JP7329110B1 - 鉄骨ブレースの端部構造及びその構築方法 - Google Patents

鉄骨ブレースの端部構造及びその構築方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構造で首折れ座屈の発生を防ぐことができ、建物などの地震時の安全性を高めることができるようになる鉄骨ブレースの端部構造を提供する。【解決手段】鋼管ブレース1の端面11から延伸される接合片12がガセットプレート2に重ねられてボルト接合される鉄骨ブレースの端部構造である。そして、ガセットプレートに重ねて固定されるベース部31と、ベース部から鉄骨ブレースの端面に向けて延伸されるリブ部32と、リブ部の端部に形成される端面に接触させる当接部33とを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄骨ブレースの端面から延伸される接合片がガセットプレートに重ねられてボルト接合される鉄骨ブレースの端部構造及びその構築方法に関するものである。
駅舎や駐車場などの鋼構造建物では、平板割込み形式で一面せん断接合された鋼管ブレースが多く採用されている。図15(a)は、この鋼管ブレースが、鋼構造建物の梁や柱側に取り付けられたガセットプレートに接合される端部構造を拡大して示している。
こうした鋼管ブレースの端部においては、割込みプレートがガセットプレートに向けて延伸され、ガセットプレートに重ねられた割込みプレートの接合片は、ボルトによってガセットプレートに接合される。
ここで、図15(a)に示すように、鋼管ブレースの軸力Pは、ガセットプレートに対して、割込みプレートとガセットプレートの板厚に応じて発生する偏心距離eだけずれた偏心が生じた状態で作用する。
このため、このような一面せん断接合の場合、偏心曲げモーメントMe(=P×e)が発生し、図15(b)に示すように曲げ変形が起きて、最終的にはガセットプレートと割込みプレートが早期に座屈(以下、「首折れ座屈」という。)することがある。首折れ座屈が起きると、設計で想定している鋼管ブレースの座屈(以下、「全体座屈」という。)による耐力より低い耐力で崩壊することになるので、充分な耐震性能が得られない可能性がある(特許文献1の段落0006など参照)。
特開2017-203311号公報
しかしながら、こうした首折れ座屈が発生する可能性のある鉄骨ブレースは、既設の鋼構造建物などの各所で供用されており、簡単な方法で効率的に補強可能な補強構造や補強方法が求められている。
そこで本発明は、簡単な構造で首折れ座屈の発生を防ぐことができ、建物などの地震時の安全性を高めることができるようになる鉄骨ブレースの端部構造及びその構築方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の鉄骨ブレースの端部構造は、鉄骨ブレースの端面から延伸される接合片がガセットプレートに重ねられてボルト接合される鉄骨ブレースの端部構造であって、前記ガセットプレートに重ねて固定されるベース部と、前記ベース部から前記鉄骨ブレースの前記端面に向けて延伸されるリブ部と、前記リブ部の端部に形成される前記端面に接触させる当接部とを備えたことを特徴とする。
ここで、前記ベース部には前記接合片と前記ガセットプレートとを接合するボルトの軸部が挿通可能な穴が穿孔されており、前記接合片、前記ガセットプレート及び前記ベース部は前記ボルトによって一体化される構成とすることができる。
また、前記ベース部には前記接合片と前記ガセットプレートとを接合するボルトの頭部が挿通可能な穴が穿孔されており、少なくとも前記ベース部及び前記ガセットプレートをまとめて挟持するクリップを備えている構成であってもよい。
また、鉄骨ブレースの端部構造の構築方法の発明は、上記に記載の鉄骨ブレースの端部構造の構築方法であって、前記ベース部と前記リブ部と前記当接部とが一体になった補強部材を、前記ベース部の前記穴に前記ボルトの頭部を通して前記ガセットプレートに重ねる工程と、少なくとも前記ベース部及び前記ガセットプレートをまとめて前記クリップで挟持する工程と、前記クリップを所定の力で締め付ける工程とを備えている。
このように構成された本発明の鉄骨ブレースの端部構造では、ガセットプレートに重ねて固定されるベース部から鉄骨ブレースの端面に向けてリブ部が延伸されており、リブ部の端部に設けられた当接部を、鉄骨ブレースの端面に接触させる。
