JP7352423B2 - 無機酸化物粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
このような問題を解決するために、本発明者らは、従来の流体ノズルに換えて、ロータリアトマイザノズルやサークルエッジノズルを用いて無機酸化物粒子の製造を試みたところ、これらノズルは、特許文献3、4に記載されるように、通常炉の上方に設置され、ミストを下方へ向けて放射状に噴霧するため、ミストの大きさや重さによって降下速度が変わり、熱処理にばらつきを生じ、粒径の制御も難しくなる。そこで、ロータリアトマイザノズルやサークルエッジノズルを炉の下方に設置し、ミストを上方へ向けて放射状に噴霧したところ、ミストが熱分解炉壁面やノズル噴出口へ付着して固着物が発生するという課題が生じた。
本発明の課題は、熱分解炉壁面及びノズル噴出口への固着を防止可能な無機酸化物粒子を製造する方法を提供することにある。
〔1〕熱分解炉の底部に配置され、原料無機化合物有溶液のミストを噴霧するためのノズルと、燃焼ガスが旋回流を生じるように熱分解炉の底部に配置され、ミストを燃焼ガスにより熱分解するための燃焼バーナーとを備える内燃焼式噴霧熱分解装置内に、ノズルからミストを放射状に噴霧し、ミストの噴出速度(A)と、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速(B)との比[(A)/(B)]が1.2~4.5の条件にて、ミストを熱分解する工程を含む、無機酸化物粒子の製造方法。
〔2〕燃焼バーナーを、熱分解炉の底部から略同一距離で、かつ熱分解炉体内の接線方向に対角配置し、燃焼ガスにより熱分解炉内で旋回流を生じさせる、前記〔1〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔3〕ノズルがロータリアトマイザノズル又はサークルエッジノズルである、前記〔1〕又は〔2〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔4〕原料無機化合物がアルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔5〕溶液が水溶液である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
図1は、本発明の製造方法に適用可能な噴霧熱分解装置の一例を示す概略図である。噴霧熱分解装置10は、内燃焼式であり、図1に示されるように、熱分解炉1の底部には、原料無機化合物含有溶液のミスト5を噴霧するためのノズル2と、燃焼ガス4を発生させ、ミスト5を熱分解するための燃焼バーナー3とが配置されている。
熱分解炉は、炉材として使用されている材質であれば何れも用いることができ、加熱温度等を考慮して選定すればよい。また、金属製のシェルの内壁に、耐火レンガ、断熱レンガ、キャスタブル等を単体、層状、又はこれらを組み合わせて用いるのが一般的である。
熱分解炉の形状は、熱分解炉内に旋回流を発生させることができる点で、堅型円筒状が好ましい。熱分解炉の大きさは、製造スケールにより適宜選択することができる。
先ず、原料無機化合物含有溶液を調製する。
原料無機化合物としては、無機酸化物を構成する元素を含有し、水等の溶媒に溶解する化合物であれば特に限定されないが、例えば、無機塩、金属アルコキシド等を挙げることができる。無機塩としては、例えば、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、亜鉛塩、ジルコニウム塩、バリウム塩、セシウム塩、イットリウム塩、アルミノケイ酸塩が挙げられる。また、金属アルコキシドとしては、アルミニウムアルコキシド、ケイ酸アルコキシドを挙げることができる。原料無機化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
中でも、原料無機化合物としては、本発明の効果を享受しやすい点で、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上が更に好ましい。
溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。中でも、環境への影響、製造コストの点から、水が好ましい。
ノズルは、ミストを放射状に容易に噴霧できる点で、ロータリアトマイザノズル又はサークルエッジノズルが好ましい。
燃焼ガスの速度をミストの噴出速度に対して遅くしすぎると、旋回流にミストが巻き込まれず、旋回流を突き抜けて熱分解炉内壁に付着しやすくなる。他方、燃焼ガスの速度をミストの噴出速度に対して速くしすぎると、旋回流にミストが引っ張られて綺麗なミストパターンにならず、ノズル噴出口に固結を生じ、連続運転に支障をきたしやすくなる。そのため、本発明においては、ノズルから噴霧されるミストの噴出速度(A)と、燃焼バーナーにより発生した燃焼ガスの流速(B)との比[(A)/(B)]を1.2~4.5に制御する。熱分解炉壁面及びノズル吐出口への固着をより高いレベルで防止する観点から、かかる比[(A)/(B)]は、1.3~4が好ましく、1.4~3.5が更に好ましい。なお、燃焼バーナーにより発生した燃焼ガスの流速は、下記式(1)により算出することができる。
