112の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成112は、構成111に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成112の場合、中間負荷領域のときに運転モード9で運転を行う点が構成111の場合と異なる。
図22は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成113の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成113は、構成109に対し、コンデンサ210の容量を小さくした構成である。空気調和機は、構成113の場合、電源脈動補償制御の有無が構成109の場合と異なる。その結果、空気調和機は、構成109の場合の運転モード3、運転モード13、運転モード17、および運転モード19に対して、構成113の場合は運転モード4、運転モード14、運転モード18、および運転モード20で運転を行う。
図23は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成114の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成114は、構成113に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成114の場合、中間負荷領域のときに運転モード2で運転を行う点が構成113の場合と異なる。
図24は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成115の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成115は、構成113に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成115の場合、定格負荷領域のときに運転モード22で運転を行い、暖房低温のときに運転モード24で運転を行う点が構成113の場合と異なる。
図25は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成116の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成116は、構成115に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成116の場合、中間負荷領域のときに運転モード10で運転を行う点が構成115の場合と異なる。
図26は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成117の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成117は、構成101に対し、コンバータをパッシブ構成からフルSW系に変更した構成である。空気調和機は、構成117の場合、昇圧動作の有無が構成101の場合と異なる。その結果、空気調和機は、構成101の場合の運転モード1、運転モード3、運転モード5、および運転モード7に対して、構成117の場合は運転モード13、運転モード15、運転モード17、および運転モード19で運転を行う。
図27は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成118の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成118は、構成117に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成118の場合、中間負荷領域のときに運転モード13で運転を行う点が構成117の場合と異なる。
図28は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成119の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成119は、構成117に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成119の場合、定格負荷領域のときに運転モード21で運転を行い、暖房低温のときに運転モード23で運転を行う点が構成117の場合と異なる。
図29は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成120の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成120は、構成119に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成120の場合、中間負荷領域のときに運転モード21で運転を行う点が構成119の場合と異なる。
図30は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成121の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成121は、構成117に対し、コンデンサ210の容量を小さくした構成である。空気調和機は、構成121の場合、電源脈動補償制御の有無が構成117の場合と異なる。その結果、空気調和機は、構成117の場合の運転モード13、運転モード15、運転モード17、および運転モード19に対して、構成121の場合は運転モード14、運転モード16、運転モード18、および運転モード20で運転を行う。
図31は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成122の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成122は、構成121に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成122の場合、中間負荷領域のときに運転モード14で運転を行う点が構成121の場合と異なる。
図32は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成123の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成123は、構成121に対し、モータ314を高巻数にするなどモータ起電力を向上させた、すなわち小さくした構成である。空気調和機は、構成123の場合、定格負荷領域のときに運転モード22で運転を行い、暖房低温のときに運転モード24で運転を行う点が構成121の場合と異なる。
図33は、実施の形態1に係る電力変換装置1が搭載される空気調和機の構成が構成124の場合における空調条件と運転モードとの関係を示す図である。構成124は、構成123に対し、圧縮機315のメカ機構をツインロータリ、スクロールなどとし、機械的脈動を比較的小さくした構成である。空気調和機は、構成124の場合、中間負荷領域のときに運転モード22で運転を行う点が構成123の場合と異なる。
