本発明の一実施の形態について説明する。本実施の形態に係る子供用座席10は子供を着座させるために用いられる座席である。ここで子供とは、乳児、幼児、児童等の年少者を含む概念である。子供用座席10は、一例として、乳母車、ベビーラック、チャイルドシート等の育児器具や、自転車のハンドル上に取り付けられる座席、自転車の後輪上に配置された荷台に取り付けられる座席等に適用され得る。本実施の形態に係る子供用座席10は、座席本体20と、座席本体20に上下に移動可能に保持されたヘッドレスト60と、を有している。とりわけ本実施の形態では、上下に移動可能なヘッドレスト60を安定して保持するための工夫がなされている。
以下においては、図示された具体例を参照しながら、自転車5の後部荷台7Eに着脱可能とした子供用座席10について説明する。自転車5の荷台7Eに取り付けられる子供用座席10には、比較的成長した子供が着座するようになる。すなわち、体重が増加した子供に対して適用される。その一方で、この子供用座席10に着座する子供の年齢幅は、他の育児器具等と比較して広くなる傾向がある。したがって、ヘッドレストの上下移動可能な長さは長いことが好ましい。ただし、ヘッドレスト60の上下移動可能な長さを長くするとヘッドレスト60が不安定となりやすい。これらのことから、上下に移動可能なヘッドレスト60を安定して保持するための工夫がなされた本実施の形態に係る子供用座席10は、自転車5の荷台7Eに取り付けられる子供用座席に好適である。
なお、本明細書中において、子供用座席10およびその構成要素に対して用いる「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」及び「幅方向」の用語は、特に指示がない場合、子供用座席10に着座する子供を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、「上下方向」、および「幅方向」を意味する。したがって、「前後方向」とは、図1における紙面の左右を結ぶ方向に相当し、図2における紙面の左下と右上とを結ぶ方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、子供用座席10に着座した子供が向く側であり、図1における紙面の右側が子供用座席10およびその構成要素の前側となり、図2における紙面の左下側が子供用座席10およびその構成要素の前側となる。一方、「上下方向」とは前後方向に直交するとともに、水平方向に直交する方向である。また、「幅方向」とは、横方向又は側方向(側方)であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。「幅方向」や「横方向」、「側方」における「内側(内方)」とは、子供用座席10の幅方向中心に近接する側(方)のことを指し、「幅方向」や「横方向」、「側方」における「外側(外方)」とは、子供用座席10の幅方向中心から離間する側(方)のことを指す。
また、以下において参照する図面において、一つの図面に図示された構成要素が、他の一以上の図面において図示を省略されていることもある。
図1は、子供用座席10が荷台7Eに取り付けられた子供用座席付き自転車1を側方から示す図である。図1に示された自転車5は、自転車フレーム6と、自転車フレーム6に回転可能に保持された前輪7A及び後輪7Bと、自転車フレーム6に保持され前輪7Aを操作するための自転車ハンドル7Cと、自転車フレーム6に固定されたサドル7Dと、を有している。荷台7Eは、自転車フレーム6に固定されて後輪7Bの上方に位置している。この荷台7Eに対して子供用座席10が取り付けられている。また、自転車ハンドル7Cの二股状に延び上がる部分の間に前座席8が固定されている。以下に説明する本実施の形態に係る子供用座席10に対してなされた上下に移動可能なヘッドレスト60を安定して保持するための工夫は、前座席8に対してなすこともできる。
以下、子供用座席10について詳述する。子供用座席10は、上述したように座席本体20及びヘッドレスト60を有している。座席本体20は子供が着座する場所であり、ヘッドレスト60は着座した子供の頭部を支持および保護する部位である。ヘッドレスト60は、座席本体20に対する高さ方向への位置を調節可能となっている。着座する子供の体格に応じてヘッドレスト60の高さ位置を調節することで、ヘッドレスト60を当該子供の頭部に後方および側方から対面する位置に配置することができる。なお、図1~3、図5及び図7に実線で示されたヘッドレスト60は、移動可能な範囲内で最も上方となる位置に配置されている。一方、図2に二点鎖線で示されたヘッドレスト60は、移動可能な範囲内で最も下方となる位置に配置されている。
また、図2に示すように、子供用座席10は、座席本体20に取り付けられた固定用ベルト50を更に有している。固定用ベルト50は、子供用座席10に着座した子供の体を子供用座席10に固定するために用いられている。図示された子供用座席10において、ヘッドレスト60は、幅方向に離間して設けられた一対のベルト支持部67を有している。したがって、ヘッドレスト60の上下方向における位置調節にともなって、固定用ベルト50を支持するベルト支持部67の位置が上下に自動的に変化する。すなわち、着座した子供の体を座席に固定するための固定用ベルト50の位置を、着座する子供の体格に応じた適切な位置に、自動的に配置することができる。
その一方で、ベルト支持部67は、固定用ベルト50を支持しており、このため固定用ベルト50を介して着座した子供の体重を受けるようになる。これに対して上下に移動可能なヘッドレスト60を安定して保持するための工夫がなされた本実施の形態に係る子供用座席10によれば、ヘッドレスト60が安定して保持されていることから、固定用ベルト50を適切な位置に維持して、子供の体を安定して子供用座席10に固定することができる。すなわち、上下に移動可能なヘッドレスト60を安定して保持するための工夫がなされた本実施の形態は、ベルト支持部67を有したヘッドレスト60に対して好適である。
以下、子供用座席10の各構成要素について更に詳述する。
まず、座席本体20について説明する。図1~図4に示すように、座席本体20は、子供が着座する座席本体部30と、座席本体部30の前方に位置するベルト保持部22と、座席本体部30に下方から接続した脚部25と、を有している。脚部25は、座席本体部30に着座した子供の足を支持する。
図1及び図2に示された例において、脚部25は、子供の両足に対応した形状を有する脚ベース部材26を有している。脚ベース部材26は、例えば樹脂成形物として作製され得る。図1に示すように、脚ベース部材26は、自転車5を跨ぐようにして荷台7E上に配置される。図示された例において、脚ベース部材26が荷台7Eに固定されることで、子供用座席10が自転車5に取り付けられている。ベルト保持部22は、脚ベース部材26上に設けられている。ベルト保持部22は、後に詳述する固定用ベルト50を保持する部位である。また、固定用ベルト50と接続する後述の保持ベルト52が、ベルト保持部22に取り付けられている。
