JP7190338B2 - 無機酸化物粒子の製造方法 - Google Patents

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本発明は、無機酸化物粒子の製造方法に関する。
無機酸化物粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア等が一般に知られている。例えば、アルミナは、その粒子自体が研磨材として広く用いられており、これを原料とした焼結体は耐熱性や高い剛性が求められる半導体製造装置用部材等に適用されている(特許文献1)。
無機酸化物粒子の製造方法の一つとして、噴霧熱分解法がある(特許文献2)。噴霧熱分解法は、所定の組成濃度に調製した溶液を加熱炉の加熱部分に噴霧し、瞬時に溶媒の蒸発、析出した無機塩の熱分解、及び固相反応を起こさせて、目的とする無機酸化物粒子を得る方法である。噴霧熱分解法のメリットとして、製造工程が簡便でかつ極めて微細な一次粒子が得られることが挙げられる。しかしながら、この製造方法は、ノズルの先端部に析出物が付着することで固結を生じる場合があった。従来、このような固結防止技術として、ノズルに着目し、その改良が検討されてきた。例えば、気体供給口及び液体供給口を各々2つずつ独立して配置した、付着物防止ノズル(特許文献3)、先端を流線型状とし、その先端の外側に別に気体流出路を配設した、先端部への付着防止ノズル(特許文献4)等が提案されている。
特開平8-40765号公報 特表2016-17027号公報 特表2006-167505号公報 特開平7-171444号公報
しかしながら、特許文献3、4に記載されるようなノズルを用いた場合にも、製造条件や被噴霧液体の物性によってはノズル先端部で固結が発生する場合があった。また、特許文献3、4に記載されるようなノズルは固結防止のための特殊な構造を有するため、固結を防止するうえでノズル交換が避けられない。ノズルの交換には労力と時間を要するため、製造効率が低下するだけでなく、ノズル交換に伴い製造条件を新たに設定する必要があるため、所望の粒子特性を有する無機酸化物粒子を得ることが困難となる場合もあった。
本発明の課題は、ノズル自体に特に手を加えずに、ノズル先端部での固結発生を防止し、安定した操業が可能な無機酸化物粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、噴霧熱分解法の噴霧工程について種々検討した結果、噴霧する原料溶液の液温、ノズルに供給する気体流量、及びノズルから噴出した噴霧液滴の温度を、それぞれ特定範囲内に制御することにより、ノズル自体に特に手を加えずに、ノズル先端部の固結発生を防止し、安定して無機酸化物粒子を製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕貯留槽内に貯留された、酸化物を構成する元素を含む化合物の溶液をノズルに送液し、該ノズルから前記溶液の液滴を噴霧する噴霧工程を含む無機酸化物粒子の製造方法であって、
前記ノズルは、気体を供給する気体供給口と、前記溶液を噴霧する噴出口とを備え、
前記気体供給口に供給する気体流量が、前記ノズルへの送液量に対して1400倍以上であり、
前記貯留槽内の前記溶液の液温が、前記溶液中の溶媒の凝固点よりも高い温度であって、前記溶媒の沸点よりも50℃低い温度であり、
前記噴出口から噴霧直後の液滴温度が、前記溶液中の溶媒の沸点の1/2以下の温度である、
無機酸化物粒子の製造方法。
〔2〕前記溶液が、水溶液である、〔1〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔3〕前記貯留槽内の前記水溶液の液温が1~50℃であり、前記噴出口から噴霧直後の噴霧液滴の温度が50℃以下である、〔2〕記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔4〕前記酸化物を構成する元素を含む化合物が、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
〔5〕前記ノズルが、前記気体供給口に供給された気体と、前記噴出口から噴霧した原料溶液とをノズル外部で混合する外部混合方式である、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の無機酸化物粒子の製造方法。
本発明によれば、ノズル自体に特に手を加えず、ノズル先端部での固結発生を防止できるため、安定して無機酸化物粒子を製造することができる。
本発明の製造方法が適用可能な噴霧熱分解装置の一例を示す模式図である。 図1に示す噴霧熱分解装置の部分拡大図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
