JP2022117528A - 焼成した食パンの袋掛け冷却法 - Google Patents

焼成した食パンの袋掛け冷却法 Download PDF

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黒田和明
Kazuaki Kuroda
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Abstract

【課題】焼成した食パンをスライスして脱酸素剤で封入するには、クリーンな空気をあてて冷却する必要があるが、クラム部分まで冷却する間に水分が放散され、クラストが厚くなり固さが増すという問題がある。このため、湿度を制御しながら空冷する設備が必要になるが、小規模事業者には経済的に実現が困難である。【解決手段】食パンの重量を計測しながら空冷し蒸散する水分量が目標に達したら水分が飛ばないように食パンに袋掛けを行いその後冷却だけを進めるようにする。【選択図】なし

Description

本発明は、天然酵母で作る小規模生産の山型食パンを焼成後スライスして袋詰めをするための冷却法に関するものである。
大量生産の食パンには数多くの添加物が使われ、これに対する危惧の念から、安全安心を標ぼうして国産小麦を使う、いわゆる天然酵母パンに対する根強い人気がある。ここで扱う天然酵母パンは、輸入小麦粉より高価な国産小麦粉を用い、イースト発酵のパンより長い発酵時間が必要であることに加えて、製造の規模拡大ができにくいことから少量生産にならざるを得ず、高価格なパンである。このため、焼成したパンの保存性を良くして消費ロスを避けることは重要であり、その保存性を高めるために、焼成したパンは脱酸素剤とともにポリ袋に封入される。パンは焼立てが美味しいという風評があるが、それは焼き立て時にしか美味しくないパンを売るための宣伝文句であると考えられ、脱酸素剤で保存された天然酵母パンはトーストすることにより焼立ての味が再現される、と考えている。
本出願人は脱酸素剤を入れて封入した天然酵母パンをこれまで2年間にわたり小規模に製造して販売してきた。これは焼成したパンを2時間程度クリーンブース内で冷却してパックしたものであるが、購入者からスライスするのが固くて大変だという苦情が寄せられていた。焼成した天然酵母パンを室温のクルーンブース内で1時間冷却すると表面のクラストは固くなるが内部のクラムはまだ室温より高い状態にあり、ナイフを入れるとクラム部分がナイフにくっついてまっすぐにスライスするのが容易ではない。クラム部分を十分冷却するには2時間から3時間冷却する必要があるが、そこまで冷却すると全体が固くなり、スライスする刃でクラスト部分から大量の破片が飛び散るようになり、製品としての見た目が悪化する。このような問題を避けるために、パン生地に油を添加してスライスし易くしたパンを製造して脱酸素剤でパックしたものも販売してきた。
食パンがスライスできるようになるまで冷却を行うとパン生地からの水分が過剰に放出されてパン自体が固くなってしまう問題を回避するために、大規模な食パン製造業では、焼成した食パンは温湿度の制御された環境下で冷却され、また、食パン表面のクラストの柔らかさを保つためにパン生地に適切な添加物が使用されるとともに冷却工程の終盤で水分や油分を散布して与える技術も開発されている。しかしながら少量の食パンしか生産しない小規模のパン事業者ではクリーンで温湿度を制御できる環境を整える設備投資を行う余力に乏しく、焼成した食パンを陳列棚に並べて自然に冷却する方法を採っている。これらの事業者では保存性を高める目的での食パンをパックする方法はとられていない。大規模な設備投資ができる大規模事業者の解決方法は、小規模事業者には経済的に採用できない。
公開特許公報 特開2012-120469 公開特許公報 特開2005-198610 特許公報 公開平8-29045 特許公報 昭55-34656
食パンがスライスできるようになるまで冷却を行うとパン生地からの水分が過剰に放出されてパン自体が固くなってしまう問題を大規模な設備投資をせず、現状設備を活用することで解決したい。
ここで扱う天然酵母パンは、北海道産ハルユタカ2kg、洗双糖52g、天草の塩24gにホシノ天然酵母から起した生種120gに浄水器を通した水1020gを36℃にした温水を加えて捏ね上げ、30℃の発酵器に約5時間置いて生地発酵させた後、これを等量の8個に分割して成形し、10cm四方の底面を持ち高さ10cmの1斤パン型に入れ、35℃に保った発酵器で約1時間30分の間、成形発酵(2次発酵)を行わせる。それぞれ発酵の完了は時間経過ではなく、パン生地の膨張具合をチェックして判断する。成形発酵の後、オーブンに移して100℃で20分、引き続いて150℃で10分、その後200℃で10分、合計40分で焼成する。焼成後は直ちにHEPAフィルターを備えたクリーンブース(株式会社アクティブ社製ACT-4-1515)内のすのこ状棚板の上にパン型から取り出して載せて脱気すると同時に冷却する。そのすのこ状棚板はタニタデジタルスケールTL-280から高さ50cmの位置に風通しの良い構造で置かれ、1斤4個の重量を随時測定できるようにしている。図1は、すのこ棚に移して以降の重量変化を読み取って1個当たりの重量変化としてグラフにしたものである。横軸の時間は対数でプロットしているが、焼き上げ直後の水分蒸散量が徐々に低下して行く様子が分かり、概ね1時間30分で8g程度の減少がみられる。このすのこ棚とは別のすのこ棚に置いた4個のパンの一つについて、直径3ミリ、長さ約10cmの測定部をもつデジタル温度計をパン生地内に差し込んで計った温度は、焼き上げ直後で96.8℃、20分後で69.6℃、60分後で41.5℃、90分後で32.3℃だった。90分以降は以下に示す袋掛けを行っており、袋掛けしてから1時間経過した後の重量の変化は測定できない大きさだったが、袋を外してパンだけの重さを計ると0.2g減少しており、これは袋に付着した水分の重さだと推定される。
