以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るトイレ用音声案内装置を設置したトイレ室を模式的に表す斜視図である。
図1に示すように、トイレ用音声案内装置10は、トイレ室TRに設置して使用される。トイレ用音声案内装置10は、トイレ室TRに関する情報を音声で案内する。これにより、外国人や目の不自由な方など、トイレ室TRの使い方が分からずに不安な方にも、安心してトイレ室TRを使用させることができる。そして、トイレ用音声案内装置10は、人体検知センサ50、音声入力部52、音声出力部53、および制御部54を有している。
トイレ室TRは、例えば公共施設のトイレ室である。トイレ室TRは、多目的トイレや多機能トイレなどの独立した1つの部屋である。トイレ室TRは、パーティションなどで仕切られた状態で1つの部屋に並べて設けられる、いわゆるトイレブースでもよい。
トイレ室TRには、トイレ用音声案内装置10の他に、例えば大便器12、手洗器16、18、ベビーチェア20、小便器22、および汚物流しユニット24などの機器が設置されている。また、図示しない手洗い乾燥機やベビーシートなどの機器が設けられていてもよい。但し、トイレ室TRに設置される機器は、これらに限ることなく、任意の機器でよい。これら機器は、例えばトイレ室TRの壁側に設けられたライニング30に並んで配設されている。そして、これら機器が配設されていない壁側には、トイレ室TRの出入口1が形成されている。この出入口1には、開閉式のドア2が設けられている。
大便器12は、下方に向けて窪んだボウル部を有する便器本体13と、便器本体13の上に取り付けられた便座装置14とを備えている。便器本体13は、ボウル部において使用者Uの尿や便などの排泄物を受ける。すなわち、大便器12は、洋式腰掛大便器である。便座装置14は、便器本体13に対して一体的に取り付けてもよいし、便器本体13に対して着脱可能に取り付けてもよい。便座装置14は、例えば使用者Uの「おしり」などの洗浄を実現する身体洗浄機能部などを有する。すなわち、便座装置14は、衛生洗浄装置である。便座装置14の上方には、使用者Uの背もたれ15が設けられている。
手洗器16、18は、大便器12や小便器22で用を足した使用者などが手を洗うものである。ベビーチェア20は、大便器12の側方に設けられ、保護者が大便器12などを利用する際などに、一時的に乳幼児を座らせておけるようにするための椅子である。また、小便器22は、使用者Uの尿を受けるもので、ベビーチェア20の側方に設けられている。そして、汚物流しユニット24は、小便器22の側方に設けられ、オストメイトの方が排泄物などの汚物を処理するための器具である。
また、トイレ室TRには、出入口1に対向する壁側にライニング30が設けられている。ライニング30は、キャビネットやケーシングなどと呼ばれる場合もある。ライニング30には、大便器12、背もたれ15、手洗器16、18、ベビーチェア20、小便器22、および汚物流しユニット24などの機器が設けられている。
また、ライニング30のうち、大便器12側を向く側面には、呼出ボタン32、操作リモコン34、便器洗浄ボタン36などの操作部が設けられている。呼出ボタン32は、緊急時などに異常事態の発生を外部に連絡するための操作部である。操作リモコン34は、身体洗浄機能部の動作などを便座装置14に指示するための操作部である。操作リモコン34は、例えば止めボタン、おしり洗浄ボタン、ビデ洗浄ボタンなどの複数の操作ボタンを有する。便器洗浄ボタン36は、大便器12を洗浄するための操作部である。便器洗浄ボタン36を操作することにより、大便器12のボウル部に洗浄水が供給され、大便器12のボウル部が洗浄される。
ライニング30の大便器12側を向く側面には、トイレットペーパーを保持するための紙巻器38がさらに設けられている。紙巻器38は、大便器12に着座した使用者Uの手が届く範囲に配置されている。紙巻器38は、例えば便器洗浄ボタン36の下方に配置されている。
図2は、トイレ用音声案内装置を表すブロック図である。
