JP7340073B2 - 焼成に使用するための脂肪分解酵素 - Google Patents

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Description

配列表の参照
本出願は、コンピュータ読み取り可能な形態の配列表を含んでおり、これは本明細書において参照により援用される。
本発明は、新規の脂肪分解酵素;特に、生地に使用するための改善された特性を備える脂肪分解酵素に関し、これらは、例えば、焼成に通常使用される乳化剤の代わりに用いることができる。
白色のクラム(crum)およびきめ細かいクラム構造は、パン;特にトーストパンなどの工場で包装されたパンの消費者選好にとって重要な特徴である。きめ細かいクラム構造は、通常、パン製造中に生地に乳化剤を添加することによって達成される。
近年、消費者は、乳化剤を含むベーカリー製品の消費を避ける傾向がある。
焼成における脂肪分解酵素の使用は、何年も前から知られている。
国際公開第98/26057号パンフレットは、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)由来のリパーゼ/ホスホリパーゼおよび焼成におけるそれらの使用を開示する。
国際公開第2004/099400号パンフレットは、さまざまな脂肪分解酵素と、生地粘性低下の目的で焼成におけるそれらの使用を開示する。
国際公開第1999/053769号パンフレットは、焼成後の初期に焼成品の柔らかさ向上の目的でのマルトース生成αアミラーゼおよびホスホリパーゼの使用を開示する。
焼成における脂肪分解酵素の使用は、遊離鎖脂肪酸の形成によって、不要なオフフレーバを生成し得る。
本発明は、オフフレーバを誘導することなく、白色のクラムおよびきめ細かいクラム構造を提供することができる新規の脂肪分解酵素に関する。
本発明者らは、驚くことに、白色のクラムおよび非常にきめ細かいクラム構造を提供する新規の脂肪分解酵素を見出し、それと同時に、この脂肪分解酵素は、焼成に使用されるとき、オフフレーバをもたらさない。そこで、本発明者らは、
以下:
(a)配列番号1のアミノ酸21~309に対して、少なくとも65%の配列同一性を有するポリペプチド;
(b)中度の緊縮条件下で、配列番号2のポリペプチドコード配列とハイブリーダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;
(c)配列番号2のポリペプチドコード配列に対して、少なくとも65%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;および
(d)脂肪分解酵素活性を有する(a)、(b)または(c)のポリペプチドの断片
からなる群から選択される、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドを請求する。
一実施形態では、本発明における脂肪分解酵素は、配列番号1のアミノ酸21~309に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
一実施形態では、本発明の脂肪分解酵素は、アミノ酸配列G-H-S-L-Gの触媒セグメントを含む。
一実施形態では、本発明の脂肪分解酵素は、リパーゼ、ホスホリパーゼおよび/またはガラクトリパーゼ活性を有し;特に、脂肪分解酵素は、リパーゼおよびホスホリパーゼ活性を有する。
一実施形態では、本発明者らは、本発明の脂肪分解酵素をコードする単離されたポリヌクレオチドを請求する。
一実施形態では、本発明者らは、発現宿主においてポリペプチドの生産を指令する1つまたは複数の制御配列と作動可能に連結された本発明の脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドを含む核酸構築物または発現ベクターを請求する。
一実施形態では、本発明者らは、ポリペプチドの生産を指令する1つまたは複数の制御配列と作動可能に連結された本発明の脂肪分解酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、ポリペプチドの生産を促す条件下で、宿主細胞を培養するステップを含む、本発明の脂肪分解酵素の生成方法を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、本発明の脂肪分解酵素を含む顆粒または安定化された液体を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、本発明の脂肪分解酵素と、以下:アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、ガラクタナーゼ、グルカン1,4-α-マルトテトラヒドロラーゼ、グルカナーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、マンナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、およびキシラーゼからなる群から選択される1種または複数の酵素を含む組成物;中でも、本発明の脂肪分解酵素と、以下:マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼおよびグルカン1,4-α-マルトテトラヒドロラーゼからなる群から選択される1種または複数の酵素を含む組成物;特に、本発明の脂肪分解酵素と、マルトース生成α-アミラーゼとを含む組成物を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、焼成品を調製する方法であって、焼成の前に、本発明の脂肪分解酵素、本発明の顆粒または安定化液体、または本発明の組成物を生地に添加するステップを含む方法を請求する。
一実施形態では、本発明の脂肪分解酵素の量は、生地またはバッター(batter)中の小麦粉kg当たり0.01~100mg、好ましくは0.05~50mg、より好ましくは0.1~25mg、さらに好ましくは0.1~15mgの酵素タンパク質である。
一実施形態では、本発明者らは、製パンおよび/または製菓子用途における本発明の脂肪分解酵素の使用を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、製パンおよび/または製菓子用途における本発明の脂肪分解酵素を含む顆粒または安定化された液体の使用を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、製パンおよび/または製菓子用途における本発明の脂肪分解酵素と1種または複数の別の酵素とを含む組成物の使用を請求する。
一実施形態では、本発明者らは、パン改良剤および/またはパティスリー・ミックスもしくはプレミックスにおける本発明の脂肪分解酵素の使用を請求する。
定義
脂肪分解酵素:「脂肪分解酵素」という用語は、リパーゼ、ホスホリパーゼおよび/またはガラクトリパーゼ活性を有する酵素(EC3.1.1);特に、リパーゼおよびホスホリパーゼ活性を有する酵素を含む。脂肪分解酵素は、さらに他の活性も有し得る。用語「脂肪分解酵素」は、用語「脂肪分解酵素活性を有するポリペプチド」と置き換え可能に使用される。
本発明によれば、リパーゼ活性は、下記の方法によって測定することができる:
リパーゼ活性は、基質としてトリブチリンを用いて決定することができる。この方法は、酵素によるトリブチリンの加水分解に基づくものであり、加水分解中pHを一定に維持するためのアルカリ消費が時間の関数として記録される。
1リパーゼ単位(LU)は、標準条件(即ち、30℃;pH7.0;乳化剤として0.1%w/vアラビアゴムおよび基質としての0.16Mトリブチリンを用いて)下で、毎分1マイクロモルの滴定可能な酪酸を遊離する酵素の量として定義される。
リパーゼ活性を同定するための有用なプロトコルは、トリブチリンプレートを用いた次のものである:
トリブチリン基質ミックス:
15mlのグリセリントリブチレート(トリブチリン)
2gのアラビアゴム
285mlのH
2プレートの使用の場合には:
・5mlのトリブチリンミックス、50mlの0.02Mユニバーサルバッファー(pH7.0)を添加
・60℃に予熱
・60秒のUltra turaxにより滑らかなエマルジョンを取得
2%アガロース溶液を調製:
・100mlのHOにつき2g
・溶液を沸騰させた後、60℃にする(水浴を使用)
50mlのトリブチリン/50mlの2%アガロース含有バッファー溶液を混合し、250マイクロリットルの4%クリスタルバイオレットを添加する。プレートOmniTray Single Wellカタログ番号242811およびNunc TSPカタログ番号445497の各々に50mlずつ注ぐ。10マイクロリットルのサンプルを適用することができる。プレートを約1時間および3時間30℃でインキュベートすることができる。活性を写真撮影してもよい。
リパーゼ活性:トリアシルグリセロールリパーゼ活性(EC3.1.1.3)、即ち、トリグリセリド、例えば、トリブチリンにおけるカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性。
ホスホリパーゼ活性:ホスホリパーゼ活性(A1またはA2、EC3.1.1.32または3.1.1.4)、即ち、レシチンなどのリン脂質における一方または両方の炭酸エステル結合に対する加水分解活性。
ガラクトリパーゼ活性:ガラクトリパーゼ活性(EC3.1.1.26)、即ち、DGDG(ジガラクトシルジグリセリド)などのガラクト脂質におけるカルボン酸エステル結合に対する加水分解活性。
コード配列:「コード配列」という用語は、ポリペプチドのアミノ酸配列を直接規定するポリヌクレオチドを意味する。コード配列の境界は、一般に、オープンリーディングフレームによって決定されるが、これは、ATG、GTG、またはTTGなどの開始コドンで開始し、TAA、TAG、またはTGAなどの終止コドンで終了する。コード配列は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、またはこれらの組合せのいずれであってもよい。
断片:「断片」という用語は、成熟型ポリペプチドまたはドメインのアミノおよび/またはカルボキシル末端から欠失された1つまたは複数(数個)のアミノ酸を有するポリペプチドを意味し;ここで、断片は脂肪分解酵素活性を有する。
宿主細胞:「宿主細胞」という用語は、本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物または発現ベクターによる形質転換、形質移入、形質導入などに対する感受性を有するあらゆる細胞型を意味する。
単離された:「単離された」という用語は、自然界においては生じない形態または環境にある物質を意味する。単離された物質の非限定的な例としては、(1)いずれかの非天然物質、(2)限定するものではないが、自然界において関連している天然構成成分の1種または複数種もしくは全てから少なくとも部分的に取り出されたいずれかの酵素、核酸、タンパク質、ペプチドもしくは補因子を含むいずれかの物質;(3)自然界において見出される物質に対して人為的に修飾されたいずれかの物質;または、(4)自然界で関連する他の成分に対して物質量の増加により修飾されたいずれかの物質(例えば、物質をコードする遺伝子の複数のコピー;物質をコードする遺伝子と自然界で関連するプロモータより強力なプロモータの使用)が挙げられる。単離された物質は、発酵ブロスサンプル中に存在してもよい。
成熟型ポリペプチド:「成熟型ポリペプチド」という用語は、N末端プロセシング、C末端切断、グリコシル化、リン酸化などの翻訳およびいずれかの翻訳後修飾後における、その最終形態にあるポリペプチドを意味する。
成熟型ポリペプチドコード配列:「成熟型ポリペプチドコード配列」という用語は、脂肪分解酵素活性を有する成熟型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
中度の緊縮条件:「中度の緊縮条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブに関して、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法に続く、42℃、5×SSPE、0.3%SDS、200マイクログラム/ml断片処理および修飾済みのサケ精子DNA、ならびに、35%ホルムアミドでのプレハイブリーダイゼーションおよびハイブリーダイゼーションを意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2%SDSを用いて、55℃で15分間ずつ3回洗浄される。
中度-高度の緊縮条件:「中-高度の緊縮条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブに関して、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法に続く、42℃、5×SSPE、0.3%SDS、200マイクログラム/ml断片処理および修飾済みのサケ精子DNA、ならびに、35%ホルムアミドでのプレハイブリーダイゼーションおよびハイブリーダイゼーションを意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2%SDSを用いて、60℃で15分間ずつ3回洗浄される。
