JP7364463B2 - ヘアカラーリング組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、クチナシ色素を使用したヘアカラーリング組成物に関する。より具体的には、クチナシ色素の毛髪への定着性が向上しており、優れた染毛効果を有するヘアカラーリング組成物に関する。
毛髪の染色には、合成染料を使用したヘアカラーリング製品が主流であるが、毛髪へのダメージ、アレルギー反応等の懸念から、近年では、安全性が高い天然色素を使用したヘアカラーリング組成物が注目を浴びている。
クチナシ色素は、アカネ科クチナシ(Gardenia augusta Merrill、又はGardenia jasminoides Ellis)の果実を原料として得られる天然色素であり、その製造法の違いにより、青、赤、及び黄の三色が存在している。クチナシ色素は、食品等の着色料として広く使用されているが、毛髪には定着し難く、ヘアカラーリング製品に使用しても、十分な染毛効果が得られないという欠点がある。
そこで、従来、クチナシ色素の毛髪への定着性を改善できるヘアカラーリング組成物について種々検討されている。例えば、特許文献1には、クチナシ青色素、チオール基を有する還元剤、及びアルカリ剤を含む染毛剤は、毛髪の染まりを濃くできることが報告されている。特許文献2には、ゲニピンを含むクチナシ青色素液、及びカチオン性高分子を含む染毛剤組成物は、栗色~暗褐色に染める染毛性が高いことが報告されている。特許文献3には、ゲニピンを含むクチナシ青色素液、ニトロ系直接染料、及びカチオン性界面活性剤を含む染毛剤組成物は、栗色~暗褐色に染める染毛性が高いことが報告されている。
しかしながら、クチナシ色素を使用した従来のヘアカラーリング製品では、クチナシ色素の毛髪への定着性を高めて、優れた染毛効果を得るには、染色補助剤(還元剤、アルカリ剤、浸透促進剤等)が不可欠であったり、カチオン系物質の配合等の組成の制約があったりするという欠点がある。
特開2013-133320号公報 特開2000-53544号公報 特開2000-95654号公報
本発明の目的は、クチナシ色素の毛髪への定着性が向上しており、優れた染毛効果を有するヘアカラーリング組成物を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、特定の特徴を有するクチナシ色素を直接染料として使用することによって、染色補助剤を使用せずとも、毛髪への定着性が向上し、優れた染毛効果が得られることを見出した。具体的には、以下の(i)~(iii)に示すクチナシ色素は、毛髪への定着性が向上しており、染色補助剤を使用せずとも、優れた染毛効果が得られることを見出した:(i)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が85%以下になる、クチナシ青色素、(ii)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が60%以下になる、クチナシ赤色素、及び(iii)13-シス-クロセチンを含み、オール-トランス-クロセチンを含むかまたは含まず、オール-トランス-クロセチンを含む場合は、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1以上である、クチナシ黄色素。本発明は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記(i)~(iii)に示す少なくとも1種のクチナシ色素を含有する、ヘアカラーリング組成物:
(i)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が85%以下になる、クチナシ青色素。
(ii)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が60%以下になる、クチナシ赤色素。
(iii)13-シス-クロセチンを含み、オール-トランス-クロセチンを含むかまたは含まず、オール-トランス-クロセチンを含む場合は、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1以上である、クチナシ黄色素。
項2. 前記(i)に示すクチナシ青色素を含み、当該クチナシ青色素における前記回収率が65%以下である、項1に記載のヘアカラーリング組成物。
項3. 前記(ii)に示すクチナシ赤色素を含み、当該クチナシ赤色素における前記回収率が40%以下である、項1に記載のヘアカラーリング組成物。
項4. 前記(iii)に示すクチナシ黄色素を含み、当該クチナシ黄色素がオール-トランス-クロセチンを含み、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1~10000である、項1に記載のヘアカラーリング組成物。
項5. 白髪の染毛に使用される、項1~4のいずれかに記載のヘアカラーリング組成物。
項6. 項1~5のいずれかに記載のヘアカラーリング組成物を用いて、毛髪を染色する、染毛方法。
本発明のヘアカラーリング組成物によれば、特定のクチナシ色素を使用することによって、毛髪への定着性が向上しており、優れた染毛効果を奏することができるので、従来使用されている染色補助剤の使用量を減らしたり、未配合にしたりすることができるので、髪や頭皮へのダメージを抑制したり、染毛時に皮膚等への染色を抑制したりすることができる。
従来技術では、天然由来の色素では染毛効果が不十分であり、安全上の懸念がある合成染料を使用せざるを得なかったが、本発明のヘアカラーリング組成物によれば、天然由来の色素であるクチナシ色素による優れた染毛効果を実現でき、より安全性の高い製品の提供が可能になる。
また、本発明のヘアカラーリング組成物は、それ自体で毛髪への定着性が高いクチナシ色素を直接染料として使用しているので、組成上の制約が少ないという利点もあり、様々な組成や形態のヘアカラーリング製品の提供が可能になる。
なお、限定的な解釈を望むものではないが、本発明のヘアカラーリング組成物によって、優れた染毛効果を実現している作用機序は、次のように考えられる。本発明のヘアカラーリング組成物では、使用するクチナシ色素は陽イオン交換樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が所定値以下であり、正電荷を有する色素成分が比較的多く含まれている。このような正電荷を有する色素成分は、一般的な塩基性染毛料と同様の性質を持ち、これを同等の原理で髪の毛に吸着して、優れた染色効果を奏すると考えられる。つまり、本発明で使用するクチナシ色素は、比較的多く含まれる正電荷を有する色素成分が、髪毛を構成しているケラチン中のカルボキシル基と電気的に引き合うことによって定着し易くなっており、優れた染毛効果を実現していると考えられる。
試験例1において、各種クチナシ青色素を含む染色液(pH7.0)で天然白髪を染色した結果を示す図である。 試験例1において、各種クチナシ青色素を含む染色液(pH3.0)で天然白髪を染色した結果を示す図である。 試験例1において、クチナシ青色素を含む染色液(pH7.0)で、各種温度条件で天然白髪を染色した結果を示す図である。 試験例2において、各種クチナシ赤色素を含む染色液(pH7.0)で天然白髪を染色した結果を示す図である。 試験例2において、実施例2-1のクチナシ赤色素を含む染色液(pH3.0)で天然白髪を染色した結果を示す図である。 試験例3において、各種クチナシ黄色素を含む染色液(pH7.0)で天然白髪を染色した結果を示す図である。
