JP7374471B2 - 味付けたらこの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、冷凍されたたらこを原料とした味付けたらこの製造方法に関する。
味付けたらこの原料は、生たらこ、もしくは、冷凍されたたらこである。たらこは漁獲時期が決まっているが、漁獲されたたらこを冷凍保存することによって、味付けたらこの提供を常時可能にしている。味付けたらこの品質は、味だけではなく、魚卵特有の粒感によって評価される。
味付けたらこの粒感は、タンパク質変性によって生じる特有の食感である。タンパク質変性は、高濃度の食塩水に浸漬させる塩蔵処理によって引き起こされる。たらこを始めとする魚卵の粒感を向上させる技術として、カルシウム塩を含有した水溶液に、解凍した魚卵を浸漬させることが知られている(特許文献1に記載)。
特開2001-299285号公報
味付けたらこの粒感は、粒の張り、および、粒の硬さからなる。粒の張りは、たらこの粒が保持する水分量に依存した卵膜の張りであり、粒の硬さは、卵膜の硬さによるものである。冷凍されたたらこを原料とした味付けたらこは、冷凍及び解凍の工程によってこうした粒感を損なってしまう。上述したカルシウム塩を用いる塩蔵処理では、卵膜を硬化させて粒の硬さを高める効果が依然として十分ではない。塩濃度を高めることによって卵膜を硬化させることは可能ではあるが、強い塩味により味を損なうだけでなく、粒中の水分量が減少することによって粒の張りが損なわれてしまう。そのため、冷凍されたたらこを原料とした味付けたらこの製造方法では、粒中の水分量と卵膜の硬さとを確保すること、すなわち、粒の張り及び粒の硬さの両方を確保することが強く望まれている。
本発明の目的は、粒感を向上可能にした味付けたらこの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための味付けたらこの製造方法は、解凍液での浸漬を用いて冷凍されたたらこを解凍すること、および、解凍後の前記たらこを塩蔵液に浸漬すること、を含み、前記解凍液は、前記解凍液に対し1.0質量%以上15質量%以下の食塩と、前記解凍液100gに対しカルシウムとして92×10-5mol以上34×10-3mol以下のカルシウム塩と、を含み、前記カルシウム塩は、有機カルシウム塩、無機カルシウム塩、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、焼成カルシウム、からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物であり、前記たらこの解凍完了時における前記たらこの中心温度が10℃以下となるように前記解凍液の温度を調整する。
上記方法によれば、解凍液における食塩の濃度が1.0質量%以上であるから、タンパク質が変性することで粒感が向上する。また、解凍液における食塩の濃度が15質量%以下であるから、食塩に吸水されることが抑制されて粒に張りが出る。また、100gの解凍液にカルシウム塩が92×10-5mol以上含まれるため、たらこが有するトランスグルタミナーゼの作用によって味付けたらこの卵膜が硬くなる。また、100gの解凍液にカルシウム塩が34×10-3mol以下含まれるため、粒に十分な水分量が保持されて粒に張りが出る。そして、解凍完了時におけるたらこの中心温度が10℃以下となるように解凍液の温度が調整されるため、たらこが有するトランスグルタミナーゼの作用が活性化され、さらに卵膜が硬くなる。したがって、粒中の水分量と卵膜の硬さとを確保すること、すなわち、粒の張り及び粒の硬さの両方を確保することが可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記解凍液に前記たらこを浸漬させる時間は、1時間以上72時間以下であってもよい。この方法によれば、浸漬時間が1時間以上であるから、食塩とカルシウム塩とがたらこに浸透して粒感を向上させることの実効性を高めることが可能である。また、浸漬時間が72時間である場合と同等の効果を得られるから、浸漬時間が72時間以下であると、時間に応じた効果を得られるため、浸漬時間を過度に長くすることを抑えることが可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記冷凍されたたらこを解凍することは、前記たらこの中心温度が-2℃以上2℃以下となるまで前記冷凍されたたらこを半解凍した後に、前記半解凍された前記たらこを前記解凍液に浸漬してもよい。
この方法によれば、中心温度が-2℃以上となるまで冷凍されたたらこが半解凍されるため、解凍液に浸漬されるたらこに対して解凍液の浸透を促すことが可能である。これにより、解凍液にたらこを浸漬する時間の短縮が可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記解凍液は、無機カリウム塩、有機カリウム塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物からなるカリウム塩と、無機ナトリウム塩、有機ナトリウム塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物からなるナトリウム塩と、の少なくとも一方を含んでもよい。この方法によれば、味付けたらこの粒感を向上させることに加えて、食塩をカリウム塩またはナトリウム塩と置き換えること、あるいは、食塩に加えて更にカリウム塩またはナトリウム塩を添加することによって、塩味を強くすることが可能である。
上記味付けたらこの製造方法において、前記解凍液は、前記解凍液100gに対しカリウムとして43×10-3mol以下の前記カリウム塩を含んでもよい。この方法によれば、100gの解凍液におけるカリウム塩が43×10-3mol以下であるから、カリウム塩特有の苦みを抑えることが可能となる。そのため、カリウム塩の添加によって塩味を強くする一方で、カリウム塩特有の苦みが生じることを抑制することが可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記解凍液は、トランスグルタミナーゼを含んでもよい。この方法によれば、解凍液に含まれるトランスグルタミナーゼによって、解凍時に卵膜を硬くすること、ひいては、味付けたらこの粒を硬くすることができる。
上記味付けたらこの製造方法において、トランスグルタミナーゼを含む水溶液であるトランスグルタミナーゼ処理液に、解凍された前記たらこを浸漬させること、および、前記トランスグルタミナーゼ処理液に浸漬された前記たらこを前記塩蔵液に浸漬すること、を含んでもよい。この方法によれば、トランスグルタミナーゼ処理液にたらこを浸漬させるから、トランスグルタミナーゼがたらこに浸透して粒感を向上させることの実効性を高めることが可能である。
上記味付けたらこの製造方法において、前記トランスグルタミナーゼ処理液は、前記たらこ100gに対して1U以上1000U以下のトランスグルタミナーゼを含んでもよい。この方法によれば、たらこ100gに対してトランスグルタミナーゼ処理液に、トランスグルタミナーゼが1U以上含まれるため、トランスグルタミナーゼの作用によって味付けたらこの卵膜が硬くなる。また、たらこ100gに対してトランスグルタミナーゼ処理液に、トランスグルタミナーゼが1000U以下含まれるため、トランスグルタミナーゼの使用量を過度に多くすることを抑えることが可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記トランスグルタミナーゼ処理液の水温が、10℃以上30℃以下であり、前記トランスグルタミナーゼ処理液に前記たらこを浸漬させる時間が、1時間以上48時間以下であってもよい。
この方法によれば、トランスグルタミナーゼ処理液の水温が10℃以上であるため、トランスグルタミナーゼの作用が活性化されて卵膜が硬くなる。また、トランスグルタミナーゼ処理液が30℃以下であるため、たらこのタンパク質が変性することを抑え、粒に十分な水分量が保持されて粒に張りが出る。また、トランスグルタミナーゼ処理液にたらこを浸漬させる時間が1時間以上であるから、トランスグルタミナーゼがたらこに浸透して粒感を向上させることの実効性を高めることが可能である。また、浸漬時間が48時間以下であるから、浸漬時間を過度に長くすることを抑えることが可能となる。
上記味付けたらこの製造方法において、前記たらこを前記塩蔵液に浸漬する前に、前記トランスグルタミナーゼ処理液に前記たらこを浸漬させた後に前記トランスグルタミナーゼ処理液に食塩を添加してもよい。この方法によれば、トランスグルタミナーゼ処理液に食塩を添加するため、たらこの塩蔵に際してトランスグルタミナーゼ処理液からたらこを引き上げる手間および解凍されたたらこを塩蔵液に移す手間を減らすことが可能である。そのため、味付けたらこの製造を簡易化するとともに、製造時間の短縮を可能とする。
