JP7362094B2 - キャリア及び電子写真用現像剤 - Google Patents
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Description
まず、本発明に係るキャリアの実施の形態について説明する。本発明に係るキャリアは、磁性芯材の表面が界面活性剤を含む、フッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の樹脂混合物で被覆されたキャリアであって、溶出試験による水に対する溶出物の溶出量が180ppm以上3500ppm以下であることを特徴とする。
本件発明において磁性芯材は、例えば、電子写真用現像剤のキャリアに要求される磁性等を満足するものであれば特に限定されるものではなく、フェライト等の磁性成分と、樹脂等の非磁性成分との混合物からなる磁性芯材なども用いることができる。しかしながら、本発明において磁性芯材として、各種フェライトを好ましく用いることができ、球状フェライトをより好ましく用いることができる。フェライトの組成は特に制限されるものではないが、例えば、下記式で表される組成を有することが好ましい。
但し、x+y+z=100mol%
x=35mol%~45mol%
y= 5mol%~15mol%
z=40mol%~55mol%
本件発明のキャリアは、上記磁性芯材の表面が界面活性剤を含む、フッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の樹脂混合物で被覆されている。以下、磁性芯材の表面を被覆する樹脂混合物の層を樹脂被覆層と称する。
フッ素元素含有樹脂は、分子構造中にフッ素を含有する樹脂をいい、特に、フッ素を含むオレフィンを重合して得られる樹脂(主としてフッ素樹脂)をいう。磁性芯材の表面をフッ素元素含有樹脂を含む樹脂混合物で被覆することにより、トナーとの撹拌時等にキャリアとトナーとが衝突しても、キャリアの表面にトナーが付着しにくくなり、キャリアのスペントを防止することができる。
ポリイミド樹脂は熱硬化性樹脂である。熱硬化後のポリイミド樹脂とフェライト等の無機材料との密着性は良好である。また、熱硬化後のポリイミド樹脂は耐熱性が高い。そのため、ポリイミド樹脂をバインダーとすることにより、フッ素元素含有樹脂を磁性芯材の表面に強固に密着させることができる。
本発明に係るキャリアは界面活性剤を含み、溶出試験による水に対する溶出物の溶出量が180ppm以上3500ppm以下である。ここで溶出物とは、後述する方法で溶出試験を行ったときにキャリアから水に対して溶出する成分であり、当該溶出物の溶出量は後述する方法で算出された値をいう。キャリアを構成する成分のうち、水に対する溶解性を有する成分は界面活性剤のみである。そのため、後述する溶出試験を行ったときにキャリアから水に対して溶出する成分は界面活性剤であるとみなすことができ、後述する方法で算出された値は水に対する界面活性剤の溶出量であると実質的にみなすことができる。本発明に係るキャリアを製造する方法の一つとして、後述するとおり、樹脂被覆層を形成する際に、フッ素元素含有樹脂と、ポリイミド樹脂とを界面活性剤と共に水に分散させた樹脂被覆層形成液を用いて樹脂被覆層を形成する方法が挙げられる。界面活性剤を含む溶液を用いてキャリアを製造した場合、当該キャリアは界面活性剤を含むものとなる。当該溶出量は、樹脂被覆層における界面活性剤の含有量と相関する。
本発明において、上記磁性芯材の表面が界面活性剤を含む、フッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の樹脂混合物で被覆されていればよく、フッ素元素含有樹脂とポリイミド樹脂の混合状態は特に限定されるものではない。しかしながら、磁性芯材の表面に設けられるこの樹脂被覆層は、粒子状のフッ素元素含有樹脂がバインダー成分としてのポリイミド樹脂により磁性芯材の表面に密着された構成であることが次に示す理由からより好ましい。すなわち、当該構成を採用することにより、フッ素元素含有樹脂の偏在を防止することができる。そのため、樹脂混合物におけるフッ素元素含有樹脂とポリイミド樹脂の混合状態及び膜厚の均一な樹脂被覆層を得ることが容易になり、帯電量分布がシャープなキャリアを得ることができ、耐スペント性、帯電安定性、補給カブリ性の良好な電子写真用現像剤を提供することが可能になる。
樹脂被覆層において、フッ素元素含有樹脂は体積平均粒径が0.05μm~0.80μmの粒子状に分散されていることが好ましく、その体積平均粒径は0.10μm~0.40μmであることがより好ましい。
上記樹脂混合物におけるフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の含有量が質量比で以下であることが好ましい。
フッ素元素含有樹脂:ポリイミド樹脂=9:1~2:8