1.定義
本発明において、「色価E10% 1cm」とは、色素の色の濃さを表す単位であり、吸光度計にて信頼性のある濃度範囲で光路長1cmのセルを用いて測定した時の極大吸収波長の吸光度を10重量%溶液での値に換算した値のことをいう。
クチナシ青色素の極大吸収波長は600nm付近にあるので、クチナシ青色素の色価E10% 1cmは、600nm付近に極大吸収波長を特定し、その吸光度を測定することによって求めることができるが、極大吸収波長がない場合には600nmの吸光度を測定すればよい。クチナシ青色素の色価の測定において、吸光度測定用の色素液の希釈溶媒としては、クエン酸緩衝液(pH7.0)(食品添加物公定書第8版記載のもの)が用いられる。
クチナシ赤色素の極大吸収波長は535nm付近にあるので、クチナシ赤色素の色価E10% 1cmは、535nm付近に極大吸収波長を特定し、その吸光度を測定することによって求めることができるが、極大吸収波長がない場合には535nmの吸光度を測定すればよい。クチナシ赤色素の色価の測定において、吸光度測定用の色素液の希釈溶媒としては、酢酸緩衝液(pH4.0)(食品添加物公定書第8版記載のもの)が用いられる。
クチナシ黄色素(クロセチンタイプ)の極大吸収波長は420nm付近にあるので、本発明においてクチナシ黄色素の色価E10% 1cmは、420nm付近に極大吸収波長を特定し、その吸光度を測定することによって求めることができるが、極大吸収波長がない場合には420nmの吸光度を測定すればよい。クチナシ黄色素の色価の測定において、吸光度測定用の色素液の希釈溶媒としては、0.5%(w/v)リン酸三ナトリウム水溶液が用いられる。
2.本発明のヘアカラーリング組成物
本発明のヘアカラーリング組成物は、下記(i)~(iii)に示す少なくとも1種のクチナシ色素を含有することを特徴とする。以下、本発明のヘアカラーリング組成物について詳述する。
(i)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が85%以下になる、クチナシ青色素(以下、「クチナシ青色素(i)」と表記することがある)。
(ii)ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が60%以下になる、クチナシ赤色素(以下、「クチナシ赤色素(ii)」と表記することがある)。
(iii)13-シス-クロセチンを含み、オール-トランス-クロセチンを含むかまたは含まず、オール-トランス-クロセチンを含む場合は、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1以上である、クチナシ黄色素(以下、「クチナシ黄色素(iii)」と表記することがある)。
2-1.クチナシ色素
本発明のヘアカラーリング組成物は、毛髪を染色する染料(直接染料)として、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及びクチナシ黄色素(iii)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。このように、特定のクチナシ色素を直接染料として使用することによって、毛髪への定着性を向上させ、優れた染毛効果を奏することができる。以下、各クチナシ色素の特性等について説明する。
2-1-1.クチナシ青色素(i)
2-1-1-1.クチナシ青色素(i)の特性
本発明で使用されるクチナシ青色素(i)は、ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が85%以下になるという特性を有するクチナシ青色素である。本発明で使用されるクチナシ青色素(i)として、毛髪への定着性をより一層向上させるという観点から、前記回収率が、好ましくは65%以下、より好ましくは45%以下、更に好ましくは25%以下、特に好ましくは15%以下となるものが挙げられる。本発明で使用されるクチナシ青色素(i)の前記回収率の下限値については、特に制限されないが、例えば0%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.5%以上、又は1%以上であればよい。
本発明で使用されるクチナシ青色素(i)の前記回収率として、具体的には0~85%、好ましくは0.001~65%、より好ましくは0.01~45%、更に好ましくは0.1~25%、特に好ましくは1~15%が挙げられる。
本発明において、「ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率」は、具体的には、以下の(1)~(4)に示す条件で試験を行うことにより求めることができる。
(1)サンプル溶液の調製
測定対象となるクチナシ青色素をエタノール水溶液(エタノール:水の容量比が20:80)に希釈し、サンプル液を調製した。サンプル液におけるクチナシ青色素の濃度は、当該サンプル液をイオン交換水で10倍稀釈した際の吸光度が1.0になるように調整した。なお、サンプル液は、pHを7.0に調整した。pHを上げる場合は0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を使用し、下げる場合は、0.1mol/L塩酸を使用する。
(2)弱酸性陽イオン交換樹脂
ナトリウムイオン型(Na形)のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂を使用する。当該Na形のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂は、水素イオン型(H形)のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂(アルカリ吸着容量2.5mep/ml-R以上、粒度分布1、180μm以上5%以下、300μm未満1%以下、有効径0.40mm以上、真比重1.13、及び有効pH範囲5~14)をNa形に変換したものが使用される。当該H形のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂としては、具体的には、商品名「ダイヤイオンTM WK10(H形)」(三菱化学株式会社製)を使用できる。なお、H形(水素イオン型)のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂をNa形に変換する方法は、当該技術分野で通常行われている方法であればよいが、例えば、H形のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂をカラムに充填後、10重量%NaOHを樹脂容量の2倍量、SV=2で通液し、その後イオン交換水を樹脂容量の20倍量通液しアルカリを充分に洗浄する方法が挙げられる。
(3)弱酸性陽イオン交換樹脂への通液
カラム(内径2cm、高さ30cm)に、前記弱酸性陽イオン交換樹脂を20ml充填し、エタノール水溶液(エタノール:水の容量比が20:80)で十分に洗浄する。次いで、前記サンプル溶液15mlを空間速度(SV)が5となるように通液する。その後、エタノール水溶液(エタノール:水の容量比が20:80)を通液し、弱酸性陽イオン交換樹脂を洗浄する。前記サンプル溶液の通液時の流出液、及び洗浄時の流出液を合計200mlになるまで回収し、これを回収液とする。
(4)色素成分の回収率の算出
得られた回収液の600nm付近の極大吸収波長の吸光度を測定する。この際に、極大吸収波長がない場合には600nmの吸光度を測定する。下記式に従って、色素成分の回収率を算出する。