トイレ用音声案内装置10は、音声入力部52、音声出力部53、人体検知センサ50、および制御部54を備えている。それに加えて、トイレ用音声案内装置10は、着座検知センサ51を有している。人体検知センサ50、着座検知センサ51、音声入力部52、音声出力部53、および制御部54は、ケーシング40内に設けられた1つのユニットとして構成されている。トイレ用音声案内装置10は、例えば大便器12の周辺に設けられている。具体的には、トイレ用音声案内装置10は、使用者Uが大便器12に着座したときの左側方にずらした位置に設けられている。
人体検知センサ50は、ケーシング40内に設けられている。この人体検知センサ50は、トイレ室TRの使用者Uを検知するもので、本発明のセンサを構成している。人体検知センサ50は、使用者Uのトイレ室TRへの入室、使用者Uの大便器12の近傍への移動、および使用者Uのトイレ室TRからの退室などの使用者Uの特定の状態を検知する。なお、人体検知センサ50の検知する使用者Uの状態は、上記に限ることなく、使用者Uの任意の状態でよい。
人体検知センサ50には、例えばマイクロ波センサを用いることができ、出入口1に向けて電波を照射している。なお、人体検知センサ50は、例えば赤外線投受光式の測距センサ、焦電センサなどを用いてもよい。人体検知センサ50は、1つのセンサなどで構成してもよいし、複数のセンサなどを組み合わせて構成してもよい。人体検知センサ50は、例えば使用者Uの複数の状態に対応した複数のセンサなどを有してもよい。人体検知センサ50は、制御部54に接続され、使用者Uの検知結果を制御部54に向けて出力する。
着座検知センサ51は、ケーシング40内に設けられている。この着座検知センサ51は、使用者Uが大便器12に着座する直前において便器本体13の上方に存在する人体や、便器本体13に着座した使用者Uを検知することができる。このような着座検知センサ51としては、例えば赤外線投受光式の測距センサを用いることができる。なお、着座検知センサ51は、例えばマイクロ波センサ、焦電センサなどを用いてもよい。着座検知センサ51は、使用者Uの着座の検知に応答して、着座の検知を表す信号を制御部54に出力する。
音声入力部52は、ケーシング40内に設けられている。この音声入力部52は、使用者Uが発した音声を集音するマイクロフォン(マイク)である。音声入力部52は、制御部54に接続され、集音した音声データ(使用者Uが発した音声信号)を制御部54に出力する。
音声出力部53は、ケーシング40に設けられている。この音声出力部53は、例えばスピーカであり、音声を出力するものである。音声出力部53は、制御部54に接続され、制御部54から出力される指令信号に基づき、特定の音声をトイレ室TR内に出力する。この場合、特定の音声とは、使用者Uにより選択された言語でのトイレ室TR内の機器の説明や注意事項などである。
制御部54は、例えばマイクロコンピュータからなり、トイレ室TRの音声案内の制御処理を行う。制御部54は、音声入力部52に入力された音声を識別するとともに、識別した音声に基づいて所定の言語を設定し、所定の言語で音声出力部53から室内用音声を出力させる。また、制御部54は、人体検知センサ50の検知に基づいて、室内用音声の言語を選択させる旨の情報を音声出力部53から発信させる制御を行う。このために、制御部54は、音声案内の制御処理を行うためのプログラムが記憶されたROM、RAMなどの記憶部55を有している。
所定の言語とは、例えば英語、中国語、韓国語、および日本語などであり、トイレ室TRのガイドが可能な言語をいう。なお、所定の言語は、これに限らず例えばフランス語、イタリア語などの他の言語を含んでいてもよい。室内用音声とは、トイレ室TRの種々の機器の配置や使用方法や注意情報である。一例を挙げると、「便器洗浄ボタンは、トイレットペーパの上方にあります。」などの操作部の使用方法であったり、「トイレットペーパーをゴミ箱に捨てずに、大便器に流して下さい。」などの注意喚起であったりする。
