JP7383904B2 - メタリックインク及び被印刷物 - Google Patents

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本発明は、メタリックインク及びそれを用いた印刷部を備える被印刷物に関する。
近年、印刷部の意匠性の観点から、金属光沢を呈するインクのニーズが高まっている。しかし、そのようなインクは、導電性の金属材料を用いることが多く、通電による電気回路のショートや電波障害等の心配から電子機器への使用は限られる。
一方で、粒径がナノメートルレベルまで微細化された金属ナノ粒子を用いたインクは、金属光沢性の意匠を呈するインクとして優れた適性を有していることが見出されている。これは、金属ナノ粒子を含有する分散液を塗布すると、分散媒の揮発に伴い、金属ナノ粒子が均一に配列し金属光沢を呈するためである。特に、金属ナノ粒子の中でも銀等の貴金属は耐食性に優れるため、銀ナノ粒子などの貴金属を用いたインクは、応用範囲が広く金属光沢性があるインクとして有用である。
このような銀ナノ粒子は、更に、適切な保護剤で表面を覆うことにより、低粘度の分散媒中でも沈降することなく分散性を維持する。このため、銀ナノ粒子を使用することで、低粘度のインクが用いられるインクジェット法等に適したインクを作製可能である。
ここで、銀ナノ粒子を製造する方法としては、一般には硝酸銀や塩化銀等の銀塩を溶解させた水溶液等を用いて、存在する銀イオンを何らかの還元剤により還元して所望の形態の金属塩として析出させることが通常であった(特許文献1~特許文献3)。
また、シュウ酸銀とアミンを混合して熱分解することにより、シュウ酸銀アミン錯体を経て銀ナノ粒子を製造する方法等も知られている(特許文献4、特許文献5)。この手法は、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で銀ナノ粒子を製造することが可能である。更に、この手法では、アミン錯体の分解の際、アミン分子のアミノ基が銀粒子表面に配位することから、分散剤を添加しなくてもある種の分散媒に分散可能な銀ナノ粒子が得られる。
また、シュウ酸銀を熱分解させる際に、粒子の表面に配位する分子としてポリビニルピロリドンを用いて銀ナノ粒子を製造する方法もある(非特許文献1)。この手法で合成した銀ナノ粒子にはプレート状のものも含まれ、インク化した際に強い金属光沢が期待される。
特開2012-180589号公報 特開2012-140701号公報 特開2002-121437号公報 特開2012-162767号公報 特許第5574761号公報
T. Togashi, S. Ojima, I. Sato, K. Kanaizuka, and M. Kurihara, Chem. Lett., 2016, 45, 646-648
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、シュウ酸銀を熱分解して簡便に得られた銀ナノ粒子を用い、印刷部が金属光沢を示すと共に導電性が低くなるメタリックインク、及びそれを用いた被印刷物を提供することを目的とする。
課題を解決するために、本発明の一態様に係るメタリックインクは、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、分散剤と、分散媒と、を含むインクであり、上記インクの表面抵抗率が10Ω/□以上であることを要旨とする。
本発明の一態様によれば、金属光沢を示すと共に導電性が低い印刷部を作製可能なメタリックインクを提供することができる。本発明の一態様のインクによれば、印刷部が金属光沢を示すことから意匠性が高いうえ、導電性が低いため、電波を透過する必要のある部材への印刷や、内部回路の破壊防止に繋がることが期待される。
本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子の水分散液を基板に塗布し乾燥させた後、観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子分散液の吸光スペクトルを示す図である。 本発明の実施例3で得られた印刷部を観察した走査型電子顕微鏡像を示す図である。
(銀ナノ粒子を用いたメタリックインク)
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態)について説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るメタリックインク(以下、単にインクとも称する)は、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子(以下、単に銀ナノ粒子とも称する)と、分散剤と、分散媒とを有する。
