JP7341813B2 - 無機酸化物粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、熱分解炉壁面での固着物の発生を防止し、かつ熱分解反応を十分に進行させることができる無機酸化物粒子の製造方法を提供することにある。
〔1〕原料無機化合物含有溶液のミストを噴霧するための噴霧装置と、ミストを燃焼ガスにより熱分解するための燃焼バーナーとを備える円筒状熱分解炉内に、噴霧装置を、熱分解炉の軸を中心とする同心円であって、熱分解炉の内径よりも1/2小さい半径の円と、熱分解炉の内径よりも7/8小さい半径の円とから形成される領域内に設置し、該噴霧装置から燃焼ガスの流速に対して30~200%の相対速度でミストを噴霧し、熱分解する工程を含む、無機酸化物粒子の製造方法。
〔2〕噴霧装置が流体ノズルである、前記〔1〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔3〕原料無機化合物がアルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、前記〔1〕又は〔2〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔4〕溶液が水溶液である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
図1は、本発明の製造方法に適用可能な噴霧熱分解装置の一例を示す概略図である。噴霧熱分解装置10は、内燃焼式であり、図1に示されるように、熱分解炉1の下方には、原料無機化合物含有溶液のミスト2を噴霧するための噴霧装置3と、燃焼ガス4を発生させ、ミスト2を熱分解するための燃焼バーナー5とが配置されている。
円筒状熱分解炉は、炉材として使用されている材質であれば何れも用いることができ、加熱温度等を考慮して選定すればよい。また、金属製のシェルの内壁に、耐火レンガ、断熱レンガ、キャスタブル等を単体、層状、又はこれらを組み合わせて用いるのが一般的である。
円筒状熱分解炉の形状は、熱分解炉内に旋回流を発生させることができる点で、堅型が好ましい。熱分解炉の大きさは、製造スケールにより適宜選択することができる。
先ず、原料無機化合物含有溶液を調製する。
原料無機化合物としては、無機酸化物を構成する元素を含有し、水等の溶媒に溶解する化合物であれば特に限定されないが、例えば、無機塩、金属アルコキシド等を挙げることができる。無機塩としては、例えば、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、バリウム塩、セシウム塩、イットリウム塩、アルミノケイ酸塩が挙げられる。また、金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、ケイ酸アルコキシドを挙げることができる。原料無機化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
中でも、原料無機化合物としては、本発明の効果を享受しやすい点で、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。中でも、環境への影響、製造コストの点から、水が好ましい。
噴霧装置の設置位置は、円筒状熱分解炉の軸を中心とし、円筒状熱分解炉内径の半径を基準とする2つの同心円によって画定される所定の領域内であり、その詳細は、上記において説明したとおりである。
噴霧装置としては、流体ノズルが好ましく、2流体ノズル、3流体ノズル、4流体ノズルがより好ましく、3流体ノズル、4流体ノズルが更に好ましい。
燃焼ガスの流速は、通常1~40m/sであるが、熱分解反応の促進、熱分解炉壁面の固着物発生防止の観点から、3~25m/sが好ましく、4~13m/sが更に好ましい。
無機酸化物粒子の製造後に熱分解炉壁面を目視で観察し、固着物の有無を判断した。
マッフル炉にて予め1000℃で加熱し、デシケーター内で冷却したアルミナ性坩堝に、試料5.000gを投入し、マッフル炉にて5℃/minの昇温速度で950±5℃とし、3時間保持した後、ヒーター電源を落とし試料を常温まで炉冷した。そして、試料の重量を測定し、加熱前後の試料の重量から重量減少率を算出した。重量減少率の測定は、50個の試料について行い、重量減少率の平均値を求めた。重量減少率の平均値が2質量%以上である場合を揮発分「有」、重量減少率の平均値が2質量%未満である場合を揮発分「無」と評価した。なお、重量減少率の平均値が2質量%以上である場合は、未反応物が多いため、熱分解反応が不十分であるといえる。
