JP7346527B2 - マスクブランク、転写用マスク、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有し、
前記薄膜の外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも小さい
ことを特徴とするマスクブランク。
前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料からなり、
前記薄膜の外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも小さい
ことを特徴とする転写用マスク。
前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする構成8から13のいずれかに記載の転写用マスク。
前記薄膜が除去された透光性基板の主表面上に、新たにパターン形成用の薄膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
本発明者らは、さらに鋭意検討を行い、金属、ケイ素および窒素を含有する薄膜において、外周部における膜厚が外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率が、外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも小さい薄膜であれば、薄膜を剥離した後の透光性基板における主表面の形状の悪化を抑制でき、リサイクル後の製造歩留まりの向上に寄与することができる、ということを見出した。
本発明は、以上のような鋭意検討の結果なされたものである。
透光性基板20(又は、単に基板20と称す場合がある。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向する主表面21、22と、側面23、面取り面(C面)24とを有する。2つの対向する主表面21、22は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向する主表面21、22の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面21(一方の主表面、という場合がある)である。また、転写パターンが形成されるべき主表面21とは反対側の主表面22を、裏面(または、他方の主表面)という場合がある。
透光性基板20の主表面21上には、位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)30が設けられている。
位相シフト膜30は、外周部32と、外周部以外の部分(中央側部分)31とを有している。外周部32における膜厚d2は、中央側部分31における膜厚d1よりも小さくなっている。外周部32は、透光性基板20の主表面21の面取り面24との境界から10mm以内の領域であり、かつ、その膜厚d2が中央側部分31の膜厚d1よりも小さい領域Bとして規定することができる。また、外周部32は、透光性基板20の主表面21の側面23との境界から15mm以内の領域であり、かつ、その膜厚d2が中央側部分31の膜厚d1よりも小さい領域Bとして規定してもよい。
中央側部分31の膜厚d1は、中央側部分31の領域Aにおける膜厚の平均値として規定することができる。
位相シフト膜30は、金属、ケイ素および窒素を含有している。位相シフト膜30の外周部32におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C2(N)/C2(Si)は、位相シフト膜30の中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C1(N)/C1(Si)よりも小さくなっている。
このように構成された位相シフト膜30によれば、位相シフト膜30剥離後の透光性基板20における主表面21の形状の悪化を抑制することができる。
位相シフト膜30に含まれる窒素の含有量は、10原子%よりも多く50原子%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、15原子%以上45原子%以下が望ましい。
位相シフト膜30の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることが好ましく、92原子%以上であるとより好ましい。
また、位相シフト膜30の金属とケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率は、0.5以下であると好ましく、0.45以下であるとより好ましく、0.35以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜30は、酸素を含有してもよい。位相シフト膜30に含まれる酸素の含有量は、10原子%以下であることが好ましく、8原子%以下であることがより好ましい。
位相シフト膜30は、露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する。位相シフト膜30は、さらに、透光性基板20側から入射する光に対する反射率(以下、裏面反射率と記載する場合がある)を調整する機能を有することが好ましい。
位相シフト膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
本実施形態における位相シフトマスクブランク10は、エッチングマスク膜40を有してもよい(図4参照。なお、図4において、簡略化のため、外周部等の図示を省略している。図5も同様)。エッチングマスク膜40は、位相シフト膜30の上側に配置され、位相シフト膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する材料からなる。また、エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有してもよいし、さらに、膜面反射率を低減する機能を有してもよい。エッチングマスク膜40は、例えばクロム系材料から構成される。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)、又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、CrCONFが挙げられる。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
光学濃度は、分光光度計もしくはODメーターなどを用いて測定することができる。
次に、この実施の形態の位相シフトマスクブランク(マスクブランク)10の製造方法について説明する。位相シフトマスクブランク10は、以下の位相シフト膜形成工程とエッチングマスク膜形成工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
先ず、透光性基板20を準備する。透光性基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのいずれのガラス材料で構成されるものであってもよい。
位相シフト膜30の成膜は、位相シフト膜30を構成する材料の主成分となる遷移金属とケイ素を含むスパッタターゲット、又は遷移金属とケイ素と酸素及び/又は窒素を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、上記不活性ガスと、酸素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。位相シフト膜30の外周部32における膜厚d2は、位相シフト膜30の中央側部分31における膜厚d1よりも小さくなるように成膜される。このときに、窒素の流量が、位相シフト膜30の中央側部分31よりも外周部32において少なくなるように、成膜室内における窒素の流量等の条件を調整しておく。これにより、位相シフト膜30の外周部32における膜厚d2は、位相シフト膜30の中央側部分31における膜厚d1よりも小さくなり、外周部32におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C2(N)/C2(Si)が中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C1(N)/C1(Si)よりも小さくなる。
