JP7336511B2 - 改質小麦粉 - Google Patents

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Description

本発明は、改質小麦粉に関する。
小麦粉は、パンや麺の生地や油ちょう食品の衣材の原料粉、ソースの基材等の食品材料として使用され、さらにパンや麺の生地の製造において、手や道具への生地の接着防止用の粉として用いられている。小麦粉は、水と混ぜると不均一に混ざってそぼろ状になったり、べたついたりしやすいため、食品材料としての作業性は必ずしも良いものではない。一方で、一旦水と混ぜた小麦粉は速やかに調理に用いたほうがよく、さもないと得られた食品が硬くなるかざらついた食感になることがある。
特許文献1には、特定の粒子径の粉を所定量含む薄力小麦粉が、ダマの生成や粉の飛散が少なく作業性が良いことが記載されている。特許文献2には、小麦粉を含む原料粉と水とを非加熱条件下で造粒することで、ダマの生成や粉の飛散が少ない作業性の良い造粒小麦粉が得られることが記載されている。特許文献3には、小麦粉を脱水後に100℃以上で熱処理することで、水に分散させて加熱した場合に不粘着性で滑らかなテクスチャーを有する粉が得られることが記載されている。特許文献4には、原料小麦粉を湿熱処理又は乾熱処理して得られる、RVAピーク粘度が3500~7000mPasで、糊化開始温度が原料小麦粉よりも10℃以上低い改質小麦粉が、水への分散性が良好で作業性がよく、揚げ物衣に適していることが記載されている。
特開2014-103860号公報 特開2014-200208号公報 特開2013-76090号公報 国際公開WO2017/135353号公報
本発明は、調理における作業性が良く、かつ高品質の小麦粉含有食品を製造することができる改質小麦粉に関する。
本発明は、改質小麦粉であって、該改質小麦粉の10質量%水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却したときの該水懸濁液の粘度は1000mPa・s以下であり、かつ該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却し、次いで24時間静置したときの該水懸濁液の分散度は90%以下である、改質小麦粉を提供する。
また本発明は、水分含量10~14質量%の小麦粉を、密封下で、品温70~170℃で10~80分間加熱処理することを含む、前記改質小麦粉の製造方法を提供する。
本発明の改質小麦粉は、パンや麺の生地、揚げ物の衣材などの原料粉として好適である。本発明の改質小麦粉を用いて製造された生地や衣材は、べたつきにくいため作業性が良く、かつ加熱調理したときに良好な食感を有する。また本発明の改質小麦粉は、水と混ぜてもべたつきにくいため、パンや麺の生地の製造などに用いられる手や道具への生地の接着防止用の粉として、又は食材の下処理に用いられる食材のコーティング用小麦粉としても好適である。
小麦粉は、結晶化した澱粉粒子を含有し、該澱粉粒子の周りには酵素や小麦蛋白質が存在する。小麦粉を水分の存在下で加熱すると、小麦粉中の澱粉粒子は膨潤して結晶構造が崩壊し、多くの水分を保持できるようになる。一方で、一旦加熱した小麦粉を冷却するとき、澱粉は水分を離して再結晶化する。この再結晶による結晶構造は加熱前の結晶構造とは異なるため、加熱冷却の前後で澱粉の性質は異なる。また、小麦粉中の蛋白質は、水分が存在すると水素結合の増加又は加水分解により構造が変化し、また加熱により非可逆的に変性する。
小麦粉に含まれる澱粉及び蛋白質の構造や性質、ならびに該小麦粉への水分の添加又は加熱による該構造や性質の変化が、小麦粉の水分浸透速度、水分保持量、加熱後の生地の食感などの性質に貢献していることが考えられた。そこで本発明者らは、小麦粉の水懸濁液の挙動を様々な条件下で調べ、該小麦粉の調理における作業性や、調理後の小麦粉含有食品の品質との関係性を検討した。その結果、小麦粉の水懸濁液を加熱してその後冷却したときの該懸濁液の粘度が所定の値であり、かつ該冷却から一定時間経過後の該懸濁液の分散性が所定の値となるように改質した小麦粉が、調理における作業性がよく、かつ食感の良い高品質の小麦粉含有食品を提供することを見出した。
したがって、本発明は、食材等として食品製造に使用するために好適な改質小麦粉を提供する。本発明の改質小麦粉は、該改質小麦粉の10質量%水懸濁液へと調製されたときに、以下の性質を有する:該水懸濁液を85℃に昇温した後、25℃に冷却したとき、該水懸濁液の粘度は1000mPa・s以下であり、且つ該水懸濁液を85℃に昇温した後、25℃に冷却し、次いで24時間静置したとき、該水懸濁液の分散度は90%以下である。