このような簡単な構造は、既存の鉄骨ブレースの端部においても、容易に設けることができる。そして、地震などによる外力の作用で鉄骨ブレースの端部において曲げ変形が発生しそうになっても、鉄骨ブレースの端面が当接部に当たって曲げ変形が起きないので、首折れ座屈の発生を防ぐことができる。この結果、建物などの地震時の安全性を高めることができるようになる。
ここで、ベース部の固定は、接合片とガセットプレートとを接合させていた既存のボルトを利用して行うことができる。また、ベース部及びガセットプレートをまとめて挟持するクリップを利用することもできる。
また、鉄骨ブレースの端部構造の構築方法の発明は、既存のボルトを外す必要がないので、鋼構造建物等に仮ブレースを配置するなどの仮補強作業が不要になるだけでなく、鋼構造建物に不安定な状態を発生させることなく、安全に補強工事を行うことができる。
本実施の形態の鋼管ブレースの端部構造の構成を示した説明図である。 鋼管ブレースが使用される建物の構造を例示する側面図である。 1列のボルトが配置される場合の鋼管ブレースの端部構造を説明する平面図である。 1列のボルトが配置される場合のリブ部のリブ高さと鋼管ブレースの鋼管外径との関係を示した説明図である。 補強部材の構成を例示した説明図である。 2列のボルトが配置される場合の鋼管ブレースの端部構造を説明する平面図である。 2列のボルトが配置される場合のリブ部のリブ高さと鋼管ブレースの鋼管外径との関係を示した説明図である。 補強部材による補強効果を数値解析によって確認した結果を示した説明図である。 補強部材による補強効果を構造実験によって確認した結果を示した図であって、(a)は無補強の場合の実験結果の説明図、(b)は補強部材による補強を行った場合の実験結果の説明図である。 実施例1の鋼管ブレースの端部構造の構成を説明する分解斜視図である。 1列のボルトが配置される場合の鋼管ブレースの端部構造を説明する斜視図である。 実施例1の2列のボルトが配置される場合の鋼管ブレースの端部構造の構成を説明する分解斜視図である。 2列のボルトが配置される場合の鋼管ブレースの端部構造を説明する斜視図である。 実施例1の補強部材を配置した数値解析の結果を示した図であって、(a)は1列のボルトが配置される場合の解析結果の説明図、(b)は2列のボルトが配置される場合の解析結果の説明図である。 鋼管ブレースの端部構造に発生する首折れ座屈を説明する図であって、(a)は作用する力と偏心曲げモーメントの説明図、(b)は偏心曲げモーメントの作用によって生じる曲げ変形の説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造の構成を示した説明図である。一方、図2は、鋼管ブレース1が取り付けられた建物Mの構造を例示した側面図である。
図2に示した建物Mは、鉄骨造の架構構造を備えた鋼構造建物であり、その架構構造に鋼管ブレース1が取り付けられた例を示している。この図に示した建物Mは、鉄骨製の柱M1及び梁M2によって架構構造が構築されている。
また、梁M2には、複数のガセットプレート2が設けられている。そして、ガセットプレート2,2間には、鉄骨ブレースである鋼管ブレース1の端部が、それぞれボルト固定される。図2では、2本の鋼管ブレース1が側面から見てV字状に配置されており、建物Mの強度及び剛性を増加させることで耐震性や制振性を高めている。
図1は、鉄骨ブレースである鋼管ブレース1の端部を拡大して示した説明図である。一方、図3,4は、鋼管ブレース1の端部構造の詳細な構成を説明するための説明図である。本実施の形態で説明する鋼管ブレース1は、鉄骨である鋼管を本体とする軸力材である。
この鋼管ブレース1の端部には、割込みプレートが平板割込み形式で設けられており、鋼管の内部に挿し込まれる部分を割込み部121とし、鋼管ブレース1の端面11からガセットプレート2側に張り出される部分を接合片12と呼ぶこととする。
鋼管ブレース1の端面11は、例えば鋼管に蓋のように取り付けられた円形の鋼板によって形成される。端面11の外径は、例えば図1,3に示すように、鋼管の外径より一回り大きくする。