高度の緊縮条件:「極めて高度の緊縮条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブに関して、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法に続く、42℃、5×SSPE、0.3%SDS、200マイクログラム/ml断片処理および修飾済みのサケ精子DNA、ならびに、50%ホルムアミドでのプレハイブリーダイゼーションおよびハイブリーダイゼーションを意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2%SDSを用いて、65℃で15分間ずつ3回洗浄される。
極めて高度の緊縮条件:「極めて高度の緊縮条件」という用語は、長さが少なくとも100ヌクレオチドのプローブに関して、12~24時間の標準的なサザンブロッティング法に続く、42℃、5×SSPE、0.3%SDS、200マイクログラム/ml断片処理および修飾済みのサケ精子DNA、ならびに、50%ホルムアミドでのプレハイブリーダイゼーションおよびハイブリーダイゼーションを意味する。キャリア材料は、最終的に、2×SSC、0.2%SDSを用いて、70℃で15分間ずつ3回洗浄される。
配列同一性:2つのアミノ酸配列間の関連性は、「配列同一性」というパラメータによって表される。本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティおよびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のように算出される:
(同等の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
本発明の脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドは、1つまたは複数(例えば、数個)の位置に改変、即ち、置換、挿入、および/または欠失を含んでもよい。置換とは、ある位置を占めるアミノ酸の異なるアミノ酸による置換を意味し;欠失とは、ある位置を占めるアミノ酸の除去を意味し;また、挿入とは、ある位置を占めるアミノ酸に隣接して、この直後に続くアミノ酸を付加することを意味する。
本発明の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(前述のEMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(前述のNeedleman and Wunsch,1970)を用いて判定される。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティおよびEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。Needle標識された「最長の同一性」(-nobriefオプションを用いて得られる)の出力が同一性割合として用いられ、以下のように算出される:
(同等のデオキシリボヌクレオチド×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの総数)
改善された特性:有効量で生地に配合されると、本発明の脂肪分解酵素は、生地またはそれから得られる焼成品の1つもしくは複数の特性を改善することができる。
「改善された特性」という用語は、本明細書において、本発明の脂肪分解酵素が配合されていない生地、またはその生地から得られる製品と比較して、本発明の脂肪分解酵素の作用により改善された、生地および/またはその生地から得られる製品、特に焼成品の任意の特性と定義される。
改善された特性として、限定はされないが、焼成品のクラムの改善された白色度、焼成品の改善されたクラム構造、焼成品の改善されたクラム柔らかさ、焼成品の改善された風味、および/または焼成品の改善された抗劣化特性が挙げられる。
改善された特性は、本発明の脂肪分解酵素を添加して、または添加せずに調製された生地および/または焼成品の比較により決定することができる。
官能特性は、焼成産業において十分に確立された方法を用いて評価することができ、例えば、官能評価パネルの使用が挙げられる。
焼成品の改善されたクラム構造:「焼成品の改善されたクラム構造」という用語は、本明細書において、よりきめ細かいクラムを有する焼成品と定義される。改善されたクラムきめの細かさは、クラム中のより小さい細胞および/もしくはより薄い細胞壁ならびに/またはクラム中の細胞のより均一/均質な分布に関連し、通常、パン職人/官能評価パネルにより、または当技術分野では公知のデジタル画像解析(例えば、C-cell,Calibre Control International Ltd,Warrington,UK、本発明の実施例2~3に示すとおり)によって視覚的に評価される。
クラムの改善された白色度:よりきめ細かいクラム構造は、クラムをより白く見せる様式で光を反射するため、クラムのきめ細かさは、往々にしてパンクラムの白色度を測定することにより評価される。クラムの白色度は、例えば、カラースキャナーで測定されるHunterLab L-値を用いることによって、当技術分野で公知のように測定することができる。
焼成品の改善されたクラム柔らかさ:「焼成品の改善されたクラム柔らかさ」という用語は、「硬さ」の反対語であり、本明細書では、容易に圧縮される焼成品の特性として定義され、熟練した試験パン職人/官能評価パネルによって経験的に評価されるか、または当技術分野で公知のように、テクスチャーアナライザー(例えば、Stable Micro Systems Ltd,Surrey,UK製のTAXT2またはTA-XT Plus)の使用により測定される。
焼成品の改善された風味:「焼成品の改善された風味」という用語は、訓練を受けた試験パネルおよび/または化学分析(例えば、ヘッドスペースGC-MS分析)により評価する。焼成品の改善された風味は、焼成品のオフフレーバの低減を含む。
焼成品の改善された抗劣化:「焼成品の改善された抗劣化」という用語は、本明細書では、品質パラメータ、例えば、貯蔵中の柔らかさおよび/または弾力性の劣化速度が低下した焼成品の特性として定義される。
焼成品の体積:「焼成品の体積」という用語は、所与のパン1個の体積として測定される。この体積は、菜種置換法により決定することができる。
オフフレーバ:焼成品がオフフレーバを有するか否かという表現は、当技術分野で公知のように、訓練を受けた試験パネルおよび/または化学分析によって評価する。
本発明の脂肪分解酵素
本発明での使用に好適な脂肪分解酵素は、以下:
(a)配列番号1のアミノ酸21~309に対して、少なくとも65%の配列同一性を有するポリペプチド;
(b)中度の緊縮条件下で、配列番号2のポリペプチドコード配列とハイブリーダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;
(c)配列番号2のポリペプチドコード配列に対して、少なくとも65%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド;および
(d)脂肪分解酵素活性を有する(a)、(b)または(c)のポリペプチドの断片
からなる群から選択される、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドを含む。
本発明の目的のために、配列番号1に開示される成熟型ポリペプチドを用いて、別の脂肪分解酵素中の対応するアミノ酸残基を決定する。
別の脂肪分解酵素のアミノ酸配列を配列番号1に開示される成熟型ポリペプチドとアラインメントし、アラインメントに基づいて、配列番号1に開示される成熟型ポリペプチド中の任意のアミノ酸残基に対応するアミノ酸位置番号を、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を用いて決定する。用いられるパラメータは、10のギャップオープンペナルティ、0.5のギャップエクステンションペナルティ、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。
一実施形態では、本発明の脂肪分解酵素は、配列番号1のアミノ酸21~309に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
一実施形態では、本発明の脂肪分解酵素は、アミノ酸配列G-H-S-L-Gの触媒三残基を含む。
本発明の脂肪分解酵素は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸21~309を含むか、もしくはそれから構成され;またはその対立遺伝子変異体であり;または脂肪分解酵素活性を有するその断片である。
別の実施形態では、本発明は、極めて低度の緊縮条件下、低度の緊縮条件下、中度の緊縮条件下、中-高度の緊縮条件下、高度の緊縮条件下、極めて高度の緊縮条件下で、配列番号2の成熟型ポリペプチドコード配列とハイブリーダイズするポリヌクレオチドによりコードされる脂肪分解酵素活性を有する、単離されたポリペプチドに関する(Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d edition,Cold Spring Harbor,New York)。
配列番号2のポリヌクレオチドまたはそのサブ配列、ならびに、配列番号1のポリペプチドまたはその断片は、技術分野において周知である方法に従って、異なる属もしくは種の系統から脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAを同定およびクローン化するために核酸プローブの設計に用いられ得る。特に、このようなプローブは、標準的なサザンブロッティング法の後に、含まれる対応する遺伝子を同定および単離するために、対象の細胞のゲノムDNAもしくはcDNAとのハイブリーダイゼーションに用いられることが可能である。このようなプローブは配列全体よりもかなり短いことが可能であるが、例えば、長さが少なくとも25、少なくとも35または少なくとも70ヌクレオチドと少なくとも15ヌクレオチドであるべきである。好ましくは、核酸プローブは、例えば、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチドまたは少なくとも900ヌクレオチドの長さといった、少なくとも100ヌクレオチドの長さである。DNAおよびRNAプローブの両方が用いられることが可能である。プローブは、典型的には、対応する遺伝子を検出するために標識化される(例えば、32P、H、35S、ビオチンまたはアビジンで)。このようなプローブは本発明によって包含される。
このような他の系統から調製したゲノムDNAもしくはcDNAライブラリは、上記のプローブとハイブリーダイズし、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAについてスクリーニングされ得る。このような他の系統由来のゲノムまたは他のDNAは、アガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動、または、他の分離技術によって分離され得る。これらのライブラリからのDNAまたは分離されたDNAが、ニトロセルロースもしくは他の好適なキャリア材料に移され固定化され得る。配列番号1もしくはそのサブ配列とハイブリーダイズするクローンもしくはDNAを同定するために、キャリア材料がサザンブロッティングに用いられ得る。
本発明の目的に関して、ハイブリーダイゼーションとは、極めて低度~極めて高度の緊縮条件下で、(i)配列番号2;(ii)配列番号2の成熟型ポリペプチドコード配列;(iii)その完全長相補体;または(iv)そのサブ配列に対応する標識核酸プローブに、ポリヌクレオチドがハイブリーダイズすることを意味する。核酸プローブがこれらの条件下でハイブリーダイズする分子は、例えば、X線フィルムまたは当分野では公知の他のいずれかの検出手段によって検出することができる。
別の実施形態では、本発明は、配列番号2の成熟型ポリペプチドコード配列に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる脂肪分解酵素活性を有する、単離されたポリペプチドに関する。
別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数(例えば、数個)の位置に置換、欠失および/または挿入を含む、配列番号1の成熟型ポリペプチドの変異体に関する。一実施形態では、配列番号1の成熟型ポリペプチドに導入されるアミノ酸置換、欠失および/または挿入の数は、20以下、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19である。アミノ酸変異は、副次的な性質のものであってもよく、すなわち、タンパク質の折り畳みおよび/もしくは活性に顕著に影響しない保存的アミノ酸置換もしくは挿入;典型的には1~30アミノ酸の小さな欠失;アミノ-端子メチオニン残基などの小さなアミノ-もしくはカルボキシル-末端伸長;20~25個以下の残基の小さなリンカーペプチド;または、ポリヒスチジン配列、抗原性エピトープもしくは結合性ドメインなどの変異もしくは他の機能を変化させることによって精製を促進させる小さな伸長であってもよい。
