[第1態様の実施の形態の第1例]
本発明の第1態様の実施の形態の第1例について、図1~図11を用いて説明する。本発明の第1の態様は、逆入力遮断クラッチをアクチュエータに適用している。
本発明の第1態様は、逆入力遮断クラッチを備えたアクチュエータに関する。第1態様の実施の形態の第1例のアクチュエータ1は、回転直動変換機構であるボールねじ機構6と、ロック機構52を有する逆入力遮断クラッチ5と、を備える。
特に、第1態様の実施の形態の第1例のアクチュエータ1では、回転直道機構(ボールねじ機構6)は、外周面に雄側係合部(雄側螺旋溝10)を有するねじ軸(ボールねじ軸7)と、内周面に雌側係合部(雌側螺旋溝11)を有するナット8とを備え、かつ、前記雄側係合部と前記雌側係合部とが直接又は複数の中間係合部材を介して係合している。
ロック機構52は、被押圧部材16と、入力係合部20と、出力係合部26と、係合子17とを備えている。
被押圧部材16は、内周面に円筒状の被押圧面28を有している。入力係合部20は、被押圧面28の中心軸Oと同軸の回転中心軸Oを有し、かつ、被押圧面28の径方向内側に配置されている。出力係合部26は、被押圧面28の中心軸Oと同軸の回転中心軸Oを有し、かつ、被押圧面28の径方向内側で入力係合部20よりも径方向内側に配置されている。
係合子17は、被押圧面28の径方向内側に配置されており、かつ、入力係合部20に回転トルクが入力されると、入力係合部20との係合に基づいて被押圧面28から離れる方向に移動し、入力係合部20に入力された回転トルクを出力係合部26との係合に基づいて出力係合部26に伝達するのに対し、出力係合部26に回転トルクが逆入力されると、出力係合部26との係合に基づいて被押圧面28に近づく方向に移動し、被押圧面28に押し付けられることで、出力係合部26に逆入力された回転トルクを入力係合部20に伝達しないか又は出力係合部26に逆入力された回転トルクの一部を入力係合部20との係合に基づいて入力係合部20に伝達し残部を遮断するように構成されている。
ロック機構52は、出力係合部26がナット8に対してトルク伝達を可能に接続され、かつ、ねじ軸7の周囲で雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲(雄側係合部)から軸方向に外れた部分に配置されている。
出力係合部26の内径寸法が、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲の外径寸法よりも小さくなっている。
以下、第1態様の実施の形態の第1例のアクチュエータ1の具体的な構成について、詳細に説明する。本例のアクチュエータ1は、ハウジング2と、ハウジング2に支持された駆動源である電動モータ3と、それぞれがハウジング2の内側に収容された、減速機構4、逆入力遮断クラッチ5、及びボールねじ機構6とを備えている。
アクチュエータ1は、電動モータ3の回転運動を、減速機構4により減速(増大)してから逆入力遮断クラッチ5を介してボールねじ機構6に伝達し、ボールねじ機構6で回転運動を直動運動に変換してから出力するように構成されている。また、逆入力遮断クラッチ5は、ロック式の逆入力遮断クラッチであり、電動モータ3側の入力部に入力される回転トルクは、その全てをボールねじ機構6側の出力部に伝達するのに対し、出力部に逆入力される回転トルクは、入力部に伝達しないか又はその一部のみを伝達し残部を遮断する、逆入力遮断機能を有している。
なお、特に断らない限り、アクチュエータ1に関して、軸方向は、ボールねじ機構6の軸方向、すなわち、図1及び図2における左右方向である。また、軸方向一方側は、図1及び図2における右側であり、軸方向他方側は、図1及び図2における左側である。逆入力遮断クラッチ5の軸方向は、ボールねじ機構6の軸方向に一致する。また、径方向及び周方向は、逆入力遮断クラッチ5の径方向及び周方向を意味する。
ボールねじ機構6は、ねじ軸(ボールねじ軸)7と、ナット(ボールナット)8と、複数のボール9とを備えている。ねじ軸7は、外周面に螺旋状に形成された雄側螺旋溝10を有している。ナット8は、ねじ軸7の周囲に、ねじ軸7と同軸に配置されており、内周面に螺旋状に形成された雌側螺旋溝11を有している。複数のボール9は、雄側螺旋溝10と雌側螺旋溝11との間に螺旋状に配置されている。また、ナット8のうち、雌側螺旋溝11の径方向外側に重畳する部分には、ねじ軸7とナット8とが相対回転する際に、雄側螺旋溝10と雌側螺旋溝11との間で移動する複数のボール9を循環させるための循環経路12(図2参照)が備えられている。循環経路12は、ナット8に直接形成しても良いし、循環用チューブなどの別部材を用いて形成しても良い。ボールねじ機構6は、このような構成により、ねじ軸7とナット8との相対回転運動を、ねじ軸7とナット8との相対直動運動(軸方向の相対移動運動)に変換できるように構成されている。
本例では、ねじ軸7は、ハウジング2の内側に配置されており、軸方向両端部がハウジング2の外側に突出している。また、ねじ軸7は、ハウジング2の軸方向両側部のそれぞれの内側に保持された滑り軸受などの支持体53により、ハウジング2に対して摺動自在に支持されている。なお、ねじ軸7のうち、支持体53により摺動自在に支持される部分の外周面は、雄側螺旋溝10が形成されていない単なる円筒面により構成することもできる。支持体53の設置を省略することもできる。ナット8は、ハウジング2の内側に、第1軸受13によって回転のみを可能に支持されている。
逆入力遮断クラッチ5は、入力部である入力部材14と、出力部である出力部材15と、被押圧部材16と、1対の係合子17とを備えており、かつ、ハウジング2の内側で、ねじ軸7及びナット8の周囲に、ねじ軸7及びナット8と同軸に配置されている。また、逆入力遮断クラッチ5は、その一部にロック機構52を有しており、このロック機構52が、ナット8から軸方向一方側に外れた部分に配置されている。なお、以下の説明において、特に断らない限り、入力部材14、出力部材15、及び被押圧部材16の軸方向、径方向、及び周方向は、逆入力遮断クラッチ5の軸方向、径方向、及び周方向と一致する。
図10に示すように、入力部材14は、入力接続部である入力筒部18と、入力円輪部19と、1対の入力係合部20とを備えている。入力筒部18は、円筒形状を有している。入力円輪部19は、円輪形状を有し、入力筒部18と同軸に配置され、かつ、径方向中間部が入力筒部18の軸方向一方側端部に結合されている。1対の入力係合部20は、それぞれが略楕円柱形状を有し、入力円輪部19の径方向内側部の直径方向反対側2箇所位置から軸方向一方側に向け伸長している。具体的には、1対の入力係合部20は、入力円輪部19のうちで回転中心軸Oから径方向外方に外れた部分に、径方向に互いに離隔するようにして配置されている。入力係合部20の径方向外側面は、回転中心軸Oを中心とする部分円筒面形状を有しており、入力係合部20の径方向内側面は、1対の入力係合部20の離隔方向である直径方向に対して直交する平坦面形状を有している。
図11に示すように、出力部材15は、筒状に構成されており、入力部材14の径方向内側に、入力部材14と同軸に配置されている。出力部材15は、その軸方向他方側の半部を構成する出力筒部21と、その軸方向一方側の半部を構成するオフセット筒部22とを、互いに同軸に備えている。出力筒部21は、内周面に、円筒面である大径内周面部23を有する。図2に示すように、オフセット筒部22は、内周面に、大径内周面部23よりも径寸法が小さい円筒面である小径内周面部24を有する。オフセット筒部22は、軸方向一方側部に、軸方向他方側部よりも外径寸法が小さい小径筒部25を有する。小径筒部25は、軸方向中間部に、出力係合部26を有する。出力係合部26は、外周面の径方向反対側となる2箇所位置に、互いに平行な平坦面状のカム面27を有している。
出力部材15は、オフセット筒部22の軸方向他方側部が、入力筒部18の径方向内側に配置され、出力係合部26が、1対の入力係合部20同士の間部分に配置されている。また、入力筒部18の内周面とオフセット筒部22の軸方向他方側部の外周面との間に、第2軸受33が設置されている。第2軸受33により、入力部材14と出力部材15との同軸性が確保され、かつ、入力部材14と出力部材15との相対回転が許容されている。第2軸受33としては、円筒状の滑り軸受や、ラジアルニードル軸受などの転がり軸受を用いることができる。なお、第2軸受33を省略し、入力筒部18の内周面とオフセット筒部22の軸方向他方側部の外周面とを回転方向の摺動可能に嵌合させることもできる。
被押圧部材16は、L字形の断面形状を有し、かつ、全体として円環状に構成されている。被押圧部材16は、入力部材14及び出力部材15と同軸に、かつ、1対の入力係合部20及び出力係合部26の周囲に配置されている。また、被押圧部材16は、1対の入力係合部20及び出力係合部26の周囲を取り囲む内周面に、円筒面状の凹面である被押圧面28を有する。
1対の係合子17を構成するそれぞれの係合子17は、略円弧板形状(弓形板形状)を有し、被押圧部材16の径方向内側に配置されている。具体的には、1対の係合子17は、被押圧面28と出力係合部26の外周面との間に、出力係合部26を1対のカム面27の離隔方向である径方向両側(図5の上下両側)から挟むように配置されている。それぞれの係合子17は、互いに同形及び同大に造られた同一部品により構成されている。
それぞれの係合子17は、被押圧面28に対向する径方向外側面(外周側面)に、円筒面状の凸面である押圧面29を有しており、出力係合部26のカム面27に対向する径方向内側面の周方向中央部に、カム面27と係合可能な出力係合面30を有している。出力係合面30は、1対の係合子17の離隔方向(図5における上下方向)に直交する平坦面形状を有している。また、1対の係合子17を、被押圧部材16の径方向内側に配置した状態で、被押圧面28と押圧面29との間部分又はカム面27と出力係合面30との間部分に隙間が存在するように、被押圧部材16の内径寸法及び係合子17の径方向寸法は規制されている。
それぞれの係合子17は、径方向中間部の周方向中央部に入力係合孔31を有している。入力係合孔31は、それぞれの係合子17の幅方向に伸長する略矩形状の軸方向貫通孔であり、入力係合部20を緩く挿入できる大きさを有している。入力係合孔31の内面のうち、径方向内側に位置する面は、入力係合部20と係合可能な入力係合面32になっている。入力係合面32は、出力係合面30と平行な平坦面形状を有している。
それぞれの係合子17の幅方向は、軸方向に直交する仮想平面内で、1対の係合子17の離隔方向又は遠近方向(図5における上下方向)に対して直交する方向(図5における左右方向)である。
入力係合孔31の内側に入力係合部20を挿入した状態で、入力係合部20と入力係合孔31との間には、それぞれの係合子17の幅方向及び遠近方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力係合部20は、入力係合孔31に対し、入力部材14の回転方向に関する相対移動が可能であり、入力係合孔31は、入力係合部20に対し、遠近方向の相対移動が可能である。
それぞれの係合子17の押圧面29は、その他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有しており、その曲率半径は、被押圧面28の曲率半径と同じかこれよりも僅かに小さい。押圧面29は、それぞれの係合子17の表面によって直接構成されることもでき、それぞれの係合子17に貼着や接着などにより固定した摩擦材などの中間部材によって構成されることもできる。追加的又は代替的に、被押圧面28と押圧面29との間に、隙間調整材などの中間部材を配置し、隙間調整材の内面に被押圧面28を備えるようにすることもできる。摩擦材や隙間調整材などの中間部材を備えることにより、被押圧面28と押圧面29との間部分に、それぞれの係合子17が被押圧面28に対して径方向に遠近移動することを可能とするために設けられた隙間、すなわち、入力部材14と出力部材15との間の回転方向のバックラッシュにばらつきが生じた場合にも、バックラッシュを小さく抑えることが可能となる。さらに、被押圧面28と押圧面29との間部分に、被押圧面28と押圧面29との接触部を潤滑するための、トラクションオイル、トラクショングリース、その他の潤滑油などの潤滑剤を配置することもできる。これにより、被押圧面28と押圧面29との間の摩擦係数μを大きくして,ブレーキトルクを向上させる、あるいは、係合子の押圧面29に施す仕上げ加工や熱処理を局所的に限定できるといった効果が得られる。
それぞれの係合子17の周方向両側面は、遠近方向に直交する平坦面である。図6に示すように、それぞれの係合子17の出力係合面30をカム面27に面接触させた状態、すなわち、1対の係合子17を遠近方向に関して最も近づけた状態で、互いに対向する1対の係合子17の周方向両側面同士は、接触しないか、又は、接触したとしても接触部の面圧が実質的にゼロになるように、1対の係合子17のそれぞれの周方向寸法が規制されている。
逆入力遮断クラッチ5は、それぞれが径方向に重畳して配置された、1対の入力係合部20と、出力係合部26と、被押圧部材16と、1対の係合子17とにより構成された、ロック機構52を備える。
逆入力遮断クラッチ5が、ねじ軸7及びナット8の周囲に配置された状態で、ロック機構52は、ナット8から軸方向一方側に外れた部分に配置されている。
この状態で、出力部材15は、出力筒部21が、ナット8に対してトルク伝達可能となるように外嵌固定されている。具体的には、出力筒部21の大径内周面部23が、ナット8の軸方向一方側端部及び中間部の外周面に、径方向のがたつきなく外嵌されている。また、出力筒部21の軸方向他方側端面が、ナット8の軸方向他方側端部に設けられた外向フランジ状の鍔部34に当接することで、ナット8に対する出力部材15の軸方向の位置決めが図られている。この状態で、複数本のボルト35を用いて、出力筒部21がナット8に固定されている。具体的には、鍔部34の周方向複数箇所(図示の例では6箇所)に、軸方向の通孔36が設けられ、かつ、出力筒部21の軸方向他方側端部で通孔36のそれぞれと整合する箇所に、ねじ孔37が備えられている。通孔36のそれぞれを挿通したボルト35が、ねじ孔37のそれぞれに螺合されている。なお、出力筒部21をナット8に対してトルク伝達可能となるように外嵌固定する方法として、圧入嵌合、スプライン嵌合、キー係合、溶接、ろう付けなどの方法を採用することもできる。また、出力筒部21がナット8に外嵌固定された状態で、オフセット筒部22の小径内周面部24は、ねじ軸7の外周面に近接対向している。
出力部材15は、ナット8と共に、ハウジング2の内側に、第1軸受13によって回転のみを可能に支持されている。図示の例では、第1軸受13として、ラジアル荷重とアキシアル荷重とを支承可能な転がり軸受の一種である、深溝玉軸受が用いられている。第1軸受13の内輪38は、出力筒部21に締り嵌めで外嵌(圧入外嵌)されている。また、内輪38は、その軸方向他方側端面を、出力筒部21の軸方向他方側端部に備えられた外向フランジ状の鍔部40に当接させることで、出力筒部21に対する軸方向の位置決めが図られている。また、第1軸受13の外輪39は、ハウジング2に締り嵌めで内嵌(圧入内嵌)されている。また、外輪39は、ハウジング2の内周面のうち外輪39の軸方向他方側に隣接する部分に設けられた段差面41と、ハウジング2の内周面のうち外輪39の軸方向一方側に隣接する部分に係止された止め輪42との間で軸方向に挟持されることにより、ハウジング2に対する軸方向の位置決めが図られている。
第1軸受は、ナットおよび出力部材をハウジングに対して回転のみ可能に支持するために備えられ、その種類、設置箇所などは問われないが、ラジアル荷重及び両方向のアキシアル荷重を支承できる軸受により構成されることが好ましい。第1軸受として、多点接触玉軸受、複列アンギュラ玉軸受などが用いられる。第1軸受は、ハウジングに対してナットを直接支持する、あるいは、ハウジングに対してナットと共に回転する他の部材(出力部材以外の部材)を支持するように設置される。なお、第1軸受の内輪や外輪は、第1軸受に隣接する部材に対して一体形成することもできる。
入力部材14の入力筒部18に、減速機構4を構成する出力歯車50がトルク伝達可能に外嵌固定されている。具体的には、出力歯車50は、入力筒部18に対して、圧入嵌合、スプライン嵌合、キー係合、溶接、ろう付けなどの方法で、トルク伝達可能に外嵌固定されている。出力歯車50は、その径方向内端部の軸方向一方側側面を、入力円輪部19に当接させることで、入力部材14に対する軸方向の位置決めが図られている。また、入力部材14及び出力歯車50と、第1軸受13の内輪38との間で、円環状の第1スペーサ43が軸方向に挟持されることにより、出力部材15に対する入力部材14及び出力歯車50の軸方向の位置決めが図られている。ただし、入力筒部18は、出力歯車50に対して一体形成することもできる。
出力部材15を構成する小径筒部25の軸方向一方側端部の外周面に、円輪状の第2スペーサ44が、止め輪45と共に係止されている。第2スペーサ44は、1対の入力係合部20の軸方向一方側端面、及び、1対の係合子17の軸方向一方側側面に対し、微小隙間を介して軸方向に対向しているか、又は、軽く当接している。これにより、出力部材15に対する入力部材14及び1対の係合子17の軸方向の位置決めが図られており、かつ、入力部材14と出力部材15と1対の係合子17との相対回転、及び、1対の係合子17の径方向変位が許容されている。
被押圧部材16は、複数本のボルト46を用いて、ハウジング2に固定されている。具体的には、被押圧部材16の周方向複数箇所(図示の例では4箇所)に、軸方向の通孔47が備えられ、かつ、ハウジング2のうち通孔47のそれぞれと整合する箇所に、ねじ孔48が備えられている。通孔47のそれぞれを挿通したボルト46が、ねじ孔48のそれぞれに螺合されている。なお、被押圧部材16をハウジング2に固定する方法として、圧入嵌合、スプライン嵌合、キー係合、溶接、ろう付けなどの方法を採用することもできる。また、被押圧部材は、ハウジングに対して一体形成することもできる。
減速機構4は、それぞれの回転中心軸を互いに平行に配置された複数の歯車により構成された、平行軸歯車機構である。具体的には、減速機構4は、入力部である入力歯車49と、出力部である出力歯車50とを備えている。入力歯車49は、ねじ軸7と平行に配置された電動モータ3の駆動軸51の先端部に対して、圧入嵌合、スプライン嵌合、キー係合、溶接、ろう付けなどの方法で、トルク伝達可能に外嵌固定されている。電動モータ3の駆動軸51は、両方向の回転駆動が可能である。出力歯車50が入力筒部18に外嵌固定された状態で、入力歯車49と出力歯車50とのそれぞれの外周部に設けられた歯部同士は互いに噛合する。なお、第2軸受33は、入力歯車49から出力歯車50に加わるギヤ反力を支承する役割も果たしている。
減速機構としては、平行軸歯車機構のほか、遊星歯車機構、傘歯車機構、波動歯車機構、サイクロイド減速機構、ベルト駆動式減速機構、チェーン駆動式減速機構、ウェッジローラ式トラクションドライブ減速機構、これらの組み合わせなど、各種の減速機構を採用することができる。