そして、室内用音声の言語を選択させる旨の情報とは、例えば「英語、中国語、韓国語、日本語から言語を選択してください。」という案内を複数の言語(英語、中国語、韓国語、日本語など)でそれぞれ案内するということや、「言語識別を行って音声案内を行います。」という案内を1ヶ国語または複数の言語でそれぞれ案内すること、「言語を選択してください。」という案内を1ヶ国語または複数の言語でそれぞれ案内すること、の少なくとも何れかを含むものである。すなわち、室内用音声の言語を選択させる旨の情報には、直接的に言語選択を促す場合に限らず、言語識別ができることを使用者に認識させることができるようなものも含まれている。
制御部54は、使用者の発声に基づき、室内用音声の言語を英語、中国語、韓国語、および日本語から設定する。すなわち、制御部54は、使用者Uが何語でトイレ室TRの案内を望んでいるかを判定する。一例を挙げると、使用者Uが「イングリッシュ」や「エイゴ」と発声した場合には、制御部54は使用者Uが英語での案内を望んでいると判定する。そして、制御部54は、使用者Uがトイレ室TRから退室するまでは音声出力部53から英語で室内用音声(案内)を発信させる。
この場合、制御部54は、人体検知センサ50がトイレ室TRへの入室を検知してから所定時間経過後に、音声出力部53から室内用音声の言語を選択させる旨の情報を発信する。この所定時間は、使用者Uがトイレ室TRに入室してからドア2が閉じるまでの時間や目の不自由な人などの準備期間であり、実験、シミュレーションなどにより設定することができる。所定時間は、記憶部55に格納されており、例えば3~5秒程度に設定することができる。
これにより、制御部54は、トイレ室TRのドア2が閉まった後に音声出力部53から室内用音声の言語を選択させる旨の情報を発信させる。従って、トイレ室TRの外部からのノイズ(騒音)が遮断され、使用者Uに効率よく音声案内を認識させることができるとともに、使用者Uの発声を効率よく音声入力部52に入力させることができる。また、目の不自由な人などに準備期間を設けることができるので、落ち着いてトイレ室TRを使用してもらうことができる。
制御部54の記憶部55には、室内用音声の言語を選択させるために音声出力部53から発信される複数の入力言語と、複数の入力言語にそれぞれ紐づけられ音声出力部53から発信されない複数の隠し言語と、が格納されている。そして、制御部54は、言語を選択させる旨の情報を音声出力部53から発信した後、複数の入力言語または複数の隠し言語のいずれかの入力に基づいて、所定の言語を設定する。
この場合、入力言語とは、使用者に発声させるための直接的な言語で、音声出力部53から発信されるものである。一方、隠し言語とは、入力言語に対応する間接的な言語で、音声出力部53からは発信されないものである。入力言語と隠し言語とは、紐づけられて記憶部55に格納(記憶)されている。
一例を挙げると、音声出力部53から、例えば英語により「Please select your language and say English, Chinese, Korean, or Japanese.」と使用者Uに発声を促したときには、「English(イングリッシュ)」や「Japanese(ジャパニーズ)」が入力言語となる。そして、隠し言語は、例えば「English(イングリッシュ)」に紐付けられた「Hello(ハロー)」や「Hi(ハイ)」であったり、「Japanese(ジャパニーズ)」に紐付けられた「コンニチハ」であったりする。すなわち、制御部54は、使用者Uが「イングリッシュ」と発声した場合のみならず、「ハロー」や「ハイ」と発声した場合にも、英語での案内を設定する。
また、例えば日本語により「英語、中国語、韓国語、日本語から言語を選択してください。」と使用者Uに発声を促したときには、「英語(エイゴ)」や「日本語(ニホンゴ)」が入力言語となる。そして、隠し言語は、例えば「英語(エイゴ)」に対応する「Hello(ハロー)」や「Hi(ハイ)」であったり、「日本語(ニホンゴ)」に対応する「コンニチハ」であったりする。このように、隠し言語は、その言語での挨拶など使用者Uが言語を選択するときに発声しそうなものであり、音声出力部53から出力されない文言となっている。
