本発明の一態様のブレーキ制御装置は、ブレーキ制御部によって自動ブレーキを制御して自車両を自動的に減速させている。このとき、ポンプモータによって自動ブレーキの液圧が増圧され、傾斜角度検出部によって走行路面の傾斜角度が検出されている。そして、ブレーキ制御部によって走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータのモータ回転速度が制御される。緩傾斜の走行路面ではブレーキ液圧が小さくなるようにポンプモータのモータ回転速度が制御される。緩傾斜の走行路面で自車両が減速される場合には、ポンプモータが過剰なモータ回転速度で駆動されることがないため、ポンプモータの駆動音を搭乗者に聞こえ難くして車室内の快適性を向上させることができる。また、ポンプモータの駆動に要する消費エネルギが削減される。
以下、本実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、ブレーキ制御装置の模式図である。以下の説明では、先行車両に対して車間距離を維持しながら追従走行する全車速追従機能付きACC(Adaptive Cruise Control)(以下、全車速ACC)を備えた車両にブレーキ制御装置を適用する構成について説明するが、この構成に限定されない。ブレーキ制御装置は、自動運転機能を備えた車両に適用されてもよい。なお、車両は、エンジン自動車に限らず、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車等の他の車両でもよい。
図1に示すように、ブレーキ制御装置10には、先行車両に対して車間距離を維持しながら、自動的に自車両の加速及び減速を制御するACCモジュール11が設けられている。ACCモジュール11には、駆動源としてのエンジン13と、先行車両を認識する前方認識部14と、自車両を自動的に減速させるための自動ブレーキを制御するブレーキ制御部12とが接続されている。ブレーキ制御部12には、前後輪の回転速度を検出する車輪速センサ15と、自車両の加速度を検出する加速度センサ16と、自車両が位置している走行路面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部18とが接続されている。
また、ブレーキ制御部12には、液圧制御ユニット17を介して前後輪の車輪ブレーキ23が接続されている。液圧制御ユニット17には、自車両の減速時にポンプを駆動させて自動ブレーキのブレーキ液圧を増圧するポンプモータ21と、バルブの開閉によってブレーキ液圧の増圧状態、減圧状態、保持状態を切り替える液圧回路22とが設けられている。ブレーキ制御部12によってポンプモータ21のモータ回転速度(モータ回転数)が調整され、液圧回路22のバルブの開閉が切り替えられることで、車輪ブレーキ23に作用するブレーキ液圧が制御されている。
ACCモジュール11は、前方認識部14の認識結果に基づいて先行車両と自車両の距離及び相対速度を測定してACCを実施している。ACCは、先行車両が認識されない場合に、エンジン13及びブレーキ制御部12を制御して自車両を目標車速で定速走行させる。また、ACCは、先行車両が認識されて先行車両に自車両が一定の車間距離まで近づいた場合に、エンジン13及びブレーキ制御部12を制御して先行車両との車間距離を維持するように先行車両に対して自車両を追従走行させる。なお、車間距離は、先行車両と自車両の車間時間(車間距離/車速)によって決定される。
ACCモジュール11は、全車速追従機能付きのACCを実施しており、先行車両の速度0[km/h]にも追従可能である。すなわち、先行車両の減速に追従して自動ブレーキによって自車両が減速されて、先行車両の停車に追従して自車両が停車される。走行路面が傾斜している場合には、自動ブレーキによって自車両を減速させるために必要なブレーキ液圧が走行路面の傾斜角度に応じて異なる。このため、走行路面が急傾斜になるほど、自動ブレーキのブレーキ液圧が上昇するように、ポンプモータ21のモータ回転速度を大きくしなければならない。
一方、走行路面が緩傾斜であれば、自車両の減速に必要な自動ブレーキのブレーキ液圧は小さくなり、ポンプモータ21のモータ回転速度を大きくする必要がない。そこで、本実施例では、ブレーキ制御部12が走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータ21のモータ回転速度を制御している。走行路面の傾斜角度に適したモータ回転速度でポンプモータ21が駆動されて、ポンプモータ21のモータ回転速度の過剰な上昇が抑えられてポンプモータ21の駆動音が低減される。ポンプモータ21の駆動音を搭乗者に聞こえ難くすることで車室内の快適性を向上させることができる