本明細書において、小麦粉(改質小麦粉を含む)の10質量%水懸濁液とは、該小麦粉を水に懸濁させて得られた、該小麦粉を10質量%含有する懸濁液をいう。本明細書における小麦粉の水懸濁液の粘度は、日本工業規格JISZ8803:2011「液体の粘度測定方法」に準じて、回転型粘度計を用いて12~30rpmの条件で測定した該懸濁液の粘度である。好ましくは、本明細書において測定される小麦粉の水懸濁液の粘度は、25℃で調製された該小麦粉の水懸濁液に対して、必要に応じて所定の処理(加熱、冷却、静置等)を加えた後、その粘度を上述した手段で測定して得られた値である。
本発明の改質小麦粉の10質量%水懸濁液は、該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却したときの粘度が、1000mPa・s以下であればよく、好ましくは800mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、さらに好ましくは400mPa・s以下である。該粘度が1000mPa・sを超えると、該改質小麦粉の調理における作業性や、得られた食品の食感が低下する。本発明の改質小麦粉の10質量%水懸濁液は、該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却したときの粘度が低いほど好ましく、該粘度の下限には特に制限はない。好ましくは、該粘度は、上記の測定方法で回転型粘度計を用いた測定限界以下、すなわち回転型粘度計で数値を測定できないほど低い値、例えば10mPa・s又はそれ以下であってもよい。
本明細書における小麦粉の水懸濁液の分散度とは、該懸濁液中に、小麦粉粒子が分散(小麦粉粒子が浮上又は沈殿せず水に懸濁された状態を維持)している割合をいう。該分散度が高いことは、小麦粉粒子が水に分散しやすく、浮上や沈降による水との分離が生じにくいことを表す。本明細書における小麦粉の水懸濁液の分散度は、以下の手順で算出した値である:該小麦粉の水懸濁液をメスシリンダーのような外部から容量を目測できる容器に移し、所定時間静置した後、該懸濁液における小麦粉を含んで濁りがある部分とそれ以外の透明な部分との境目を目測し、該境目に基づいて該濁りがある部分の体積を測定し、次いで、それらの体積に基づいて下記式に従って分散度を算出する。
分散度(%)=濁りがある部分の体積/全体積×100
(全体積=濁りがある部分の体積+透明な部分の体積)
好ましくは、本明細書において測定される小麦粉の水懸濁液の分散度は、25℃で調製された該小麦粉の水懸濁液に対して、必要に応じて所定の処理(加熱、冷却等)を加えた後、24時間静置して、その分散度を上述した手段で測定して得られた値である。
本発明の改質小麦粉の10質量%水懸濁液は、該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却し、次いで24時間静置したときの分散度が90%以下であればよく、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは65%以下である。該分散度が90%を超えると、該改質小麦粉の調理における作業性や、得られた食品の食感が低下する。好ましくは、本発明の改質小麦粉の10質量%水懸濁液は、該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却し、次いで24時間静置したときの分散度の範囲が10~90%、好ましくは10~80%、より好ましくは15~70%、さらに好ましくは20~65%である。
本発明の改質小麦粉の平均粒子径は、通常の小麦粉と同等の外観を得る観点からは、好ましくは150μm未満、より好ましくは15~120μm、より好ましくは20~100μmである。本明細書において、小麦粉の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により測定された体積平均径をいう。平均粒子径の測定装置としては、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置、例えばマイクロトラックMT3000II(日機装株式会社)を用いることができる。