また、制御部54は、トイレ室TRの使用情報により、室内用音声の言語を選択させる旨の情報を変更する。具体的には、例えば室内用音声の言語を選択させる旨の情報を短くしたり、室内用音声の言語を選択させる旨の情報の順番を変更したりする。また、それ以外にも、複数の言語のうち、長期間選択されていない言語を省略したり、省略した言語を復活させたりしてもよい。この場合、トイレ室TRの使用情報とは、例えばトイレ室TRの使用回数、トイレ用音声案内装置10の設置から所定期間の経過、および言語選択の使用頻度などとすることができる。
制御部54は、トイレ室TRの使用情報により、室内用音声の言語を選択させる旨の情報を短くする。すなわち、トイレ用音声案内装置10がトイレ室TRに設置された最初のうちは、初期設定として言語選択の方法が丁寧な説明となっている。しかし、トイレ室TRの設置期間が長くなり、トイレ用音声案内装置10での言語選択方法の認知度が高くなった場合には、言語選択の長い(丁寧な)説明はわずらわしくなる。このような場合には、各言語での説明を3文節(フレーズ)以内の言語と、入力言語とにより短い音声を発信させるようにする。
一例を挙げると、英語の場合には、例えば初期設定が「Please select your language and say English, Chinese・・・」となっていたものを、「Choose language」+「English, Chinese,・・・」や「Please say」+「English, Chinese,・・・」のように短くすることができる。また、例えば「英語、中国語、韓国語、日本語から言語を選択してください。」と発声していたものを、「何語にしますか?」と短いものにしてもよい。これにより、トイレ室TRへの入室後速やかに、言語選択をさせることができるので、使用者Uがトイレ室TRの機器に移動する前に、言語選択および機器の説明などを効果的に行うことができる。
また、制御部54は、トイレ室TRの使用情報により、室内用音声の言語を選択させる旨の情報の順番を変更する。この場合、例えば言語選択の使用頻度により、言語選択の案内の順番を変えることができる。一例を挙げると、制御部54は、各言語が選択される日時の分布を演算する。そして、例えば月曜日の10時~12時が中国語の選択率が50%以上である場合には、例えば英語、中国語、韓国語、日本語の順番に言語選択の案内をしていたものを、月曜日の10時~12時では中国語、英語、韓国語、日本語の順番に変更する。これにより、多くの使用者Uに速やかに言語選択を促すことができる。
さらに、制御部54は、トイレ室TRの使用情報により、室内用音声の情報を変更する。この場合、トイレ室TRの使用情報とは、例えば出入口1から各機器に移動する使用者Uの移動時間であったり、トイレ室TR内の各機器の使用頻度であったりする。具体的には、制御部54は、例えば使用者Uの入室から大便器12までの移動時間が短い場合(閾値よりも早い場合)には、目が不自由な人が使用者Uではないと判断して、目が不自由な人用の室内用音声(日本語によるガイド)を省略する変更を行う。また、制御部54は、使用頻度の低い機器の説明(室内用音声)を省略したり、省略した機器の説明を復活させたりする。なお、この場合、制御部54は、全ての言語で室内用音声の変更をしたり、言語毎に室内用音声の変更をしたりすることができる。
通信部56は、便座装置14と通信を行う。通信部56は、制御部54と接続されている。通信部56は、制御部54から入力された制御信号を便座装置14に送信するとともに、便座装置14から受信した制御信号を制御部54に入力する。通信部56と便座装置14との間の通信は、有線でもよいし無線でもよい。