保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシンおよびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミンおよびアスパラギン)、疎水性アミノ酸(ロイシン、イソロイシンおよびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシン)、および、小さいアミノ酸(グリシン、アラニン、セリン、スレオニンおよびメチオニン)の群の範囲内である。特異活性を一般に改変しないアミノ酸置換は技術分野において公知であり、例えば、H.Neurath and R.L.Hill,1979,In,The Proteins,Academic Press,New Yorkに記載されている。頻繁に生じる置換は、Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/GluおよびAsp/Glyである。
あるいは、アミノ酸変異は、ポリペプチドの物理化学的特性が改変されるような性質のものである。例えば、アミノ酸変異は、ポリペプチドの熱安定性を向上させ、基質特異性を改変し、至適pHを変化させることであり得る。
ポリペプチドにおける必須アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニン走査突然変異誘発(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081-1085)などの技術分野において公知である手法に従って同定することが可能である。後者の技術においては、単一のアラニン突然変異が分子中のすべての残基に導入され、得られたミュータント分子が、分子の活性に重要であるアミノ酸残基を同定するために脂肪分解酵素活性についてテストされる。また、Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699-4708を参照のこと。
酵素または他の生物学的相互作用の活性部位は、推定上の接触部位アミノ酸の突然変異が併用される、核磁気共嗚、結晶構造解析、電子回折、または光親和性標識などの技術によって判定される、構造の物理的分析によって判定されることも可能である。例えば、de Vos et al.,1992,Science 255:306-312;Smith et al.,1992,J.Mol.Biol.224:899-904;Wlodaver et al.,1992,FEBS Lett.309:59-64を参照のこと。必須アミノ酸のアイデンティティーは、関連ポリペプチドとのアラインメントから推測することもできる。
単一もしくは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または挿入は、Reidhaar-Olson and Sauer,1988,Science 241:53-57;Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-2156;国際公開第95/17413号パンフレット;または、国際公開第95/22625号パンフレットにより開示されているものなどの公知の突然変異誘発方法、組換え法、および/または、シャッフリング法、これに続く関連するスクリーニング法を用いて行い、テストすることが可能である。用いられることが可能である他の方法としては、エラープローンPCR、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochemistry 30:10832-10837;米国特許第5,223,409号明細書;国際公開第92/06204号パンフレット)、および、領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46:145;Ner et al.,1988,DNA 7:127)が挙げられる。
突然変異誘発/シャッフリング法は、宿主細胞によって発現されたクローン化突然変異誘発ポリペプチドの活性を検出するために、高スループット自動スクリーニング法と組み合わせることが可能である(Ness et al.,1999,Nature Biotechnology 17:893-896)。活性ポリペプチドをコードする突然変異誘発DNA分子は、宿主細胞から回収可能であり、技術分野における標準的な方法を用いて直ぐに配列決定されることが可能である。これらの方法では、ポリペプチドにおける個別のアミノ酸残基の重要性を直ぐに判定することが可能である。
ポリペプチドは、一のポリペプチドの一領域が、他のポリペプチドの一領域のN-末端またはC-末端で融合したハイブリッドポリペプチドであり得る。
ポリペプチドは、他のポリペプチドが本発明のポリペプチドのN-末端またはC-末端で融合した融合ポリペプチドまたは切断可能な融合ポリペプチドであり得る。融合ポリペプチドは、他のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを本発明のポリヌクレオチドに融合させることにより生成される。融合ポリペプチドを生成する技術は、技術分野において公知であると共に、フレーム中に収まり、融合ポリペプチドの発現が同一のプロモータおよびターミネータによる制御下にあるよう、ポリペプチドをコードするコード配列を連結するステップを含む。融合ポリペプチドはまた、翻訳後に融合ポリペプチドが形成されるインテインテクノロジーを用いて構築されてもよい(Cooper et al.,1993,EMBO J.12:2575-2583;Dawson et al.,1994,Science 266:776-779)。
融合ポリペプチドは、2つのポリペプチドの間に切断部位をさらに含んでいることが可能である。融合タンパク質が分泌される際に、この部位が切断されて2つのポリペプチドが遊離される。切断部位の例としては、これらに限定されないが、Martin et al.,2003,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.3:568-576;Svetina et al.,2000,J.Biotechnol.76:245-251;Rasmussen-Wilson et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:3488-3493;Ward et al.,1995,Biotechnology 13:498-503;および、Contreras et al.,1991,Biotechnology 9:378-381;Eaton et al.,1986,Biochemistry 25:505-512;Collins-Racie et al.,1995,Biotechnology 13:982-987;Carter et al.,1989,Proteins:Structure,Function,and Genetics 6:240-248;および、Stevens,2003,Drug Discovery World 4:35-48に開示されている部位が挙げられる。
脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドのソース
本発明の脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドは、いずれかの属の微生物から得られ得る。本発明の目的のために、「~から得られる」という用語は、本明細書において用いられるところ、所与のソースに関連して、ポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドがソースによって、または、ソースからのポリヌクレオチドが挿入された系統によって生成されることを意味することとする。一態様において、所与のソースから入手されるポリペプチドは細胞外に分泌される。
一態様において、ポリペプチドは、例えば、限定はされないが、バルサリア・ルブリコサ(Valsaria rubricosa)などのバルサリア属(Valsaria)から得られる。
これらの種の系統は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、オランダ微生物株保存センター(CBS:Centraalbureau Voor Schimmelcultures)、および、農業研究局特許培養物コレクション(Agricultural Research Service Patent Culture Collection、北方リサーチセンター(NRRL:Northern Regional Research Center)などの多数の微生物保存機関において公共に容易に利用可能である。
ポリペプチドは、前述のプローブを用いて天然(例えば、汚染物、コンポスト、水など)から単離された微生物、または天然物質(例えば、汚染物、コンポスト、水など)から直接得られるDNAサンプルを含む他のソースから同定し、取得することもできる。微生物およびDNAを自然環境から直接単離する技術は、当分野において周知である。次いで、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、他の微生物または混合DNAサンプルのゲノムDNAもしくはcDNAライブラリを同じようにスクリーニングすることにより得られ得る。一旦、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがプローブで検出されたら、ポリヌクレオチドは、当業者に既知である技術を利用することにより単離またはクローン化されることが可能である。
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本明細書に記載されるとおり、本発明の、ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドにも関する。
ポリヌクレオチドを単離またはクローニングするために用いられる技術は、当技術分野では公知であり、ゲノムDNAもしくはcDNA、またはこれらの組合せからの単離を含む。ゲノムDNAからのポリヌクレオチドのクローニングは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または発現ライブラリの抗体スクリーニングを用いて、共通の構造特徴を有するクローン化DNA断片を検出することにより、実施することができる。例えば、Innis et al.,1990,PCR:A Guide to Methods and Application,Academic Press,New Yorkを参照されたい。リガーゼ連鎖反応(LCR)、連結活性化転写(LAT)およびポリヌクレオチドに基づく増幅(NASBA)などの他の核酸増幅方法を使用してもよい。ポリヌクレオチドは、バルサリア属(Valsaria)、例えば、バルサリア・ルブリコサ属(Valsaria rubricosa)、または関連生物からクローニングすることができる。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの修飾は、ポリペプチドに実質的に類似するポリペプチドを合成するのに必要であり得る。ポリペプチドに「実質的に同様」という用語は、ポリペプチドの非天然形態を指す。これらのポリペプチドは、天然のソースから単離されたポリペプチドとはいくらかの操作法で異なっていてもよく、例えば、特異活性、耐熱性、至適pHなどが異なる変異体である。変異体は、配列番号2の成熟型ポリペプチドコード配列(例えば、そのサブ配列)として表されるポリヌクレオチドに基づいて構築され得、および/または、ポリペプチドのアミノ酸配列に変化をもたらさないが、酵素の生成のために意図される宿主生体のコドン利用に対応するヌクレオチド置換の導入により、または、異なるアミノ酸配列をもたらし得るヌクレオチド置換の導入により構築され得る。ヌクレオチド置換の概要については、例えば、Ford et al.,1991,Protein Expression and Purification 2:95-107を参照のこと。
核酸構築物
本発明はまた、制御配列に適合する条件下で好適な宿主細胞中にコード配列を発現させる1つまたは複数の制御配列に作動可能にリンクした本発明のポリヌクレオチドを含む核酸構築物に関する。
ポリヌクレオチドは、多様な方法で処置されてポリペプチドの発現がもたらされ得る。ベクターへ挿入される前のポリヌクレオチドの処置が、発現ベクターに応じて、望ましいか、または、必要であり得る。組換えDNA法を利用するポリヌクレオチドを修飾するための技術は技術分野において周知である。
制御配列は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のための宿主細胞によって認識されるポリヌクレオチドであるプロモータであり得る。プロモータは、ポリペプチドの発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモータは、ミュータント、切断およびハイブリッドプロモータを含む宿主細胞において転写活性を示すいずれかのポリヌクレオチドであり得、ならびに、宿主細胞に対して相同性または非相同性である細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られ得る。