本発明の改質小麦粉は、α化度が、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下である。改質小麦粉のα化度が高すぎると、改質小麦粉を水と混合したときにべたつきやすくなり、調理における作業性が低下する場合がある。本明細書における小麦粉のα化度とは、β-アミラーゼ・プルラナーゼ(BAP)法により測定されたα化度をいう。
本発明の改質小麦粉は、通常の小麦粉と同等の水分含量を有していればよい。なお、通常の環境(湿度20~90%程度の環境)での小麦粉の水分含量は10~14質量%程度である。したがって、該改質小麦粉の水分含量は、好ましくは10~14質量%、より好ましくは11~13質量%である。本明細書において、小麦粉の水分含量とは、135℃、1時間で乾燥させた小麦粉の該乾燥前に対する質量変化から求めた値をいう。
本発明の改質小麦粉は、改質後の小麦粉が上記の所定の値の粘度及び分散度を有するような処理条件で、原料小麦粉に改質処理を行うことで製造することができる。該原料小麦粉の種類は特に限定されず、強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉、デュラム粉などを使用することができる。このうち、薄力小麦粉が好ましい。該改質処理に供される原料小麦粉の水分含量は、好ましくは10~14質量%、より好ましくは11~13質量%である。必要に応じて、水分含量が好ましくは10~14質量%、より好ましくは11~13質量%になるように原料小麦粉を予め調湿してもよい。また、該原料小麦粉のα化度は、上述した本発明の改質小麦粉よりも高くなく、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下である。
原料小麦粉の改質処理の手段としては、加熱処理、化学処理等が挙げられるが、得られた改質小麦粉における試薬等成分の残留を考慮すると、加熱処理が好ましい。該加熱処理は、湿熱処理であっても乾熱処理であってもよい。しかし、加熱処理の際に多くの水分が存在すると、熱処理した小麦粉がα化して作業性が低下することがある。一方で、加熱処理の際に小麦粉の水分が失われると、小麦粉が褐色化することがあるため好ましくない。
したがって、本発明の改質小麦粉を得るための加熱処理としては、原料小麦粉の水分含量が加熱中に過度に増加したり失われたりすることなく、加熱後の改質小麦粉が該原料小麦粉と同等の水分含量を保持することができるような条件下での加熱処理が好ましい。例えば、水分が蒸発等により飛散しない環境(例えば密封)下で、水分含量10~14質量%の原料小麦粉を加熱することで、水分含量10~14質量%の改質小麦粉を調製することが好ましい。必要に応じて、該原料小麦粉を撹拌しながら加熱を行ってもよい。好ましくは、該原料小麦粉の加熱処理では、蒸気を密封可能な容器(例えば、密封型の袋、窯、カプセル等)に該原料小麦粉を入れて密封し、該容器ごと、好ましくは攪拌しながら、該原料小麦粉を加熱する。密封下において原料小麦粉の加熱を行った場合、小麦粉から揮発した水分は再び小麦粉に凝結するため、加熱後の小麦粉の水分含量は、加熱前とほとんど変わらないか若干低下する程度である。一方で、小麦粉に熱線や熱風を直接あてる方法、焙煎等は、小麦粉の水分が蒸発して除かれてしまうため好ましくない。該原料小麦粉の加熱の際には、該原料小麦粉が元来有する水分以外の水分を加えることなく該原料小麦粉を加熱することが好ましい。ただし、加熱後の改質小麦粉の水分量が上述した範囲に維持される限りにおいて、原料小麦粉に水分を加えることは許容される。
当該加熱処理において、該加熱の温度は、小麦粉の品温として、70~170℃であればよく、好ましくは80~150℃、より好ましくは90~140℃、さらに好ましくは90~130℃である。該加熱の時間は、10~80分間であればよく、好ましくは15~70分間、より好ましくは15~65分間、さらに好ましくは15~60分間、さらに好ましくは20~60分間、さらに好ましくは30~60分間である。密封下での上記の条件の加熱処理は、例えば市販の密封型の加熱混合装置(例えば、愛知電機製ロッキングドライヤ)を用いて実施することができる。
原料小麦粉を加熱する際に、原料小麦粉を水の存在下で加熱すると、α化度が増加することがある。そのため、上述の原料小麦粉の加熱処理の際には、加熱後の小麦粉のα化度が、上述した本発明の改質小麦粉のα化度の範囲内に収まるように、加熱の温度及び原料小麦粉の水分含量を調整することが好ましい。
必要に応じて、得られた加熱後の小麦粉を粉砕又は分級して、上述した本発明の改質小麦粉の平均粒子径を有するように調製してもよい。しかし、本発明の改質小麦粉を得るための上述の加熱処理では、小麦粉同士がくっついて造粒されることがほとんどないため、該粉砕又は分級は基本的には必要ない。