便座装置14は、制御部60と、通信部62とを有する。制御部60は、便座装置14の各部を統括的に制御する。制御部60は、操作リモコン34と接続されており、操作リモコン34から入力された操作指示に基づいて各部の動作を制御する。また、制御部60は、呼出ボタン32および便器洗浄ボタン36とも接続される。制御部60は、呼出ボタン32、操作リモコン34、および便器洗浄ボタン36が操作されたことを検出する操作検出部61を有している。制御部60は、操作検出部61が呼出ボタン32、操作リモコン34、および便器洗浄ボタン36の操作を検出した場合に、各機器の操作指示を通信部56、62を介してトイレ用音声案内装置10の制御部54に出力する。なお、操作検出部61は、呼出ボタン32、操作リモコン34、および便器洗浄ボタン36の操作に限らず、トイレ室TRの他の機器の操作を検出してもよい。また、操作検出部61は、制御部60とは別個に設けられていてもよい。
通信部62は、トイレ用音声案内装置10の通信部56と通信する。通信部62は、制御部60と接続され、制御部60から入力された制御信号をトイレ用音声案内装置10に送信するとともに、トイレ用音声案内装置10から受信した制御信号を制御部60に入力する。なお、通信部56、62は、双方向の通信を行うものに限らない。通信部56、62は、少なくとも便座装置14からトイレ用音声案内装置10への制御信号の送信を行えるものであればよい。また、トイレ用音声案内装置10と便座装置14との間の通信が必要ない場合には、通信部56、62は、省略してもよい。通信部56、62は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
このように、トイレ用音声案内装置10の制御部54は、呼出ボタン32、操作リモコン34、便器洗浄ボタン36などのトイレ室TRに設けられた各操作部の操作に関連する情報を受信可能に構成されている。なお、トイレ室TRに設けられる各機器の操作部は、上記に限ることなく、任意の操作部でよい。また、各操作部の操作に関連する情報は、便座装置14を介することなく、各機器(操作部)からトイレ用音声案内装置10に直接的に入力してもよい。この場合、操作検出部61は、トイレ用音声案内装置10に設けられる。制御部54における各操作部の操作に関連する情報の受信方法は、各操作部の操作に関連する情報を適切に受信することができる任意の方法でよい。
そして、制御部54は、例えば操作検出部61が操作リモコン34のおしり洗浄ボタンの操作を検出した場合に、音声出力部53から発信されるおしり洗浄機能の説明を中止する。すなわち、制御部54は、既に使用している機器の説明は不要であると判断して、その使用されている機器の説明を中止する。これにより、室内用音声の説明を短くすることができ、使用者Uの行動に合わせた案内をすることができる。この場合、例えば機器の停止ボタンを押した場合には、誤って操作された場合も考えられるので、その停止ボタンの説明は中止しなくてもよい。また、緊急時に操作される呼出ボタン32は、説明を中止することなく案内を行うようにしてもよい。なお、ここでの「中止」とは、案内中に案内を行っている機器が使用されたら案内を中断することおよび案内を行うまえに機器が使用されたときに、案内予定であった内容を省略すること、の少なくとも何れか一方を含むものである。
本実施形態によるトイレ用音声案内装置10は、上述の如き構成を有するもので、次にトイレ用音声案内装置10の作動について説明する。
図3は、図2中の制御部が行う言語選択の制御を表す流れ図である。
図4は、発声を促すガイドの内容を短くする制御の流れ図である。
図5は、発声を促すガイドの順番を変更する制御の流れ図である。
図6は、室内用音声での機器の説明を省略する制御の流れ図である。
図3~図6に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものとする。また、図3~図6の制御処理は、記憶部55に格納されており、例えばトイレ用音声案内装置10に通電している間、所定の制御周期で繰り返し実行される。
トイレ用音声案内装置10の制御部54は、トイレ室TRの使用情報を取得して種々の学習制御を行い、それに基づき音声案内を変化させている。そこで、まずトイレ用音声案内装置10がトイレ室TRに設置された初期について説明する。また、図3では、言語1~言語4の4つの言語が選択可能な場合について説明する。