本発明に係るキャリアにおいて、樹脂被覆層を構成するフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の混合物全量を100質量部としたとき、界面活性剤を1.0質量部以上50質量部以下含むことが好ましい。当該混合物全量に対する界面活性剤量が当該範囲内であると、溶出物の溶出量が概ね上述した範囲内となる。ここで、樹脂被覆層を構成するフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の混合物全量を100質量部としたとき、界面活性剤は、2.0質量部以上であることが樹脂被覆層におけるフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の混合状態をより均一にするという観点からより好ましい。また、当該キャリアが使用される環境変化に対する帯電量の安定性がより良好になるという観点から、樹脂被覆層を構成するフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の混合物全量を100質量部としたとき、界面活性剤は、40質量部以下であることがより好ましい。なお、ここでいうフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の混合物には界面活性剤は含まれない。
また、キャリア芯材の表面を上記樹脂混合物により被覆するが、当該樹脂混合物(但し、界面活性を含む)による磁性芯材の被覆量は、磁性芯材に対して好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、一層好ましくは0.5質量%以上5質量%である。当該樹脂混合物による磁性芯材の被覆量が0.01質量%未満であると、磁性芯材の表面に均一な厚みで樹脂被覆層を形成することが困難である。また、当該樹脂混合物による磁性芯材の被覆量が10質量%を超えると、キャリア同士の凝集が発生しやすくなり、キャリアの流動性が低下する。そのため、キャリア付着などが生じやすく、歩留まり低下等、生産性が低下する。また、キャリアの流動性が低いため、実機内でのトナーの撹拌性が低下し、トナーを十分に帯電させることができず、またトナーを静電潜像まで良好に搬送することができず、現像特性の変動の原因となる。
樹脂被覆型キャリアでは、一般に、樹脂被覆層内に帯電制御剤や導電剤など、キャリア表面における帯電特性を制御するための種々の添加剤を含むことができる。
例えば、帯電制御剤としてシランカップリング剤が知られている。負極性トナーと共に使用されるキャリアでは、樹脂被覆層内にアミノシランカップリング剤を含むことができ、正極性トナーと共に使用されるキャリアでは、樹脂被覆層内にフッ素系シランカップリング剤を含むことができる。また、導電剤として、樹脂被覆層は、導電性カーボンなどの有機系導電剤、酸化チタン或いは酸化スズ等の無機系導電剤などの導電性微粒子を含むことができる。帯電制御剤/導電剤は必要に応じて添加することのできる任意の添加剤である。
本発明に係るキャリアは、球状であることが望ましく、その体積平均粒径は20μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることがより好ましい。当該キャリアの体積平均粒径が20μm未満であると、キャリアが凝集しやすく、キャリア付着が生じやすくなる。キャリア付着は白斑の原因となるため、好ましくない。また、当該キャリアの体積平均粒径が100μmを超えると、キャリアが大きくなりすぎて、静電潜像を高精細に現像することが困難になる。すなわち、画質が粗くなり、所望の解像度が得られにくくなるため、好ましくない。
次に、本発明に係るキャリアの製造方法の実施の形態について説明する。本発明に係るキャリアの製造方法は、磁性芯材の表面が樹脂で被覆されたキャリアを製造するキャリアの製造方法であって、フッ素元素含有樹脂とポリイミド樹脂とを界面活性剤と共に分散媒に分散させた樹脂層形成液を調製し、磁性芯材の表面を樹脂層形成液で被覆し、磁性芯材の表面が界面活性剤を含む、フッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の樹脂混合物で被覆されたキャリアを得ることを特徴とする。以下、工程毎に順に説明する。
本件発明に係るキャリアの製造方法では、フッ素元素含有樹脂とポリイミド樹脂とを界面活性剤と共に分散媒に分散させた樹脂層形成液を調製する。
次に、被覆工程について説明する。磁性芯材の表面に樹脂層形成液を被覆する方法は特に限定されるものではないが、例えば、刷毛塗り法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等を採用することができる。
