以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置101を備えるモータ駆動システム全体の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態1に係るモータ駆動システムは、交流電源1と、圧縮機用モータ3と、ファン用モータ5と、電力変換装置101と、によって構成されている。
電力変換装置101は、商用電源をはじめとする交流電源1に接続される整流回路2と、昇圧回路7と、昇圧回路7の出力間に接続された第1のコンデンサ11と、第1のコンデンサ11の両極間に接続された第1のインバータ4と、後述する昇圧回路7に備わる第2のコンデンサ15の両極間に接続された第2のインバータ6と、制御装置8と、によって構成されている。
第1のインバータ4の出力側には、空気調和装置の圧縮機30の駆動源である圧縮機用モータ3が接続されており、第1のインバータ4は、第1のコンデンサ11の両極間の電圧を交流電圧へ変換して圧縮機用モータ3へ出力し、駆動する。また、第2のインバータ6の出力側には、空気調和装置のファン50の駆動源であるファン用モータ5が接続されており、第2のインバータ6は、第2のコンデンサ15の両極間の電圧を交流電圧へ変換してファン用モータ5へ出力し、駆動する。なお、図1において空気調和装置の圧縮機30、及び、空気調和装置のファン50の図示を、それぞれ省略している。
制御装置8は、第1のインバータ4、第2のインバータ6、及び、昇圧回路7を制御するための駆動信号を各々へ出力する機能を有し、記憶装置(図示せず)と該記憶装置に記憶されたプログラムを実行するプロセッサ(図示せず)とによって前記駆動信号を出力するための演算処理を実現する。
記憶装置は、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とによって構成されている。なお、補助記憶装置として、フラッシュメモリ等の代わりに、ハードディスク等を用いてもよい。プロセッサは、記憶装置の補助記憶装置から揮発性記憶装置に展開されたプログラムを実行する。また、プロセッサは、演算結果等のデータを、揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置に保存してもよい。
また、本実施の形態1において、複数のプロセッサ、及び、複数の記憶装置が連携する構成にしても良い。さらに、記憶装置及びプロセッサは、例えばマイクロコンピュータ、及び、DSP(Digital Signal Processor)などによって構成しても良い。
整流回路2は、例えば、交流電源1が三相3線式か三相4線式かを問わず三相の場合は6個の整流ダイオード、交流電源1が単相の場合は4個の整流ダイオード、といった複数の逆流防止素子をブリッジ接続して構成され、交流電源1から供給された交流電圧を整流する周知の全波整流回路である。なお、図1は、交流電源1が三相3線式の例を示している。
昇圧回路7は、整流回路2により整流された直流電圧(以下、当該電圧を整流電圧Vdc0と称する)を昇圧し、昇圧された直流電圧(以下、当該電圧を昇圧電圧Vdc1と称する)を出力する。
また、昇圧回路7の出力端間、つまり、出力側の直流母線間には、昇圧電圧Vdc1を平滑化する第1のコンデンサ11が接続されており、第1のコンデンサ11によって昇圧電圧Vdc1が平滑化され、第1のコンデンサ11の両極間の電圧(以下、当該電圧を電圧Vdc11と称する)が第1のインバータ4へ入力される。なお、整流電圧Vdc0に対する、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の比を昇圧比とする。
以下、本実施の形態1に係る昇圧回路7について説明する。
昇圧回路7は、第1の逆流防止素子14a及び第2の逆流防止素子14bと、逆並列接続された逆流防止素子を備える第1のスイッチング素子13a及び第2のスイッチング素子13bと、を備えている。第1の逆流防止素子14a及び第2の逆流防止素子14bは互いに直列に接続され、第1のスイッチング素子13a及び第2のスイッチング素子13bは、互いに直列に接続されている。なお、図1において、第1のスイッチング素子13aのスイッチ側にSW1の符号を、第2のスイッチング素子13bのスイッチ側にSW2の符号を、それぞれ付している。
そして、昇圧回路7の出力間において、第1のコンデンサ11に対して並列となるように、第1の逆流防止素子14a、第2の逆流防止素子14b、第1のスイッチング素子13a、及び、第2のスイッチング素子13b、が順次直列に接続された構成である。つまり、第2の逆流防止素子14bのアノード側に第1のスイッチング素子13aの一端が接続された構成である。このとき、第1の逆流防止素子14a及び第2の逆流防止素子14bは、リアクトル12から第1のインバータ4及び第2のインバータ6の入力側にのみ電流が流れるように設置されている。
さらに、整流回路2の出力側直流母線の正極側と、第2の逆流防止素子14bと第1のスイッチング素子13aとの接続点とが、リアクトル12を介して接続された構成である。つまり、リアクトル12は、一端が整流回路2の出力側直流母線の正極側と接続され、他端が第2の逆流防止素子14bと第1のスイッチング素子13aとの間と接続されている。
また、第1の逆流防止素子14aと第2の逆流防止素子14bとの接続点と、第1のスイッチング素子13aと第2のスイッチング素子13bとの接続点との間に、第2のコンデンサ15が、第2の逆流防止素子14b及び第1のスイッチング素子13aに対して並列に接続された構成である。つまり、第2のコンデンサ15は、一端が第1の逆流防止素子14aと第2の逆流防止素子14bとの間と接続され、他端が第1のスイッチング素子13aと第2のスイッチング素子13bとの間と接続された構成である。
第1のスイッチング素子13aのスイッチSW1、及び、第2のスイッチング素子13bのスイッチSW2は、制御装置8からの駆動信号に基づいてスイッチング動作を行い、整流回路2により整流された整流電圧Vdc0を昇圧する。なお、スイッチSW1、スイッチSW2がともにOFFの状態ならば、昇圧動作は行われず、整流電圧Vdc0と昇圧電圧Vdc1とは同じ電圧となる。
昇圧回路7の制御において、望ましくは圧縮機用モータ3の運転状態に応じて、整流電圧Vdc0に対する昇圧比を変化させるように昇圧モードを選択する。例えば、室内の温度が目標温度となるように空気調和装置の冷媒回路を圧縮機用モータ3の回転動作により制御する過程において、高い圧縮機30の出力を得るために圧縮機用モータ3を毎秒数百回転といった高い回転数で駆動する必要がある。