このような構成を有する本例のアクチュエータ1では、電動モータ3の駆動軸51の回転トルクは、減速機構4により減速(増大)された後、逆入力遮断クラッチ5の入力部材14に入力される。逆入力遮断クラッチ5は、入力部材14に入力された回転トルクの全てを、1対の係合子17を介して出力部材15に伝達する。出力部材15に伝達された回転トルクは、ナット8に伝達され、ナット8が回転する。ナット8の回転は、複数のボール9を介してねじ軸7の直動運動に変換される。したがって、たとえば、各種機械装置の被駆動部にねじ軸7を結合しておけば、ねじ軸7の直動運動によって、この被駆動部を駆動することができる。一方、たとえば、前記被駆動部からねじ軸7に軸方向荷重が逆入力されると、この軸方向荷重は、ナット8に逆入力される回転トルクに変換され、この回転トルクがナット8から、逆入力遮断クラッチ5の出力部材15に逆入力される。逆入力遮断クラッチ5は、出力部材15に逆入力された回転トルクを、入力部材14に伝達しないか、又は、その一部のみを1対の係合子17を介して入力部材14に伝達し残部を遮断する。
逆入力遮断クラッチ5の具体的な動作について説明する。まず、電動モータ3側から入力部材14に回転トルクが入力された場合を説明する。入力部材14に回転トルクが入力されると、図6に示すように、入力係合孔31の内側で、入力係合部20が入力部材14の回転方向(図6の例では時計方向)に回転する。入力係合部20の径方向内側面が、入力係合面32を径方向内方に向けて押圧し、1対の係合子17を、被押圧面28から離れる方向にそれぞれ移動させる。それぞれの係合子17は、入力係合面32と入力係合部20との係合に基づき、遠近方向に関して互いに近づくように径方向内側に(図6の上側に位置する係合子17を下側に、図6の下側に位置する係合子17を上側に)移動する。1対の係合子17の出力係合面30は、出力部材15の出力係合部26を径方向両側から挟持し、出力部材15の1対のカム面27にがたつきなく係合(面接触)する。この結果、入力部材14に入力された回転トルクは、1対の係合子17を介して、出力部材15に伝達され、出力部材15から出力される。このような入力部材14から出力部材15への回転トルクの伝達は、入力部材14の回転方向に関係なく行われる。
次に、ボールねじ機構6側から出力部材15に回転トルクが逆入力された場合を説明する。出力部材15に回転トルクが逆入力されると、図7に示すように、出力係合部26が、1対の出力係合面30同士の内側で、出力部材15の回転方向(図7の例では時計方向)に回転する。出力係合部26の角部(カム面27の周方向端部)が出力係合面30を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子17を、被押圧面28に近づく方向にそれぞれ移動させる。それぞれの係合子17は、出力係合面30と出力係合部26との係合に基づき、互いに離れるように径方向外側に(図7の上側に位置する係合子17を上側に、図7の下側に位置する係合子17を下側に)移動する。1対の係合子17の押圧面29は、被押圧面28に対して押し付けられる。この際、押圧面29と被押圧面28とは、押圧面29の周方向に関する全範囲又は一部(例えば中央部)で接触する。本例では、この接触に基づき、出力部材15に逆入力された回転トルクが入力部材14に伝達されないようにするか又はその一部のみが伝達され残部が遮断される。このような遮断機能は、出力部材15の回転方向に関係なく実現される。出力部材15に逆入力された回転トルクが入力部材14に伝達されないようにするには、押圧面29が被押圧面28に対して摺動(相対回転)しないように、1対の係合子17を出力係合部26と被押圧部材16との間で突っ張らせ、出力部材15をロックする。これに対し、出力部材15に逆入力された回転トルクのうちの一部のみが入力部材14に伝達され残部が遮断されるようにするには、押圧面29が被押圧面28に対して摺動するように、1対の係合子17を出力係合部26と被押圧部材16との間で突っ張らせ、出力部材15を半ロックする。
出力部材15に回転トルクが逆入力された場合に、出力部材15がロック又は半ロックする原理及び条件について、図8及び図9を参照して、より具体的に説明する。出力部材15に回転トルクが逆入力されることで、出力係合部26の角部が出力係合面30に当接すると、図8に示すように、出力係合部26の角部と出力係合面30との当接部Xには、出力係合面30に対し垂直方向に法線力Fcが作用する。また、当接部Xには、出力係合部26と出力係合面30との間の摩擦係数をμとすると、出力係合面30と平行な方向に摩擦力μFcが作用する。ここで、当接部Xに作用する接線力Ftの作用線の方向と出力係合面30との間のくさび角をθとすると、接線力Ftは、次の式(1)により表される。
Ft=Fc・sinθ+μFc・cosθ ・・・(1)
このため、法線力Fcは、接線力Ftを用いて、次の(2)式により表される。
Fc=Ft/(sinθ+μ・cosθ) ・・・(2)
出力係合部26の角部が出力係合面30に当接した際に、出力部材15から係合子17に伝達されるトルクTの大きさは、出力部材15の回転中心軸Oから当接部Xまでの距離をrとすると、次の(3)式で表される。
T=r・Ft ・・・(3)
上述したように、当接部Xには法線力Fcが作用するため、図9に示すように、係合子17の押圧面29は、被押圧部材16の被押圧面28に対して法線力Fcの力で押し付けられる。このため、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数をμ´とし、出力部材15の回転中心軸Oから押圧面29と被押圧面28との当接部Yまでの距離をRとすると、係合子17に作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(4)式で表される。
T´=μ´RFc ・・・(4)
したがって、より大きなブレーキ力を得るには、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。
出力部材15がロックするには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(5)式の関係を満たす必要がある。
T<T´ ・・・(5)
また、上記(5)式に上記(1)~(4)式を代入すると次の(6)式が得られる。
μ´R/(sinθ+μ・cosθ)>r ・・・(6)
上記(6)式からは、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数μ´を大きくすれば、距離Rを小さくしても、出力部材15をロックさせられることが分かる。
また、摩擦係数μ及び摩擦係数μ´がそれぞれ0.1であると仮定すると、上記(6)式から次の(7)式が得られる。
R>10r(sinθ+0.1cosθ) ・・・(7)
上記(7)式からは、出力部材15の回転中心軸Oから当接部Xまでの距離rと、出力部材15の回転中心軸Oから当接部Yまでの距離Rと、接線力Ftの作用線の方向と出力係合面30との間のくさび角θとを適切に設定することで、出力部材15をロックさせられることが分かる。
これに対し、出力部材15が半ロックして、出力部材15に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材14に伝達され残部が遮断されるようにするためには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、次の(8)式の関係を満たす必要がある。
T>T´ ・・・(8)
また、上記(6)式からも明らかな通り、出力係合部26と出力係合面30との間の摩擦係数μ、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数μ´、回転中心軸Oから当接部Xまでの距離r、回転中心軸Oから当接部Yまでの距離R、接線力Ftの作用線の方向と出力係合面30との間のくさび角θをそれぞれ適切に設定することで、出力部材15を半ロックさせることができる。
出力部材15がロック又は半ロックした状態で、入力部材14に回転トルクが入力された場合、入力部材14から係合子17に作用する法線力が、出力部材15から係合子17に作用する法線力Fcよりも大きくなると、出力部材15のロック又は半ロックが解除される。つまり、係合子17は径方向内方に移動し、入力部材14から出力部材15に回転トルクが伝達される。
本例のアクチュエータ1では、ねじ軸7に結合された各種機械装置の被駆動部に反力が加わることにより、ねじ軸7に軸方向荷重が逆入力され、逆入力遮断クラッチ5の出力部材15に回転トルクが逆入力されると、逆入力遮断クラッチ5は、出力部材15の回転を防止(出力部材15をロック)して、出力部材15に逆入力された回転トルクが入力部材14に伝達されないようにするか、又は、出力部材15の回転を抑制(出力部材15を半ロック)して、出力部材15に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材14に伝達され残部が遮断されるようにしている。このため、電動モータ3に通電していなくても、出力部材15をロックする場合は、被駆動部の位置を保持することができ、出力部材15を半ロックする場合には、被駆動部の位置が急激に変化することを防止できる。要するに、被駆動部に加わる反力に対して、被駆動部の位置を保持したり、被駆動部の位置が急激に変化することを防止したりするための力を、電動モータ3で発生させる必要がない。したがって、その分、電動モータ3の電力消費量を削減することができる。
本例のアクチュエータ1を実施する場合で、出力部材15が半ロックするように設定する場合には、アクチュエータ1の用途に応じて、出力部材15に逆入力された回転トルクの遮断量が適切に設定される。たとえば、本例のアクチュエータ1を、自動車のステアバイワイヤ式操舵装置に組み込んで使用する場合には、ねじ軸7の軸方向を車幅方向に一致させた状態で、ハウジング2は車体に固定され、かつ、ねじ軸7の軸方向端部に、転舵輪につながるタイロッドの基端部が結合される。この自動車の走行中、ステアリングホイールを操作して自動車を曲線走行させると、転舵輪には、路面から、転舵角を直進状態に戻すような反力、すなわち復元力が作用する。この復元力を利用すると、自動車を曲線走行から直線走行に戻す際のステアリングホイールの操作が楽になるという第1の利点がある。そして、出力部材15が半ロックするように設定すると、第1の利点を得られることに加えて、路面から転舵輪に作用する反力が大きくなった場合(たとえば、転舵輪が縁石に乗り上げた場合)に、転舵輪の転舵角が急激に変化することを防止できるといった第2の利点も得られる。
ただし、第1の利点は、出力部材15に逆入力した回転トルクの遮断量を多くするほど得られにくくなり、第2の利点は、出力部材15に逆入力した回転トルクの遮断量を少なくするほど得られにくくなるといった関係がある。本例のアクチュエータ1をステアバイワイヤ式操舵装置に組み込む場合であって、出力部材15が半ロックするように設定する場合には、第1の利点を得る観点から、出力部材15に逆入力した回転トルクの遮断量は、80%以下にするのが好ましく、20%以下にするのがより好ましい。第2の利点を得る観点から、出力部材15に逆入力した回転トルクの遮断量は、20%以上にするのが好ましく、80%以上にするのがより好ましい。第1の利点と第2の利点との双方を得る観点から、出力部材15に逆入力した回転トルクの遮断量は、20%~80%の範囲内に収めることが好ましい。
なお、前記遮断量は、次の(9)式により求めることができる。
(出力部材15に逆入力された回転トルクの遮断量)={(出力部材15に逆入力された回転トルク)-(入力部材14に伝達された回転トルク)}/(出力部材15に逆入力された回転トルク) ・・・(9)
本例の逆入力遮断クラッチ5では、係合子17に、入力部材14に入力された回転トルクを出力部材15に伝達する機能と、出力部材15に逆入力された回転トルクを遮断する機能(出力部材15をロック又は半ロックする機能)との両方の機能を持たせている。このため、逆入力遮断クラッチ5の部品点数を抑えることができ、かつ、両機能をそれぞれ別の部材に持たせる場合に比べて、動作を安定させることができる。たとえば、回転トルクを伝達する機能と回転トルクを遮断する機能とを別の部材に持たせる場合、出力部材に逆入力される回転トルクの遮断を解除するタイミングと、入力部材から出力部材に回転トルクの伝達を開始するタイミングとがずれる可能性がある。この場合、回転トルクの遮断を解除してから出力部材への回転トルクの伝達を開始するまでの間に出力部材に回転トルクが逆入力されると、出力部材が再びロックされてしまう。本例では、係合子17に、入力部材14に入力された回転トルクを出力部材15に伝達する機能と、出力部材15に逆入力された回転トルクを遮断する機能との両方の機能を持たせているため、このような不都合が生じることを防止できる。
本例では、入力部材14から係合子17に作用する力の向きと、出力部材15から係合子17に作用する力の向きとが逆向きであるため、両方の力の大小関係を規制することで、係合子17の移動方向を制御できる。このため、出力部材15のロック又は半ロック状態とロック解除状態との切り替え動作を容易に(安定して確実に)行うことができる。したがって、従来構造の逆入力遮断クラッチのように、くさび形空間の径方向に関する幅の狭い部分に転動体が噛み込まれたままとなり、ロックが解除されなくなる、といった不都合が生じることを防止できる。
本例では、逆入力遮断クラッチ5のロック機構52は、ナット8から軸方向一方側に外れた部分に配置されている。また、ロック機構52を構成する出力係合部26の内径寸法(小径内周面部24の内径寸法)は、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲の外径寸法よりも小さくなっている。このため、ロック機構52の径寸法を小さくすることができる。
この点について、具体的に説明すると、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲には、雌側螺旋溝11の径方向外側に循環経路12が備えられるため、該軸方向範囲の外径寸法は大きくなりやすい。また、ロック機構52を構成する出力係合部26は、その強度を確保するために、径方向の肉厚を所定量以上確保する必要がある。このため、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲の径方向外側に、ロック機構を構成する出力係合部を配置すると、その分、出力係合部の外径寸法も大きくなる。これに対して、本例では、ロック機構52を構成する出力係合部26がナット8から軸方向に外れた部分に配置されており、かつ、出力係合部26の内径寸法が、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲の外径寸法よりも小さくなっている。このため、本例では、ナット8のうちで雌側螺旋溝11が存在する軸方向範囲の径方向外側に出力係合部を配置する構造に比べて、出力係合部26の外径寸法を小さくすることができる。したがって、その分、ロック機構52の径寸法を小さくすることができ、アクチュエータ1の径方向の小型化が図られている。
本例では、軸方向に関して減速機構4とロック機構52との間に第1軸受13を挟むことなく、軸方向に関して減速機構4とロック機構52とが隣り合うように配置されている。このため、減速機構4を構成する出力歯車50とロック機構52との間に入力部材14を掛け渡す構造を、簡素にすることができる。
本例では、減速機構4が、電動モータ3と逆入力遮断クラッチ5との間に備えられている。このため、ボールねじ機構6側から逆入力される回転トルクは、その少なくとも一部が、減速機構4に伝達される前に逆入力遮断クラッチ5によって遮断される。したがって、逆入力される回転トルクから減速機構4が保護される。具体的には、入力歯車49と出力歯車50との噛合などにおけるフレッチングが防止又は抑制される。
本例では、回転直道変換機構として、ボールねじ機構を採用しているが、本発明を実施する場合には、代替的に、回転直動変換機構として、滑りねじ機構を適用することもできる。すなわち、ねじ軸の外周面に存在する雄側係合部を、雄ねじ部とし、ナットの内周面に存在する雌側係合部を、雌ねじ部とし、雄ねじ部と雌ねじ部とを螺合させることにより、雄ねじ部と雌ねじ部とを直接係合させることができる。
本発明を実施する場合には、アクチュエータの駆動源としては、電動モータのほか、エンジン、水車、風車なども適用できる。また、アクチュエータの駆動源は、人力であることもできる。さらに、ボールねじ機構や遊星ローラねじ機構などの回転直動変換機構は、駆動源の出力を減速する機能を備えているため、減速機構を省略することもできる。
本発明を実施する場合には、逆入力遮断クラッチを構成する、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び係合子の材質は、特に問われない。たとえば、これらの材質としては、鉄合金、銅合金、アルミニウム合金などの金属のほか、必要に応じて強化繊維を混入した合成樹脂なども適用できる。また、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び係合子を、同じ材質により構成することもできるし、異なる材質により構成することもできる。たとえば、ロック又は半ロック状態と解除状態との切り換え性などを向上させるために、入力部材、出力部材、及び被押圧部材と係合子との間で硬さや弾性などを異ならせることもできる。さらに、出力部材に回転トルクが逆入力した場合に、出力部材がロック又は半ロックする条件さえ満たせば、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び係合子が相互に接触する部分に、トラクションオイル、トラクショングリース、通常の潤滑油などの潤滑剤を配置することもできる。この場合、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び係合子のうちの少なくとも1つの部材を含油メタル製とすることもできる。
本発明のアクチュエータは、自動車に限らず、建機、船舶などの各種輸送機器に搭載するステアバイワイヤ式操舵装置にも適用可能である。
第1態様の逆入力遮断クラッチは、アクチュエータ以外にも、可変圧縮比装置、電動ドア装置、パワーウィンドウ装置、操舵装置、ジャッキなどの各種機械装置に適用することができる。第1態様の逆入力遮断クラッチを構成する係合子の数は、2個に限らず、1個又は3個以上とすることもできる。
[第1態様の実施の形態の第2例]
本発明の第1態様の実施の形態の第2例について、図12を用いて説明する。
本例では、ボールねじ機構6aを構成するナット8aに対して、逆入力遮断クラッチ5aを構成する出力部材15aを一体形成している。
このような構成を有する本例のアクチュエータによれば、ナット8aに対して出力部材15aを一体形成することによって、部品点数を少なくすることができる。具体的には、ナット8aと出力部材15aとを合わせて1部品にしたり、結合部材として用いていた複数のボルト35(図1及び図2参照)を省略したりすることができる。この結果、アクチュエータの小型化、軽量化、組立て工数の低減が可能になる。また、ナット8aを含んで構成される回転体の慣性力を低減して、駆動源となる電動モータ3(図1参照)の消費電力を削減することができる。その他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第1態様の実施の形態の第3例]