本発明の無機酸化物粒子の製造方法は、貯留槽内に貯留された原料溶液をノズルに送液し、該ノズルから原料溶液の液滴を噴霧する噴霧工程を少なくとも含むものである。
図1は、本発明の製造方法が適用可能な噴霧熱分解装置の一例を示す模式図であり、図2は、図1に示す噴霧熱分解装置の部分拡大図である。噴霧熱分解装置20は、図1、2に示されるように、原料溶液1を貯留する貯留槽2と、原料溶液1の液滴3を噴霧するためのノズル4とを備え、ノズル4は、貯留槽2と、該貯留槽2から原料溶液1をノズル4に圧送するための送液ポンプ5とが配管を介して連結されている。そして、原料溶液1を貯留槽2内に貯留し、貯留槽2から原料溶液1を送液ポンプ5でノズル4に送液し、該ノズル4から加熱炉11内に原料溶液1の液滴3を噴霧する。なお、加熱炉11の形状は、加熱炉内に旋回流を発生させることができる点で、堅型円筒状が好ましい。加熱炉の大きさは、製造スケールにより適宜選択することができる。
原料溶液は、酸化物を構成する元素を含む化合物の溶液である。
酸化物を構成する元素を含む化合物としては、酸化物を構成する元素を含有し、水等の溶媒に溶解する化合物であれば特に限定されないが、例えば、無機塩、金属アルコキシド等を挙げることができる。より具体的には、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のケイ酸アルコキシド等を挙げることができる。アルミニウム塩としては、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、燐酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム等の無機塩、アルミニウムセカンダリーブチレート等の有機金属化合物、アルミニウムイソプロピレート等のアルミニウム化合物を分散したものが挙げられる。ケイ酸アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物を溶媒に分散した溶液、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物のゾル溶液も原料溶液として用いることができる。更に、溶融温度、耐熱性、粒子強度を調整するために、他の元素の原料を添加することもできる。中でも、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
これらの原料化合物から得られる無機酸化物としては、例えば、金属酸化物、アルミナ、シリカ、アルミニウム及びケイ素からなる酸化物等が挙げられる。より具体的には、アルミナ、シリカ、アルミニウム及びケイ素からなる酸化物、チタン酸化物、マグネシウム酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物、バリウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物等が挙げられ、これら酸化物を組みあわせた複合酸化物も挙げられる。
酸化物を構成する元素を含む化合物を溶解又は分散する溶媒としては、水及び有機溶媒が挙げられる。中でも、環境への影響、製造コストの点から、水が好ましい。
原料溶液中の酸化物を構成する元素を含む化合物の濃度は、得られる無機酸化物粒子の密度、強度等を考慮し、0.01mol/L~飽和濃度が好ましく、0.1~1.0mol/Lが更に好ましい。
貯留槽内の原料溶液の液温は、原料溶液中の溶媒の凝固点よりも高い温度であって、溶媒の沸点よりも50℃低い温度に調整される。
原料溶液の液温は原料溶液中の溶媒の種類により適宜設定可能であるが、例えば、原料溶液が水溶液である場合、好ましくは1~50℃、より好ましくは1~40℃、更に好ましくは1~35℃である。
なお、原料溶液の液温の調整方法は所望の温度に調整できれば特に限定されないが、例えば、図2に示されるように、貯留槽2に冷却装置6を設置して原料溶液1を冷却し、原料溶液1の液温を温度計7で管理すればよい。冷却装置としては、例えば、チラー等を挙げることができる。
ノズルとしては、気体を供給する気体供給口と、原料溶液を噴霧する噴出口とを有するものであれば特に限定されないが、例えば、2流体ノズル、3流体ノズル、4流体ノズル等を挙げることができる。なお、ノズルの方式には、気体供給口に供給された気体と原料溶液とをノズル内部で混合して噴出口から噴出する内部混合方式と、気体供給口に供給された気体と、噴出口から噴霧した原料溶液とをノズル外部で混合する外部混合方式があり、いずれも採用できるが、ノズル先端部での固結防止、生産効率の観点から、外部混合方式が好ましい。噴霧熱分解装置20は、図2に示されるように、気体供給口からのキャリアエアー9と、噴出口から噴霧した原料溶液とをノズル外部で混合する外部混合方式である。