Figure 0007364463000001
2-1-1-2.クチナシ青色素(i)の製造方法
クチナシ青色素(i)の製造方法については、前記特性を有するものが得られることを限度として特に制限されない。例えば、アミノ酸、タンパク質加水分解物、タンパク質等のアミノ基含有化合物の中から、クチナシ青色素(i)の生成を可能にする特定の化合物を単独又は組み合わせて、これをアカネ科クチナシ(Gardenia augusta Merrill、又はGardenia jasminoides Ellis)の果実から得られるイリドイド配糖体と共存させてβ-グルコシダーゼを作用させる方法が挙げられる。通常のクチナシ青色素の製造では、タンパク質加水分解物が使用されているが、市販品の製造等で一般的に用いられているタンパク質加水分解物を使用しただけでは、クチナシ青色素(i)を得ることができない。
クチナシ青色素(i)の製造方法の一態様として、アルギニンとアカネ科クチナシの果実から得られるイリドイド配糖体を混合して所定の酵素反応に供する方法が挙げられる。以下、アルギニンとイリドイド配糖体を用いてクチナシ青色素(i)を製造する方法について説明する。
<アルギニン>
クチナシ青色素(i)を得るために使用される好適なアミノ基含有化合物である。アルギニンは、タンパク質の加水分解で得られたもの、微生物醗酵によって得られたもの等のいずれであってもよい。
<イリドイド配糖体>
イリドイド配糖体としては、通常のクチナシ青色素の製造原料として使用できるものであればよい。
アカネ科クチナシの果実からイリドイド配糖体を得る方法についても、特に制限されないが、例えば、アカネ科クチナシの果実を抽出処理に供してイリドイド配糖体を得る方法が挙げられる。以下、抽出処理によってアカネ科クチナシの果実からイリドイド配糖体を得る方法について説明する。
抽出原料として使用されるアカネ科クチナシの果実は、必要に応じて、乾燥、細切、粉砕等を行っていてもよい。
抽出処理に使用される抽出溶媒としては、イリドイド配糖体を溶解させ得ることを限度として特に制限されないが、例えば、水、アルコール(好ましくはエタノール)、又はこれらの混合液が挙げられる。
抽出処理時の温度及び時間については、使用する抽出溶媒の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20~100℃程度で0.5~24時間が挙げられる。
斯くして抽出処理した後に、固形分を除去することによって、イリドイド配糖体を含む抽出液が含まれる。当該抽出液には、イリドイド配糖体の他に、黄色素成分も含まれるため、当該抽出液を、更に黄色素成分の除去処理に供する。黄色素成分の除去処理は、吸着樹脂を使用した公知の方法で行うことができる。
<他の原料>
β-グルコシダーゼを作用させる際には、前記アルギニン及びイリドイド配糖体と共に、必要に応じて、アルギニン以外のアミノ酸、タンパク質加水分解物等の他の成分を更に共存させてもよい。
アルギニン以外のアミノ酸としては、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
タンパク質加水分解物としては、例えば、大豆タンパク質、小麦タンパク質等の植物性タンパク質の加水分解物;ゼラチン、カゼイン、乳タンパク質等の動物性タンパク質の加水分解物;酵母由来タンパク質等の微生物由来タンパク質等が挙げられる。これらのタンパク質加水分解物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記アルギニン及びイリドイド配糖体と共に、アルギニン以外のアミノ酸及び/又はタンパク質加水分解物を共存させる場合、アルギニン以外のアミノ酸及び/又はタンパク質加水分解物の使用量については、特に制限されず、所定の物性を有するクチナシ青色素(i)が得られる範囲で適宜設定すればよい。
<β-グルコシダーゼ>
β-グルコシダーゼとしては、通常のクチナシ青色素の製造に使用されるものであればよいが、例えば、Aspergillus niger、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、アーモンド等に由来するものが挙げられる。クチナシ青色素(i)の製造に使用されるβ-グルコシダーゼとしては、スミチームC6000、スミチームAC、スミチームC、スミチームX、スミチームBGT、スミチームBGA(商品名;新日本化学工業社製)、セルロシンAC40、セルロシンT3、セルロシンAL(商品名;エイチビイアイ社製)オノズカ3S、Y-NC(商品名;ヤクルト薬品工業社製)、セルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(商品名;天野エンザイム社製)等の市販品を使用することもできる。
<β-グルコシダーゼによる処理>
β-グルコシダーゼによる処理は、アルギニンと前記イリドイド配糖体の共存下でクチナシ青色素を生成できる条件下で行えばよいが、例えば、アルギニン及び前記イリドイド配糖体を水に混合した溶液にβ-グルコシダーゼを添加して好気的な条件でインキュベートすればよい。
β-グルコシダーゼによる処理は、具体的には、アルギニン1~50質量%、前記イリドイド配糖体1~50質量%、及び前記イリドイド配糖体1g当たり1~300U程度となる濃度のβ-グルコシダーゼを、好気的な条件で共存させればよい。ここで、β-グルコシダーゼ1Uとは、p-ニトロフェニルβグルコピラノシド(pNPG)を基質とし、50℃、1分間において1μモルの基質を加水分解する酵素量を指す。
β-グルコシダーゼを作用させる際の温度条件については、β-グルコシダーゼの作用温度範囲内で適宜設定すればよいが、例えば20~70℃程度、好ましくは40~60℃程度が挙げられる。
β-グルコシダーゼを作用させる際のpH条件については、β-グルコシダーゼの作用pH範囲内で適宜設定すればよいが、例えばpH4~5程度、好ましくはpH4.2~4.8程度が挙げられる。
β-グルコシダーゼを作用させる時間については、使用するβ-グルコシダーゼや前記イリドイド配糖体の量、温度条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5~100時間程度、好ましくは10~50時間程度が挙げられる。
また、β-グルコシダーゼを作用させる際に好気的条件にする方法としては、特に制限されないが、例えば、撹拌、振盪等の機械的方法;空気等の酸素含有ガスを系内に吹き込む方法;これらの組み合わせ等が挙げられる。
斯くしてβ-グルコシダーゼを作用させることによりクチナシ青色素(i)が生成する。β-グルコシダーゼを作用させた後に、遠心分離、フィルターろ過等の固液分離処理に供して固形分を除去することにより、クチナシ青色素(i)を含む水溶液が得られる。得られたクチナシ青色素(i)を含む水溶液は、そのまま本発明のヘアカラーリング組成物に使用してもよいが、必要に応じて、濃縮して濃縮液の状態で使用してもよく、また、乾燥処理に供して粉末状にして使用してもよい。
また、得られたクチナシ青色素(i)は、必要に応じて、精製処理に供して、クチナシ青色素以外の成分を除去してもよい。
2-1-2.クチナシ赤色素(ii)
2-1-2-1.クチナシ赤色素(ii)の特性