本発明の第1態様の実施の形態の第3例について、図13を用いて説明する。
本例では、減速機構4aと、逆入力遮断クラッチ5bを構成するロック機構52aとの軸方向の位置関係を、第1態様の実施の形態の第1例の場合と逆にしている。すなわち、本例では、軸方向に関して第1軸受13と減速機構4aとの間に、ロック機構52aが配置されている。出力部材15bを構成するオフセット筒部22aの軸方向他方側部に出力係合部26が備えられ、この出力係合部26の径方向外側に、ロック機構52aを構成する被押圧部材16、1対の係合子17、及び1対の入力係合部20、20が配置されている。また、オフセット筒部22aの軸方向一方側部の径方向外側に、減速機構4a、入力筒部18、及び第2軸受33が配置されている。その他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第1態様の実施の形態の第4例]
本発明の第1態様の実施の形態の第4例について、図14を用いて説明する。
本例は、回転直動変換機構として、ボールねじ機構6(図1参照)の代わりに、遊星ローラねじ機構54を採用している点で、第1態様の実施の形態の第1例と異なっている。
遊星ローラねじ機構54は、ねじ軸55と、ナット56と、複数の遊星ローラ57と、2つのリングギヤ58と、2つの保持器59とを備えている。
ねじ軸55は、外周面に雄ねじ部60を有している。ナット56は、軸方向中間部内周面に雌ねじ部61を有しており、ねじ軸55の周囲にねじ軸55と同軸に配置されている。遊星ローラ57のそれぞれは、軸方向中間部外周面にローラねじ部62を有し、かつ、軸方向両端寄り部外周面のそれぞれにギヤ部63を有している。複数の遊星ローラ57は、ねじ軸55と平行に配置され、かつ、ねじ軸55の外周面とナット56の内周面との間に、周方向に関して等間隔に配置されている。それぞれの遊星ローラ57のローラねじ部62は、雄ねじ部60及び雌ねじ部61の双方に対して噛み合っている。
2つのリングギヤ58のそれぞれは、円環形状を有し、かつ、内周面にギヤ部64を有している。リングギヤ58は、ナット56の軸方向両端寄り部に1つずつ内嵌固定されている。リングギヤ58のそれぞれのギヤ部64は、それぞれの遊星ローラ57の軸方向両端寄り部に存在するギヤ部63と噛み合っている。2つの保持器59のそれぞれは、円環形状を有し、かつ、周方向等間隔となる複数箇所に軸方向の支持孔65を有している。保持器59は、ねじ軸55の外周面とナット56の軸方向両端部内周面との間に1つずつ配置されている。保持器59のそれぞれの支持孔65には、遊星ローラ57の軸方向両端部が回転自在に挿通されている。保持器59のそれぞれは、ねじ軸55及びナット56の双方に対する回転を自在とされ、かつ、ナット56に対する軸方向の変位を阻止されている。
このような遊星ローラねじ機構54は、ねじ軸55とナット56とが相対回転運動をすると、遊星ローラ57がねじ軸55とナット56との間で自転しつつ公転することに基づいて、ねじ軸55とナット56とが相対直動運動をする。
本例では、第1態様の実施の形態の第1例のねじ軸7(図1参照)の代わりに、ねじ軸55がハウジング2(図1参照)の内側に配置され、かつ、ナット8(図1参照)の代わりに、ナット56に対して出力部材15の出力筒部21が外嵌固定されている。図示は省略するが、本例においても、逆入力遮断クラッチ5のロック機構52(図1参照)が、ナット56から軸方向一方側に外れた部分に配置され、かつ、ロック機構52を構成する出力係合部26(図1参照)の内径寸法が、ナット56のうちで雌ねじ部61が存在する軸方向範囲の外径寸法よりも小さい構成が採用されている。このため、ロック機構52の径寸法を小さくすることができる。その他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第1態様の実施の形態の第5例]
本発明の第1態様の実施の形態の第5例について、図15を用いて説明する。
本例では、逆入力遮断クラッチ5cを構成するロック機構52bの構造が、第1態様の実施の形態の第1例と異なっている。すなわち、本例では、1対の係合子17aのそれぞれの遠近方向外側面は、周方向に離隔した2箇所部分が、被押圧面28に対して押し付けられる押圧面29aになっており、これらの押圧面29a同士の間に挟まれた周方向中間部が、被押圧面28に対して押し付けられない部分、すなわち、押圧面29aよりも径方向内側に退避した部分になっている。押圧面29aのそれぞれは、被押圧面28の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する円筒面状の凸面である。
このような構成を有する本例では、出力部材15に回転トルクが逆入力され、出力係合部26により係合子17aが被押圧面28に押し付けられる際に、くさび効果が発生して、被押圧面28と押圧面29aとの摩擦係合力を大きくすることができる。このため、係合子17aに作用するブレーキトルクT´を大きくすることができる。したがって、必要なブレーキトルクT´を得るためのロック機構52bの径寸法を小さくすることができる。その他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
本発明の第1態様において、上述した第1態様の実施の形態の各例の構造は、技術的な矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
[第2態様の実施の形態の第1例]
本発明の第2態様の実施の形態の第1例について、図16~図22を用いて説明する。本発明の第2の態様でも、逆入力遮断クラッチをアクチュエータに適用している。
第2態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5dは、
中心軸を有する円筒凹面状の被押圧面28を備えた被押圧部材16と、
被押圧面28の径方向内側に配置された入力係合部20を備え、かつ、被押圧面28の中心軸と同軸の回転中心軸を有する入力部材14と、
被押圧面28の径方向内側において入力係合部20よりも径方向内側に配置された出力係合部26を備え、かつ、被押圧面28と同軸の回転中心軸を有する出力部材15と、
被押圧面28の径方向内側において、径方向に関して入力係合部20と出力係合部26との間に挟まれる位置に配置された第1部分68、及び、径方向に関して入力係合部20と出力係合部26との間に挟まれる位置から周方向両側に外れた位置に配置された1対の第2部分69を有する係合子17bと、
を備える。
第2態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5dにおいて、係合子17bは、入力部材14に回転トルクが入力された場合に、入力係合部20が第1部分68と係合することで、被押圧面28から離れる方向に移動し、第1部分68が出力係合部26と係合することで、入力部材14に入力された回転トルクを出力部材15に伝達し、かつ、出力部材15に回転トルクが逆入力された場合に、出力係合部26が第1部分68と係合することで、被押圧面28に近づく方向に移動し、1対の第2部分69が被押圧面28に押し付けられることで、出力部材15に逆入力された回転トルクを入力部材14に伝達しないか、又は、出力部材15に逆入力された回転トルクの一部を入力部材14に伝達し残部を遮断するように構成されている。
特に、第2態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5dでは、出力部材15に回転トルクが逆入力された場合に、1対の第2部分69と被押圧面28とが当接する1対の当接部M1、M2は、1対の当接部M1、M2のそれぞれの当接部における被押圧面28の接線X1、X2の2等分線Zの方向に関して、所定の部分よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側に位置しており、前記所定の部分が、第1部分68のうち、入力部材14に回転トルクが入力された場合に入力係合部20が係合する部分(図21における鎖線L1)であることを特徴とする。
前記所定の部分を、第1部分68のうち、出力部材15に回転トルクが逆入力された場合に出力係合部26が係合する部分(図21における鎖線L2)として、1対の当接部M1、M2が、被押圧面28の中心軸Oにより近い側に位置させることが好ましい。
以下、第2態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5dについて、より詳細に説明する。本例の逆入力遮断クラッチ5dでは、1対の係合子17bを構成するそれぞれの係合子17bは、略円弧板形状(弓形板形状)を有し、被押圧部材16の径方向内側に配置されている。具体的には、1対の係合子17bは、被押圧面28と出力係合部26の外周面との間に、出力係合部26を1対のカム面27の離隔方向である径方向両側(図18の上下両側)から挟むように配置されている。また、1対の係合子17bのそれぞれは、被押圧面28の径方向内側において、径方向に関して入力係合部20と出力係合部26との間に挟まれる位置に配置された第1部分68と、径方向に関して入力係合部20と出力係合部26との間に挟まれる位置から周方向両側に外れた位置に配置された1対の第2部分69とを有する。図18~図20において、鎖線λ1は、第1部分68と第2部分69との境界を示す仮想線である。本例では、いずれの係合子17bも、被押圧面28の径方向内側において、入力係合部20の径方向外側に配置される部分を有していない。それぞれの係合子17bは、互いに同形及び同大に造られた同一部品により構成されている。
それぞれの係合子17bは、被押圧面28に対向する周方向両側部の径方向外側面、すなわち、1対の第2部分69のそれぞれの径方向外側面に、円筒凸面状の押圧面29を有する。また、それぞれの係合子17bは、出力係合部26のカム面27に対向する周方向中間部の径方向内側面、すなわち、第1部分68の周方向中間部の径方向内側面に、カム面27と係合可能な出力係合面30を有する。出力係合面30は、1対の係合子17bの離隔方向(図6における上下方向)に直交する平坦面形状を有する。また、1対の係合子17bを、被押圧面28の径方向内側に配置した状態で、被押圧面28と押圧面29との間部分又はカム面27と出力係合面30との間部分に隙間が存在するように、被押圧面28の内径寸法及び係合子17bの径方向寸法は規制されている。
それぞれの係合子17bは、入力係合部20の径方向内側面に対向する周方向中間部の径方向外側面、すなわち、第1部分68の径方向外側面に、入力係合部20と係合可能な入力係合面32を有する。入力係合面32は、出力係合面30と平行な平坦面形状を有する。被押圧面28と入力係合面32との間には、周方向及び1対の係合子17bの離隔方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力係合部20は、1対の係合子17bに対し、入力部材14の回転方向に関する相対移動が可能であり、それぞれの係合子17bは、入力係合部20に対し、1対の係合子17bの離隔方向に関する相対移動が可能である。
1対の押圧面29のそれぞれは、それぞれの係合子17bのその他の部分の摩擦係数に比べて大きい摩擦係数を有し、かつ、被押圧面28の曲率半径Crよりも小さい曲率半径Cr´を有する(Cr´<Cr)。
本例の逆入力遮断クラッチ5dでは、入力部材14に回転トルクが入力されると、図19に示すように、入力係合部20が入力部材14の回転方向(図19の例では時計方向)に回転する。そして、入力係合部20が、入力係合面32を径方向内方に向けて押圧し、1対の係合子17bを、被押圧面28から離れる方向にそれぞれ移動させる。それぞれの係合子17bは、入力係合面32と入力係合部20との係合に基づき、互いの離隔方向に関して互いに近づくように径方向内側に(図19の上側に位置する係合子17bを下側に、図19の下側に位置する係合子17bを上側に)移動する。これにより、1対の係合子17bの出力係合面30は、出力係合部26を径方向両側から挟持し、1対のカム面27にがたつきなく係合(面接触)する。この結果、入力部材14に入力された回転トルクは、1対の係合子17bを介して、出力部材15に伝達され、出力部材15から出力される。
出力部材15に回転トルクが逆入力されると、図20に示すように、出力係合部26が、出力部材15の回転方向(図20の例では時計方向)に回転する。そして、出力係合部26の角部(カム面27の周方向端部)が出力係合面30を径方向外方に向けて押圧し、1対の係合子17bを、被押圧面28に近づく方向に移動させる。それぞれの係合子17bは、出力係合面30と出力係合部26との係合に基づき、互いの離隔方向に関して互いに離れるように径方向外側に(図20の上側に位置する係合子17bを上側に、図20の下側に位置する係合子17bを下側に)移動させる。これにより、1対の係合子17bが備える1対の押圧面29は、被押圧面28の周方向に離隔した2箇所に押し付けられる。ここで、押圧面29の曲率半径Cr´は、被押圧面28の曲率半径Crよりも小さいため、それぞれの押圧面29と被押圧面28とは1点で線接触または点接触する。したがって、1対の押圧面29を有するそれぞれの係合子17bと被押圧面28とは、合計2点で接触する。本例の逆入力遮断クラッチ5dは、この接触に基づき、出力部材15に逆入力された回転トルクが入力部材14に伝達されないようにするか、又は、その一部のみが伝達され残部が遮断されるように機能する。
本例では、図21に示すように、それぞれの押圧面29と被押圧面28との当接部M1、M2には、法線力Fcに応じた法線力Pが作用する。ここで、それぞれの押圧面29の曲率中心は、被押圧面28の中心軸O(=入力部材14及び出力部材15の回転中心軸)と、押圧面29と被押圧面28とのそれぞれの当接部M1、M2とを結んだ仮想線上に存在している。また、それぞれの当接部M1、M2における接線X1、X2同士の間のくさび角を2αとし、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数をμ´とすると、それぞれの当接部M1、M2に作用する法線力Pは、次の式(10)で表される。
P=Fc/2(sinα+μ´・cosα) ・・・・・(10)
係合子17bにブレーキ力を生じさせる当接部M1、M2に作用する接線力Ft´は、次の(11)式で表される。
Ft´=μ´P ・・・・・(11)
出力部材15の回転中心軸Oから押圧面29と被押圧面28との当接部M1、M2までの距離をR(=Cr)とすると、それぞれの係合子17bに作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(12)式で表される。
T´=2R・Ft´ ・・・・・(12)
上記(10)式、(11)式、及び(12)式より、ブレーキトルクT´の大きさは、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fc、くさび角αを、それぞれ用いて、次の(13)式で表される。
T´=μ´RFc/(sinα+μ´・cosα) ・・・・・(13)
したがって、より大きなブレーキトルクT´を得るためには、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。
また、くさび効果を利用して、ブレーキトルクT´をより大きくするには、くさび角αをできるだけ小さくすれば良いことが分かる。換言すれば、接線X1、X2の2等分線Zの方向(法線力Fcの方向、図21における上下方向)に関して、それぞれの当接部M1、M2を、できるだけ被押圧面28の中心軸Oに近づければ良いことが分かる。本例では、くさび角αを小さくするために、それぞれの押圧面29の曲率中心の位置を規制することによって、それぞれの当接部M1、M2を、2等分線Zの方向に関して、入力係合面32よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L1よりも下側)、さらには、出力係合面30よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L2よりも下側)に位置させている。なお、入力係合面32は、それぞれの係合子17の第1部分68のうち、入力部材14に回転トルクが入力された場合に入力係合部20が係合する部分である。また、出力係合面30は、それぞれの係合子17bの第1部分68のうち、出力部材15に回転トルクが逆入力された場合に出力係合部26が係合する部分である。
出力部材15がロックするには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、第1態様の第1例に示した、(8)式:T<T´の関係を満たす必要がある。この(8)式に、第1態様の第1例に示した、(1)式:Ft=Fc・sinθ+μFc・cosθ、(2)式:Fc=Ft/(sinθ+μ・cosθ)、 (3)式:T=r・Ft、上記(10)式~(13)式を代入すると、次の(14)式が得られる。
μ´R/{(sinθ+μ・cosθ)(sinα+μ´・cosα)}>r ・・・・・(14)
上記(14)式からは、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数μ´を大きくすれば、距離Rを小さくしても、出力部材15をロックさせられることが分かる。
また、摩擦係数μ及び摩擦係数μ´がそれぞれ0.1であると仮定すると、上記(14)式から次の(15)式が得られる。
R>10r(sinθ+0.1cosθ)(sinα+0.1cosα) ・・・・・(15)
上記(15)式からは、出力部材15の回転中心軸Oから当接部Xまでの距離rと、出力部材15の回転中心軸Oから当接部M1、M2までの距離Rと、くさび角θと、くさび角αとを適切に設定することで、出力部材15をロックさせられることが分かる。
これに対し、出力部材15が半ロックして、出力部材15に逆入力された回転トルクの一部のみが入力部材14に伝達され残部が遮断されるようにするためには、伝達トルクTとブレーキトルクT´とが、第1態様の第1例に示した(8)式:T>T´の関係を満たす必要がある。
上記(15)式からも明らかな通り、出力係合部26と出力係合面30との間の摩擦係数μ、押圧面29と被押圧面28との間の摩擦係数μ´、回転中心軸Oから当接部Xまでの距離r、回転中心軸Oから当接部M1、M2までの距離R、接線力Ftの作用線の方向と出力係合面30との間のくさび角θをそれぞれ適切に設定することで、出力部材15を半ロックさせることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ5dでは、上記(13)式に示されるように、ブレーキトルクT´は、出力部材15の回転中心軸Oから押圧面29と被押圧面28との当接部M1、M2までの距離Rに比例した大きさになる。また、上記(13)式から、ブレーキトルクT´をより大きくするには、くさび角αをできるだけ小さくすれば良いこと、すなわち、被押圧面28と係合子17との当接部M1、M2を、2等分線Zの方向(図21の上下方向)に関して、できるだけ被押圧面28の中心軸Oに近づければ良いことが分かる。本例では、当接部M1、M2を、2等分線Zの方向に関して、入力係合面32よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L1よりも下側)、さらには、出力係合面30よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L2よりも下側)に位置させている。このような構成を採用することにより、くさび角αを十分に小さくして、大きなブレーキトルクT´を得やすくしている。