なお、上記のブレーキ制御装置10において、前方認識部14は、電波の放出によって先行車両を認識するミリ波レーダや、撮像画像によって先行車両を認識するステレオカメラ等によって構成されている。車輪ブレーキ23は、ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等の機械式ブレーキによって構成されている。傾斜角度検出部18は、例えば、傾斜角度センサ(不図示)又は加速度センサ16の検出信号に基づいて、水平面に対する走行路面の傾斜角度を検出する。ブレーキ制御部12は、例えば、横滑り防止装置として使用されるESP(登録商標、Electronic Stability Program)を含んで構成されている。
また、ACCモジュール11、ブレーキ制御部12、傾斜角度検出部18は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することで各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)が使用される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体によって構成されている。
以下、図2を参照して、ブレーキ制御装置の液圧回路について説明する。図2は、ブレーキ制御装置の液圧回路の回路図である。
図2に示すように、液圧回路22は、左前輪25FL及び右後輪25RRの車輪ブレーキ23FL、23RRを制御する第1の系統と、右前輪25FR及び左後輪25RLの車輪ブレーキ23FR、23RLを制御する第2の系統とを備えている。第1、第2の系統には、それぞれポンプモータ21によって駆動されるポンプ33、36が設けられている。ポンプ33、36の吸入側の液圧ラインL10、L20にはリザーバ34、37が接続され、ポンプ33、36の吐出側の液圧ラインL11、L21にはマスタシリンダ31が接続されている。マスタシリンダ31には、ブレーキブースタ32を介してフットブレーキ(ドライバブレーキ)35が接続されている。
第1の系統では、マスタシリンダ31とポンプ33を結ぶ液圧ラインL11が第1のバルブV1によって開閉され、マスタシリンダ31とリザーバ34を結ぶ液圧ラインL12が第2のバルブV2によって開閉される。ポンプ33の吐出側と第1のバルブV1の間は分岐し、分岐点P1と車輪ブレーキ23FLを結ぶ液圧ラインL13が第3のバルブV3によって開閉され、車輪ブレーキ23FLとリザーバ34を結ぶ液圧ラインL14が第4のバルブV4によって開閉される。分岐点P1と車輪ブレーキ23RRを結ぶ液圧ラインL15が第5のバルブV5によって開閉され、車輪ブレーキ23RRとリザーバ34を結ぶ液圧ラインL16が第6のバルブV6によって開閉される。
液圧ラインL11には第1のバルブV1を迂回するバイパスラインL17が接続され、バイパスラインL17には第1のチェックバルブCV1が設けられている。液圧ラインL13には第3のバルブV3を迂回するバイパスラインL18が接続され、バイパスラインL18には第2のチェックバルブCV2が設けられている。液圧ラインL15には第5のバルブV5を迂回するバイパスラインL19が接続され、バイパスラインL19には第3のチェックバルブCV3が設けられている。また、第1の系統には、マスタシリンダ31の液圧を検出する液圧センサ39が接続されている。
同様に、第2の系統では、マスタシリンダ31とポンプ36を結ぶ液圧ラインL21が第7のバルブV7によって開閉され、マスタシリンダ31とリザーバ37を結ぶ液圧ラインL22が第8のバルブV8によって開閉される。ポンプ36の吐出側と第7のバルブV7の間は分岐し、分岐点P2と車輪ブレーキ23FRを結ぶ液圧ラインL23が第9のバルブV9によって開閉され、車輪ブレーキ23FRとリザーバ37を結ぶ液圧ラインL24が第10のバルブV10によって開閉される。分岐点P2と車輪ブレーキ23RLを結ぶ液圧ラインL25が第11のバルブV11によって開閉され、車輪ブレーキ23RLとリザーバ37を結ぶ液圧ラインL26が第12のバルブV12によって開閉される。
液圧ラインL21には第7のバルブV7を迂回するバイパスラインL27が接続され、バイパスラインL27には第4のチェックバルブCV4が設けられている。液圧ラインL23には第9のバルブV9を迂回するバイパスラインL28が接続され、バイパスラインL28には第5のチェックバルブCV5が設けられている。液圧ラインL25には第11のバルブV11を迂回するバイパスラインL29が接続され、バイパスラインL29には第6のチェックバルブCV6が設けられている。なお、第1-第12のバルブV1-V12は、例えばソレノイドバルブによって構成されている。