この鋼管ブレース1の端面11から張り出される割込みプレートの接合片12は、図1に示すように、ガセットプレート2の一面に重ねられて、ボルト4によって接合される。図3は、接合片12とガセットプレート2とを接合するボルト4が、1列で配置される場合を示している。この図には、台形状のガセットプレート2に長方形状の接合片12が重ねられてボルト4で接合された鋼管ブレース1の端部構造が図示されている。
本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造では、この割込みプレートの接合片12とガセットプレート2との接合箇所に、補強部材3が配置される。補強部材3は、ガセットプレート2に重ねて固定されるベース部31と、ベース部31から鋼管ブレース1の端面11に向けて延伸されるリブ部32と、リブ部32の端部に形成される当接部33とを備えている。
ベース部31は、例えば長方形の鋼板によって形成される。ベース部31は、少なくともボルト4が配置される範囲のガセットプレート2に重ねられるので、図5に示すように、ボルト4の軸部を通す穴311が穿孔される。この図5では、穴311を丸穴として図示しているが、ベース部31の位置の微調整が可能となるように、鋼管ブレース1の軸方向に長い長穴とすることもできる。
図3,5に示した補強部材3のベース部31は、ガセットプレート2に重ねられる接合片12の投影形状とほぼ同じ形状に成形されている。そして、このベース部31に対して、一対のリブ部32を取り付ける。
すなわちリブ部32は、図3に示すように、1列に配置されたボルト4を挟んで平行にベース部31に溶接などによって接合される。リブ部32は、ベース部31から鋼管ブレース1の端面11に向けて延伸される。
リブ部32は、長方形状の鋼板などによって形成され、図1に示すように、ベース部31から鋼管ブレース1の端面11に向けて張り出される。このリブ部32の張り出された部分は、ベース部31に接合される部分より高さが高く、ガセットプレート2の端縁と接触する箇所には段差部321が形成される。すなわち、ベース部31とガセットプレート2の板厚分の段差部321が生じることになる。
本実施の形態では、リブ部32は、ベース部31より鋼管ブレース1の軸方向の長さが長く、ベース部31から飛び出したリブ部32の端部には、当接部33が設けられる。詳細には、図5に示すように、一対のリブ部32,32の端部間を繋ぐように、長方形板状の当接部33が架け渡される。この当接部33のリブ部32と反対側の面は、鋼管ブレース1の端面11に接触させる。なお、ベース部31に設ける穴311を長穴とした場合は、補強部材3の位置の微調整ができるようになる。
図1に示すように、地震などの発生によって鋼管ブレース1に作用する軸力(圧縮力)が大きくなって、曲げ変形が起きそうになると、曲げを受ける側となるガセットプレート2側に配置された補強部材3が、反力材として機能することになる。この反力材としての機能を、曲げ変形の初期段階で生じさせようとすれば、当接部33の一面を鋼管ブレース1の端面11に接触(好ましくはメタルタッチ)させておくことが効果的である。
さらに、偏心曲げを受けることによって、補強部材3にはガセットプレート2側に押す方向の力が作用するが、段差部321の引っ掛かりがあることによって、この力に対しても対抗させることができる。
ここで、図4は、リブ部32のリブ高さhと鋼管ブレース1の鋼管外径Dとの関係を示した説明図である。この図に示すように、鋼管ブレース1の鋼管の端部は、鋼管外径Dより直径の大きな円形鋼板によって形成される端面11に覆われているので、リブ部32のリブ高さhがどの程度であっても、曲げ変形に対する反力にはできる。
一方において、リブ部32を充分に機能させようとすれば、鋼管ブレース1の鋼管の肉厚部分をリブ部32が押せる高さにリブ高さhを設定するのが好ましい。例えば、鋼管外径Dの半分程度以上のリブ高さhのリブ部32を設けることが好ましい。
ここで、ガセットプレート2と接合片12との接合は、2列のボルト4によって行われていることもある。そこで、図6,7を参照しながら、2列のボルト4が配置される場合の鋼管ブレース1の端部構造について説明する。
2列のボルト4が配置される場合に取り付けられる補強部材3Aも、ガセットプレート2に重ねて固定されるベース部31Aと、ベース部31Aから鋼管ブレース1の端面11に向けて延伸されるリブ部32と、リブ部32の端部に形成される当接部33とを備えている。