表1から表4を参照して味付けたらこの製造方法の一実施形態を説明する。味付けたらこの製造方法は、冷凍されたたらこを解凍すること、トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させること、解凍されたたらこを塩蔵すること、および、解凍されたたらこを調味液に浸漬させることを含む。味付けたらこは、塩たらこと辛子明太子とを含み、本実施形態においては、辛子明太子の製造工程について説明する。
[解凍]
冷凍されたたらこを解凍することは、解凍液に冷凍されたたらこを浸漬させることと、解凍完了時にたらこの中心温度が10℃以下となるよう解凍液が温度調整されることとを含む。冷凍されたたらこを解凍することは、冷凍されたたらこを解凍液の中で解凍完了することの他に、冷凍されたたらこを半解凍した後にさらに解凍を続けてたらこを解凍完了することを含む。
冷凍されたたらこを半解凍することは、たらこの中心温度が-2℃以上2℃以下になるまで解凍することである。冷凍されたたらこを半解凍することは、例えば、解凍庫など温度管理された場所において、自然解凍されることであってもよいし、浸漬解凍であってもよいし、流水解凍であってもよく、氷水解凍であってもよい。
冷凍されたたらこを半解凍することは、たらこの中心温度が-2℃以上2℃以下となるよう温度管理されることが望ましいが、-2℃より低い温度において、自然解凍から浸漬解凍へ解凍方法を変更してもよい。冷凍されていたたらこの中心温度が-2℃以上となるまでたらこが半解凍されるため、解凍液に浸漬されるたらこに対して解凍液の浸透を促すことが可能である。これにより、解凍液にたらこを浸漬する時間の短縮が可能となる。
冷凍されたたらこを解凍完了することは、たらこの表面温度と水温または雰囲気温度との差がなく、たらこの表面温度と中心温度とにおける温度差が生じていない状態までたらこを解凍することである。解凍完了時にたらこの中心温度が10℃以下となるよう解凍液が温度調整されることは、例えば、解凍庫内の雰囲気温度による解凍液の温度調整や、開放循環及び密封循環による解凍液の温度調整であってもよい。解凍液が10℃以下に温度調整されることによって、たらこが有するトランスグルタミナーゼを活性化させることが可能となる。
たらこの中心温度の測定方法は、例えば、接触式の温度センサーによる測定であってもよいし、非接触式の温度センサーによる測定であってもよいが、差し込み型金属温度計による測定であることが好ましい。たらこの中心温度は、たらこの断面における輪郭線が外接した円の中心位置付近において測定されるたらこの温度である。
冷凍されたたらこを解凍液に浸漬する時間は、1時間以上72時間以下である。冷凍されたたらこを解凍液に浸漬する時間が1時間以上であるから、たらこに食塩とカルシウム塩とが浸透し、粒感を向上させることが可能である。また、冷凍されたたらこを解凍液に浸漬する時間が72時間以下であるから、解凍時間を短くすることが可能となる。したがって、冷凍されたたらこを解凍液に浸漬する時間が1時間以上72時間以下であることは、製造時間を短縮する一方で、味付けたらこの粒感を向上可能とする。
タラを始めとする魚卵が有するトランスグルタミナーゼは、受精した魚卵の卵膜を硬化させることによって、卵の保護や精子の侵入を阻止する作用を有する。魚卵が産卵される海域の水温が10℃以下であり、10℃より高い海域に産卵された魚卵の生残率は急激に落ちる。このことから、通常、多くのトランスグルタミナーゼは、至適温度が40℃以上55℃以下であり、ある程度高い温度を好む一方で、魚卵が有するトランスグルタミナーゼは、至適温度が10℃以下であるとされる。また、卵膜の硬化は、カルシウムイオンが魚卵内に供給されることによって促進することが知られている。
味付けたらこの原料は、例えば、スケソウダラやマダラなどのタラの卵巣である。たらこは、例えば、早真子、真子、ガム子、水子、柔子など、いずれの状態であってもよい。なお、好ましくは、スケソウダラの真子である。
たらこは、通常、漁獲された直後にタラから卵巣を取り出される。取り出された卵巣は、漁船に備えられたブロック状の水槽に収容された後、冷凍される。そのため、冷凍されたたらこは、複数のたらこがブロック状に密集した状態で冷凍される。ブロック状に冷凍されたたらこは、半解凍されることによって、ブロック状から個々のたらこにほぐすことが可能である。そのため、たらこを半解凍することは、自然解凍により行われることが好ましい。たらこを自然解凍によって半解凍することは、ブロック状に冷凍されたたらこを解凍庫に並べることによって解凍可能であり、浸漬解凍、流水解凍、および、氷水解凍に比べ、簡便に解凍することが可能である。また、解凍に要するスペースを抑えることが可能である。
解凍液は、食塩とカルシウム塩とを含んだ水溶液である。解凍液中の食塩は、1.0質量%以上15質量%以下である。食塩は、例えば、海水塩、岩塩、添加物塩、及び、天日塩などであってもよい。解凍液における食塩の濃度が1.0質量%以上であるから、タンパク質が変性することで粒感が向上する。また、解凍液における食塩の濃度が15質量%以下であるから、粒に含まれる水分が解凍液に移ることが抑制されて粒に張りが出る。
解凍液に含まれるカルシウム塩は、解凍液が100gであるとき、カルシウムとして92×10-5mol以上34×10-3mol以下である。100gの解凍液にカルシウム塩がカルシウムとして92×10-5mol以上含まれるため、たらこが有するトランスグルタミナーゼの作用によって味付けたらこの卵膜が硬くなる。また、100gの解凍液にカルシウム塩がカルシウムとして34×10-3mol以下含まれるため、粒に十分な水分量が保持されて粒に張りが出る。
カルシウム塩は、例えば、有機カルシウム塩、無機カルシウム塩、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、焼成カルシウムからなる群より選ばれる1種または2種以上のカルシウム塩からなる混合物であり、好ましくは、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、および、焼成カルシウムである。解凍液に含まれるカルシウム塩は、たらこが有するトランスグルタミナーゼを活性化させ、卵膜を硬化させることで粒感を向上させる。
解凍液は、カリウム塩とナトリウム塩とを含んでもよい。カリウム塩は、無機カリウム塩や有機カリウム塩である。無機カリウム塩は、例えば、塩化カリウム、炭酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸カリウムであり、有機カリウム塩は、例えば、乳酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、酒石酸水素カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムである。
解凍液に含まれるカリウム塩は、解凍液100gに対しカリウムとして43×10-3mol以下である。解凍液にカリウム塩を添加することは、味付けたらこの粒感を向上させることに加えて、食塩をカリウム塩と置き換えること、あるいは、塩味を強くすることが可能である。解凍液100gに対し43×10-3mol以下含まれるカリウム塩は、カリウム塩の添加によって塩味を強くする一方で、カリウム塩特有の苦みが生じることを抑制可能である。
ナトリウム塩は、例えば、無機ナトリウムや有機ナトリウムである。無機ナトリウムは、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウムであり、有機酸ナトリウムは、例えば、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、DL-酒石酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、グルゴン酸ナトリウムである。なお、ナトリウム塩に塩化ナトリウムである食塩は含めない。
ナトリウム塩は、解凍液100gに対しナトリウムとして43×10-3mol以下である。ナトリウム塩を添加することによって、たらこの塩味を強くし、たらこの粒感を向上させる。解凍液にナトリウム塩を添加することは、味付けたらこの粒感を向上させることに加えて、食塩をナトリウム塩と置き換えること、あるいは、塩味を強くすることが可能である。ナトリウム塩が解凍液100gに対し43×10-3mol以下であるから、ナトリウム塩特有の苦みを抑えることが可能である。