S1では、人体検知がされたか否かを判定する。すなわち、制御部54は、トイレ室TRへの入室があるかを、人体検知センサ50の検知により判定する。そして、S1で「YES」、すなわち制御部54がトイレ室TRへの入室を検知したと判定した場合には、S2に進む。一方、S1で「NO」、すなわち制御部54がトイレ室TRへの入室を検知していないと判定した場合には、トイレ室TRへの入室を監視する。
S2では、発声を促すガイド(案内)を実行する。すなわち、制御部54は、入室した使用者Uに対して、室内用音声の言語を選択させる旨の情報を音声出力部53から発信させる。換言すると、制御部54は、使用者Uがトイレ室TRのガイドを何語で望むかを確認する。この場合、音声出力部53からは、例えば英語、中国語、韓国語、日本語の順番(初期設定の順番)で発声を促すガイドを実行する。この初期設定での各言語のガイドは、例えばトイレ室TRの音声案内を行うこと、音声案内の言語が選択可能であること、および発声により言語選択が行われることなどが丁寧に行われるので、比較的長い説明となっている。
なお、制御部54は、人体検知センサ50がトイレ室TRへの入室を検知してから所定時間経過後に、音声出力部53から室内用音声の言語を選択させる旨の情報を発信させてもよい。この所定時間は、トイレ室TRのドア2が閉まるまでの待機時間であったり、目の不自由な人などの準備時間であったりする。これにより、制御部54は、トイレ室TRが密閉空間となってからガイドを実行するので、使用者Uにガイドを聞きやすくさせることができる。
次のS3では、識別された音声は言語1(例えば、英語)か否かを判定する。すなわち、制御部54は、使用者Uが発声した音声が言語1か否かを判定する。この場合、制御部54は、音声出力部53から発信され室内用音声の言語を選択させるために音声入力部52に入力される複数の入力言語と、複数の入力言語にそれぞれ紐づけられ音声出力部53から発信されない隠し言語と、に基づいて音声を識別する。すなわち、制御部54は、音声入力部52に入力された音声と、記憶部55に格納された入力言語および隠し言語とを対応させて言語1か否かを判定する。例えば、使用者Uが「イングリッシュ」、「エイゴ」、および「ハロー」などと発声した場合には、言語1である英語での音声案内を望んでいると判定する。そして、S3で「YES」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語1であると判定した場合には、S4に進む。一方、S3で「NO」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語1でないと判定した場合には、S6に進む。
S4では、言語1でガイドを実行する。すなわち、制御部54は、使用者Uに対して行われる室内用音声の言語を言語1(例えば、英語)に設定する。そして、制御部54は、トイレ室TR内の機器の情報(位置や説明)および注意情報を使用者Uが退室するまで言語1で行い、S5に進む。S5では、言語1が選択されたことを記憶部55に記憶させる。この場合、制御部54は、例えば日時に対応させて言語1が選択されたことを記憶させて、S14に進む。
S6では、識別された音声は言語2(例えば、中国語)か否かを判定する。すなわち、制御部54は、使用者Uが発声した音声が言語2か否かを判定する。S6は、S3と同様の制御処理が行われ、例えば使用者Uが「チャイニーズ」、「チュウゴクゴ」、および「ニーハオ」などと発声した場合には、中国語での音声案内を望んでいると判定する。そして、S6で「YES」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語2であると判定した場合には、S7に進む。一方、S6で「NO」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語2でないと判定した場合には、S9に進む。