次に座席本体20の座席本体部30について説明する。図2に示すように、座席本体部30は、子供の臀部を受ける座部31Aと、子供の背中を後方から受ける背部31Bと、座部31A及び背部31Bの幅方向両外側に位置する側壁部31Cと、を有している。座部31A、背部31B及び側壁部31Cは、組み合わさって、子供を収容するためのシェル状の収容部を形成する。
図示された子供用座席10は、実際の構成部材として、座席ベース部材40と、座席ベース部材40に背面から接続した背面カバー部材46(図1参照)と、背部31Bに相当する位置で背面を形成する背パッド47と、座部31Aに相当する位置で座面を形成する座パッド48と、を有している。背パッド47及び座パッド48は、クッション性を有しており、着座した子供に快適性を付与する。背パッド47及び座パッド48は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(略称EVA)を用いて成形され得る。
図1に示すように、背面カバー部材46は、座席ベース部材40に後方から取り付けられている。したがって、座部31A、背部31B及び側壁部31Cの後方の面は、座席ベース部材40及び背面カバー部材46によって形成されている。一方、図2に示すように、座部31A、背部31B及び側壁部31Cの前方の面は座席ベース部材40、背パッド47及び座パッド48によって形成されている。一例として、座席ベース部材40及び背面カバー部材46は、それぞれ、樹脂成形物として形成され得る。
図3および図4によく示されているように、座席ベース部材40は、主として背部31Bを形成するようになる領域において、上壁部41、中間段差壁部42及び下壁部43を含んでいる。上壁部41は、座席ベース部材40の背部31Bを形成するようになる領域における上方に位置し、背部31Bの上縁を形成する。下壁部43は、座席ベース部材40の背部31Bを形成するようになる領域における下方に位置し、背部31Bの下縁を形成する。中間段差壁部42は、上壁部41の下端と下壁部43の上端との間に位置している。上壁部41及び下壁部43は、概ね上下方向に延びている。中間段差壁部42は、前後方向に延びている。結果として、上壁部41は、下壁部43よりも前後方向における後方にずれて位置している。背面カバー部材46は、下壁部43と前後方向において対向する位置に配置されている。
なお、図3は、子供用座席10を前上方から示す斜視図であり、図4は、ヘッドレスト60を取り外した状態で子供用座席10を図3と同様の方向から示す斜視図である。同様に、図5は、子供用座席10を後上方から示す斜視図であり、図6は、ヘッドレスト60を取り外した状態で子供用座席10を図5と同様の方向から示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、座席本体20は、ヘッドレスト60の後述するヘッドレスト延出部62を保持するための延出部保持部35を有している。図示された座席本体20において、延出部保持部35は、座席本体20の座席本体部30に設けられている。図3及び図4に示すように、延出部保持部35は、ヘッドレスト延出部62を収容する保持孔42Aとして形成されている。延出部保持部35は、座席ベース部材40の下壁部43と背面カバー部材46との間に形成されている。延出部保持部35をなす保持孔42Aは、図4に示すように中間段差壁部42の幅方向中央において開口し、概ね下方に向けて延びている。
ここで図7は、背面カバー部材46を取り外した状態で子供用座席10を後方から示す斜視図である。図7に示すように、延出部保持部35をなす保持孔42Aは、幅方向において、一対の支持誘導壁44によって区画されている。各支持誘導壁44は、幅方向における外側に凹んだ凹部44Aと、幅方向における内側に突出した凸部44Bと、を有している。凹部44A及び凸部44Bは、上下に交互に配置されている。そして、一方の支持誘導壁44における凹部44Aが設けられている上下方向の位置に、他方の支持誘導壁44も凹部44Aを有している。同様に、一方の支持誘導壁44における凸部44Bが設けられている上下方向の位置に、他方の支持誘導壁44も凸部44Bを有している。したがって、凹部44Aが設けられている上下方向の位置において、幅方向に沿った一対の支持誘導壁44の間隔は広くなる。逆に凸部44Bが設けられている上下方向の位置において、幅方向に沿った一対の支持誘導壁44の間隔は狭くなる。
ところで、図4に示すように、中間段差壁部42には、延出部保持部35をなす保持孔42Aに加えて、通過孔42Bが形成されている。この通過孔42Bは、固定用ベルト50が通過するようになる。図示された例では、固定用ベルト50の後述する一対の第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bにそれぞれ対応して、一対の通過孔42Bが設けられている。つまり、第1装着ベルト51Aが通過する通過孔42Bと、第2装着ベルト51Bが通過する通過孔42Bが、中間段差壁部42に設けられている。図示された通過孔42Bは、平たい固定用ベルト50の形状にあわせて、偏平した開口を有している。
また図示された例では、座席本体20は、座席本体部30の前方に設けられたガードバー27を有している。ガードバー27は、座席本体部30に着座した子供が把持する部位となる。ガードバー27は、その両端において、座席本体部30に接続している。ガードバー27は、少なくとも一端において、座席本体部30から取り外し可能となっている。また、ガードバー27は、他端において、座席本体部30に対して回転可能となっている。したがって、ガードバー27の一端を座席本体部30から取り外し、さらにガードバー27の一端を座席本体部30に対して回転させることで、座席本体部30の前方が開放され、子供の載せ降ろしを行いやすくなる。
さらに、図4及び図6に示すように、座席本体20は、幅方向に離間して配置された一対の第1ガイド部36を有している。図示された例において、第1ガイド部36は、座席本体20の上縁に設けられている。とりわけ、第1ガイド部36は、座席本体部30の背部31Bの上縁に位置している。この第1ガイド部36は後述するヘッドレスト60の第2ガイド部65と協働して、ヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を誘導(案内)する。