このように構成された液圧回路22では、全車速ACCによる自動ブレーキの増圧時にはポンプモータ21が駆動することでブレーキ液圧が増圧される。このとき、第1の系統ではバルブV1、V4、V6が閉弁され、バルブV2、V3、V5が開弁されている。第2の系統ではバルブV7、V10、V12が閉弁され、バルブV8、V9、V11が開弁されている。ポンプ33、36から車輪ブレーキ23FL、23RR、23FR、23RLにブレーキ液が供給されて、前輪25FL、25FR及び後輪25RL、25RRにブレーキ力が作用して車両が減速される。
また、ブレーキ液圧が目標圧まで増圧されると、第1の系統ではバルブV3、V5が閉弁され、第2の系統ではバルブV9、V11が閉弁される。バルブの閉弁に伴ってポンプモータ21が停止され、車輪ブレーキ23FL、23RR、23FR、23RLに作用するブレーキ液圧が保持される。なお、ブレーキ液圧の減圧時には、第1の系統のバルブV4、V6が開弁されて、車輪ブレーキ23FL、23RRからリザーバ34にブレーキ液が排出される。また、第2の系統のバルブV10、V12が開弁されて、車輪ブレーキ23FR、23RLからリザーバ37にブレーキ液が排出される。
自動ブレーキ中にドライバによってフットブレーキ35が踏み込まれると、自動ブレーキから手動ブレーキに切り替えられて、マスタシリンダ31に所定のブレーキ液圧が発生する。このとき、第1の系統ではバルブV1、V3、V5が開弁され、バルブV2、V4、V6が閉弁されている。第2の系統ではバルブV7、V9、V11が開弁され、バルブV8、V10、V12が閉弁されている。マスタシリンダ31から液圧回路22を通じて車輪ブレーキ23FL、23RR、23FR、23RLにブレーキ液が供給されて、前輪25FL、25FR及び後輪25RL、25RRにブレーキ力が作用する。
図3を参照して、車両停車時のタイムチャートについて説明する。図3は、車両停車時のタイムチャートの一例である。図4は、傾斜角度とモータ回転速度の関係を示すグラフである。なお、ここでは、図1及び図2の符号を適宜使用して説明する。
図3に示すように、時刻t1で先行車両の減速が認識されて、ACCモジュール11によって自動ブレーキが作動される。このとき、ACCモジュール11によって前方認識部14の認識結果に基づいて停車判定が実施され、先行車両が停車直前であると判定されたタイミングでポンプモータ21の駆動が開始される。ポンプモータ21のモータ回転速度の増加に伴ってブレーキ液圧が増圧されると、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が保持されると共にポンプモータ21の回転が停止される。ブレーキ液圧が車輪ブレーキ23に作用して自車両の車速が減速する。
時刻t2で自車両の車速が第1の車速S1(例えば、5[km/h])まで低下すると、ブレーキ制御部12のバルブ制御よってブレーキ液圧が減少される。自車両の車速は、ブレーキ制御部12によって車輪速センサ15の検出信号に基づいて求められる。ブレーキ制御部12によって車速が第1の車速S1になったと判定されたタイミングで車輪ブレーキ23からブレーキ液が徐々に排出される。ブレーキ液圧の減圧に伴って、自動ブレーキによる車速の減少が緩やかになっている。停車前にブレーキ液圧が減圧されることで、停車後の車両の揺り返しが抑えられる。
時刻t3で自車両の車速が第1の車速S1よりも低速な第2の車速S2(例えば、1[km/h])まで低下すると、再びポンプモータ21の駆動が開始される。ブレーキ制御部12によって車速が第2の車速S2になったと判定されたタイミングで、傾斜角度検出部18によって走行路面の水平な傾斜角度0[%]が検出される。ブレーキ制御部12によって、走行路面の傾斜角度0[%]に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータ21のモータ回転速度が制御される。ブレーキ液圧が増圧されると、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が保持される。
時刻t4で先行車両が動き出して、ドライバによってアクセルペダル(不図示)が踏まれて自車両の車速が増加する。また、ドライバによってACCが再設定されて、ACCモジュール11によって先行車両と自車両の車間距離を維持するように自車両が先行車両に追従走行する。このとき、自車両が平地から上り坂を上り始めており、走行路面の傾斜角度が増加している。自車両にACCが設定されているため、走行路面の傾斜角度の変化に影響を受けることなく、ACCモジュール11によって先行車両に追従して自車両の車速が調整されている。