本発明で使用されるクチナシ赤色素(ii)は、ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が60%以下になるという特性を有するクチナシ赤色素である。本発明で使用されるクチナシ赤色素(ii)として、毛髪への定着性をより一層向上させるという観点から、前記回収率が、好ましくは40%以下、より好ましくは30%、更に好ましくは20%、特に好ましくは5%となるものが挙げられる。本発明で使用されるクチナシ赤色素(ii)の前記回収率の下限値については、特に制限されないが、例えば、0%以上、0.001%以上、0.01%以上、0.5%以上、又は1%以上であればよい。本発明で使用されるクチナシ赤色素(ii)の前記回収率として、具体的には0~60%、好ましくは0.001~40%、より好ましくは0.01~30%、更に好ましくは0.1~20%、特に好ましくは1~5%が挙げられる。
本発明において、「ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率」は、具体的には、クチナシ青色素をクチナシ赤色素に置き換えること以外は、前記クチナシ青色素の場合と同様の方法で求められる。
2-1-2-2.クチナシ赤色素(ii)の製造方法
クチナシ赤色素(ii)の製造方法については、前記特性を有するものが得られることを限度として特に制限されない。例えば、アミノ酸、タンパク質加水分解物、タンパク質等のアミノ基含有化合物の中から、クチナシ赤色素(ii)の生成を可能にする特定の化合物を単独又は組み合わせて、これをアカネ科クチナシ(Gardenia augusta Merrill、又はGardenia jasminoides Ellis)の果実から得られるイリドイド配糖体のエステル加水分解物とを共存させ、β-グルコシダーゼを作用させる方法が挙げられる。
通常のクチナシ赤色素の製造では、タンパク質加水分解物が使用されているが、市販品の製造等で一般的に用いられているタンパク質加水分解物を使用しただけでは、クチナシ赤色素(ii)を得ることができない。
クチナシ赤色素(ii)の製造方法の一態様として、アルギニンとアカネ科クチナシの果実から得られるイリドイド配糖体のエステル加水分解物を混合して所定の酵素反応に供する方法が挙げられる。以下、アルギニンとイリドイド配糖体を用いてクチナシ青色素(i)を製造する方法について説明する。
<アルギニン>
クチナシ赤色素(ii)を得るために使用される好適なアミノ基含有化合物である。アルギニンは、タンパク質の加水分解で得られたもの、微生物醗酵によって得られたもの等のいずれであってもよい。
<イリドイド配糖体のエステル加水分解物>
イリドイド配糖体のエステル加水分解物とは、イリドイド配糖体にけるイリドイド骨格の4位に結合している基がカルボキシル基である化合物である。イリドイド配糖体のエステル加水分解物としては、通常のクチナシ赤色素の製造原料として使用できるものであればよい。
イリドイド配糖体のエステル加水分解物を得る方法については、特に制限されないが、例えば、アカネ科クチナシの果実を抽出処理に供してイリドイド配糖体を得て、当該イリドイド配糖体のイリドイド骨格の4位にエステル結合を加水分解してカルボキシル基に変換する方法が挙げられる。
アカネ科クチナシの果実を抽出処理に供してイリドイド配糖体を得る方法については、前記「クチナシ青色素(i)」の欄に記載の通りである。
前記イリドイド配糖体のイリドイド骨格の4位にエステル結合を加水分解する方法については、特に制限されず、通常のクチナシ赤色素の製造の際に採用されている方法を用いることができるが、具体的には、アルカリ加水分解、酸加水分解、酵素による加水分解等が挙げられる。
アルカリ加水分解に使用されるアルカリの種類については、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらのアルカリは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸加水分解に使用される酸の種類については、特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酒石酸、フマル酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酵素による加水分解に使用される酵素の種類については、イリドイド配糖体のイリドイド骨格の4位のエステル結合を加水分解できる限り、特に制限されないが、例えば、エステラーゼ等が挙げられる。
これらの加水分解方法の中でも、好ましくはアルカリ加水分解が挙げられる。アルカリ加水分解の条件については、通常のクチナシ赤色素の製造の際に採用されている条件であればよいが、例えば、水溶液中でイリドイド配糖体と過剰量のアルカリを共存させて、10~80℃程度、好ましくは30~60℃程度で、1~48時間低程度、好ましくは5~24時間程度が挙げられる。アルカリ加水分解後は、酸を添加してpHを中性以下に調整しておくことが好ましい。
<他の原料>
β-グルコシダーゼを作用させる際には、アルギニン及び前記イリドイド配糖体のエステル加水分解物と共に、必要に応じて、アルギニン以外のアミノ酸、タンパク質加水分解物等の他の成分を更に共存させてもよい。
アルギニン以外のアミノ酸としては、例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
タンパク質加水分解物としては、例えば、大豆タンパク質、小麦タンパク質等の植物性タンパク質の加水分解物;ゼラチン、カゼイン、乳タンパク質等の動物性タンパク質の加水分解物;酵母由来タンパク質等の微生物由来タンパク質等が挙げられる。これらのタンパク質加水分解物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記アルギニン及びイリドイド配糖体のエステル加水分解物と共に、アルギニン以外のアミノ酸及び/又はタンパク質加水分解物を共存させる場合、アルギニン以外のアミノ酸及び/又はタンパク質加水分解物の使用量については、特に制限されず、所定の物性を有するクチナシ赤色素(ii)が得られる範囲で適宜設定すればよい。
<β-グルコシダーゼ>
β-グルコシダーゼとしては、通常のクチナシ赤色素の製造に使用されるものであればよく、その具体例等については、前記「クチナシ青色素(i)」の欄に記載の通りである。
<β-グルコシダーゼによる処理>
β-グルコシダーゼによる処理は、アルギニンと前記イリドイド配糖体のエステル加水分解物の共存下でクチナシ青色素を生成できる条件下で行えばよく、その具体的条件等については、イリドイド配糖体をイリドイド配糖体のエステル加水分解物に置き換えること以外は、前記「クチナシ青色素(i)」の欄に記載の通りである。
斯くしてβ-グルコシダーゼを作用させることによりクチナシ赤色素(ii)が生成する。β-グルコシダーゼを作用させた後に、遠心分離、フィルターろ過等の固液分離処理に供して固形分を除去することにより、クチナシ赤色素(ii)を含む水溶液が得られる。得られたクチナシ赤色素(ii)を含む水溶液は、そのまま本発明のヘアカラーリング組成物に使用してもよいが、必要に応じて、濃縮して濃縮液の状態で使用してもよく、また、乾燥処理に供して粉末状にして使用してもよい。
また、得られたクチナシ赤色素(ii)は、必要に応じて、精製処理に供して、クチナシ赤色素以外の成分を除去してもよい。
2-1-3.クチナシ黄色素(iii)
2-1-3-1.クチナシ黄色素(iii)の特性
本発明で使用されるクチナシ黄色素(iii)は、13-シス-クロセチンを含み、オール-トランス-クロセチンを含むかまたは含まず、オールートランス-クロセチンを含む場合は、HPLCによって分析したときのオールートランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1以上であるという特性を有するクチナシ黄色素である。以下、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積を単に「ピーク面積比(13-cis/All-trans)」と表記することもある。このようなクチナシ黄色素(iii)を使用することによって、毛髪をムラの無い黄色に染めることが可能になる。