図4及び図6に示すように、各第1ガイド部36は、座席本体20から延び出した一対のガイド脚部37を有している。図示された例において、一対のガイド脚部37は、座席本体部30の座席ベース部材40から延び出している。一対のガイド脚部37は、座席本体20に接続する基端部において、互いにから離間している。一対のガイド脚部37は、座席本体20から離間した先端部において互いに接続している。第1ガイド部36の幅は、一対のガイド脚部37の基端部の側から先端部の側へ向け、言い換えると座席本体20からヘッドレスト60の側へ向けて次第に狭くなっていく。各ガイド脚部37は板状に形成されている。ガイド脚部37は、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動方向と平行な面上に広がっている。
図示された例において、第1ガイド部36は、一対のガイド脚部37の先端部に接続したガイド頭部38を更に有している。ガイド頭部38は、座席本体20とは反対側において一対のガイド脚部37と接続している。ガイド頭部38の幅は、一対のガイド脚部37の先端部における幅よりも広くなっている。すなわち、第1ガイド部36は、ガイド頭部38を設けることによって先端において幅広となっている。ガイド頭部38は板状に形成されている。ガイド頭部38は、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動方向と平行な面上に広がっている。
第1ガイド部36は、座席本体20と一体成形されていることが好ましい。図示された例において、第1ガイド部36は、座席本体部30の座席ベース部材40と一体成形されていることが好ましい。また、一対のガイド脚部37及びガイド頭部38は一体成形されていることが好ましい。
次に、ヘッドレスト60について説明する。なお、図8~図11は、ヘッドレスト60およびヘッドレスト60を構成する部材を示す図である。図8は、ヘッドレスト60を後方から示す平面図である。図9~図11は、ヘッドレスト60を構成する部材を同一の方向から示す斜視図である。
図1に示すように、ヘッドレスト60は、主要部として、ヘッドレスト本体部61、ヘッドレスト延出部62及びロック操作部63を有している。ヘッドレスト本体部61は、子供用座席10に着座した子供の頭部に対面する位置に配置される。ヘッドレスト本体部61は、子供の頭部を支持及び保護する。図示されヘッドレスト本体部61は、中央部61A及び一対の側方部61Bを有している。中央部61Aは、子供の頭部に後方から対面する。一対の側方部61Bは、子供の頭部に両側方から対面する。また、ヘッドレスト60は、幅方向に離間して設けられ各々が固定用ベルト50を支持する一対のベルト支持部67を有している。図示された例において、ベルト支持部67は、ヘッドレスト本体部61に設けられている。各ベルト支持部67は、固定用ベルトが通過する貫通孔としてヘッドレスト本体部61に設けられている。
なお、ヘッドレスト60のヘッドレスト本体部61には、第1ガイド部36と協働してヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を誘導する第2ガイド部65が設けられている(図5及び図7参照)。また図示されたヘッドレスト60のヘッドレスト本体部61には、第1ガイド部36と協働してヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を誘導する補助ガイド部66も設けられている。第2ガイド部65及び補助ガイド部66については、後に詳述する。
図2や図3に示すように、ヘッドレスト延出部62は、ヘッドレスト本体部61から下方に延出している。ヘッドレスト延出部62は、ヘッドレスト本体部61よりも幅狭な平板状の形状を有している。図3に示すように、ヘッドレスト延出部62が座席本体20の延出部保持部35をなす保持孔42Aに挿入されることで、ヘッドレスト60が座席本体20に保持されている。
さらに、図5や図7に示すように、ヘッドレスト60は、幅方向における一対の第2ガイド部65の間に設けられたロック操作部63を更に有している。ロック操作部63は、ヘッドレスト本体部61及びヘッドレスト延出部62に対して上下に移動することで、ヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を規制する状態とヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を許容する状態とを切り替える。すなわち、ロック操作部63は、ヘッドレスト60の座席本体20に対する上下への相対移動を可能にするための操作を入力する操作入力部として機能する。
図示されたヘッドレスト60は、具体的な構成として、ヘッドレストベース部材70、ベースカバー部材80(図8及び図10参照)、固定部材85(図8、図9及び図11)、プレート材87(図8及び図9)、弾性部材88(図8参照)、摺動部材90(図5、図7及び図8参照)、及び、頭パッド95(図1及び図2参照)を有している。このうち、頭パッド95は、背パッド47及び座パッド48と同様に、クッション性を有している。頭パッド95は、頭パッド95に頭部をもたれかけた子供に快適性を付与し、頭部への衝撃を吸収する機能を有している。一例として、頭パッド95は、背パッド47及び座パッド48と同様に、エチレン酢酸ビニル共重合体(略称EVA)を用いて成形され得る。
また図示された子供用座席10は、図1及び図2に示すように幌骨99を有している。幌骨99は、幌布を支持することにより日除け部材として機能する。また、幌骨99は、レインカバーを支持するための部材として機能させることもできる。
以下、ヘッドレスト60を構成する部材について順に説明する。
まず、図8及び図9に示すように、ヘッドレストベース部材70は、ヘッドレスト本体部61を形成するパッド支持部71と、ヘッドレスト延出部62を形成する下方延出部75と、を有している。下方延出部75は、パッド支持部71から下方に延び出している。ヘッドレストベース部材70は、ヘッドレスト本体部61及びヘッドレスト延出部62を一体成形した樹脂成形物として作製され得る。パッド支持部71は、ヘッドレスト本体部61の中央部61Aを形成する中央支持部71Aと、ヘッドレスト本体部61の一対の側方部61Bを形成する側支持部71Bと、を有している。
図8に示すように、パッド支持部71には、上下に延びる一対のガイドスリット72が形成されている。ガイドスリット72の図示しない下端は開口して、後述のベースカバー部材80のガイド溝82に通じている。このガイドスリット72は、第2ガイド部65の一部分を構成する。ガイドスリット72は、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動方向に延びている。