圧縮機用モータ3に用いられる誘導機、及び、永久磁石同期モータ(ブラスレスDCモータ)等は、回転数が上昇するとモータ内部で発生する磁束による誘起電圧に起因してモータが必要とする電圧も上昇し、それに応じて該モータを駆動する後述の第1のインバータ4の出力電圧(実効値)も高くする必要がある。その上、第1のインバータ4が出力可能な電圧は、第1のインバータ4に入力される母線電圧、すなわち、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11に依存するため、第1のインバータ4の出力電圧を高くするためには、Vdc11も合わせて高くする必要があり、これらを実現するために圧縮機用モータ3の運転状態に応じて、整流電圧Vdc0に対する昇圧比を変化させるように昇圧モードを選択する。
前記昇圧モードとして、例えば、整流電圧Vdc0に対して昇圧を行わない昇圧モード(昇圧無・以下Mode0と称する)と、整流電圧Vdc0に対して僅かに、例えば、20V程度昇圧する昇圧モード(微昇圧・以下Mode1と称する)と、整流電圧Vdc0に対して2倍に昇圧する昇圧モード(倍昇圧・以下Mode2と称する)と、整流電圧Vdc0に対して2倍を超える電圧へ昇圧とする昇圧モード(倍超昇圧・以下Mode3と称する)を備え、スイッチSW1、スイッチSW2のスイッチング動作によって昇圧比、すなわち、昇圧電圧Vdc1、ひいては第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を制御する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る昇圧回路7における昇圧モード毎の第1のコンデンサ11の電圧Vdc11のレベルの一例を示す図である。
昇圧モード選択は、圧縮機用モータ3の運転状態を示す、例えば、圧縮機用モータ3の回転数または第1のインバータ4の出力電圧の周波数、昇圧回路7〜第1のインバータ4間の母線電流、第1のインバータ4の出力電圧、圧縮機用モータ3の電流、すなわち、第1のインバータ4の出力電流、などのパラメータに基づいて制御装置8で行う。
制御装置8は、選択した昇圧モードに基づいて、スイッチSW1、スイッチSW2のON/OFF時間のデューティ比、つまり、予め定められた時間に対するON時間の比率を算出して該デューティ比に応じた駆動信号を生成し、該駆動信号に基づいてスイッチSW1、スイッチSW2はスイッチング動作を行う。
図3は、本発明の実施の形態1における昇圧回路7のスイッチSW1、スイッチSW2のON/OFFのデューティ比を決定するブロック図である。なお、ブロック図に係る演算は制御装置8によって行われる。
加減算器21aで、第1のコンデンサ11の両極間の電圧の目標値Vdc11*から周知の電圧センサ(図示せず)によって検出される第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を減算して、目標値Vdc11*と電圧Vdc11との偏差を求める。そして、目標値Vdc11*と電圧Vdc11との偏差に基づき、制御演算器22aで、例えば周知のPI(D)制御演算を行い、リアクトル12に流れる電流の目標値IL*を算出する。
次に、加減算器21bで、リアクトル12に流れる電流の目標値IL*から周知の電流センサ(図示せず)によって検出されるリアクトル12に流れる電流ILを減算して、目標値IL*と電流ILとの偏差を求める。そして、目標値IL*と電流ILとの偏差に基づき、制御演算器22bで、同様に周知のPI(D)制御演算を行い、スイッチSW1、スイッチSW2のデューティ比の基準値Donを求める。
また、第2のコンデンサ15の両極間の電圧(以下、当該電圧を電圧Vdc2と称する)の制御は、デューティ比の基準値Donに対して、予め定められた時間に対してスイッチSW2のON時間を増加させ、該増加させた分、スイッチSW1のON時間を減少させることで実現できる。そのため、加減算器21cで、第2のコンデンサ15の両極間の電圧の目標値Vdc2*から周知の電圧センサ(図示せず)によって検出される第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を減算して、目標値Vdc2*と電圧Vdc2との偏差を求め、目標値Vdc2*と電圧Vdc2との偏差に基づき、制御演算器22cで、同様に周知のPI(D)制御演算を行い、スイッチSW1、スイッチSW2のデューティ比の調整値ΔDonを求める。
デューティ比の基準値Donに対して、加減算器21dで、デューティ比の調整値ΔDon分減算したデューティ比DSW1が、スイッチSW1のデューティ比となる。また、デューティ比の基準値Donに対して、加減算器21eで、デューティ比の調整値ΔDon分加算したデューティ比DSW2が、スイッチSW2のデューティ比となる。そして、該デューティ比に応じたスイッチSW1、スイッチSW2の駆動信号を生成し、該信号に基づいてスイッチSW1、スイッチSW2はスイッチング動作を行う。
前記Mode0〜Mode3の各昇圧モードにおけるスイッチSW1、スイッチSW2のON/OFFのパターンは、スイッチSW1、スイッチSW2のデューティ比DSW1、DSW2を満たすように、以下に示す4つのスイッチングモードSM1〜SM4を組み合わせて実現する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る昇圧回路7のスイッチSW1、スイッチSW2のON/OFF状態を表すスイッチングモードSM1〜SM4を示す図である。
スイッチングモードSM1〜SM4は、スイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONするSM1と、スイッチSW1をON、スイッチSW2をOFFするSM2と、スイッチSW1、スイッチSW2ともにOFFするSM3と、スイッチSW1、スイッチSW2ともにONするSM4の、4つのモードからなる。
次に各昇圧モードに切り替える際のスイッチSW1、スイッチSW2のスイッチング動作について説明する。
図5は、本発明の実施の形態1に係る昇圧回路7の昇圧モード毎Mode0〜Mode3に設定されたスイッチングモードの組合せを示す図である。
以下、図5に示されるスイッチングモードの切り替えにより、各昇圧モードにおける昇圧動作を実現する。
(A)昇圧無・Mode0から微昇圧・Mode1への移行
スイッチングモードがSM1→SM3→SM2→SM3の順に切り替わるようにスイッチSW1、スイッチSW2を制御し、この制御を繰り返し行う。
SM1において、リアクトル12→第2の逆流防止素子14b→第2のコンデンサ15→スイッチSW2の経路が導通し、整流電圧Vdc0によって第2のコンデンサ15が充電される。
次のSM3において、リアクトル12→第2の逆流防止素子14b→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通するとともに、第2のコンデンサ15→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通し、整流電圧Vdc0と第2のコンデンサ15の電圧Vdc2とにより第1のコンデンサ11が充電される。