本例の構造では、たとえば図22に示すような、当接部M1、M2が2等分線Zの方向に関して入力係合面32よりも中心軸Oに対して遠い側(図22において鎖線L1よりも上側)に位置する参考例の構造と比べた場合に、所定の大きさのブレーキトルクT´を得るために必要な距離Rを小さくすること、すなわち、ロック機構52cの径寸法を小さくすることができる。また、本例の構造では、参考例の構造と距離Rを同じにするのであれば、参考例の構造よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができ、その結果、参考例の構造よりも被押圧面28と押圧面29とがスリップすることに対する安全率を大きくすることができる。
本例では、逆入力遮断クラッチ5dを構成する1対の係合子17bのそれぞれの係合子17bは、被押圧面28の径方向内側において、入力係合部20の径方向外側に配置される部分を有していない。このため、図22に示した参考例の構造のように、係合子17zが、被押圧面28の径方向内側で、入力係合部20の径方向外側に配置される部分を有している場合に比べて、軽量化や製造の容易化を図りやすい。
本例では、当接部M1、M2を、2等分線Zの方向に関して、出力係合面30よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L2よりも下側)に位置させている。ただし、本発明を実施する場合には、当接部M1、M2を、2等分線Zの方向に関して、入力係合面32よりも被押圧面28の中心軸Oに近い側(図21において鎖線L1よりも下側)で、かつ、出力係合面30よりも被押圧面28の中心軸Oに対して遠い側(図21において鎖線L2よりも上側)に位置させたり、出力係合面30と同じ位置(図21において鎖線L2上)に位置させたりすることもできる。このような構成も、本発明の範囲に含まれる。
本例では、それぞれの係合子17bの押圧面29は、円筒凸面状を有する。ただし、本発明を実施する場合には、係合子の押圧面を、楕円筒凸面などの非円筒凸面状により構成することもできる。
本例のその他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
第2態様の逆入力遮断クラッチは、アクチュエータ以外にも、可変圧縮比装置、電動ドア装置、パワーウィンドウ装置、操舵装置、ジャッキなどの各種機械装置に適用することができる。第2態様の逆入力遮断クラッチを構成する係合子の数は、2個に限らず、1個又は3個以上とすることもできる。
[第2態様の実施の形態の第2例]
本発明の第2態様の実施の形態の第2例について、図14~図20を用いて説明する。
本例は、各種機械装置に組み込んで用いることが可能な、逆入力遮断クラッチ5eについての例である。本例の逆入力遮断クラッチ5eは、ロック機構52dの基本構造及び基本動作については、第2態様の実施の形態の第1例と同様であるが、入力部材14aと、出力部材15cと、被押圧部材16aと、1対の係合子17cとの、それぞれの具体的な構造において、第2態様の実施の形態の第1例と異なっている。
入力部材14aと出力部材15cとは、それぞれが中実軸状であり、軸方向に関して互いに直列かつ同軸に配置されている。
入力部材14aは、出力部材15cに対して軸方向一方側に配置されており、ロック機構52dを構成する1対の入力係合部20aに加えて、入力軸部66を有する。入力軸部66は、段付円柱状であり、ロック機構52dを構成する被押圧面28の中心軸と同軸の回転中心軸を有する。1対の入力係合部20aは、入力軸部66の軸方向他方側の端面の径方向反対側2箇所位置から軸方向に伸長している。本例では、入力係合部20aの径方向内側面は、周方向両側から周方向中央側に向かうほど径方向内側に向かう方向に傾斜した山形の凸面により構成される。入力軸部66は、各種機械装置を構成する入力側機構の出力部に対して、任意の手段によりトルク伝達可能に接続される。
出力部材15cは、ロック機構52dを構成する出力係合部26aに加えて、出力軸部67を有する。出力軸部67は、円柱状であり、被押圧面28の中心軸Oと同軸の回転中心軸を有する。出力係合部26aは、楕円柱状であり、出力軸部67の軸方向一方側の端面の中央部から軸方向に伸長している。出力軸部67は、各種機械装置を構成する出力側機構の入力部に対して、任意の手段によりトルク伝達可能に接続される。
被押圧部材16aは、全体が円環状に構成されており、内周面に被押圧面28を有しているが、断面形状は矩形である。被押圧部材16aは、各種機械装置を構成するハウジングなどに、任意の手段により固定される。
ロック機構52dを構成する1対の係合子17cのそれぞれの係合子17cは、第1部分68と1対の第2部分69とに加えて、入力係合部20aの径方向外側に配置される部分である第3部分70を有している。第3部分70は、入力係合部20aの径方向外側において、1対の第2部分69同士を連結している。図25において、鎖線λ1は、第1部分68と第2部分69との境界を示す仮想線であり、鎖線λ2は、第2部分69と第3部分70との境界を示す仮想線である。それぞれの係合子17cは、周方向中間部の径方向中間部、すなわち、第1部分68と第3部分70との間に挟まれた部分に、入力係合孔31を有している。入力係合孔31は、1対の係合子17cの離隔方向と軸方向とのそれぞれに直交する方向(図24における左右方向)に伸長する略矩形状の軸方向貫通孔であり、その内側に、入力係合部20aが緩く挿入されている。すなわち、入力係合孔31の内面と入力係合部20aとの間には、周方向及び1対の係合子17cの離隔方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、それぞれの入力係合部20aは、それぞれの係合子17cに対し、入力部材14aの回転方向に関する相対移動が可能であり、それぞれの係合子17cは、それぞれの入力係合部20aに対し、1対の係合子17cの離隔方向に関する相対移動が可能である。本例では、それぞれの係合子17cは、それぞれの入力係合部20aの径方向外側において、第3部分70が1対の第2部分69同士を連結しているため、剛性を確保しやすい。その他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例及び第態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第1例]
本発明の第3態様の実施の形態の第1例について、図30~図37を用いて説明する。
第3態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5fは、
被押圧面28aを有する被押圧部材16bと、
回転中心軸Oと、少なくとも1個の入力係合部20bとを有する入力部材14bと、
入力部材14bの回転中心軸Oと同軸の回転中心軸Oと、出力係合部26bとを有する出力部材15dと、
被押圧面28aに対向する少なくとも1個の押圧面29と、入力係合部20bと係合する係合子側入力係合部74と、出力係合部26bと係合する係合子側出力係合部72とを有する、少なくとも1個の係合子17dを備える。
第3態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5fにおいて、係合子17dは、入力部材14bに回転トルクが入力されると、入力係合部20bと係合子側入力係合部74との係合に基づいて、押圧面29を被押圧面28aから離隔させるように変位して、係合子側出力係合部72を出力係合部26bに係合させることにより、入力部材14bに入力された回転トルクを出力部材15dに伝達し、かつ、出力部材15dに回転トルクが逆入力されると、出力係合部26bと係合子側出力係合部72との係合に基づいて、押圧面29を被押圧面28aに押し付けるように変位して、押圧面29を被押圧面28aに摩擦係合させるように構成されている。
特に、第3態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5fでは、係合子17dと被押圧部材16bとの間部分、入力係合部20bと係合子側入力係合部74との間部分、及び、出力係合部26bと係合子側出力係合部72との間部分の少なくとも何れかに中間部材が配置されていることを特徴とする。
第3態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5fでは、前記中間部材としては、隙間調整材75が用いられている。以下、第3態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5fについて、詳細に説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5fは、ロック式の逆入力遮断クラッチであり、入力部材14bと、出力部材15dと、被押圧部材16bと、1対の係合子17dとを備える。
入力部材14bは、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材14bは、回転中心軸Oと、回転中心軸Oから径方向に外れた位置に配された、1対の入力係合部20bとを備える。本例では、入力部材14bは、段付円柱形状を有する入力軸部66aと、該入力軸部66aの大径部の先端面の径方向反対側2箇所位置から軸方向に突出するように形成された1対の入力係合部20bとを備える。入力軸部66aは、小径部が、前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続されるか、あるいは、前記入力側機構の出力部と一体に形成されている。1対の入力係合部20bは、略楕円柱形状を有し、かつ、入力部材14bの径方向に関して互いに離隔している。それぞれの入力係合部20bは、入力軸部66aの大径部外周面と同じ円筒面上に存在する径方向外側面と、1対の入力係合部20bの離隔方向に対して直角な平坦面である径方向内側面とを有する。
出力部材15dは、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材15dは、入力部材14bの回転中心軸Oと同軸の回転中心軸Oと、該回転中心軸O上に配置された出力係合部26bとを備える。本例では、出力部材15dは、円柱形状を有する出力軸部67aと、この出力軸部67aの先端面中央部から軸方向に突出するように形成された出力係合部26bとを備える。出力軸部67aは、基端部が、前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続されるか、あるいは、前記出力側機構の入力部と一体に形成されている。出力係合部26bは、カム機能を有する。すなわち、出力部材15dの回転中心軸Oから出力係合部26bの外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本例では、出力係合部26bは、略矩形柱形状を有する。具体的には、出力係合部26bの外周面は、長手方向(図31の左右方向)に関して互いに平行な1対の第1の平坦面と、短手方向(図31の上下方向)に関して互いに平行な1対の第2の平坦面と、第1の平坦面と第2の平坦面とを接続する部分円筒面とからなる。出力係合部26bは、1対の入力係合部20bの径方向内側面同士の間に配置される。
被押圧部材16bは、ハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、回転が拘束されている。被押圧部材16bは、入力部材14bの回転中心軸Oと同軸の中心軸Oを有し、かつ、該中心軸を中心とする内周面に、円筒状の凹面である被押圧面28aを有する。本例では、被押圧部材16bは、被押圧部材本体108と、隙間調整材75とを組み合わせることにより構成されている。被押圧部材本体108は、円環状に構成されており、円筒状の凹面である内周面を有する。隙間調整材75は、鋼板などの金属板製で、短円筒形状を有し、かつ、内周面に被押圧面28aを有する。隙間調整材75は、被押圧部材本体108の内周面に径方向のがたつきなく内嵌された状態で、被押圧部材本体108に固定されている。具体的には、本例では、隙間調整材75は、その外周面を被押圧部材本体108の内周面に接着剤で接着することにより、被押圧部材本体108に固定されている。なお、被押圧部材本体108に対する隙間調整材75の固定方法は、接着に限られず、たとえば、溶接、圧入、ねじ止め、リベット止めのほか、図34に示すような固定手段などの任意の手段を採用することができる。図34に示した固定手段では、隙間調整材75の軸方向両側部のそれぞれから径方向外側に折れ曲がった1対の折り曲げ片109を形成し、1対の折り曲げ片109によって被押圧部材本体108を軸方向両側から挟んで固定している。また、隙間調整材75が、1対の折り曲げ片109などの固定用の部位を備える場合には、該固定用の部位を被押圧部材本体108に対して、接着、溶接、ねじ止め、リベット止めすることもできる。被押圧部材16bは、入力部材14b及び出力部材15dよりも径方向外側に配置されている。具体的には、逆入力遮断クラッチ5fの組立状態において、1対の入力係合部20b及び出力係合部26bが、被押圧部材16bの径方向内側に配置される。
1対の係合子17dを構成するそれぞれの係合子17dは、被押圧面28aに対向する押圧面29と、入力係合部20bと係合する係合子側入力係合部74と、出力係合部26bと係合する係合子側出力係合部72とを備える。本例では、それぞれの係合子17dは、略半円形板形状を有し、かつ、被押圧部材16bの径方向内側に配置される。それぞれの係合子17dは、その外周面のうちの径方向外側面に押圧面29を有し、かつ、その外周面のうちの径方向内側面に、平坦面である底面71と係合子側出力係合部72とを有する。それぞれの係合子17dは、その外周面のうち、押圧面29の周方向両端部と底面71の両端部とを接続する部分に、底面71に対して直角な平坦面である側面73を有する。なお、係合子17dに関して径方向とは、図31に矢印Aで示した底面71に対して直角な方向をいう。また、係合子17dに関して幅方向とは、図31に矢印Bで示した底面71に対して平行な方向をいう。押圧面29は、部分円筒状の凸面であり、かつ、被押圧面28aの曲率半径以下の曲率半径を有する。
本例では、それぞれの係合子17dの押圧面29を径方向反対側に向け、かつ、それぞれの係合子17dの底面71を互いに対向させている。1対の係合子17dを被押圧部材16bの径方向内側に配置した状態で、被押圧面28aと押圧面29との間部分、及び、底面71同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材16bの内径寸法及びそれぞれの係合子17dの径方向寸法が規制されている。
それぞれの係合子17dは、その径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、その幅方向に伸長する略矩形の長孔である係合子側入力係合部74を有する。係合子側入力係合部74の内面のうち、径方向内側に位置する部分は、径方向に直交する平坦面である。係合子側入力係合部74は、入力部材14bの入力係合部20bを緩く挿入できる大きさを有する。具体的には、係合子側入力係合部74の内側に入力係合部20bを挿入した際に、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間に、係合子17dの幅方向に関する隙間及び係合子17dの径方向に関する隙間が存在する。このため、入力係合部20bは、係合子側入力係合部74の内側に、被押圧面28aに対する遠近移動(変位)を可能に、かつ、入力部材14bの回転方向に関する相対移動を可能に係合している。
それぞれの係合子17dは、底面71の幅方向中央部から係合子17dの径方向に関して外方に凹むように形成された略矩形の凹部である係合子側出力係合部72を有する。係合子側出力係合部72は、出力部材15dの出力係合部26bの短手方向の半部を、該係合子側出力係合部72の内側に緩く配置できる大きさ及び形状を有する。具体的には、係合子側出力係合部72は、出力係合部26bの長手方向に関する寸法よりも少しだけ大きい開口幅を有し、かつ、出力係合部26bの短手方向に関する寸法の1/2よりも少しだけ小さい径方向深さを有する。係合子側出力係合部72の底部は、径方向に直交する平坦面である。
本例の逆入力遮断クラッチ5fの組立状態おいて、軸方向一方側に配置した入力部材14bの1対の入力係合部20bは、1対の係合子17dのそれぞれの係合子側入力係合部74に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材15dの出力係合部26bは、1対の係合子側出力係合部72同士の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子17dは、それぞれの係合子側出力係合部72により、出力係合部26bを径方向外側から挟むように配置されている。本例では、入力係合部20bの軸方向寸法、出力係合部26bの軸方向寸法、被押圧部材16bの軸方向寸法、及び、係合子17dの軸方向寸法は、いずれもほぼ同じとなっている。
本例の逆入力遮断クラッチ5fの動作およびその作用について、図35~図37に示すが、基本的には第1態様の実施の形態の第1例における逆入力遮断クラッチ5の動作及びその作用と同様であるから、ここでの説明は省略する。本例の逆入力遮断クラッチ5fでは、出力部材15dをロック又は半ロックする動作が可能となるように、各構成部材間の隙間の大きさが調整されている。特に、係合子17dの押圧面29が被押圧面28aに接触した位置関係において、入力係合部20bの径方向内側面と係合子側入力係合部74の内面との間に、出力係合部26bの角部が係合子側出力係合部72の底部を押圧することに基づいて押圧面29を被押圧面28aに向けてさらに押し付けることを許容する隙間が存在するようにしている。これにより、出力部材15dに回転トルクが逆入力された場合に、係合子17dが径方向外側に移動するのを入力係合部20bによって阻止されることがないようにし、かつ、押圧面29が被押圧面28aに接触した後も、押圧面29と被押圧面28aとの接触部に作用する面圧が、出力部材15dに逆入力された回転トルクの大きさに応じて変化するようにすることで、出力部材15dのロック又は半ロックが適正に行われるようにしている。
特に、本例の逆入力遮断クラッチ5fでは、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向のバックラッシュを小さく抑えることができる。