ここで図12は、座席本体20及びヘッドレスト60の相対移動方向に垂直な断面図であって、ガイドスリット72によって形成される第2ガイド部65と第1ガイド部36とを示す子供用座席の断面図である。上述したように、第1ガイド部36は、先端において合流した一対のガイド脚部37を含んでいる。図12に示すように、第1ガイド部36の基端部における幅TLは、すなわち、一対のガイド脚部37の座席ベース部材40に接続する位置での幅TLは、ガイドスリット72の開口幅TS1よりも大きくなっている。そして、ガイド脚部37の先端部がガイドスリット72内に位置するようにして、第1ガイド部36はガイドスリット72に挿入されている。ガイド脚部37の先端部に接続したガイド頭部38は、ガイドスリット72を通過したガイド脚部37に接続している。すなわち、ガイドスリット72は、ガイド頭部38とガイド脚部37の基端部との間に位置している。そして、第1ガイド部36のガイド頭部38は、ガイドスリット72の開口幅TS1よりも大きい幅THを有している。
また、図8及び図9に示すように、ガイドスリット72に対面する位置には、対向ガイド部73が設けられている。図12に示すように、対向ガイド部73は、ガイドスリット72を通過した第1ガイド部36の部分と、図示された例ではガイド頭部38と、対面している。この対向ガイド部73は、ガイドスリット72と同様に、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動方向に延びている。対向ガイド部73は、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動を誘導する補助ガイド部66として機能する。対向ガイド部73は、例えば樹脂成形物からなるパッド支持部71の一部分とすることができる。
さらに、図9に示すように、ガイドスリット72及び対向ガイド部73よりも幅方向外方に位置する部分に、一対の支持孔74が設けられている。支持孔74は、ベルト支持部67を構成する。すなわち、支持孔74は、固定用ベルト50の通過経路を構成する貫通孔であり、固定用ベルト50の形状に対応して偏平した孔形状を有している。
また、図8及び図9に示すように、下方延出部75は、その下端部分の幅方向両端から下方に延び出した一対の揺動ロック部76を有している。各揺動ロック部76は、上下に細長い形状を有しており、その下端が幅方向における内側及び外側に移動するように、揺動可能となっている。各揺動ロック部76は、その長手方向における下端領域に、外側凸部76A及び内側凸部76Bを有している。
図示された例において、各揺動ロック部76は、長手方向に沿って離間して設けられた二つの外側凸部76Aと、長手方向に沿って離間して設けられた二つの内側凸部76Bと、を有している。とりわけ図示された例において、外側凸部76A及び内側凸部76Bは上下方向における位置を揃えられている。すなわち、各揺動ロック部76において、一つの外側凸部76Aの幅方向内側に一つの内側凸部76Bが設けられ、他の一つの外側凸部76Aの幅方向内側に他の一つの内側凸部76Bが設けられている。また一つの揺動ロック部76に含まれる外側凸部76A及び内側凸部76Bの上下方向における位置と、他の一つの揺動ロック部76に含まれる外側凸部76A及び内側凸部76Bの上下方向における位置は同一となっている。
図7に示すように、各揺動ロック部76の二つの外側凸部76Aは、座席ベース部材40の対応する側の支持誘導壁44の凹部44Aに入り込むことができるようになっている。外側凸部76Aが凹部44Aに入り込んだ状態に維持されることで、ヘッドレスト60の座席ベース部材40に対する上下への相対移動が規制される。図示された例において、左右の凹部44Aの位置は上下方向に揃えられており、左右の揺動ロック部76に含まれる外側凸部76Aの位置も上下方向に揃えられている。したがって、図7に示すように、一方の揺動ロック部76の外側凸部76Aが一方の支持誘導壁44の凹部44Aに入り込んだ状態において、他方の揺動ロック部76の外側凸部76Aが他方の支持誘導壁44の凹部44Aに入り込んだ状態とすることができる。
なお、図9に示すように、図示されたヘッドレスト60は、ヘッドレストベース部材70に固定されたプレート材87を有している。プレート材87は、例えば樹脂製または金属製に板材として構成され得る。プレート材87は、ヘッドレストベース部材70の下方延出部75に前方から固定されている。
次に、ベースカバー部材80及び固定部材85について説明する。ベースカバー部材80及び固定部材85は、それぞれ、樹脂成形物として作製され得る。図8に示すように、ベースカバー部材80は、ヘッドレストベース部材70のパッド支持部71の下方部分に後方から取り付けられる。ヘッドレストベース部材70は、パッド支持部71の中央支持部71Aの全幅にわたって延び、さらに一部分において一対の側支持部71B上に延び入っている。
図8及び図10に示すように、ベースカバー部材80には、一対の支持通過孔81が形成されている。一対の支持通過孔81は、パッド支持部71に形成された一対の支持孔74と対面する位置に設けられている。各支持孔74と、当該支持孔74に対面する支持通過孔81と、によって各ベルト支持部67が形成されている。図示された支持通過孔81は、平たい固定用ベルト50の形状にあわせて、偏平した開口を有している。
また、ベースカバー部材80には、一対のガイドスリット72の下方端に接続する位置に、一対のガイド溝82が形成されている。ガイド溝82は、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動方向に延びている。ガイド溝82は、その長手方向の両端において開口している。ここで図13は、座席本体20及びヘッドレスト60の相対移動方向に垂直な断面図であって、ガイド溝82によって形成される第2ガイド部65と第1ガイド部36を示す子供用座席の断面図である。図13に示すように、各ガイド溝82は、第1ガイド部36の先端部分の形状と相補的な形状を有している。図13に示すようにガイド溝82は、第1ガイド部36のガイド脚部37の先端部が通過するスリット82Aと、スリット82Aを通過した第1ガイド部36のガイド頭部38を収容する頭部誘導路82Bと、を含んでいる。スリット82A及び頭部誘導路82Bを含むガイド溝82は、概ね一定の形状で、座席本体20及びヘッドレスト60との相対移動方向に延びている。
図13に示すように、各ガイド溝82のスリット82Aは、対応する側のガイドスリット72と同様に、座席本体20とヘッドレスト60との相対移動を誘導する第2ガイド部65の一部分を構成している。スリット82Aの開口幅TS2は、第1ガイド部36の基端部における幅TLは、すなわち、一対のガイド脚部37の座席ベース部材40に接続する位置での幅TLよりも小さくなっている。スリット82Aの開口幅TS2は、第1ガイド部36のガイド頭部38の幅THよりも小さくなっている。
また、頭部誘導路82Bを形成する壁部83は、パッド支持部71の動作ガイド部77の延長線上に位置する。図13に示すように、頭部誘導路82Bを形成する壁部83は、スリット82Aに対面して位置する。したがって、頭部誘導路82Bを形成する壁部83は、ガイドスリット72を通過した第1ガイド部36の部分と、図示された例におけるガイド頭部38と、対面している。この頭部誘導路82Bは、動作ガイド部77とともに補助ガイド部66を構成する。