S7では、言語2でガイドを実行する。すなわち、制御部54は、使用者Uに対して行われる室内用音声の言語を言語2(例えば、中国語)に設定する。そして、制御部54は、トイレ室TR内の機器の情報(位置や説明)および注意情報を使用者Uが退室するまで言語2で行い、S8に進む。S8では、言語2が選択されたことを記憶部55に記憶させる。この場合、制御部54は、例えば日時に対応させて言語2が選択されたことを記憶させて、S14に進む。
S9では、識別された音声は言語3(例えば、韓国語)か否かを判定する。すなわち、制御部54は、使用者Uが発声した音声が言語3か否かを判定する。S9は、S3と同様の制御処理が行われ、例えば使用者Uが「コリアン」、「カンコクゴ」、および「アンニョンハセヨ」と発声した場合には、韓国語での音声案内を望んでいると判定する。そして、S9で「YES」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語3であると判定した場合には、S10に進む。一方、S9で「NO」、すなわち制御部54が使用者Uの発声が言語3でないと判定した場合には、S12に進む。
S10では、言語3でガイドを実行する。すなわち、制御部54は、使用者Uに対して行われる室内用音声の言語を言語3(例えば、韓国語)に設定する。そして、制御部54は、トイレ室TR内の機器の情報(位置や説明)および注意情報を使用者Uが退室するまで言語3で行い、S11に進む。S11では、言語3が選択されたことを記憶部55に記憶させる。この場合、制御部54は、例えば日時に対応させて言語3が選択されたことを記憶させて、S14に進む。
S12では、言語4(例えば、日本語)でガイドを実行する。すなわち、制御部54は、使用者Uに対して行われる室内用音声の言語を言語4(例えば、日本語)に設定する。この場合、言語4の設定は、言語1~言語3の設定が行われなかったときに実行される。すなわち、使用者Uが発声したとしても、制御部54が言語1~言語3であると認識できなかったり、使用者Uが発声しなかったりしたときには、自動で言語4が設定されるようになっている。なお、S9とS12との間に言語4の判定を行い、言語4も認識されなかったら、室内用音声のガイドを中止したり、再度S2に戻り発声を促してもよい。また、言語4も認識されなかった場合には、例えば言語1~4のうち、予め定めた言語を設定してもよいし、前回選択された言語を設定してもよい。そして、S13では、言語4が選択されたことを記憶部55に記憶させる。この場合、制御部54は、例えば日時に対応させて言語4が選択されたことを記憶させて、S14に進む。
S4、S7、S10、およびS12での各言語でのガイドの実行は、各使用者Uの母国での文化の違いなどから、例えば各機器の説明と注意事項の説明との順番が逆に行われるなど、その説明内容が異なっていてもよい。また、例えば言語4(日本語)で行われない説明や注意を、言語1~言語3では行ってもよい。このように、制御部54の記憶部55には、言語毎に室内用音声の初期設定テーブルが格納されている。
さらに、制御部54は、操作検出部61により各機器が操作されたか否かを検出している。そして、制御部54は、各機器が使用(操作)された場合には、使用者Uがその機器の使用方法を理解しているものとして、その機器の説明を中止している。これにより、室内用音声の情報を短くすることができるので、使用者Uに必要な情報のみを効率よく発信することができる。
S14では、トイレ室の使用情報から学習制御を行う。この学習制御は、トイレ用音声案内装置10の設置から所定期間毎(例えば、10日毎)や設定された日時(例えば、毎週日曜日の0時)に行われる。トイレ用音声案内装置10が設置された初期では、S14での学習制御を行わずに、エンドとなる。
次に、トイレ用音声案内装置10が設置されてから所定期間経過したときに実行されるS14での学習制御について説明する。この場合、制御部54は、S2で行われる発声を促すガイド(室内用音声の言語を選択させる旨の情報)の情報(内容)を変更する。また、制御部54は、S4、S7、S10、およびS12で行われる各ガイド(室内用音声)の情報(内容)を変更する。これら変更情報は、例えば各言語の初期設定テーブルに対応させて、記憶部55に変更テーブルとして格納されている。