すなわち、本例の逆入力遮断クラッチ5fにおいては、出力部材15dがロック又は半ロックされた状態と、出力部材15dのロック又は半ロックが解除された状態との切り替え動作を可能とするために、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間部分と、出力係合部26bと係合子側出力係合部72の底部との間部分と、被押圧面28aと押圧面29との間部分とに、係合子17dのそれぞれが被押圧面28aに対して径方向に遠近移動することを可能とするための隙間、すなわち、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向のバックラッシュを備える必要がある。なお、このようなバックラッシュは、逆入力遮断クラッチ5fの組み立てを行えるようにするためにも必要である。
しかしながら、上述のようなバックラッシュが大きくなると、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向のがたつきが大きくなる。この結果、たとえば、以下のような不都合が生じる。すなわち、入力部材14bが正方向に回転する場合と逆方向に回転する場合とで、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向の位置関係が大きく変わり、入力部材14bの回転位置によって出力部材15dの回転位置を高精度に制御することが難しくなる。また、入力部材14bの回転方向が反転してから出力部材15dの回転方向が反転するまでの応答時間や、出力部材15dに回転トルクが逆入力されてから出力部材15dがロック又は半ロックするまでの応答時間が長くなる。そして、前者の応答時間が長くなると、逆入力遮断クラッチ5fを組み込んだ機械装置による制御の応答性が低くなる。また、後者の応答時間が長くなると、たとえば、出力部材15dをロックする用途において、出力部材15dの逆入力回転を極力小さくしたい場合にも、その要望に応えることが難しくなる。さらに、逆入力遮断クラッチ5fを構成する部材間で、衝突や擦れ合いによる異音やフレッチングが発生しやすくなる。このような不都合を回避する観点から、前記バックラッシュは、できる限り小さく抑えることが望ましい。
前記バックラッシュは、入力部材14b、出力部材15d、被押圧部材16c、及び係合子17dのそれぞれの寸法公差の積み上げによって、ばらつきを生じる。このため、前記バックラッシュは、意図せず、大きくなる場合がある。このような不都合は、前記寸法公差を小さくすることによって回避することができる。しかしながら、一般に、前記寸法公差を小さくすることは容易ではない。また、そのような回避策は、コストが嵩む原因にもなる。
本例の逆入力遮断クラッチ5fでは、前記寸法公差を小さくしなくても、逆入力遮断クラッチ5fを組み立てる際に、被押圧部材16bを構成する隙間調整材75として、適切な厚さ寸法を有するものを選択することにより、前記バックラッシュを小さく抑えることができる。具体的には、たとえば、逆入力遮断クラッチ5fを組み立てる際に、まず、隙間調整材75以外の部材同士を組み立てた状態で、前記バックラッシュを測定する。次いで、このように測定したバックラッシュの大きさに基づいて、該バックラッシュを小さく抑えることができる、適切な厚さ寸法の隙間調整材75を選択する。このように選択した隙間調整材75を含む逆入力遮断クラッチ5fを組み立てることによって、前記バックラッシュを小さく抑えることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ5fによれば、前記バックラッシュを小さく抑えることができるため、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向のがたつきを小さく抑えることができる。この結果、たとえば、以下のような効果を得られる。すなわち、入力部材14bが正方向に回転する場合と逆方向に回転する場合とで、入力部材14bと出力部材15dとの間の回転方向の位置関係をほぼ等しくする(2つの場合の位置関係の差を十分に小さくする)ことができる。このため、入力部材14bの回転位置によって出力部材15dの回転位置を精度良く制御することが可能となる。また、入力部材14bの回転方向が反転してから出力部材15dの回転方向が反転するまでの応答時間や、出力部材15dに回転トルクが逆入力されてから出力部材15dがロック又は半ロックするまでの応答時間を短くすることができる。前者の応答時間を短くすることによって、逆入力遮断クラッチ5fを組み込んだ機械装置による制御の応答性を高くすることができる。後者の応答時間を短くすることによって、たとえば、出力部材15dをロックする用途において、出力部材15dの逆入力回転を極力小さくすることができる。さらに、逆入力遮断クラッチ5fを構成する部材間で、衝突や擦れ合いによる異音やフレッチングを発生しにくくすることができる。
本例のその他の構成及び作用は、第1態様の実施の形態の第1例と同様である。
第3態様の逆入力遮断クラッチは、たとえば、電動モータを駆動源とするアクチュエータにおいて、電動モータと該電動モータにより駆動される被駆動部との間に組み込んで用いることができる。この場合、電動モータによって被駆動部を高効率に駆動できるのに対して、被駆動部側から回転トルクが逆入力された場合には、逆入力遮断クラッチをロック状態とすることによって、電動モータの消費電力を必要とすることなく、被駆動部の位置保持を行うことができる。したがって、高効率でありながら低消費電力のアクチュエータを実現することができる。
また、第3態様の逆入力遮断クラッチは、可変圧縮比装置、電動ドア装置、パワーウィンドウ装置、操舵装置、ジャッキなどの各種機械装置に適用することができる。そして、逆入力遮断クラッチの入力部材と出力部材との間のバックラッシュを小さく抑えて、各種機械装置の可動部の位置決めを精度良く行うことができる。本発明の逆入力遮断クラッチを構成する係合子の数は、2個に限らず、1個又は3個以上とすることもできる。
出力部材に回転トルクが逆入力した場合に、出力部材がロック又は半ロックする条件さえ満たせば、入力部材、出力部材、被押圧部材、係合子、及び隙間調整材が相互に接触する部分に、トラクションオイル、トラクショングリース、その他の通常の潤滑油などの潤滑剤を配置することもできる。この場合、入力部材、出力部材、被押圧部材、係合子、及び隙間調整材のうちの少なくとも1つを含油メタル製とすることもできる。
また、隙間調整材の材質は、セラミックスやゴムであっても良い。また、隙間調整材は、入力部材、出力部材、被押圧部材、及び係合子のうちの、少なくとも何れか1つの表面に形成された、ニッケルクロムメッキなどのメッキ、溶射皮膜、樹脂コーティングなどの、各種のコーティング材によって構成されることもできる。
[第3態様の実施の形態の第2例]
本発明の第3態様の実施の形態の第2例について、図38を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第1例(図30~図37参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5gでは、1対の係合子17eのそれぞれ係合子17eは、幅方向中間部の径方向内側部に、径方向に伸長するガイド孔76を有する。ガイド孔76の軸方向両端部は、係合子側出力係合部72の底部と、係合子側入力係合部74の内面のうち径方向内側に位置する部分とに開口している。また、出力部材15eの出力係合部26cは、出力係合部26cの中心に直交し、かつ、出力係合部26cを短手方向に貫通する挿通孔77を有している。それぞれの係合子17eのガイド孔76に、ガイド部材であるガイド軸78の軸方向両端部が、ガイド軸78の径方向に関するがたつきなく、かつ、ガイド軸78の軸方向に関する移動を可能に挿入されている。ガイド軸78の軸方向中間部は、出力係合部26cの挿通孔77に緩く挿通されている。このような構成を有する本例では、それぞれの係合子17eのガイド孔76とガイド軸78とにより構成されるガイド機構により、それぞれの係合子17eが互いに幅方向に相対移動することや、それぞれの係合子17eの底面71同士が非平行になるようにそれぞれの係合子17eが互いに傾くことが防止され、それぞれの係合子17eが径方向に遠近移動することのみが許容される。
本例では、それぞれの係合子17eは、底面71の幅方向両側部に、底面71に対して垂直方向に凹入した、2つの円柱状のガイド凹部79を有する。それぞれの係合子17eの底面71を互いに対向させた状態で、同一直線上に配置された2組のガイド凹部79のそれぞれの内側に、それぞれの組のガイド凹部79に架け渡されるように、弾性部材であるコイル状のばね80が配置されている。2組のガイド凹部79に配置された1対のばね80の弾力により、1対の係合子17eのそれぞれを、被押圧面28aに向けて付勢されている。このような構成を有する本例では、1対の係合子17eのそれぞれの姿勢を同期させつつ安定させることで、それぞれの係合子17eの径方向に関する遠近移動を正確に行わせることができる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第3例]
本発明の第3態様の実施の形態の第3例について、図39を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第2例(図38参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5hでは、1対の係合子17fのそれぞれの径方向外側面は、周方向に離隔した2箇所部分が被押圧面28aに対して押し付けられる押圧面29bになっており、これらの押圧面29b同士の間に挟まれた周方向中間部が被押圧面28aに対して押し付けられない平坦面になっている。押圧面29bのそれぞれは、被押圧面28aの曲率半径よりも小さな曲率半径を有する円筒面状の凸面である。このような構成を有する本例では、出力部材15eに回転トルクが逆入力され、出力係合部26cにより係合子17fが被押圧面28aに押し付けられる際に、くさび効果によって、被押圧面28aと押圧面29bとの摩擦係合力を大きくすることができる。このため、係合子17fに作用するブレーキトルクT´を大きくすることができる。したがって、必要なブレーキトルクT´を得るための逆入力遮断クラッチ5hの径寸法を小さくすることができる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第2例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第4例]
本発明の第3態様の実施の形態の第4例について、図40を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第2例(図38参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5iでは、被押圧部材16cは、被押圧部材本体108aのみによって構成されており、被押圧面28は、被押圧部材本体108aの内周面に備えられている。また、本例では、1対の係合子17gを構成するそれぞれの係合子17gは、係合子本体110と、隙間調整材75aとを組み合わせることによって構成されている。係合子本体110は、第3態様の実施の形態の第2例の係合子17eと同様の構成を有するが、係合子17eにおいて押圧面29であった部分円筒状の凸面である径方向外側面は、押圧面としては機能しない。隙間調整材75aは、係合子本体110の外周面のうち、径方向外側面と1対の側面73の径方向外側部との連続した範囲を覆うことが可能な、略半円筒形状を有する。隙間調整材75aは、前記範囲を覆った状態で、係合子本体110に固定されている。なお、係合子本体110に対する隙間調整材75aの固定方法は、第3態様の実施の形態の第1例で説明した隙間調整材75の固定手段と同様の手段を採用することができる。隙間調整材75aは、係合子本体110の径方向外側面を覆った部分の径方向外側面に、被押圧面28の曲率半径以下の曲率半径を有する押圧面29cを備える。
本例では、それぞれの係合子17gが隙間調整材75aを有しているため、それぞれの係合子17gに関して、個別に、相手部材となる被押圧部材16bとの間の隙間、及び、入力部材14bと出力部材15eとの間の隙間を調整することができる。したがって、第3態様の実施の形態の第1例~第3例の場合と比べて、入力部材14bと出力部材15eとの間の回転方向のバックラッシュをさらに小さくすることが可能となる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第2例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第5例]
本発明の第3態様の実施の形態の第5例について、図41を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第4例(図40参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5jでは、1対の係合子17hを構成するそれぞれの係合子17hは、係合子本体110aと、1対の隙間調整材75bとを組み合わせることによって構成されている。係合子本体110aは、第3態様の実施の形態の第3例(図39参照)の係合子17fと同様の構成を有するが、係合子17fにおいて押圧面29bであった、径方向外側面の周方向に離隔した2箇所部分は、押圧面としては機能しない。1対の隙間調整材75bのそれぞれは、係合子本体110aの径方向外側面の周方向に離隔した2箇所部分を覆うことが可能な、略半円筒形状を有する。1対の隙間調整材75bは、この2箇所部分を覆った状態で、係合子本体110aに固定されている。1対の隙間調整材75bは、径方向外側面に、被押圧面28の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する押圧面29dを備える。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第3例及び第4例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第6例]
本発明の第3態様の実施の形態の第6例について、図42を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第3例(図39参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5kでは、被押圧部材16cは、被押圧部材本体108aのみによって構成されており、被押圧面28は、被押圧部材本体108aの内周面に備えられている。また、本例では、1対の係合子17fを構成するそれぞれの係合子17fに関して、係合子側入力係合部74の内面と入力係合部20bとの間に挟まれた箇所に、隙間調整材75cが配置され、かつ、係合子側出力係合部72の内面と出力係合部26cとの間に挟まれた箇所に、隙間調整材75dが配置されている。
隙間調整材75cは、入力部材14bの入力係合部20bの径方向内側面と周方向両側面の径方向内側部との連続した範囲を覆うことが可能な、U字板形状を有する。隙間調整材75cは、この範囲を覆った状態で、入力係合部20bに固定されている。なお、入力係合部20bに対する隙間調整材75cの固定手段としては、第3態様の実施の形態の第1例で説明した隙間調整材75の固定手段と同様の手段を採用することができる。
隙間調整材75dは、出力部材15eの出力係合部26cの短手方向半部の外表面、すなわち、短手方向側面と長手方向両側面の短手方向半部との連続した範囲を覆うことが可能な、U字板形状を有する。隙間調整材75dは、この範囲を覆った状態で、出力係合部26cに固定されている。この状態で、隙間調整材75dは、挿通孔77の開口部と整合する箇所に、貫通孔81を有する。貫通孔81には、ガイド軸78が緩く挿通されている。なお、出力係合部26cに対する隙間調整材75dの固定手段は、第3態様の実施の形態の第1例で説明した隙間調整材75の固定手段と同様の手段を採用することができる。
本例では、それぞれの係合子17fは、入力部材14bに回転トルクが入力されると、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面とが隙間調整材75cを介して係合することに基づいて、径方向内方に移動して、係合子側出力係合部72の底部を出力係合部26bに隙間調整材75dを介して係合させることにより、入力部材14bに入力された回転トルクを出力部材15eに伝達する。また、それぞれの係合子17fは、出力部材15eに回転トルクが逆入力されると、出力係合部26cと係合子側出力係合部72とが隙間調整材75dを介して係合することに基づいて、径方向外方に移動して、押圧面29bを被押圧面28に摩擦係合させる。
本例では、それぞれの係合子17fに関して、係合子側入力係合部74の内面と入力係合部20bとの間に隙間調整材75cが配置され、かつ、係合子側出力係合部72の内面と出力係合部26cとの間に隙間調整材75dが配置されている。このため、それぞれの係合子17fに関して、係合子側入力係合部74の内面と入力係合部20bとの間の隙間、及び、係合子側出力係合部72の内面と出力係合部26cとの間の隙間を、個別に調整することができる。したがって、第3態様の実施の形態の第1例~第5例の場合と比べて、入力部材14bと出力部材15eとの間の回転方向のバックラッシュをさらに小さくすることができる。
なお、本発明を実施する場合には、係合子側入力係合部74の内面と入力係合部20bとの間に配置される隙間調整材75cと、係合子側出力係合部72の内面と出力係合部26cとの間に配置される隙間調整材75dとのうち、何れか一方のみを備えた構成を採用することもできる。このような構成も本発明の範囲に含まれる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第3例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第7例]
本発明の第3態様の実施の形態の第7例について、図43を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第6例(図42参照)の変形例である。第3態様の実施の形態の第6例では、ガイド軸78は、中央に配置されていた。これに対し、本例の逆入力遮断クラッチ5lでは、1対の係合子17iの幅方向両側部のそれぞれに、円筒状のガイド軸78aが配置されている。すなわち、1対の係合子17iの幅方向両側部のそれぞれにおいて、同一直線上に配置された1組のガイド凹部79の内側に、ガイド軸78aの軸方向両側部が、径方向のがたつきなく、かつ、軸方向移動を可能に挿入されている。本例では、ばね80は、ガイド軸78aの径方向内側に配置されている。
本例では、入力係合部20bと係合子側入力係合部74aの内面との間に配置された隙間調整材75eは、それぞれの係合子17iに固定されている。それぞれの係合子17iは、係合子側入力係合部74aの内面のうち径方向内側に位置する部分の幅方向中間部に、径方向内側に凹入した保持凹部82を有する。保持凹部82の底部は、それぞれの係合子17iの径方向に直交する平坦面である。一方、隙間調整材75eは、平板状に造られており、その厚さ方向の半部を保持凹部82の内側に隙間なく保持された状態で、それぞれの係合子17iに固定されている。なお、それぞれの係合子17iに対する隙間調整材75eの固定手段は、第3態様の実施の形態の第1例で説明した隙間調整材75の固定手段と同様の手段を採用することができる。