次のSM2において、リアクトル12→スイッチSW1→第2のコンデンサ15→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通し、整流電圧Vdc0により第2のコンデンサ15が充電される。
再びSM3に戻すと、リアクトル12→第2の逆流防止素子14b→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通するとともに、第2のコンデンサ15→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通し、整流電圧Vdc0と第2のコンデンサ15の電圧Vdc2とにより第1のコンデンサ11が充電される。
この一連の動作を繰り返し行うことにより、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11として、整流電圧Vdc0よりに僅かに昇圧した電圧を出力する。
微昇圧・Mode1においては、リアクトル12に流れる高調波電流の発生を抑制するために、望ましくはリアクトル12に流れる電流を検出する機構を備えるようにし、該検出電流を一定に制御するようにしても良い。
(B)微昇圧・Mode1から倍昇圧・Mode2への移行
スイッチングモードSM1とSM2とが交互に切り替わるようにスイッチSW1、スイッチSW2を制御し、この制御を繰り返し行う。
SM1において、リアクトル12→第2の逆流防止素子14b→第2のコンデンサ15→スイッチSW2の経路が導通し、整流電圧Vdc0によって第2のコンデンサ15が充電される。
次のSM2において、リアクトル12→スイッチSW1→第2のコンデンサ15→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通し、整流電圧Vdc0と第2のコンデンサ15の電圧Vdc2とにより第1のコンデンサ11が充電される。
この一連の動作を繰り返し行うことにより、第1のコンデンサ11には、整流電圧Vdc0の2倍の直流電圧が充電され、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11として、整流電圧Vdc0の2倍に昇圧した電圧を出力する。
倍昇圧・Mode2においては、リアクトル12に流れる電流が一定となり、該電流の高調波成分の最小化が可能となる。よって、整流電圧Vdc0に対して第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を2倍に昇圧する、すなわち昇圧比を2にすることで、リアクトル12に流れる高調波成分を最小化できる。そのため、リアクトル12で発生する損失の低減と、交流電源1が商用電源の場合において電源系統に対する高調波成分の流出が抑制される。このことから、昇圧回路7における昇圧動作において、後述する2以上の昇圧比で昇圧する倍超昇圧・Mode3も可能ではあるが、該高調波成分の抑制を目的として、昇圧無・Mode0と、倍昇圧・Mode2とを主要なモードとし、Mode0からMode2へ移行するために微昇圧・以下Mode1を組み入れ、最大昇圧比を2までに制限しても良い。
(C)倍昇圧・Mode2から倍超昇圧・Mode3への移行
スイッチングモードがSM1→SM4→SM2→SM4の順に切り替わるようにスイッチSW1、スイッチSW2を制御し、この制御を繰り返し行う。
SM1において、リアクトル12→第2の逆流防止素子14b→第2のコンデンサ15→スイッチSW2の経路が導通し、整流電圧Vdc0によって第2のコンデンサ15が充電される。
次のSM4において、リアクトル12→スイッチSW1→スイッチSW2の経路が導通し、リアクトル12にエネルギーが蓄積されるとともに、第2のコンデンサ15の充電電圧によって第1の逆流防止素子14aを介して、第1のコンデンサ11が充電される。
次のSM2において、リアクトル12→スイッチSW1→第2のコンデンサ15→第1の逆流防止素子14a→第1のコンデンサ11の経路が導通し、整流電圧Vdc0と第2のコンデンサ15の電圧Vdc2とにより第1のコンデンサ11が充電される。
再びSM4に戻すと、リアクトル12→スイッチSW1→スイッチSW2の経路が導通し、整流電圧Vdc0によりリアクトル12にエネルギーが蓄積される。
この一連の動作を繰り返し行うことにより、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11として、整流電圧Vdc0の2倍以上に昇圧した電圧を出力する。
倍超昇圧・Mode3においても、リアクトル12に流れる高調波電流の発生を抑制するために、望ましくはリアクトル12に流れる電流を検出する機構を備えるようにし、該検出電流を一定に制御するようにしても良い。
以上に示す各昇圧モードに対応した昇圧回路7のスイッチSW1、スイッチSW2のスイッチング動作によって、整流電圧Vdc0に対して、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を1倍以上の任意の倍数、すなわち昇圧比を1以上にするような昇圧動作を実現できる。
第1のインバータ4は、各相(例えば三相の場合u、v、w相)に2つの逆並列接続された逆流防止素子を備えるスイッチング素子が直列接続され、各々のスイッチング素子が制御装置8からの駆動信号に基づいてスイッチング動作を行う周知の回路であり、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を、空気調和装置の圧縮機30の駆動源である圧縮機用モータ3を駆動するための適切な周波数の(三相)交流電圧へ変換して、接続されている圧縮機用モータ3へ三相交流電圧を供給する。
ここで、第1のインバータ4を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子において、現在一般的には珪素(Si)を材料とする半導体を用いるのが主流である。しかし、これに代えて、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドを材料とするワイドバンドギャップ半導体を用いても良い。このようなワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子、及び、逆流防止素子は、耐電圧性、許容電流がともに高く、これらの素子の小型化が可能であり、小型化されたスイッチング素子、及び、逆流防止素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
また、このようなワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子、及び、逆流防止素子は耐熱性も高く、第1のインバータ4の放熱に必要な冷却機構、(例えば放熱フィン、水冷機構など)の小型化、及び、冷却方式の簡素化(水冷方式から構造が簡素な空冷方式への変更)が可能であるので、スイッチング素子、及び、逆流防止素子を組み込んだ半導体モジュールの一層の小型化が可能となる。
