JP7204496B2 - 位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2には、パターンの精密度を向上させることを目的として、位相反転膜104が、同一のエッチング溶液にエッチング可能な互いに異なる組成の膜からなり、異なる組成の各膜がそれぞれ1回以上積層された少なくとも2層以上の多層膜又は連続膜の形態で形成してなる位相反転ブランクマスク及びフォトマスクが開示されている。
前記位相シフトマスクブランクは、前記エッチングマスク膜を所定のパターン形成されたエッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより前記透明基板上に位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクを形成するための原版であって、
前記位相シフト膜は、遷移金属と、ケイ素と、酸素と、窒素とを含有し、
前記位相シフト膜に含まれる酸素の含有率が5原子%以上70原子%以下であって、
前記位相シフト膜に含まれる遷移金属とケイ素の比率は、1:1.5以上1:6以下であって、
前記位相シフト膜の膜応力は、0.35GPa以下であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(構成3)前記位相シフト膜に含まれる酸素の含有率は、窒素の含有率よりも大きいことを特徴とする構成1または2記載の位相シフトマスクブランク。
(構成4)前記位相シフト膜は、複数の層または単一の層で構成されていることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
(構成6)前記エッチングマスク膜は、柱状構造を有していることを特徴とする構成1乃至5のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
前記位相シフトマスクブランクの上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターンを形成し、該レジスト膜パターンをマスクとして、ウェットエッチングにより前記エッチングマスク膜をパターニングして、前記エッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクとして、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする、位相シフトマスクの製造方法。
実施の形態1では、位相シフトマスクブランクについて説明する。この位相シフトマスクブランクは、エッチングマスク膜に所望のパターンが形成されたエッチングマスク膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングにより透明基板上に位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクを形成するための原版である。
図1に示す位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された位相シフト膜30と、位相シフト膜30上に形成されたエッチングマスク膜40とを備える。
また、位相シフト膜30に含まれる酸素の含有率は、窒素の含有率よりも大きくすることにより、露光光に対する位相シフト膜の透過率を効果的に高めることができる。また、ウェットエッチングによりパターニングする際のウェットエッチング速度を速くすることができるので、エッチングマスク膜パターンをマスクにしてウェットエッチングで位相シフト膜パターンを形成する際に、エッチングマスク膜パターンがウェットエッチングの途中で剥離せず、位相シフト膜パターンを確実に形成することができる。さらに、位相シフト膜パターンを位相シフト効果が十分に発揮できる良好な断面形状とすることが可能となる。
また、位相シフト膜30のウェットエッチング速度と耐薬性の観点から、位相シフト膜30に含まれる遷移金属とケイ素の比率は、1:1.5以上1:6以下とする。位相シフト膜30に含まれる遷移金属とケイ素の比率が1:1.5未満の場合、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクの洗浄プロセスで使用する洗浄液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水等)が悪化するので好ましくない。また、位相シフト膜30に含まれる遷移金属とケイ素の比率が1:6超の場合、ウェットエッチングによりパターニングする際のウェットエッチング速度が遅くなるので好ましくない。位相シフト膜30に含まれる遷移金属とケイ素の比率は、1:1.5以上1:4以下であることが好ましく、1:1.6以上1:3.8以下であることがより好ましく、1:1.7以上3.6以下であることがさらに好ましい。
位相シフト膜30に窒素を含有させると、屈折率を上げられるため、位相差を得るための膜厚を薄くできる点で好ましい。但し、位相シフト膜30に窒素を多く含有させると、ウェットエッチング速度が遅くなる。位相シフト膜30が所望の光学特性(透過率、位相差)を有するものとなり、ウェットエッチング速度の観点から、位相シフト膜30に含まれる窒素の含有率は、2原子%以上60原子%以下であることが好ましく、2原子%以上50原子%以下であることがより好ましく、3原子%以上30原子%以下がより一層好ましく、5原子%以上25原子%以下であることがさらに好ましい。
遷移金属シリサイド系材料としては、例えば、遷移金属シリサイドの酸化窒化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化炭化物が挙げられる。また、遷移金属シリサイド系材料は、モリブデンシリサイド系材料(MoSi系材料)、ジルコニウムシリサイド系材料(ZrSi系材料)、モリブデンジルコニウムシリサイド系材料(MoZrSi系材料)であると、ウェットエッチングによる優れたパターン断面形状が得られやすいという点で好ましい。
位相シフト膜30は、透明基板20側から入射する光に対する反射率(以下、裏面反射率と記載する場合がある)を調整する機能と、露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能とを有する。
位相シフト膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