本発明において、「オール-トランス-クロセチン」とは、クロセチンに存在する二重結合が全てトランス型であり、下記構造の化合物を指す。
Figure 0007364463000002
また、「13-シス-クロセチン」とは、クロセチンの13位と14位に存在する二重結合がシス型であり、下記構造の化合物を指す。
Figure 0007364463000003
本発明において、ピーク面積比(13-cis/All-trans)は、オール-トランス-クロセチンと13-シス-クロセチンとを分離できる条件でHPLC分析を行い、両者のピーク面積を求め、オール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積を算出することによって求められる。具体的には、カラムとしてInertsil ODS-3 5μm 4.6×250mm(GLサイエンス社製)を使用し、溶媒としてA液(1%(v/v)酢酸)及びB液(アセトニトリル)を用いて流速1ml/分で、カラム温度40℃で0分のときのB液の割合が20%、20分のときのB液の割合が80%、30分のときのB液の割合が80%、30.01分のときのB液の割合が20%、40分のときのB液の割合が20%となるようにタイムプログラムし、検出器としてフォトダイオードアレイ(PDA)を使用して測定された場合の417.0nmの吸光度で作製されるクロマトグラムでのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積を算出することによって求められる。当該ピーク面積比(13-cis/All-trans)は、13-シス-クロセチンのピーク面積をオール-トランス-クロセチンのピーク面積で除算することにより求められる。この値は、オール-トランス-クロセチンの量が少ないほど大きくなる。
本発明で使用されるクチナシ黄色素(iii)として、毛髪への定着性をより一層向上させるという観点から、ピーク面積比(13-cis/All-trans)が、好ましくは1~10000、より好ましくは1~5000、更に好ましくは1.5~3000、より更に好ましくは1.5~2000、一層好ましくは1.5~1000、より一層好ましくは1.5~500、特に好ましくは1.8~100、最も好ましくは1.8~15が挙げられる。
なお、現時点で13-シス-クロセチンのモル吸光係数は不明である。しかし、シス-クロシンのモル吸光係数:トランス-クロシンのモル吸光係数が約63350:約89000=約0.7:1であること(J.Agric.Food Chem,2008,56,1627-1637)を考慮すると、13-シス-クロセチンのモル吸光係数もオール-トランス-クロセチンのモル吸光係数よりかなり小さいと考えられる。そのため、オール-トランス-クロセチンのピーク面積と13-シス-クロセチンのピーク面積とが1:1であったとしても、その量比は1:1ではなく、13-シス-クロセチンの方がかなり多いと推定される。
2-1-3-2.クチナシ黄色素(iii)の製造方法
クチナシ黄色素(iii)の製造方法については、前記特性を有するものが得られることを限度として特に制限されないは、好適な例として、アカネ科クチナシの果実から得られるクロシン含有抽出液中のクロシンを加水分解してクロセチン含有混合溶液(当該混合溶液には、13-シス-クロセチン及びオール-トランス-クロセチンの双方が含まれる)を得る工程;得られたクロセチン含有混合溶液からオール-トランス-クロセチンを除去することによりクチナシ黄色素(iii)を得る工程を含む方法が挙げられる。このようなクチナシ黄色素(iii)の製造方法の具体的条件等は、特開2011-168649号公報等に開示されており、当該公知の内容に従って設定すればよい。
2-1-4.クチナシ色素の使用態様、含有量
本発明のヘアカラーリング組成物は、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及びクチナシ黄色素(iii)の中から1種を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。これらのクチナシ色素の内、いずれを使用するかについては、毛髪に付与すべき色に応じて適宜設定すればよい。
本発明のヘアカラーリング組成物におけるクチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)の含有量については、使用するクチナシ色素に種類、ヘアカラーリング組成物の製品形態、毛髪に付与すべき色の濃さ等に応じて適宜設定すればよいが、具体的には、以下の範囲が例示される。
クチナシ青色素(i)を使用する場合:ヘアカラーリング組成物の色価E10% 1cmが0.01以上、好ましくは0.01~40、より好ましくは0.5~30、更に好ましくは1.0~20となる量。
クチナシ赤色素(ii)を使用する場合:ヘアカラーリング組成物の色価E10% 1cmが0.1以上、好ましくは0.1~40、より好ましくは0.5~30、更に好ましくは1.0~20となる量。
クチナシ黄色素(iii)を使用する場合:ヘアカラーリング組成物の色価E10% 1cmが0.1以上、好ましくは0.1~40、より好ましくは0.5~30、更に好ましくは1.0~20となる量。
また、本発明のヘアカラーリング組成物におけるクチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)の含有量として、以下の範囲が例示される。
クチナシ青色素(i)を使用する場合:クチナシ青色素(i)の含有量が0.01質量%以上、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは1.0~10質量%。
クチナシ赤色素(ii)を使用する場合:クチナシ赤色素(ii)含有量が0.1質量%以上、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%、特に好ましくは1.0~20質量%。
クチナシ黄色素(iii)を使用する場合:クチナシ黄色素(iii)含有量が0.1質量%以上、好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%、特に好ましくは1.0~20質量%。
2-2.浸透促進剤(染色補助剤)
本発明で使用されるクチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)は、毛髪への定着性が高く、浸透促進剤を使用せずとも、優れた染毛効果があるので、本発明のヘアカラーリング組成物には、浸透促進剤が含まれていなくてもよい。但し、毛髪への浸透を更に促進することにより毛髪への色素の定着性をより一層向上させるために、浸透促進剤が含まれていてもよい。