解凍液の量は、冷凍されたたらこを浸漬させることができれば、特に限定されない。好ましくは、たらこ100gであるとき、100g以上である。たらこを解凍液に浸漬させることによって、たらこ全体が均一に解凍され、ムラのない解凍が可能となる。また、たらこは、一部外気に晒された状態で解凍液に浸漬されてもよいが、そのときは、冷凍されたたらこを解凍する途中において、たらこが解凍液に浸漬する部分と浸漬していない部分とをひっくり返す作業が含まれることが望ましい。
[トランスグルタミナーゼ処理]
トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、例えば、プラスチック製の密封された樽などの容器によって、トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることである。トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させる時間は、1時間以上48時間以下である。トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させる時間が1時間以上であるから、トランスグルタミナーゼがたらこに浸透して粒感を向上させることの実効性を高めることが可能である。また、トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させる時間が48時間以下であるから、浸漬時間を過度に長くすることを抑えることが可能となる。
トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、静置した状態において浸漬させてもよいが、例えば、回転機によって、容器ごと回転された状態で浸漬させることが望ましい。たらこをトランスグルタミナーゼ処理液に漬けこむ容器は、静置させて漬け込む場合は密封されていなくてもよい。また、トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、解凍後から塩蔵前の間であってもよいし、塩蔵後から調味前の間であってもよい。好ましくは、解凍後から塩蔵前の間である。解凍後から塩蔵前の間にトランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、塩蔵前のたらこに対してトランスグルタミナーゼ処理液の浸漬浸透を促すことが可能である。
トランスグルタミナーゼ処理液は、トランスグルタミナーゼが含まれる水溶液であり、食塩を含まない。トランスグルタミナーゼ処理液は、たらこ100gに対しトランスグルタミナーゼが1U以上1000U以下である。
トランスグルタミナーゼ処理液の水温は、10℃以上30℃以下に温度調整される。トランスグルタミナーゼ処理液の水温が10℃以上であるため、トランスグルタミナーゼの作用が活性化され、卵膜が硬くなる。また、トランスグルタミナーゼ処理液の水温が30度℃以下であるため、たらこのタンパク質が変性することを抑え、粒に十分な水分量が保持されて粒に張りが出る。
トランスグルタミナーゼ処理液の量は、解凍されたたらこを浸漬させることができれば、特に限定されない。好ましくは、たらこ100gであるとき、25g以上である。たらこを解凍液に浸漬させることによって、たらこ全体に均一に浸透し、食感の偏りを抑えることが可能となる。また、たらこは、一部外気に晒された状態でトランスグルタミナーゼ処理液に浸漬されてもよいが、そのときは、解凍されたたらこを解凍する途中において、たらこがトランスグルタミナーゼ処理液に浸漬する部分と浸漬していない部分とをひっくり返す作業が含まれることが望ましい。
トランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素であり、例えば、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のもの等、種々の起源のものが知られている。そのため、トランスグルタミナーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されないが、10℃以上30℃以下の水温下で活性化することが望ましい。また、組み換え酵素を使用してもよい。使用が容易であることと、安価に入手できる点から、好ましくは、カルシウム非依存である放線菌(Streptomyces属及びStreptoverticillium mobaraense)に由来するトランスグルタミナーゼである。
トランスグルタミナーゼの添加量は、以下の酵素活性測定方法により測定される酵素量として定義される。すなわち、温度37℃、pH6.0のトリス・バッファ溶液中、ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミルグリシン及びヒドロキシルアミンを基質とする反応系で、トランスグルタミナーゼの作用で生成するヒドロキシサム酸よりトリクロル酢酸の共存下で鉄錯体を生成させる。次いで、生成する鉄錯体の525nmにおける吸光度を測定し、ヒドロキサム酸量より検量線を作成し、1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成させた酵素量を、トランスグルタミナーゼの活性単位の1ユニット(U)とする。
トランスグルタミナーゼは、解凍液に添加してもよいし、塩蔵液や調味液に添加してもよい。トランスグルタミナーゼの添加量は、たらこ100gに対して、1U以上1000U以下である。トランスグルタミナーゼの添加量がたらこ100gに対して、1U以上であるから、トランスグルタミナーゼの作用によって味付けたらこの卵膜が硬くなる。また、トランスグルタミナーゼの添加量が、たらこ100gに対して、1000U以下であるから、トランスグルタミナーゼの使用量を過度に多くすることを抑えることが可能である。
トランスグルタミナーゼとたらことを接触させることは、味付けたらこの製造工程において、1回であってもよいし、トランスグルタミナーゼとたらこと接触させることを組み合わせることで複数回あってもよい。好ましくは、塩蔵前のたらこをトランスグルタミナーゼ処理液に浸漬させた後、トランスグルタミナーゼ処理液に食塩等を添加することで、解凍されたたらこを塩蔵することである。
[塩蔵]
解凍されたたらこを塩蔵することは、食塩を含む塩蔵液に解凍されたたらこを漬けこむことである。塩蔵液は、食塩が含まれている水溶液であり、塩蔵液に含まれる食塩の濃度は、塩蔵液100gであるとき、4.0質量%以上20質量%以下である。塩蔵液は、添加物を含んでもよく、例えば、酸化防止剤、着色料、発色料、調味料などである。酸化防止剤は、例えば、L-アスコルビン酸であり、発色料は、例えば、亜硝酸ナトリウムである。調味料は、例えば、ソルビトールや、グルタミン酸ナトリウムである。また、塩蔵液は、トランスグルタミナーゼが添加されてもよいし、トランスグルタミナーゼ処理液に食塩及び添加物を添加することによって、作成されてもよい。
解凍されたたらこを塩蔵することは、例えば、プラスチック製の密封された樽などの容器によって塩蔵液に漬けこまれる。解凍されたたらこを塩蔵液に浸漬させる時間は、3時間以上48時間以下である。塩蔵液の水温は、15℃以上25℃以下に温度調整される。塩蔵液に浸漬されたたらこは、静置した状態で漬け込まれてもよいが、例えば、回転機によって、容器ごと回転されることが望ましい。塩蔵液に浸漬されたたらこを浸漬された容器ごと回転することによって、たらこの個体間における漬け込み具合のばらつきを抑えることができ、品質を均一化することが可能である。
[調味]
解凍されたたらこを調味液に浸漬させることは、解凍されたたらこを塩蔵液に浸漬させた後に行われる。調味液は、粉末唐辛子又はそのエキス、酒類、調味料、水等を含んでもよい。酒類は、例えば、料理酒である。調味料は、例えば、みりん、醤油、酵母エキス、有機酸塩、核酸、ソルビトール、有機酸であり、有機塩は、例えば、グルタミン酸ナトリウムである。調味液の量は、例えば、たらこ100gであるとき、100g以上である。また、調味液の水温は、例えば、0℃以上30℃以下である。たらこを調味液に浸漬させる時間は、例えば、1日以上7日以下である。なお、解凍されたたらこを調味液に浸漬させることを行わなくてもよい。塩蔵液に浸漬されたたらこは、塩たらこであり、調味工程を行わなくてもよい。
[洗浄・液切り]