本例では、出力係合部26bと係合子側出力係合部72aの内面との間に配置された隙間調整材75fは、それぞれの係合子17iに固定されている。それぞれの係合子17iは、係合子側出力係合部72aの底部の幅方向中間部に、径方向外側に凹入した保持凹部83を有する。保持凹部83の底部は、それぞれの係合子17iの径方向に直交する平坦面である。一方、隙間調整材75fは、平板状に造られており、その厚さ方向の半部を保持凹部83の内側に隙間なく保持された状態で、それぞれの係合子17iに固定されている。なお、それぞれの係合子17iに対する隙間調整材75fの固定手段は、第3態様の実施の形態の第1例で説明した隙間調整材75の固定手段と同様の手段を採用することができる。
本例の逆入力遮断クラッチ5lでは、第3態様の実施の形態の第6例に比べて、少ない工程で、隙間調整を行うことができる。すなわち、第3態様の実施の形態の第6例では、入力係合部20bに隙間調整材75cを固定する工程と、出力係合部26cに隙間調整材75dを固定する工程との、合計2工程で隙間調整を行う必要がある。これに対し、本例では、係合子17iに対して隙間調整材75e、75fを固定する1工程だけで隙間調整を行うことができる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第6例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第8例]
本発明の第3態様の実施の形態の第8例について、図44を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第6例(図42参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5mでは、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間に配置された隙間調整材75gは、ガイド軸78に保持されている。すなわち、隙間調整材75gは、平板状に造られており、入力係合部20bの径方向内側面と、係合子側入力係合部74の内面のうち径方向内側に位置する部分との間に配置されている。また、隙間調整材75gは、中央部に厚さ方向の貫通孔84を有している。貫通孔84の内側には、ガイド軸78の軸方向端部が、ガイド軸78の径方向に関するがたつきなく、かつ、ガイド軸78の軸方向に関する移動を可能に挿入されている。換言すれば、隙間調整材75gは、貫通孔84にガイド軸78の軸方向端部を係合させることに基づいて、入力係合部20bの径方向内側面と係合子側入力係合部74の内面との間から脱落しないように、ガイド軸78に保持されている。
本例では、出力係合部26cと係合子側出力係合部72の内面との間に配置された隙間調整材75hは、ガイド軸78に保持されている。隙間調整材75hは、平板状に造られており、出力係合部26cの短手方向の側面と係合子側出力係合部72の底部との間に配置されている。隙間調整材75hは、中央部に厚さ方向の貫通孔85を有している。貫通孔85の内側には、ガイド軸78の軸方向中間部が、ガイド軸78の径方向に関するがたつきなく、かつ、ガイド軸78の軸方向に関する移動を可能に挿入されている。換言すれば、隙間調整材75hは、貫通孔85にガイド軸78の軸方向中間部を係合させることに基づいて、出力係合部26cの短手方向の側面と係合子側出力係合部72の底部との間から脱落しないように、ガイド軸78に保持されている。
本例の逆入力遮断クラッチ5mでは、隙間調整材75g、75hは、それぞれの貫通孔84、85にガイド軸78を挿入することによって、ガイド軸78に保持することができる。このため、隙間調整材75g、75hの設置作業を容易に行える。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第6例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第9例]
本発明の第3態様の実施の形態の第9例について、図45及び図46を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第7例(図43参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5nでは、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間に配置された隙間調整材75iは、鋼材製の板ばねである。すなわち、隙間調整材75iは、平板状の当接板部86と、当接板部86の幅方向(図45及び図46の左右方向)両側部から当接板部86の厚さ方向に関して互いに同じ方向に直角に折れ曲がるように形成された1対の固定板部87とを備える。隙間調整材75iは、1対の固定板部87をそれぞれの係合子17iの保持凹部82に幅方向のがたつきなく内嵌し、かつ、1対の固定板部87と当接板部86と保持凹部82の底部とによって四方を囲まれた部分を空間部88とした状態で、それぞれの係合子17iに固定されている。
本例では、出力係合部26bと係合子側出力係合部72aの内面との間に配置された隙間調整材75jも、隙間調整材75iと同様の構成を有する、鋼材製の板ばねである。すなわち、隙間調整材75jは、平板状の当接板部86aと、当接板部86aの幅方向(図45及び図46の左右方向)両側部から当接板部86aの厚さ方向に関して互いに同じ方向に直角に折れ曲がるように形成された1対の固定板部87aとを備える。隙間調整材75jは、1対の固定板部87aをそれぞれの係合子17iの保持凹部83に幅方向のがたつきなく内嵌し、かつ、1対の固定板部87aと当接板部86aと保持凹部83の底部とによって四方を囲まれた部分を空間部88aとした状態で、それぞれの係合子17iに固定されている。
本例では、入力部材14bに回転トルクが入力された場合には、入力係合部20bは、隙間調整材75iの当接板部86を押圧し、出力係合部26bは、隙間調整材75jの当接板部86aにより押圧される。この際に、当接板部86、86aは、空間部88、88a側に弾性的にたわむため、入力係合部20b及び出力係合部26cとそれぞれの係合子17iとの間に作用する衝撃を緩和することができる。また、出力部材15dに回転トルクが逆入力された場合には、出力係合部26bは、隙間調整材75jの当接板部86aを押圧する。この際にも、当接板部86aは、空間部88a側に弾性的にたわむため、出力係合部26c及び被押圧部材16bとそれぞれの係合子17iとの間に作用する衝撃を緩和することができる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第7例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第10例]
本発明の第3態様の実施の形態の第10例について、図47を用いて説明する。
本例は、第3態様の実施の形態の第6例(図42参照)の変形例である。本例の逆入力遮断クラッチ5oでは、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間に配置された隙間調整材75kは、コイル状のばねにより構成される。それぞれの係合子17fに対して、隙間調整材75kは、入力係合部20bの周方向両側に1つずつ配置されている。具体的には、それぞれの隙間調整材75kは、入力係合部20bの周方向側面と係合子側入力係合部74の内面の周方向端部とに架け渡すように配置されている。
本例では、出力係合部26cと係合子側出力係合部72の内面との間に配置された隙間調整材75mも、コイル状のばねにより構成される。それぞれの係合子17fに対して、隙間調整材75mは、出力係合部26cの短手方向半部の長手方向両側に1つずつ配置されている。具体的には、それぞれの隙間調整材75mは、出力係合部26cの短手方向半部の長手方向側面と係合子側出力係合部72の内面を構成する内側面とに架け渡すように配置されている。
本例の逆入力遮断クラッチ5oでは、入力部材14b及び出力部材15eに回転トルクが作用していない無負荷状態で、入力係合部20bと係合子側入力係合部74の内面との間に配置された隙間調整材75kの弾力により、入力係合部20bとそれぞれの係合子17fとの間の回転方向のがたつきを抑えることができる。また、前記無負荷状態で、出力係合部26cと係合子側出力係合部72の内面との間に配置された隙間調整材75mの弾力により、出力係合部26cとそれぞれの係合子17fとの間の回転方向のがたつきを抑えることができる。さらに、前記無負荷状態で、隙間調整材75k、75mの弾力により、入力部材14bと出力部材15eとの間の回転方向の位置関係を、中立位置に戻すことができる。
本例では、入力部材14bに回転トルクが入力された場合や、出力部材15eに回転トルクが逆入力される場合に、入力係合部20bの径方向内側面と係合子側入力係合部74の内面のうち径方向内側に位置する部分との間で隙間調整材75kが強く挟持されたり、出力係合部26cの角部と係合子側出力係合部72の底部との間で隙間調整材75mが強く挟持されたりすることがない。このため、隙間調整材75k、75mの摩耗が原因で、入力部材14bと出力部材15eとの間のバックラッシュが経時変化することはない。
本例では、入力部材14bに回転トルクが入力された場合には、隙間調整材75k、75mのそれぞれが弾性的にたわむため、入力係合部20b及び出力係合部26cとそれぞれの係合子17fとの間に作用する衝撃を緩和することができる。また、出力部材15eに回転トルクが逆入力された場合には、隙間調整材75mが弾性的にたわむため、出力係合部26c及び被押圧部材16bとそれぞれの係合子17fとの間に作用する衝撃を緩和することができる。本例では、隙間調整材75k、75mに対する負荷は、弾性的なたわみに起因する応力だけである。このため、隙間調整材75k、75mの強度は、この応力だけを考慮して決定すればよく、かつ、隙間調整材75k、75mは、耐久性の高いものとなる。その他の構成及び作用は、第3態様の実施の形態の第6例と同様である。
[第3態様の実施の形態の第11例]
本発明の第3態様の実施の形態の第11例について、図48~図49を用いて説明する。本例の特徴は、逆入力遮断クラッチ5fを、可変圧縮比装置89に適用した点にある。以下、本例の可変圧縮比装置89について、具体的に説明する。
可変圧縮比装置89は、内燃機関(エンジン)90に組み込まれ、ピストン91の上死点位置及び下死点位置を変化させることで、機関圧縮比を変更可能とするものである。本例の可変圧縮比装置89は、リンク機構92と、制御軸93と、電動モータ94と、減速機構4bと、第3態様の実施の形態の第1例で説明した逆入力遮断クラッチ5fを備える。
リンク機構92は、内燃機関90のシリンダ95内に配置されたピストン91に連結され、ピストン91を上下方向に移動させるものであり、アッパリンク96と、ロアリンク97と、コントロールリンク98を有する。アッパリンク96は、ピストンピン99を介してピストン91に連結されているとともに、第一連結ピン100aを介してロアリンク97に連結されている。ロアリンク97は、クランクシャフト101のクランクピン102に対して回転可能に取り付けられており、第二連結ピン100bを介してコントロールリンク98に連結されている。コントロールリンク98は、制御軸93に設けられた偏心軸部103に支持されている。このような構成を有するリンク機構92の姿勢は、制御軸93を回転させることにより変化し、ピストン91の上死点位置及び下死点位置を変化させる。なお、リンク機構92のアッパリンク96、ロアリンク97、及びコントロールリンク98は、シリンダ95と同数存在する。
制御軸93は、クランクシャフト101と平行に配置され、図示しない軸受により回転可能に支持されている。制御軸93は、電動モータ94によって回転駆動され、その回転位相を変化させることで、ピストン91の上死点位置及び下死点位置を変化させる。
本例では、電動モータ94と制御軸93との間に、減速機構4bと逆入力遮断クラッチ5fが配置されている。図示の例では、減速機構4bは、高効率の平行軸歯車減速機であり、電動モータ94の回転を減速して出力する複数(図示の例では8つ)の歯車104a~104hを備える。具体的には、減速機構4bは、入力歯車である第1歯車104aと、中間歯車である第2歯車104b、第3歯車104c、第4歯車104d、第5歯車104e、第6歯車104f、及び第7歯車104gと、出力歯車である第8歯車104hを備える。第1歯車104a~第7歯車104gは、外周面に歯部を有する外歯車であり、第8歯車104hは、内周面に歯部を有する内歯車である。
入力歯車である第1歯車104aは、電動モータ94の出力軸105の先端部に備えられている。第2歯車104b及び第3歯車104cは、電動モータ94の出力軸105と平行に配置された第1中間軸106aに設けられている。第4歯車104d及び第5歯車104eは、電動モータ94の出力軸105と同軸に配置された第2中間軸106bに備えられている。第6歯車104f及び第7歯車104gは、電動モータ94の出力軸105と平行に配置された第3中間軸106cに備えられている。第8歯車104hは、電動モータ94の出力軸105と同軸に配置されている。そして、減速機構4bは、第1歯車104aと第2歯車104b、第3歯車104cと第4歯車104d、第5歯車104eと第6歯車104f、第7歯車104gと第8歯車104hとをそれぞれ噛合させて、電動モータ94の出力軸105の回転運動を4段で減速する。これにより、減速機構4bに大きな減速比を持たせることができるため、減速機構4bと組み合わせて使用する電動モータ94の小型化を図ることができる。
本例では、電動モータ94に接続した減速機構4bと制御軸93との間に、逆入力遮断クラッチ5fを配置している。逆入力遮断クラッチ5fの基本的な構成は、第3態様の実施の形態の第1例の構造と同じである。特に、本例では、逆入力遮断クラッチ5fの入力部材14bを、減速機構4bの出力歯車である第8歯車104hに対して同軸に固定している。これにより、入力部材14bを、電動モータ94の出力軸105と同軸に配置し、第8歯車104hと同期して回転するようにしている。また、逆入力遮断クラッチ5fの出力部材15dを、制御軸93と一体に形成している。制御軸93の基端部には、出力係合部26bが備えられている。逆入力遮断クラッチ5fの円環状の被押圧部材16bは、周囲に配置された支持ブラケット107を介して、その回転を拘束されている。出力係合部26bと被押圧部材16bの内周面に形成された被押圧面28aとの間には、出力係合部26bを径方向両側から挟持するように、1対の係合子17dが配置されている。また、それぞれの係合子17dの径方向中間部に形成された係合子側入力係合部74の内側には、入力部材14bの先端部に設けられた入力係合部20bが緩く挿入されている。
本例の可変圧縮比装置89は、電動モータ94の回転を減速機構4bにより減速して、逆入力遮断クラッチ5fの入力部材14bに伝達する。この際、電動モータ94の出力を、減速機構4bによって増幅する。入力部材14bに回転トルクが入力されると、1対の係合子17dが、係合子側入力係合部74と入力係合部20bとの係合に基づき、互いに近づくように径方向内側にそれぞれ移動し、出力係合部26bと1対の係合子側出力係合部72とを係合させることで、入力部材14bに入力された回転トルクのほぼ全てを制御軸93(出力部材15d)に伝達する。制御軸93の回転位相を制御することで、リンク機構92の姿勢を、制御軸93の回転位相に応じた姿勢に変化させる。これにより、内燃機関90に要求される性能に応じて、ピストン91の上死点位置及び下死点位置を変化させ、機関圧縮比を変更することが可能になる。本例では、減速機構4bとして高効率の平行軸歯車減速機を使用しているため、制御軸93の回転位相を細かく制御することが可能になり、リンク機構92の姿勢を細かく調節することができる。
本例の可変圧縮比装置89は、逆入力遮断クラッチ5fに制御軸93から回転トルクが逆入力された際に、逆入力された回転トルクの一部のみを、入力部材14b及び減速機構4bを介して電動モータ94に伝達し、残部を遮断する。つまり、回転トルクの残部を、押圧面29を被押圧面28aに対して摺動させることによって消費する。このため、逆入力遮断クラッチ5fを設けずに、電動モータ94のみによって制御軸93から逆入力される回転トルクを保持する場合に比べて、電動モータ94に必要な消費エネルギ(電力量)を低減することができる。したがって、可変圧縮比装置89の運転コストを下げることができる。万が一、電動モータ94が故障した場合にも、燃焼荷重に起因したアシストトルクが制御軸93に逆入力されると、逆入力遮断クラッチ5fはアシストトルクの一部を通過させられるため、制御軸93が回転することを許容し、制御軸93の回転位相を変更することが可能になる。このため、機関運転を継続すれば、機関圧縮比を自動的に低圧縮比側に変更することが可能になり、ノッキングなどの異常燃焼を発生させにくくすることができる。
本例の可変圧縮比装置89に組み込まれた逆入力遮断クラッチ5fは、被押圧部材16bを構成する隙間調整材75によって、入力部材14bと出力部材15dとの間のバックラッシュが小さく抑えられている。逆入力遮断クラッチ5fは、電動モータ94の回転方向の反転動作を、制御軸93に対し、高い応答性で伝えることができる。このため、制御軸93の回転位相の制御、すなわち、機関圧縮比の変更の制御を、高い応答性で行うことができる。したがって、たとえば車両の急加速時など、機関圧縮比を高圧縮比側から低圧縮比側へ移行する際に、内燃機関90の出力の上昇に対して、電動モータ94による低圧縮比側への移行が遅れることを防止できる。この結果、このような遅れに起因して過渡的にノッキングが生じることが防止される。
本例では、減速機構4bとして、外歯車と内歯車を備えた平行軸歯車減速機を用いた例を説明したが、減速機構4bは、このような平行軸歯車減速機に限らず、はすば歯車を備えた平行軸歯車減速機のほか、遊星歯車減速機、サイクロイド減速機、ハーモニックドライブ(登録商標)減速機など、公知の各種構造の減速機を用いることができる。電動モータ94の出力トルク(出力パワー)に余裕があれば、減速機構4bを省略し、電動モータ94と逆入力遮断クラッチ5fとを直接接続しても良い。また、内燃機関90に要求される性能に応じて、ピストン91の上死点位置と下死点位置の一方のみを変化させることも可能である。その他の構成及び作用については、第3態様の実施の形態の第1例と同様である。なお、可変圧縮比装置に組み込む逆入力遮断クラッチに関しては、第3態様の実施の形態の第2例~第10例の構造を追加的又は代替的に適用することも可能である。
第3態様の実施の形態の各例の構造は、技術的な矛盾が生じない範囲で、適宜組み合わせて実施することができる。
[第4態様の実施の形態の第1例]
本発明の第4態様の実施の形態の第1例について、図50~図58を用いて説明する。
本発明の第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pは、
被押圧面28bを有する被押圧部材16dと、
回転中心軸Oと、少なくとも1個の入力係合部20cとを有する入力部材14cと、
入力部材14cの回転中心軸Oと同軸の回転中心軸Oと、出力係合部26dとを有する出力部材15fと、
