以下、本発明の防水シートの施工方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の防水シートの施工方法は、躯体100の少なくとも一部を防水シート20で覆う方法であり、躯体100に配置部材55(第1配置部材)を配置した後に、固定する配置・固定工程と、配置部材55の一部に防水シート20の一端を押圧することで仮止めする仮止め工程と、防水シート20が仮止めされていない領域に位置する配置部材55に、防水シート20を接合する第1接合工程と、前記仮止めを解除する解除工程と、を有する。
シート防水構造10の施工時において、躯体100を、防水シート20で被覆する際に、防水シート20と躯体100とが接合されない領域に位置する防水シート20においても、高度な技術を要することなく、シワが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
以下、本発明の防水シートの施工方法を説明するのに先立って、まず、本発明の防水シートの施工方法を適用して施工された、シート防水構造10について詳述する。
<シート防水構造>
図1は、躯体に施工されたシート防水構造を部分的に取り出した部分斜視図、図2は、図1に示すシート防水構造のA-A線縦断面図である。なお、以下の説明では、図1、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1では、説明の便宜上、シート防水構造の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。
本実施形態では、シート防水構造10が施工された、屋上やベランダのような躯体100(構造体)を一例にして説明する。
躯体100は、床部101と、この床部101の外縁を取り囲むように沿って立設して設けられた壁部102とを有している。また、壁部102は、内壁112と、天端122と、外壁132とを有している。
シート防水構造10は、本実施形態では、この躯体100、すなわち枠体をなす壁部102と、底部を構成する床部101とに対して施工されたものであり、防水シート20と、配置部材55(第1配置部材)と、配置部材50(第2配置部材)と、固定ディスク60と、固定ビス70とを有している。
配置部材50は、壁部102が有する内壁112と床部101との境界部103に固定され、また、配置部材55は、壁部102が有する外壁132と壁部102が有する天端122(頂部)との境界部104に固定され、さらに、複数の固定ディスク60は、所定(一定)の間隔を開けて床部101に固定ビス70により固定されており、この状態で、防水シート20は、配置部材50、配置部材55、固定ディスク60および固定ビス70とともに床部101と壁部102とを覆っており、これにより、躯体100の防水性が確保される。
換言すれば、日光や雨水には防水シート20が晒されることとなり、躯体100すなわち壁部102と床部101とが直接的に日光や雨水に晒されることが防止されるため、躯体100の防水性が確保される。また、固定ディスク60および配置部材50、55の上面と防水シート20との下面とが接合されており、これにより、固定ディスク60および配置部材50、55を介して床部101および壁部102と防水シート20とが接合され、その結果、風等に対して防水シート20が引き剥がされることなく躯体100に固定される。
複数(本実施形態では5つ)の固定ディスク60は、前述の通り、所定(一定)の間隔を開けて床部101に固定ビス70により固定され、さらに、この状態で、固定ディスク60の上面と防水シート20との下面とが接合されている。これにより、固定ディスク60を介して床部101と防水シート20とが接合され、その結果、防水シート20は、風等に対して引き剥がされることなく床部101すなわち躯体100に固定されている。
この固定ディスク60は、ディスク本体と、このディスク本体の表面を被覆する樹脂層とを備え、全体形状が円盤状をなし、そのほぼ中心部に厚さ方向に貫通する貫通孔を有している。
この貫通孔には、ディスク本体を床部101側にして固定ビス70が挿通され、固定ビス70が備えるビス頭が、固定ディスク60が備える座繰り部に嵌合した状態で、固定ビス70が床部101に捻じり込み固定されることで、床部101に固定ディスク60が固定される。
また、固定ディスク60は、前述の通り、貫通孔を有するディスク本体と、このディスク本体の表面を被覆する樹脂層とで構成される。このように、ディスク本体の表面を樹脂層で被覆することで、ディスク本体の腐食を確実に防止することができ、さらに、この樹脂層により、固定ディスク60の上面において、防水シート20の下面に対して確実に接合することができる。
ディスク本体は、平面視で真円状をなし、その縦断面形状が長方形状をなしている。すなわち、中心部側から縁部側に向かって厚さが一定の全体形状が円盤状をなすものである。また、その中心部に厚さ方向に貫通する貫通孔を有している。
また、このディスク本体は、例えば、ステンレス鋼板、鉄板のような鋼板、アルミ板、銅板等で構成されるが、鋼板であるのが好ましい。これにより、固定ディスク60を優れた強度を有するものとすることができる。
