JP7375065B2 - マスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、マスクブランク、転写用マスク、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法に関する。
近年、LCD(Liquid Crystal Display)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子や配線等の電子回路パターンの作製である。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクが必要になっている。
例えば、特許文献1には、透光性基板と、透光性基板の主表面上に形成された、金属シリサイド系材料から構成される光半透過膜と、この光半透過膜上に形成された、クロム系材料から構成されるエッチングマスク膜とを備え、光半透過膜とエッチングマスク膜との界面に組成傾斜領域Pが形成され、この組成傾斜領域Pでは、光半透過膜のウェットエッチング速度を遅くする成分の割合が、深さ方向に向かって段階的および/または連続的に増加している位相シフトマスクブランク、およびこの位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクが開示されている。
特許6101646公報
一般に、マスクブランクは、製造段階で薬液による洗浄処理が行われる。さらに、このマスクブランクから転写用マスクを製造するプロセスにおいても、薬液による洗浄処理が行われる。しかし、上記のような透光性基板上に、金属シリサイド窒化物系材料からなる薄膜とクロム系材料からなるエッチングマスク膜がこの順に積層した構成を有するマスクブランクに対し、薬液による洗浄処理を行った際、外周部のエッチングマスク膜が薄膜から剥がれる現象が発生することがあった。特に、インライン型スパッタリング装置で成膜したエッチングマスク膜で発生しやすい傾向があった。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、薬液による洗浄処理を行った際、エッチングマスク膜が剥離する現象を抑制することができるマスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上にパターン形成用の薄膜とエッチングマスク膜がこの順に積層されたマスクブランクであって、
前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有し、
前記エッチングマスク膜は、クロムを含有し、
前記エッチングマスク膜の外周部における膜厚は、前記エッチングマスク膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
前記薄膜の外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも大きい
ことを特徴とするマスクブランク。
(構成2)
前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率を、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率で除して算出される比率は、1.1以上であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記薄膜の酸素の含有量は、10原子%以下であることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記薄膜の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記薄膜は、少なくともモリブデンを含有することを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記エッチングマスク膜は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有することを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記薄膜は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有することを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
前記薄膜の前記外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さいことを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成9)
前記薄膜は、位相シフト膜であり、
前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成10)
構成1から9のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記エッチングマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
前記転写パターンが形成されたエッチングマスク膜をマスクとするウェットエッチングによって、前記薄膜に転写パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成11)
構成10記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクを用いる表示装置の製造方法であって、
前記転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
本発明によれば、薬液による洗浄処理を行った際に、エッチングマスク膜が剥離する現象を抑制することができるマスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態におけるマスクブランクにおける要部を示す断面図である。 本発明の実施形態における位相シフトマスク(転写用マスク)の製造工程を示す模式図である。
まず、本発明に至った経緯について説明する。本願発明者らは、透光性基板上に、金属シリサイド窒化物系材料からなるパターン形成用の薄膜(以下、単に「薄膜」という場合がある。)とクロム系材料からなるエッチングマスク膜が積層した構造を備えるマスクブランクにおいて、薬液による洗浄処理を行ったときに、エッチングマスク膜が剥がれる現象を抑制することができる構成について、鋭意研究を行った。
本願発明者らは、エッチングマスク膜が剥がれる現象が、エッチングマスク膜の平面視で中央部よりも外周部に発生しやすいことに着目した。複数枚のマスクブランクでエッチングマスク膜の表面を詳細に観察したところ、エッチングマスク膜の外周部で膜質が顕著に疎な部分(以下、これを「微小ピンホール」という。)が局所的に存在する場合があることが判明した。このような微小ピンホールは、従来の欠陥検査装置で検出することは容易ではない。次に、エッチングマスク膜の外周部で微小ピンホールが見つかった複数膜のマスクブランクに対し、薬液による洗浄処理を複数回行った。その結果、そのピンホール欠陥が見つかった領域で比較的高い確率で膜剥がれが発生することが判明した。
一方、本願発明者らは、微小ピンホールがエッチングマスク膜の外周部で発生しやすい原因について検証を行った。その結果、エッチングマスク膜の外周部がそれ以外の部分(中央部等)よりも膜厚が薄いことによって、スパッタ粒子が十分に堆積成長できていない部分が局所的に生じ、これが微小ピンホールになることがわかった。エッチングマスク膜の微小ピンホールが存在する領域では、薬液のような液体が浸み込みやすい。なお、エッチングマスク膜をインライン型スパッタリング装置で成膜した場合、外周部に微小ピンホールがより発生しやすい。