また、位相シフト膜30の膜応力は、0.35GPa以下であると、エッチングマスク膜40との界面における浸み込みの影響を受ける前に、ウェットエッチングによる位相シフト膜のパターニングを終えるような速いエッチングレートとすることにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にできる点で好ましい。また、位相シフト膜30の膜応力は、耐薬性の観点から0.2GPa以上であるのが好ましい。位相シフト膜パターンの断面形状と、耐薬性の観点から、位相シフト膜30の膜応力は、0.2GPa以上0.35GPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.22GPa以上0.35GPa以下であることが望ましい。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
また、エッチングマスク膜40は、柱状構造を有していると、ウェットエッチングによりパターニングされたエッチングマスク膜パターンの断面形状を良好にすることができる。これにより、エッチングマスク膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をウェットエッチングによりパターニングされる位相シフト膜パターンの断面形状もさらに良好となるので、柱状構造を有していることが好ましい。なお、柱状構造は、エッチングマスク膜40が形成された位相シフトマスクブランクについて、断面SEM観察することにより確認することができる。ここで、柱状構造は、エッチングマスク膜を構成する材料の粒子が、エッチングマスク膜の膜厚方向(上記粒子が堆積する方向)に向かって伸びる柱状の粒子構造を有する状態をいう。
光学濃度は、分光光度計もしくはODメーターなどを用いて測定することができる。
以下、各工程を詳細に説明する。
先ず、透明基板20を準備する。透明基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)などのいずれのガラス材料で構成されるものであってもよい。
位相シフト膜30の成膜は、遷移金属とケイ素を含むスパッタターゲット、又は遷移金属とケイ素と酸素及び/又は窒素を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、上記不活性ガスと、酸素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。活性ガスに窒素ガスを含有しても構わない。
また、位相シフト膜30は、上述の所望の膜応力となるように、スパッタリング成膜時の真空度、スパッタパワー、スパッタガスの圧力等により調整される。
位相シフト膜30を成膜した後、スパッタリング法により、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。
このようにして、位相シフトマスクブランク10が得られる。
また、エッチングマスク膜40の材料、組成、スパッタリング成膜時の真空度、スパッタパワー、スパッタガスの圧力等により、エッチングマスク膜40が柱状構造を有する状態とすることができる。
実施の形態2では、位相シフトマスクの製造方法について説明する。
図2に示す位相シフトマスクの製造方法は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造する方法であり、上述の位相シフトマスクブランク10の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクとして、ウェットエッチングによりエッチングマスク膜40をパターニングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成する工程(第1のエッチングマスク膜パターン形成工程)と、エッチングマスク膜パターン40aをマスクとして、位相シフト膜30をウェットエッチングにより透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。そして、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程とをさらに含む。
以下、各工程を詳細に説明する。
第1のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図2(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。
第1のエッチングマスク膜パターン形成工程では、先ず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、図2(b)に示されるように、第1のレジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次の位相シフト膜パターン形成工程を行ってもよい。
第1の位相シフト膜パターン形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、図2(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。位相シフト膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。位相シフト膜30をエッチングするエッチング液は、位相シフト膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液、フッ化水素アンモニウムと塩化水素とを含むエッチング液が挙げられる。
第2のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30にパターンが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光帯パターン、及び位相シフト膜パターンの中央部を遮光する遮光帯パターンである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対する位相シフト膜30の透過率によっては、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図2(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。