浸透促進剤としては、直接染料が毛髪内部に浸透するのを促進できるものであればよいが、例えば、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、p-アニシルアルコール等の芳香族アルコール;エタノール、イソプロパノール等の低級族一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール;炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらの浸透促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のヘアカラーリング組成物における浸透促進剤の含有量については、特に制限されないが、例えば0~10質量%、好ましくは0~5.0質量%、更に好ましくは0~0.4質量%が挙げられる。直接染料を使用した従来のヘアカラーリング組成物では、浸透促進剤を配合する場合はその含有量が通常0.5質量%以上に設定されているが、本発明のヘアカラーリング組成物では、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)の毛髪への定着性が高いため、浸透促進剤の含有量を0質量%又は少量に設定することができ、浸透促進剤の配合による安全性の懸念を払拭又は低減することができる。
2-3.還元剤(染色補助剤)
本発明のヘアカラーリング組成物には、還元剤が含まれていなくてもよい。但し、毛髪への色素の定着性をより一層向上させるために、還元剤が含まれていてもよい。
還元剤の種類については、特に制限されないが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩、L-アスコルビン酸ナトリウム、チオール基を有する化合物等が挙げられる。これらの還元剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のヘアカラーリング組成物における還元剤の含有量については、特に制限されないが、例えば0~1質量%、好ましくは0~0.8質量%、更に好ましくは0~0.2質量%が挙げられる。直接染料を使用した従来のヘアカラーリング組成物では、還元剤を配合する場合はその含有量が通常0.3質量%以上に設定されているが、本発明のヘアカラーリング組成物では、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)の毛髪への定着性が高いため、浸透促進剤の含有量を0質量%又は少量に設定することができ、還元剤の配合による安全性の懸念を払拭又は低減することができる。
2-4.アルカリ剤(染色補助剤)
本発明のヘアカラーリング組成物には、アルカリ剤が含まれていなくてもよい。但し、キューティクルを開くことによって毛髪への色素の定着性をより一層向上させるために、アルカリ剤が含まれていてもよい。
アルカリ剤の種類については、特に制限されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等のアルカノールアミン及びその塩;アンモニア及びその塩;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のヘアカラーリング組成物におけるアルカリ剤の含有量については、特に制限されず、後述するpH範囲を充足できるように適宜設定すればよいが、例えば、0~1.5質量%、好ましくは0~1.0質量%、更に好ましくは0~0.4質量%が挙げられる。直接染料を使用した従来のヘアカラーリング組成物では、アルカリ剤を配合する場合はその含有量が通常0.5質量%以上に設定されているが、本発明のヘアカラーリング組成物では、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)の毛髪への定着性が高いため、アルカリ剤の含有量を0質量%又は少量に設定することができ、アルカリ剤の配合による安全性の懸念を払拭又は低減することができる。
2-5.その他の成分
本発明のヘアカラーリング組成物には、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)に加えて、必要に応じて、酸性染料、天然染料、ニトロ染料、分散染料等の直接染料;酸化染料等の反応型染料等を含んでいてもよい。このような他の染料の配合の有無については、毛髪に付与すべき色調等に応じて決定すればよい。
また、本発明のヘアカラーリング組成物は、前述する成分の他に、ヘアカラーリング組成物剤において通常使用されるその他の成分を含有してよい。このような成分としては、例えば、高級アルコール類、シリコーン類、炭化水素類、ロウ類、動植物油脂、高級脂肪酸類、有機溶剤、増粘剤、有機酸、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、両性ポリマー、タンパク質、タンパク質加水分解物、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、抗菌剤、保湿剤、pH調整剤、動物エキス、植物エキス、酵母エキス、ビタミン類、色素、香料、紫外線吸収剤、育毛成分、羊毛成分、フケ防止成分、等を適宜配合することが可能である。これらの成分の含有量は、使用する成分の種類、ヘアカラーリング組成物の製品形態等に応じて適宜設定することができる。
2-6.pH
本発明のヘアカラーリング組成物のpHについては、特に制限されず、例えば、pH3.0~11.0の範囲内で適宜設定すればよい。毛髪へのダメージを抑制しつつ、色素の毛髪への定着性をより一層向上させるという観点から、本発明のヘアカラーリング組成物のpHとして、好ましくは3.0~8.5、更に好ましくは4.0~7.5、特に好ましくは6.0~7.0が挙げられる。
2-7.適用対象・製品形態等
本発明のヘアカラーリング組成物は、毛髪を染色するために使用される。本発明のヘアカラーリング組成物は、白髪、黒髪、茶髪、金髪等のいずれの髪に適用してもよいが、白髪は本発明のヘアカラーリング組成物による染毛効果が現れ易く、好適な適用対象である。
また、本発明のヘアカラーリング組成物は、永久染毛剤、半永久染毛料等のいずれの製品形態であってもよいが、好ましくは半永久染毛料が挙げられる。
永久染毛剤とは、酸化染料等の反応型染料を使用した染毛剤(日本では、医薬部外品に分類されている)である。本発明のヘアカラーリング組成物を永久染毛剤の製品形態にする場合には、染料として、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)に加えて、酸化染料等の反応型染料を配合して製剤化すればよい。
半永久染毛料とは、直接染料を使用した染毛剤(日本では、化粧料に分類されている)であり、本発明のヘアカラーリング組成物を半永久染毛料の製品形態にする場合には、直接染料として、クチナシ青色素(i)、クチナシ赤色素(ii)、及び/又はクチナシ黄色素(iii)を使用し、必要に応じて他の直接染料も加えて、製剤化すればよい。
本発明のヘアカラーリング組成物を用いて染毛するには、ヘアカラーリング組成物の製品形態に応じた手法で行えばよいが、例えば、染毛すべき毛髪に塗布して所定時間放置した後に、水等で洗い流せばよい。また、本発明のヘアカラーリング組成物を用いて染毛する際の温度条件については、常温であればよいが、染毛時の温度が高い程、染毛効果が向上する傾向があるので、ヘアカラーリング組成物の組成や毛髪に付与すべき色の濃さ等に応じて適宜設定すればよい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
試験例1:クチナシ青色素を使用した染毛試験
1.クチナシ青色素の製造