これらの結果から、本願発明者らは、以下の仮説を立てた。マスクブランクに対して薬液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水等)による洗浄処理を行った際、まず、エッチングマスク膜の微小ピンホールから薬液が浸み込んで、クロム系材料のエッチングマスク膜と金属シリサイド窒化物系材料の薄膜の界面にまで到達する。次に、その薬液が金属シリサイド窒化物系材料の薄膜の表面を溶解させる。これによって、薄膜とエッチングマスク膜との間の密着性は失われる。微小ピンホール部分のエッチングマスク膜の機械的剛性は低い。洗浄処理時、薬液はエッチングマスク膜の表面を流動するため、微小ピンホール部分に物理的な衝撃が加わる。これらの作用によって、微小ピンホール部分で膜剥がれが発生するものと推測した。
本願発明者らは、これらの仮説から、金属シリサイド窒化物系材料の薄膜を従来よりも薬液に対して溶解しにくい組成にすることを考えた。薄膜中のケイ素含有量に対する窒素含有量の比率をより高くすることで、耐薬性がより高まる。しかし、金属シリサイド窒化物系材料の薄膜は、転写用マスクが製造された際、転写パターンが設けられるため、所望の光学特性を満たすように設計されている。このため、薄膜中のケイ素含有量に対する窒素含有量の比率を安易に高くすることはできない。本願発明者らは、一般的に薄膜の外周部には転写パターンが形成されないことに気づいた。さらに、金属、ケイ素および窒素を含有する薄膜において、外周部でのケイ素含有量に対する窒素含有量の比率を、外周部以外の部分でのケイ素含有量に対する窒素含有量の比率よりも大きくなるようにすることで、外周部の耐薬性を高めることができることを見出した。さらに、薄膜の耐薬性を高めることで、エッチングマスク膜の外周部に微小ピンホールが存在し、そこから薬液が浸み込んできた場合でも、薄膜とエッチングマスク膜との密着性が低下することを抑制でき、微小ピンホールが存在する領域のエッチングマスク膜が剥がれることを抑制できることを見出した。
本発明は、以上のような鋭意検討の結果なされたものである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。なお、図中、同一または相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
図1は、本発明の実施形態におけるマスクブランクにおける要部を示す断面図である。同図に示されるように、マスクブランク10は、透光性基板20と、透光性基板20の主表面21上に設けられたパターン形成用の薄膜30と、パターン形成用の薄膜30上に設けられたエッチングマスク膜40とを備えるものである。以下、それぞれの要素について説明する。
<透光性基板20>
透光性基板20(又は、単に基板20と称す場合がある。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向する主表面21、22と、側面23、面取り面(C面)24とを有する。2つの対向する主表面21、22は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向する主表面21、22の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面21(一方の主表面、という場合がある)である。また、転写パターンが形成されるべき主表面21とは反対側の主表面22を、裏面(または、他方の主表面)という場合がある。
透光性基板20は、露光光に対して透明である。透光性基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透光性基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透光性基板20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透光性基板20の熱変形に起因する位相シフト膜パターンの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される位相シフトマスクブランク用透光性基板20は、一般に矩形状の基板であって、該透光性基板の短辺の長さは300mm以上であるものが使用される。本発明は、透光性基板20の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズであっても、透光性基板20上に形成される例えば2.0μm未満の微細な位相シフト膜パターンを安定して転写することができる位相シフトマスクを提供可能な位相シフトマスクブランクである。
<位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)30>
透光性基板20の主表面21上には、位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)30が設けられている。位相シフト膜30は、外周部32(図1においてOT3で示される領域)と、外周部以外の部分(中央側部分)31(図1においてIN3で示される領域)とを有している。位相シフト膜30の外周部32と中央側部分31との境界は、後述のエッチングマスク膜40の外周部42(図1においてOT4で示される領域)と中央側部分41(図1においてIN4で示される領域)との境界よりも、中央側にあることが、薄膜30とエッチングマスク膜40との密着性の観点等から好ましい。
位相シフト膜30は、金属、ケイ素および窒素を含有している。位相シフト膜30の外周部32におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)は、位相シフト膜30の中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)よりも大きくなっている。このように構成された位相シフト膜30の外周部32は、洗浄処理等で用いられる薬液に対する耐性が高い。これにより、エッチングマスク膜40の外周部42に微小ピンホールが存在し、薬液がその微小ピンホールから浸み込んで位相シフト膜30の外周部32に到達したとしても、外周部32の表面が溶解してエッチングマスク膜40との密着性が低下することを抑制することができる。さらに、微小ピンホールおよびその周囲のエッチングマスク膜40が剥離することを抑制できる。