ノズルに供給する気体としては、例えば、空気や、窒素、アルゴン等の不活性ガス等を使用することができる。中でも、経済性の観点から、空気が好ましい。
ノズルに供給する気体流量は、ノズルへの原料溶液の送液量に対して1400倍以上である。気体流量が送液量に対して1400倍未満であると、ノズル先端部で固結が発生する。なお、原料溶液の送液量に対する気体流量の割合の上限値は、ノズル先端部での固結防止、液滴の溶媒蒸発及び無機塩析出の促進の観点から、3000倍以下が好ましく、2500倍以下が更に好ましい。
ノズルに供給する気体流量は、上記要件を満たせば特に限定されないが、例えば、無機酸化物粒子の製造スケールが1バッチ当たり0.001~0.1m3である場合、ノズル先端部での固結防止の観点から、通常70L/min以上であって、150L/min以下が好ましく、125L/min以下が更に好ましい。なお、原料溶液の送液量は、気体流量の割合が原料溶液の送液量に対して1400倍以上となるように適宜選択することができる。
ノズルに供給する気体の温度は、噴出直後の液滴温度以下が好ましく、常温(20±15℃)以下が更に好ましい。なお、かかる気体の温度の下限値は、温度制御の容易さから、1℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。
噴霧出直後の液滴温度は、原料溶液中の溶媒の沸点の1/2以下の温度であり、原料溶液中の溶媒の種類により適宜設定可能である。例えば、原料溶液が水溶液である場合、好ましくは1~50℃、より好ましくは5~40℃、更に好ましくは10~40℃である。
噴出直後の液滴の温度管理は、例えば、図2に示されるように、ノズルから噴出された液滴に接触するように、ノズル4の先端部に熱電対8を設置すればよい。熱電対の設置位置は、ノズルの先端から5cm以内とすることが好ましい。
また、ノズル内の原料溶液の温度を調整するために、例えば、図2に示されるように、ノズル4の外周に断熱材10を被覆してもよい。断熱材としては、例えば、セラミック繊維、ガラス繊維、キャスタブル等を挙げることができる。
液滴の平均粒子径は、0.5~60μmが好ましく、1~20μmがより好ましく、1~15μmが更に好ましい。なお、液滴の平均粒子径は、ノズル噴霧口の形状や空気の圧力によって調整することが可能である。
噴霧工程後、噴霧液滴から溶媒を除去する乾燥工程を行うことができる。これにより、噴霧液滴から溶媒が蒸発し、液滴粒子表面に無機塩が析出する。
乾燥工程の温度は、噴霧液滴から溶媒が蒸発する温度であればよいが、無機塩が析出する必要性から、室温~800℃の範囲内であって0.1秒から1分程度で当該蒸発及び析出が生じる温度が好ましい。このような温度としては、100~750℃が好ましく、150~600℃がより好ましく、150~400℃が更に好ましい。
乾燥工程後、乾燥された液滴及び粒子を熱分解する熱分解工程を行うことができる。これにより、液滴及び粒子の無機塩が、熱分解及び酸化されて無機酸化物粒子が形成される。
熱分解工程の温度は、熱分解及び酸化反応が進行する温度であればよいが、熱分解反応が終了する必要性から、150~1200℃が好ましい。また0.1秒~1分程度で当該酸化反応が終了する温度が好ましく、より具体的には、400~1000℃が好ましく、500~900℃が更に好ましい。
図1に示される噴霧熱分解装置20は、縦型の噴霧熱分解装置であり、ノズル4が装置の上部に設置されている。そして、加熱炉11内の加熱ゾーンには、加熱装置12が複数基設置されており、加熱ゾーンは、原料溶液の液滴から溶媒を除去する乾燥ゾーンと、乾燥された粒子を熱分解して無機酸化物粒子とする熱分解ゾーンとから構成されている。噴霧熱分解装置20は、ノズル、乾燥ゾーン及び熱分解ゾーンの順に並んでおり、加熱ゾーンの温度は、ノズル4の設置位置から加熱炉11の出口方向に向かって順に高くなるように設定することができる。
加熱装置は、電気抵抗熱による輻射熱やガスバーナーによる火炎を熱源とした直接加熱、また熱風等の直接加熱が挙げられる。具体的には、燃焼バーナー、熱風ヒータ、電気ヒータ等を挙げることができる。中でも、燃焼バーナー、ヒータが好ましい。加熱装置は、1基又は2基以上設置することが可能である。なお、燃焼バーナー、熱風ヒータ及び電気ヒータは、一般的に販売されているものあれば、いずれも使用することができる。
また、本発明においては、無機酸化物粒子として無機酸化物中空粒子も製造することができる。中空粒子を製造する場合、熱分解工程後に、無機酸化物粒子の表面を溶融する溶融工程を行えばよい。溶融工程は、熱分解工程により形成された無機酸化物粒子の表面を溶融する工程であり、無機酸化物粒子の表面を溶融し、表面に存在する孔を閉塞させる工程である。粒子の外殻表面の孔を閉塞させることで、外殻に孔がなく、粒子強度の高い無機酸化物中空粒子を得ることができる。