位相シフト膜30の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を行った後、スパッタリング法により、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。
このようにして、位相シフトマスクブランク10が得られる。
図5は本発明の実施形態における位相シフトマスク(転写用マスク)の製造工程を示す模式図である。
図5に示す位相シフトマスクの製造方法は、図4に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造する方法である。図5(e)に示されているように、位相シフトマスク100は、マスクブランク10の位相シフト膜30に転写パターンである位相シフト膜パターン30aが形成され、エッチングマスク膜40に遮光パターンとして機能する第2のエッチングマスク膜パターン40bが形成されていることを特徴としている。この位相シフトマスク100は、マスクブランク10と同様の技術的特徴を有している。位相シフトマスク100における透光性基板20、位相シフト膜30の中央側部分31、外周部32、エッチングマスク膜40に関する事項については、マスクブランク10と同様である。位相シフトマスクの製造方法は、位相シフトマスクブランク10の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクとして、ウェットエッチングによりエッチングマスク膜40をパターニングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成する工程(第1のエッチングマスク膜パターン形成工程)と、エッチングマスク膜パターン40aをマスクとして、位相シフト膜30をウェットエッチングにより透光性基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。そして、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程とをさらに含む。
以下、各工程を説明する。
第1のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図5(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。
第1のエッチングマスク膜パターン形成工程では、先ず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、図5(b)に示されるように、第1のレジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次の位相シフト膜パターン形成工程を行ってもよい。
第1の位相シフト膜パターン形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、図5(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。位相シフト膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。位相シフト膜30をエッチングするエッチング液は、位相シフト膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液、フッ化水素アンモニウムと塩化水素とを含むエッチング液が挙げられる。
第2のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、第1のレジスト膜パターン形成工程におけるレジスト膜材料と同様に、特に制限されない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30にパターンが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光パターン、及び位相シフト膜パターンの中央部を遮光する遮光パターンである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対する位相シフト膜30の透過率によっては、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図5(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。
第2のエッチングマスク膜パターン形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図5(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明したが、エッチングマスク膜40が単に、位相シフト膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程は行われず、位相シフト膜パターン形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターンを剥離して、位相シフトマスク100を作製する。
次に、上述した位相シフトマスクブランク10または位相シフトマスク100をリサイクルし、新たなマスクブランク10および転写用マスク100を製造する方法について説明する。
まず、リサイクル対象となる位相シフトマスクブランク10または位相シフトマスク100を用意する。リサイクル対象となる位相シフトマスクブランク10または位相シフトマスク100の各構成は、上述した通りである。
次に、位相シフトマスクブランク10におけるエッチングマスク膜40または位相シフトマスク100におけるエッチングマスク膜パターン40bを、剥離液を用いて除去する工程を実施する。エッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bの除去は、クロム系材料から構成されている場合には、硝酸第2セリウムアンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)及び過塩素酸(HClO4)を含む純水からなるクロム用エッチング液をエッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bに供給してエッチングすることで行うことが出来る。
上述した新たなマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用いて新たな転写用マスクを製造する方法について説明する。この新たな転写用マスクを製造する方法は、新たに製造されたマスクブランクのパターン形成用の薄膜に対し、ウェットエッチングでパターンを形成する工程を有するものである。新たに製造されたマスクブランクが位相シフトマスクブランク10である場合には、このマスクブランク10のパターン形成用の薄膜(位相シフト膜)30に対し、上述した〈位相シフトマスク(転写用マスク)およびその製造方法〉において述べたように、ウェットエッチングで位相シフト膜パターン30aを形成することができる。なお、この新たなマスクブランクが例えばバイナリ用途のマスクブランクであった場合においても、透光性基板20上に形成されたパターン形成用の薄膜(例えば、遮光性を有するクロム系材料のエッチングマスク膜)に対し、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液を用いたウェットエッチングを行うことで、パターンを形成することができる。