ここで、1列のボルト4が配置される場合の補強部材3との主な違いは、補強部材3Aでは、2列のボルト4の間に1本のリブ部32が設けられる点である。そして、リブ部32の両側のベース部31Aには、ボルト4の位置に合わせて穴311が穿孔される。
図6に示した当接部33は、リブ部32の端部に、リブ部32の延伸方向に直交する方向に向けて長方形の鋼板を取り付けることによって形成されている。なお、リブ部32の先端をそのまま当接部とすることもできるが、当接部33の幅が広い方が、リブ部32の面外変形を抑えることができる。
図7は、2列のボルト4が配置される場合のリブ部32のリブ高さhと鋼管ブレース1の鋼管外径Dとの関係を示した説明図である。この図に示すように、鋼管ブレース1の鋼管の肉厚部分をリブ部32で押せる高さにするためには、鋼管外径Dの半分以上のリブ高さhにすることが望ましい。
次に、本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造の構築方法について説明する。
本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造は、新たに鋼管ブレース1を設置する際の新設時であっても、既設の鋼管ブレース1を補強するために補強部材3,3Aを追加で取り付ける場合であっても適用できる。
以下では、既設の鋼管ブレース1を補強するために補強部材3,3Aを配置する場合の鋼管ブレース1の端部構造の構築方法について説明する。まず、工場や製作ヤードにおいて、鋼板を加工するなどして補強部材3,3Aを製作する。
続いて、仮ブレースなどによって仮補強された建物Mにおいて、ガセットプレート2と割込みプレートの接合片12とを連結していたボルト4とナット42を外す。ボルト4及びナット42を外すと、接合片12とガセットプレート2とに連通するボルト穴が現れる。
次の工程では、そのボルト穴に対して、ガセットプレート2側から補強部材3,3Aを近づけ、ガセットプレート2の一面にベース部31,31Aの一面を接触させる。そして、ボルト穴とベース部31,31Aの穴311にボルト4を通し、ナット42を装着する。
続く工程では、補強部材3,3Aを鋼管ブレース1の軸方向にスライドさせて、当接部33を鋼管ブレース1の端面11に接触させ、ボルト4とナット42を締め付けてベース部31,31Aをガセットプレート2に対して固定させる。
このような本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造の構築方法であれば、溶接や溶断やサンダー掛け等の火気が発生する作業を伴わないため、大掛かりな養生を行わなくても施工中の安全性を確保することができる。
要するに、既設の鋼管ブレース1の端部からボルト4を外して、補強部材3,3Aを配置した後にボルト4を締め直すだけで、首折れ座屈が起きない鋼管ブレース1の端部構造を構築することができる。また、溶接接合をする場合と比べて、ボルト4の締結力を管理するだけでよいので、品質確保が簡易となる。
次に、本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造の作用について説明する。
図8は、補強部材3による補強効果を数値解析によって確認した結果を示した説明図である。
数値解析は、1列のボルト4が配置される場合について、補強部材3を配置しない「無補強」の場合と、リブ部32の高さを変えた複数の補強部材3を配置した「補強後」の場合で行った。FEM解析で設定した鋼管ブレース1の解析モデルの鋼管外径Dは76.3mmで、リブ部32の高さは、25mmから45mmまでの5種類でモデル化した。
この結果、リブ部32の高さがいずれの場合であっても、「無補強」と比べて大幅に座屈が起きるまでの軸力が増加し、補強効果が得られることが分かる。なお、軸力の増加は、破壊モードが首折れ座屈から全体座屈に移行したことを表している。
一方、図9は、補強部材3による補強効果を構造実験によって確認した結果を示した図である。図9(a)は無補強の場合の実験結果を示し、図9(b)は補強部材3による補強を行った場合の実験結果を示している。