本実施形態に係るインクによって印刷された印刷部は、銀ナノ粒子同士が融着していないことが好ましい。銀ナノ粒子同士が融着していない場合、印刷部の導電性は低くなる。
上記印刷部の表面抵抗率は、例えば、10Ω/□(以下、単にΩとも称する)以上であることが好ましい。表面抵抗率が、10Ω以上10Ω以下では静電気拡散性、10Ω以上1014Ω以下で帯電防止性を示す。更に、電波透過性に必要な表面抵抗率は10Ω以上であるため、10Ω以上の表面抵抗を有する印刷部は電波透過性も示す。上記印刷部の表面抵抗率は高いほど好ましいため、上限は特にない。
本実施形態に係るインクに用いられる銀ナノ粒子を構成する銀の原料としては、加熱分解により容易に金属を生成し、かつ、銀以外の不純物を生じにくい観点から、シュウ酸銀が好ましい。シュウ酸銀は、銀含有率が高いとともに、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去される。このために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で、他の原料と比べて有利といえる。
本実施形態では、上記銀化合物をポリビニルピロリドン溶液中で加熱分解することで、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子を製造する。ポリビニルピロリドンは、銀ナノ粒子の表面を保護する役割を果たすと共に、分散剤としても働く。
ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子とは、銀ナノ粒子の表面の少なくとも一部にポリビニルピロリドンを有している態様を表す。ポリビニルピロリドンの含有量は、分散液に対して0.1重量%以上30重量%以下であることが好ましい。0.1重量%より少ない場合、銀同士が凝集してしまいナノ粒子を形成することが難しくなり、30重量%より多い場合、銀ナノ粒子が高分子に絡まってしまいフィルタで目詰まりする恐れがある。銀ナノ粒子の表面に存在するポリビニルピロリドンは、TG-DTA(熱重量示差熱)測定によって検出することが可能である。
本実施形態に係る銀ナノ粒子は、例えば、メジアン径(D50)が15nm以上150nm以下の範囲内であり、水やアルコールといった分散媒に分散可能である。なお、銀ナノ粒子のメジアン径(D50)が15nmより小さいと視認性が低下し、銀ナノ粒子のメジアン径(D50)が150nmより大きいと分散性が低下することがある。
また、銀ナノ粒子の形状としては、球状、平板状、多角形状等のいずれか、又は複数の形状のものを含む。平板状の銀ナノ粒子は表面積が大きく、粒子が少量であっても視認性がよいことが期待される。また、銀ナノ粒子の形状が球状であると大きさが均一になりやすく、銀ナノ粒子が隙間なく並ぶことが期待できる。このため、球状の銀ナノ粒子も視認性がよいことが期待される。
銀ナノ粒子分散液の吸光スペクトルは、球状若しくは粒径の小さい銀ナノ粒子由来するものが400nm付近にピークを有し、アスペクト比の大きい平板状銀ナノ粒子等に由来するものが600~1300nm領域にブロードなピークを有することもある。換言すると、本実施形態に係る銀ナノ粒子が水を含む分散媒に分散された銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に、球状又は粒径の小さい銀ナノ粒子に由来する第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードであり、アスペクト比の大きい平板状の銀ナノ粒子等に由来する第2のピークを有していてもよい。なお、この吸光スペクトルは、例えば、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-2600、透過モード、25℃で測定)で測定を行うことができる。
インクにおける銀ナノ粒子の添加量は、例えば、1重量%以上50重量%以下の範囲内であることが好ましい。なお、金属光沢が強くなることから、銀ナノ粒子の添加量は、15重量%以上であることが特に好ましい。銀ナノ粒子の添加量が1重量%を下回ると印刷物としての視認性が低下し、50重量%を上回ると分散性が低下することがある。