解凍液、トランスグルタミナーゼ処理液、塩蔵液及び調味液に浸漬されたたらこは、洗浄及び液切りが行われてもよい。洗浄は、洗浄液をたらこにかけ流すことであり、たらこに付着した汚れと、たらこを浸漬した液体とを洗い流すことである。例えば、洗浄液は、食塩水など、任意の水溶液であってもよく、水であってもよい。液切りは、例えば、コンテナやザルなどの底に穴が開いた容器にたらこを並べ、温度管理された解凍庫内において静置することである。液切りは、たらこを浸漬した液体が水切りできればよく、例えば、2時間以上である。
本実施形態の味付けたらこの製造方法は、上述した工程以外に、整形工程、包装工程等を更に備えていてもよい。
[実施例]
以下、表1~表4を参照して実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[試験項目1:解凍条件]
冷凍されたたらこの解凍条件が、味付けたらこである明太子の味と食感とに与える影響を評価した試験を以下に説明する。なお、乳酸カルシウムを塩蔵時に添加した比較例12~17は、解凍時の乳酸カルシウム添加と塩蔵時の乳酸カルシウム添加とにおいて比較する例である。
明太子は、次の手順で作成された。スケソウダラから採取した、真子であるロシア産の冷凍されたたらこを400g使用し、各比較例及び各実施例における解凍条件によって解凍した。解凍されたたらこを、洗浄及び液切りを行った後に、塩蔵液に浸漬させた。塩蔵液に浸漬したたらこを、洗浄及び液切りを行った後に、調味液に浸漬させ、調味液からたらこを引き上げた後に、洗浄及び液切りを行うことで、明太子を得た。なお、解凍液、塩蔵液及び調味液に添加した食塩は、精製塩である。
以下、明太子の作成手順を詳しく説明する。
冷凍されたたらこを解凍することは、第1解凍と第2解凍とに分けられる。第1解凍は、たらこの解凍を開始してから半解凍されたたらこになるまでの解凍時間であり、第2解凍は、半解凍されたたらこから解凍完了されたたらこになるまでの解凍時間である。第1解凍は、たらこの中心温度が2℃になるまで解凍を行った。第2解凍は、水温または雰囲気温度による温度上昇がなく、たらこの表面温度と中心温度との差が1℃以下となるまで解凍を行った。また、第2解凍の後に、たらこの中心温度を測定し、解凍完了時のたらこの中心温度とした。たらこの中心温度の測定は、差し込み型金属温度計(安立計器(株) THERMO PRINTER AP-210 (TYPE E))を差し込むことで行った。たらこの中心温度は、たらこの断面における輪郭線が外接した円の中心位置付近において測定されるたらこの温度である。
解凍方法は、第1解凍と第2解凍とそれぞれにおいて、解凍手段と解凍温度とを選択することで定められる。解凍手段は、自然解凍および浸漬解凍のいずれか一方であり、解凍温度は、室温と冷蔵とのいずれか一方である。自然解凍は、冷凍されたたらこを静置した状態で解凍されることである。他方、浸漬解凍は、冷凍されたたらこを金属製のボウルにおいて400gの水を含む解凍液に浸漬させ、静置した状態で解凍することである。また、室温は、雰囲気温度20℃、もしくは、水温20℃に温度調整されることであり、冷蔵は、解凍庫(ホシザキ(株) ホシザキ業務用冷凍冷蔵庫 HRF-75XT)内において、雰囲気温度10℃に温度管理されることである。
解凍されたたらこを濃度3%の食塩水で洗浄し、温度が5℃に保たれた解凍庫(ホシザキ(株) ホシザキ業務用冷蔵庫 HR-75X)内において、たらこをザルに乗せた状態で、3時間静置させることによって液切りを行った。
洗浄及び液切りを終えたたらこを、金属ボウルにおいて、静置した状態で、塩蔵液に6時間浸漬した。塩蔵液の水温は、20℃になるよう温度調整した。塩蔵液は、食塩56g、グルタミン酸ナトリウム3.2g、ソルビトール0.8g、亜硝酸ナトリウム0.008g、水340gからなる。
塩蔵液に浸漬させたたらこを濃度1.5%の食塩水で洗浄し、温度が5℃に保たれた解凍庫(ホシザキ(株) ホシザキ業務用冷蔵庫 HR-75X)内において、たらこをザルに乗せた状態で、2時間静置させることによって液切りを行った。
洗浄及び液切りを終えたたらこを、金属ボウルにおいて、静置した状態で、調味液400gに48時間浸漬した。調味液の水温は、5℃になるよう温度調整した。調味液は、みりん9%、グルタミン酸ナトリウム4.1%、日本酒3%、醤油2.5%、タンパク質加水物2.1%、唐辛子0.9%からなる。調味液に浸漬し終えたたらこを温度が5℃に保たれた解凍庫(ホシザキ(株) ホシザキ業務用冷蔵庫 HR-75X)内において、ザルに乗せた状態で、6時間静置させることによって液切りを行った。液切りを終えたたらこを、辛子明太子として得た。
[各比較例及び実施例における解凍方法]
表1を参照して、各比較例及び実施例の解凍方法、解凍液100gに対する食塩の添加量、塩蔵液100gに対する乳酸カルシウムの添加量、および、解凍完了時のたらこの中心温度を説明する。
比較例1の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、自然解凍であり、室温において解凍を行う。解凍液中の食塩は、0.0gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、20℃である。
比較例2の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、0.0gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例3の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、1.0gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例4の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、2.5gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例5の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例6の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、10gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例7の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、15gである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例8の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、2.3×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例9の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、2.3×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例10の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、室温において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、20℃である。
比較例11の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、室温において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、室温において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、20℃である。
比較例12の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを2.3×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例13の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを9.2×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例14の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを34×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例15の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを45×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例16の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを230×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例17の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gである。また、塩蔵時において、乳酸カルシウムを460×10-4mol添加する。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例18の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、460×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