溶融工程の温度は、無機酸化物粒子の表面が溶融する温度であればよいが、溶融により無機酸化物粒子表面の孔を閉塞させる点から、600℃以上が好ましい。また、0.1秒~1分程度で無機酸化物粒子表面が溶融する点から、700℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、900℃以上が更に好ましく、1200℃以上が殊更に好ましい。なお、経済性の点から、溶融工程の温度は、1500℃以下が好ましい。また、溶融温度が600~1200℃と低い無機酸化物であれば、熱分解ゾーンと溶融ゾーンの加熱温度を同じにしてもよい。
熱分解工程、更に必要により溶融工程を行った無機酸化物粒子を冷却後回収すれば、目的の無機酸化物粒子が得られる。
図1に示される噴霧熱分解装置20は、無機酸化物粒子を回収するために、粉体回収装置13が設置されている。粉体回収装置としては、例えば、サイクロン粉体回収機、バグフィルター等を挙げることができる。酸化物中空粒子の回収にあたっては、フィルターを通過させることにより粒子径の調整をすることもできる。また、粉体回収装置の下流側に、必要に応じて、スクラバー等の除塵、浄化設備を配置してもよい。
このようにして無機酸化物粒子を製造することができるが、本発明の方法により製造された無機酸化物粒子は、以下の特性を具備することができる。
無機酸化物中空粒子の平均粒子径は、通常0.5~50μmであり、好ましくは0.5~20μmであり、更に好ましくは1~10μmである。なお、平均粒子径の調整は、噴霧に使用する流体ノズルの直径及び圧縮空気の圧力の調節によって行うことができる。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、JIS R 1629に準拠して試料の粒度分布を体積基準で作成したときに積算分布曲線の50%に相当する粒子径(d50)を意味する。なお、粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用することができる。
無機酸化物粒子の粒子密度は、通常0.1~2.5g/cm3であり、好ましくは0.2~1.0g/cm3であり、更に好ましくは0.3~0.6g/cm3である。なお、粒子密度は、JIS R 1620に準拠して気体置換法により測定することができる。粒子密度測定装置として、例えば、乾式自動密度計「アキュピック(島津製作所製)」を使用することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、噴霧乾燥装置20は、図1に示されるように、ノズル4が加熱炉11の上部に設置されているが、加熱炉の下部に設置されていても構わない。また、噴霧乾燥装置20は、ノズル2及び加熱炉11が縦型に並んでいるが、縦型に限らず、横型や斜め型であってもよい。
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
図1に示す噴霧熱分解装置を用いて無機酸化物粒子を製造した。先ず、0.4mol/Lの硝酸アルミニウム水溶液を貯留槽に投入し、液温を1℃に調整した。次に、貯留槽から硝酸アルミニウム水溶液を送液ポンプで2流体ノズルに送液してミスト状に噴霧し、乾燥ゾーン及び熱分解ソーン(それぞれ1000℃)で加熱した後、バグフィルターを用いてアルミナ粒子を回収した。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。なお、2流体ノズルの運転条件は、ノズルの気体供給口に供給した空気流量(以下、「キャリアエアー量」という)を70L/min、ノズルへの硝酸アルミニウム水溶液の送液量を0.05L/minとした。また、噴霧直後の液滴温度は、ノズルの先端から5cmに設置した熱電対により測定し、19℃であった。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。なお、ノズル先端部の固結の評価は、噴霧開始から3時間後にノズル先端の状態を先ず目視で確認し明らかに固結が確認された場合には「固結あり」と判断し、また貯留槽内の硝酸アルミニウム水溶液の減少量が8.5L未満である場合も「固結あり」と判断した。
実施例2
キャリアエアー量を120L/minとし、噴霧直後の液滴温度を10℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。
実施例3
貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を15℃とし、噴霧直後の液滴温度を35℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。
実施例4
貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を15℃とし、噴霧直後の液滴温度を29℃としたこと以外は、実施例2と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。
実施例5
貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を30℃とし、噴霧直後の液滴温度を50℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。
実施例6
貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を30℃とし、噴霧直後の液滴温度を41℃としたこと以外は、実施例2と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。アルミナ粒子の平均粒子径は2μmであった。
比較例1
キャリアエアー量を65L/minとし、噴霧直後の液滴温度を38℃としたこと以外は、実施例3と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。
比較例2
キャリアエアー量を100L/minとし、貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を0℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミナ粒子を製造したところ、原料溶液の一部が凝固してノズルへの送液が不能となり、無機酸化物粒子の製造を断念した。
比較例3
キャリアエアー量を100L/minとし、貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を55℃とし、噴霧直後の液滴温度を48℃としたこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。
比較例4
貯留槽の硝酸アルミニウム水溶液の液温を45℃とし、噴霧直後の液滴温度を55℃としたこと以外は、比較例3と同様の操作によりアルミナ粒子を製造した。アルミナ粒子の製造条件及びノズル先端部の固結の評価結果を表1に示す。
Figure 0007190338000001
表1から、次のことがわかる。
比較例1は、ノズルの気体流量が不足しているため、原料溶液の噴霧直後に固形分が析出しやすくなり、析出した固形分がノズル先端部に付着して固結が発生した。
比較例2は、原料溶液の液温が低いため、原料溶液の一部が凝固してノズルへの送液が不能となり、無機酸化物粒子を製造できなかった。
比較例3は、原料溶液の液温が高く、ノズルへ送液する際に原料溶液が濃縮したため、ノズル先端部で原料が析出し固結が発生した。
比較例4は、ノズルから噴霧直後の液滴の温度が高過ぎるため、噴霧直後に固形分が析出しやすく、析出した固形分がノズル先端部に付着して固結が発生した。
これに対し、実施例1~6は、原料溶液の液温、ノズルの気体流量、及びノズルから噴出する噴霧液滴の温度がそれぞれ特定範囲内に制御されているため、ノズル先端部での固結発生が抑制され、安定して無機酸化物粒子を製造できることがわかる。
1 原料溶液(酸化物を構成する元素を含む化合物の溶液)
2 貯留槽
3 液滴(ミスト)
4 ノズル
5 送液ポンプ
6 冷却装置
7 温度計
8 熱電対
9 キャリアエアー
10 断熱材
11 加熱炉
12 加熱装置
13 粉体回収装置
20 噴霧熱分解装置

Claims (3)

  1. 貯留槽内に貯留された、酸化物を構成する元素を含む化合物の溶液をノズルに送液し、該ノズルから前記溶液の液滴を噴霧する噴霧工程を含む無機酸化物粒子の製造方法であって、
    前記ノズルは、気体を供給する気体供給口と、前記溶液を噴霧する噴出口とを備え、
    前記気体供給口に供給する気体流量が、前記ノズルへの送液量に対して1400倍以上であり、
    前記貯留槽内の前記溶液の液温が、1~50℃であり、
    前記噴出口から噴霧直後の液滴温度が、1~50℃である、
    無機酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記酸化物を構成する元素を含む化合物が、アルミニウム塩、チタン塩、マグネシウム塩、アルミノケイ酸塩、アルミニウムアルコキシド及びケイ酸アルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、請求項記載の無機酸化物粒子の製造方法。
  3. 前記ノズルが、前記気体供給口に供給された気体と、前記噴出口から噴出した原料溶液とをノズル外部で混合する外部混合方式である、請求項1又は2記載の無機酸化物粒子の製造方法。
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