時刻t5で先行車両の減速が再び認識されて、ACCモジュール11によって自動ブレーキが作動されてポンプモータ21の駆動が開始される。ポンプモータ21のモータ回転速度の増加に伴ってブレーキ液圧が増圧されると、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が保持されると共にポンプモータ21の回転が停止される。ブレーキ液圧が車輪ブレーキ23に作用して自車両の車速が減速する。時刻t6で自車両の車速が再び第1の車速S1まで低下すると、ブレーキ制御部12のバルブ制御によって車輪ブレーキ23からブレーキ液が徐々に排出されてブレーキ液圧が減少される。
時刻t7で自車両の車速が再び第1の車速S1よりも低速な第2の車速S2まで低下すると、再びポンプモータ21の駆動が開始される。ブレーキ制御部12によって車速が第2の車速S2になったと判定されたタイミングで、傾斜角度検出部18によって走行路面の傾斜角度α[%]が検出される。ブレーキ制御部12によって、走行路面の傾斜角度α[%]に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータ21のモータ回転速度が制御される。ブレーキ液圧が増圧されると、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が保持される。
本実施例では、走行路面が傾斜角度0[%]のときの車両停車のブレーキ液圧B1[MPa]よりも、走行路面が傾斜角度α[%]のときの車両停車のブレーキ液圧B2[MPa]の増圧勾配及び上限値が大きい。このため、走行路面が傾斜角度0[%]のときの車両停車直前のポンプモータ21のモータ回転速度R1[rpm]よりも、走行路面が傾斜角度α[%]のときの車両停車直前のポンプモータ21のモータ回転速度R2[rpm]が大きくなっている。ここでは、ブレーキ液圧の増圧勾配及び上限値の両方を考慮してモータ回転速度が設定されるが、ブレーキ液圧の増圧勾配及び上限値の片方だけを考慮してモータ回転速度が設定されてもよい。
時刻t8でドライバがフットブレーキ35を踏むと、手動ブレーキがONになって、ブレーキ制御部12による液圧回路22のバルブ制御によって自動ブレーキから手動ブレーキに切り替えられる。これにより、ブレーキ制御部12による自動ブレーキが解除されて、マスタシリンダ31によってブレーキ液圧が増圧されて、マスタシリンダ31からのブレーキ液圧が車輪ブレーキ23に作用して停車状態が保持される。このように、走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータ21のモータ回転速度が制御されている。
走行路面の傾斜角度が小さくなるほど、自車両の減速時に高いブレーキ液圧が不要になる。このため、走行路面が傾斜角度0[%]のときに停車直前のポンプモータ21がモータ回転速度R1に抑えられている。傾斜角度が小さな走行路面で自車両が減速される場合には、ポンプモータ21が過剰なモータ回転速度で駆動されることがなく、ポンプモータ21の駆動音が効果的に低減されている。エンジンノイズやエアーコンプレッサの送風音にポンプモータ21の駆動音が紛れて、ポンプモータ21の駆動音を搭乗者に聞こえ難くすることができる。
また、本実施例では、傾斜角度検出部18によって自車両の車速が第2の車速S2以下になった時刻t3、t7に走行路面の傾斜角度が検出されている。自車両の車速が十分に低下した地点で走行路面の傾斜角度が求められているため、傾斜角度の検出地点と停車地点の走行路面の傾斜角度が近づけられている。停車地点付近の走行路面の傾斜角度に応じたモータ回転速度でポンプモータ21を駆動することができる。
上記したように、時刻t3、t7で先行車両との車間距離を維持して自車両が停車するときに、自車両の揺り返しを抑えるためにブレーキ液圧が減圧された後に再び増圧されている。このときのポンプモータ21のモータ回転速度は、ブレーキ制御部12によって走行路面の傾斜角度に基づいて設定される。例えば、本実施例では、図4(A)に示すように、走行路面が傾斜角度0[%]の場合にポンプモータ21がモータ回転速度R1[rpm]に設定される。走行路面が傾斜角度α[%]の場合にポンプモータ21がモータ回転速度R2[rpm]に設定される。
また、ブレーキ制御部12によって、走行路面の傾斜角度が同じ上り坂と下り坂とで、モータ回転速度が異なるようにポンプモータ21が駆動されている。例えば、走行路面が傾斜角度α[%]の上り坂である場合に、ポンプモータ21がモータ回転速度R2[rpm]に設定される。一方、走行路面が傾斜角度-α[%]の下り坂である場合にポンプモータ21がモータ回転速度R2よりも高いモータ回転速度R3[rpm]に設定される。走行路面の上り坂と下り坂では傾斜角度が同じでも、自車両に必要なブレーキ液圧が異なるため、上り坂と下り坂でモータ回転速度が変更されている。