比較例19の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、460×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例1の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、9.2×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例2の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例3の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、45×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例4の味付けたらこの製造方法において、第1解凍及び第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、230×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例5の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、9.2×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例6の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例7の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、45×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
実施例8の味付けたらこの製造方法において、第1解凍は、自然解凍であり、冷蔵において解凍を行う。また、第2解凍は、浸漬解凍であり、冷蔵において解凍を行う。解凍液中の食塩は、5.0gであり、乳酸カルシウムは、230×10-4molである。第2解凍直後のたらこの中心温度は、10℃である。
[官能評価]
上記の手順により得られた辛子明太子に関して、味及び食感について評価した結果を表1に示す。味として、塩味と苦味とを評価し、食感として、粒の張り、粒の硬さ、および、張りと硬さとからなる粒感を評価した。味及び食感の評価は、5名のパネリストによる官能評価で行われ、比較例1における評価を「1」とし、これを基準として、食感を8段階で評価した。
辛子明太子の塩味を以下の基準で評価した。
1:薄味
2:適塩
3:強い塩味
4:不適切
辛子明太子の苦みを以下の基準で評価した。
1:苦味を全く感じない
2:僅かに苦味を感じる
3:苦味を感じる
塩味及び苦味の各項目において、5名のパネリスト付けた点数の平均値が、塩味では4点以上、苦味では3点以上である明太子は、商品として適した味を有しないものとして判断した。また、粒の張り、粒の硬さ、および、粒感の各項目において、5名のパネリスト付けた点数の平均値が4点以下である明太子は、商品として適した食感を有しないものとして判断した。
[評価結果]
表1を参照して、比較例及び実施例における評価結果を説明する。
表1が示すように、実施例1~8では、明太子の塩味が適塩であることが認められた。一方で、比較例1~19の各々では、明太子の塩味が、商品として適切な範囲内に含まれる味であることが認められた。比較例7では、最も明太子の塩味が強く、強い塩味であることが認められた。比較例1~3では、明太子の塩味が最も弱く、薄味であることが認められた。
すなわち、解凍液に含まれる食塩の量が多いほど、明太子の塩味は強くなる一方、解凍液に含まれる食塩の量が少ないほど、明太子の塩味は弱くなる。
実施例1~8では、苦味が最も薄く、苦味が全く感じないことが認められた。一方で、比較例1~19の各々では、明太子の苦みが、商品として適切な範囲内に含まれる味であることが認められた。比較例17~19では、明太子に苦味が最も強く、僅かに苦味を感じることが認められた。比較例1~16では、明太子の苦みが最も薄く、苦味を全く感じないことが認められた。
すなわち、解凍液及び塩蔵液に含まれる乳酸カルシウムの量が多いほど、明太子の苦味が強くなる。
実施例2~4,6~8では、明太子の粒の張りが最も強いことが認められた。実施例1,5において、明太子の粒の張りが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例1,5において、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例1~19の各々では、明太子の粒の張りが、商品として適しない程度に弱いことが認められた。
すなわち、乳酸カルシウムを塩蔵液に添加することと比べ、解凍液に添加することは、明太子の粒の張りが強くなる。また、解凍液の温度が室温より低温であることは、明太子の粒の張りが強くなる。明太子の粒の張りの強さは、解凍液100gに対し乳酸カルシウムの量が34×10-4以上230×10-4以下をピークとする。
実施例2~4,6~8では、明太子の粒の硬さが最も強いことが認められた。実施例1,5において、明太子の粒の硬さが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例1,5において、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例1~17の各々では、明太子に粒の硬さが、商品として適しない程度に弱いことが認められた。比較例18,19の各々では、明太子の粒の硬さが、商品として適切な範囲内に含まれる硬さであることが認められた。
すなわち、乳酸カルシウムを塩蔵液に添加することと比べ、解凍液に添加することは、明太子の粒の硬さを強くする。また、解凍液の温度が室温より低温であることは、明太子の粒の硬さを強くする。明太子の粒の硬さは、解凍液に含まれる乳酸カルシウムの量が多いほど、強くなる。
実施例2~4,6~8では、明太子の粒感が最も強いことが認められた。実施例1,5では、明太子の粒感が最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例1,5では、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例1~17の各々では、明太子の粒感が商品として適さないことが認められた。比較例18,19の各々では、明太子の粒感が、商品として適切な範囲内に含まれる粒感であることが認められた。
すなわち、乳酸カルシウムを塩蔵液に添加することと比べ、解凍液に添加することは、明太子の粒感が強くなる。また、解凍液の温度が室温より低温であることは、明太子の粒感が強くなる。明太子の粒感は、解凍液100gに対して、乳酸カルシウムの量が34×10-4mol以上230×10-4mol以下をピークとする。
[試験項目2:塩化カルシウム及び塩化カリウム]
解凍液に含まれる食塩と、乳酸カルシウム、もしくは、塩化カルシウムと、塩化カリウムとが、味付けたらこである明太子の味と食感に与える影響を評価した試験を以下に説明する。
明太子は、次の手順で作成された。試験項目1の各例と同様に、真子であるロシア産の冷凍されたたらこを400g使用した。試験項目2の各例では、第1解凍及び第2解凍において、浸漬解凍及び冷蔵条件によって解凍した。解凍以降の工程は、試験項目1の各例と同様の工程によって、明太子を得た。
[各比較例及び実施例における解凍液の組成]
表2を参照して、各比較例及び実施例の解凍液100gに対する食塩、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムの添加量を説明する。