位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/C(Si)は、0.9以上であることが好ましい。この条件を満たすことによって、位相シフト膜30の外周部32の薬液に対する耐性がより高められる。位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/C(Si)は、0.95以上であるとより好ましく、1.0以上であるとさらに好ましい。一方、位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/C(Si)は、1.5以下であることが好ましく、1.4以下であるとより好ましく、1.3以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜30の外周部32におけるケイ素と金属の合計含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/{C(Si)+C(M)}は、0.63以上であると好ましい。この条件を満たすことによって、位相シフト膜30の外周部32の薬液に対する耐性がより高められる。位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(M)}は、0.65以上であるとより好ましく、0.68以上であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(M)}は、1.2以下であると好ましく、1.15以下であるとより好ましく、1.0以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜30の外周部32におけるケイ素、金属および酸素の合計含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/{C(Si)+C(M)+C(O)}は、0.58以上であると好ましい。この条件を満たすことによって、位相シフト膜30の外周部32の薬液に対する耐性がより高められる。位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(M)+C(O)}は、0.6以上であるとより好ましく、0.62以上であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜30の外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(M)+C(O)}は、1.0以下であると好ましく、0.9以下であるとより好ましく、0.8以下であるとさらに好ましい。さらに、位相シフト膜30の外周部32における、ケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)を、位相シフト膜30の中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)で除して算出される比率[C(N)/C(Si)]/[C(N)/C(Si)]は、1.1以上であると好ましく、1.15以上であるとより好ましい。
位相シフト膜30は、外周部32における膜厚が中央側部分31における膜厚よりも小さくなっていてもよい。この場合において、中央側部分31の膜厚を中央側部分31の領域IN3内での膜厚の平均値とすることができる。さらに、外周部32の領域OT3を中央側部分31の膜厚の平均値よりも小さい領域とすることができる。
位相シフト膜30は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有する構成とすることができる。ここでいう柱状構造は、位相シフト膜30を構成する材料の粒子が、位相シフト膜30の膜厚方向(上記粒子が堆積する方向)に向かって伸びる柱状の粒子構造を有する状態をいう(後述するエッチングマスク膜40においても同様である)。位相シフト膜30の厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造とすることによって、転写パターンを形成する際のウェットエッチング工程におけるエッチングレートを速くすることができる。柱状構造の薄膜は、薬液による洗浄に対する耐性が低下する傾向がある。しかし、位相シフト膜30の外周部32は、ケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率を高くして薬液に対する耐性が高められている。このため、薬液がエッチングマスク膜40の外周部41の微小ピンホールから浸み込んで位相シフト膜30の外周部32に到達したとしても、外周部32の表面が溶解してエッチングマスク膜40との密着性が低下することを抑制することができる。
位相シフト膜30に含まれる金属として、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などの遷移金属が好適であり、少なくともモリブデンを含有することが好ましい。
位相シフト膜30に含まれる窒素の含有量は、10原子%よりも多く50原子%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、15原子%以上45原子%以下が望ましい。位相シフト膜30の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることが好ましく、92原子%以上であるとより好ましい。また、位相シフト膜30の金属とケイ素の合計含有量に対する金属の含有量の比率は、0.5以下であると好ましく、0.45以下であるとより好ましく、0.35以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜30は、酸素を含有してもよい。位相シフト膜30に含まれる酸素の含有量は、10原子%以下であることが好ましく、8原子%以下であることがより好ましい。
位相シフト膜30は、露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する。位相シフト膜30は、さらに、透光性基板20側から入射する光に対する反射率(以下、裏面反射率と記載する場合がある)を調整する機能を有することが好ましい。
位相シフト膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
位相シフト膜30の外周部以外の部分(中央側部分)31における露光光に対する透過率は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の中央側部分31における透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長という、例えば波長365nmの光)に対して、3%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。また、代表波長に対して、70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましい。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30の中央側部分31は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30の外周部以外の部分は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有する。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
位相シフト膜30の中央側部分31における露光光に対する位相差は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の中央側部分31における位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、150度以上210度以下であることが好ましく、160度以上200度以下であることがより好ましく、170度以上190度以下であることがさらに好ましい。この性質により、露光光に含まれる代表波長の光の位相を所定の位相差の範囲で変えることができる。このため、位相シフト膜30の中央側部分31を透過した代表波長の光と透光性基板20のみを透過した代表波長の光との間に所定の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30の中央側部分31は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30の中央側部分31は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