銀ナノ粒子の表面を保護するポリビニルピロリドンは、特に、その分子量に制限はないが、分子量1,000,000以下であることが好ましい。ポリビニルピロリドンの分子量が1,000,000より大きいと、溶液の粘度が高く扱いづらくなることがある。ポリビニルピロリドンの状態についての制限はなく、粉末製品を用いて溶液を作製しても、液体製品を用いてもよい。本実施形態において使用可能なポリビニルピロリドンとして、具体的には、日本触媒社製、ポリビニルドンK-30、ポリビニルドンK-85、ポリビニルドンK-30W、ポリビニルドンK-85W、第一工業製薬社製、ピッツコールK-30(分子量45,000)、ピッツコールK-50(分子量250,000)、ピッツコールK-80(分子量900,000)、ピッツコールK-85(分子量1,000,000)等を挙げることができるがこの限りではない。
なお、ポリビニルピロリドンの分子量は、「重量平均分子量」で表記されることが多いため、上記を含め、本実施形態でのポリビニルピロリドンの分子量は特に断りがない限り、重量平均分子量とする。
重量平均分子量は、市販の測定装置で測定することが可能であり、例えば、GCP(ゲル浸透クロマトグラフィー)法での測定が可能である。
なお、GCP法は、ESC(サイズ排除クロマトグラフィー)法とも呼ばれる。GCP法であれば、測定する物質が高分子であっても、モノマー等が混合している場合(高分子単体の物質ではない場合)、測定時に検量線と併用して、分子量を推測することも可能である。
本実施形態に係るインクに用いられる分散剤は、分散媒や粒子の大きさ等によって適宜選択する必要があるが、アニオン系分散剤、又はノニオン系分散剤が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル琥珀酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ポリオキシエチレンフィロステロール、等が好ましい。具体的には、NIKKOL DDP-8NV、DDP-8、DDP-10、BPS-10、NIKKOL Decaglyn 1-L、1-M、1-OV(日光ケミカルズ)、プライサーフ A212C、A215C、A208F、M208F、A208N、A208B、A210B、A219B、DB-01、AL、DBS、ノイゲン EA-157、EA-167、EA-177、EA-197D、EA-207D(第一工業製薬)等を挙げることができるがこの限りではない。
なお、本実施形態では、これらの分散剤を単独で、又は複数混合して用いてもよい。また、インクの組成物として用いる以外にも、銀ナノ粒子回収時に、分散剤を添加した分散液を遠心分離等で処理することで、粒子が凝集しにくく、再分散しやすい粒子が得られる。
インクにおける分散剤の添加量は、0.1重量%以上5重量%以下の範囲内であることが好ましい。分散剤の添加量が0.1重量%を下回ると分散安定性が低下し、5重量%を上回ると印刷適性が低下することがある。また、分散剤は、破泡剤として酸化珪素微粉末を含んでいてもよい。更に、分散剤は、エマルジョン化されていてもよい。
また、本実施形態に係るインクは、分散剤以外にも、例えば、色素、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、等の添加剤を有してもよい。
本実施形態に係るインクが有する分散媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300(平均分子量300)等の各成分を挙げることができる。分散媒は、狙いとするインクの物性に合わせて上記成分を適宜混合して用いてよい。インクにおける上記成分の配合割合は特に限定するものではないが、インクジェット法ではノズルでのインクの乾燥を防止するために、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300のような沸点180℃以上の多価アルコール1種以上を合計で、インクジェット印刷用インク(以下、単にインクジェットインクとも称する)中に1重量%以上50重量%以下の範囲内で含有していることがより好ましい。インクジェットインク中における上記成分の含有量が1重量%より少ないと、インクの乾燥が起こりやすくなりノズルの目詰まりの原因となることがある。また、インクジェットインク中における上記成分の含有量が50重量%を超えると、錠剤表面における印字表面の乾燥が遅くなりすぎて、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合の原因となることがある。
また、本実施形態のインクがインクジェットインクの場合、その粘度は室温(25℃)下で2mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内が好ましい。インクジェットインクの粘度が2mPa・sより低いと、インク吐出時に液滴が散ってサテライト(インクの飛び散り)ができやすくなる傾向がある。また、インクジェットインクの粘度が6mPa・sより高いと、吐出速度が遅くなり、印字も遅くなることがある。なお、上記単位「mPa・s」は、「mPs」とも表記される。