図11に示すように、固定部材85は、幅方向に延びる連結部85Aと、連結部85Aから前後方向における後方に延び出した一対の端部突出部85Bと、を有している。各端部突出部85Bは、連結部85Aの幅方向両端部に設けられている。パッド支持部71の中央支持部71Aにおける下方部分に、連結部85Aを収容する凹部(図示せず)が形成されている。また、パッド支持部71の中央支持部71Aにおける下方部分に、端部突出部85Bが通過可能な貫通孔(図示せず)が形成されている。さらに、図8及び図11に示すように、ベースカバー部材80には、端部突出部85Bが通過可能な端部穴84が形成されている。固定部材85は前方からパッド支持部71を貫通するように固定され、端部突出部85Bがベースカバー部材80の端部穴84に挿入される。図8に示すように、端部穴84に挿入された端部突出部85Bによって、第2ガイド部65の長手方向における下端が閉鎖される。なお、第2ガイド部65の長手方向における上端は、ガイドスリット72を形成するパッド支持部71によって閉鎖されている。結果として、長手方向を有して線状に延びる第2ガイド部65をなすスリット72,82Aの両端が閉鎖されている。
次に、摺動部材90について説明する。摺動部材90は、ヘッドレストベース部材70に対して上下に移動可能に設けられている。摺動部材90は、上述したロック操作部63として機能し、上下に操作されることによって、ヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を規制する状態と、ヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を許容する状態と、を切り替える。図8に示すように、ロック操作部63をなす摺動部材90は、ヘッドレストベース部材70と、ヘッドレストベース部材70に固定されたベースカバー部材80と、の間に配置されている。摺動部材90は、ヘッドレストベース部材70とベースカバー部材80との間で、上下への移動を誘導される。図8に示すように、ロック操作部63をなす摺動部材90は、直線状に延びる一対の第2ガイド部65と平行に延びている。摺動部材90は、幅方向において、一対の第2ガイド部65の間に位置している。
また、ヘッドレストベース部材70は、ヘッドレストベース部材70の下方延出部75に設けられた動作ガイド部77を受ける動作ガイド受け93を設けられている。動作ガイド部77及び動作ガイド受け93の一方を、例えば、座席本体20及びヘッドレスト60の相対移動方向に延びる長穴とすることができ、他方を当該長穴内で上下に移動可能な凸部として構成することができる。すなわち、動作ガイド部77及び動作ガイド受け93によっても、ヘッドレストベース部材70及びベースカバー部材80に対する摺動部材90の上下への相対移動が誘導される。
さらに、ヘッドレスト60は、ロック操作部63をなす摺動部材90を上方に付勢する弾性部材88を更に有している。図示された例において、弾性部材88は、例えば引っ張りばねとして構成され、摺動部材90の弾性部材受け92と下方延出部75の弾性部材受け78とに接続している。このようにして、ロック操作部63をなす摺動部材90が、ヘッドレストベース部材70及びベースカバー部材80等に対して上方に付勢されている。
また、図7~図9に示すように、摺動部材90は、その下方において、一対の下方延出部75の間に位置している。摺動部材90は、その下方となる領域に、幅方向の両外方に突出した規制凸部91を有している。各規制凸部91は、対応する側に設けられた下方延出部75の内側凸部76Bに、幅方向内方から接触することができる。規制凸部91が内側凸部76Bに接触することで、下方延出部75の幅方向内側への揺動が規制される。このとき、図7に示すように、ヘッドレスト60の下方延出部75の外側凸部76Aが座席本体20の支持誘導壁44の凹部44Aに入り込んだ状態に維持され、座席本体20のヘッドレスト60に対する上下への相対移動が規制される。
図示された例において、摺動部材90は、幅方向における一方の側へ突出した二つの規制凸部91と、幅方向における他方の側へ突出した二つの規制凸部91と、を有している。一方の側へ突出した二つの規制凸部91は、上下方向において異なる位置に配置されており、他方の側へ突出した二つの規制凸部91は、上下方向において異なる位置に配置されている。各側へ突出した二つの規制凸部91は、上下方向において、支持誘導壁44の凹部44Aや揺動ロック部76の外側凸部76A及び内側凸部76Bと、同一のピッチで設けられている。
そして、図7に示すように、幅方向における一方の側へ突出した二つの規制凸部91が、対応する側に設けられた揺動ロック部76の二つの内側凸部76Bに幅方向から接触すると、同時に、幅方向における他方の側へ突出した二つの規制凸部91が、対応する側に設けられた揺動ロック部76の二つの内側凸部76Bに幅方向から接触することができる。この結果、幅方向における一方の側へ突出した揺動ロック部76の二つの外側凸部76Aが対応する側の支持誘導壁44に設けられた凹部44Aに入り込んだ状態に維持され、同時に、幅方向における他方の側へ突出した揺動ロック部76の二つの外側凸部76Aが対応する側の支持誘導壁44に設けられた凹部44Aに入り込んだ状態に維持されるようになる。これにより、安定して、ヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を規制して、ヘッドレスト60を安定して保持することができる。
次に、主として図2を参照しながら、固定用ベルト50に関連した構成について説明する。なお、固定用ベルト50に関連した構成は、図2のみに示しており、他の図では図示を省略している。
図2に模式的に示すように、子供用座席10は、固定用ベルト50及び保持ベルト52を有している。固定用ベルト50は、幅方向に配列された第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bと、第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bに接続した統合ベルト51Cと、を有している。固定用ベルト50及び保持ベルト52は、ベルト固定具54を介して取り外し可能に接続される。固定用ベルト50及び保持ベルト52が接続することで、着座した子供の体を子供用座席10に固定することができる。