被押圧面28bに対向する少なくとも1個の押圧面29と、入力係合部20cと係合する係合子側入力係合部74と、出力係合部26dと係合する係合子側出力係合部72とを有する、少なくとも1個の係合子17jを備える。
第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pにおいて、係合子17jは、入力部材14cに回転トルクが入力されると、入力係合部20cと係合子側入力係合部74との係合に基づいて、押圧面29を被押圧面28bから離隔させるように変位して、係合子側出力係合部72を出力係合部26dに係合させることにより、入力部材14cに入力された回転トルクを出力部材15fに伝達し、かつ、出力部材15fに回転トルクが逆入力されると、出力係合部26dと係合子側出力係合部72との係合に基づいて、押圧面29を被押圧面28bに押し付けるように変位して、押圧面29を被押圧面28bに摩擦係合させるように構成されている。
特に、第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pでは、係合子17jと被押圧部材16dとの間部分、入力係合部20cと係合子側入力係合部74との間部分、及び、出力係合部26dと係合子側出力係合部72との間部分の少なくとも何れかに中間部材が配置されていることを特徴とする。
第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5oでは、中間部材として、被押圧面28bと押圧面29との接触部を潤滑する潤滑剤、特に、トラクションオイル又はトラクショングリースが用いられている。以下、第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pについて詳細に説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5pは、ロック式の逆入力遮断クラッチであり、入力部材14cと、出力部材15fと、被押圧部材16dと、1対の係合子17jとを備えている。
入力部材14cは、電動モータなどの入力側機構に接続され、回転トルクが入力される。入力部材14cは、図51及び図53に示すように、入力軸部66bと、1対の入力係合部20cとを有している。入力軸部66bは、段付円柱状で、その基端部が前記入力側機構の出力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記入力側機構の出力部と一体に設けられている。1対の入力係合部20cは、略楕円柱状で、入力軸部66bの先端面の直径方向反対側2個所位置から軸方向に伸長した凸部により構成されている。1対の入力係合部20cのそれぞれの入力係合部20cは、入力部材14cの直径方向に互いに離隔している。それぞれの入力係合部20cは、入力軸部66bの先端面のうちで回転中心軸Oから径方向外方に外れた部分に配置されている。それぞれの入力係合部20cは、その径方向外側面が、入力軸部66bの先端部の外周面と同じ円筒面状の輪郭形状を有しており、その径方向内側面は、円周方向中央部が径方向内方に突出した円弧状の凸面により構成されている。
出力部材15fは、減速機構などの出力側機構に接続され、回転トルクを出力する。出力部材15fは、入力部材14cと同軸に配置されており、図51及び図54に示すように、出力軸部67bと、出力係合部26dとを有している。出力軸部67bは、円柱状で、その先端部が前記出力側機構の入力部にトルク伝達可能に接続されるか、又は、前記出力側機構の入力部と一体に設けられている。出力係合部26dは、カム機能を有する。このため、出力部材15fの回転中心軸Oから出力係合部26dの外周面までの距離は、周方向に関して一定でない。本例では、出力係合部26dは、略長円柱状で、出力軸部67bの基端面の中央部から軸方向に伸長している。出力係合部26dの外周面は、互いに平行な1対の平坦面と、1対の円弧状の凸面とにより構成されている。このため、出力係合部26dの回転中心軸Oから外周面までの距離は、円周方向にわたり一定でない。出力係合部26dは、1対の入力係合部20cの間部分に配置される。
被押圧部材16dは、図51及び図52に示すように、薄肉円環状に構成されており、ハウジングなどの図示しない他の部材に固定されて、その回転が拘束されている。被押圧部材16dは、入力部材14c及び出力部材15fと同軸に、かつ、入力部材14c及び出力部材15fよりも径方向外側に配置されている。具体的には、1対の入力係合部20c及び出力係合部26dが、逆入力遮断クラッチ5pの組立状態で、被押圧部材16dの径方向内側に配置されている。被押圧部材16dは、その内周面に円筒面状の凹面である被押圧面28bを有している。
1対の係合子17jは、略半円形板状に構成されており、被押圧部材16dの径方向内側に配置されている。1対の係合子17jのそれぞれの係合子のうち、被押圧面28bに対して押し付けられる径方向外側面は、円筒面状の凸面である押圧面29となっており、その径方向内側面は、係合子側出力係合部72が形成された部分以外は平坦面状である底面71により構成されている。それぞれの係合子17jの幅方向両側は、底面71に対して直角な平坦面状の側面73により構成されている。なお、係合子17jに関して径方向とは、図50に矢印Aで示した底面71に対して直角な方向をいい、図50に矢印Bで示した底面71に対して平行な方向を、係合子17jに関して幅方向という。押圧面29の曲率半径は、被押圧面28bの曲率半径以下となっている。押圧面29は、係合子17jのその他の部分に比べて摩擦係数の大きい表面性状を有している。押圧面29は、係合子17jの表面によって直接構成されることもでき、あるいは、係合子17jに貼着や接着などにより固定した摩擦材によって構成されることもできる。
本例では、それぞれの係合子17jの押圧面29を被押圧部材16dの径方向反対側に向け、かつ、それぞれの係合子17jの底面71を互いに対向させている。1対の係合子17jを被押圧部材16dの径方向内側に配置した状態で、被押圧面28bと押圧面29との間部分、及び、底面71同士の間部分の少なくとも一方に隙間が存在するように、被押圧部材16dの内径寸法とそれぞれの係合子17jの径方向寸法が規制されている。
係合子17jは、係合子側入力係合部74と、係合子側出力係合部72とを有している。係合子側入力係合部74は、係合子17jの径方向中間部を軸方向に貫通し、かつ、幅方向に長い矩形状の長孔である、貫通孔により構成されている。係合子側入力係合部74は、入力係合部20cを緩く挿入できる大きさを有している。具体的には、係合子側入力係合部74の内側に入力部材14cの入力係合部20cを挿入した状態で、入力係合部20cと係合子側入力係合部74の内面との間には、係合子17jの幅方向及び径方向にそれぞれ隙間が存在する。このため、入力係合部20cは、係合子側入力係合部74(係合子17j)に対し、入力部材14cの回転方向に関する変位が可能であり、係合子側入力係合部74は、入力係合部20cに対し、係合子17jの径方向の変位が可能である。
係合子側出力係合部72は、1対の係合子17jのそれぞれ係合子17jの底面71の幅方向中央部から径方向外方に向けて凹んだ略矩形状の凹部により構成される。係合子側出力係合部72は、その内側に出力部材15fの出力係合部26dの短軸方向の先半部をがたつきなく配置できる大きさ及び形状を有している。具体的には、係合子側出力係合部72は、その開口幅が、出力係合部26dの長軸方向に関する寸法とほぼ同じであり(同じか、あるいは、わずかに大きく)、その径方向深さが、出力係合部26dの短軸方向に関する寸法の1/2よりも少しだけ小さくなっている。係合子側出力係合部72の底部は、底面71と平行な平坦面となっている。
本例の逆入力遮断クラッチ5pでは、その組立状態で、軸方向一方側に配置した入力部材14cの1対の入力係合部20cが、1対の係合子17jの係合子側入力係合部74に軸方向に挿入し、かつ、軸方向他方側に配置した出力部材15fの出力係合部26dが、1対の係合子側出力係合部72の間に軸方向に挿入している。すなわち、1対の係合子17jは、それぞれの係合子17jの係合子側出力係合部72により、出力係合部26dを径方向外側から挟むように配置されている。本例では、入力係合部20cの軸方向寸法、出力係合部26dの軸方向寸法、被押圧部材16dの軸方向寸法、及び、係合子17jの軸方向寸法は、ほぼ同じとなっている。
本例では、逆入力遮断クラッチ5pの潤滑剤として、トラクションオイル又はトラクショングリースが用いられている。トラクショングリースは、基油としてトラクションオイルを用いたグリースである。したがって、入力部材14cと、出力部材15eと、被押圧部材16dと、1対の係合子17jとの、相互の接触部は、トラクションオイルの油膜を介した接触部となる。なお、トラクションオイルとしては、トラクション係数が0.1以上のトラクションオイルを使用することが好ましく、ナフテン系潤滑油、パラフィン系潤滑油などが挙げられる。
本例の逆入力遮断クラッチ5pの動作およびその作用について、図55~図58に示すが、基本的には第1態様の実施の形態の第1例における逆入力遮断クラッチ5の動作及びその作用と同様であるから、ここでの説明は省略する。
本例では、逆入力遮断クラッチ5pの潤滑剤として、トラクションオイル又はトラクショングリースが用いられている。トラクションオイル(トラクショングリースの基油)は、部材間に油膜として介在し、かつ、部材間の接触圧(油膜の圧力)が高くなった場合の粘度が、通常の潤滑油と比べて高い。このため、入力部材14cに回転トルクが入力された場合には、入力係合部20cと係合子側入力係合部74との接触部、及び、係合子側出力係合部72と出力係合部26dとの接触部に、トラクションオイルの油膜が厚く形成される。また、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合には、出力係合部26dと係合子側出力係合部72との接触部、及び、押圧面29と被押圧面28bとの接触部(並びに、半ロック状態では、入力係合部20cと係合子側入力係合部74との接触部)に、トラクションオイルの油膜が厚く形成される。したがって、これらの接触部の摩耗を低減することができ、逆入力遮断クラッチ5pの耐久性を高めることができる。
本例の逆入力遮断クラッチ5pでは、出力部材15fがロック又は半ロックする際の、押圧面29と被押圧面28bとの間の摩擦係数μ´は、温度や劣化の影響を受けにくいトラクションオイルのトラクション係数となる。したがって、ロック又は半ロック状態とロック又は半ロック解除状態の切り替え動作を、より安定して行うことができる。
本例の逆入力遮断クラッチ5pでは、潤滑剤としてトラクションオイル又はトラクショングリースを用いているため、潤滑剤として通常の潤滑油を用いる場合に比べて、押圧面29と被押圧面28bとの間の摩擦係数μ´を大きくすることができる。したがって、距離Rが同じであれば、潤滑剤として通常の潤滑油を用いる場合よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができる。その結果、たとえば、被押圧面28bと押圧面29aとがスリップすることに対する安全率を、潤滑剤として通常の潤滑油を用いる場合よりも大きくすることができる。また、本例の逆入力遮断クラッチ5pは、潤滑剤として通常の潤滑油を用いる場合と同じ大きさのブレーキトルクT´を得るために必要な距離Rを小さくすることができ、逆入力遮断クラッチ5pの小型化が可能となる。その他の構成及び作用効果については、第1態様の実施の形態の第1例及び第3態様の実施の形態の第1例と同様である。
本発明を実施する場合には、被押圧部材の被押圧面と係合子の押圧面とのうちの少なくとも一方の面を、多数の微細な溝やディンプルなどが形成された、微細な凹凸形状(テクスチャ加工部)により構成することもできる。この場合、この凹凸形状の凹部の分だけ、被押圧面と押圧面との接触面積を小さくして、被押圧面と押圧面との接触面圧を大きくすることができるため、被押圧面と押圧面との間のトラクション係数を大きくして、より大きなブレーキトルクを得ることができる。また、前記凹凸形状部の凹部にトラクションオイルを保持しやすくできる。
本例では、潤滑剤として、トラクションオイル又はトラクショングリースを適用しているが、本発明の逆入力遮断クラッチを、通常の潤滑油などの、トラクションオイルやトラクショングリース以外の潤滑剤を用いて実施したり、潤滑剤を用いることなく実施したりすることもできる。
第4態様の逆入力遮断クラッチは、たとえば、電動モータを駆動源とするアクチュエータにおいて、電動モータと該電動モータにより駆動される被駆動部との間に組み込んで用いることができる。この場合、電動モータによって被駆動部を高効率に駆動できるのに対して、被駆動部側から回転トルクが逆入力された場合には、逆入力遮断クラッチをロック状態とすることによって、電動モータの消費電力を必要とすることなく、被駆動部の位置保持を行うことができる。したがって、高効率でありながら低消費電力のアクチュエータを実現することができる。
また、本発明の逆入力遮断クラッチは、自動車の内燃機関のピストン工程を変化させて機関圧縮比を可変とする可変圧縮比装置、電動ブレーキ装置、電動ドア装置、操舵装置などに組み込んで用いることができる。
[第4態様の実施の形態の第2例]
本発明の第4態様の実施の形態の第2例について、図59~図61を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5qでは、1対の係合子17kのそれぞれの係合子17kは、底面71aの幅方向両側部に、底面71aに対して垂直方向に凹入した円柱状のガイド凹部79(図61では図示省略)を有している。そして、それぞれの係合子17kの底面71aを互いに対向させた状態で、同一直線上に存在する2組のガイド凹部79のそれぞれの内側に、それぞれの組のガイド凹部79に架け渡すように、弾性部材であるコイル状ばね80(図61では図示省略)が配置されている。1対のコイル状ばね80が発揮する弾力により、それぞれの係合子17kは、被押圧面28bに向けて付勢されている。これにより、それぞれの係合子17kの姿勢を同期させつつ安定させることで、それぞれの係合子17kの径方向移動を正確に行わせることができるようにしている。本例では、係合子17kの径方向内側面は、ガイド凹部79が位置する箇所を除き、全体的に平坦面状の底面71aにより構成され、かつ、係合子側出力係合部72bは、底面71aの幅方向中央部に備えられている。
本例では、それぞれの係合子17kは、径方向外側面のうち、周方向に離隔した2個所位置に、被押圧面28bに対して押し付けられる押圧面29aを有している。押圧面29aのそれぞれは、被押圧面28bの曲率半径Crよりも小さな曲率半径Cr´を有する円筒面状の凸面である。また、それぞれの係合子17kは、径方向外側面のうち、1対の押圧面29a同士の間部分である周方向中間部に、被押圧面28bに対して押し付けられない平坦面状の先端面111を有している。すなわち、先端面111と被押圧面28bとの間には、常に隙間が存在するようになっている。
本例の逆入力遮断クラッチ5qでは、図61に示すように、出力部材15fに回転トルクが逆入力され、それぞれの係合子17kに出力係合部26dから法線力Fcが作用した際に、係合子17kの径方向外側面に存在する1対の押圧面29aは、被押圧面28bに対して押し付けられる。ここで、押圧面29aの曲率半径Cr´は、被押圧面28bの曲率半径Crよりも小さいため、それぞれの押圧面29aと被押圧面28bとは1点で(トラクションオイルの油膜を介して)接触する。したがって、2つの押圧面29aを有する係合子17kと被押圧部材16dとは、合計2点で接触する。
この際それぞれの押圧面29aの曲率中心は、被押圧部材16dの中心軸O(=入力部材14c及び出力部材15fの回転中心軸O)と、押圧面29aと被押圧面28bとのそれぞれの当接部M1、M2とを結んだ仮想線上に存在している。また、それぞれの当接部M1、M2における接線同士の間のくさび角を2αとし、押圧面29aと被押圧面28bとの間の摩擦係数(トラクション係数)をμ´とすると、当接部M1、M2に作用する法線力Pは、次の(10)式で表される。
P=Fc/2(sinα+μ´・cosα) ・・・(10)
また、係合子17kにブレーキ力を生じさせる当接部M1、M2に作用する接線力Ft´は、次の(11)式で表される。
Ft´=μ´P ・・・(11)
また、出力部材15fの回転中心軸Oから押圧面29aと被押圧面28bとの当接部M1、M2までの距離をRとすると、係合子17kに作用するブレーキトルクT´の大きさは、次の(16)式で表される。
T´=2Ft´R ・・・(16)
上述した(10)式、(11)式及び(16)式より、ブレーキトルクT´の大きさは、摩擦係数μ´、距離R(クラッチサイズ)、法線力Fc、くさび角αを、それぞれ用いて、次の(17)式で表される。
T´=μ´RFc/(sinα+μ´・cosα) ・・・(17)
ここで、第4態様の実施の形態の第1例の構造に関しては、ブレーキトルクT´の大きさは、前記(4)式:T´=μ´RFcにより示される。
このため、より大きなブレーキトルクT´を得るためには、本例の逆入力遮断クラッチ5qの場合にも、第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pと同様に、摩擦係数μ´、距離R、法線力Fcを大きくすれば良いことが分かる。また、本例の特徴であるくさび効果を利用して、ブレーキトルクT´をより大きくするには、くさび角αをできるだけ小さくすれば良いことになる。
たとえば、摩擦係数μ´を0.1、距離Rを15mm、くさび角αを25度、法線力Fcを1000Nと仮定する。この場合、第4態様の実施の形態の第1例の逆入力遮断クラッチ5pにより得られるブレーキトルクT´は、1.5Nmになるのに対して、本例の逆入力遮断クラッチ5qにより得られるブレーキトルクT´は、2.9Nmになる。このように、本例の逆入力遮断クラッチ5qは、くさび効果を利用することで、逆入力遮断クラッチ5pに比べて、おおよそ2倍の大きさのブレーキトルクT´を得られる。すなわち、本例の逆入力遮断クラッチ5qは、逆入力遮断クラッチ5pと同じ大きさのブレーキトルクT´を、距離Rを1/2にした場合にも得られる。
以上のように、本例の逆入力遮断クラッチ5qは、距離Rが同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。その他の構成及び作用効果については、第4態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第3例]
本発明の第4態様の実施の形態の第3例について、図62及び図63を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5rでは、それぞれの係合子17lの径方向外側部の周方向中央部に、中間部材として、周方向両側に隣接する部分に比べて径方向外側に突出した凸部112が備えられている。凸部112の径方向外側面が、被押圧面28bに対して押し付けられる押圧面29eを構成している。押圧面29eは、軸方向から見た形状が円弧形である円筒面状の凸面により構成されている。したがって、本例では、被押圧面28bと押圧面29eとの接触は、線接触となる。また、押圧面29eの曲率半径Craは、第4態様の実施の形態の第1例の構造(図50参照)の押圧面29の曲率半径よりも小さくなっている。本例では、具体的には、押圧面29eの曲率半径Craは、被押圧面28bの曲率半径Crの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。本例では、それぞれの係合子17lの径方向外側面のうち、凸部112(押圧面29e)から周方向に外れた部分は、被押圧面28bに対して押し付けられない円筒状の凸面により構成されている。すなわち、被押圧面28bと、それぞれの係合子17lの径方向外側面のうち凸部112(押圧面29e)から周方向に外れた部分との間には、常に隙間が存在するようになっている。