比較例20は、解凍液中の食塩が、0.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
比較例21は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、塩化カルシウムは、2.3×10-4molである。
比較例22は、解凍液中の食塩が、0.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molであり、塩化カリウムは、86×10-3molである。
比較例23は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、塩化カルシウムは、460×10-4molである。
比較例24は、解凍液中の食塩が、0.0gであり、塩化カルシウムは、34×10-4molであり、塩化カリウムは、86×10-3molである。
実施例9は、解凍液中の食塩が、1.0gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
実施例10は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
実施例11は、解凍液中の食塩が、7.5gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
実施例12は、解凍液中の食塩が、10gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
実施例13は、解凍液中の食塩が、15gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molである。
実施例14は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、乳酸カルシウムは、34×10-4molであり、塩化カリウムは、43×10-3molである。
実施例15は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、塩化カルシウムは、9.2×10-4molである。
実施例16は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、塩化カルシウムは、34×10-4molである。
実施例17は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、塩化カルシウムは、230×10-4molである。
実施例18は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、塩化カルシウムは、34×10-4molであり、塩化カリウムは、43×10-3molである。
[評価結果]
表2を参照して、比較例及び実施例における評価結果を説明する。
表2に示すように、実施例10~12,14~18では、明太子の塩味が適塩であることが認められた。実施例9では、塩味が最も薄く、薄味であることが認められた。実施例13では、塩味が最も強く、強い塩味であることが認められた。一方で、比較例20~24の各々では、明太子の塩味が、商品として適切な範囲内に含まれる味であることが認められた。すなわち、解凍液に含まれる食塩の量が多いほど、明太子の塩味が強くなる。
実施例9~13,15~18では、苦味が最も薄く、苦味が全く感じないことが認められた。実施例14では、苦味が最も強く、苦味を感じると認められた。一方で、比較例22,24では、明太子の苦みが商品として適さないことが認められた。比較例20~21,23の各々では、明太子の苦みが、商品として適切な範囲内に含まれる味であることが認められた。すなわち、解凍液に含まれる塩化カルシウム、もしくは、塩化カリウムの量が多いほど、明太子の苦みが強くなる。
実施例11~12,14,16~18では、粒の張りが最も強いことが認められた。実施例9~10,13,15では、粒の張りが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例9~10,13,15では、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例20~21,23の各々では、明太子に粒の張りが、商品として適しない程度に弱いことが認められた。比較例22,24では、明太子の張りが、商品として適切な範囲内に含まれる張りであることが認められた。
すなわち、明太子の粒の張りは、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であり、乳酸カルシウムの量が34×10-4molであるとき、もしくは、食塩の量が5.0gであり、塩化カルシウムの量が34×10-4mol以上23×10-3mol以下であるときをピークとする。また、食塩0gに対して塩化カリウム86×10-3molもしくは食塩2.5gに対して塩化カリウム43×10-3mol添加することによって、食塩5.0g添加した際と同等の粒の張りを得ることが可能となる。
実施例11~12,14,16~18では、粒の硬さが最も強いことが認められた。実施例9~10,13,15では、粒の硬さが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例9~10,13,15では、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例20~21の各々では、明太子に粒の硬さが、商品として適しない程度に弱いことが認められた。比較例22~24では、明太子の硬さが、商品として適切な範囲内に含まれる硬さであることが認められた。
すなわち、明太子の粒の硬さは、食塩の量に依存し、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であるときをピークとする。また、食塩0gに対して塩化カリウム86×10-3molもしくは食塩2.5gに対して塩化カリウム43×10-3mol添加することによって、食塩5.0g添加した際と同等の粒の硬さを得ることが可能となる。
実施例11~12,14,16~18では、粒感が最も強いことが認められた。実施例9~10,13,15では、粒感が最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例9~10,13,15では、点数が5点以上であることが認められた。一方、比較例20,21の各々では、明太子に粒感が、商品として適しない程度に弱いことが認められた。比較例22~24では、明太子の粒感が、商品として適切な範囲内に含まれる粒感であることが認められた。
すなわち、明太子の粒の粒感は、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であり、乳酸カルシウムの量が34×10-4molであるとき、もしくは、食塩の量が5.0gであり、塩化カルシウムの量が34×10-4mol以上230×10-4mol以下であるときをピークとする。また、食塩0gに対して塩化カリウム86×10-3molもしくは食塩2.5gに対して塩化カリウム43×10-3mol添加することによって、食塩5.0g添加した際と同等の粒の粒感を得ることが可能となる。
[試験項目3:各種塩]
表3を参照して、各比較例及び実施例の解凍液100gに対する食塩の添加量と、解凍液100gに対し添加したカルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩の種類及び添加量とを説明する。
明太子は、次の手順で作成された。試験項目1の各例と同様に、真子であるロシア産の冷凍されたたらこを400g使用した。解凍条件は、試験項目2の各例と同様の条件で行った。解凍以降の工程は、試験項目1の各例と同様の工程によって、明太子を得た。
[各比較例及び実施例における解凍液の組成]
表3に示すように、実施例19は、解凍液100gに対し食塩が、5.0gであり、解凍液中には、焼成カルシウムが、34×10-4mol含まれる。
実施例20は、解凍液100gに対し、食塩が、5.0gであり、解凍液中には、クエン酸カルシウムがカルシウムとして、9.2×10-4mol含まれる。
実施例21は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、解凍液中には、乳酸カルシウムが、34×10-4mol含まれ、炭酸カリウムがカリウムとして、1.1×10-3mol含まれる。