図1に示す内燃焼式噴霧熱分解装置を用いて無機酸化物粒子を製造した。なお、噴霧熱分解装置の円筒状熱分解炉の反応部のサイズは、φ1000mm×5000mmであった。噴霧装置は、図1において円筒状熱分解炉の軸Oを中心とし、該熱分解炉内径の半径よりも7/8小さい半径の同心円上であって、かつゾーンAに設置した。また、ミストの噴出速度は、霧化エアー量で調整し、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速は、燃焼バーナーの焚き量にて調整した。燃焼バーナーは、熱分解炉内に旋回流が発生するように熱分解炉の中心軸とずらし、火炎がミストと直接接触しないように設置した。
次いで、原料溶液を送液ポンプで熱分解炉内に固定した3流体ノズルに圧縮空気とともに送液し、ノズル噴出口から原料溶液のミストを、燃焼ガスの流速に対して30%の相対速度で噴霧し、ミストを燃焼ガスの旋回流により旋回させながら上昇させ、熱分解炉内(内部温度950℃)を通過させて熱分解した。その後、バグフィルターにて無機酸化物粒子を回収した。そして、950℃揮発分の有無、炉壁面の固着物発生の有無について評価した。その結果を表1に示す。
表1に示す、原料溶液の噴霧量、ノズルの設置位置、燃焼ガス速度に対するミストの噴出相対速度に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により無機酸化物粒子を製造した。そして、950℃揮発分の有無、炉壁面の固着物発生の有無について評価した。その結果を表1に示す。なお、表1において、ノズルを円筒状熱分解炉の軸Oに設置した場合の「ノズル設置位置」を「O」と表記した。
比較例2は、燃焼ガス速度に対するミストの噴出相対速度が高いため、熱分解炉内でのミストの滞留時間が短く、熱処理にばらつきを生じた結果、熱分解反応が不十分となったものを考えられる。
比較例3は、所定の領域から僅かに外れて噴霧装置を設置したため、ミストの一部が炉壁に接触し固着物が発生したものと考えられる。
比較例4は、所定の領域から大きく外れて噴霧装置を設置したため、ミストが熱分解炉内の燃焼ガスの旋回流に巻き込まれ難く、熱分解反応が不十分となったものと考えられる。
比較例5は、所定の領域から大きく外れて噴霧装置を設置し、しかも燃焼ガス速度に対するミストの噴出相対速度が高いため、熱分解炉内でのミストの滞留時間が短く、熱処理にばらつきを生じた結果、熱分解反応が不十分となったものと考えられる。
これに対し、実施例1~11は、所定の領域内に噴霧装置を設置し、かつ燃焼ガス速度に対するミストの噴出相対速度が所定範囲内となるように制御されているため、ミストが熱分解炉内の燃焼ガスの旋回流に巻き込まれ、熱分解炉壁面への固着物の発生が抑制されるとともに、熱処理が十分に確保され熱分解反応が十分進行したものと考えられる。
2 ミスト(液滴)
3 噴霧装置
4 燃焼ガス
5 燃焼バーナー
6 噴霧装置が設置される領域
O 熱分解炉の中心軸
10 噴霧熱分解装置
Claims (3)
- 原料無機化合物含有溶液のミストを噴霧するための噴霧装置と、
ミストを燃焼ガスにより熱分解するための燃焼バーナーと
を備える円筒状熱分解炉内に、噴霧装置を、熱分解炉の軸を中心とする同心円であって、熱分解炉の内径よりも1/2小さい半径の円と、熱分解炉の内径よりも7/8小さい半径の円とから形成される領域内に設置し、該噴霧装置から燃焼ガスの流速に対して30~200%の相対速度でミストを噴霧し、熱分解する工程を含み、
原料無機化合物含有溶液が、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である原料無機化合物を含む溶液である、
無機酸化物粒子の製造方法。 - 噴霧装置が流体ノズルである、請求項1記載の無機酸化物粒子の製造方法。
- 溶液が水溶液である、請求項1又は2記載の無機酸化物粒子の製造方法。
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