樹脂層は、樹脂で構成されるものであり、この樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。すなわち、後述する防水シート20を構成する樹脂と、同種または同一であることが好ましい。これにより、樹脂層と防水シート20との密着性を向上させることができる。さらに、ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性や熱融着性に優れるため、前記効果をより顕著に発揮させることができるとともに、ディスク本体の腐食をより確実に防止することができる。
また、この樹脂層を構成する樹脂には、後述する防水シート20の構成材料で挙げる可塑剤、安定化剤等の他の材料が含まれていてもよい。
配置部材50(第2配置部材)は、前述の通り、壁部102が有する内壁112と床部101との境界部103付近に配置されるものである。
この配置部材50は、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とからなり、それぞれ全体形状が長方形状をなす底部51と立ち上がり面52とを有している。
これら底部51および立ち上がり面52は、それぞれ、境界部103に配置する際に、床部101および内壁112に対応するように位置設定され、本実施形態では、このような構成の配置部材50が境界部103を沿うように、1つ配置されている。
なお、本実施形態では、配置部材50が1つ前記境界部103に配置されているが、防水が施工される躯体100の形状は、当然、様々であることから、配置部材50としては、複数の種類の形状のものが予め用意され、実際に施工される躯体100が備える境界部103の形状に合致するものが複数選択される。そして、これら配置部材50は、前記境界部103にその形状に対応するように、並べられる。
この配置部材50には、図示しない貫通孔が設けられ、この貫通孔を介して、固定ビス(図示せず)が床部101に固定されることで、床部101に配置部材50が固定されている。
また、配置部材50は、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。このように、金属板の表面を、樹脂で構成された樹脂層で被覆することで、金属板の腐食を確実に防止することができる。さらに、この樹脂層により、配置部材50の上面において、防水シート20の下面に対して確実に接合することができる。
この配置部材50が備える金属板および樹脂層は、それぞれ、前述した固定ディスク60で挙げたディスク本体および樹脂層と同様のもので構成することができる。
配置部材55(第1配置部材)は、前述の通り、壁部102が有する外壁132と、壁部102が有する天端122(頂部)との境界部104(角部)付近に配置されるものである。
この配置部材55は、配置部材50と同様に、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とからなり、それぞれ全体形状が長方形状をなす頂部56と立ち下がり面57とを有している。
これら頂部56および立ち下がり面57は、それぞれ、境界部104に配置する際に、天端122および外壁132に対応するように位置設定され、本実施形態では、このような構成の配置部材55が境界部104を沿うように、1つ配置されている。
なお、本実施形態では、配置部材55が1つ前記境界部104に配置されているが、防水が施工される躯体100の形状は、当然、様々であることから、配置部材55としては、配置部材50と同様に、複数の種類の形状のものが予め用意され、実際に施工される躯体100が備える境界部104の形状に合致するものが複数選択される。そして、これら配置部材55は、前記境界部104にその形状に対応するように、並べられる。
この配置部材55には、図示しない貫通孔が設けられ、この貫通孔を介して、固定ビス(図示せず)が天端122に固定されることで、壁部102に配置部材50が固定されている。
また、配置部材55は、配置部材50と同様に、金属板と、この金属板の表面を被覆する樹脂層とで構成される。このように、金属板の表面を、樹脂で構成された樹脂層で被覆することで、金属板の腐食を確実に防止することができる。さらに、この樹脂層により、配置部材55の上面において、防水シート20の下面に対して確実に接合することができる。
この配置部材55が備える金属板および樹脂層は、それぞれ、前述した固定ディスク60で挙げたディスク本体および樹脂層と同様のもので構成することができる。ただし、本実施形態では、壁部102に対する防水シート20の施工に、後述の通り、本発明の防水シートの施工方法が適用されることから、配置部材55が備える金属板は、マルテンサイト系ステンレス鋼板、フェライト系ステンレス鋼板、鉄板のような磁性を有する鋼板等の磁性体で構成される。
防水シート20は、シート状(板状)をなし、配置部材50、配置部材55、固定ディスク60および固定ビス70とともに、床部101と壁部102とを覆うものであり、防水シート20の下面と、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60の上面とが接合されている。