図9(a)を見ると、荷重が-50kN程度載荷された時点で座屈が発生しており、首折れ座屈が起きたことが確認できた。これに対して図9(b)では、荷重が-110kNに至るまで座屈が起きず、鋼管ブレース1自体が座屈する全体座屈まで耐力が向上したことが分かる。また、正負交番載荷の荷重変位曲線によって囲まれる面積も大きくなっており、エネルギー吸収能力も高まっていることが分かる。要するに、破壊モードが首折れ座屈から全体座屈となって、補強効果が得られたと言える。
本実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造では、ガセットプレート2に重ねて固定されるベース部31から鋼管ブレース1の端面11に向けてリブ部32が張り出されており、リブ部32の端部に設けられた当接部33を、鋼管ブレース1の端面11に接触させる。
このような簡単な構造は、既存の鋼管ブレース1の端部においても、容易に設けることができる。そして、地震などによる外力の作用で鋼管ブレース1の端部において曲げ変形が発生しそうになっても、鋼管ブレース1の端面11が当接部33に当たって曲げ変形が起きないので、首折れ座屈の発生を防ぐことができる。この結果、建物Mなどの地震時の安全性を高めることができるようになる。
そして、ベース部31の固定は、接合片12とガセットプレート2とを接合させていた既存のボルト4を利用して行うことができる。この際、溶接などの火気を発生させる作業を施工現場で実施しなくてよいので、防火用の大掛かりな養生が必要なく、効率よく補強工事を実施していくことができる。
以下、前記した実施の形態の鋼管ブレース1の端部構造とは別の形態について、図10-図14を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
前記実施の形態では、ガセットプレート2と割込みプレートの接合片12とを接合させるボルト4を利用して補強部材3,3Aを固定する構造について説明したが、本実施例1では、クリップ5を使って補強部材3B,3Cの固定を行う構造について説明する。
図10は、1列のボルト4が配置される場合の実施例1の鋼管ブレース1の端部構造の構成を説明する分解斜視図である。本実施例1では、ガセットプレート2と接合片12とをボルト4で接合させたままの状態で、補強部材3Bの取り付けを行う。
1列のボルト4が配置される場合の補強部材3Bは、ガセットプレート2に重ねて固定されるベース部31Bと、ベース部31Bから鋼管ブレース1の端面11に向けて延伸されるリブ部32と、リブ部32の端部に形成される当接部33とを備えている。
ベース部31Bは、例えばガセットプレート2と同じ平面形状となる台形の鋼板によって形成される。ベース部31Bは、ボルト4が配置されているガセットプレート2に重ねられるので、図10に示すように、ボルト4の頭部41が挿通可能な大きさの穴312が穿孔される。
ベース部31Bに対しては、前記実施の形態と同様に、1列に配置されたボルト4を挟んで一対のリブ部32が平行に取り付けられる。リブ部32は、長方形状の鋼板などによって形成され、ベース部31Bから鋼管ブレース1の端面11に向けて張り出される。図10に示すように、リブ部32の張り出された部分は、ベース部31Bに接合される部分より高さが高く、ガセットプレート2の端縁と接触する箇所には段差部321が形成される。すなわち、ベース部31Bとガセットプレート2の板厚分の段差部321が生じることになる。
そして、ベース部31Bから飛び出した一対のリブ部32,32の端部間を繋ぐように、長方形板状の当接部33が架け渡される。この当接部33のリブ部32と反対側の面は、鋼管ブレース1の端面11に接触させることになる。
本実施例1では、補強部材3Bのベース部31Bをガセットプレート2に固定するために、複数のクリップ5を使用する。クリップ5は、万力の本体のように側面視コ字状に形成された本体部51と、本体部51の上下の張り出しにねじ込まれる一対の締付けネジ52とを備えている。締付けネジ52の先端には凹凸状に歯が設けられていて、ベース部31Bやガセットプレート2の表面に食い込ませることができる。