第2のエッチングマスク膜パターン形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図2(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明したが、エッチングマスク膜40が単に、位相シフト膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程は行われず、位相シフト膜パターン形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターンを剥離して、位相シフトマスク100を作製する。
実施の形態3では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、上述した位相シフトマスクブランク10を用いて製造された位相シフトマスク100を用い、または上述した位相シフトマスク100の製造方法によって製造された位相シフトマスク100を用いる工程(マスク載置工程)と、表示装置上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程(パターン転写工程)とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
載置工程では、実施の形態2で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、位相シフトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
パターン転写工程では、位相シフトマスク100に露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、365nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
位相シフト膜の膜応力、エッチング速度、位相シフト膜パターンの断面形状の確認のため、以下の実験を行った。
先ず、両主表面が鏡面研磨された6025サイズ(152mm×152mm)の合成石英ガラス基板からなる透明基板20を準備し、該透明基板20を縦横5×5枚敷き詰めてインライン型スパッタリング装置に搬入した。なお、インライン型スパッタリング装置には、位相シフト膜30を成膜する第1のチャンバー、エッチングマスク膜40を成膜する第2、第3、第4のチャンバーが設けられている。
第1のチャンバー内に配置されたモリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=1:4)に所定のスパッタパワーを印加し、ArガスとN2ガスとCO2ガスとの混合ガスを第1のチャンバー内に導入しながら透明基板20を搬送させ、透明基板20がモリブデンシリサイドターゲット付近を通過する際に、透明基板20上にMoとSiとOとNとCを含むモリブデンシリサイド系材料(MoSiONC)からなる位相シフト膜30を成膜した。なお、第1のチャンバー内の真空度、スパッタパワー、スパッタガスの圧力を適宜調整して、透明基板20上に膜応力の異なる7種類の位相シフト膜30を成膜した。
膜応力は、成膜した位相シフト膜30につき、UltraFLAT 200M(Corning TROPEL社製)を用いて平坦度変化を測定し、算出した。
また、膜応力の異なる7種類の位相シフト膜30について、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。その結果、7種類(試料1~7)の位相シフト膜30は、膜の深さ方向において、均一に含有されており、各元素の平均含有率は、Mo:11原子%、Si:25原子%、O:34原子%、N:18原子%、C:12原子%であり、MoとSiの比率は、1:2.3であり、位相シフト膜30に含まれる酸素の含有率は、窒素の含有率よりも大きいものであった。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜をウェットエッチングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成した。
その後、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液(温度:22℃)により位相シフト膜30をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン30aを形成した。
このようにして、透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成した。得られた位相シフト膜パターン30aの断面を走査型電子顕微鏡により観察した。位相シフト膜パターンの断面形状は、位相シフト膜パターンの断面において、上面と側面とが接する部位(上辺)と、側面と下面が接する部位(下辺)とのなす角度によって定義し、試料1~7の断面形状を評価した。
試料1~7の位相シフト膜30の膜応力、モリブデンシリサイドエッチング液に対するエッチング速度、断面形状の結果を表1に示す。
A.位相シフトマスクブランクおよびその製造方法
実施例1の位相シフトマスクブランクを製造するため、先ず、透明基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
透明基板20の主表面上に、上記試料4(実施例1)、試料5(実施例2)、試料6(実施例3)の成膜条件でスパッタリングを行って位相シフト膜30を形成した。
次に、上述と同様にして、位相シフト膜30上にCrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
また、位相シフト膜30につき、UltraFLAT 200M(Corning TROPEL社製)を用いて平坦度変化を測定し、膜応力を算出したところ、表1の評価結果と同じ結果となった。なお、この位相シフト膜30は、位相シフトマスクの洗浄で使用される薬液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水)に対する、透過率変化量、位相差変化量ともに小さく、高い耐薬性、耐洗浄性を有していた。