先ず、粉砕した乾燥クチナシ果実2500gに60%(v/v)エタノール水溶液25000gを加え、60℃で1時間撹拌し抽出した。残渣に再度50%(v/v)エタノール水溶液を適量添加して二次抽出し、あわせてクロシン含有抽出液とした。得られたクロシン含有抽出液を減圧濃縮し、色価E10% 1cmが500のクロシン含有濃縮抽出液を得た。このクロシン含有濃縮抽出液をスチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤(「ダイヤイオンTM HP20:三菱化学株式会社製)にSV=2で通液し、色素成分を吸着させた。次いで20%(v/v)エタノールをSV=2で通液し、流出画分を採取した。この流出画分を、減圧濃縮することにより、黄色素が除去され、ゲニポサイドを含有するクチナシ果実抽出物(液状)を得た。このクチナシ果実抽出物(液状)のゲニポサイド含有量は、45.0%(w/w)であった。
斯くして得られたクチナシ果実抽出物(液状)18.3g、及び表1に示す各種アミノ酸又はタンパク質加水分解物の所定量を水に溶解した後、水酸化ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、水で全量を100mLとした。次いで、β-グルコシダーゼ(1500U/g、「スミチームC」、新日本化学工業株式会社製)を2.0g加え、50℃の温度で42時間通気撹拌した後、90℃、1時間加熱処理を行った。次いで、濾過にて固液分離処理を実施してクチナシ青色素溶液を得た。
2.クチナシ青色素の分析
前記で得られた各クチナシ青色素溶液を、色価E10% 1cmが1になるように20%(v/v)エタノール水溶液に溶解させて、サンプル溶液を調製した。内径2cmのガラスカラムに、ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂(「ダイヤイオンTM WK10(H形)」(三菱化学株式会社製;アルカリ吸着容量2.5mep/ml-R以上、水分53~59%、粒度分布1、180μm以上5%以下、300μm未満1%以下、有効径0.40mm以上、真比重1.13、有効pH範囲5~14、及び耐用温度150℃以下)を20ml分充填し、当該イオン交換樹脂を通常の方法でNa形に変換した後に、通常の方法でコンディショニングを行った。そこに、サンプル溶液15mlをチャージし、流速SV=5で通液した。その後、20%(v/v)エタノール水溶液でイオン交換樹脂を洗浄した。記サンプル溶液の通液時の流出液、及び洗浄時の流出液を合計200mlになるまで回収し、これを回収液とした。得られた回収液の600nm付近の極大吸収波長の吸光度を測定した。なお、極大吸収波長がない場合は600nmの吸光度を測定した。得られた吸光度の値から、前述する式に従って、色素成分の回収率(%)を算出した。また、市販品のクチナシ青色素(「クチナブルーカラー1250P」、グリコ栄養食品株式会社製)についても、同様の分析を行った。各クチナシ青色の色素成分の回収率(%)は、表1に示す通りであった。
Figure 0007364463000004
3.染毛試験(1)
前記で得られたクチナシ青色素溶液の一部を抜き取り、色価E10% 1cm=8.0となるよう水で希釈し、その後、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整したものを染色液とした。
水でよく洗浄した天然白髪(脱色されたものでなく自然と白髪になった人毛)を使毛髪試料とした。前記で得られ染色液40mLに、毛髪試料一束(約1g)を入れ、30℃で30分振盪した。その後、毛髪試料を取り出して、水で洗浄し、ドライヤーで乾かしたものを染色毛とした。また、比較のために、市販品のクチナシ青色素(「クチナブルーカラー1250P」、グリコ栄養食品株式会社製)を使用した染色液;比較例1-15)でも、同様の試験を行った。
染色毛と、染色液で処理していない無染色毛の外観を観察し、更に、色彩色差計を用いて、L値、a値、及びb値を測定し、無染色毛を基準としたときの色調差ΔE値を求めた。
得られた結果を図1及び表2に示す。市販品のクチナシ青色素を使用した場合には、毛髪を殆ど染毛できなかった(比較例1-15)。また、色素成分の回収率が85%超のクチナシ青色素を使用した場合でも、染毛効果が全く認められない又は不十分であった。これに対して、色素成分の回収率が85%以下であるクチナシ青色素を使用した場合に、ΔE値
が格段に高い値になっており、更に外観上も優れた染毛効果が確認された(実施例1-1~1-4)。
Figure 0007364463000005
4.染毛試験(2)
実施例1-1、比較例1-1、1-2、及び1-6で得られたクチナシ青色素溶液を用いて、色価E10% 1cm=8.0となるよう水で希釈し、その後、塩酸にてpHを3.0に調整して染色液を得た。得られた染色液を使用して、前記「3.染毛試験(1)」と同条件で染毛試験を行った。
得られた結果を表3及び図2に示す。この結果、pH3.0に調整した染色液では、色素成分の回収率が85%以下であるクチナシ青色素(比較例1-1、1-2、及び1-6)を使用した場合には、pHが7.0の場合に比して、染毛効果は高くなっていたが、依然として十分といえるものではなかった。一方、色素成分の回収率が85%以下であるクチナシ青色素(実施例1-1)を使用した場合では、pH3.0の場合には、pHが7.0に比して染毛効果が低下したものの、十分な染毛効果が認められた。
Figure 0007364463000006
4.染毛試験(3)
実施例1-1で得られたクチナシ青色素溶液を用いて、色価E10% 1cm=8.0となるよう水で希釈し、その後、水酸化ナトリウムにてpHを7.0に調整して染色液を得た。
水でよく洗浄した天然白髪(脱色されたものでなく自然と白髪になった人毛)を使毛髪試料とした。前記で得られた染色液100mLに、毛髪試料一束(約1g)を入れ、30℃、50℃、又は70℃で40分振盪した。その後、毛髪試料を取り出して、水で洗浄し、ドライヤーで乾かしたものを染色毛とした。
得られた結果を表4及び図2に示す。この結果から、染毛時の温度が高い程、染色の度合いが向上することが確認された。
Figure 0007364463000007
試験例2:クチナシ赤色素を使用した染毛試験
1.クチナシ赤色素の製造
前記試験例1に示す条件で、乾燥クチナシ果実から、黄色素が除去され、ゲニポサイドを含有するクチナシ果実抽出物(液状)を得た。得られたクチナシ果実抽出物(液状)50gを水に溶解した後に水酸化カリウムを用いてpHを13.0に調整し、水で全量を60mLとして40℃にて24時間反応させ、イリドイド配糖体のエステル加水分解物を生成させた。次に、得られた反応液にクエン酸等のpH調整剤を用いてpHを4.5に調整し、β-グルコシダーゼ(1500U/g、「スミチームC」、新日本化学工業株式会社製)を10.0g加え、更に表4に示す各種アミノ酸の所定量を添加し、50℃の温度で24時間通気撹拌した後、90℃、1時間加熱処理を行った。次いで、濾過にて液分離処理を実施してクチナシ赤色素溶液を得た。
2.クチナシ赤色素の分析
吸光度の測定波長を535nm付近の極大吸収波長に設定したこと以外は、前記試験例1の「2.クチナシ青色素の分析」と同様の条件で、各クチナシ赤色の色素成分の回収率(%)を求めた。各クチナシ青色の色素成分の回収率(%)は、表5に示す通りであった。また、市販品のクチナシ赤色素(「ガーデニアンレッドG」(タイショーテクノス社製)についても、同様の分析を行った。
Figure 0007364463000008
3.染毛試験(1)
前記で得られたクチナシ赤色素溶液の一部を抜き取り、色価E10% 1cm=2.7となるよう水で希釈し、その後、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整したものを染色液とした。得られた染色液を使用して、前記試験例1の「3.染毛試験(1)」と同条件で染毛試験を行った。