さらに、このようなワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子、及び、逆流防止素子は、電力損失が低く、電力変換効率が向上するために高い変換効率で圧縮機用モータ3を駆動することが可能となる。
なお、スイッチング素子、及び、逆流防止素子の両方にワイドバンドギャップ半導体を用いていることが望ましいが、いずれか一方の素子のみにワイドバンドギャップ半導体を用いていても良い。
先述の昇圧回路7の説明においては言及しなかったが、昇圧回路7を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子においてもワイドバンドギャップ半導体を用いても良く、珪素(Si)素子と比較して損失低減を図ることができる。また、昇圧回路7を構成するスイッチング素子、つまり、第1のスイッチング素子13a及び第2のスイッチング素子13bにおいて、トランジスタ、MOSFET、IGBT等の半導体素子を用いても良い。また、昇圧回路7を構成する逆流防止素子、つまり、第1の逆流防止素子14a及び第2の逆流防止素子14bにおいて、ファストリカバリダイオードのような素子を用いても良い。
制御装置8は、圧縮機30を駆動するのに必要な圧縮機用モータ3の出力が得られるように、周知のフィードフォワード制御演算、または、ベクトル制御演算の実行により適切な周波数の(三相)交流の電圧指令を求め、該電圧指令を第1のインバータ4におけるスイッチング動作のための駆動信号(例えば周知のPWM(Pulse Width Modulation)信号)へ変換する。
また、図1には図示していないが、これらの制御演算において、圧縮機用モータ3の電流、すなわち第1のインバータ4の出力電流を検出する電流センサ、または、圧縮機用モータ3の位置あるいは回転数を検出するセンサを取り付け、これらのセンサによって検出される電流、位置あるいは回転数の情報を用いても良い。
前記制御演算によって、(三相)交流の電圧指令が求まることから、該指令(の実効値)に基づいて第1のインバータ4の入力として必要な第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を求め、Vdc11の目標値Vdc11*、または、昇圧モードを選択すれば良い。
制御装置8において、前記(三相)交流の電圧指令が、第1のインバータ4が出力可能な電圧か否かを判断する基準である変調度(第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を基準とした前記(三相)交流の電圧指令の実効値の比率相当)を演算し、該変調度に応じて昇圧モード(Vdc11の目標値Vdc11*)を選択する。
変調度が、第1のインバータ4が出力可能な電圧以上となるレベルに達すると、第1のインバータ4の出力電圧が飽和するため、圧縮機用モータ3の電圧を該飽和電圧以下とするように作用させるために、圧縮機用モータ3に流れる電流が増加する。その結果、第1のインバータ4の損失は増加する。さらに、圧縮機用モータ3あるいは第1のインバータ4の許容電流の制約レベルまで圧縮機用モータ3の電流が増加した時には、それ以上の回転数を上げることができなくなる。
したがって、変調度に応じて昇圧モードを適切に選択していき、昇圧レベルを変更しながら昇圧回路7が出力可能な最大の昇圧可能レベルまで動作させる。
このようにすれば、特に第1のインバータ4の損失を低減するとともに、高い変換効率で圧縮機用モータ3駆動することが可能となる。
また、交流電源1が商用電源の場合、電力供給事情により電圧が異なるため(三相交流電源の場合、主に線間電圧実効値200V、400Vなど)、交流電源1を整流回路2によって整流された整流電圧Vdc0は、交流電源1の実効値の大きさに依存する。
昇圧しない場合は、商用電源の(実効値の)大きさによって圧縮機用モータ3の設計を変える必要があり、同一定格出力に対しても商用電源毎に異なった圧縮機用モータ3の設計・製作が必要である。これに対し、昇圧する場合は、商用電源の大きさに係らず昇圧回路7の昇圧動作により第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を同一にでき、第1のインバータ4の入力側から圧縮機用モータ3までの構成、及び、電圧レベルを共通化することで、商用電源の(実効値の)大きさに関係なく、同一定格出力に対する圧縮機用モータ3の設計を共通化できる効果が得られる。
次に、空気調和装置のファン50の駆動源であるファン用モータ5を駆動するための構成を説明する。
ファン用モータ5は、先述の通り、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が高いと、放射ノイズ、キャリア周波数成分に起因する高調波鉄損、及び、絶縁強化の課題が生じる。そのため、圧縮機用モータ3を高い回転数で駆動するのに適した第1のインバータ4の入力電圧と、ファン用モータ5を駆動するのに適した第2のインバータ6の入力電圧とが異なり、ファン用モータ5を駆動する第2のインバータ6において入力側の母線電圧は低い方が望ましい。
そこで、第2のコンデンサ15の両極間に第2のインバータ6を接続し、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を第2のインバータ6へ入力する構成とする。
本実施の形態1に係る昇圧回路7の昇圧制御において、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11はもとより、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を図2の制御ブロックに基づいて制御することができる。電圧制御の簡素化の視点で、昇圧回路7の出力である昇圧電圧Vdc1を、0、Vdc11の50%、Vdc11という3レベルの出力電圧を出力する場合、通常、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%に制御する。そのため、ファン用モータ5を駆動する第2のインバータ6へ入力する第2のコンデンサ15の電圧Vdc2は、圧縮機用モータ3を駆動する第1のインバータ4へ入力する第1のコンデンサ11の電圧Vdc11と比較して低くなる。
第2のインバータ6は、第1のインバータ4と同様に、各相(例えば三相の場合u、v、w相)に2つの逆並列接続された逆流防止素子を備えるスイッチング素子が直列接続され、各々のスイッチング素子が制御装置8からの駆動信号に基づいてスイッチング動作を行う周知のインバータ回路であり、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を、空気調和装置のファン50の駆動源であるファン用モータ5を駆動するための適切な周波数の(三相)交流電圧へ変換して、接続されているファン用モータ5へ三相交流電圧を供給する。