空気調和機の構成が構成101から構成124の場合において、制御部400は、例えば、コンデンサ210の容量に応じて電源脈動補償制御の有無を決定することができる。また、制御部400は、機器である圧縮機315の機構に応じて振動抑制制御の有無を決定することができる。また、制御部400は、モータ314の起電力に応じて整流昇圧部700の動作および各制御の有無を決定することができる。
制御部400の動作を、フローチャートを用いて説明する。図36は、実施の形態1に係る電力変換装置1が備える制御部400の動作を示すフローチャートである。制御部400は、電力変換装置1の空調条件を取得する(ステップS1)。制御部400は、取得した空調条件から各制御の有無を決定し、空調条件に応じた運転モードを判定する(ステップS2)。制御部400は、判定した運転モードが前回と同じか否かを確認する(ステップS3)。運転モードが前回と同じ場合(ステップS3:Yes)、制御部400は、前回の運転モードを維持する(ステップS4)。運転モードが前回と異なる場合(ステップS3:No)、制御部400は、運転モードを切り替える(ステップS5)。
つづいて、電力変換装置1が備える制御部400のハードウェア構成について説明する。図37は、実施の形態1に係る電力変換装置1が備える制御部400を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御部400は、プロセッサ91およびメモリ92により実現される。
プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ92は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置1において、制御部400は、各検出部から取得した検出値に基づいてインバータ310の動作を制御し、インバータ310に流れる電流I2に、整流部130から流れる電流I1の周波数成分に応じた周波数成分の脈動を重畳することで、平滑部200に流れる電流I3を低減することとした。これにより、電力変換装置1は、平滑部200に流れる電流I3が低減することによって、本実施の形態の制御を行わない場合と比較して、リプル電流耐量の小さなコンデンサ210の使用が可能となる。また、電力変換装置1は、コンデンサ電圧Vdcの脈動電圧が低下することによって、本実施の形態の制御を行わない場合と比較して、搭載するコンデンサ210の容量を小さくすることができる。電力変換装置1は、例えば、複数のコンデンサ210で平滑部200を構成していた場合、平滑部200を構成するコンデンサ210の本数を低減することができる。
また、電力変換装置1は、第2の交流電力に含まれる脈動が、整流部130から出力される電力の脈動よりも小さくなるようにインバータ310の動作を制御することによって、インバータ310に流れる電流I2に重畳する脈動成分が過大になるのを抑制できる。脈動成分の重畳は、インバータ310、モータ314などを通流する電流実効値を非重畳状態と比較して増加させることとなるが、重畳する脈動成分が過大になるのを抑制することによって、インバータ310の電流容量、インバータ310の損失増加、モータ314の損失増加などを抑制したシステムを提供することが可能となる。
また、電力変換装置1は、本実施の形態の制御を行うことによって、電流I2の脈動に起因して発生する圧縮機315の振動を抑制することができる。
また、電力変換装置1は、昇圧部600が昇圧動作を行うことによって、コンデンサ210のコンデンサ電圧Vdcを上昇させ、インバータ310の出力可能電圧範囲を拡大することができる。電力変換装置1において、制御部400は、昇圧部600のスイッチング素子632に対する駆動信号に、インバータ310から出力する第2の交流電力に含まれる脈動の周波数成分を重畳することで、当該周波数成分に起因する電流I3およびコンデンサ電圧Vdcの脈動を低減することができる。
また、電力変換装置1は、空調条件に応じて運転モードを切り替える。これにより、電力変換装置1は、不要に処理負荷を上げることなく、可能な場合には省エネ運転を行うことができる。
実施の形態2.
図38は、実施の形態2に係る冷凍サイクル適用機器900の構成例を示す図である。実施の形態2に係る冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1で説明した電力変換装置1を備える。実施の形態2に係る冷凍サイクル適用機器900は、空気調和機、冷蔵庫、冷凍庫、ヒートポンプ給湯器といった冷凍サイクルを備える製品に適用することが可能である。本実施の形態においては、前述の実施の形態1と同様、具体的には、冷凍サイクル適用機器900として空気調和機を想定している。なお、図38において、実施の形態1と同様の機能を有する構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付している。
冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1におけるモータ314を内蔵した圧縮機315と、四方弁902と、室内熱交換器906と、膨張弁908と、室外熱交換器910とが冷媒配管912を介して取り付けられている。
圧縮機315の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構904と、圧縮機構904を動作させるモータ314とが設けられている。
冷凍サイクル適用機器900は、四方弁902の切替動作により暖房運転又は冷房運転をすることができる。圧縮機構904は、可変速制御されるモータ314によって駆動される。
暖房運転時には、実線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室内熱交換器906、膨張弁908、室外熱交換器910及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
冷房運転時には、破線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室外熱交換器910、膨張弁908、室内熱交換器906及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
暖房運転時には、室内熱交換器906が凝縮器として作用して熱放出を行い、室外熱交換器910が蒸発器として作用して熱吸収を行う。冷房運転時には、室外熱交換器910が凝縮器として作用して熱放出を行い、室内熱交換器906が蒸発器として作用し、熱吸収を行う。膨張弁908は、冷媒を減圧して膨張させる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。