得られた結果を図4及び表6に示す。市販品のクチナシ赤色素を使用した場合には、毛髪を殆ど染毛できなかった(比較例2-6)。また、色素成分の回収率が60%超のクチナシ赤色素を使用した場合でも、染毛効果がほとんど認められなかった(比較例2-1~2-5)。これに対して、色素成分の回収率が60%以下であるクチナシ赤色素を使用した場合に、ΔE値が格段に高い値になっており、更に外観上も優れた染毛効果が確認された(実施例2-1~2-5)。
Figure 0007364463000009
4.染毛試験(2)
実施例2-1で得られたクチナシ赤色素溶液を用いて、色価E10% 1cm=2.7となるよう水で希釈し、その後、塩酸にてpHを3.0に調整して染色液を得た。得られた染色液を使用して、前記「3.染毛試験(1)」と同条件で染毛試験を行った。
得られた結果を表7及び図5に示す。この結果、色素成分の回収率が60%以下であるクチナシ赤色素(実施例2-1)を使用した場合、pH3.0に調整した染色液では、pHが7.0に比して染毛効果が低下したものの、十分な染毛効果が認められた。
Figure 0007364463000010
試験例3:クチナシ黄色素を使用した染毛試験
1.クチナシ黄色素の製造
粉砕した乾燥クチナシ果実2500gに50%(v/v)エタノール水溶液25000gを加え、60℃で1時間撹拌し抽出した。残渣に再度50%(v/v)エタノール水溶液を適量添加して二次抽出し、あわせてクロシン含有抽出液とした。得られたクロシン含有抽出液を減圧濃縮し、色価500のクロシン含有濃縮抽出液を得た。色価500のクロシン含有濃縮抽出液450gを水2050gで希釈して色価90のクロシン含有液2500gとした。そのクロシン含有液に10質量%水酸化カリウム水溶液を添加し、pH12.0に調整した。そのまま35℃で20時間攪拌することにより、クロシンを加水分解しクロセチン化した。その後、濃塩酸を添加しpH3.0に調整して60分間攪拌することによりクロセチンを析出させた。析出したクロセチンをフィルタープレスにより粗クロセチンケーキとして回収した。この粗クロセチンケーキを酸がなくなるまで水洗した。水洗後のクロセチンケーキ50gを水500gに分散し、10重量%水酸化カリウム水溶液を添加してpH12.0に調整して30分間攪拌することによりクロセチンケーキを溶解させてクロセチン含有アルカリ性混合液を得た。このクロセチン含有アルカリ性混合液へ濃塩酸を添加し、pH7.7に調整したことによりクロセチン含有弱アルカリ性混合液を得た。調整したクロセチン含有弱アルカリ性混合液をすみやかに再度フィルタープレスで濾過し、クチナシ黄色素含有液(13-シス-クロセチン高含有濾液)を得た。この時点のケーキはトランス-クロセチン高含有ケーキであり、このケーキを乾燥して粉砕することにより、トランス-クロセチン高含有クロセチン粉末を得ることができた。クチナシ黄色素含有液(13-シス-クロセチン高含有濾液)に塩酸を添加し、pH3.0に調整して析出させた。フィルタープレスにより得られたケーキを乾燥してクチナシ黄色素粉末(13-シス-クロセチン高含有クロセチン粉末)を得た。
2.クチナシ黄色素の分析
得られたクチナシ黄色素粉末を下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析することにより、オール-トランス-クロセチンと13-シス-クロセチンとのピーク面積の比(ピーク面積比(13-cis/All-trans))を求めた。その結果、得られたクチナシ黄色素粉末のピーク面積比(13-cis/All-trans)は、5.7であった。
<HPLCの条件>
カラム:Inertsil ODS-3 5μm 4.6×250mm(GLサイエンス社製)
溶媒:A液:1%(v/v)酢酸、 B液:アセトニトリル
流速:1ml/分
カラム温度:40℃
検出器:フォトダイオードアレイ(PDA)(417.0nm)
タイムプログラム:
時間 B液濃度
0分 20%
20分 80%
30分 80%
30.01分 20%
40分 20%
3.染毛試験
前記で得られたクチナシ黄色素粉末を色価E10% 1cm=2.7となるよう水で希釈し、その後、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.0に調整したものを染色液とした。得られた染色液を使用して、前記試験例1の「3.染毛試験(1)」と同条件で染毛試験を行った。また、比較のために、市販のクロシン高含有タイプのクチナシ黄色素(「クチナカラー400PS」、グリコ栄養食品株式会社製;比較例3-1)、及び市販のクロセチン高含有タイプのクチナシ黄色素(「クチナカラー1600P」、グリコ栄養食品株式会社製;比較例3-2)を用いて、同様に試験を行った。
なお、市販のクロシン高含有タイプのクチナシ黄色素(比較例3-1)の色価E10% 1cmについては、420nm付近に存在する極大吸収波長の吸光度を測定することによって求めた。
得られた結果を図6及び表8に示す。市販のクロシン高含有タイプのクチナシ黄色素では、ΔE値が低く、毛髪を殆ど染毛できなかった(比較例3-1)。また、市販のクロセチン高含有タイプのクチナシ黄色素では、ΔE値は高かったものの、赤みを帯びたムラのある橙色に染色され、ヘアカラーリングへの実用化に不向きであった。これに対して、実施例3のクチナシ黄色素を使用した場合には、ΔE値が高く、しかも毛髪を均一な黄色に染色できていた。
Figure 0007364463000011

Claims (6)

  1. 下記(i)~(iii)に示す少なくとも1種のクチナシ色素を含有する、ヘアカラーリング組成物:
    (i) アルギニン又はアルギニンを40質量%以上含むアミノ酸混合物とイリドイド配糖体とを用いて得られ、ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が85%以下になる、クチナシ青色素。
    (ii) アルギニン又はアルギニンを50質量%以上含むアミノ酸混合物とイリドイド配糖体のエステル加水分解物とを用いて得られ、ナトリウムイオン型のメタクリル酸系弱酸性陽イオン交換樹脂に通液した場合、当該樹脂に吸着されずに流出される色素成分の回収率が60%以下になる、クチナシ赤色素。
    (iii)13-シス-クロセチンを含み、オール-トランス-クロセチンを含むかまたは含まず、オール-トランス-クロセチンを含む場合は、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1以上である、クチナシ黄色素。
  2. 前記(i)に示すクチナシ青色素を含み、当該クチナシ青色素における前記回収率が65%以下である、請求項1に記載のヘアカラーリング組成物。
  3. 前記(ii)に示すクチナシ赤色素を含み、当該クチナシ赤色素における前記回収率が40%以下である、請求項1に記載のヘアカラーリング組成物。
  4. 前記(iii)に示すクチナシ黄色素を含み、当該クチナシ黄色素がオール-トランス-クロセチンを含み、HPLCによって分析したときのオール-トランス-クロセチンのピーク面積を1とした場合の13-シス-クロセチンのピーク面積が1~10000である、請求項1に記載のヘアカラーリング組成物。
  5. 白髪の染毛に使用される、請求項1~4のいずれかに記載のヘアカラーリング組成物。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のヘアカラーリング組成物を用いて、毛髪を染色する、染毛方法。
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