なお、第2のインバータ6を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子において、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンドを材料とするワイドバンドギャップ半導体を用いても良いが、第1のインバータ4と比較して出力が小さく、損失も小さいため、ワイドバンドギャップ半導体を第1のインバータ4に適用する時と比較して損失や変換効率に係るメリットが相対的に小さくなる。
また、現在一般的にワイドバンドギャップ半導体と比較して珪素(Si)を材料とする半導体が安価であるため、第2のインバータ6を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子はコストメリットを優先し、珪素(Si)を材料とする半導体で形成されていても良い。
このようにすれば、出力が大きく損失の大きい圧縮機側は変換効率を優先し、損失の小さいファン側はコストメリット優先することでコスト対効率・性能を適正化することが可能となる。
なお、スイッチング素子、及び、逆流防止素子の両方に珪素(Si)を材料とする半導体を用いていることが望ましいが、いずれか一方の素子のみに珪素(Si)を材料とする半導体を用いても良い。
制御装置8は、ファン50が要求される能力を満たすファン用モータ5の出力が得られるように、周知のフィードフォワード制御演算、または、ベクトル制御演算の実行により適切な周波数の(三相)交流の電圧指令を求め、該電圧指令を第2のインバータ6におけるスイッチング動作のための駆動信号(第1のインバータ4同様に周知のPWM(Pulse Width Modulation)信号)へ変換する。
また、図1には図示していないが、これらの制御演算において、ファン用モータ5の電流、すなわち第2のインバータ6の出力電流を検出する電流センサ、または、ファン用モータ5の位置あるいは回転数を検出するセンサを取り付け、これらのセンサによって検出される電流、位置あるいは回転数の情報を用いても良い。
ファン用モータ5のモータ出力は、一般的に圧縮機用モータ3のモータ出力と比較して小さいために、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2のレベルで必要な性能が十分得られる。そのため、先述のように、昇圧無・Mode0と、倍昇圧・Mode2とを主要なモードとし、Mode0からMode2へ移行するために微昇圧・以下Mode1とを組み入れ、最大昇圧比を2までに制限、つまり、整流電圧Vdc0に対して第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を2倍までに制限しても良い。
最大昇圧比を2までに制限することで、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2がファン用モータ5を駆動するのに必要な電圧に対して大きくなり過ぎることを抑制しつつ、リアクトル12に流れる高調波成分を最小化でき、リアクトル12で発生する損失の低減と交流電源1が商用電源の場合において、電源系統に対する高調波成分の流出が抑制される。また、高調波成分の流出が抑制できることによりリアクトル12の小型化が実現できる。
以上が、本実施の形態1に係る電力変換装置101によって構成されるシステムの説明である。
本実施の形態1によれば、共通の整流回路2に対して圧縮機用モータ3を駆動する第1のインバータ4とファン用モータを駆動する第2のインバータ6とを接続し、かつ、昇圧回路7を備える構成において、ファン用モータ5を駆動する第2のインバータ6が、昇圧回路7に備わる第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を、交流電圧へ変換してファン用モータへ出力する。
このように構成したことから、交流電圧の種類を問わず、高い変換効率で圧縮機用モータ3を駆動するとともに、放射ノイズ、高調波鉄損などを抑制しながら、特別な絶縁強化を施さないファン用モータ5を駆動することができるといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
また、第1のインバータ4を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子においてワイドバンドギャップ半導体を用いることで、これらの素子の小型化、さらには、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化できる効果がある。
また、第2のインバータ6を構成するスイッチング素子、及び、逆流防止素子において、珪素(Si)を材料とする半導体を用いることで、出力が大きく損失の大きい圧縮機側は変換効率を優先、損失の小さいファン側はコストメリットを優先でき、コスト対効率・性能を適正化することができる効果がある。
また、昇圧回路7として、最大昇圧比を2までに制限することで、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2がファン用モータ5を駆動するのに必要な電圧に対して大きくなり過ぎることを抑制しつつ、リアクトル12に流れる高調波成分を最小化でき、リアクトル12で発生する損失の低減と交流電源1が商用電源の場合において、電源系統に対する高調波成分の流出を抑制できる効果がある。
さらに、商用電源の(実効値の)大きさに係らず昇圧回路7の昇圧動作により第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を共通化することで、商用電源に関係なく同一定格出力に対する圧縮機用モータ3の設計を共通化できる効果がある。
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては(一部の)説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
次に、本実施の形態2に係る電力変換装置101について説明する。
本実施の形態2においては、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11、あるいは、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2の制御について主に説明する。
ファン用モータ5は、先述の通り、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が高いと、放射ノイズ、キャリア周波数成分に起因する高調波鉄損、及び、絶縁強化の課題が生じるため、ファン用モータ5を駆動する第2のインバータ6において入力側の母線電圧は低い方が望ましい。