表示装置は、上述した転写用マスクを用いる工程(マスク載置工程)と、表示装置上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程(パターン転写工程)とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
載置工程では、転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、転写用マスクは、位相シフトマスクブランク10を用いて製造された位相シフトマスク(転写用マスク)100、上述した新たな転写用マスクの製造方法によって製造された新たな転写用マスクのいずれであってもよい。転写用マスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
パターン転写工程では、転写用マスクに露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、365nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
A.位相シフトマスクブランクおよびその製造方法
実施例1の位相シフトマスクブランクを製造するため、先ず、透光性基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
透光性基板20の主表面21上に位相シフト膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスと、酸素ガス(O2)、窒素(N2)ガスとの混合ガスを導入し、モリブデンとケイ素を含む第1スパッタターゲット(モリブデン:ケイ素=1:4)を用いた反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にモリブデンとケイ素と酸素と窒素を含有するモリブデンシリサイドの酸化窒化物を堆積させた。このとき、チャンバー内の窒素ガスの量が、位相シフト膜30の中央側部分31よりも外周部32において少なくなるように、成膜室内における窒素の流量の条件の調整や、ガスの導入口および排出口の配置の調整などを行った。そして、位相シフト膜30の中央側部分31において、膜厚d1が110nmの位相シフト膜30を成膜した。膜厚d1は、中央側部分31において、30mmの矩形領域内に垂直方向5個、水平方向5個の25個の測定点を設定し、各測定点における膜厚の平均値として算出したものである。また、外周部32の領域Bにおいて、膜厚d2はいずれも膜厚d1よりも小さくなっていた。
外周部32の領域Bは、透光性基板20の主表面21において面取り面24の境界から4mm~7mmの範囲にわたって形成されており、主表面21の面取り面24の境界から10mm以内の領域であった。
このようにして、透光性基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
図2、図3の横軸はエッチングマスク膜40の最表面を基準とした位相シフトマスクブランク10に対するミリング時間(分)を示し、縦軸は含有量(原子%)を示している。図3において、各曲線は、ケイ素(Si)、窒素(N)、酸素(O)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)の含有量の変化をそれぞれ示している。
また、図3の結果から、位相シフト膜30の外周部32(膜厚の比率d2/d1が0.7の地点。)における各組成の平均値を算出したところ、ケイ素の含有量C2(Si)が48.7原子%、モリブデンの含有量C2(Mo)が20.1原子%、窒素の含有量C2(N)が29.1原子%、酸素の含有量C2(O)が1.0原子%、炭素の含有量C2(C)が0.9原子%、クロムの含有量C2(Cr)が0.2原子%であった。
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク10について、図5に示した手順で、透光性基板20上に、転写パターン形成領域に位相シフト膜パターン30aと、位相シフト膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光パターンが形成された位相シフトマスク100を得た。
C.表示装置の製造方法
このため、この実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
実施例1における位相シフトマスクブランク10または位相シフトマスク100をそれぞれ10枚用意して、それぞれのエッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bに対して、硝酸第2セリウムアンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)及び過塩素酸(HClO4)を含む純水からなるクロム用エッチング液をエッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bに供給して、除去する工程を実施した。
そして、位相シフトマスクブランク10における位相シフト膜(薄膜)30または位相シフトマスク100における位相シフト膜パターン(転写パターンを有する薄膜)30aを、剥離液を用いて除去する工程を実施した。この工程において、水溶液として、弗化水素アンモニウム(0.5wt%)+過酸化水素(2.0wt%)+純水(97.5wt%)の混合水溶液を用いた。
続いて、位相シフト膜(薄膜)30または位相シフト膜パターン(転写パターンを有する薄膜)30aが除去された基板20の主表面21、22に対して、検査装置を用いて表面形状や面内均一性等の検査を行った。いずれの基板20においても、許容範囲内の面内均一性を有しており、良好な結果が得られた。
その後、基板20の主表面21、22に対し、酸化セリウムやコロイダルシリカ等の公知の遊離砥粒を含有する研磨液と、研磨パッドとを用いて、所定の研磨工程、洗浄工程を適宜行った。
その後、透光性基板20に対して、リサイクル基板としての品質を満たしているかについての評価工程を行ったところ、いずれの基板20においても品質を満たしているとの結果が得られた。
そして、実施例1における<A.位相シフトマスクブランクおよびその製造方法>、<B.位相シフトマスクおよびその製造方法>、<C.表示装置の製造方法>において述べたように、新たな位相シフトマスクブランク、位相シフトマスク、表示装置の製造を行ったところ、いずれも良好な結果が得られた。
以上のように、本実施形態によれば、パターン形成用の薄膜または転写パターンを有する薄膜を剥離した後の透光性基板における主表面の面内均一性を高めることができ、リサイクル後の製造歩留まりの向上に寄与することができるマスクブランク、転写用マスク、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法を製造することができる。
比較例1の位相シフトマスクブランク10を製造するため、実施例1と同様に、透光性基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
合成石英ガラス基板を、インライン型のスパッタリング装置のチャンバーに搬入した。比較例1においては、実施例1とは異なり、成膜室内における窒素の流量等の条件をせずに、位相シフト膜30を成膜した。そして、第1スパッタターゲット、第2スパッタターゲット、第3スパッタターゲット、第4スパッタターゲットとして、実施例1と同じスパッタターゲット材料を用いた。
そして、実施例1と同じ方法により、エッチングマスク膜40を成膜した。
このようにして、透光性基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1と同じ方法により、位相シフトマスクを製造した。
位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきを、セイコーインスツルメンツナノテクノロジー社製SIR8000により測定したところ、CDばらつきは良好であった。
