JP7332878B2 - 溶融金属の注湯装置 - Google Patents
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Description
ロングノズルは、溶融金属排出装置から流下した溶融金属流を取り囲むように配置され、ロングノズルの上端は溶融金属排出装置の下端に接しており、ロングノズルの下端は中間容器内に収容した溶融金属中に浸漬する位置に設けられる。
また、ロングノズルからの落下流がロングノズル直下のタンディッシュ底部に衝突することでロングノズル直下の底部耐火物が局所的に損耗してしまう。これを回避するためにロングノズル直下の耐火物のみ構造や組成が異なるようにタンディッシュは設計・組立施工されているが、その分、タンディッシュ施工のコストアップにつながる。
ところが、取鍋底部からタンディッシュ容器内の湯面下まで伸びるロングノズルを通る溶鋼は、ロングノズルから流出後も落下のエネルギーを大きく消散することなくタンディッシュ底部に輸送されるので、ロングノズル直下のタンディッシュ底部に衝突した溶鋼流は底部近傍を伝って浸漬ノズルを通して鋳型に流れ込む、いわゆるショートパスを形成してしまう。ショートパスの溶鋼流は短時間で浸漬ノズル部に到達して鋳型内に流入するため、介在物の浮上時間を十分に確保することができず、鋳造された鋳片中の介在物性欠陥が増加してしまう。
タンディッシュ内に堰を設置することでロングノズル使用時のショートパス形成を回避することが可能だが、施工のコストアップにつながる(非特許文献1)。
特許文献3には、取鍋から中間鍋ないしはタンディッシュを経由して連鋳モールドに溶鋼を鋳込む鋳造方法において、取鍋スライディングノズルから粉末を窒素ガスにより流入溶鋼に吹き込み、あるいは断気用ノズル(ロングノズル)からポーラスブリッジを介してArガスを流出溶鋼中に吹き込む鋳造方法が開示されている。不活性ガスを吹き込む場所については、取鍋流出孔近傍がある。
本発明はまた、ロングノズルから中間容器(タンディッシュ)を経由する溶融金属について、気泡を用いた非金属介在物の除去を増進することのできる、溶融金属の注湯装置を提供することを目的とする。
[1]取鍋内に収容された溶融金属を注湯するための注湯装置であって、
取鍋と、取鍋下方には取鍋から流下した溶融金属を収容する中間容器とを有し、前記取鍋の底部には溶融金属排出装置を有し、当該溶融金属排出装置は溶融金属の流量を調整するスライディングゲートを有し、溶融金属排出装置の下方には溶融金属排出装置から流下した溶融金属流を取り囲むようにロングノズルが配置され、当該ロングノズルの上端は前記溶融金属排出装置の下端に接しており、ロングノズルの下端は前記中間容器内に収容した溶融金属中に浸漬する位置に設けられ、
前記スライディングゲートは溶融金属が通過する流路孔が形成された複数のプレートを有し、前記プレートのうちの少なくとも1枚のプレートは摺動が可能なスライド板であり、
それぞれのプレートにおける流路孔は、プレートの表面のうち、通過する溶融金属の上流側に位置する上流側表面に上流側表面開孔を形成し、下流側に位置する下流側表面に下流側表面開孔を形成し、上流側表面開孔図形の重心から下流側表面開孔図形の重心に向く方向を流路軸線方向とし、
プレートの摺動面に垂直な下流方向(以下「摺動面垂直下流方向」という。)と前記流路軸線方向とがなす流路軸線傾斜角度αが5°以上75°以下であり、
前記流路軸線方向を摺動面に投影した方向を摺動面流路軸線方向と呼び、スライディングゲートを閉とするときに前記スライド板を摺動する方向を摺動閉方向と呼び、摺動閉方向に対し、前記摺動面流路軸線方向が、前記摺動面垂直下流方向に見て時計回りになす角度を流路軸線回転角度θ(±180度の範囲)と呼び、当該流路軸線回転角度θは、隣接するプレート間で異なっており、最も上流側のプレートのθをθ1、その一つ下流側のプレートのθをθ2、さらに一つ下流側のプレートのθをθ3と順に番号を付け、ΔθN=θN-θN+1(Nは1以上の整数でプレートの枚数-1まで)として、
角度ΔθNがいずれも10°以上かつ170°未満、又は角度ΔθNがいずれも-170°超かつ-10°以下であることを特徴とする溶融金属の注湯装置。
[2]前記ロングノズルの内部空間は、円筒もしくは矩形の水平断面形状を有し、