第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bは、それぞれ、座席ベース部材40に取り付けられている。より具体的には、第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bは、それぞれ、一方の端部を、座席本体部30における座部31Aと背部31Bとの境界となる領域の幅方向の異なる側の端部に接続している。第1装着ベルト51Aは、ベルト固定具54の第1タング54Aを通過し、次に、ヘッドレスト60のベルト支持部67に向かう。第1タング54Aは、第1装着ベルト51Aの長手方向に沿って移動可能となるよう、第1装着ベルト51Aによって支持されている。第1装着ベルト51Aは、ベルト支持部67を構成するヘッドレストベース部材70の支持孔74及びベースカバー部材80の支持通過孔81を通過して折り返し、座席ベース部材40の中間段差壁部42に設けられた通過孔42Bを通過して座席ベース部材40及び背面カバー部材46の間に入る。
第2装着ベルト51Bは、第1装着ベルト51Aと左右対称に構成されている。すなわち、第2装着ベルト51Bは、ベルト固定具54の第2タング54Bを通過し、次に、ヘッドレスト60のベルト支持部67に支持されて折り返し、その後、通過孔42Bを通過して座席ベース部材40及び背面カバー部材46の間に入る。座席ベース部材40及び背面カバー部材46の間の空間で、第1装着ベルト51Aの他端と第2装着ベルト51Bの他端が、例えば縫着により、接続している。また、第1装着ベルト51Aの他端と第2装着ベルト51Bの他端とに、統合ベルト51Cの一端が、例えば縫着により、接続している。ベルト保持部22は、統合ベルト51Cの長手方向に沿った統合ベルト51Cの任意の位置を保持することができる。
一方、保持ベルト52は、その一端をベルト保持部22に固定されている。また、保持ベルト52上に、ベルト固定具54の保持バックル54Cが保持されている。保持ベルト52における保持バックル54Cの保持位置は、保持ベルト52の長手方向において調節可能となっている。また、保持バックル54Cは、固定用ベルト50によって支持された第1タング54A及び第2タング54Bと着脱可能なっている。
図示された例において、固定用ベルト50には更にベルト誘導具53が設けられている。ベルト誘導具53は、着脱可能な第1誘導具53A及び第2誘導具53Bを有している。第1誘導具53Aは、第1タング54A及びベルト支持部67の間に位置する第1装着ベルト51Aによって支持されている。第2誘導具53Bは、第2タング54B及びベルト支持部67の間に位置する第2装着ベルト51Bによって支持されている。誘導具53A,53Bは、各装着ベルト51A,51Bの長手方向に沿って移動可能となっている。
第1誘導具53A及び第2誘導具53Bを接続することにより、第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bが互いから離間することが規制されるので、子供の体を固定用ベルト50によってより安定して子供用座席10に固定することができる。
なお、図2では、固定用ベルト50及び保持ベルト52の経路を説明するために、固定用ベルト50及び保持ベルト52を模式的に示している。固定用ベルト50及び保持ベルト52として、扁平した細長い部材、すなわちベルト状部材を用いることができる。固定用ベルト50及び保持ベルト52は、適切な強度を有している必要があり、例えば適切に補強された布製のベルト状部材を、固定用ベルト50及び保持ベルト52として用いることができる。
次に、以上の構成からなる子供用座席10の作用について説明する。
まず、着座対象となる子供を子供用座席10に載せる。次に、固定用ベルト50の第1装着ベルト51Aと座席本体部30との間に子供の右腕を通し、固定用ベルト50の第2装着ベルト51Bと座席本体部30との間に子供の左腕を通す。次に、子供の股の間に保持ベルト52を通して、第1装着ベルト51Aに支持された第1タング54A及び第2装着ベルト51Bに支持された第2タング54Bを、保持ベルト52に保持された保持バックル54Cに固定する。また、第1装着ベルト51Aに支持された第1誘導具53A及び第2装着ベルト51Bに支持された第2誘導具53Bを接続する。このような作業前後または作業と並行して、保持ベルト52による保持バックル54Cの保持位置およびベルト保持部22による固定用ベルト50の統合ベルト51Cの保持位置を、子供の体格に合わせて調節する。以上の作業により、子供の体を座席本体20に固定することができる。
また、以上のような固定用ベルト50の操作の前後または操作と並行して、座席本体20に対するヘッドレスト60の高さ位置を調節する。ヘッドレスト60の上下方向における位置調節は、摺動部材90によって構成されるロック操作部63を弾性部材88の付勢力に抗して引き上げることで、可能となる。このとき、摺動部材90を引き上げることによって、規制凸部91が、ヘッドレスト60の揺動ロック部76に設けられた内側凸部76Bから、上下方向においてずれた位置へ配置される。これにより、内側凸部76B及び規制凸部91との干渉が生じなくなる。したがって、ヘッドレスト60を座席本体20に対して押し下げる又は引き上げると、揺動ロック部76の外側凸部76Aと座席本体部30に設けられた支持誘導壁44の凸部44Bとの接触によって、揺動ロック部76が幅方向内側に揺動し、これにより、ヘッドレスト60を座席本体20に対して上下に相対移動させることができる。
一方、ヘッドレスト60が座席本体20に対して適切な高さ位置に到達したところで、摺動部材90によって構成されたロック操作部63から手を離す。ロック操作部63は、弾性部材88の付勢力によって下方に移動する。このとき、摺動部材90の規制凸部91が、揺動ロック部76に設けられた内側凸部76Bと上下方向において同一の位置に配置される。したがって、規制凸部91及び内側凸部76Bの接触により、揺動ロック部76の幅方向内側への揺動が規制される。これにより、揺動ロック部76の外側凸部76Aが支持誘導壁44の凹部44A内に入り込んだ状態に維持され、ヘッドレスト60の座席本体20に対する上下への相対移動が規制される。
ところで、ヘッドレスト60の保持状態が不安定となると、ヘッドレスト60が期待された作用効果、すなわち頭部の支持や保護を十分に行うことができなくなる。とりわけ、ヘッドレスト60の上下方向における移動可能な長さを長く確保しようとすると、ヘッドレスト60の安定性が劣化することが考えられる。