これにより、日光や雨水には防水シート20が晒され、躯体100が直接的に日光や雨水に晒されることが防止されることから、躯体100の防水性が確保される。また、台風、突風等の強風下において、防水シート20が風に煽られたとしても、防水シート20が躯体100から吹き飛ばされるのを的確に抑制または防止することができる。
なお、本実施形態では、図1、図2に示すように、防水シート20は、床部101と壁部102とを覆うものがそれぞれ別体として設けられている。すなわち、床部101を覆う防水シート20と、壁部102を覆う防水シート20とは、一体的に設けられることなく、それぞれを覆うように個別に形成されている。
このような防水シート20は、樹脂材料を含有する樹脂シートで構成される。
樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、防水シート20の溶剤溶着性や熱融着性を優れたものとすることができる。
なお、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
また、樹脂材料には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、防水シート20をより優れた柔軟性を有するものとすることができる。
なお、可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、DOP(ジオクチルフタレート)、DBP(ジブチルフタレート)、DIBP(ジイソブチルフタレート)、DHP(ジヘプチルフタレート)のようなフタル酸エステル系可塑剤、DOA(ジ-2-エチルヘキシルアジペート)、DIDA(ジイソデシルアジペート)、DOS(ジ-2-エチルヘキシルセバセート)のような脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、エチレングリコールのベンゾエート類のような芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、およびTOTM(トリオクチルトリメリテート)のようなトリメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、安定剤としては、例えば、グリシン亜鉛等が挙げられ、この場合の安定助剤としては、例えば、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシリル(TXP)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸2-エチルヘキシル・ジフェニルのような有機リン酸エステル等が挙げられる。
以上のことから、防水シート20は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤とを含有する塩化ビニル系樹脂シートで構成されることが好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、防水シート20は、前記樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。
この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられるが、防水シート20を、このような繊維層を備えるものとすることにより、防水シート20の強度(引き裂き強度や引っ張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)を向上させることができる。
また、防水シート20の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、3mm以下程度であるのが好ましく、0.8mm以上、3mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、床部101と壁部102とを、防水シート20により確実に覆うことができる。また、防水シート20が風で煽られることに起因して、この防水シート20に応力が作用したとしても、早期に防水シート20に亀裂が生じるのを的確に抑制することができる。
以上のような構成のシート防水構造10は、例えば、以下に示すシート防水構造の施工方法を適用して施工することができる。
<シート防水構造の施工方法>
本実施形態のシート防水構造の施工方法は、固定ディスク60と配置部材50と配置部材55とを、躯体100の所定の位置に配置する配置工程と、固定ディスク60と配置部材50と配置部材55とを固定する固定工程と、防水シート20で床部101および壁部102の少なくとも一部を固定ディスク60、配置部材50および配置部材55とともに覆い、かつ、固定ディスク60、配置部材50および配置部材55がそれぞれ備える樹脂層に防水シート20を固着する固着工程とを有する。
以下、これら各工程について、詳述する。
[1]まず、シート防水構造10を施工すべき躯体100において、固定ディスク60と配置部材50と配置部材55とを、躯体100の所定の位置に配置する。