スライディングゲートの流路孔の内径をDとして、前記ロングノズルの内径は1.5×D以下であることを特徴とする[1]に記載の溶融金属の注湯装置。
[3]前記溶融金属排出装置と前記ロングノズルの一方又は両方に、溶融金属流に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給装置を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の溶融金属の注湯装置。
[4]スライディングゲートを形成するプレートの数が2枚もしくは3枚でありスライド板が1枚であることを特徴とする[1]から[3]までのいずれか1つに記載の溶融金属の注湯装置。
[5]前記ロングノズルの下端部内周形状は、ロングノズル内壁からロングノズル出口に向かって拡管状形状を有するように成形してなることを特徴とする[1]から[4]までのいずれか1つに記載の溶融金属の注湯装置。
本発明はまた、ロングノズル内の溶融金属流に旋回を付与するとともに不活性ガスを供給することより、不活性ガス気泡及び非金属介在物は旋回流に起因して溶融金属流の中心に集まり、ロングノズルの下端から中間容器内に流出した後、気泡に拘束された非金属介在物は速やかに中間容器内を上昇して溶融金属表面に分離除去される。
液体の旋回流が受ける遠心力場において、液体中に含まれ、液体よりも比重が軽い固体(あるいは気泡)は、重力場における浮力と同様、遠心力場と反対方向に力を受ける。この力を以下、この明細書では向心力と呼ぶ。
ロングノズル11内を通過する溶融金属流17中に含まれる非金属介在物は、溶融金属よりも比重が軽いので、ロングノズル内溶融金属流17の旋回流に起因する向心力によって、溶融金属流17の外周から中心へ移動する。その結果として、ロングノズル11内壁への非金属介在物の付着が低減し、非金属介在物付着起因の地金付きを低減することができる。
ロングノズル内の溶融金属流17を旋回流とした結果として、ロングノズル下端12から下方に向かう溶融金属流速を低減することができる。この結果として第1に、中間容器22底面への衝突負荷が減るので耐火物寿命の延長が実現する。また第2に、タンディッシュ21(中間容器22)内の溶融金属流動において、ロングノズル部から注入孔までの溶鋼流動のショートパス形成を回避して、溶融金属の滞留時間を増加するため非金属介在物浮上時間を確保し、鋳片中の非金属介在物除去効率の向上が実現する。
以下、本発明の詳細について順次説明する。
ここで、従来のスライディングゲートと、吐出流に旋回運動を付与できる本発明のスライディングゲートについて、図1~図11に基づいて説明する。
取鍋20から、スライディングゲート1及びロングノズル11を経由して中間容器22内に溶湯を注湯するに際し、ロングノズル下端を中間容器内の溶湯に浸漬させ、ロングノズルから中間容器内に吐出される吐出流の水平方向成分を定量的に評価するため、1/1スケール水モデル実験装置を用いた粒子画像流速計測法による吐出孔付近の速度分布計測を行った。特に、ロングノズル内径をDUとした時に吐出孔先端から1.0×DUの位置における速度分布に注目し、その位置での水平方向速度成分の平均を「水平方向速度強さ」とした。ここで、溶鋼の流動に関する1/1スケールの水モデル実験は、フルード数Frとレイノルズ数Reが一致している観点から溶鋼流動を十分に再現している。
をα2、下固定板5のαをα3と順に番号を付ける。摺動面流路軸線方向31が摺動面垂直下流方向32に見て時計回りになす角度である流路軸線回転角度θについても同様に、上固定板3、スライド板4、下固定板5それぞれのθをθ1、θ2、θ3と順に番号を付ける。
まず、ロングノズルの出口形状が直管である場合について、スライディングゲート(以下単に「ゲート」とも呼称)の形状が旋回流に及ぼす影響を評価した。表1から明らかなように、ロングノズルと通常ゲートとの組合せ(試験条件C)では垂直方向に大きな吐出流速を示しているが、本発明ゲートとロングノズルの組合せ(試験条件B)では、垂直方向へ流れる流体の速度が小さくなることがわかる。これは、ロングノズルと通常ゲートとの組合せ(試験条件C)で発生しなかった水平方向速度(周方向速度及び半径方向速度)が、ロングノズル内に旋回流を発生させる本発明ゲートとロングノズルの組合せ(試験条件B)で付加されたためだと考えられる。