<エッチングマスク膜40>
位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)30の表面上には、エッチングマスク膜40が設けられている。エッチングマスク膜40は、クロムを含有する材料で形成される。エッチングマスク膜40を形成する材料として、例えば、クロム(Cr)、又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。または、エッチングマスク膜40を形成する材料として、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、CrCONFが挙げられる。エッチングマスク膜40は、位相シフト膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する。
エッチングマスク膜40は、外周部42(図1においてOT4で示される領域)と、外周部以外の部分(中央側部分)41(図1においてIN4で示される領域)とを有している。エッチングマスク膜40の外周部42における膜厚は、前記エッチングマスク膜40の前記外周部以外の部分(中央側部分)41における膜厚よりも小さくなっている。この場合において、中央側部分41の膜厚を中央側部分41の領域IN4内での膜厚の平均値とすることができる。
一方、エッチングマスク膜40の中央側部分41における膜厚に対するエッチングマスク膜40の外周部42における膜厚の比率が0.7以下となる領域をエッチングマスク膜40の外周部42(図1においてOT4で示される領域)としてもよい。この場合、位相シフト膜30の外周部32と中央側部分31との境界を、平面視で位相シフト膜30の外周端から、エッチングマスク膜40の外周部42における膜厚の比率が0.7となる境界と同じあるいは、それよりも中央側に設定することができる。エッチングマスク膜40の中央側部分41における膜厚に対する外周部42における膜厚の比率が0.7以下となる領域は、微小ピンホールが発生しやすい傾向がある。上記構成とすることによって、そのエッチングマスク膜40の外周領域42の直下にある位相シフト膜30の領域を少なくとも包含するように、ケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率が高い外周部32を設けられる。これにより、エッチングマスク膜40の外周部42に微小ピンホールが存在し、薬液がその微小ピンホールから浸み込んで位相シフト膜30の外周部32に到達したとしても、外周部32の表面が溶解してエッチングマスク膜40との密着性が低下することを抑制することができる。
エッチングマスク膜40の外周部42は、位相シフト膜30の外周部32の外周端までの全てを覆う領域まで形成されていることが好ましい。これにより、洗浄処理時の薬液が位相シフト膜30の表面に直接接触しないようにできる。
エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有してもよいし、さらに、またはそれに換えて、膜面反射率を低減する機能を有してもよい。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
エッチングマスク膜40は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有する構成とすることができる。エッチングマスク膜40の厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造とすることによって、転写パターンを形成する際のウェットエッチング工程におけるエッチングレートを速くすることができる。他方、エッチングマスク膜40の外周部42のような膜厚が薄い柱状構造の薄膜は、微小ピンホールが発生しやすい。位相シフト膜30の外周部32を上記のような構成とすることによって、薬液による洗浄でエッチングマスク膜40の外周部41が剥離することを抑制することができる。
エッチングマスク膜40が露光光の透過を遮る機能を有する場合、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上、さらに好ましくは4以上である。
光学濃度は、分光光度計もしくはODメーターなどを用いて測定することができる。
〈マスクブランクの製造方法〉
次に、この実施の形態のマスクブランク10の製造方法について説明する。位相シフトマスクブランク10は、以下の位相シフト膜形成工程とエッチングマスク膜形成工程とを行うことによって製造される。この位相シフト膜30とエッチングマスク膜40の成膜には、インライン型スパッタリング装置が好ましく用いられる。インライン型スパッタリング装置でスパッタ成膜された位相シフト膜30とエッチングマスク膜40は、その内部に柱状構造が形成されやすい。以下、各工程を詳細に説明する。
1.位相シフト膜形成工程
透光性基板20を準備し、その透光性基板20上にスパッタリング法によって、位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)30を形成する。
位相シフト膜30の成膜は、位相シフト膜30を構成する材料の主成分となる遷移金属とケイ素を含むスパッタターゲットを使用し、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。
この位相シフト膜30の成膜の際、位相シフト膜30の外周部以外の部分(中央側部分)31が所望の光学特性(透過率、位相差等)を満たすようにスパッタガス中の各ガスの流量比等を調整する。それと同時に、位相シフト膜30の外周部32におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)が中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)よりも大きくなるように調整する。例えば、スパッタリング装置内の透光性基板20が配置されたときに透光性基板20の外周が通る位置にスパッタガスや窒素系ガスが積極的に供給されるように供給口を設けることなどが考えられる。
3.エッチングマスク膜形成工程
位相シフト膜30の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を行った後、スパッタリング法により、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。このとき、エッチングマスク膜40の外周部42の膜厚は、外周部以外の部分(中央側部分)41における膜厚よりも小さくなる。
エッチングマスク膜40の成膜は、クロム又はクロム化合物(酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロム等)を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
このようにして、マスクブランク10が得られる。
〈位相シフトマスク(転写用マスク)およびその製造方法〉
図2は本発明の実施形態における位相シフトマスク(転写用マスク)の製造工程を示す模式図である。