すなわち、配置部材50および配置部材55を、それぞれ、境界部103および境界部104に配置するとともに、複数(本実施形態では5つ)の固定ディスク60を、所定(一定)の間隔(ピッチ)を開けて床部101の上面に配置する。
ここで、配置部材50および配置部材55は、予め、樹脂層で金属板の表面(上面)が被覆されたものが用意され、固定ディスク60は、予め、樹脂層でディスク本体の表面(上面)が被覆されたものが用意される。
[2]次に、配置部材50、配置部材55および各固定ディスク60を、躯体100に固定する。
より具体的には、各固定ディスク60の貫通孔に固定ビス70の固定ビス70を挿通して、固定ビス70が備えるビス頭が、固定ディスク60が備える座繰り部に嵌合した状態で、固定ビス70を床部101に捻じり込み固定する。これにより、固定ディスク60が固定ビス70で床部101に固定される。
また、配置部材50には、図示しない貫通孔が設けられており、この貫通孔に挿通した状態で、固定ビス(図示せず)を床部101に固定する。これにより、配置部材50が固定ビスで床部101に固定される。なお、配置部材50の固定ビスを用いた固定は、貫通孔を設ける位置を適宜変更することで、壁部102に対してなされたものであってもよい。
さらに、配置部材55には、図示しない貫通孔が設けられており、この貫通孔に挿通した状態で、固定ビス(図示せず)を壁部102に固定する。これにより、配置部材50が固定ビスで壁部102に固定される。
[3]次に、これら配置部材50、配置部材55、固定ディスク60および固定ビス70とともに床部101と壁部102との表面を防水シート20で覆い、その後、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60と防水シート20とを、それぞれ、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60の上面に位置する樹脂層と、防水シート20の下面とにおいて接合することで、防水シート20を樹脂層に固着させる。
これにより、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を介して躯体100に防水シート20が接合され、その結果、躯体100に防水シート20が固定される。
この配置部材50、配置部材55および固定ディスク60と防水シート20との接合は、例えば、I)溶剤で樹脂層を溶融して接合する溶着法や、II)高周波誘導加熱で樹脂層を溶融して接合する熱融着法を用いることで行われるが、以下、これらの方法について、それぞれ、説明する。
I)溶着法
この溶着法としては、防水シート20の敷設の後に、樹脂層を溶融状態とする刷毛溶着法と注射溶着法とが挙げられる。
(I-1)刷毛溶着法
この刷毛溶着法では、まず、床部101および壁部102の表面に防水シート20を敷設する。
次いで、床部101および壁部102と防水シート20との間から、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60の上面、すなわち、樹脂層の上面に、刷毛ブラシ等を用いて、溶剤(可溶性溶剤)を塗布(供給)する。これにより、樹脂層の上面が溶剤と接触し、その結果、溶融状態とされる。
次いで、防水シート20の上から配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を、押圧することで、防水シート20の下面を樹脂層の上面に固定させる。これにより、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を介して躯体100に防水シート20が接合される。
なお、前記溶剤(可溶性溶剤)としては、樹脂層を溶融状態とし得るものであれば、特に限定されないが、樹脂層が塩化ビニル系樹脂を含む樹脂で構成される場合、例えば、テトラヒドロフラン(THF)ニトロベンゼン、四塩化炭素、ピリジン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、THFであることが好ましい。THFは、樹脂層を確実に溶融状態とし得るとともに、揮発性に優れた溶剤であるため、防水シート20の下面と樹脂層の上面とを強固に固定することができる。
また、本実施形態では、防水シート20は、床部101と壁部102とを覆うものがそれぞれ別体として用意されている。そのため、上述した、刷毛溶着法における各工程は、床部101と壁部102とに対して、それぞれ独立して実施される。
(I-2)注射溶着法
この注射溶着法では、まず、床部101および壁部102の表面に防水シート20を敷設する。
次いで、敷設された防水シート20に対して、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60の上面、すなわち、樹脂層の上面と、防水シート20の下面との間に、注射器を用いて、注射器が備える注射針が防水シート20を貫通した状態として、溶剤を選択的に供給する。これにより、樹脂層の上面が溶剤と接触し、その結果、溶融状態とされる。