本発明の改質小麦粉は、食品製造において、改質されていない通常の小麦粉と同様に用いることができる。本発明の改質小麦粉は、水への分散性が高く、かつ水と混合したときに粘性になりにくいため、食品製造に使用した際に、調理者の手や道具、食材に対するべたつきが抑えられており良好な作業性を示す。また本発明の改質小麦粉を用いて得られた生地や衣材は、べたつきにくいため作業性が良好であり、かつ加熱調理後に良好な食感を有することができる。例えば、本発明の改質小麦粉は、パン、ケーキ、クッキー等のベーカリー製品の生地や、麺類、パスタ等の生地の原料粉として用いることができる。また例えば、本発明の改質小麦粉は、てんぷらや唐揚げ等の揚げ物の衣材の原料粉として、又はソース、スープ、クリーム、フィリング等の基剤として用いることができる。あるいは、本発明の改質小麦粉は、小麦粉生地の手や道具への接着防止用の粉としてとして、又は加熱料理前の食材(例えば油ちょう前の生鮮食品等)の下処理において、該食材のコーティングに用いることができる。
本発明の改質小麦粉と、それ以外の成分とを含む組成物が提供されてもよい。好ましくは、該組成物は、ベーカリー製品、麺類、パスタ等の生地や、揚げ物用の衣材の製造のためのプレミックスとして提供される。該組成物に含まれる本発明の改質小麦粉以外の成分は、該組成物の目的に合わせて適宜選択され得、例えば、本発明の改質小麦粉以外の穀粉、澱粉、ならびにその他の原料、例えばグルテン等の蛋白質;卵粉や卵白粉;乳成分;油脂類;デキストリン、水飴、糖アルコール等の糖類;塩類;調味料;膨張剤;乳化剤;増粘剤;酵素等、が挙げられるが、これらに限定されない。該本発明の改質小麦粉以外の穀粉としては、改質処理していない小麦粉、乾熱処理小麦粉、α化小麦粉等の該改質小麦粉以外の小麦粉、及び大麦粉、ライ麦粉、米粉、トウモロコシ粉、ソルガム粉、豆粉などが挙げられる。該澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉、およびこれらの加工澱粉(α化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉、架橋処理澱粉など)が挙げられる。本発明の改質小麦粉を含む組成物は、上記に挙げた本発明の改質小麦粉以外の穀粉、澱粉、及びその他の原料からなる群より選択される成分のいずれか1種を単独で含有していてもよく、またはいずれか2種以上を含有していてもよい。
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
参考例1
以下の実施例において、小麦粉の粘度及び分散度は以下の方法で測定した。
〔小麦粉粘度の測定〕
風袋を測定した小鍋に小麦粉50gを入れ、25℃の水450mLを加え、撹拌機で均一に分散するまで攪拌して全体に均一な分散液を得た。該分散液に、風袋引きした小鍋の質量が500gになるまで水を加え、攪拌して全体に均一にした。小鍋を加熱し、該分散液を攪拌しながら品温85℃まで昇温させた。85℃に達温後、小鍋を氷浴に入れ、該分散液を25℃まで冷却した。次いで、蒸発した水分を補うため、該分散液に、風袋引きした小鍋の質量が500gになるまで水(25℃)を加え、攪拌して全体に均一にした。得られた分散液の粘度を、B型粘度計を用いて、25℃、12~30rpmの条件で測定した。
〔小麦粉分散度の測定〕
風袋を測定した小鍋に小麦粉50gを入れ、25℃の水450mLを加え、撹拌機で均一に分散するまで攪拌して全体に均一な分散液を得た。該分散液に、風袋引きした小鍋の質量が500gになるまで水を加え、攪拌して全体に均一にした。小鍋を加熱し、該分散液を攪拌しながら品温85℃まで昇温させた。85℃に達温後、小鍋を氷浴に入れ、該分散液を25℃まで冷却した。次いで、蒸発した水分を補うため、該分散液に、風袋引きした小鍋の質量が500gになるまで水(25℃)を加え、攪拌して全体に均一にした。得られた分散液を、100mLのメスシリンダーに100mL注ぎ入れ、メスシリンダーの口を密封して25℃で24時間静置した。24時間後の分散液の、小麦粉を含んで濁りがある部分と、それ以外の透明な部分との境目を目測し、それぞれの部分の体積を測定した。以下の式に基づいて分散液の分散度を計算した。
分散度(%)=濁りがある部分の体積(mL)/100mL×100
試験例1
1.改質小麦粉の製造
以下の手順で加熱処理小麦粉を製造した。原料小麦粉としては、水分含量13質量%の薄力小麦粉(日清フーズ製)(α化度4)を用いた。
〔製造例1~3〕