図2に示す位相シフトマスクの製造方法は、図1に示すマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造する方法である。図2(e)に示されているように、位相シフトマスク100は、マスクブランク10の位相シフト膜30に転写パターンである位相シフト膜パターン30aが形成され、エッチングマスク膜40に遮光パターンとして機能する第2のエッチングマスク膜パターン40bが形成されていることを特徴としている。この位相シフトマスク100は、マスクブランク10と同様の技術的特徴を有している。位相シフトマスク100における透光性基板20、位相シフト膜30の中央側部分31、外周部32、エッチングマスク膜40の中央側部分41、外周部42に関する事項については、マスクブランク10と同様である。
位相シフトマスクの製造方法は、マスクブランク10の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクとして、ウェットエッチングによりエッチングマスク膜40をパターニングして、エッチングマスク膜パターン40aを形成する工程(第1のエッチングマスク膜パターン形成工程)と、エッチングマスク膜パターン40aをマスクとして、位相シフト膜30をウェットエッチングにより透光性基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。そして、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程とをさらに含む。なお、各工程間で適宜、薬液(硫酸過水、アンモニア過水、オゾン水等)、DIW(Deionized Water)等による洗浄処理が行われる。
以下、各工程を説明する。
1.第1のレジスト膜パターン形成工程
第1のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図2(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。レジスト膜の現像が終了後、DIW等による洗浄処理が行われる。
2.第1のエッチングマスク膜パターン形成工程
第1のエッチングマスク膜パターン形成工程では、先ず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。エッチングマスク膜40へのエッチングが終了後、薬液、DIW等による洗浄処理が行われる。
その後、レジスト剥離液を用いて、図2(b)に示されるように、エッチングマスク膜40から第1のレジスト膜パターン50を剥離し、さらに薬液やDIWによる洗浄処理を行う。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次の位相シフト膜パターン形成工程を行ってもよい。
3.位相シフト膜パターン形成工程
第1の位相シフト膜パターン形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、図2(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。位相シフト膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。位相シフト膜30をエッチングするエッチング液は、位相シフト膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液、フッ化水素アンモニウムと塩化水素とを含むエッチング液が挙げられる。位相シフト膜30へのエッチングが終了後、薬液、DIW等による洗浄処理が行われる。
4.第2のレジスト膜パターン形成工程
第2のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、第1のレジスト膜パターン形成工程におけるレジスト膜材料と同様に、特に制限されない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30にパターンが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光パターン、及び位相シフト膜パターンの中央部を遮光する遮光パターンである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対する位相シフト膜30の透過率によっては、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図2(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。レジスト膜の現像が終了後、DIW等による洗浄処理が行われる。
5.第2のエッチングマスク膜パターン形成工程
第2のエッチングマスク膜パターン形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図2(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。エッチングマスク膜40へのエッチングが終了後、薬液、DIW等による洗浄処理が行われる。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明したが、エッチングマスク膜40が単に、位相シフト膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程は行われず、位相シフト膜パターン形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターンを剥離して、位相シフトマスク100を作製する。
この位相シフトマスクの製造方法では、実施の形態1のマスクブランクを用いられる。このため、エッチングマスク膜40の外周部42に微小ピンホールが存在していたとしても、その位相シフトマスクの製造の各工程間で薬液による洗浄処理が行われたときに、エッチングマスク膜40の微小ピンホールが存在している外周部42から、エッチングマスク膜40が剥離することが抑制されている。従って、外周部42の膜剥がれによる欠陥が抑制され、さらに外周部42ではがれた膜が位相シフト膜パターンに付着することに起因する欠陥も抑制された位相シフトマスクを製造することができる。
〈表示装置の製造方法〉
表示装置は、上述した転写用マスクを用いる工程(マスク載置工程)と、表示装置上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程(パターン転写工程)とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
1.載置工程
載置工程では、転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、転写用マスクは、マスクブランク10を用いて製造された位相シフトマスク(転写用マスク)100、上述した新たな転写用マスクの製造方法によって製造された新たな転写用マスクのいずれであってもよい。転写用マスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
2.パターン転写工程
パターン転写工程では、転写用マスクに露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、365nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
この表示装置の製造方法によれば、エッチングマスク膜40の外周部42および位相シフト膜パターンの欠陥も抑制された位相シフトマスクを用いるため、低欠陥で高解像度および高精細の表示装置を製造することができる。
実施例1.