実施例22は、解凍液100gに対し、食塩は、5.0gであり、解凍液中には、塩化カルシウムが、34×10-4mol含まれ、リン酸水素二カリウムがカリウムとして、1.1×10-3mol含まれる。
実施例23は、解凍液100gに対し、食塩が、5.0gであり、解凍液中には、塩化カルシウムが、34×10-4mol含まれ、乳酸カリウムが1.1×10-3mol含まれる。
実施例24は、解凍液100gに対し、食塩が、2.5gであり、解凍液中には、乳酸カルシウムが、34×10-4mol含まれ、リンゴ酸ナトリウムがナトリウムとして、43×10-3mol含まれる。
実施例25は、解凍液100gに対し、食塩が、2.5gであり、解凍液中には、乳酸カルシウムが、34×10-4mol含まれ、乳酸ナトリウムが43×10-3mol含まれる。
実施例26は、解凍液100gに対し、食塩が、2.5gであり、解凍液中には、乳酸カルシウムが、34×10-4mol含まれ、クエン酸三ナトリウムがナトリウムとして、43×10-3mol含まれる。
[評価結果]
表3を参照して、比較例及び実施例における評価結果を説明する。
表3に示すように、実施例19~23では、明太子の塩味が最も強く、適塩であることが認められた。実施例24~26では、明太子の塩味が最も弱く、薄味であることが認められた。
すなわち、焼成カルシウムは、乳酸カルシウムと塩化カルシウムと同様の強さの塩味を明太子に与えることが認められた。そのため、これらの焼成カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム及びクエン酸カルシウムにおける種類の違いは、塩味に大きな影響を与えない。また、カリウム塩は、添加することにより、塩味を強くすることが可能であり、ナトリウム塩は、食塩と置き換えることが可能である。
実施例19~26では、明太子の苦みが、全く感じないことが認められた。すなわち、3.4×10-3molの乳酸カルシウムまたは塩化カルシウムと、カリウムとして1.1×10-3molのカリウム塩、またはナトリウムとして43×10-3molのナトリウム塩とを解凍液に添加した場合、苦味を全く感じない。
実施例21~26では、明太子の張りが最も強いことが認められた。また、実施例19~20では、明太子の張りが最も低いことが認められた。しかしながら、実施例19~20では、点数が5点以上であることが認められた。
すなわち、カルシウム塩に加え、カリウム塩を解凍液に添加することによって、明太子の粒の張りが強くなり、カリウム塩は、塩化カリウムに限定されないことが認められた。また、ナトリウム塩においても、カルシウム塩に加えて解凍液に添加することによって、明太子の粒の張りを強くすることが認められた。
実施例21~26では、明太子の硬さが最も強いことが認められた。また、実施例19~20では、明太子の硬さが最も低いことが認められた。しかしながら、実施例19~20では、点数が5点以上であることが認められた。
すなわち、カルシウム塩に加え、カリウム塩を解凍液に添加することによって、明太子の粒の硬さが強くなり、カリウム塩は、塩化カリウムに限定されないことが認められた。また、ナトリウム塩においても、カルシウム塩に加えて解凍液に添加することによって、明太子の粒の硬さを強くすることが認められた。
実施例21~26では、明太子の粒感が最も強いことが認められた。また、実施例19~20では、明太子の粒感が最も低いことが認められた。しかしながら、実施例19~20では、点数が5点以上であることが認められた。
すなわち、カルシウム塩に加え、カリウム塩を解凍液に添加することによって、明太子の粒の粒感が強くなり、カリウム塩は、塩化カリウムに限定されないことが認められた。また、ナトリウム塩においても、カルシウム塩に加えて解凍液に添加することによって、明太子の粒の粒感を強くすることが認められた。
[試験項目4:トランスグルタミナーゼ]
表4を参照して、解凍液100gに対する食塩の量と、トランスグルタミナーゼを添加する液とトランスグルタミナーゼの添加量とが、味付けたらこである明太子の味と食感とに与える影響を評価した試験を以下に説明する。
明太子は、次の手順で作成された。試験項目1の各例と同様に、真子であるロシア産の冷凍されたたらこを400g使用した。解凍条件は、試験項目2の各例と同様の条件で行った。解凍以降の工程は、試験項目1の各例と同様の工程によって、明太子を得た。
トランスグルタミナーゼ水溶液は、放線菌ストレプトベルチシリウム(Streptoverticillium mobaraense)由来のトランスグルタミナーゼ及び水100gからなる水溶液である。トランスグルタミナーゼ水溶液に解凍されたたらこを浸漬させることは、解凍されたたらこを塩蔵する前に水温20℃において、4時間浸漬させることである。
[各比較例及び実施例におけるトランスグルタミナーゼが添加される液と添加量]
表4を参照して、各比較例及び実施例の解凍液100gに対する食塩の添加量と、トランスグルタミナーゼを添加する液とトランスグルタミナーゼの添加量とを説明する。表4において、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼの略称であるTGと一部表記されている。
表4に示すように、実施例27は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、解凍液に50U添加される。
実施例28は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、塩蔵液に50U添加される。
実施例29は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に1U添加される。
実施例30は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に10U添加される。
実施例31は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
実施例32は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に100U添加される。
実施例33は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に500U添加される。
実施例34は、解凍液中の食塩が、2.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に1000U添加される。
実施例35は、解凍液中の食塩が、1.0gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
実施例36は、解凍液中の食塩が、5.0gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
実施例37は、解凍液中の食塩が、7.5gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
実施例38は、解凍液中の食塩が、10gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
実施例39は、解凍液中の食塩が、15gであり、トランスグルタミナーゼは、トランスグルタミナーゼ水溶液に50U添加される。
[評価結果]
表4を参照して、比較例及び実施例の評価結果を説明する。
表4に示すように、実施例39では、明太子の塩味が最も強く、強い塩味であることが認められた。実施例35では、明太子の塩味が最も弱く、薄味であることが認められた。すなわち、食塩の量によって、明太子の塩味が強くなる。
実施例27~39では、明太子の苦味が全く感じないことが認められた。すなわち、食塩とトランスグルタミナーゼとを解凍液に添加することは、明太子の苦みには関与しない。
実施例32~34,36~38では、明太子の粒の張りが最も強いことが認められた。実施例27~30では、明太子の粒の張りが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例27~30では、点数が5点以上であることが認められた。すなわち、粒の張りは、解凍液100gに対する食塩及びトランスグルタミナーゼの添加量に依存し、トランスグルタミナーゼ水溶液中のトランスグルタミナーゼが多いほど、明太子の粒の張りが強くなることが認められた。また、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であるときが、明太子の粒の張りのピークであることが認められた。