また、位相シフト膜30の膜応力については、大型のガラス基板や、大型位相シフトマスクブランクの平坦度が測定できるフラットネステスターにより、1214サイズの透明基板20の平坦度と、透明基板20上に位相シフト膜30が形成された位相シフト膜付き基板の平坦度を測定して、平坦度変化を測定し、膜応力を算出した結果、表1の評価結果と同じ結果であることを確認した。
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ラインパターンの幅が1.8μmおよびスペースパターンの幅が1.8μmのラインアンドスペースパターンのレジスト膜パターンを形成した。
その後、レジスト膜パターンを剥離した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に、遮光帯を形成するための第2のレジスト膜パターン60を形成した。
その後、第2のレジスト膜パターン60を剥離した。
CDばらつきは0.098μmと良好であった。
このため、実施例1~3の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
比較例1~3の位相シフトマスクブランクを製造するため、実施例1~3と同様に、透明基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
透明基板20の主表面上に、上記試料1(比較例1)、試料2(比較例2)、試料3(比較例3)の成膜条件でスパッタリングを行って位相シフト膜30を形成した。
次に、上述と同様にして、位相シフト膜30上にCrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成された位相シフトマスクブランク10を得た。得られた位相シフト膜30につき、UltraFLAT 200M(Corning TROPEL社製)を用いて平坦度変化を測定し、膜応力を算出したところ、表1の評価結果と同じ結果となった。なお、この位相シフト膜30は、位相シフトマスクの洗浄で使用される薬液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水)に対する、透過率変化量、位相差変化量ともに小さく、高い耐薬性、耐洗浄性を有していた。
次に、実施例1~3と同様の方法により、位相シフトマスクを作製した。
得られた位相シフトマスクの位相シフト膜パターンの断面形状を走査型電子顕微鏡により観察した。その結果、比較例1では、位相シフト膜パターンが形成される前にエッチングマスク膜パターンが剥離してしまい、位相シフト膜パターンを形成することができなかった。また、比較例2では、位相シフト膜パターンが形成される前にエッチングマスク膜パターンが剥離することはなかったが、得られた位相シフト膜パターンの断面形状(角度)は10°となり、上記表1の結果と同じとなり、オーバーエッチングにより断面制御を行うことが可能とされる下限の45度を下回るものであった。
従って、得られた位相シフトマスクでは、300nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線を含む複合光の露光光において、十分な位相シフト効果が得られない。
また、比較例2の位相シフト膜パターンのCDばらつきは0.313μm、比較例3の位相シフト膜パターンのCDばらつきは0.283μmであった。
実施例4の位相シフトマスクブランクを製造するため、実施例1~3と同様に、透明基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
次に、透明基板20の主表面上に、以下の成膜条件でスパッタリングを行って位相シフト膜30を形成した。
インライン型スパッタリング装置の第1のチャンバー内に配置されたモリブデンシリサイドターゲット(Mo:Si=1:9)に所定のスパッタパワーを印加し、Arガスとヘリウム(He)ガスと窒素(N2)ガスとの混合ガス(Ar:18sccm、He:50sccm、N2:13sccm)を第1のチャンバー内に導入しながら透明基板20を搬送させ、透明基板20がモリブデンシリサイドターゲット付近を通過する際に、透明基板20上にMoとSiとOとNを含むモリブデンシリサイド系材料(MoSiON)からなる位相シフト膜30を成膜した。
膜応力は、実施例1と同様に、成膜した位相シフト膜30につき、平坦度変化を測定し、算出した。位相シフト膜30の膜応力は、0.22Paであった。なお、この位相シフト膜30は、位相シフトマスクの洗浄で使用される薬液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水)に対する、透過率変化量及び位相差変化量ともに小さく、高い耐薬性、耐洗浄性を有していた。
また、位相シフト膜30の組成は、X線光電子分光法(XPS)により組成分析を行った。その結果、位相シフト膜30は、膜の深さ方向において、均一に含有されており、各元素の平均含有率は、Mo:8原子%、Si:40原子%、O:6原子%、N:46原子%であり、MoとSiの比率は、Mo:Si=1:5であった。
次に、位相シフト膜30付きの透明基板20を第2のチャンバー内に導入し、上述の実施例と同様にして位相シフト膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成した。
得られた位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30について、上述の実施例と同様に、レーザーテック社製のMPM-100により透過率、位相差を測定した。位相シフト膜30の透過率は27.0%(波長405nm)、位相差は178度(波長:405nm)であった。
上述の実施例と同様に、透明基板20上に、位相シフト膜30、エッチングマスク膜40が形成された位相シフトマスクブランク10について、断面SEM観察したところ、エッチングマスク膜40は、柱状構造を有していることが確認された。
次に、上述の実施例と同様に、位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造した。
得られた位相シフトマスクの位相シフト膜パターンの断面形状を走査型電子顕微鏡により観察した。図3は実施例4の位相シフトマスクの断面写真である。
図3に示すように、実施例4の位相シフトマスクに形成された位相シフト膜パターンの断面形状(角度)は74度であった。よって、300nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線を含む複合光の露光光において、優れた位相シフト効果を有する位相シフトマスクを得ることが可能である。