燃焼ガスの流速は、通常1~40m/sであり、熱分解炉壁面及びノズル吐出口への固着をより一層防止する観点から、好ましくは3~25m/sであり、更に好ましくは4~13m/sである。
加熱温度は、400~1800℃が好ましく、600~1500℃がより好ましく、700~1400℃が更に好ましく、900~1200℃がより更に好ましい。400℃未満であると、熱分解が不十分となりやすく、1800℃を超えると、粒子が熱分解炉外に排出されたときに十分冷却され難く、粒子同士が凝集しやすくなる。
図1に示す噴霧熱分解装置を用いて無機酸化物粒子を製造した。なお、噴霧熱分解装置は、燃焼バーナーが熱分解炉の底部から略同一距離に対角させて、熱分解炉体内の接線方向に配置され、また燃焼バーナーの火炎がミストと直接接触しないように設置されている。また、熱分解炉は、大きさがφ400mm×2500mmであり、断面積が0.1m2である。
溶液タンク内に、蒸留水240kg、四ホウ酸ナトリウム十水和物2.5kg、硝酸カルシウム1.5kg、硝酸マグネシウム1.5kg、硝酸アルミニウム5.0kg、オルトケイ酸テトラエチル8.5kgをそれぞれ投入・攪拌することで、原料溶液を作製した。次いで、原料溶液を送液ポンプでサークルエッジノズルに送液し、ノズル噴出口から圧縮空気とともに原料溶液のミストを熱分解炉内に噴霧してミスト化(噴霧量:40L/hr)し、ミストを燃焼ガスの旋回流により旋回させながら上昇させ、熱分解炉内(内部温度900℃)を通過させた。その後、バグフィルターにて無機酸化物中空粒子を回収した。そして、炉壁面、及びノズル噴出口における固着物の発生の有無を目視で確認した。その結果を表1に示す。なお、ミストの噴出速度(A)と、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速(B)は、圧縮空気量と燃焼バーナーの焚き量にて調整した。
表1に示す、燃焼ガスの流速(B)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により無機酸化物中空粒子を製造した。そして、炉壁面、及びノズル噴出口における固着物の発生の有無を目視で確認した。その結果を表1に示す。なお、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速(B)は、燃焼バーナーの焚き量にて調整した。
比較例2、3は、燃焼ガスの速度(B)が速すぎて、比[(A)/(B)]が1.0、0.75と低いため、ミストが旋回流に引っ張られノズル噴出口に付着し、固着物が発生したものと考えられる。
これに対し、実施例1~3は、比[(A)/(B)]を特定範囲内となるように制御されているため、ノズル噴出口や炉壁面への固着物の発生が抑制されたものと考えられる。
2 ノズル
3 燃焼バーナー
4 燃焼ガス(旋回流)
5 ミスト(液滴)
10 噴霧熱分解装置
Claims (5)
- 熱分解炉の底部に噴出口側を上方にして配置され、原料無機化合物含有溶液のミストを噴霧するためのロータリアトマイザノズル又はサークルエッジノズルと、
燃焼ガスが旋回流を生じるように熱分解炉の底部に配置され、火炎がミストに直接接触することなく、ミストを燃焼ガスにより熱分解するための燃焼バーナーと
を備える内燃焼式噴霧熱分解装置内に、ノズルからミストを放射状に噴霧し、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速(B)が4~13m/sであり、かつミストの噴出速度(A)と、燃焼バーナーから発生した燃焼ガスの流速(B)との比[(A)/(B)]が1.2~4.5の条件にて、ミストを熱分解する工程を含む、無機酸化物粒子の製造方法。 - 燃焼バーナーを、熱分解炉の底部から略同一距離で、かつ熱分解炉体内の接線方向に対角配置し、燃焼ガスにより熱分解炉内で旋回流を生じさせる、請求項1記載の無機酸化物粒子の製造方法。
- ミストの噴出速度(A)が10~20m/sである、請求項1又は2記載の無機酸化物粒子の製造方法。
- 原料無機化合物がアルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ホウ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
- 溶液が水溶液である、請求項1~4のいずれか1項に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
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