実施例32~34,36~38では、明太子の粒の硬さが最も強いことが認められた。実施例27~30では、明太子の粒の硬さが最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例27~30では、点数が5点以上であることが認められた。すなわち、粒の硬さは、解凍液100gに対する食塩及びトランスグルタミナーゼの添加量に依存し、トランスグルタミナーゼ水溶液中のトランスグルタミナーゼが多いほど、明太子の粒の硬さが強くなることが認められた。また、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であるときが、明太子の粒の硬さのピークであることが認められた。
実施例32~34,36~38では、明太子の粒感が最も強いことが認められた。実施例27~30では、明太子の粒感が最も弱いことが認められた。しかしながら、実施例27~30では、点数が5点以上であることが認められた。すなわち、粒感は、解凍液100gに対する食塩及びトランスグルタミナーゼの添加量に依存し、トランスグルタミナーゼ水溶液中のトランスグルタミナーゼが多いほど、明太子の粒感が強くなることが認められた。また、解凍液100gに対する食塩の量が5.0g以上10g以下であるときが、明太子の粒感のピークであることが認められた。
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)食塩とカルシウム塩とを含んだ水溶液である解凍液での浸漬を用いて冷凍されたたらこを解凍することは、塩蔵液にカルシウム塩を含む水溶液に漬け込むときと比べて粒感の向上が可能となる。また、たらこの中心温度が10℃以下に温度調整させることによって、たらこが有するトランスグルタミナーゼを活性化し、味付けたらこの卵膜を硬化させることを可能とする。したがって、たらこの中心温度が10℃以下となるよう温度調整された解凍液に浸漬させることで、冷凍されたたらこを解凍することは、粒中の水分量と卵膜の硬さとを確保すること、すなわち、粒の張り及び粒の硬さの両方を確保することが可能となる。
(2)解凍液は、1.0質量%以上15質量%以下の食塩と解凍液100gに対しカルシウムとして92×10-5mol以上34×10-3mol以下のカルシウム塩とを含んだ水溶液であることは、粒中の水分量と卵膜の硬さとを確保すること、すなわち、粒の張り及び粒の硬さの両方を確保することが可能となる。食塩が解凍液に対し1.0質量%以上であるから、タンパク質変性によって味付けたらこの粒感が向上し、15質量%以下であるから、食塩に吸水されることを抑えることで、味付けたらこ内に十分な水分量が保持され、味付けたらこの粒に張りが出る。また、カルシウム塩がカルシウムとして解凍液100gに対し92×10-5mol以上であるから、たらこが有するトランスグルタミナーゼの作用によって味付けたらこの粒が硬くなり、34×10-3mol以下であるから、たらこ内に十分な水分量が保持されることで、味付けたらこの粒に張りが出る。
(3)解凍液にカリウム塩とナトリウム塩との少なくとも一方を含んだ解凍液は、味付けたらこの粒感が向上する一方で、味付けたらこの塩味を高めることが可能である。したがって、カリウム塩とナトリウム塩とは、味付けたらこの粒感を向上させることに加えて、食塩をカリウム塩またはナトリウム塩と置き換えること、あるいは、食塩に加えて更にカリウム塩またはナトリウム塩を添加することによって、塩味を強くすることが可能である。
(4)解凍液にトランスグルタミナーゼを添加することは、トランスグルタミナーゼによって卵膜を硬化させることによって、粒感を向上させることを可能とする。
(5)トランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、塩蔵する前にトランスグルタミナーゼ処理液にたらこを浸漬させるから、トランスグルタミナーゼがたらこに浸透して粒感を向上させることの実効性を高めることが可能である。
(6)たらこ100gに対し1U以上1000U以下のトランスグルタミナーゼを含み、10℃以上30℃以下のトランスグルタミナーゼ処理液に解凍されたたらこを浸漬させることは、トランスグルタミナーゼがたらこ100gに対し1U以上であるから、トランスグルタミナーゼの作用によって、卵膜を硬くできる。また、トランスグルタミナーゼがたらこ100gに対し1000U以下であるから、トランスグルタミナーゼの使用量を抑えることが可能となる。また、トランスグルタミナーゼ処理液の水温が10℃以上であるから、トランスグルタミナーゼが活性化し、味付けたらこの粒感の向上が可能となる。トランスグルタミナーゼ処理液の水温が30℃以下であるから、味付けたらこのタンパク質の変性によって、粒感が損なわれることを抑制可能となる。トランスグルタミナーゼを活性化させる温度、および、トランスグルタミナーゼの効果に要する時間によって、トランスグルタミナーゼ処理を行うことで、味付けたらこの卵膜を硬くすることが可能となる。
(7)たらこを塩蔵液に浸漬する前に、トランスグルタミナーゼ処理液にたらこを浸漬させた後にトランスグルタミナーゼ処理液に食塩を添加することは、トランスグルタミナーゼ処理液を排水する手間及び塩蔵液に解凍されたたらこを漬けこむ手間を減らすことが可能である。そのため、味付けたらこの製造を簡易化するとともに、製造時間の短縮を可能とする。

Claims (10)

  1. 解凍液での浸漬を用いて冷凍されたたらこを解凍すること、および、
    解凍後の前記たらこを塩蔵液に浸漬すること、を含み、
    前記解凍液は、前記解凍液に対し1.0質量%以上15質量%以下の食塩と、前記解凍液100gに対しカルシウムとして92×10-5mol以上34×10-3mol以下のカルシウム塩と、を含み、
    前記カルシウム塩は、有機カルシウム塩、無機カルシウム塩、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、焼成カルシウム、からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物であり、
    前記たらこの解凍完了時における前記たらこの中心温度が10℃以下となるように前記解凍液の温度を調整する
    味付けたらこの製造方法。
  2. 前記解凍液に前記たらこを浸漬させる時間は、1時間以上72時間以下である
    請求項1に記載の味付けたらこの製造方法。
  3. 前記冷凍されたたらこを解凍することは、前記たらこの中心温度が-2℃以上2℃以下となるまで前記冷凍されたたらこを半解凍した後に、前記半解凍された前記たらこを前記解凍液に浸漬する
    請求項1または2に記載の味付けたらこの製造方法。
  4. 前記解凍液は、
    無機カリウム塩、有機カリウム塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物からなるカリウム塩と、
    無機ナトリウム塩、有機ナトリウム塩からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物からなるナトリウム塩と、の少なくとも一方を含む
    請求項1~3のいずれか一項に記載の味付けたらこの製造方法。
  5. 前記解凍液は、前記解凍液100gに対しカリウムとして43×10-3mol以下の前記カリウム塩を含む
    請求項4に記載の味付けたらこの製造方法。
  6. 前記解凍液は、トランスグルタミナーゼを含む
    請求項1~5のいずれか一項に記載の味付けたらこの製造方法。
  7. トランスグルタミナーゼを含む水溶液であるトランスグルタミナーゼ処理液に、解凍された前記たらこを浸漬させること、および、
    前記トランスグルタミナーゼ処理液に浸漬された前記たらこを前記塩蔵液に浸漬させること、を含む
    請求項1~6のいずれか一項に記載の味付けたらこの製造方法。
  8. 前記トランスグルタミナーゼ処理液は、前記たらこ100gに対して1U以上1000U以下のトランスグルタミナーゼを含む
    請求項7に記載の味付けたらこの製造方法。
  9. 前記トランスグルタミナーゼ処理液の水温が、10℃以上30℃以下であり、
    前記トランスグルタミナーゼ処理液に前記たらこを浸漬させる時間が、1時間以上48時間以下である
    請求項7または8に記載の味付けたらこの製造方法。
  10. 前記たらこを前記塩蔵液に浸漬する前に、前記トランスグルタミナーゼ処理液に前記たらこを浸漬させた後に前記トランスグルタミナーゼ処理液に食塩を添加する
    請求項7~9のいずれか一項に記載の味付けたらこの製造方法。
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