次いで、注射針を防水シート20から抜いた後、防水シート20の上から配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を、押圧することで、防水シート20の下面を樹脂層の上面に固定させる。これにより、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を介して躯体100に防水シート20が接合される。
なお、前記溶剤としては、刷毛溶着法で説明したのと同様のものが用いられる。
また、本実施形態では、防水シート20は、床部101と壁部102とを覆うものがそれぞれ別体として用意されている。そのため、上述した、注射溶着法における各工程は、床部101と壁部102とに対して、それぞれ独立して実施される。
II)熱融着法
この熱融着法では、まず、床部101および壁部102の表面に防水シート20を敷設する。
次いで、敷設された防水シート20の上面側から、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60に対応する位置で、高周波を当てる。これにより、金属板およびディスク本体が加熱され、この熱が樹脂層に伝達されることで樹脂層が熱溶融状態とされる。
なお、防水シート20の上面側から、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60に高周波を当てる方法としては、特に限定されないが、例えば、高周波融着機が備える高周波ヘッドを、防水シート20の上から配置部材50、配置部材55および固定ディスク60に押し当てる方法が挙げられる。
次いで、防水シート20の上から配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を、押圧することで、防水シート20の下面を樹脂層の上面に固定させる。これにより、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60を介して躯体100に防水シート20が接合される。
なお、本実施形態では、防水シート20は、床部101と壁部102とを覆うものがそれぞれ別体として用意されている。そのため、上述した、熱融着法における各工程は、床部101と壁部102とに対して、それぞれ独立して実施される。
また、この熱融着法では、配置部材50、配置部材55および固定ディスク60に高周波を当てることで、防水シート20を熱溶融することに代えて、熱風ガン等を用いて防水シート20を直接加熱することで、防水シート20を熱溶融することもできる。
以上のようなI)溶着法(刷毛溶着法、注射溶着法)、II)熱融着法のうち、固定ディスク60と防水シート20との接合には、固定ディスク60(樹脂層)の上面に可溶性溶媒を塗布することで少なくとも表面が溶融状態とされた樹脂層に防水シート20を貼り合わせることにより、防水シート20を樹脂層に固着するI)溶着法を用いることが好ましい。I)溶着法によれば、樹脂層の裏面(下面)を溶融状態とすることなく、表面(上面)を選択的に溶融状態として樹脂層に対する防水シート20の固着を実施することができる。
さらに、I)溶着法の中でも、(I-1)刷毛溶着法を用いることがより好ましい。刷毛溶着法によれば、樹脂層の上面のほぼ全面に亘って、可溶性溶媒をより均一に塗布(供給)することができるため、樹脂層の上面のほぼ全面で防水シート20との接合部位を形成することができる。したがって、防水シート20が風で煽られて、防水シート20が屈曲する際に、防水シート20と樹脂層との間における剥離を生じさせることなく、ディスク本体と樹脂層との間で確実に剥離させることができる。そのため、剥離された樹脂層は、防水シート20に付着することから、屈曲する防水シート20をこの樹脂層により確実に補強することができる。
以上のような工程を経て、シート防水構造10が躯体100に施工される。
さて、以上のような施工方法を適用して、シート防水構造10が躯体100に施工されるが、前述の通り、このシート防水構造10では、壁部102側において、壁部102の下端側の境界部103に配置・固定された配置部材50と、壁部102の上端側の境界部104に配置・固定された配置部材55に対して、防水シート20が選択的に接合されている。したがって、壁部102の配置部材50および配置部材55が配置・固定されている領域を除く領域においては、壁部102と防水シート20とが接合していない。そのため、前述した施工方法において、壁部102に対して防水シート20を施工する際に、特に、壁部102の内壁112側に位置する防水シート20において、床部101が雨水等の水を効率よく排出し得ることを目的に傾斜していること等に起因してシワが生じてしまうのを、的確に抑制または防止するには、熟練した高度な技術を要するという問題があった。
これに対して、本発明では、壁部102に対する防水シート20の施工時に、躯体100の少なくとも一部を防水シート20で覆う方法であり、躯体100の所定の位置である境界部104に配置部材55(第1配置部材)を配置した後に、固定する配置・固定工程と、配置部材55の一部に防水シート20の一端を押圧することで仮止めする仮止め工程と、防水シート20が仮止めされていない領域に位置する配置部材55に、防水シート20を接合する第1接合工程と、前記仮止めを解除する解除工程と、を有する防水シート20の施工方法を適用する。