また、走行路面の傾斜角度が所定角度以下である場合、ブレーキ制御部12によって自車両の停車直前又は停車時にポンプモータ21が停止されてもよい。例えば、図4(B)に示すように、走行路面が傾斜角度0[%]である場合に、自車両の停車直前又は停車時にポンプモータ21が停止されてもよい。ポンプモータ21を停止させても、減圧によって下がったブレーキ液圧が保持されて、ブレーキ液圧がゼロになるわけではない。傾斜角度0[%]の走行路面であれば、走行路面の傾斜角度の検出精度に数[%]の誤差があったとしても、最低限のブレーキ液圧によって自車両を停車させることができる。なお、停車直前とは、自車両の停車後の揺り返しを抑えるためにブレーキ液圧が減圧されてから停車するまでの期間を示している。例えば、自車両の車速が低速な第2の車速S2以下になったときを停車直前としてもよい。
上記の図4(A)、(B)では、ブレーキ制御部12は、走行路面の傾斜角度が小さくなるのに伴って、モータ回転速度がリニアに小さくなるようにポンプモータ21を駆動している。図4(A)のモータ回転速度R4[rpm]以上でポンプモータ21の駆動音が目立つ場合、走行路面の傾斜角度β[%]付近でモータ回転速度を変えても、ポンプモータ21の駆動音が低減されないため意味がない。よって、ブレーキ制御部12は、走行路面の傾斜角度が小さくなるのに伴って、モータ回転速度が段階的に小さくなるようにポンプモータ21を駆動してもよい。
図4(C)、(D)に示すように、例えば、走行路面の傾斜角度に応じてモータ回転速度が3段階的に変化されることで、ポンプモータ21の駆動制御が簡略化される。特に、開発過程では、各段階(3段階)のモータ回転速度でポンプモータ21を駆動させたときの駆動音を確認すれば済むため、確認作業を減らして開発者の作業負担を軽減することができる。なお、走行路面の傾斜角度が同じ上り坂と下り坂とで、モータ回転速度が異なるようにポンプモータ21が駆動されてもよい。また、図4(D)に示すように、走行路面の傾斜角度が所定角度以下(例えば、傾斜角度0[%])である場合、ブレーキ制御部12によってポンプモータ21が停止されてもよい。
図5及び図6を参照して、ブレーキ制御処理のフローチャートについて説明する。図5は、ブレーキ制御処理の概要を示すフローチャートの一例である。図6は、ブレーキ制御処理を示すフローチャートの一例である。なお、ここでは、図1の符号を適宜使用して説明する。
先ず、図5を参照して、ブレーキ制御処理の処理動作の概要について説明する。本実施例ではACC作動時のブレーキ制御について説明するが、自動運転実施時のブレーキ制御も略同様である。図5のフローチャートは、ACC作動時のブレーキ制御の処理動作だけでなく、例えば、自動運転実施時のブレーキ制御の処理動作も示している。
図5に示すように、自動ブレーキによって自車両が減速されると(ステップS01)、ブレーキ制御部12によって自車両の車速が所定車速(第2の車速)以下か否かが判定される(ステップS02)。自車両の車速が所定車速よりも大きい場合(ステップS02でNo)、ブレーキ制御部12によって加速度センサ16の検出信号に基づいて車両が減速状態か否かが判定される(ステップS03)。自車両が減速状態である場合(ステップS03でYes)、自車両の車速が所定車速以下に減速されるまでステップS01、S02の処理が繰り返される。自車両が減速状態ではない場合(ステップS03でNo)、自車両が加速されているため、ブレーキ制御処理が終了する。
ステップS03において自車両の車速が所定車速以下の場合(ステップS02でYes)、傾斜角度検出部18によって自車両が位置している走行路面の傾斜角度が検出される(ステップS04)。次に、ブレーキ制御部12によって走行路面の傾斜角度に基づいてポンプモータ21のモータ回転速度が設定される(ステップS05)。モータ回転速度は、ブレーキ液圧の増圧勾配や上限値に考慮して設定されている。そして、ブレーキ制御部12によってポンプモータ21が駆動されて、走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧に増圧される(ステップS06)。走行路面の傾斜角度が小さいときには、必要以上のモータ回転速度にならないようにポンプモータ21が駆動されて駆動音が抑えられている。