上記水モデル実験1の条件に加え、溶融金属排出装置位置において注入流中に空気を吹き込む実験を行った。溶融金属排出装置13を構成する下部ノズル14に、四周から貫通孔ノズルを用いて1.0L/minの空気を吹き込む形態の空気供給装置を採用した(図14参照)。ロングノズルを透明材料で構成し、ロングノズル内を充満して流下する水流中の気泡の挙動について観察を行った。
まず、上記水モデル実験1の試験条件C(比較例)と同じ条件において、スライディングノズル中に空気吹き込みを行った。その結果、ロングノズル内に充満する水流中には、ロングノズルの内周に接する位置からロングノズルの内径の中心に至るまで、気泡がまんべんなく分布しつつ水流とともに降下する状況が確認された(図示せず)。
次に、上記水モデル実験1の試験条件B(本発明例)と同じ条件において、スライディングノズル中に空気吹き込みを行った。その結果、ロングノズル内に充満する水流中において、図14に示すように、気泡25はロングノズル11の内径の中心付近に集まって、気柱状の気泡の集合が形成され、その気泡の集合が水流とともに降下する状況が確認された。
そうすると、溶融金属中の非金属介在物は溶融金属流の軸中心に集まり、即ちロングノズルの内周と接する部分(溶融金属流の外周部分)に滞在する非金属介在物が減少し、その結果として、ロングノズル内周に付着する非金属介在物が減少し、非金属介在物起因の地金付着が減少するものと期待される。
タンディッシュを模した中間容器22を準備し、図16に示すように、中間容器22の長手方向一方の端部付近にはロングノズル11を含む注湯装置を設け、中間容器22の長手方向他方の端部付近の底部に出口26を設けている。注湯装置の諸元は水モデル実験1と同じである。注湯装置を経由して中間容器22内に水を供給し、出口26からの水の単位時間当たりの排出流量W(m3/s)を一定に保持しつつ、中間容器内の液面レベルを一定に保持するよう、注湯装置のスライディングゲート1の開度を調整し、流入水量の調整を行った。ロングノズル11から出口26までの長手方向距離をL(m)、長手方向に垂直な断面における中間容器内の液体部分断面積をS(m2)とする。中間容器内の水の流れが、長手方向に向かう完全プラグフローの場合、ロングノズル11から出口26まで水が到達する所要時間(平均滞留時間)t(sec)は、
t=L×S/W
と計算できる。なお、水モデル実験においては、W、L、Sの値は具体的にはそれぞれ概略、W=0.002m3/s、L=2m、S=0.8m2で行った。
第1に、出口26から排出される水中のアクリル粒子の濃度が定常状態に到達した段階で、出口から流出する液を採取し、単位体積当たりのアクリル粒子の濃度を計測した。表2の「水モデル実験3」欄の「相対流出粒子濃度指数」の欄に、比較例Cの粒子濃度を1として規格化した値を記載している。
第2に、アクリル粒子の懸濁液を注入開始した以降、出口26から流出した粒子濃度がピークに達するまでの時間(ピーク到達時間)を計測した。表2の「水モデル実験3」欄の「到達時間比」欄に、ピーク到達時間を前記計算した完全プラグフローの場合の平均滞留時間tで除した値を記載している。
従って、溶鋼系においても、ロングノズル内での旋回流の形成により、ロングノズル出口からの中間容器(タンディッシュ)底部への強烈な鉛直方向落下流を防止し、中間容器内でのショートパス形成を回避して、中間容器内での介在物浮上時間を確保することで、中間容器出口から溶鋼とともに流出する介在物の除去効率向上が期待できる。
ロングノズルの内部空間は、円筒もしくは矩形の水平断面形状とすることができる。
ロングノズル11の内径は、通常はスライディングゲートの流路孔の内径Dと同等あるいはそれよりも大きな内径が用いられる。好ましくは、ロングノズルの内径は1.5×D以下である。ロングノズルの内径が大きすぎると、スライディングノズルで形成し下部ノズル内で維持された旋回流が、ロングノズル内で維持が困難になるが、ロングノズルの内径が1.5×D以下であれば、ロングノズル内の溶融金属流に好適に旋回を付与することができる。
溶融金属排出装置13は、通常は上部ノズル16、スライディングゲート1、下部ノズル14によって構成されている。不活性ガス供給装置15のガス流出部は、上部ノズル16、スライディングゲート1、下部ノズル14のいずれに設けても良い。不活性ガス供給装置15をロングノズル11に設ける場合、実際に操業上可能な位置であれば高さ方向のいずれの位置に設けても良い。不活性ガス供給装置15のうち、溶融金属流と接する部分については、ポーラスプラグ、あるいは金属管ノズルとすることができる。吹き込む不活性ガスとしては、Arガスを好適に用いることができる。