発現ベクター
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド、プロモータ、ならびに、転写および翻訳終止シグナルを含む組換え発現ベクターに関する。種々のヌクレオチドおよび制御配列が一緒になって、このような部位でポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの挿入または置換を可能とするために1つまたは複数の好都合な制限部位を含み得る組換え発現ベクターが生成される。または、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む核酸構築物を発現に適切なベクターに挿入することにより発現され得る。発現ベクターの形成において、コード配列は、コード配列が、発現に適切な制御配列と作動可能にリンクするようベクター中に位置されている。
組換え発現ベクターは、組換えDNA法に簡便に供されることが可能であり、ポリヌクレオチドの発現をもたらすことが可能であるいずれかのベクター(例えば、プラスミドまたはウイルス)であり得る。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される宿主細胞に対するベクターの親和性に応じることとなる。ベクターは、直鎖または閉鎖された環状プラスミドであり得る。
ベクターは、例えばプラスミド、染色体外要素、微小染色体または人工染色体といった、自己複製ベクター(すなわち、染色体外のエンティティとして存在し、その複製が染色体複製とは無関係なベクター)であり得る。ベクターは、自己複製を確実とするための何らかの手段を含有し得る。または、ベクターは、宿主細胞に導入された際に、ゲノム中に統合され、および、中に統合された染色体と一緒に複製されるものであり得る。しかも、単一のベクターもしくはプラスミド、または、一緒になって、宿主細胞のゲノムに導入される全DNAを含有する2つ以上のベクターもしくはプラスミド、または、トランスポゾンが用いられてもよい。
ベクターは、形質転換、形質移入、形質導入などされた細胞の選択を容易とする1つまたは複数の選択マーカを含有することが好ましい。選択マーカは、その生成物が、殺生剤またはウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求体に対する原栄養性などをもたらす遺伝子である。
宿主細胞
本発明はまた、本発明のポリペプチドの生成をもたらす1つまたは複数の制御配列に作動可能にリンクした本発明のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞に関する。ポリヌクレオチドを含む構築物もしくはベクターは、構築物もしくはベクターが染色体性組み込み体として、もしくは、既述の自己複製余剰-染色体性ベクターとして維持されるよう宿主細胞に導入される。「宿主細胞」という用語は、複製の最中に生じる突然変異により親細胞と同等ではない親細胞のいずれかの子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ポリペプチドをコードする遺伝子およびそのソースに大きく依存することとなる。
宿主細胞は、例えば、原核生物または真核生物といった、本発明のポリペプチドの組換え生成において有用ないずれかの細胞であり得る。
原核宿主細胞は、グラム陽性またはグラム陰性バクテリアのいずれかであり得る。グラム陽性バクテリアとしては、これらに限定されないが、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられる。グラム陰性バクテリアとしては、これらに限定されないが、カムピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ネイッセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)およびウレアプラズマ属(Ureaplasma)が挙げられる。
細菌宿主細胞は、特にこれらに限定されないが、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バシラス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、古草菌(Bacillus subtilis)、およびバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞を含むいずれかのバチルス属(Bacillus)細胞であり得る。
細菌宿主細胞はまた、特にこれらに限定されないが、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、およびストレプトコッカス・ズーエピデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)細胞のいずれかのストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞を含むいずれかのストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞であり得る。
細菌宿主細胞はまた、特にこれらに限定されないが、ストレプトマイセス・アウロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、およびストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞を含むいずれかのストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞であり得る。
宿主細胞はまた、哺乳類、昆虫、植物または真菌細胞などの真核生物であり得る。
宿主細胞は真菌細胞であってもよい。本明細書において用いられる「真菌」は、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)および接合菌門(Zygomycota)、ならびに、卵菌門(Oomycota)およびすべての栄養胞子形成真菌を含む(Hawksworth et al.,In,Ainsworth and Bisby’s Dictionary of The Fungi,8th edition,1995,CAB International,University Press,Cambridge,UKに定義されているとおり)。
真菌宿主細胞はイースト菌細胞であり得る。本明細書において用いられるところ、「イースト菌」は、子嚢菌酵母(エンドミセス目(Endomycetales))、担子菌イースト菌を含み、イースト菌は、不完全菌類(不完全酵母菌類(Blastomycetes))に属する。イースト菌の分類は将来において変更される可能性があるため、本発明の目的について、イースト菌は、Biology and Activities of Yeast(Skinner,,PassmoreおよびDavenport編,Soc.App.Bacteriol.Symposium Series No.9,1980)に記載されているとおりに定義されるものとする。
イースト菌宿主細胞は、クルイベロマイセスラクティス(Kluyveromyces lactis)、サッカロマイセスカルスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ジアスタチクス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、サッカロマイセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)またはヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)細胞などのカンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピチア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)またはヤロウイア属(Yarrowia)細胞であり得る。
真菌宿主細胞は糸状真菌細胞であり得る。「糸状菌」は、真菌植物門(Eumycota)および卵菌門(Oomycota)亜門(前述のHawksworth et al.,1995で定義されているとおり)のすべてのフィラメント形を含む。糸状菌は、一般に、キチン、セルロース、グルカン、キトサン、マンナンおよび他の複雑な多糖類から組成される菌糸体壁によって特徴付けられる。栄養成長は菌糸の伸展によるものであり、および、炭素異化は絶対好気性である。対照的に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのイースト菌による栄養成長は単細胞葉状体の出芽によるものであり、および、炭素異化は発酵性であり得る。
糸状真菌宿主細胞は、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、ブエルカンデラ属(Bjerkandera)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、コプリヌス属(Coprinus)、コリオルス属(Coriolus)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、フィリバシジウム属(Filibasidium)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスチクス属(Neocallimastix)、ニューロスポラ属(Neurospora)、パエシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロケーテ属(Phanerochaete)、フレビア属(Phlebia)、ピロマイセス属(Piromyces)、プレウロツス属(Pleurotus)、シゾフィルム属(Schizophyllum)、タラロマイセス属(Talaromyces)、テルモアスクス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、トラメテス属(Trametes)またはトリコデルマ属(Trichoderma)細胞であり得る。
例えば、糸状真菌宿主細胞は、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニズランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、ヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)、セリポリオプシス・アネイリナ(Ceriporiopsis aneirina)、セリポリオプシス・カレギエア(Ceriporiopsis caregiea)、セリポリオプシス・ギルベスセンス(Ceriporiopsis gilvescens)、セリポリオプシス・パンノシンタ(Ceriporiopsis pannocinta)、セリポリオプシス・リブロサ(Ceriporiopsis rivulosa)、セリポリオプシス・スブルファ(Ceriporiopsis subrufa)、セリポリオプシス・スブベルミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィルム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ルクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンスランジクム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピクム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナツム(Chrysosporium zonatum)、コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus)、クリオルス・ヒルスツス(Coriolus hirsutus)、フザリウム・バクテリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クロークウェレンス(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモルム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウムグラミヌム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクランツム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サムブシヌム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウムス・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲヌム(Penicillium purpurogenum)、ファネロケーテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、フレビア・ラジアタ(Phlebia radiata)、プレウロツス・エリンギイ(Pleurotus eryngii)、チエラビア・テルレストリス(Thielavia terrestris)、トラメテス・ビロサ(Trametes villosa)、トラメテス・ベルシコロル(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞;特に、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)細胞であり得る。