ただし、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を、先述の通り第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%に制御した場合、微昇圧(Mode1)で昇圧回路7を昇圧すると、必要以上に第2のインバータ6へ入力する母線電圧が下がり過ぎ、ファン用モータ5の駆動条件によっては、駆動するのに必要な電圧に対して十分ではなくなることがある。
このような条件下、特に、圧縮機用モータ3のモータ出力が小さく、すなわち、圧縮機用モータ3の回転数が低く、かつ、ファン用モータ5の電圧が高くなる高回転数域において、電圧制約内に収める周知の対策である弱め磁束(界磁)制御の実施が必要となる。この制御においては、電圧制約が無いと仮定した場合と比較して、同じモータ出力を得るために必要な電流(実効値)が大きくなり、モータの巻線で発生する銅損、及び、インバータで発生する損失が増加する。
そこで、実施の形態の1つとして、ファン用モータ5が必要とする電圧に対して、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が低くなり過ぎないように、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を第1のコンデンサ11の電圧Vdc11に係らず、常に整流電圧Vdc0以上に制御するようにしても良い。具体的には、図2において、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を、常に整流電圧Vdc0以上に設定する。
特に、仕様共通化目的で、同じ商用電源定格で本発明のような昇圧回路7を有さない電力変換装置で駆動する時と同じ仕様のファン用モータ5を用いる時に、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を、常に整流電圧Vdc0以上に設定し制御する。そうすることで、昇圧動作を必要としない主に圧縮機用モータ3の低〜中回転数域では、前記昇圧回路7を有さない電力変換装置で駆動する時と同じファン用モータ5の駆動性能を確保できるとともに、昇圧動作を必要とする圧縮機用モータ3の高回転数域では、実施の形態1と同様に、圧縮機用モータ3側において高い駆動性能を確保できる。
また、圧縮機用モータ3のモータ出力、すなわち、圧縮機用モータ3の回転数に基づいて第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を制御するようにしても良い。
圧縮機用モータ3の回転数は、先述の制御装置8で行われる周知のフィードフォワード制御演算、あるいは、ベクトル制御演算の演算過程から得られる。また、圧縮機用モータ3の位置あるいは回転数を検出するセンサを有する場合は、該センサからも回転数の情報が得られ、該回転数に応じて第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を設定する。
例えば、圧縮機用モータ3の回転数が低い時は、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が低くなり過ぎないように、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を整流電圧Vdc0に設定する。そして、圧縮機用モータ3の回転数が高くなって、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%が、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*として望ましい値となれば、つまり、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%が整流電圧Vdc0を超えれば、先述の通り第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11(または第1のコンデンサ11の電圧の目標値Vdc11*)の50%に設定し、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を制御することで実現できる。
さらに、圧縮機用モータ3のモータ出力が小さい時、すなわち、圧縮機用モータ3の回転数が予め定められた回転数以下の時、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%に設定する関係を維持しながら、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2が整流電圧Vdc0以上になるように、昇圧比を制御するようにしても良い。
例えば、先述の方法で圧縮機用モータ3の回転数の情報を取得し、圧縮機用モータ3の回転数が低く、予め定められた回転数以下の時は、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が低くなり過ぎないように、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*を整流電圧Vdc0に設定する。さらに、第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*が第1のコンデンサ11の電圧Vdc11の50%との関係を維持するように、第1のコンデンサ11の電圧の目標値Vdc11*を第2のコンデンサ15の電圧の目標値Vdc2*の2倍に設定するようにして、昇圧比を制御する。
このような制御を施すことで、必要以上に第2のインバータ6へ入力する母線電圧が下がり過ぎて、ファン用モータ5を駆動するのに必要な電圧に対して十分ではなくなることを防止し、主に低〜中回転数域のファン用モータ5の性能低下を抑制できる。
以上が、本実施の形態2に係る電力変換装置101の説明である。
本実施の形態2によれば、ファン用モータ5が必要とする電圧に対して、第2のインバータ6へ入力する母線電圧が低くなり過ぎないように、第2のコンデンサ15の電圧Vdc2を制御し、特に好ましくは、常に整流電圧Vdc0以上に制御する。
このようにしたことから、必要以上に第2のインバータ6へ入力する母線電圧が下がり過ぎて、ファン用モータ5を駆動するのに必要な電圧に対して十分ではなくなることを防止し、主に圧縮機用モータ3の低〜中回転数域におけるファン用モータ5の性能低下を抑制しながら、前記昇圧回路7を有さない電力変換装置で駆動する時と同じファン用モータ5の駆動性能を確保できるとともに、昇圧動作を必要とする圧縮機用モータ3の高回転数域では、圧縮機用モータ3側において高い駆動性能を確保できる効果がある。