この点について本実施の形態よれば、子供用座席10は、ヘッドレスト本体部61及びヘッドレスト本体部61から下方に延び出したヘッドレスト延出部62を有するヘッドレスト60と、ヘッドレスト延出部62を上下に移動可能に保持する延出部保持部35を有する座席本体20と、を有している。そして、座席本体20は、延出部保持部35よりも上方に位置し幅方向に配列された一対の第1ガイド部36を有し、ヘッドレスト本体部61は、幅方向に配列された一対の第2ガイド部65を有している。そして、第2ガイド部65は、長手方向を有して線状に延び、座席本体20に対してヘッドレスト60が上下に移動する際に長手方向に沿った第1ガイド部36の移動を誘導(案内)するようになっている。このような一実施の形態によれば、座席本体20の延出部保持部35がヘッドレスト60のヘッドレスト延出部62を保持する位置から上下方向にずれた位置において、第1ガイド部36および第2ガイド部65の相対移動が誘導される。したがって、座席本体20に保持されたヘッドレスト60の姿勢を効果的に安定させることができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、子供用座席10は、座席本体20に取り付けられた固定用ベルト50を更に有している。ヘッドレスト60は、幅方向に離間して設けられ各々が固定用ベルト50を支持する一対のベルト支持部67を有している。すなわち、固定用ベルト50の第1装着ベルト51A及び第2装着ベルト51Bは、ヘッドレスト60のベルト支持部67によって支持される。このような子供用座席10では、ヘッドレスト60の上下方向における位置にともなって、固定用ベルト50を支持するベルト支持部67の位置が上下に自動的に変化する。すなわち、着座した子供の体を座席に固定するための固定用ベルト50の位置を、着座する子供の体格に応じた適切な位置に、自動的に配置することができる。また、ヘッドレスト60に設けたベルト支持部67によって固定用ベルト50を支持することで、子供を座席本体部30載せ降ろしする際に固定用ベルト50が邪魔になってしまうことを効果的に抑制することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、幅方向において、一対の第2ガイド部65は一対のベルト支持部67の間に位置している。この具体例によれば、幅方向における外方に配置される傾向にある固定用ベルト50が、例えば固定用ベルト50の使用時又は操作時やヘッドレスト60を移動させる際に、第2ガイド部65と干渉することを効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第2ガイド部65が長手方向を有して線状に延び、ベルト支持部67は、第2ガイド部65の下端部分から幅方向にずれた位置に位置している(図7参照)。この具体例によれば、長手方向を有した第2ガイド部65が、ベルト支持部67と同じ高さ位置またはベルト支持部67よりも高い高さ位置に位置している。したがって、ベルト支持部67から垂れ下がる固定用ベルト50が、例えば固定用ベルト50の使用時又は操作時やヘッドレスト60を移動させる際に、第2ガイド部65と干渉することを効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、ベルト支持部67は、固定用ベルト50が通過する貫通孔である。この具体例によれば、ベルト支持部67によって固定用ベルト50を安定して支持することができる。この具体例では、固定用ベルト50をベルト支持部67から取り外すことが容易ではなくなるが、上述した具体例によれば、ベルト支持部67によって固定用ベルト50を支持したヘッドレスト60を、固定用ベルト50と第2ガイド部65との干渉を効果的に回避しながら、安定して上下に移動させることもできる。
上述した一実施の形態の一具体例において、ヘッドレスト60は、幅方向における一対の第2ガイド部65の間に設けられたロック操作部63を更に有している。このロック操作部63は、ヘッドレスト本体部61及びヘッドレスト延出部62に対して上下に移動することで、ヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を規制する状態とヘッドレスト延出部62の延出部保持部35に対する上下への移動を許容する状態とを切り替える。この具体例によれば、大型化を効果的に抑制しながら、ロック操作部63を操作性に優れた位置、例えばヘッドレスト本体部61の幅方向中央における背面に配置することができる。また、ロック操作部63によってヘッドレスト本体部61およびヘッドレスト延出部62を補強することもできる。この場合、第2ガイド部65と第1ガイド部36との係合およびベルト支持部67による固定用ベルト50の支持をより安定させることができる。なお、上述した具体例において、ロック操作部63は、摺動部材90によって構成されている。
上述した一実施の形態の一具体例において、第2ガイド部65が長手方向を有して線状に延びている。この具体例によれば、線状に延びる第2ガイド部65がヘッドレスト本体部61に設けられているので、ベルト支持部67から垂れ下がる固定用ベルト50が、例えば固定用ベルト50の使用時又は操作時やヘッドレスト60を移動させる際に、第2ガイド部65と干渉することを効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1ガイド部36は、座席本体20の上縁部に設けられている。この具体例によれば、ヘッドレスト60の上下への移動範囲を大きく確保しながら、子供用座席10の大型化を効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第2ガイド部65は、線状に延びるスリットを形成する。とりわけ上述した具体例において、第2ガイド部65は、ヘッドレストベース部材70のガイドスリット72と、ベースカバー部材80のスリット82Aと、を含んでいる。一方、第1ガイド部36は、座席本体20に接続する基端部において幅方向に互いから離間し且つ基端部とは反対側の先端部において互いに接続してスリット72,82A内に挿入された一対のガイド脚部37を有している。この具体例によれば、第1ガイド部36の大型化を回避しながら、第1ガイド部36に高剛性付与することができる。とりわけ、幅方向への変形に抗する剛性を第1ガイド部36に付与することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1ガイド部36の基端部における幅TLは、スリット72,82Aの開口幅TS1,TS2よりも大きくなっている。この具体例によれば、第1ガイド部36及び第2ガイド部65が互いに接近する変形、言い換えると第1ガイド部36が第2ガイド部65内へ深く入り込むような変形を、効果的に防止することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。また、ヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を円滑化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、一対のガイド脚部37は、スリット72,82Aの長手方向に広がる板状となっている。この具体例によれば、座席本体20からヘッドレスト本体部61へ向けて突出したガイド脚部37の上下への曲げ剛性を効果的に向上させることができる。したがって、ヘッドレスト60の上下への移動にともなって第1ガイド部36および第2ガイド部65が上下に相対移動する際に、スリット72,82Aとの摩擦によってガイド脚部37が変形することを効果的に抑制することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1ガイド部36は、スリット72,82Aを通過した一対のガイド脚部37の先端部に接続したガイド頭部38を有している。