本発明において、磁性芯材は特に限定されるものではないことは、上述したとおりである。ここでは、磁性芯材の製造方法の一例を以下に挙げるが、本件発明において、磁性芯材の製造方法は、以下の方法に限定されるものではないのは勿論である。
次に、本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。本発明に係る電子写真用現像剤は、上記した本発明に係るキャリアを用いることを特徴とする。本発明に係る電子写真用現像剤は、特に、上記キャリアとトナーとを含む二成分系電子写真用現像剤であることが好ましい。
まず、MnO換算で39.7mol%、MgO換算で9.9mol%、Fe203換算で49.6mol%、SrO換算で0.8mol%になるように各原料を秤量した。原料を秤量した後、これらに水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕、混合し、乾燥させ、950℃で4時間保持した後、湿式ボールミルで24時間粉砕を行ってスラリーを調製した。当該スラリーを用いて造粒乾燥し、酸素濃度2%雰囲気の中で1270℃、6時間保持した後、解砕、粒度調整を行い、マンガン系フェライト粒子を得た。このマンガン系フェライト粒子は、体積平均粒径が35μmであり、印加磁場が3000(103/4π・A/m)の時の飽和磁化が70Am2/kgであった。このようにして製造したマンガン系フェライト粒子を実施例1の磁性芯材とした。
水に液体のポリイミド樹脂(PI)を分散させたコロイド溶液に、フッ素元素含有樹脂粒子を分散させて、樹脂層形成液を調製した。この際、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを用い、当該樹脂層形成液におけるフッ素元素含有樹脂粒子及びポリイミド樹脂の合計量を100質量部としたとき、界面活性剤量が4.4質量部になるように界面活性剤を添加した。また、本実施例では、フッ素元素含有樹脂として、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体樹脂粒子(FEP)を用いた。このとき、樹脂層形成液におけるフッ素元素含有樹脂粒子及びポリイミド樹脂の含有量が固形分として、質量比において8:2になるように、水に対する各樹脂の添加量を調整した。
上記マンガン系フェライト粒子を磁性芯材とし、当該磁性芯材の表面に樹脂被覆層を被覆した。このとき樹脂被覆量が磁性芯材に対して3.0質量%となるように上記樹脂層形成液を用いた。そして、流動床被覆装置により磁性芯材と樹脂層形成液とを混合し、磁性芯材の表面を樹脂層形成液で被覆した。その後、200℃で1時間の熱処理を施してキャリア1を得た。
樹脂層形成液を調製する際に、当該樹脂層形成液におけるフッ素元素含有樹脂粒子及びポリイミド樹脂の合計量を100質量部としたとき、界面活性剤量が80質量部になるように界面活性剤を添加した以外は、実施例1と同様にして、キャリア10を製造した。
樹脂層形成液を調製する際に、界面活性剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア11を製造した。
バインダー樹脂として、ポリイミド樹脂に代えて、ポリアミドイミド樹脂(PAI)を用い、樹脂層形成液を調製する際に、水にポリアミドイミド樹脂を溶解させた後、界面活性剤とフッ素元素含有樹脂を添加した以外は、実施例1と同様にしてキャリア12を製造した。
1.評価方法
実施例1~実施例9及び比較例1~比較例3で得た各キャリア(キャリア1~キャリア12)について、それぞれ以下の方法で樹脂被覆率、溶出物の溶出量、帯電量、カブリ性を評価した。なお、磁性芯材の体積平均粒径の測定方法、飽和磁化の測定方法も併せて以下に示す。また、表1に各キャリアを製造する際に用いたバインダー樹脂種、フッ素元素含有樹脂種、バインダー樹脂とフッ素元素含有樹脂の含有比、樹脂被覆量、界面活性剤種を示す。
磁性芯材として用いたマンガン系フェライト粒子の平均粒径(体積平均粒径)は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320-X100)を用いて測定した。サンプルの調製は次のように行った。分散媒として水を用いた。サンプル10gと水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2滴~3滴添加した。次いで超音波ホモジナイザー(SMT.Co.LTD.製UH-150型)を用い、出力レベル4に設定し、20秒間分散を行った。その後、ビーカー表面にできた泡を取り除いた。このようにして調製したサンプルを上記マイクロトラック粒度分析計により測定した。