A.マスクブランクおよびその製造方法
実施例1のマスクブランク10を製造するため、先ず、透光性基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
その後、合成石英ガラス基板を、主表面を下側に向けてトレイ(図示せず)に搭載し、インライン型スパッタリング装置のチャンバー内に搬入した。
透光性基板20の主表面21上に位相シフト膜30を形成するため、まず、第1チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスと、酸素ガス(O)、窒素(N)ガスとの混合ガスを導入し、モリブデンとケイ素を含む第1スパッタターゲット(モリブデン:ケイ素=1:4)を用いた反応性スパッタリングにより、透光性基板20の主表面上にモリブデンとケイ素と酸素と窒素を含有するモリブデンシリサイドの酸化窒化物の位相シフト膜30を形成した。このとき、チャンバー内の窒素ガスの量が、位相シフト膜30の中央側部分31にも十分に供給されつつ、外周部32により多くの窒素ガスの量が供給されるように、成膜室内における窒素の流量の条件の調整や、ガスの導入口および排出口の配置の調整などを行った。
位相シフト膜30の中央側部分31の膜厚は110nmであった。また、外周部32は、中央側部分31よりも膜厚が小さく、その膜厚は外周端に向かって小さくなっていく膜厚分布を有していた。
次に、位相シフト膜30付きの透光性基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガスを導入した。そして、クロムからなる第2スパッタターゲットを用いた反応性スパッタリングにより、位相シフト膜30上にクロムと窒素を含有するクロム窒化物(CrN)を形成した(膜厚15nm)。次に、第3チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタン(CH)ガスの混合ガスを導入し、クロムからなる第3スパッタターゲットを用いた、反応性スパッタリングによりCrN上にクロムと炭素を含有するクロム炭化物(CrC)を形成した(膜厚60nm)。最後に、第4チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタン(CH)ガスの混合ガスと窒素(N)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガス(Ar+CH)を導入し、クロムからなる第4スパッタターゲットを用いた、反応性スパッタリングによりCrC上にクロムと炭素と酸素と窒素を含有するクロム炭化酸化窒化物(CrCON)を形成した(膜厚30nm)。以上のように、位相シフト膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成した。
エッチングマスク膜40の中央側部分41の膜厚は105nmであった。また、外周部42は、中央側部分41よりも膜厚が小さく、その膜厚は外周端に向かって小さくなっていく膜厚分布を有していた。また、位相シフト膜30の外周部32と中央側部分31との境界は、エッチングマスク膜40の外周部42と中央側部分41との境界よりも、中央側に位置していた。
このようにして、透光性基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成されたマスクブランク10を得た。
得られたマスクブランク10の位相シフト膜30について、レーザーテック社製のMPM-100により中央側部分31の透過率、位相差を測定した。位相シフト膜30の透過率、位相差の測定には、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に位相シフト膜30が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。位相シフト膜30の透過率、位相差は、エッチングマスク膜40を形成する前に位相シフト膜付き基板(ダミー基板)をチャンバーから取り出し、測定した。その結果、透過率は5.2%(波長:365nm)位相差は176度(波長:365nm)であった。
別の透光性基板に対して、上述した条件で、位相シフト膜、エッチングマスク膜を成膜した。そして、位相シフト膜の外周部と中央側部分に対して、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。マスクブランク10に対するXPSによる深さ方向の組成分析結果から、位相シフト膜30の外周部32における窒素の含有量は、中央側部分(外周部以外の部分)31における窒素の含有量よりも大きくなっていることが分かった。また、外周部32および中央側部分31のいずれにおいても、酸素の含有量は、10原子%以下であり、金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることが分かった。
位相シフト膜30の中央側部分31における各組成の平均値を算出したところ、モリブデンの含有量C(Mo)が16.4原子%、ケイ素の含有量C(Si)が41.4原子%、窒素の含有量C(N)が35.6原子%、酸素の含有量C(O)が5.6原子%、炭素の含有量C(C)が1.0原子%であった。
一方、位相シフト膜30の外周部32における各組成の平均値を算出したところ、モリブデンの含有量C(Mo)が15.2原子%、ケイ素の含有量C(Si)が39.7原子%、窒素の含有量C(N)が39.9原子%、酸素の含有量C(O)が4.4原子%、炭素の含有量C(C)が0.8原子%であった。
これらの結果から、中央側部分(外周部以外の部分)31における比率C(N)/C(Si)は0.860であり、0.9を下回っていることがわかった。中央側部分(外周部以外の部分)31における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)}は0.616であり、0.63を下回っていることがわかった。中央側部分(外周部以外の部分)31における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)+C(O)}は0.562であり、0.58を下回っていることがわかった。
これに対し、外周部32における比率C(N)/C(Si)は1.01であり、1.0を上回っていることがわかった。外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)}は0.727であり、0.68を上回っていることがわかった。外周部32における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)+C(O)}は0.673であり、0.62を上回っていることがわかった。上記の各比率ともに、外周部32の方が中央側部分31よりも上回っていた。
さらに、位相シフト膜30の外周部32における、ケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)を、位相シフト膜30の中央側部分31におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)で除して算出される比率[C(N)/C(Si)]/[C(N)/C(Si)]は、1.17であった。
また、位相シフト膜30の外周部32および中央側部分31のいずれにおいても、酸素の含有量は、10原子%以下であり、金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることが分かった。
一方、この別の透光性基板の位相シフト膜30とエッチングマスク膜40の断面SEM(Scanning Electron Microscope)像を取得した。その結果、位相シフト膜30は、中央側部分31、外周部32ともに内部に膜厚方向に延びる柱状構造を有していることがわかった。また、エッチングマスク膜40も、中央側部分41、外周部42ともに内部に膜厚方向に延びる柱状構造を有していることがわかった。
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク10について、図2に示した手順で、透光性基板20上に、転写パターン形成領域に位相シフト膜パターン30aと、位相シフト膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光パターンが形成された位相シフトマスク100を得た。
位相シフトマスク100に対し、マスク欠陥検査を行ったところ、エッチングマスク膜パターン40bの外周部42には膜剥がれに起因する欠陥は検出されなかった。また、位相シフト膜パターン30aにおいても、剥がれた膜が付着したことに起因する欠陥は検出されなかった。
C.表示装置の製造方法
このため、この実施例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、低欠陥で微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
比較例1.