真菌細胞は、それ自体公知の様式でのプロトプラスト形成、プロトプラストの形質転換、および、細胞壁の再生を含むプロセスにより形質転換され得る。アスペルギルス属(Aspergillus)およびトリコデルマ属(Trichoderma)宿主細胞の形質転換に好適な手法は、欧州特許第238023号明細書、Yelton et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1470-1474、ならびにChristensen et al.,1988,Bio/Technology 6:1419-1422に記載されている。フザリウム属(Fusarium)種の形質転換に好適な方法は、Malardier et al.,1989,Gene 78:147-156および国際公開第96/00787号パンフレットに記載されている。イースト菌は、Becker and Guarente,In Abelson,J.N.and Simon,M.I.,editors,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology,Methods in Enzymology,Volume 194,pp 182-187,Academic Press,Inc.,New York;Ito et al.,1983,J.Bacteriol.153:163;および、Hinnen et al.,1978,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1920に記載の手法を用いて形質転換され得る。
生成方法
本発明はまた:(a)ポリペプチドの生成を実施可能な条件下で、野生型形態でポリペプチドを生成する細胞を培養するステップ;および任意選択的に、(b)ポリペプチドを回収するステップを含む本発明のポリペプチドを生成する方法に関する。
本発明はまた:(a)ポリペプチドの生成を実施可能な条件下で本発明の組換え宿主細胞を培養するステップ;および任意選択的に、(b)ポリペプチドを回収するステップを含む本発明のポリペプチドを生成する方法に関する。
宿主細胞は、技術分野において既知である方法を用いてポリペプチドの生成に好適な栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、好適な培地中ならびにポリペプチドの発現および/または単離が許容される条件下の、振盪フラスコ培養により、および、実験用もしくは産業用発酵槽における小規模もしくは大規模発酵(連続式、バッチ式、フェドバッチ式または固体状発酵を含む)により培養され得る。培養は、炭素および窒素源および無機塩を含む好適な栄養培地において、技術分野において公知である手法を用いて行われる。好適な媒体は、商業的な供給者から入手可能であるか、または、公開された組成に従って調製され得る(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)。ポリペプチドが栄養培地に分泌される場合、ポリペプチドは培地から直接回収可能である。ポリペプチドが分泌されない場合、細胞ライセートから回収可能である。
ポリペプチドは、脂肪分解酵素に特異的な技術分野において公知である方法を用いて検出され得る。これらの検出方法として、限定するものではないが、特定の抗体の使用、酵素産物の形成、または、酵素基質の消失などが挙げられる。例えば、酵素アッセイを用いてポリペプチドの活性を判定してもよい。
ポリペプチドは技術分野において公知である方法を用いて回収され得る。例えば、ポリペプチドは、限定されないが、収集、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、または沈殿を含む従来の手法により栄養培地から回収され得る。一態様において、ポリペプチドを含む発酵ブロスを回収する。
ポリペプチドは、実質的に純粋なポリペプチドを得るために、特にこれらに限定されないが、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシングおよびサイズ排除)、電気泳動的手法(例えば、分取等電点電気泳動)、較差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、または、抽出(例えば、Protein Purification,JansonおよびRyden編,VCH Publishers,New York,1989を参照のこと)を含む技術分野において公知である多様な手法によって精製され得る。
代替的な態様においては、ポリペプチドは回収されず、ポリペプチドを発現する本発明の宿主細胞がポリペプチドのソースとして用いられ得る。
植物
本発明はまた、ポリペプチドまたはドメインを回収可能な量で発現および産生することができるように本発明のポリヌクレオチドを含む、単離された植物、例えば、トランスジェニック植物、植物部分、または植物細胞にも関する。ポリペプチドまたはドメインは、植物または植物部分から回収してもよい。あるいは、食品もしくは飼料の品質の改善、例えば、栄養価、嗜好性、および流動性の改善、または非栄養因子の破壊を目的として、ポリペプチドまたはドメインを含む植物または植物部分をそのまま用いてもよい。
トラスジェニック植物は、双子葉植物(dicot)または単子葉植物(monocot)であってよい。単子葉植物の例として、牧草(ナガハグサ、イチゴツナギ(Poa))、ウシノケグサ(Festuca)、ライグラス(Lolium)などの飼料草、ヌカボ(Agrostis)などの寒地型牧草などの草、ならびに穀類、例えば、コムギ、オーツムギ、ライムギ、オオムギ、イネ、モロコシおよびトウモロコシ(コーン)が挙げられる。
本発明はまた、(a)ポリペプチドまたはドメインの生成が実施可能な条件下でポリペプチドまたはドメインをコードするポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物または植物細胞を培養するステップ;および(b)ポリペプチドまたはドメインを回収するステップを含む、本発明のポリペプチドまたはドメインを生成する方法にも関する。
発酵ブロス製剤または細胞組成物
本発明はまた、本発明のポリペプチドを含む発酵ブロス製剤または細胞組成物にも関する。発酵ブロス製剤は、さらに、例えば、細胞(目的のポリペプチドを生成するために用いられる、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を含有する宿主細胞を含む)、細胞残屑、バイオマス、発酵培地および/または発酵産物など、発酵工程で使用される他の栄養素を含む。一部の実施形態では、組成物は、有機酸、死滅細胞および/または細胞屑、ならびに培地を含む、細胞死滅全ブロスである。
本明細書で使用されるとき、「発酵ブロス」という用語は、回収および/もしくは精製を被らないか、または最小限被る、細胞発酵により生成される調製物を指す。例えば、微生物培養物を飽和まで増殖させ、タンパク質合成(例えば、宿主細胞による酵素の発現)および細胞培地への分泌を可能にする炭素制限条件下でインキュベートすると、発酵ブロスが生成される。発酵ブロスは、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画または分画成分を含有し得る。典型的には、発酵ブロスは、未分画であり、微生物細胞(例えば、糸状真菌細胞)を例えば遠心分離により除去した後に存在する使用済培地および細胞残屑を含む。一部の実施形態では、発酵ブロスは、使用済細胞培地、細胞外酵素、および生存および/または非生存微生物細胞を含有する。
一実施形態では、発酵ブロス製剤および細胞組成物は、少なくとも1つの炭素数1~5の有機酸および/またはその塩を含む第1の有機酸成分と、少なくとも1つの炭素数6以上の有機酸および/またはその塩を含む第2の有機酸成分とを含む。具体的な実施形態では、第1の有機酸成分は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、その塩、またはこれらの2つ以上の混合物であり、第2の有機酸成分は、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、4-メチル吉草酸、フェニル酢酸、その塩、またはこれらの2つ以上の混合物である。
一態様において、組成物は、有機酸を含み、さらには、任意選択で死滅細胞および/または細胞残屑も含有する。一実施形態では、死滅細胞および/または細胞残屑を細胞死滅全ブロスから除去して、これらの成分を含まない組成物を提供する。
発酵ブロス製剤または細胞組成物は、さらに防腐剤および/または抗菌(例えば、静菌)剤を含んでもよく、限定はされないが、ソルビトール、塩化ナトリウム、ソルビン酸カリウム、および当技術分野で公知のその他が挙げられる。
細胞死滅全ブロスまたは組成物は、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画内容物を含んでもよい。典型的には、細胞死滅全ブロスまたは組成物は、微生物細胞(例えば、糸状真菌細胞)を飽和まで増殖させ、タンパク質合成を可能にする炭素制限条件下でインキュベートした後に存在する使用済培地および細胞残屑を含む。一部の実施形態では、細胞死滅全ブロスまたは組成物は、使用済細胞培地、細胞外酵素、および死滅糸状真菌細胞を含有する。一部の実施形態では、細胞死滅全ブロスまたは組成物中に存在する微生物細胞は、当技術分野で公知の方法を用いて、透過性にし、かつ/または溶解させることができる。
本明細書に記載されるとおりの全ブロスまたは細胞組成物は、典型的には液体であるが、死滅細胞、細胞残屑、培地成分、および/または不溶性酵素などの不溶性成分を含有し得る。一部の実施形態では、不溶性成分を除去して、清澄化液体組成物を提供してもよい。
本発明の全ブロスまたは細胞組成物は、国際公開第90/15861号パンフレットまたは同第2010/096673号パンフレットに記載される方法によって調製してもよい。
本発明の脂肪分解酵素を含む組成物
本発明は、本発明の脂肪分解酵素を含む組成物に関する。
本組成物は、さらに、1種もしくは複数の別の酵素、とりわけ、以下:アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、ガラクタナーゼ、グルカナーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、マンナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、およびキシラーゼからなる群から選択される1種または複数の酵素;特に、マルトース生成α-アミラーゼを含んでもよい。
組成物は、当技術分野で公知の方法に従って調製することができ、液体、ペーストまたは固体など、任意の物理的外観をしていてよい。例えば、組成物は、酵素、および/または医薬製品を製剤化する当技術分野で公知の方法を用いて、例えば、コーティングが施された、もしくは施されていない顆粒または微粒に製剤化してもよい。
組成物に含有させようとする本発明の脂肪分解酵素および任意選択でいずれかの別の酵素は、当技術分野で公知の方法に従って、例えば、ポリペプチドの酸化を制限する抗酸化剤もしくは還元剤の添加により、組成物中のポリペプチドを安定化させることによって安定化してもよいし、または固体もしくは液体組成物中のポリペプチドの安定性に有益であることが公知であるPVP、PVA、PEGもしくはその他の好適なポリマーなどのポリマーを添加することによって安定化させてもよい。
本発明の脂肪分解酵素を顆粒または凝集粉末として製剤化する場合、粒子は、典型的に、25~500マイクロメートルの範囲の粒子を95(重量)%超含む狭い粒度分布を有する。
粒子および凝集粉末は、通常の方法により、例えば、流動層造粒装置でキャリアに脂肪分解酵素を噴霧することによって調製してもよい。キャリアは、好適な粒径を有する粒子コアから構成され得る。キャリアは、可溶性または不溶性、例えば、塩(NaClもしくは硫酸ナトリウムなど)、糖(スクロースもしくはラクトースなど)、糖アルコール(ソルビトールなど)、デンプン、コメ、コーングリッツ、もしくはダイズであってよい。組成物は、好ましくは、乾燥粉末または顆粒、特に、非散粉ダスティング顆粒の形態である。
従って、本発明は、本発明の脂肪分解酵素を含む顆粒または安定化液体も提供する。
他の酵素