原料小麦粉を密閉型の加熱混合装置(愛知電機製 ロッキングドライヤ)を用いて、以下の条件:90℃で60分間(製造例1)、110℃で30分間(製造例2)、又は130℃で60分間(製造例3)にて加熱した。加熱終了後の小麦粉の水分含量は約12質量%であり、α化度は9~12の範囲であった。加熱後の小麦粉の粘度及び分散度を参考例1の方法で測定した。
〔比較例1~2〕
原料小麦粉をレトルト用パウチ袋に厚さ5mm程度の平板状に収容し、口を密封後、60℃にて、1分間(比較例1)又は6分間(比較例2)加熱した。加熱後の小麦粉の水分含量は13質量%であり、α化度は4~6の範囲であった。加熱後の小麦粉の粘度及び分散度を参考例1の方法で測定した。
〔比較例3~4〕
原料小麦粉に小麦粉の質量に対して15質量%の水を加え、耐熱性の密閉容器に密封した。この容器をオイルバス中で、110℃で2分間(比較例3)、又は110℃で30分間(比較例4)加熱した。加熱後の小麦粉の水分含量は27質量%であり、α化度は60以上であった。加熱後の小麦粉の粘度及び分散度を参考例1の方法で測定した。
〔比較例5〕
原料小麦粉を小型の鍋に入れ、鍋を電気コンロにかけて約120℃で加熱しながら、30分間焦がさないように攪拌した。加熱後の小麦粉の水分含量は4質量%であり、α化度は9であった。加熱後の小麦粉の粘度及び分散度を参考例1の方法で測定した。
2.とんかつの製造
1.で得られた改質小麦粉を用いてとんかつを製造した。改質小麦粉を広げた皿の上で、豚ロース肉(厚さ8mm、120g)の表面全体に該改質小麦粉を付着させた。小麦粉を付着させた肉を全卵液にくぐらせ、再度同じ改質小麦粉を表面全体付着させた。これを再度全卵液にくぐらせ、次いでパン粉を広げた皿の上でパン粉を表面全体に付着させてとんかつ用肉を製造した。この操作を、途中で手を拭かずに3回繰り返して3枚のとんかつ用肉を製造した。これらの操作の作業性を下記評価基準により評価した。次いで、製造したとんかつ用肉を170℃の油で揚げ調理してとんかつを製造した。得られたとんかつを室温で6時間放置後、衣をはがして、衣の食感を下記評価基準により評価した。
作業性及び衣の食感の評価は訓練された10名のパネラーが行い、10名の評価結果の平均点を求めた。結果を表1に示す。なお、表1には参考として、原料小麦粉を同様に評価した結果を示す。
評価基準
〔作業性〕
5:衣材が肉の表面に均一に付着し、手への衣材の付着も少なく作業性が非常に良好。
4:衣材が肉の表面にほぼ均一に付着し、手の衣材の付着も少なく作業性良好。
3:衣材が肉の表面でだま状になり不均一に付着し、余計な衣材が手に付着しやすい。
2:衣材が粘土状になって手にこびりつき、作業性不良。
1:衣材が粘土状になって手に多くこびりつき、作業性が非常に不良。
〔衣の食感〕
5:衣の内側はふわりとし、表面は極めてサクサクしている。
4:衣の内側はふわりとし、表面はサクサクしている。
3:衣の内側はわずかにべたつくものの、表面はサクサクしている。
2:衣の内側はややべたつき、表面のサクミは物足りない。
1:衣の内側はべたつき、表面のサクミはほとんどない。
Figure 0007336511000001
試験例2
試験例1の製造例1と同様の手順で、ただし加熱の温度と時間を表2に示すとおり様々に変えて改質小麦粉を製造し、参考例1の方法で粘度及び分散度を測定した。得られた改質小麦粉を用いて試験例1と同様の手順でとんかつを製造し、作業性と衣の食感を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007336511000002

Claims (4)

  1. 改質小麦粉であって、該改質小麦粉の10質量%水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却したときの該水懸濁液の粘度は1000mPa・s以下であり、かつ該水懸濁液を85℃に昇温した後25℃に冷却し、次いで24時間静置したときの該水懸濁液の分散度は90%以下であって、かつ、該改質小麦粉のα化度が12%以下である、改質小麦粉。
  2. 前記粘度が800mPa・s以下であり、かつ前記分散度が10~80%である、請求項1記載の改質小麦粉。
  3. 水分含量が10~14質量%である、請求項1又は2記載の改質小麦粉。
  4. 水分含量10~14質量%の小麦粉を、密封下で、品温70~170℃で10~80分間加熱処理することを含む、請求項1~のいずれか1項記載の改質小麦粉の製造方法。
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