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3について説明するが、実施の形態1及び2と重複するものについては(一部の)説明を省略し、実施の形態1及び2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
次に、本実施の形態3に係る電力変換装置101について説明する。
本実施の形態3においては、圧縮機用モータ3のモータ出力が小さい、すなわち、回転数が低い、あるいは、圧縮機用モータ3が停止中など、昇圧回路7における昇圧動作を必要としない時(昇圧無・Mode0)の動作について説明する。
昇圧無・Mode0において、仮に電力変換装置が、第1のインバータ4、及び、第2のインバータ6がともに第1のコンデンサ11の両極間に接続され、第1のコンデンサ11の電圧Vdc11を各インバータへ入力される構成であるとする。そのような構成であれば、昇圧回路7のスイッチSW1、スイッチSW2をともにOFFに制御すれば、整流電圧Vdc0に対して昇圧を行わないが、第2のコンデンサ15が充電されないため、ファン用モータ5を駆動することができなくなる。
しかし、本実施の形態3に係る電力変換装置101の構成であれば、例えば、昇圧無・Mode0においては、スイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONにすれば、第1のコンデンサ11と第2のコンデンサ15とが整流電圧Vdc0となるように充電される。そのため、ファン用モータ5を駆動することができなくことが回避され、合わせて、先述の第2のインバータ6へ入力する母線電圧が低くなり過ぎないようにすることも可能となる。
また、圧縮機用モータ3が停止中で、かつ、ファン用モータ5を駆動する際においても、同様にスイッチSW1をOFF、スイッチSW2をONに制御すれば、昇圧回路7のスイッチング素子における損失が導通損のみとなり、昇圧回路7のスイッチング素子における損失を最低限に抑制することができるとともに、スイッチング動作を行わないことによる低ノイズ化も実現できる。
以上が、本実施の形態3に係る電力変換装置101の説明である。
本実施の形態3によれば、圧縮機用モータ3のモータ出力が小さい、あるいは、圧縮機用モータ3が停止中など、昇圧回路7における昇圧動作を必要としない時において、昇圧回路7を構成する第1のスイッチング素子13a(スイッチSW1)をOFF、第2のスイッチング素子13b(スイッチSW2)をONに制御する。
このようにしたことから、昇圧動作を必要としない時における昇圧回路7のスイッチング素子における損失を最低限に抑制することができるとともに、スイッチング動作を行わないことによる低ノイズ化も実現できる効果がある。
実施の形態4.
以下、本発明の実施の形態4について説明するが、実施の形態1〜3と重複するものについては(一部の)説明を省略し、実施の形態1〜3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
次に、本実施の形態4に係る空気調和装置について説明する。
本実施の形態4においては、実施の形態1〜3で説明した電力変換装置101を、空気調和装置に適用した例について説明する。
図6は、本発明の実施の形態4に係る空気調和装置の構成を示す図である。なお、図6に示すように、本実施の形態4に係る空気調和装置は、実施の形態1〜3に係る電力変換装置101が適用されている。
以下、図6を参照しながら、本実施の形態4に係る空気調和装置について説明する。
図6に示される電力変換装置101は、実施の形態1〜3に係る電力変換装置であり、交流電源1から電力供給を受けて実施の形態1〜3に係る動作により(三相)交流電圧を圧縮機用モータ3へ出力して回転駆動するものである。この圧縮機用モータ3は、圧縮要素31に連結されており、この圧縮機用モータ3及び圧縮要素31によって、冷媒を圧縮する圧縮機30を構成する。
本実施の形態4に係る空気調和装置は、圧縮機30、四方弁32、室外熱交換器33、膨張装置34、室内熱交換器35、四方弁32、そして、圧縮機30の順に冷媒配管によって接続され、冷媒が循環する冷媒回路を構成する。なお、図6に示す該冷媒回路の構成は一例であり、必ずしも同じ構成でなくてもよく、同じ構成でない場合においても、実施の形態1〜3に係る電力変換装置を空気調和装置に適用した場合の効果は得られる。
このうち、室外機36は、実施の形態1〜3に係る電力変換装置101、圧縮機30、四方弁32、及び、室外熱交換器33を備えて構成し、室内機37は、膨張装置34、及び、室内熱交換器35を備えて構成する。なお、膨張装置34を室内機37ではなく室外機36に備える構成でも良い。
次に、本実施の形態4に係る空気調和装置の動作について、冷房運転を例に説明する。勿論、暖房運転においても図6に示す構成で実施することができ、後述の効果が得られる。
冷房運転に先立って、四方弁32は、予め、圧縮機30から吐出された冷媒が室外熱交換器33へ向かうように、かつ、室内熱交換器35から流出した冷媒が圧縮機30へ向かうように流路を切り替えているものとする。なお、暖房運転についてはここでは詳細な説明を省略するが、四方弁32における流路の切り替えによって冷房運転と暖房運転との切り替えを行う。
電力変換装置101によって圧縮機用モータ3を回転駆動することで、圧縮機用モータ3に連結した圧縮要素31が冷媒を圧縮し、圧縮機30は高温高圧冷媒を吐出する。圧縮機30から吐出した高温高圧冷媒は、四方弁32を経由して、室外熱交換器33へ流入し、室外熱交換器33においてファン50によって供給(送風)される外部の空気と熱交換を実施して放熱する。
室外熱交換器33から流出した冷媒は、膨張装置34によって膨張及び減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内熱交換器35へ流入し、空調対象空間の空気と熱交換を実施して蒸発し、低温低圧のガス冷媒となって、室内熱交換器35から流出する。室内熱交換器35から流出したガス冷媒は、四方弁32を経由して、圧縮機30に吸入され、再び圧縮される。以上の動作が繰り返される。
なお、本実施の形態4では、実施の形態1〜3に係る電力変換装置101を空気調和装置へ適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、空気調和装置の他、ヒートポンプ装置、冷凍装置、その他の冷凍サイクル装置一般に適用しても良い。
以上が、本実施の形態4に係る空気調和装置の説明である。
本実施の形態4によれば、高い変換効率で圧縮機用モータ3を駆動するとともに、放射ノイズ、高調波鉄損を抑制しながらファン用モータ5を駆動することが可能な実施の形態1〜3に係る電力変換装置を空気調和装置へ適用する。そうすることで、空気調和装置の信頼性が向上するとともに、定格冷房/暖房運転時のエネルギー消費効率(COP)、及び、1年を通した通年エネルギー消費効率(APF)が向上する効果がある。
実施の形態5.