ガイド頭部38はスリット72,82Aの開口幅TS1,TS2よりも大きい幅THを有している。この具体例によれば、第1ガイド部36及び第2ガイド部65が互いから離間する変形、言い換えると第1ガイド部36が第2ガイド部65から抜け出すような変形を、効果的に防止することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。また、ヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を円滑化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、ガイド頭部38は、スリット72,82Aの長手方向に広がる板状部である。この具体例によれば、第1ガイド部の大型を効果的に抑制しながら、第1ガイド部36が第2ガイド部から抜け出すような変形を効果的に防止することができる。とりわけ図示された具体例によれば、ガイド頭部38は、ガイド脚部37が座席本体20から突出する方向に垂直な面に広がっている。したがって、第1ガイド部36が第2ガイド部から抜け出すような変形をより効果的に防止することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、スリット72,82Aを通過した第1ガイド部36と対面する位置に、補助ガイド部66が設けられている。とりわけ上述した具体例において、補助ガイド部66は、ヘッドレストベース部材70の対向ガイド部73と、ベースカバー部材80の頭部誘導路82Bを形成する壁部83と、を含んでいる。この具体例によれば、補助ガイド部66によって、第1ガイド部36及び第2ガイド部65が互いに接近する変形、言い換えると第1ガイド部36が第2ガイド部65へ深く入り込むような変形を、効果的に防止することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。また、ヘッドレスト60の座席本体20に対する相対移動を円滑化することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第2ガイド部65を構成するスリットの長手方向における両端は閉鎖されている。この具体例によれば、第1ガイド部36が第2ガイド部65から抜け出してしまうことを効果的に防止することができる。これにより、ヘッドレスト60をより安定して保持することができる。
なお、上述した具体例では、第2ガイド部65を構成するスリットが、ヘッドレストベース部材70に形成されたガイドスリット72と、ヘッドレストベース部材70とは別部材として構成されたベースカバー部材80に形成されたスリット82Aと、を含んでいる。さらに、スリット82Aの側となるスリット端部は、ヘッドレストベース部材70やベースカバー部材80とは別部材として構成された固定部材85によって閉鎖されている。このような三つの分離可能な部材70,80,85を用いることによって、ヘッドレスト60の組立を容易にしながら、第1ガイド部36から第2ガイド部65から抜け出してしまうことを効果的に防止し得る構成を実現することができる。
また、以上に説明してきた一実施の形態による子供用座席10は、座席本体20と、座席本体20に取り付けられた固定用ベルト50と、上下に移動可能に座席本体20に保持されたヘッドレスト60と、を有している。ヘッドレスト60は、幅方向に配列され各々が固定用ベルト50を支持する一対のベルト支持部67を有している。座席本体20は幅方向に配列された一対の第1ガイド部36を有し、ヘッドレスト60は、幅方向において一対のベルト支持部67の間に位置する一対の第2ガイド部65を有している。第2ガイド部65は、長手方向を有して線状に延び、座席本体20に対してヘッドレスト60が上下に移動する際に長手方向に沿った第1ガイド部の移動を誘導する。この一実施の形態によれば、ヘッドレスト60の上下方向における位置にともなって、固定用ベルト50を支持するベルト支持部67の位置が上下に自動的に変化する。すなわち、着座した子供の体を子供用座席10に固定するための固定用ベルト50の位置を、着座する子供の体格に応じた適切な位置に、自動的に配置することができる。しかも、第1ガイド部36および第2ガイド部65の係合によって、ヘッドレスト60は座席本体20に安定して保持されている。したがって、固定用ベルト50を適切な位置に安定して支持することが可能となる。さらに、幅方向における外方に配置される傾向にある固定用ベルト50が、例えば固定用ベルト50の使用時又は操作時やヘッドレスト60を移動させる際に、第2ガイド部65と干渉することを効果的に回避することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、子供用座席10は自転車5の後部荷台7Eに取り付けられる。自転車5の荷台7Eに取り付けられる子供用座席10は、比較的に成長した子供にも適用される。すなわち、体重が増加した子供にも適用される。上下に移動可能なヘッドレスト60が座席本体20に安定して保持された本実施の形態は、自転車5の荷台7Eに取り付けられる子供用座席として好適である。
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
上述した一実施の形態において、第1ガイド部36および第2ガイド部65の一方が、長手方向を有して線状に延び、座席本体20に対してヘッドレスト60が上下に移動する際に第1ガイド部36および第2ガイド部65の他方の長手方向に沿った移動を誘導するようにしてもよい。上述した一具体例において、ヘッドレスト60に設けられた第2ガイド部65が長手方向を有して線状に延び、座席本体20に設けられた第1ガイド部36が第2ガイド部65に沿って移動し得るようにした例を示した。しかしながらこの例に限られず、座席本体20に設けられた第1ガイド部36が長手方向を有して線状に延び、ヘッドレスト60に設けられた第2ガイド部65が第1ガイド部36に沿って移動し得るようにしてもよい。具体的な変形としては、上述した第1ガイド部36と同一の構成を有するガイド部がヘッドレスト本体部61に設けられ、上述した第2ガイド部65と同一の構成を有するガイド部が座席ベース部材40の上壁部41に設けられるようにしてもよい。
また、上述した具体例において、ベルト支持部67が、第2ガイド部65の下端部分から幅方向にずれた位置に位置していた。しかしながらこの例に限られず、ベルト支持部67は、第2ガイド部65よりも下方に位置するようにしてもよい。この例によれば、ベルト支持部67から垂れ下がる固定用ベルト50が、例えば固定用ベルト50の使用時又は操作時やヘッドレスト60を移動させる際に、第2ガイド部65と干渉することをより効果的に回避することができる。