比較例1の位相シフトマスクブランクを製造するため、実施例1と同様に、透光性基板として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
合成石英ガラス基板を、インライン型のスパッタリング装置のチャンバーに搬入した。比較例1においては、実施例1とは異なり、チャンバー内で外周部32により多くの窒素ガスの量が供給されるような窒素の流量の条件の調整や、ガスの導入口および排出口の配置の調整をせずに、位相シフト膜を成膜した。そして、第1スパッタターゲット、第2スパッタターゲット、第3スパッタターゲット、第4スパッタターゲットとして、実施例1と同じスパッタターゲット材料を用いた。
そして、実施例1と同じ方法により、エッチングマスク膜を成膜した。エッチングマスク膜の外周部は、実施例1と同様に、中央側部分よりも膜厚が小さく、その膜厚は外周端に向かって小さくなっていく膜厚分布を有していた。
このようにして、透光性基板上に、位相シフト膜とエッチングマスク膜とが形成された位相シフトマスクブランクを得た。
得られた位相シフトマスクブランクの位相シフト膜(位相シフト膜の表面を純水洗浄した位相シフト膜)について、レーザーテック社製のMPM-100により透過率、位相差を測定した。位相シフト膜の透過率、位相差の測定には、同一のトレイにセットして作製された、合成石英ガラス基板の主表面上に位相シフト膜30が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。位相シフト膜の透過率、位相差は、エッチングマスク膜を形成する前に位相シフト膜付き基板(ダミー基板)をチャンバーから取り出し、測定した。その結果、透過率は5.2%(波長:365nm)位相差は176度(波長:365nm)であった。
また、別の透光性基板に対して、比較例1と同一の条件で、位相シフト膜、エッチングマスク膜を成膜した。そして、位相シフト膜の外周部と中央側部分に対して、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。位相シフト膜の中央側部分における組成分析結果は、実施例1のものと同等であった。
一方、この比較例1の位相シフト膜の外周部における各組成の平均値を算出したところ、モリブデンの含有量C(Mo)が20.1原子%、ケイ素の含有量C(Si)が49.5原子%、窒素の含有量C(N)が27.6原子%、酸素の含有量C(O)が1.3原子%、炭素の含有量C(C)が1.5原子%、クロムの含有量C(Cr)が0.2原子%であった。
これらの結果から、外周部における比率C(N)/C(Si)は0.558であり、0.9を下回っていることがわかった。外周部における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)}は0.397であり、0.63を下回っていることがわかった。外周部における比率C(N)/{C(Si)+C(Mo)+C(O)}は0.388であり、0.58を下回っていることがわかった。上記の各比率ともに、外周部の方が中央側部分よりも上回っていた。
さらに、位相シフト膜の外周部における、ケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)を、位相シフト膜の中央側部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率C(N)/C(Si)で除して算出される比率[C(N)/C(Si)]/[C(N)/C(Si)]は、0.65であり、1.1を下回っていた。
一方、この比較例1の別の透光性基板の位相シフト膜とエッチングマスク膜の断面SEM(Scanning Electron Microscope)像を取得した。その結果、位相シフト膜は、中央側部分、外周部ともに内部に膜厚方向に延びる柱状構造を有していることがわかった。また、エッチングマスク膜も、中央側部分、外周部ともに内部に膜厚方向に延びる柱状構造を有していることがわかった。
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1と同じ方法により、位相シフトマスクを製造した。
この比較例1の位相シフトマスクに対し、マスク欠陥検査を行ったところ、エッチングマスク膜パターンの外周部の一部で膜剥がれに起因する欠陥が検出された。また、位相シフト膜パターンにおいても、その剥がれた膜が付着したことに起因すると推測される欠陥が検出された。
C.表示装置の製造方法
このため、この比較例1の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、低欠陥で微細パターンを高精度に転写することは困難といえる。
以上のように、本発明によれば、薬液による洗浄処理を行った際に、エッチングマスク膜が剥離する現象を抑制することができるマスクブランク、転写用マスクの製造方法、及び表示装置の製造方法を提供することができる。
なお、上述の実施例では、遷移金属としてモリブデンを用いた場合を説明したが、他の遷移金属の場合でも上述と同等の効果が得られる。
また、上述の実施例では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランクや、表示装置製造用の位相シフトマスクの例を説明したが、これに限られない。本発明の位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクは、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用等にも適用できる。また、本発明の適用対象は、位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクに限られるものではなく、透過率調整膜として機能する金属、ケイ素および窒素を含有する薄膜を有するマスクブランクや転写用マスク等にも適用することができる。