以下、本発明の実施の形態5について説明するが、実施の形態1〜4と重複するものについては(一部の)説明を省略し、実施の形態1〜4と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
次に、本実施の形態5に係る空気調和装置について説明する。
図7は、本発明の実施の形態5に係る空気調和装置の構成を示す図である。なお、図7に示すように、本実施の形態5に係る空気調和装置は、実施の形態1〜3に係る電力変換装置101が適用されている。
先の実施の形態4に対し、本実施の形態5に係る空気調和装置は、前記冷媒回路を循環する冷媒を内部に流通した冷媒冷却器38を備え、冷媒冷却器38を用いて第1のインバータ4を冷却するようにしたものである。
なお、図7において、図の構成の都合上、冷媒冷却器38と電力変換装置101とを隣接して記載しているが、冷媒冷却器38は主に電力変換装置101に内包する第1のインバータ4を冷却する構成である。勿論、電力変換装置101に内包する第1のインバータ4以外の構成要素を冷却するような構成でも良い。
以下、実施の形態4と異なる室外機36aの冷媒回路を中心に説明する。
本実施の形態5に係る空気調和装置は、圧縮機30、四方弁32、室外熱交換器33、室外機36a側の膨張装置34a、冷媒冷却器38、室内機37側の膨張装置34、室内熱交換器35、四方弁32、そして、圧縮機30の順に冷媒配管によって接続され、冷媒が循環する冷媒回路を構成する。
なお、図7に示す該冷媒回路の構成は一例であり、冷媒回路の冷媒を内部に流通した冷媒冷却器38を備えることが本実施の形態5の目的であるため、必ずしも同じ冷媒回路の構成でなくても良い。
次に、図7で示される空気調和装置の動作について、冷房運転を例に説明する。なお、暖房運転についてはここでは詳細な説明を省略するが、先述の通り、四方弁32における流路の切り替えによって暖房運転も実現できる。
冷房運転に先立って、先の実施の形態4と同様に、四方弁32は、予め、圧縮機30から吐出された冷媒が室外熱交換器33へ向かうように、かつ、室内熱交換器35から流出した冷媒が圧縮機30へ向かうように流路を切り替えているものとする。
電力変換装置101によって圧縮機用モータ3を回転駆動することで、圧縮機用モータ3に連結した圧縮要素31が冷媒を圧縮し、圧縮機30は高温高圧冷媒を吐出する。圧縮機30から吐出した高温高圧冷媒は、四方弁32を経由して、室外熱交換器33へ流入し、室外熱交換器33においてファン50によって供給(送風)される外部の空気と熱交換を実施して放熱する。
室外熱交換器33から流出した冷媒は、室外機36a側の膨張装置34aにおいて膨張及び減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となった状態で、冷媒冷却器38に流入する。
出力が大きい圧縮機用モータ3を駆動するため、第1のインバータ4の発熱が大きく、高い冷却能力を要する。第1のインバータ4を構成する複数のスイッチング素子、及び、逆流防止素子において、高温状態が続くとスイッチング素子性能の劣化、さらには所定の温度を超えると素子故障が生じる可能性がある。
冷却能力が低い場合、スイッチング素子の温度上昇を抑制するために圧縮機用モータ3に流れる電流を制限するなど、圧縮機用モータ3の出力範囲を制限する必要がある。そこで、本実施の形態5のように、冷媒冷却器38を用いて第1のインバータ4を冷却することで、第1のインバータ4の冷却能力を高めることができ、スイッチング素子が有する電流耐圧まで最大限に電流を通流し、圧縮機用モータ3の出力範囲の拡大が可能となる。
この冷却作用により、冷媒冷却器38において、気液二相冷媒中の液冷媒の一部が第1のインバータ4から吸熱して蒸発する。
冷媒冷却器38から流出した気液二相冷媒は、室内機37側の膨張装置34において膨張及び減圧されて室内熱交換器35へ流入し、空調対象空間の空気と熱交換を実施して蒸発し、低温低圧のガス冷媒となって室内熱交換器35から流出する。室内熱交換器35から流出したガス冷媒は、四方弁32を経由して圧縮機30に吸入され、再び圧縮される。以上の動作が繰り返される。
なお、図7に示す冷媒回路の構成では、膨張装置(34、34a)を室内機37側、及び、室外機36a側の両方に備える構成であるが、これは、冷房能力は圧縮機用モータ3の回転数で、また、第1のインバータ4の冷却温度を2つの膨張装置(34、34a)でそれぞれ独立に制御可能なようにするためである。このような構成は、大きな冷房能力が要求される場合でも、第1のインバータ4の冷却温度は必要以上に低くなることはなく結露の発生を抑制できるとともに、第1のインバータ4の発熱量が大きい場合も、第1のインバータ4の冷却温度が上昇しないように制御できる。
図7の構成はあくまでも、第1のインバータ4の冷却不足が発生しないようにした一例であり、結露が問題とならないケースにおいては必ずしも膨張装置(34、34a)を2つ備える構成にしなくても良く、先の実施の形態4のように、膨張装置34を、室内機37側及び室外機36a側のいずれか一方に備える構成としても良い。
以上が、本実施の形態5に係る空気調和装置の説明である。
本実施の形態5によれば、冷媒冷却器38を用いて第1のインバータ4を冷却することで、第1のインバータ4の冷却能力が向上し、圧縮機用モータ3の出力範囲を拡大することができる効果がある。