続いて、図6を参照して、ACC作動時のブレーキ制御処理の処理動作の詳細について説明する。図6に示すように、ACC作動時にはACCモジュール11によって車間処理維持制御が開始される(ステップS11)。次に、前方認識部14によって先行車両が認識され、ACCモジュール11によって先行車両が停車直前か否かが判定される(ステップS12)。先行車両が停車直前ではない場合(ステップS12でNo)、前方認識部14によって先行車両の監視が継続されてステップS12の処理が繰り返される。先行車両が停車直前である場合(ステップS12でYes)、ブレーキ制御部12によってバルブ制御されると共にポンプモータ21が駆動されてブレーキ液圧が増圧される(ステップS13)。
次に、ブレーキ制御部12によって自車両が目標減速度に到達したか否かが判定される(ステップS14)。自車両が目標減速度に到達していない場合(ステップS14でNo)、ブレーキ液圧が増圧されてステップS13、S14の処理が繰り返される。自車両が目標減速度に到達した場合(ステップS14でYes)、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が保持されると共にポンプモータ21が停止される(ステップS15)。これにより、ブレーキ液圧が保持されて、自車両が一定の目標減速度で減速される。
次に、ブレーキ制御部12によって自車両の車速が第1の車速S1以下か否かが判定される(ステップS16)。自車両の車速が第1の車速S1よりも大きい場合(ステップS16でNo)、自車両の車速が第1の車速S1以下に減速されるまでステップS15、S16の処理が繰り返される。自車両の車速が第1の車速S1以下の場合(ステップS16でYes)、ブレーキ制御部12のバルブ制御によってブレーキ液圧が減圧(減圧速度が低下)される(ステップS17)。自車両が停車する前にブレーキ液圧が減圧されることで、自車両の停車後の揺り返しが抑えられている。
次に、ブレーキ制御部12によって自車両の車速が第2の車速S2以下か否かが判定される(ステップS18)。自車両の車速が第2の車速S2よりも大きい場合(ステップS18でNo)、ブレーキ制御部12によって加速度センサ16の検出信号に基づいて車両が減速状態か否かが判定される(ステップS19)。自車両が減速状態である場合(ステップS19でYes)、車速が第2の車速S2以下に減速されるまでステップS17、S18の処理が繰り返される。自車両が減速状態ではない場合(ステップS19でNo)、自車両が加速されているため、ブレーキ制御処理が終了する。
ステップS18において車速が第2の車速S2以下の場合(ステップS18でYes)、傾斜角度検出部18によって自車両が位置している走行路面の傾斜角度が検出される(ステップS20)。次に、走行路面の傾斜角度が所定角度以下(例えば、0[%])か否かが判定される(ステップS21)。走行路面の傾斜角度が所定角度以下の場合(ステップS21でYes)、ブレーキ制御部12によってポンプモータ21が停止される(ステップS22)。ポンプモータ21が停止されていても、減圧により下がったブレーキ液圧がバルブ制御によって保持されているため、傾斜角度が小さな走行路面であれば最低限のブレーキ液圧によって自車両を停車できる。ポンプモータ21が停止されているため、駆動音が発生することがない。
一方、走行路面の傾斜角度が所定角度より大きな場合(ステップS21でNo)、ブレーキ制御部12によって走行路面の傾斜角度に基づいてポンプモータ21のモータ回転速度が設定される(ステップS23)。そして、ブレーキ制御部12によってポンプモータ21が駆動されて、走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧に増圧される(ステップS24)。走行路面の傾斜角度が小さいときには、過剰なモータ回転速度にならないようにポンプモータ21が駆動されて駆動音が抑えられている。
以上、本実施例によれば、走行路面の傾斜角度に応じてブレーキ液圧が変化する。急傾斜の走行路面ではブレーキ液圧が大きくなるようにポンプモータ21が駆動され、緩傾斜の走行路面ではブレーキ液圧が小さくなるようにポンプモータ21が駆動される。緩傾斜の走行路面で自車両が減速される場合には、ポンプモータ21が過剰なモータ回転速度で駆動されることがなく、ポンプモータ21の駆動音を搭乗者に聞こえ難くして車室内の快適性を向上させることができる。また、ポンプモータの駆動に要する消費エネルギが削減される。
また、本実施例では、ポンプモータ21の駆動音を抑える構成について説明したが、ポンプモータ21によって駆動されるポンプ33、36の駆動音も抑えられている。よって、ポンプモータ21の駆動音のみならずポンプ33、36の駆動音を搭乗者に聞こえ難くして車室内の快適性を向上させることができる。