任意選択で、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、ガラクタナーゼ、グルカン1,4-α-マルトテトラヒドロラーゼ、グルカナーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、マンナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスホリパーゼ、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、および/またはキシラーゼなどの1種または複数の別の酵素を本発明の脂肪分解酵素と一緒に使用してもよい。
本発明で使用するためのグルコアミラーゼは、A.ニガー(A.niger)G1またはG2グルコアミラーゼ(Boel et al.(1984),EMBO J.3(5),p.1097-1102)、国際公開第84/02921号パンフレットに開示されるA.アワモリ(A.awamori)グルコアミラーゼ、またはA.オリゼー(A.oryzae)グルコアミラーゼ(Agric.Biol.Chem.(1991),55 (4),p. 941-949)のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するグルコアミラーゼを含む。
アミラーゼは、真菌性または細菌性、例えば、B.ステアロテルモフィルス(B.stearothermophilus)由来のマルトース生成α-アミラーゼまたはバチルス属(Bacillus)、例えば、B.リケニホルミス(B.licheniformis)もしくはB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)由来のα-アミラーゼ、例えば、植物(例えば、ダイズ)もしくは微生物源(例えば、バチルス属(Bacillus))由来のβ-アミラーゼ、または例えば、A.オリゼー(A.oryzae)由来の真菌性α-アミラーゼであってもよい。
マルトース生成α-アミラーゼはまた、例えば、国際公開第1999/043794号パンフレット;同第2006/032281号パンフレット;または同第2008/148845号パンフレットに開示されるとおりのマルトース生成α-アミラーゼであってもよい。
好適な市販のマルトース生成α-アミラーゼとしては、NOVAMYL,OPTICAKE 50 BG、およびOPTICAKE 3D(Novozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。好適な市販の真菌性α-アミラーゼ組成物としては、例えば、BAKEZYME P 300(DSMから入手可能)ならびにFUNGAMYL 2500 SG、FUNGAMYL 4000 BG、FUNGAMYL 800 L、FUNGAMYL ULTRA BGおよびFUNGAMYL ULTRA SG(Novozymes A/Sから入手可能)が挙げられる。
抗劣化アミラーゼはまた、国際公開第1999/050399号パンフレット、同第2004/111217号パンフレット、または同第2005/003339号パンフレットに開示されるアミラーゼのいずれかなど、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)由来のアミラーゼ(グルカン1,4-α-マルトテトラヒドラーゼ(EC3.2.1.60))であってもよい。
グルコースオキシダーゼは、真菌性グルコースオキシダーゼ、特に、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)グルコースオキシダーゼ(例えば、GLUZYME(登録商標)、Novozymes A/Sから入手可能)であってもよい。
ヘミセルラーゼは、ペントサナーゼ、例えば、キシラナーゼであってもよく、これは、微生物起源、例えば、細菌、真菌由来、またはアスペルギルス属(Aspergillus)、特に、A.アキュレアツス(A.aculeatus)、A.ニガー(A.niger)、A.アワモリ(A.awamori)、もしくはA.ツビンゲンシス(A.tubigensis)由来、トリコデルマ属(Trichoderma)、例えば、T.レエセイ(T.reesei)の株由来、またはフミコラ属(Humicola)、例えば、H.インソレンス(H.insolens)の株由来であり得る。
本発明で使用するための好適な市販のキシラーゼ調製物は、PANZEA BG、PENTOPAN MONO BGおよびPENTOPAN 500 BG(Novozymes A/Sから入手可能)、GRINDAMYL POWERBAKE(DuPontから入手可能)、ならびにBAKEZYME BXP 5000およびBAKEZYME BXP 5001(DSMから入手可能)が挙げられる。
プロテアーゼは、バチルス属(Bacillus)、例えば、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)由来またはテルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)由来であってもよい。
生地
一態様において、本発明は、生地、または生地から調製される焼成品の調製方法を開示し、この方法は、本発明の脂肪分解酵素を生地に配合するステップを含む。
別の態様では、本発明は、小麦粉と、水と、本発明の脂肪分解酵素を含有する有効量の焼成用組成物またはプレミックスとを含む生地を提供する。
本発明は、さらに、生地または焼成品を調製する方法であって、有効量の本発明の焼成用組成物を生地に配合するステップを含み、これにより、脂肪分解酵素が配合されていない生地または焼成品と比較して、生地または生地から得られる焼成品の1つまたは複数の特性を改善する。
「生地に配合する」という語句は、本明細書において、生地、生地を作製するための任意の材料、および/または生地を作製するための生地材料の任意の混合物に対する本発明の焼成用組成物の添加として定義される。言い換えれば、本発明の焼成用組成物は、生地の調製の任意のステップで添加してよく、また、1つ、2つもしくはそれを超えるステップで添加してもよい。組成物を生地の材料に添加し、これを混練した後、当技術分野で公知の方法を用いて焼成することにより、焼成品を作製することができる。
「有効量」という用語は、本明細書において、生地および/または焼成品の少なくとも1つの目的の特性に測定可能な効果をもたらすのに十分な本発明の焼成用組成物の量として定義される。
「生地」という用語は、本明細書において、混練する、またはローラで伸ばすのに十分な硬さの小麦粉と他の材料との混合物として定義される。本発明に関連して、用語「生地」にはバッターが包含される。
本発明の生地は、任意の穀物粒または他の供給源から得られる小麦粉を含み、そうしたものとして、コムギ、エンマーコムギ、スペルトコムギ、ヒトツブコムギ、オオムギ、ライムギ、オーツムギ、トウモロコシ、モロコシ、コメ、キビ、アマランス、キヌア、およびキャッサバが挙げられる。
生地は、さらに、他の一般的な生地材料、例えば、粉乳、グルテン、およびダイズなどのタンパク質;卵(全卵、卵黄、もしくは卵白のいずれか);アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ化カリウム、アゾジカーボンアミド(ADA)または過硫酸アンモニウムなどの酸化剤;L-システインなどのアミノ酸;糖;塩化ナトリウム、酢酸カルシウム、硫酸ナトリウム、もしくは硫酸カルシウムなどの塩、および/または乳化剤も含み得る。
生地は、粒状脂肪またはショートニングなどの脂肪(トリグリセリド)を含んでもよい。
本発明の生地は、新鮮、冷凍または半焼成(プレベイク)であってもよい。
本発明の生地は、通常にイースト発酵させた生地であるか、またはイースト発酵に付す生地である。
生地は、化学膨張剤、例えば、ベーキングパウダー、重炭酸ナトリウムの添加、またはイーストの添加(生地の発酵)によるなどの多様な方法でイースト発酵させることができるが、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン用イースト)、例えば、市販のサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の株の培養物などの好適な酵母培養物を添加することにより、生地をイースト発酵させるのが好ましい。
本発明の脂肪分解酵素は、焼成品体積、とりわけパン体積を有意に変化させないと考えられ;典型的には、体積は、0~5%増減し得る。
本発明の脂肪分解酵素の量は、生地中の小麦粉kg当たり0.01~100mgの酵素タンパク質、とりわけ小麦粉kg当たり0.05~50mgの酵素タンパク質、とりわけ小麦粉kg当たり0.1~25mgの酵素タンパク質、特に生地中の小麦粉kg当たり0.1~15mgの酵素タンパク質であってよい。
乳化剤
一部の用途では、乳化剤が必要なく;一部の用途では、乳化剤が必要とされ得る。
本発明での好適な乳化剤は、好ましくは、以下:モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)、エトキシル化モノ-およびジグリセリド(EMG)、蒸留モノグリセリド(DMG)、ポリソルベート(PS)、ならびにモノコハク酸グリセリド(SMG)からなる群から選択される乳化剤である。
一部の用途では、本発明の脂肪分解酵素は、生地レシピに通常存在するすべての乳化剤の代わりに使用される。
パン改良剤およびパティスリー・ミックスまたはプレミックス
本発明の脂肪分解酵素は、有利には、パン改良剤およびパティスリー・ミックスまたはプレミックスの一部であってもよい。
「パン改良剤」(「生地コンディショナー」または「生地改良剤」または「改良剤」または「小麦粉処理剤」とも呼ばれる)は、典型的には、焼成品の食感、構造、体積、風味および新鮮さを改善すると共に、生地の機械加工性および安定性を改善する目的で、生地に添加される。
典型的には、パン改良剤は、以下:1種もしくは複数の酵素(例えば、アミラーゼ(α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、生デンプン分解アミラーゼ)、キシラナーゼ(ヘミセルラーゼ)、セルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、ペクチン酸リアーゼ、オキシダーゼ(ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、L-アミノ酸オキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、スルフルヒドリルオキシダーゼ)、リポキシゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、ラッカーゼ、トランスグルタミナーゼ、アシルトランスフェラーゼ、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ)、1種もしくは複数の酸化剤または還元剤(例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、システインなど)、1種もしくは複数の乳化剤(例えば、モノグリセリド(DATEM)のジアセチル酒石酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)、ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)、モノステアリン酸グリセロール(GMS)、ラムノリピド、レシチン、スクロエステル、胆汁酸塩など)、1種もしくは複数の脂質材料(例えば、バター、油、ショートニングなど)、1種もしくは複数の糖、1種もしくは複数の小麦粉または小麦粉画分、1種もしくは複数のビタミン(例えば、パントテン酸およびビタミンEなど)、1種もしくは複数のゴム、ならびに/または1種もしくは複数の繊維供給源(例えば、オーツムギ繊維など)を含むか、またはこれらから構成される。
ケーキ(パティスリー)ミックスは、典型的に、水、脂肪(油、バター、マーガリン)および卵を除く、ケーキレシピの全材料を含む。卵は、粉末形態でケーキ(パティスリー)ミックスに添加してもよい。ケーキ(パティスリー)プレミックスは、典型的に、小麦粉および砂糖の全部もしくは一部が除外されたケーキミックスである。
焼成品
本発明の製法は、精白、淡色もしくは濃色のいずれかのタイプの、特に柔らかい特徴の生地から調製されるあらゆる種類の焼成品に使用することができる。例として、典型的には、ローフもしくはロール状のパン(特に、精白パン、全粒もしくはライムギパン)、パン、ピタパン、トルティーヤ、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、ウエハース、クッキー、パイクラスト、蒸しパン、ピザなどがある。
本発明を以下の実施例によりさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
実施例1
本発明の脂肪分解酵素のクローニング、発現および発酵
Fast DNA Spin for Soil Kit(カタログ番号6560-200、MP Biochemicals製)を用いて、供給者のプロトコルに従い、バルサリア・ルブリコサ(Valsaria rubricosa)株からゲノムDNAを抽出した。バルサリア・ルブリコサ(Valsaria rubricosa)株は、2002年に中国湖南省(Hunan,China)の土壌から単離されたものである。当技術分野で公知のように、フォワードおよびリバースプライマー(配列番号3および4)を用いて、ゲノムDNAからPCRにより配列番号1および2を増幅した。