本実施形態に係るインクは、塗工面に金属光沢を呈する、即ち被印刷物上で金属光沢を示す。これにより、多角度測色を行うと、金属光沢の特徴の一つであるフリップフロップ性がみられる。ここで「フリップフロップ性」とは、メタリック感(金属光沢感)を数値化する方法の一つであり、視覚の方向性(見る位置)によって明度や色相の差があることをいう。多角度測色は、例えば、多角度測色計(BYK-Gardner社製、BYK-mac、25℃、D50/2°)で測定を行うことができる。また、観察角度15°、45°、110°の各明度(L*)の測定値から、下記(1)式によりフロップインデックス(Flop Index)を計算で求めることができる。なお、下記(1)式における「L*15」、「L*45」及び「L*110」は、観察角度15°、45°及び110°における各明度(L*)の測定値をそれぞれ示している。
Flop Index=2.69・(L*15-L*1101.11/(L*450.86
・・・(1)
なお、上記(1)式は、特開2008-126126号公報に開示されているフロップインデックス計算式を参考にした。
フロップインデックスはフロップ感を数値化したものであり、値が大きいほど金属光沢が強くみえるため、計算値が4以上である場合に金属光沢があると判断する。
(印刷方法)
本実施形態に係るインクは、印刷方法は問わず、例えば、インクジェットやバーコート、スピンコートといった手法により印刷、塗工が可能である。なかでもインクジェット法は、版を用いることなく画像等が印刷でき、形状及び性状が種々な物に印刷可能であるうえ、少量のインクで印刷されることから印刷部の厚みが薄くなり、高い表面抵抗率が期待されることから好ましい。
また、被印刷物は、印刷部の保護のために、印刷部の上にトップコートを有していてもよい。
(被印刷物)
本実施形態に係る被印刷物は、印刷基材と、その印刷基材の印刷面に、上記のインクを使用して印刷された印刷部を備える。
印刷基材の印刷面は、非導電性を有することが好ましい。印刷基材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ビニル樹脂、ガラス、紙、等を挙げることができる。インクの密着性向上、又はその他の目的のために、印刷基材の印刷面を構成する表面層が親水化処理等の表面処理を施した被印刷物を用いてもよい。印刷基材は、複数の積層体から構成されていてもよい。
本実施形態の被印刷物は、印刷基材の印刷面に銀ナノ粒子をインク化して印刷することで、印刷部が金属光沢を示す。また、銀ナノ粒子の表面がポリビニルピロリドンで保護されているため、印刷部が低い導電性の性状となる。また、印刷部に存在する銀ナノ粒子は、ポリビニルピロリドンによって表面が保護されているため、銀ナノ粒子同士が融着しないか融着し難い。すなわち、粒径がナノメートルレベルまで微細化された銀ナノ粒子で覆われた印刷部の表面は金属光沢を示すが、銀ナノ粒子同士が融着していないため低い導電性を示す。
このような印刷部を被印刷物に設けることが可能なことで、電波を透過する必要のある部材への印刷や、内部回路の破壊防止に繋がることが期待される。近年、スマートフォンやセンサー用途で必要とされている電磁波を透過する、金属調の意匠膜等も作製可能である。
以下に、実施例として、銀ナノ粒子の製造、インク化、印刷等の方法、印刷部の評価等を示す。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社製)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させた。その溶液を110℃のオイルバス中で攪拌しながら、当該溶液中に、硝酸銀(関東化学社製)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加えて、1時間加熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、回収したシュウ酸銀を、熱水200mL、エタノール(関東化学社製)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
〔銀ナノ粒子の合成〕