以上のように、焼き上げた食パンはクリーンブース内の風通しの良い棚に置いて空冷される。脱酸素剤で封入した食パンの水分量が適切な量になるように抜け出す水分の量を正確に把握して、以降の水分の放散を防ぐ処置として食パンに袋掛けをして冷却だけを進める。袋掛け以前に蒸散する水分の量は、上記の測定では室内の温度20℃、湿度が46%の場合であって天然酵母パン1斤につき概ね8~9グラムであり、市販のデジタルスケールで計測可能な分量である。これは焼成直後にクリーンブース内の棚に置いて約1時間30分後に得られる放出量である(クリーンブース内の湿度にも依存するため製品を作る際には時間ではなく1グラム単位の計測重量で調整する)。袋掛けに用いる袋としては繰り返し使用可能で透湿性が低く熱伝導性が高く、水蒸気が水滴となった場合に濡れ易い性質の素材でできたものが適している。
クリーンブース内で袋掛けをしてクラム部分が室温程度になるまで冷却を行うには、通常1時間以上の時間を要するが、この間にクラム部分の水分がクラスト部分に拡散して行き、袋掛けをしない場合に比べてクラスト部分が柔らかくなり、スライスの刃が通りやすくなる。またパン全体の柔らかさは袋掛けをした際の柔らかさと遜色がない。なお、袋掛けをすることにより、袋掛けした以降の経過時間は、冷却時間確保を除き、その後の食パン状態(水分の抜けや香りの消失)に大きい変化を及ぼさないので、時間に追われて作業を行う必要がなくなる利点がある。
町のパン屋さんでは袋詰めした食パンを消費者が購入する時点でその袋を開けて食パンを取り出しスライスした後その袋に詰め直すということが行われている。この袋掛けは本発明である食パン内の水分のコントロールを目的としたものではないことを特記する。
本発明は、焼成後の食パンの水分蒸散量をデジタルスケールなどによる重量測定により直接計測して袋掛けにより水分の蒸散を防止し、冷却だけを進行させるものであり、室内の湿度制御や水分の塗布など大掛かりな設備を必要とせずに実現できるものである。特に季節により変動の大きい湿度の影響を受けずに食パンの水分保持量を定まったものにコントロールできるようになる。また、袋掛けに用いる袋には適した素材で繰り返し使用できるものが市販されており、クリーンブース内の袋掛け作業自体は食パン自体のスライス作業などと比べても軽微なものである。
クリーンブース内で袋掛けをして十分冷却された食パンは、袋掛けを解きスライスされ、脱酸素剤を入れて封入される。この状態が製品として完成である。封入する際の水分量が少ないと柔らかさが失われ、水分量が過剰であると、周囲温度により発酵食品特有の劣化が早く進む恐れがあるので、食パン保存環境の季節変化に合わせた調節が欠かせない。
食パン1斤の重量を焼成直後の1分後から1時間30分まで計測してプロットしたグラフである。重量の減少は水分の蒸散によるものであり、1時間30分の間に約8g減少している。
食パンの重量を計測できる器具をクリーンブース内に設置し、焼成した食パンの重量変化をモニターする。目標の蒸散量に達した時点で袋掛け作業をする。袋掛け以降は食パンの内部の温度が室温程度まで下がるのを待ち、スライス作業をして封入作業を完了する。
重量の計測値が電子的にパソコンに取り込まれるようにしておけば、予め設定した目標の重量となる時刻にアラームを発信して食パンの袋掛け作業開始時刻を知らせるようにできる。焼成した時点から目標の重量に達するまで1時間から2時間を要するため、この間の時間帯に別の作業を遂行することができる。
多数の食パンを同時に焼き上げることのできる設備がある場合、すべての食パンの重量を計測する必要はなく、クリーンブース内で代表的な場所に置いた食パン1個の重量計測に基づいて袋掛け作業開始の時刻を決めても良い。ただし、パン型から取り出した直後の食パンの水分蒸散量は時間1分につき1g近くに達するため、オーブンからクリーンブース内に焼成した食パンを移す際に時間を要するような場合、最初に移動した食パンと最後に移動した食パンでは蒸散する水分量がかなり違って来る可能性があることに配慮が必要である。
本発明は小規模事業者がいわゆる天然酵母パンを焼いて販売する状況を念頭に置いていて、大規模な設備投資無しで季節ごとの湿度の変動に依存しないで定まった水分保持量の食パンを製造することができる。大規模事業者でも多品種少量の食パンを製造するような場合、大規模なクリーンルーム内で異なる種類のパンごとに冷却を進める必要があれば、本発明の袋掛け法を取り入れることができる。

Claims (1)

  1. 焼成した食パンの空冷時にその重量減小を計測し、目標の値に達した時点で食パンに袋掛けをして以降の水分蒸散を防ぐようにして冷却を進める食パンの冷却法
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JPH0664615A (ja) * 1992-08-14 1994-03-08 Nisshin Flour Milling Co Ltd ベーカリー製品の包装方法
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Title
パンを袋に入れるタイミング[ONLINE], 2015月10月12日, [RETRIEVED ON 2022.09.29], RETRIEVED FROM THE IN, JPN6022042667, ISSN: 0004898639 *

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