配列番号1(シグナルペプチド:1~20):
配列番号2:
配列番号3(プライマー):
5’ACACAACTGGGGATCCACCATGAAGTCCGCTTCGATCTTACTCAGG-3’
配列番号4(プライマー):
5’AGATCTCGAGAAGCTTAAACCCACTGAACTTCTACCCCCC-3’
GFX(登録商標)PCR DNAおよびGel Band Purification Kit(GE Healthcare,Hillerod,Denmark)を用いて、製造者の指示に従い、PCR産物を精製した。IN-FUSION(商標)PCR Cloning Kit(BD Biosciences,Palo Alto,CA,USA)を用いて、製造者の指示に従い、BamHIおよびHindIIIにより事前に線状化した発現ベクターpDAu109(国際公開第2005/042735号パンフレット)に、配列番号2に対応する精製済PCR産物をクローン化した。
1μl体積の非希釈ライゲーション混合物を用いて、Invitrogen製のMulti shot TOP 10 Chemical Competent Cell品番44-0091を形質転換した。ml当たり100μgのアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で1コロニーを選択し、ml当たり100μgのアンピシリンを補充した2mlのLB培地中で一晩培養した。Jetquick Plasmid Miniprep Spin Kit(Genomed GmbH,Lohne,Germany)を用いて、製造者の指示に従い、プラスミドDNAを精製した。異種発現の前にサンガー(Sanger)シーケンシングにより配列番号2配列を確認した。アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)宿主細胞での異種発現のために、1プラスミド(配列番号2を含む)を選択した。
A.オリゼー(A.oryzae)宿主細胞は、A.オリゼー(A.oryzae)アセトアミダーゼ(amdS)遺伝子をpyrG遺伝子で破壊することによってpyrG栄養要求性が回復されたアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)JaL355(国際公開第2002/40694号パンフレット)由来のamdS(アセトアミダーゼ)破壊遺伝子である。アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)のプロトプラストは、国際公開第95/002043号パンフレットに従って作製した。
100μlのアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)プロトプラストを、クローン化配列番号2遺伝子を含む1~2μgのアスペルギルス(Aspergillus)発現ベクターと混合してから、250μlの60%PEG4000(Applichem,Darmstadt,Germany)(ポリエチレングリコール、分子量4,000)、10mMCaCl、および10mMTris-HCl(pH7.5)を穏やかに混合した。37℃で30分のインキュベーション後、4mlの上層寒天(温度40℃)を添加し、選択のためにCOVEプレート上にプロトプラストを塗布した。37℃で4~7日間のインキュベーション後、4つの形質転換体の胞子を96ディープウェルプレート内の0.5mlのDAP-4C-01培地に接種した。30℃で4~5日間の培養後、培養ブロスをSDS-PAGEにより分析して、バルサリア・ルブリコサ(Valsaria rubricosa)由来の組換えタンパク質を最大量産生する形質転換体を同定した。
単一コロニーを単離するために、0.01%TRITON(登録商標)X-100を含有するCOVEプレート上に配列番号2遺伝子を含む最良の形質転換体の胞子を塗布した。クローンの保存の前に塗布をもう1回繰り返した。
精製のための発酵
前述のように構築したアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)形質転換体を、溝付き振盪フラスコ内の150mlのDAP-4C-01培地中で発酵させるが、これは、150RPMで回転する振盪プラットフォームインキュベータにおいて30℃で3~5日間インキュベートし、これを後述するアッセイでも使用した。
使用する培地
LBプレートは、10gのBacto-トリプトン、5gの酵母エキス、10gの塩化ナトリウム、15gのBacto-寒天、および1リットルまでの脱イオン水から構成された。
LB培地は、10gのBacto-トリプトン、5gの酵母エキス、および10gの塩化ナトリウム、ならびに1リットルまでの脱イオン水から構成された。
DAP-4C-1
11gのMgSO4、7H2O
1gのKH2PO4
2gのC6H8O7、H2O
20gのデキストロース
10gのマルトース
5.2gのK3PO4、H2O
0.5gの酵母エキス
0.5mlのKU6微量金属溶液(AMG)(MSA-SUB-FS-0042)
完全に溶解するまで混合する
1mlのDowfax 63N10を添加する
最大1000mlのMilli-Q水で体積を調節する
0.5gのCaCO3錠剤(1錠剤/200mlを添加)
注入の前に、150mlの各振盪フラスコを3.5mlのリン酸水素ジアンモニウム(NH4)2HPO4 50%、および5.0mlの乳酸20%に添加する。
KU6微量金属溶液(AMG)(MSA-SUB-FS-0042)
6.8gのZnCl
2.5gのCuSO.5H
0.13gの塩化ニッケル(無水)
13.9gのFeSO4.7H
8.45gのMnSO.H
3gのC.H
最大1000mlのイオン交換水
COVEスクロースプレートは、342gのスクロース、20gの寒天粉末、20mlのCOVE塩溶液、および1リットルまでの脱イオン水から構成された。15psiで15分のオートクレーブ処理により、培地を滅菌した(Bacteriological Analytical Manual,8th Edition,Revision A,1998)。培地を60℃まで冷却してから、10mMアセトアミド、Triton X-100(50μl/500ml)を添加した。
COVE塩溶液は、26gのMgSO・7HO、26gのKCL、26gのKHPO、50mlのCOVE微量金属溶液、および1リットルまでの脱イオン水から構成された。
COVE微量金属溶液は、0.04gのNa・10HO、0.4gのCuSO・5HO、1.2gのFeSO・7HO、0.7gのMnSO・HO、0.8gのNaMoO・2HO、10gのZnSO・7HO、および1リットルまでの脱イオン水から構成された。
配列番号1の特徴:
脂肪分解酵素(配列番号1)は、ペンタペプチド:G-H-S-L-Gに出現する触媒三残基を含む典型的な脂肪分解酵素ボックスを有する。
本発明の脂肪分解酵素(配列番号1)は、トリブチリン、MGDG(モノガラクトシルジアシルグリセロール)、DGDG(ジガラクトシルジアシルグリセロール)、APE(N-アシルホスファチジルエタノールアミン)、およびALPE(N-アシルリソ-ホスファチジルエタノールアミン)に対する活性を示したが、これは、この酵素が、リパーゼ活性(トリブチリン)、ホスホリパーゼ活性(APE/ALPE)、およびガラクトリパーゼ活性(MGDG/DGDG)を有することを明らかにする。
配列番号1のpH活性プロフィール
精製済配列番号1を、0.01%Triton X-100を含む0.5、0.125、0.031および0.0078mg酵素タンパク質まで希釈した。
20μlの希釈酵素サンプルを、96ウェルマイクロタイタープレート内で、40μlのpHバッファー(0.1M酢酸ナトリウム、0.1Mリン酸ナトリウム、1mM CaCl2、NaOH/HClを用いてpH2、3、4、5、6、7、8および9に調節)および40μlのオリーブ油基質溶液(12.5mg/mlのオリーブ油、0.1%アラビアゴム、1.5mMCaCl2、Ultra Turraxにより均質化)と混合した。
Eppendorf Thermomixerにおいて37℃で30分間のインキュベーション後、10μlの反応停止試薬(1Mリン酸、10%Triton X-100)を添加して、混合することにより反応を停止させた。
次に、オリーブ油基質から放出された遊離脂肪酸の濃度を、NEFAキット(Wako Diagnostics)を用いて数値化した:100μlのR1キット試薬(Wako NEFA-HR(2)R1 SET,434-91795)を25μlの反応体積と混合した後、546nmでの吸光度をSpectraMax Plusプレートリーダで読み取った。次に、50μlのR2キット試薬(Wako NEFA-HR(2)R2 SET,436-91995)を添加し、室温で20分のインキュベーション(振盪しながら)後、546nmでの吸光度を再度読み取った。2つの読み取り値の差から、オレイン酸標準曲線(1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03125および0mMオレイン酸)による結果を用いて、遊離脂肪酸の濃度を算出した。線形範囲内の応答をもたらすリパーゼ濃度を用いて、各pHでの活性を計算した。表Aに、pH4(至適pH)での活性と比較した活性を示す。
Figure 0007340073000003
実施例2
下記の材料を混合することにより、標準的なストレートドウ(straight dough)レシピに従って、パンサンプルを調製した(生地の量は、焼成試験の要件を満たすように増加させた):
小麦粉
(Crousti flour,Dossche Mills,Deinze,Belgium) 1000g
水道水 570g
スクロース 60g
酵母 30g
ナタネ油 20g
食塩 19g
プロピオン酸カルシウム 5g
アスコルビン酸 40ppm
Novamyl 10.000BG(商標)(Novozymes A/S) 40ppm
Panzea Dual(商標)(Novozymes A/S) 25ppm
下記の生地サンプルを作製し、3つのパンサンプルを各生地から調製した。Soft’r Silkは、Puratos NV(Groot-Bijgaarden,Belgium)からの市販のDMG製品であり、これを市販のDMG製品の効果の基準として用いた。Soft’r Silkは、小麦粉含量に応じて添加した。
Figure 0007340073000004
スパイラルミキサー(Diosna SP12,Dierks & Soehne,Osnabrueck,Germany)で、低速(17rpm)で2分および高速(35rpm)で7分の材料を混合することにより、生地を調製した。混合した後、計量(600g)の前に生地を評価した。計量した生地をさらに15分間静置した後、生地をシート状に伸ばした。シート状の生地を、開放型2200mLスチールパン(最大寸法:260mm(L)×125mm(W)×80mm(H))に配置して、35℃、86%相対湿度で90分間発酵させた。
発酵の後、生地を230℃のデッキオーブン(Wachtel Piccolo,Wachtel GmbH,Hilden,Germany)で25分間焼成した。オーブンでは、焼成ステップの開始時に短い蒸気の噴出を使用した。焼成されたパンをスチールパンから取り出し、放置して室温で2時間冷ました。Volscan Profiler 600レーザースキャナ(Stable Micro Systems,Surrey,UK)を用いて、パンサンプルの体積を決定した。続いて、パンサンプルを窒素と共に密封プラスチックバッグ(PA/PE、90μm)に包装した。
室温で2日間の保存後、電気スライサー(Graef Master M182 Slicer,Graef & Co GmbH,Arnsberg,Germany)で各々のパンの中央部から2枚のスライスを切断した。C-Cell Image Analysis System Version 2.0ソフトウェア(Calibre Control International Ltd,Warrington,UK)を使用するC-セル計器を用いて、各スライスを1回測定した。
C-セルでは、最適な画像品質を確実にするために、サンプルの高精細画像化および制御照明を使用する。スライス全体を分析して、サンプルの具体的な特徴を示す48のデータ値および5つの処理画像を取得する。クラムの白色度は、パラメータ「スライス輝度」を用いて評価することができる。輝度測定値は、スライスにおける全画素の平均グレーレベルである。
よりきめ細かいクラム構造は、より高い「スライス輝度」値をもたらすであろう。
Figure 0007340073000005
Figure 0007340073000006
表3から、本発明の脂肪分解酵素を使用することによって、スライス輝度が対照より優れ、しかも、小麦粉kg当たり1mgの脂肪分解酵素を使用したとき、1%Soft’r Silkよりも高いことが認められる。
実施例3
Crousti flourの代わりにKing Midas Special flour(Ardent Mills Corp.Denver,CO,US)を使用し、実施例2で添加した570gの水の代わりに600gの水を添加した以外は、実施例2と同様にパンサンプルを調製した。さらに、この試験は、対照を含まず、1%Soft’r Silkによる基準のみを含んだ。
Figure 0007340073000007