水4.0gにポリビニルピロリドンとしてピッツコールK-30(第一工業製薬社製)2.4gを添加し水溶液を調製した分散媒に、上述の工程で得たシュウ酸銀0.48gを加え、80℃のオイルバスで加熱攪拌した。その加熱攪拌を5時間実施することで灰色に変化した分散液を得た。その分散液について、放熱したところに水40mLを加え、遠心分離(ベックマン・コールター社製、AvantiHP-26XP、15、000rpm30分間)により分離することで、灰色固形物0.35gを得た。この灰色固形物が本実施例に係る銀ナノ粒子、即ちポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子である。
なお、ピッツコールK-30の重量平均分子量は45,000であった。
〔銀ナノ粒子の観察〕
上記工程により得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が10~1000nm程度の球状又は平板状粒子が観察された。その結果を図1に示す。より詳しくは、図1は、実施例1で得た銀ナノ粒子の水溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
次に、得られた銀ナノ粒子について、溶媒への分散性を評価した。その評価結果として、得られた銀ナノ粒子が水に良好に分散したことを確認した。すなわち、その水分散液の動的光散乱粒度測定(日機装社製、Nanotrac UPA-EX150)により、得られた銀ナノ粒子は平均粒径23nmで良好に分散していることがわかった。その結果を図2に示す。また、図2に示した実線は、累積度数(%)を示している。
上記のようにして得られた銀ナノ粒子0.1gを、10gの水に分散して作製した水分散液の吸光スペクトル(島津製作所社製、紫外可視分光光度計 UV-2600、透過モード)を図3に示す。図3から、実施例1に係る銀ナノ粒子分散液は、吸光スペクトルにおいて、300nm以上550nm以下の波長領域に第1のピークを有し、600nm以上1300nm以下の波長領域に、第1のピークよりもブロードな第2のピークを有していることがわかった。
〔インクジェットインクの調製〕
水7.0g、グリセリン2.0g、イソプロピルアルコール1.0gを混合した溶媒に、分散剤であるNIKKOL Decaglyn 1-L(日光ケミカルズ社製)0.5gを溶解させた分散媒を作製し、その分散媒に対し、上述の工程で得た銀ナノ粒子4.0gを分散させよく攪拌した後、シリンジフィルター(Whatman社製、25mm GD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用のインク、即ちインクジェットインクを調製した。この場合、分散媒の合計量10gに対して、グリセリン2gのため、グリセリンの重量%は20%となる。また、分散媒10gに対して銀ナノ粒子4gのため、銀ナノ粒子の重量%は40%となる。以下同様に計算する。
なお、インクジェットインクの粘度は4mPsであった。また、グリセリンの沸点は、290℃であった。
インクの粘度測定は、山一電機社製 VM-1G-L/DD-1Aを用いて測定時のインク液温25℃で測定を行った。
〔インクジェット印刷〕
上記工程により調整したインクジェットインクを用いて、印刷テストを行った。この印刷テストでは、ノズル数6のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10pLの印刷ドロップ量にてテストパターンを印刷した。印刷内容(印刷画像)には、5cm×5cmの正方形を塗りつぶした画像を用いた。被印刷物の印刷基材としてコロナ処理を行った75μmPETフィルム(ルミラーT60、東レ社製)を用いたところ、印刷した画像には銀色の強い光沢がみられた。
得られた印刷部に対し、表面抵抗率抵抗率計(HirestaIP MCP-HT260、三菱化学社製)を用いて表面抵抗率を測定した。測定条件は、PROBE TYPE:HRS、SUPPLY VOLTAGE:10Vで測定を行った。その結果、表面抵抗率は5.01×1010Ωであった。
得られた印刷部に対し、分光光度計(米国 X-Rite社製「X-Rite T-530」)を用いて色度(L*a*b*表色系)を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 0007383904000001
なお、L*a*b*表色系とは、CIE(国際照明委員会)が推奨した、次の3つの値を使った座標で表した表色系である。L*は明るさを示し、0から100まで数値が大きいほど明るくなる。
色みはa*、b*で表し、a*、b*ともに0の場合は無彩色となる。a*がプラスの方向になるほど赤みが強くなり、マイナスの方向になるほど緑みが強くなる。また、b*がプラスの方向になるほど黄みが強くなり、マイナスの方向になるほど青みが強くなる。なお、この3つの軸が直交して交わる点は、L*=50、a*=0、b*=0である。