図11は、補強部材3Bの両側に2個ずつ、合計4個のクリップ5によって補強部材3Bが固定された鋼管ブレース1の端部構造を説明する斜視図である。クリップ5は、少なくともベース部31B及びガセットプレート2をまとめて挟持する。クリップ5の取付け箇所によっては、ベース部31B、ガセットプレート2及び接合片12をまとめて挟持していてもよい。
一方、図12及び図13は、2列のボルト4が配置される場合の実施例1の鋼管ブレース1の端部構造を説明するための斜視図である。2列のボルト4が配置される場合に取り付けられる補強部材3Cも、ガセットプレート2に重ねて固定されるベース部31Cと、ベース部31Cから鋼管ブレース1の端面11に向けて延伸されるリブ部32と、リブ部32の端部に形成される当接部33Cとを備えている。
ベース部31Cは、例えばガセットプレート2と同じ平面形状となる台形の鋼板によって形成される。またこの例では、リブ部32の張り出した側の端面が、そのまま当接部33Cになっている。
次に、本実施例1の鋼管ブレース1の端部構造の構築方法について説明する。
本実施例1の鋼管ブレース1の端部構造は、新たに鋼管ブレース1を設置する際の新設時であっても、既設の鋼管ブレース1を補強するために補強部材3B,3Cを追加で取り付ける場合であっても適用できる。
以下では、既設の鋼管ブレース1を補強するために補強部材3B,3Cを配置する場合の鋼管ブレース1の端部構造の構築方法について説明する。まず、工場や製作ヤードにおいて、鋼板を加工するなどして補強部材3B,3Cを製作する。
続いて、既存の建物Mの鋼管ブレース1の端部に補強部材3B,3Cを取り付けることになるが、実施例1では、ガセットプレート2と割込みプレートの接合片12とを接合するボルト4とナット42を外さないので、仮ブレースなどによって建物Mを仮補強する必要がない。また、ボルト4が錆などによって固着していても、外す必要がないので、問題にならない。
次の工程では、そのボルト4の頭部41に対して、ガセットプレート2側から補強部材3B,3Cを近づけ、ベース部31B,31Cの穴312にボルト4の頭部41を通すことで、ガセットプレート2の一面にベース部31B,31Cの一面を接触させて重ねる。
続く工程では、少なくともベース部31B,31C及びガセットプレート2をまとめて、位置によってベース部31B,31C、ガセットプレート2及び接合片12をまとめて、複数のクリップ5で挟持する。
このクリップ5の対向する一対の締付けネジ52による締め付けは、設計時に決められた所定の力で行われる。要するに、偏心曲げに抵抗させるための反力を、クリップ5の締付け力に応じてベース部31B,31Cとガセットプレート2との間で生じる摩擦力によって確保する必要がある。
そこで、クリップ5によって確保すべき締付け力の大きさについて検討する。上述したように、クリップ5を用いて補強部材3B,3Cの固定を行う場合、補強部材3B,3Cが滑り出さない適切な締付け力を、クリップ5によって与える必要がある。そこで、クリップ5を使用した場合の補強効果を確認するために、数値解析を行った。
ここで、補強部材3B,3Cに滑りが起きる力Ffの大きさが、首折れ座屈が起きるときに補強部材3B,3Cを押す力Fより小さいと、首折れ座屈が発生することになる。したがって、補強部材3B,3Cを滑らせないためには、クリップ5の必要締付け力Nの大きさを、Ff /μ(ここに、μは鋼材同士の摩擦係数)より大きくする必要がある。この補強部材3B,3Cに滑りが起きる力Ffは、一般的に使用される鋼管ブレース1の鋼管外径Dとボルト列を対象としたFEM解析によるパラメトリックスタディによって求めることができる。
図14は、実施例1の補強部材3B,3Cを配置した数値解析の結果を示した図である。図14(a)は、1列のボルト4が配置される補強部材3Bを使用した場合の解析結果を示し、図14(b)は2列のボルト4が配置される補強部材3Cを使用した場合の解析結果を示している。
ここで、1列のボルト4が配置される場合の解析モデルは、鋼管外径Dが76.3mm(肉厚2.8mm)で、鋼管ブレース1の長さは2000mmから4000mmで設定した。一方、2列のボルト4が配置される場合の解析モデルについては、鋼管外径Dが76.3mm(肉厚2.8mm)で鋼管ブレース1の長さが2000mmから4000mm、鋼管外径Dが114.3mm(肉厚3.5mm)で鋼管ブレース1の長さが2500mmから5000mm、鋼管外径Dが139.8mm(肉厚4.5mm)で鋼管ブレース1の長さが3500mmから6000mmで設定して解析を行った。