このため、この比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
比較例1における位相シフトマスクブランク10または位相シフトマスク100をそれぞれ10枚用意して、それぞれのエッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bに対して、硝酸第2セリウムアンモニウム((NH4)2Ce(NO3)6)及び過塩素酸(HClO4)を含む純水からなるクロム用エッチング液をエッチングマスク膜40またはエッチングマスク膜パターン40bに供給して、除去する工程を実施した。
また、上述の実施例では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランクや、表示装置製造用の位相シフトマスクの例を説明したが、これに限られない。本発明の位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクは、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用等にも適用できる。また、本発明の適用対象は、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクに限られるものではなく、透過率調整膜として機能する金属、ケイ素および窒素を含有する薄膜を有するマスクブランクや転写用マスク等にも適用することができる。
また、上述の実施例では、透光性基板のサイズが、8092サイズ(800mm×920mm×10mm)の例を説明したが、これに限られない。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクの場合、大型(Large Size)の透光性基板が使用され、該透光性基板のサイズは、一辺の長さが、300mm以上である。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに使用する透光性基板のサイズは、例えば、330mm×450mm以上2280mm×3130mm以下である。
また、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用の位相シフトマスクブランクの場合、小型(Small Size)の透光性基板が使用され、該透光性基板のサイズは、一辺の長さが9インチ以下である。上記用途の位相シフトマスクブランクに使用する透光性基板のサイズは、例えば、63.1mm×63.1mm以上228.6mm×228.6mm以下である。通常、半導体製造用、MEMS製造用は、6025サイズ(152mm×152mm)や5009サイズ(126.6mm×126.6mm)が使用され、プリント基板用は、7012サイズ(177.4mm×177.4mm)や、9012サイズ(228.6mm×228.6mm)が使用される。
21…第1の主表面(主表面)、22…第2の主表面(主表面)、23…側面、
24…面取り面(C面)、30…位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)、
31…中央側部分(外周部以外の部分)、32…外周部、
30a…位相シフト膜パターン(転写パターンを有する薄膜)、
40…エッチングマスク膜、40a…第1のエッチングマスク膜パターン、
40b…第2のエッチングマスク膜パターン、50…第1のレジスト膜パターン、
60…第2のレジスト膜パターン、100…位相シフトマスク(転写用マスク)、
Claims (13)
- 透光性基板と、前記透光性基板の主表面上に設けられたパターン形成用の薄膜とを備えるマスクブランクであって、
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有し、
前記薄膜の外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚に対する前記薄膜の前記外周部における膜厚の比率は、0.7以下であり、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率を、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率で除して算出される比率は、0.84以下であることを特徴とするマスクブランク。 - 前記薄膜の酸素の含有量は、10原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載のマスクブランク。
- 前記薄膜の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
- 前記薄膜は、少なくともモリブデンを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
- 前記薄膜は、位相シフト膜であり、
前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。 - 透光性基板と、前記透光性基板の主表面上に設けられ、転写パターンを有する薄膜とを備える転写用マスクであって、
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有する材料からなり、
前記薄膜の外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも小さく、
前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚に対する前記薄膜の前記外周部における膜厚の比率は、0.7以下であり、
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率を、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率で除して算出される比率は、0.84以下であることを特徴とする転写用マスク。 - 前記薄膜の酸素の含有量は、10原子%以下であることを特徴とする請求項6に記載の転写用マスク。
- 前記薄膜の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の転写用マスク。
- 前記薄膜は、少なくともモリブデンを含有することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の転写用マスク。
- 前記薄膜は、位相シフト膜であり、
前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の転写用マスク。 - 請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク、または請求項6から10のいずれかに記載の転写用マスクの前記薄膜を、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素を含有するエッチング液を用いて剥離し、前記薄膜が除去された透光性基板を取得する工程と、
前記薄膜が除去された透光性基板の主表面上に、新たにパターン形成用の薄膜を形成する工程と、
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。 - 請求項11に記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクの前記パターン形成用の薄膜に対し、ウェットエッチングでパターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
- 請求項6から10のいずれかに記載の転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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