<実施例2>
実施例1で用いたインクに対し、分散剤としてNIKKOL Decaglyn 1-M(日光ケミカルズ社製)0.5gを用いた以外は、実施例1と同様にインクを調製した。こうして調製した実施例2に係るインクを用いて印刷テストを行ったところ、印刷部は金属光沢を示し、表面抵抗率は3.79×1010Ωであった。
<実施例3>
被印刷物の印刷基材として、PETフィルムではなくキャストコート紙(ミラーコート・プラチナ、王子製紙社製)を用いた以外は実施例1と同様に印刷テストを行ったところ、印刷部は金属光沢を示し、表面抵抗率は3.38×10Ωであった。
得られた印刷部を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製、SEM S-4800)を用いてSEMモード(加速電圧5kV)で観察したところ、銀ナノ粒子は融着しておらず、球状、平板状、又は多面体状の形状を保っている様子がみられた。その結果を図4に示す。
また、印刷部に対し多角度測色(BYK-Gardner社製、BYK-mac)を行ったところ、角度によってL*の値に変化があり、フロップ性がみられた。結果を表2に示す。また、この時のフロップインデックスは5.22となった。
なお、実施例2で用いたインクを用いても、実施例3と同様のフリップフロップ性を示した。
Figure 0007383904000002
<比較例1>
実施例1で用いたインクに対し、分散剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にインクを調整した。印刷テストを行ったところ、印刷部の印刷濃度が薄く、金属光沢を示さなかった。これは、分散剤を添加しなかったことで、銀ナノ粒子の分散性が不十分となり凝集し、ノズルから吐出される銀ナノ粒子量が減少したためと考えられる。
以上説明したように、本発明では、ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子をインク化して印刷することで、印刷部が金属光沢を示し、かつ低い導電性である被印刷物を提供することができる。このような印刷部を設けることが可能なことで、電波を透過する必要のある部材への印刷や、内部回路の破壊防止が期待され、幅広く電子機器へ使用できる。

Claims (8)

  1. ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、分散剤と、分散媒と、を含むインクであり、
    上記分散媒は、エタノール、またはイソプロピルアルコールを含有し、
    上記インクから形成された印刷部の表面抵抗率が10Ω/□以上であり、
    上記分散剤は、モノラウリン酸デカグリセリル、またはモノミリスチン酸デカグリセリルであることを特徴とするメタリックインク。
  2. ポリビニルピロリドンで表面が保護された銀ナノ粒子と、分散剤と、分散媒と、を含むインクであり、
    記インクから形成された印刷部の表面抵抗率が10Ω/□以上であり、
    上記分散媒は、水、グリセリン、イソプロピルアルコール、及びモノラウリン酸デカグリセリルを含有すること、または水、グリセリン、イソプロピルアルコール、及びモノミリスチン酸デカグリセリルを含有することを特徴とするメタリックインク。
  3. 上記銀ナノ粒子は、メジアン径(D50)が15nm以上150nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメタリックインク。
  4. 上記メタリックインクの粘度は、2mPa・s以上6mPa・s以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のメタリックインク。
  5. 上記分散媒は、グリセリン、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールの少なくとも1種を、上記分散媒100重量%に対し、合計で1重量%以上50重量%以下の範囲内でさらに含有していることを特徴とする請求項1に記載のメタリックインク。
  6. 上記分散媒は、上記イソプロピルアルコール、及びグリセリンを含有していることを特徴とする請求項1に記載のメタリックインク。
  7. 請求項1~請求項のいずれか1項に記載のメタリックインクで印刷された印刷部を備える被印刷物。
  8. 上記印刷部は、銀ナノ粒子同士が融着していないことを特徴とする請求項に記載の被印刷物。
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