図14(a),(b)では、横軸をNcr(全体座屈荷重(kN))/Ny(鋼管の降伏耐力(kN))という無次化した値とし、縦軸をFmax(補強部材3B,3Cに滑りが起きる力Ffを安全側に評価できる値(kN))とし、解析結果をプロットした。
そして、解析結果のプロットに基づいて求められる回帰分析結果となる回帰直線を、安全側に移動させて設計式を導いた。その結果、1列のボルト4が配置される場合は、Fmax=101×Ncr/Ny-10という関係式が導き出され、2列のボルト4が配置される場合は、Fmax=135×Ncr/Ny-10という関係式が導き出された。
このように構成された本実施例1の鋼管ブレース1の端部構造及びその構築方法では、ベース部31B,31C及びガセットプレート2をまとめて挟持するクリップ5を補強部材3B,3Cの固定に利用する。
このため、鋼管ブレース1の端部構造の構築方法を、ガセットプレート2と接合片12とを接合している既存のボルト4を外すことなく実施できるので、建物Mに仮ブレースなどを配置する補強作業が不要になるだけでなく、建物Mに一時的でも不安定な状態を発生させることなく、安全に補強工事を行うことができる。
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態及び実施例1では、円形鋼管が鉄骨ブレースとなる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本実施の形態の鉄骨ブレースの端部構造は、山形鋼、溝形鋼などによって形成される鉄骨ブレースにも適用することができる。
また、前記実施の形態では、鋼管ブレース1を鉄骨造の建物Mに適用する例を示したが、これに限定されるものではなく、本実施の形態の鉄骨ブレースの端部構造は、駅舎や駐車場などの鋼構造建物、鋼橋等の土木構造物にも適用することができる。
さらに、前記実施の形態及び実施例1では、補強部材3,3A-3Cを火気を伴わない方法でガセットプレート2に固定する例を示したが、これに限定されるものではなく、補強部材のベース部を溶接などによってガセットプレート2に固定することもできる。
1 :鋼管ブレース(鉄骨ブレース)
11 :端面
12 :接合片
2 :ガセットプレート
3,3A-3C:補強部材
31,31A-31C:ベース部
311 :穴
312 :穴
32 :リブ部
33,33C:当接部
4 :ボルト
41 :頭部
5 :クリップ
42 :ナット

Claims (4)

  1. 鉄骨ブレースの端面から延伸される接合片がガセットプレートに重ねられてボルト接合される鉄骨ブレースの端部構造であって、
    前記ガセットプレートに重ねて固定されるベース部と、
    前記ベース部から前記鉄骨ブレースの前記端面に向けて延伸されるリブ部と、
    前記リブ部の端部に形成される前記端面に接触させる当接部とを備えたことを特徴とする鉄骨ブレースの端部構造。
  2. 前記ベース部には前記接合片と前記ガセットプレートとを接合するボルトの軸部が挿通可能な穴が穿孔されており、前記接合片、前記ガセットプレート及び前記ベース部は前記ボルトによって一体化されることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨ブレースの端部構造。
  3. 前記ベース部には前記接合片と前記ガセットプレートとを接合するボルトの頭部が挿通可能な穴が穿孔されており、少なくとも前記ベース部及び前記ガセットプレートをまとめて挟持するクリップを備えていることを特徴とする請求項1に記載の鉄骨ブレースの端部構造。
  4. 請求項3に記載の鉄骨ブレースの端部構造の構築方法であって、
    前記ベース部と前記リブ部と前記当接部とが一体になった補強部材を、前記ベース部の前記穴に前記ボルトの頭部を通して前記ガセットプレートに重ねる工程と、
    少なくとも前記ベース部及び前記ガセットプレートをまとめて前記クリップで挟持する工程と、
    前記クリップを所定の力で締め付ける工程とを備えたことを特徴とする鉄骨ブレースの端部構造の構築方法。
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