そのため、躯体100において、配置部材50、55と接合されていない領域に位置する防水シート20で、施工者が熟練した高度な技術を有していなかったとしても、シワが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
以下、本発明の防水シートの施工方法を適用して、躯体100が備える壁部102に対して防水シート20を接合する方法について詳述する。
なお、配置部材50、55すなわち樹脂層に対する防水シート20の接合には、前述の通り、刷毛溶着法がより好ましく用いられることから、以下では、この刷毛溶着法を用いて、配置部材50、55に防水シート20を接合する場合を一例に説明する。
図3~図8は、本発明の防水シートの施工方法を適用して、躯体が備える壁部に対して防水シートを接合する施工方法を説明するための部分斜視図である。なお、以下の説明では、図3~図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図3~図8では、説明の便宜上、シート防水構造の全体を示すことなく、躯体が備える床部と壁部とを部分的に図示している。
<1> まず、図3に示すように、配置部材50(第2配置部材)および配置部材55(第1配置部材)を、それぞれ、壁部102の下端側の境界部103、および、壁部102の上端側の境界部104に配置した後に、固定する。すなわち、躯体100の所定の位置に、配置部材50および配置部材55を、それぞれ配置した後に、固定する(配置・固定工程)。
<2>次いで、壁部102の表面に防水シート20を敷設し、その後、壁部102と防水シート20との間から、配置部材50の上面に、刷毛ブラシ等を用いて、溶剤(可溶性溶剤)を塗布(供給)する。これにより、配置部材50が備える樹脂層の上面が溶剤と接触し、その結果、溶融状態とされる。
<3>次いで、防水シート20の上から配置部材50を、押圧することで、防水シート20の下面を樹脂層の上面に固定させる。これにより、防水シート20の下端側の端部(他端)が、配置部材50を介して壁部102に接合される。
以上のような工程<2>および工程<3>により、配置部材50に防水シート20の他端を接合する第2接合工程が構成される。
<4>次いで、図4に示すように、防水シート20の下端側の端部が配置部材50を介して壁部102に接合された防水シート20を、天端122側に引き上げた状態で、内壁112に沿わせ、その後、防水シート20の上端を外壁132側に巻き込む。この時に、内壁112側および天端122側に位置する防水シート20において、シワが生じていない状態にして、防水シート20の上端側(一端側)を押圧することで、配置部材55を介して壁部102に仮止め(仮固定)する(仮止め工程)。
このように、防水シート20の上端側を、配置部材55を介して壁部102に仮止めすることで、熟練した高度な技術を要することなく、内壁112側および天端122側に位置する防水シート20において、シワが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
また、本実施形態では、配置部材55を介した、防水シート20の上端の壁部102に対する仮止めが、図5に示すように、長尺状をなす磁石46(永久磁石)を備える固定治具45を、配置部材55が有する頂部56の長手方向に沿うように配置した状態で、防水シート20を磁石46と頂部56との間で挟持することで実施される。なお、本実施形態では、前述の通り、配置部材55が備える金属板が磁性体で構成されているため、配置部材55と磁石46とで、防水シート20を、配置部材55を介して壁部102に確実に仮止めすることができる。なお、磁石46は、永久磁石に代えて、電磁石であってもよい。
さらに、図5に示すように、配置部材55を介した壁部102に対する防水シート20の仮止めが、複数(図中では3つ)の固定治具45を、頂部56の長手方向に沿って配置(固定)させることで実施される。換言すれば、防水シート20の上端を介した、固定治具45すなわち磁石46を用いた頂部56すなわち配置部材55に対する固定は、複数の固定治具45を用いて実施される。この複数の固定治具45の頂部56における配置を、例えば、手前側の固定治具45から奥側の固定治具45へと順次実施することで、内壁112側および天端122側に位置する防水シート20における、シワの発生を、より容易に抑制または防止することができる。
なお、配置部材55を介した壁部102に対する防水シート20の仮止めは、図5では、防水シート20を介して頂部56に固定治具45を、配置させることで実施されるが、これに限らず、例えば、防水シート20を介して立ち下がり面57に固定治具45を、配置させることで実施してもよい。
<5>次いで、配置部材55を介して壁部102に仮止めされている防水シート20の一部について、その仮止めの状態を解除する。そして、仮止めされていない防水シート20と天端122との間から、配置部材55が備える頂部56の上面に、刷毛ブラシ等を用いて、溶剤を塗布する。これにより、頂部56が備える樹脂層の上面が溶剤と接触し、その結果、溶融状態とされる。