本例では、それぞれの係合子17lの径方向外側部の周方向一部(中央部)に凸部112を配置して、凸部112の径方向外側面を押圧面29eとすることで、押圧面29eの曲率半径Craを、第4態様の実施の形態の第1例の構造の押圧面29の曲率半径よりも十分に小さくしている。このため、本例の構造では、第4態様の実施の形態の第1例の構造と比較して、被押圧面28bと押圧面29eとの接触面積をより小さくすることができる。したがって、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合の、被押圧面28bと押圧面29eとの接触面圧をより高くすることができる。この結果、被押圧面28bと押圧面29eとの間に存在するトラクションオイルの粘度を増大させ、被押圧面28bと押圧面29eとの間の摩擦係数(トラクション係数)μ´を増大させることができる。このため、距離Rが同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。なお、本発明を実施する場合には、それぞれの係合子の凸部の径方向外側面である押圧面の母線形状を、凸円弧形などのクラウニング形状とすることにより、該押圧面と被押圧面28bとの接触を点接触に近づけることで、該押圧面と被押圧面28bとの接触面圧をより高くして、より大きなブレーキトルクT´を得ることもできる。
また、本例の構造では、第4態様の実施の形態の第1例の構造に比べて、それぞれの係合子17kの挙動を安定させるために係合子17kの幅寸法を確保しつつ、押圧面29eの曲率半径Craを被押圧面28bの曲率半径Crよりも十分に小さくすることが容易となる。
さらに、本例の構造では、それぞれの係合子17lの径方向外側面のうち、凸部112の径方向外側面以外の部分には、仕上げ加工や熱処理などを施す必要がない。したがって、その分、製造コストを抑えることができる。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第1例と同様である。
本例では、潤滑剤として、トラクションオイル又はトラクショングリースを適用しているが、本例の逆入力遮断クラッチを、通常の潤滑油などの、トラクションオイルやトラクショングリース以外の潤滑剤を用いて実施したり、潤滑剤を用いることなく実施したりすることもできる。この場合でも、それぞれの係合子に施す仕上げ加工や熱処理を局所的に行うだけで済むといった有利な効果が得られる。なお、本例では、中間部材として、トラクションオイル又はトラクショングリースからなる潤滑剤と、凸部112との両方が備えられているが、中間部材として、凸部112のみを備えることもでき、この構成も本発明の範囲に含まれる。
[第4態様の実施の形態の第4例]
本発明の第4態様の実施の形態の第4例について、図64を用いて説明する。
第4態様の実施の形態の第3例の構造(図62参照)では、それぞれの係合子17lの径方向外側部に配置した凸部112の周方向位置を、周方向中央の1箇所としている。これに対して、本例の逆入力遮断クラッチ5sでは、それぞれの係合子17mの径方向外側部に形成する凸部112の周方向位置を、周方向に離隔した2箇所としている。これにより、出力部材15eに回転トルクが逆入力された場合に、係合子17lの径方向外側面のうち、周方向に離隔した2箇所の凸部112の径方向外側面により構成される押圧面29eのみが、被押圧面28bに押し付けられる。このため、第4態様の実施の形態の第2例の構造(図59参照)の場合と同様のくさび効果により、大きなブレーキトルクT´を確保しやすい。特に、本例の構造では、周方向に離隔した2箇所の押圧面29eのそれぞれの曲率半径Craが、第4態様の実施の形態の第2例の構造の押圧面29aの曲率半径Cr´よりも小さく、かつ、被押圧面28bの曲率半径Crよりも十分に小さい。このため、第4態様の実施の形態の第3例の構造の場合と同様の理由により、第4態様の実施の形態の第2例の構造に比べて、より大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第2例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第2例及び第3例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第5例]
本発明の第4態様の実施の形態の第5例について、図65及び図66を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5tでは、それぞれの係合子17nは、係合子側入力係合部74及び係合子側出力係合部72を有する係合子本体110bと、中間部材としての、押圧面29fを有する押圧体である1個のころ114とを備える。係合子本体110bは、径方向外側部の周方向中央の1箇所に、径方向外側に開口する保持凹部113を有している。保持凹部113に、ころ114が保持されている。図示の例では、保持凹部113は、軸方向から見た形状がV字形の溝(V溝)であり、係合子本体110bの径方向外側部の軸方向全長にわたり形成されている。また、ころ114は、全体が円柱状であり、ころ114の外周面が円筒面状の押圧面29fを構成している。押圧面29fの曲率半径は、第4態様の実施の形態の第1例の構造(図50参照)の押圧面29の曲率半径よりも十分に小さい。また、ころ114の直径(押圧面29fの直径)は、保持凹部113の深さよりも大きく、ころ114の軸方向寸法は、係合子本体110bの軸方向寸法よりも小さい。保持凹部113にころ114が保持された状態で、ころ114は、係合子本体110bの径方向に関する内側部のみが保持凹部113内に配置され、係合子本体110bの径方向に関する外側部が保持凹部113外に配置されている。
被押圧部材16eは、軸方向中間部の内周面に、全周にわたり、断面形状が矩形の案内溝115を有する。案内溝115内に、係合子本体110bの径方向に関するころ114の外側部が配置されている。これにより、ころ114は、係合子本体110bの径方向外側面と被押圧部材16eの内周面との間から、軸方向に脱落することを防止されている。案内溝115の底面が、円筒面状の被押圧面28cを構成している。したがって、本例では、被押圧面28cと押圧面29fとの接触は、線接触となる。
本例では、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合には、案内溝115の底面である被押圧面28cに、ころ114の外周面からなる押圧面29fが押し付けられる。すなわち、押圧面29fと保持凹部113の内面とがトラクションオイルの油膜を介して強く接触し、かつ、押圧面29fと被押圧面28cとがトラクションオイルの油膜を介して強く接触する。この結果、これらの油膜の粘度が増大し、押圧面29fと被押圧面28cとの接触部に、ブレーキトルクT´が発生する。特に、本例では、押圧面29fの曲率半径が、第4態様の実施の形態の第1例の構造の押圧面29の曲率半径よりも十分に小さい。このため、第4態様の実施の形態の第1例の構造と比較して、被押圧面28cと押圧面29fとの接触面積をより小さくすることができ、被押圧面28cと押圧面29fとの接触面圧をより高くすることができる。この結果、被押圧面28cと押圧面29fとの間に存在するトラクションオイルの粘度を増大させ、被押圧面28cと押圧面29fとの間の摩擦係数(トラクション係数)μ´を増大させることができる。このため、距離Rが同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第1例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。
本例では、入力部材14cに回転トルクが入力され、被押圧部材16eに対し、入力部材14cと出力部材15fと1対の係合子17nとが同期して回転する際に、非回転側(被押圧部材16e)と回転側(入力部材14c、出力部材15f、1対の係合子17n)との間に芯ずれが生じた場合でも、被押圧面28cに対してころ114の外周面からなる押圧面29fを、転がり接触及び/又は滑り接触させることによって、回転側の回転を安定させることができる。
本例では、逆入力遮断クラッチ5tを組み立てる際に、ころ114のサイズを選択することによって、逆入力遮断クラッチ5tの内部隙間を調整し、該内部隙間を適正範囲に収めることができる。
本例では、それぞれの係合子17nを、係合子本体110bところ114との2部品に分割し、ころ114の外周面により押圧面29fが構成されている。このため、係合子本体110bの径方向外側部には、仕上げ加工や熱処理などを施す必要がない。したがって、その分の製造コストを抑ることができる。なお、本例においては、係合子17nは、係合子本体110b及びころ114とにより構成されているが、この場合、係合子本体110bを係合子と、ころ114を中間部材として、解釈することも可能である。また、本例では、中間部材として、トラクションオイル又はトラクショングリースからなる潤滑剤と、ころ114との両方が備えられているが、中間部材として、ころ114からなる押圧体のみを備えることもでき、この構成も本発明の範囲に含まれる。
ころ114としては、たとえば、軸受用の量産品(硬度HRC61~67程度)を用いることができ、具体的には、直径3mm~40mm、軸方向長さ3mm~65mmの円筒ころや、直径5.5mm~15mm、軸方向長さ18mm~90mmの棒状ころや、直径1mm~5mm、軸方向長さ5.8mm~49.8mmの針状ころなどを用いることができる。ただし、周囲の部材のサイズとの関係を考慮して、ころ114のサイズは決定される。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第1例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第6例]
本発明の第4態様の実施の形態の第6例について、図67を用いて説明する。
第4態様の実施の形態の第5例の構造(図65参照)では、係合子17nを構成する係合子本体110bの径方向外側部のうち、ころ114を保持した保持凹部113の周方向位置を、周方向中央の1箇所としている。これに対して、本例の逆入力遮断クラッチ5uでは、それぞれの係合子17oを構成する係合子本体110cの径方向外側部のうち、ころ114を保持した保持凹部113の周方向位置を、周方向に離隔した2箇所としている。これにより、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合に、周方向に離隔した2箇所のころ114の外周面である押圧面29fが、被押圧面28cに押し付けられるようにしている。このようにすることで、第4態様の実施の形態の第2例の構造(図59参照)の場合と同様のくさび効果により、大きなブレーキトルクT´を確保しやすくしている。特に、本例の構造では、ころ114の外周面である押圧面29fの曲率半径が、第4態様の実施の形態の第2例の構造の押圧面29aの曲率半径Cr´よりも小さい。このため、第4態様の実施の形態の第5例の構造の場合と同様の理由により、第4態様の実施の形態の第2例の構造に比べて、より大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第2例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第2例及び第5例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第7例]
本発明の第4態様の実施の形態の第7例について、図68を用いて説明する。
第4態様の実施の形態の第5例(図65参照)及び第6例(図67参照)の構造では、それぞれの係合子17n、17oを構成する押圧体として、ころ114が用いられている。これに対して、本例の逆入力遮断クラッチでは、それぞれの係合子17pを構成する押圧体として、玉116が用いられている。玉116の表面が、押圧面29gを構成している。また、被押圧部材16fの内周面に形成された案内溝115aの内面である被押圧面28dの断面形状を、その曲率半径が玉116の表面である押圧面29gの曲率半径よりも大きい円弧形としている。
本例の逆入力遮断クラッチによれば、玉116の表面である押圧面29gと保持凹部113の内面及び被押圧面28dとの接触が点接触となるため、これらの面同士の接触面積をより小さくすることができ、これらの面同士の接触面圧をより高くすることができる。したがって、これらの面同士の間の摩擦係数(トラクション係数)μ´をより増大させることができる。この結果、距離Rが同じであれば、第4態様の実施の形態の第5例及び第6例の構造よりも大きなブレーキトルクT´を得ることができる。換言すれば、ブレーキトルクT´が同じであれば、第4態様の実施の形態の第5例及び第6例の構造よりも距離Rを小さくすることができ、小型化を図ることができる。
玉116として、たとえば、軸受用の量産品(硬度HRC61~67程度、直径0.3mm~101.6mm)を用いることができる。ただし、周囲の部材のサイズとの関係を考慮して、玉116のサイズは決定される。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第5例及び第6例と同様である。
本発明を実施する場合には、ころ114(又は玉116)を保持する保持凹部として、V溝に限らず、軸方向から見た形状が円弧形のR溝、サーキュラーアーク溝、ゴシックアーク溝などの各種形状の溝を採用することができる。保持凹部として、R溝やサーキュラーアーク溝やゴシックアーク溝を採用すれば、保持凹部の内面ところ114の外周面(又は玉116の表面)との接触面圧を下げられるため、摩耗を抑制することができる。また、保持凹部として、サーキュラーアーク溝やゴシックアーク溝を採用すれば、保持凹部の内面ところ114の外周面(又は玉116の表面)との耐衝撃性能を向上させることができる。なお、このような耐衝撃性能は、サーキュラーアーク溝よりもゴシックアーク溝の方が高い。
本発明を実施する場合には、ころ114(又は玉116)を保持する保持凹部を、軸方向両端部が開口せずに塞がれたものとすることもできる。この場合には、ころ114(又は玉116)が保持凹部から軸方向に抜け出ることを防止できるため、被押圧部材の内周面に形成する案内溝を省略することができる。また、ころ114(又は玉116)を保持する保持凹部の軸方向両端部が軸方向に開口したものであっても、たとえば、保持凹部に対して軸方向に隣接して配置される部材によって、ころ114(又は玉116)が保持凹部から軸方向に抜け出ることを防止できる場合には、被押圧部材の内周面に形成する案内溝を省略することができる。
[第4態様の実施の形態の第8例]
本発明の第4態様の実施の形態の第8例について、図69を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチでは、それぞれの係合子17qを構成する係合子本体110cの保持凹部113aは、軸方向から見た形状が単一円弧形でかつC字形のR溝により構成される。また、保持凹部113aの軸方向両端部は、軸方向に開口している。また、本例では、保持凹部113aの内側に、ころ114(又は玉116)の一部であって、かつ、ころ114(又は玉116)半分よりも多い部分を配置している。これと共に、保持凹部113aの径方向外側の開口幅を、ころ114(又は玉116)の直径よりも小さくしている。これにより、保持凹部113aの径方向外側の開口部を通じて、ころ114(又は玉116)が完全に抜け出ることを防止している。本例では、保持凹部113aの内側へのころ114(又は玉116)の挿入作業は、保持凹部113aの軸方向の開口部から行うことができる。また、本例では、ころ114(又は玉116)の直径を保持凹部113aの内径よりも僅かに小さくすることで、ころ114の外周面(又は玉116の表面)からなる押圧面29f(29g)と保持凹部113aの内面との間に隙間を設けている。これにより、入力部材に回転トルクが入力された場合、すなわち、被押圧部材に対して入力部材と出力部材と1対の係合子17pとが同期して回転する場合で、かつ、被押圧面に対してころ114の外周面(又は玉116の表面)である押圧面29f(29g)が接触した場合に、ころ114(又は玉116)が転動しやすくしている。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第5例~第7例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第9例]
本発明の第4態様の実施の形態の第9例について、図70を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチでは、ころ114の外周面(又は玉116の表面)からなる押圧面29f(29g)と保持凹部113a′の内面との間の隙間を、十分に小さい隙間とするか、ゼロ隙間又は圧入による負の隙間としている。これにより、入力部材に回転トルクが入力された場合、すなわち、被押圧部材に対して入力部材と出力部材と1対の係合子17pとが同期して回転する場合で、かつ、被押圧面に対してころ114の外周面(又は玉116の表面)である押圧面29f(29g)が接触した場合に、該接触を滑り接触として、ころ114(又は玉116)が転動しないようにしている。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第8例と同様である。
[第4態様の実施の形態の第10例]
本発明の第4態様の実施の形態の第10例について、図71及び図72を用いて説明する。
本例の逆入力遮断クラッチ5vでは、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合の、被押圧面28eと押圧面29hとの接触面圧を向上させるために、係合子17rの径方向外側面に備えられた押圧面29hの母線形状を、クラウニング形状である凸円弧形としている。さらに、本例では、被押圧部材16gの内周面の軸方向中間部に、全周にわたり、中間部材としての突条117が備えられており、突条117の径方向内側面に、被押圧面28eが備えられている。被押圧面28eは、断面形状が円弧形の凸面である。このような本例の構造によれば、出力部材15fに回転トルクが逆入力された場合の、被押圧面28eと押圧面29hとの接触を、点接触とすることができるため、被押圧面28eと押圧面29hとの接触面圧をより高くして、より大きなブレーキトルクT´を得ることができる。その他の構成及び作用効果は、第4態様の実施の形態の第1例と同様である。
第4態様のそれぞれの実施の形態の構造は、矛盾が生じない限り、適宜組み合わせて実施することができる。