Figure 0007340073000008
Figure 0007340073000009
表6から、本発明の脂肪分解酵素を使用することによって、スライス輝度が1%Soft’r Silkよりも高い(小麦粉kg当たり0.4および1.0mgの脂肪分解酵素の両方で)ことが認められる。
実施例4
変異体の構築
配列番号6、配列番号7、配列番号8、および配列番号9を次のように構築した:100の最も相同的なリガーゼに対して配列番号1とのアラインメントを実施した。アラインメントに基づいて、配列番号1が、他のリパーゼの平均から逸脱したいくつかの位置を選択した。所与の位置を、他のリパーゼに最も一般的に見られるアミノ酸に変異させた。リパーゼ変異体をコードする4つの合成遺伝子を設計し、遺伝子をアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)に発現させた。
配列番号6(シグナルペプチド:1~20、成熟型配列の配列番号1と比較して、13の変異):
配列番号7(シグナルペプチド:1~20、成熟型配列の配列番号1と比較して、27の変異):
配列番号8(シグナルペプチド:1~20、成熟型配列の配列番号1と比較して、41の変異):
配列番号9(シグナルペプチド:1~20、成熟型配列の配列番号1と比較して、56の変異):
実施例5
様々な脂肪分解酵素を含むアメリカントーストの焼成
実施例2に記載したとおりにパンを作製した。
配列番号6および配列番号7の脂肪分解酵素を0.4、1、および2mgの酵素タンパク質(EP)/kg小麦粉の量で生地に添加した。脂肪分解酵素は、実施例4に記載したとおりに生成した。
パンの体積およびC-セルパラメータ「スライス輝度」を測定した。
下記の結果が得られた。
Figure 0007340073000014
表7から、本発明の脂肪分解酵素(配列番号6および配列番号7)を使用することによって、スライス輝度が対照より高く、配列番号7は、1%Soft’r Silkとほぼ同レベルであることを認めることができる。
実施例6
様々な脂肪分解酵素を含むアメリカントーストの焼成
実施例2に記載したとおりにパンを作製した。
脂肪分解酵素配列番号8および配列番号9を0.4、1、および2mgの酵素タンパク質(EP)/kg小麦粉(配列番号8)ならびに0.4mgの酵素タンパク質(EP)/kg小麦粉(配列番号9)の量で生地に添加した。脂肪分解酵素は、実施例4に記載したとおりに生成した。
パンの体積、HunterLab L値、およびC-セルパラメータ「スライス輝度」を測定した。HunterLabは、サンプルを照らすための光源を使用し、異なる波長で光量を測定する比色分析分光測光法である。サンプルにより反射された光が格子に移動し、これが光をそのスペクトル成分に分解する。Hunter L a b色空間は、3次元長方形の色空間であり、ここで、L(明度)軸:0は黒で、100は白である。数値は、見えるものと相関する。
各々のパンの2枚のスライスを使用し、HunterLabを用いて各スライスを一度測定した。
以下の結果が得られた。
Figure 0007340073000015
表8から、本発明の脂肪分解酵素(配列番号8および配列番号9)を使用することによって、スライス輝度および/HunterLab L値が対照より高いことを認めることができる。結論として、配列番号8および配列番号9の両方が、クラム白色度を導入した。
実施例7
オフフレーバのないクッキー
表9の材料を用いてクッキーを調製した。
Figure 0007340073000016
製法:
材料をHobartミキサーにおいて速度1で2分間ブレンドした。生地をプラスチックフィルムで包装し、25℃で一晩寝かせた。
翌日、2枚のクッキングシートの間で生地を2mmの厚さにローラで伸ばした。直径6.5cmの生地片を切り取った。
生地片をMiwe Condoオーブンにおいて180℃で11分間焼成した。焼成中、蒸気は加えなかった。
クッキーの分析:
HS-SPME-GC-MS技術を用いて、サンプルからの揮発性物質を決定した。揮発性成分の抽出のために、ジビニルベンゼン/カルボキセン/ポリジメチルシロキサン(DVB/CAR/PDMS)ファイバーを使用した。
最初に、250rpmの混合速度と共にサンプルを80℃で10分間予熱した後、同じ混合速度の下、抽出を80℃で30分間実施した。
Triple-Axis Detectorおよび自動SPME分析のために設計されたオートサンプラーGerstel MPSと共に、質量分析計5975C不活性MSDを装備したガスクロマトグラフAgilent5890Aを用いて、GC/MS分析を実施した。分析物の分離は、RESTEK Stabilwaxキャピラリーカラム、30m×0.25mm×0.50μmフィルム厚さで実施した。カラムオーブンは次のようにプログラムした:初期温度80℃を10分、220℃まで16℃/分で昇温し、220℃で8分間保持した。1mL/分の定流量で、キャリアガスとしてヘリウムを使用した。NIST MS Search 2.0ライブラリの質量スペクトルとの比較により、揮発性化合物を同定した。
揮発性成分:酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、およびデカン酸は、強度のオフフレーバの原因である。表8は、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、およびデカン酸の濃度を示す。
Figure 0007340073000017
表10は、市販のリパーゼを用いて作製したクッキーが、本発明の脂肪分解酵素を用いて作製したクッキーと比較して、はるかに高い含量の酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、およびデカン酸を含むことを明らかにする。
さらに、訓練を受けた焼成スタッフは、本発明の酵素を用いて作製したクッキーにオフフレーバを一切知覚することができなかったが、市販のリパーゼを用いて作製したクッキーには強度のオフフレーバを知覚することができた。
実施例8
オフフレーバのないブリオッシュ
表11の材料を用いてブリオッシュを調製した。
Figure 0007340073000018
製法:
次の製法を用いた:
Diosna SP24において、低速で6分、高速で11分(4分の高速混合の後に初めて脂肪を添加する)様々な材料を混合する。最終生地温度は、約27℃である。
バルク発酵を25℃の周囲温度で10分間実施する。
500gまで生地を計量する。
手でパンを成形する。
中間発酵を25℃で20分間実施する。
R4.5およびL16のJac Unicで成形する。
Koma発酵室において28℃および95%RHで165分間発酵させる。
Miwe Condoオーブンにおいて200℃で30分間焼成する。
ブリオッシュを90分間冷まし、プラスチックバッグでパンを包装する。
ブリオッシュ分析:
ブリオッシュに対して揮発性物質(実施例4に記載したのと同じ揮発性物質)の分析を実施した。
表12は、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、およびデカン酸の濃度を示す。
Figure 0007340073000019
表12は、市販のリパーゼを用いて作製したブリオッシュが、本発明の脂肪分解酵素を用いて作製したブリオッシュと比較して、高い含量の酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、およびデカン酸を含むことを明らかにする。
さらに、訓練を受けた焼成スタッフは、本発明の酵素を用いて作製したブリオッシュにオフフレーバを一切知覚することができなかったが、市販のリパーゼを用いて作製したブリオッシュには強度のオフフレーバを知覚することができた。
酵素(E&F)を用いて作製したブリオッシュは、バターだけを含むブリオッシュよりもきめ細かいクラムをもたらした(訓練を受けた焼成スタッフにより判断された)ことに留意すべきである。
実施例9
本発明の酵素を用いて調製したパン
表13の材料を用いてパンを調製した。
Figure 0007340073000020
製法:
次の製法を用いた:
Diosna SP24において、低速で2分、高速で7分かけて様々な材料を混合する。最終生地温度は、約26℃である。
バルク発酵を25℃の周囲温度で5分間実施する。
600gの生地を計量する。
手でパンを成形する。
中間発酵を25℃で15分間実施する。
R4.5およびL15のJac Unicで成形する。
Koma発酵室において35℃および95%RHで110分間発酵させる。
Miwe Condoオーブンにおいて220/230℃(超/未満)で25分間焼成する。
パンを120分間冷まし、プラスチックバッグでパンを包装する。
パンの食感測定:
硬さ測定のために、Stable Micro Systems製のTA.XT(TA.XT plus)を使用した。2mm/sの速度を用い、直径25mmのプローブで10の反復(異なるパン)を測定し、パンクラム中に全高の25%の力で圧縮した。
硬さ測定値を表14に示す。
Figure 0007340073000021
これらの結果から、本発明の酵素を用いて作製したパンは、参照よりも有意に柔らかいことがわかる。市販のリパーゼを用いて作製したパンは、柔らかさが参照と同様である。

Claims (14)

  1. 以下:
    配列番号1、配列番号6、配列番号7、配列番号8または配列番号9に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドからなる群から選択される、脂肪分解酵素活性を有するポリペプチド。
  2. アミノ酸配列G-H-S-L-Gの触媒セグメントを含む、請求項に記載のポリペプチド。
  3. 前記ポリペプチドが、リパーゼおよびホスホリパーゼ活性を有する、請求項1または2に記載のポリペプチド。
  4. 請求項1~のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. 発現宿主において前記ポリペプチドを生成させる1つまたは複数の制御配列に作動可能にリンクした、請求項に記載のポリヌクレオチドを含む核酸構築物または発現ベクター。
  6. 前記ポリペプチドを生成させる1つまたは複数の制御配列に作動可能にリンクした、請求項に記載のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチドを生成する方法であって、請求項に記載の宿主細胞を培養するステップを含む方法。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む顆粒または安定化された液体。
  9. 請求項1~のいずれか1項に記載の脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドと、以下:アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、α-アミラーゼ、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、キチナーゼ、クチナーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エステラーゼ、ガラクタナーゼ、グルカン1,4-α-マルトテトラヒドロラーゼ、グルカナーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、インベルターゼ、ラッカーゼ、マンナーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、ペクチン分解酵素、ペプチドグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ、リン脂質分解酵素、フィターゼ、ポリフェノールオキシダーゼ、タンパク質分解酵素、リボヌクレアーゼ、トランスグルタミナーゼ、およびキシラナーゼからなる群から選択される1種または複数の酵素を含む組成物。
  10. 前記1種または複数の酵素が、マルトース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼおよびグルカン1,4-α-マルトテトラヒドロラーゼからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
  11. 焼成品を調製する方法であって、焼成の前に、請求項1~のいずれか1項に記載の脂肪分解酵素活性を有するポリペプチド、請求項に記載の顆粒もしくは安定化された液体、または請求項10のいずれか1項に記載の組成物を生地に添加するステップを含む方法。
  12. 前記脂肪分解酵素活性を有するポリペプチドの量が、前記生地中の小麦粉kg当たり0.01~100mgの酵素タンパク質である、請求項11に記載の方法。
  13. 製パンおよび/または製菓用途における請求項1~のいずれか1項に記載の脂肪分解酵素活性を有するポリペプチド、請求項に記載の顆粒もしくは安定化された液体、または請求項10のいずれか1項に記載の組成物の使用。
  14. パン改良剤および/またはパティスリー・ミックスもしくはプレミックスにおける請求項13に記載の使用。
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