また、上述の実施例では、透光性基板のサイズが、8092サイズ(800mm×920mm×10mm)の例を説明したが、これに限られない。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクの場合、大型(Large Size)の透光性基板が使用され、該透光性基板のサイズは、一辺の長さが、300mm以上である。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに使用する透光性基板のサイズは、例えば、330mm×450mm以上2280mm×3130mm以下である。
また、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用の位相シフトマスクブランクの場合、小型(Small Size)の透光性基板が使用され、該透光性基板のサイズは、一辺の長さが9インチ以下である。上記用途の位相シフトマスクブランクに使用する透光性基板のサイズは、例えば、63.1mm×63.1mm以上228.6mm×228.6mm以下である。通常、半導体装置製造用、MEMS製造用は、6025サイズ(152mm×152mm)や5009サイズ(126.6mm×126.6mm)が使用され、プリント基板用は、7012サイズ(177.4mm×177.4mm)や、9012サイズ(228.6mm×228.6mm)が使用される。
10…マスクブランク、20…透光性基板、
21…第1の主表面(主表面)、22…第2の主表面(主表面)、23…側面、
24…面取り面(C面)、30…位相シフト膜(パターン形成用の薄膜)、
31…中央側部分(外周部以外の部分)、32…外周部、
30a…位相シフト膜パターン(転写パターンを有する薄膜)、
40…エッチングマスク膜、
41…中央側部分(外周部以外の部分)、42…外周部、
40a…第1のエッチングマスク膜パターン、
40b…第2のエッチングマスク膜パターン、50…第1のレジスト膜パターン、
60…第2のレジスト膜パターン、100…位相シフトマスク(転写用マスク)、

Claims (11)

  1. 透光性基板の主表面上にパターン形成用の薄膜とエッチングマスク膜がこの順に積層されたマスクブランクであって、
    前記薄膜は、金属、ケイ素および窒素を含有し、
    前記エッチングマスク膜は、クロムを含有し、
    前記エッチングマスク膜の外周部における膜厚は、前記エッチングマスク膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さく、
    前記薄膜の外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率は、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率よりも大きい
    ことを特徴とするマスクブランク。
  2. 前記薄膜の前記外周部におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率を、前記薄膜の前記外周部以外の部分におけるケイ素の含有量に対する窒素の含有量の比率で除して算出される比率は、1.1以上であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記薄膜の酸素の含有量は、10原子%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記薄膜の金属、ケイ素、及び窒素の合計含有量は、90原子%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記薄膜は、少なくともモリブデンを含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記エッチングマスク膜は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記薄膜は、厚さ方向の少なくとも一部に柱状構造を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
  8. 前記薄膜の前記外周部における膜厚は、前記薄膜の前記外周部以外の部分における膜厚よりも小さいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク。
  9. 前記薄膜は、位相シフト膜であり、
    前記位相シフト膜の前記外周部以外の部分は、波長365nmの光に対する透過率が3%以上であり、かつ波長365nmの光に対する位相差が、150度以上210度以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランク。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
    前記エッチングマスク膜に転写パターンを形成する工程と、
    前記転写パターンが形成されたエッチングマスク膜をマスクとするウェットエッチングによって、前記薄膜に転写パターンを形成する工程と
    を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  11. 請求項10記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクを用いる表示装置の製造方法であって、
    前記転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置する工程と、
    前記転写用マスクに露光光を照射して、表示装置用の基板上に設けられたレジスト膜に転写パターンを転写する工程と、
    を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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