なお、本実施例のブレーキ制御処理のプログラムは記憶媒体に記憶されてもよい。記憶媒体は特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体であってもよい。
また、実施例のブレーキ制御装置は、ACCが適用される他の乗り物に適用することができる。
以上の通り、本実施例のブレーキ制御装置(10)は、自車両を自動的に減速させるための自動ブレーキを制御するブレーキ制御部(12)と、自車両の減速時に自動ブレーキのブレーキ液圧を増圧するポンプモータ(21)と、自車両が位置している走行路面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部(18)と、を備えたブレーキ制御装置であって、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧になるようにポンプモータのモータ回転速度を制御する。この構成によれば、走行路面の傾斜角度に応じてブレーキ液圧が変化する。急傾斜の走行路面ではブレーキ液圧が大きくなるようにポンプモータが駆動され、緩傾斜の走行路面ではブレーキ液圧が小さくなるようにポンプモータが駆動される。緩傾斜の走行路面で自車両が減速される場合には、ポンプモータが過剰なモータ回転速度で駆動されることがなく、ポンプモータの駆動音を搭乗者に聞こえ難くして車室内の快適性を向上させることができる。また、ポンプモータの駆動に要する消費エネルギが削減される。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度に応じたブレーキ液圧の増圧勾配及び/又は上限値になるようにポンプモータのモータ回転速度を制御する。この構成によれば、走行路面の傾斜角度に応じた増圧勾配及び/又は上限値のブレーキ液圧によって自車両が減速される。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度が小さくなるのに伴ってモータ回転速度が小さくなるようにポンプモータを駆動する。この構成によれば、走行路面の傾斜角度が小さくなるほど高いブレーキ液圧が不要になるため、緩傾斜の走行路面で自車両の減速時にポンプモータのモータ回転速度を小さくして駆動音を低減することができる。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度が小さくなるのに伴ってモータ回転速度が段階的に小さくなるようにポンプモータを駆動する。この構成によれば、傾斜角度に応じてモータ回転速度を段階的に変化させている。このため、傾斜角度に応じてモータ回転速度をリニアに変化させる構成と比較して、ポンプモータの駆動制御が簡略化される。開発過程では、各段階のモータ回転速度でポンプモータを駆動させたときの駆動音を確認すれば済むため、確認作業を減らして開発者の作業負担を軽減することができる。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度が同じ上り坂と下り坂とで、モータ回転速度が異なるようにポンプモータを駆動する。この構成によれば、走行路面の上り坂と下り坂では傾斜角度が同じでも、自車両に必要なブレーキ液圧が異なっている。上り坂と下り坂でモータ回転速度を変えることで、より最適なモータ回転速度でポンプモータを駆動することができる。
本実施例のブレーキ制御装置において、傾斜角度検出部は、自車両の車速が所定の車速以下になったときに走行路面の傾斜角度を検出する。この構成によれば、自車両の車速が十分に低下した地点で走行路面の傾斜角度が求められ、傾斜角度の検出地点と停車地点の走行路面の傾斜角度が近づけられる。よって、停車地点付近の走行路面の傾斜角度に応じたモータ回転速度でポンプモータを駆動することができる。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、自車両と先行車両の車間距離を維持するように自動ブレーキを制御する。この構成によれば、全車速ACCでの自動ブレーキのように快適性を求められる制御において、低車速から停車に至る過程でポンプモータの駆動音を低減することができる。
本実施例のブレーキ制御装置において、ブレーキ制御部は、走行路面の傾斜角度が所定角度以下である場合、自車両の停車直線又は停車時にポンプモータを停止させる。この構成によれば、ポンプモータを停止させても、ブレーキ液圧がゼロになるわけではない。所定角度以下の傾斜角度の走行路面であれば、走行路面の傾斜角度の検出精度に数[%]の誤差があったとしても、最低限のブレーキ液圧によって自車両を停車させることができる。
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。