さらに、上述の実施例と同様に、位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきを測定したところ、CDばらつきは0.092μmと良好であった。
このため、実施例4の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
なお、上述の実施例では、遷移金属としてモリブデンを用いた場合を説明したが、他の遷移金属の場合でも上述と同等の効果が得られる。
また、上述の実施例では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランクや、表示装置製造用の位相シフトマスクの例を説明したが、これに限られない。本発明の位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクは、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用等にも適用できる。
また、上述の実施例では、透明基板のサイズが、1214サイズ(1220mm×1400mm)の例を説明したが、これに限られない。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクの場合、大型(Large Size)の透明基板が使用され、該透明基板のサイズは、一辺の長さが、300mm以上である。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに使用する透明基板のサイズは、例えば、330mm×450mm以上2280mm×3130mm以下である。
また、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用の位相シフトマスクブランクの場合、小型(Small Size)の透明基板が使用され、該透明基板のサイズは、一辺の長さが9インチ以下である。上記用途の位相シフトマスクブランクに使用する透明基板のサイズは、例えば、63.1mm×63.1mm以上228.6mm×228.6mm以下である。通常、半導体製造用、MEMS製造用は、6025サイズ(152mm×152mm)や5009サイズ(126.6mm×126.6mm)が使用され、プリント基板用は、7012サイズ(177.4mm×177.4mm)や、9012サイズ(228.6mm×228.6mm)が使用される。
30a…位相シフト膜パターン、40…エッチングマスク膜、
40a…第1のエッチングマスク膜パターン、
40b…第2のエッチングマスク膜パターン、50…第1のレジスト膜パターン、
60…第2のレジスト膜パターン、100…位相シフトマスク
Claims (10)
- 透明基板上に位相シフト膜と、該位相シフト膜上にエッチングマスク膜とを有する位相シフトマスクブランクであって、
前記位相シフトマスクブランクは、前記エッチングマスク膜を所定のパターン形成されたエッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより前記透明基板上に位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクを形成するための原版であって、
前記位相シフト膜は、遷移金属と、ケイ素と、酸素と、窒素とを含有し、
前記位相シフト膜に含まれる酸素の含有率が5原子%以上70原子%以下であって、
前記位相シフト膜に含まれる遷移金属とケイ素の比率は、1:1.5以上1:6以下であって、
前記位相シフト膜の膜応力は、0.2GPa以上0.35GPa以下であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。 - 前記位相シフト膜は、窒素の含有率が2原子%以上60原子%以下であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記位相シフト膜に含まれる酸素の含有率は、窒素の含有率よりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記位相シフト膜は、複数の層または単一の層で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記エッチングマスク膜は、クロム系材料から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記エッチングマスク膜は、柱状構造を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記エッチングマスク膜は、窒素、酸素、炭素の少なくともいずれか1つを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記透明基板は矩形状の基板であって、該透明基板の短辺の長さは300mm以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の位相シフトマスクブランク。
- 請求項1から8のいずれか1つに記載の位相シフトマスクブランクを準備する工程と、
前記位相シフトマスクブランクの上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターンを形成し、該レジスト膜パターンをマスクとして、ウェットエッチングにより前記エッチングマスク膜をパターニングして、前記エッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクとして、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする、位相シフトマスクの製造方法。 - 請求項1から8のいずれか1つに記載の位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクを用い、または請求項9に記載の位相シフトマスクの製造方法によって製造された位相シフトマスクを用い、表示装置上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする表示装置の製造方法。
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