本実施形態では、防水シート20の一部における仮止めの解除が、図6に示すように、最も手前に位置する1つ(一部)の固定治具45を、頂部56から取り外すことにより実施される。すなわち、固定治具45(磁石46)の取り外しにより、防水シート20が仮止めされていない領域を形成することができる(形成工程)。そして、この固定治具45が取り外された位置を包含する、仮止めされていない領域について、配置部材55が備える頂部56の上面に溶剤を塗布する。
<6>次いで、図7に示すように、再び、防水シート20で、壁部102の天端122および外壁132までを覆い、その後、防水シート20の上から配置部材55の頂部56を、押圧することで、防水シート20の下面を樹脂層の上面に固定させる。これにより、固定治具45が取り外された位置を包含する、仮止めされていない領域、すなわち、頂部56の上面において溶剤が塗布された領域において、配置部材55の頂部56を介して壁部102に防水シート20の上端が接合される。
以上のような工程<5>、工程<6>により、防水シート20が仮止めされていない領域に位置する配置部材55に、防水シート20の上端(一端)を接合する第1接合工程が構成される。
また、この防水シート20の頂部56に対する接合の後には、図8に示すように、固定治具45が取り外された位置に、その固定治具45を、再度、固定させる。この固定治具45による固定は、頂部56の上面に塗布された溶剤が揮発するまで行われることが好ましい。これにより、頂部56を介して壁部102に接合された防水シート20に位置ズレが生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、壁部102の内壁112側に位置する防水シート20における、シワの発生が的確に抑制または防止される。
<7>次いで、天端122の手前側から奥側に向かって配置されている複数の固定治具45について、順次、前記工程<5>~前記工程<6>を繰り返して実施する。
これにより、固定治具45が取り外された位置を包含する、仮止めされていない領域における、配置部材55の頂部56を介した壁部102に対する防水シート20の接合が繰り返して実施される。その結果、頂部56のほぼ全域を介して、防水シート20が壁部102に対して接合される。
このような、前記工程<5>~前記工程<6>を繰り返することによる、頂部56を介した壁部102に対する防水シート20の接合に先立って、前記工程<4>において、内壁112側および天端122側に位置する防水シート20において、シワが生じていない状態で、頂部56を介して壁部102に防水シート20が仮止めされている。そのため、頂部56を介して、壁部102に対して防水シート20を接合する際においても、内壁112側および天端122側に位置する防水シート20において、シワが発生するのを的確に抑制または防止することができる。
<8>次いで、頂部56の上面に塗布された溶剤が揮発し、頂部56の上面と防水シート20の下面とにおける接合が、確実に完了した時点において、固定治具45による固定を解除する。すなわち、防水シート20を押圧することにより仮止めを解除する(解除工程)。
以上のような工程<1>~工程<8>を経ることで、躯体100が備える壁部102に対して防水シート20が接合される。
なお、配置部材55は、本実施形態では、壁部102が有する外壁132と壁部102が有する天端122との境界部104に固定される場合について説明したが、この場合に限定されず、例えば、配置部材55は、壁部102が有する内壁112と壁部102が有する天端122との境界部、内壁112の中間部、および、外壁132の中間部等に固定されている場合であってもよく、これらの場合、配置部材55としては、固定される場所に対応した形状をなすものが用意される。
また、配置部材55の一部に、防水シート20の上端を押圧するために、本実施形態では、固定治具45として磁石46を備えるものを、防水シート20を介して配置部材55に固定する場合について説明したが、防水シート20の上端を押圧するために用いる固定治具45としては、かかる構成をなすものに限定されず、例えば、錘や、クリップ等であっても良い。ただし、固定治具45として磁石46を備えるものを用いることで、配置部材55の形状や、配置部材55が固定される位置等により制限されることなく、防水シート20の上端を確実に押圧することができる。
以上、本発明の防水シートの施工方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の防水シートの施工方法には、任意の目的の工程が1または2以上追加されてもよい。
また、本発明の防水シートの施工方法が適用されるシート防水構造において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
さらに、本発明の防水シートの施工方法が適用されるシート防水構造としては、前記実施形態で説明したように、壁部の上端および下端に、それぞれ配置・固定された配置部材に対して、防水シートを選択的に接合する構成をなすものに限らず、例えば、床部の一端および他端に、それぞれ配置・固定された配置部材に対して、防水シートを選択的に接合する構成をなすものであってもよい。