日本電子株式会社製電子顕微鏡(JSM-6060A型)を用い、倍率450倍、印加電圧5kVにて各キャリアの反射電子像を撮影した。その画像を、Media Cybernetics社製画像解析ソフト「Image Pro Plus」を用いて、二値化処理を行った。二値化処理は、画像内に含まれる粒子のうち全体の形状が確認可能な粒子全てについて行い、複数枚の画像を用いて、二値化処理の対象とする粒子総数が100粒子以上となるようにした。具体的には、実施例及び比較例で得たキャリアの場合、上記画像内には全体の形状が確認可能な粒子が20粒子~25粒子程度含まれていた。そのため、4、5枚の画像を用い、合計100個~120個程度の粒子について二値化処理を行った。二値化処理により黒色部(樹脂被覆部)と白色部(磁性芯材露出部)とに分け、各磁性芯材粒子における黒色部と白色部の面積をそれぞれ測定した。そして、樹脂被覆率(%)を以下の計算式により求めた。結果を表2に示す。
各キャリアの水に対する溶出物の溶出量を以下の方法により求めた。
各キャリアを試料として以下の手順に従ってサンプルを調製した。
a)試料を200g±0.002g以内に正確に秤り、三角フラスコ(以下、「三角フラスコA」と称する)に入れる。
b)超純水(メルク株式会社製Direct-Q UV3)400mlを三角フラスコAに注入した。
c)ロータリーシェーカー(旋回式、RS-2型)を使用し、200rpm、10分間撹拌して、キャリアと純水との混合液を得た。
d)その後、混合液を25℃の環境下で24時間静置した。
e)次に、三角フラスコAの底に磁石を当てキャリアを保持しながら三角フラスコA内の混合液を別の三角フラスコ(以下、「三角フラスコB」と称する。)に入れ、混合液から磁石により保持されたキャリアを除去した。そして、三角フラスコB内の混合液をウルトラフィルター(孔径:0.2μm)により濾過し、磁石により保持されなかった混合液中のキャリアと樹脂片等を含む固形物を除去した。
f)上記ウルトラフィルターにより濾過した濾液を50℃の環境下で乾燥し、得られた乾固物を溶出物の溶出量を測定するためのサンプルとした。
各実施例及び比較例のキャリアにおける溶出物の溶出量を以下の計算式に基づき求めた。
溶出物の溶出量(ppm)=サンプル重量/キャリア重量×1000000
但し、キャリア重量とは、上記混合液を調製する際に用いた各キャリアの重量をいう。また、サンプル重量とは、濾液を乾燥させた後に得られた上記乾固物の重量をいう。
まず、各キャリアと市販のトナー(京セラドキュメントソリューションズ社製トナー(T09C-01)、色:シアン)とを用い、トナー濃度5質量%の電子写真用現像剤を調製した。
上記電子写真用現像剤を用いて、吸引式帯電量測定装置(Epping q/m-meter、PES-Laboratoriumu社製)により帯電量を求めた。
常温常湿環境(NN環境):温度20~25℃、相対湿度50~60%
高温高質環境(HH環境):温度30~35℃、相対湿度80~85%
ここで、常温常湿環境下で測定した帯電量をNN帯電量、高温高湿環境下で測定した帯電量をHH帯電量とする。
実施例1~実施例9で製造したキャリア1~キャリア9は、いずれも溶出物の溶出量が180ppm~3500ppmの範囲内にあり、耐刷後の帯電量の変化も少なく、環境帯電量変化率も小さく、カブリ性も良好であった。さらに、樹脂被覆率がいずれも50.0%以上であり、樹脂層形成液を調製する際に界面活性剤を添加していないキャリア11と比較すると樹脂被覆率の高いキャリアを得ることができた。
Claims (6)
- 磁性芯材の表面が界面活性剤を含む、フッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の樹脂混合物で被覆されたキャリアであって、
溶出試験による水に対する溶出物の溶出量が180ppm以上3500ppm以下であること、
を特徴とするキャリア。 - フッ素元素含有樹脂は、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体及び四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体から選択される一種以上である請求項1に記載のキャリア。
- 前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である請求項1又は請求項2に記載のキャリア。
- 前記磁性芯材がフェライト粒子からなる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のキャリア。
- 前記樹脂混合物におけるフッ素元素含有樹脂及びポリイミド樹脂の含有量が質量比で9:1~2:8である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のキャリア。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のキャリアを含むことを特徴とする電子写真用現像剤。
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