2 プレート
3 上固定板
4 スライド板
5 下固定板
6 流路孔
7u 上流面(上流側表面)
7d 下流面(下流側表面)
8u 上流開孔(上流側表面開孔)
8d 下流開孔(下流側表面開孔)
9u 上流開孔重心(上流側表面開孔図形重心)
9d 下流開孔重心(下流側表面海溝図面重心)
10 流路軸線方向
11 ロングノズル
12 ロングノズル下端
13 溶融金属排出装置
14 下部ノズル
15 不活性ガス供給装置
16 上部ノズル
17 溶融金属流
18 流線
19 吐出流
20 取鍋
21 タンディッシュ
22 中間容器
23 溶融金属
24 溶融金属表面
25 気泡
26 出口
30 摺動面
31 摺動面流路軸線方向
32 摺動面垂直下流方向
33 摺動閉方向
α 流路軸線傾斜角度
θ 流路軸線回転角度
Claims (5)
- 取鍋内に収容された溶融金属を注湯するための注湯装置であって、
取鍋と、取鍋下方には取鍋から流下した溶融金属を収容する中間容器とを有し、前記取鍋の底部には溶融金属排出装置を有し、当該溶融金属排出装置は溶融金属の流量を調整するスライディングゲートを有し、溶融金属排出装置の下方には溶融金属排出装置から流下した溶融金属流を取り囲むようにロングノズルが配置され、当該ロングノズルの上端は前記溶融金属排出装置の下端に接しており、ロングノズルの下端は前記中間容器内に収容した溶融金属中に浸漬する位置に設けられ、
前記スライディングゲートは溶融金属が通過する流路孔が形成された複数のプレートを有し、前記プレートのうちの少なくとも1枚のプレートは摺動が可能なスライド板であり、
それぞれのプレートにおける流路孔は、プレートの表面のうち、通過する溶融金属の上流側に位置する上流側表面に上流側表面開孔を形成し、下流側に位置する下流側表面に下流側表面開孔を形成し、上流側表面開孔図形の重心から下流側表面開孔図形の重心に向く方向を流路軸線方向とし、
プレートの摺動面に垂直な下流方向(以下「摺動面垂直下流方向」という。)と前記流路軸線方向とがなす流路軸線傾斜角度αが5°以上75°以下であり、
前記流路軸線方向を摺動面に投影した方向を摺動面流路軸線方向と呼び、スライディングゲートを閉とするときに前記スライド板を摺動する方向を摺動閉方向と呼び、摺動閉方向に対し、前記摺動面流路軸線方向が、前記摺動面垂直下流方向に見て時計回りになす角度を流路軸線回転角度θ(±180度の範囲)と呼び、当該流路軸線回転角度θは、隣接するプレート間で異なっており、最も上流側のプレートのθをθ1、その一つ下流側のプ
レートのθをθ2、さらに一つ下流側のプレートのθをθ3と順に番号を付け、ΔθN=θN-θN+1(Nは1以上の整数でプレートの枚数-1まで)として、
角度ΔθNがいずれも10°以上かつ170°未満、又は角度ΔθNがいずれも-170°超かつ-10°以下であることを特徴とする溶融金属の注湯装置。 - 前記ロングノズルの内部空間は、円筒もしくは矩形の水平断面形状を有し、
スライディングゲートの流路孔の内径をDとして、前記ロングノズルの内径は1.5×D以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属の注湯装置。 - 前記溶融金属排出装置と前記ロングノズルの一方又は両方に、溶融金属流に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給装置を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溶融金属の注湯装置。
- スライディングゲートを形成するプレートの数が2枚もしくは3枚でありスライド板が1枚であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の溶融金属の注湯装置。
- 前記ロングノズルの下端部内周形状は、ロングノズル内壁からロングノズル出口に向かって拡管状形状を有するように成形してなることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の溶融金属の注湯装置。
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