S14では、例えば図4および図5に示す学習制御が行われる。
図4は、発声を促すガイドの内容を短くする制御の流れ図である。
図5は、発声を促すガイドの順番を変更する制御の流れ図である。
図4に示す学習制御は、各言語の情報について個別に行われるものである。まず、図4中のS21では、選択された各言語の合計回数を算出する。すなわち、制御部54は、例えば10日間で言語1が100回、言語2が70回など、所定期間内での各言語が選択された合計回数を算出する。
次のS22では、各言語について合計回数が閾値以上となっているか否かを判定する。すなわち、制御部54は、所定期間内における各言語の使用回数を算出する。閾値は、実験、シミュレーションなどにより任意の値に設定することができ、記憶部55に予め格納されている。閾値は、例えば全ての言語において同じ値(例えば、100回)に設定していてもよいし、各言語で異なる値に設定していてもよい。そして、S22で「YES」、すなわち言語の合計回数が閾値以上であると判定した場合には、S23に進む。一方、S22で「NO」、すなわち言語の合計回数が閾値未満であると判定した場合には、エンドとなる。
S23では、発声を促すガイドの情報を短くする。すなわち、制御部54は、図3中のS2で行われる発声を促すガイドの情報を次回以降で短くして、エンドとする。例えば、言語1(英語)が選択された回数が閾値以上となっている場合には、「Please select your language and say English, Chinese・・・」と音声出力部53から発信させていたものを、次回以降では「Choose language English, Chinese,・・・」や「Please say English, Chinese,・・・」のように短くする。なお、次の所定期間において、言語の合計回数が閾値未満となっているときには、発声を促すガイドの情報を初期設置に戻してもよい。これにより、トイレ室TRへの入室後速やかに、言語選択をさせることができるので、使用者Uがトイレ室TRの機器に移動する前に、言語選択および機器の説明などを効果的に行うことができる。
次に、図5に示す学習制御は、発声を促すガイドの全体について行われるもので、各言語による説明の順番を変更するものである。まず、図5中のS31では、各言語の選択された割合を算出する。すなわち、制御部54は、例えば10日間で言語1~言語4の順位付けを行い、S32に進む。
S32では、発声を促すガイドの順番を割合の高い言語からに変更する。すなわち、制御部54は、例えば言語2(中国語)、言語1(英語)、言語3(韓国語)、言語4(日本語)の選択順位となっている場合には初期設定で言語1、言語2、言語3、言語4の順番で説明をしていたものを、言語2、言語1、言語3、言語4の順番に変更して、エンドとする。
なお、この順番の変更制御は、日時毎に細分化して設定してもよい。すなわち、空港などに設置されるトイレ室TRでは、各国からの着便の日時により、トイレ室TRの使用者Uの言語の選択割合が大きく異なることが考えられる。そこで、制御部54は、例えば月曜日の10時~12時を言語2、言語1、言語3、言語4の順番に変更し、12時~13時を言語3、言語1、言語2、言語4の順番に変更してもよい。
また、例えば選択割合の低い言語は、音声識別が生きた状態で、発声を促すガイドから省略してもよい。なお、言語4(日本語)については、使用頻度が高くてもトイレ室TRの使い勝手をよく理解していると考え、選択された順番に限らず、必ず最後の順番となるように設定していてもよい。
次に、S4、S7、S10、およびS12で行われる各ガイド(室内用音声)の情報(内容)を変更する学習制御について説明する。
図6は、室内用音声での機器の説明を省略する制御の流れ図である。
制御部54は、使用者Uによる機器の使用頻度を監視している。そして、S41では、各機器の合計使用回数を算出して、S42に進む。S42では、機器の合計使用回数が閾値以下か否かの判定を行う。すなわち、制御部54は、機器毎の使用回数と予め記憶部55に格納された機器毎の閾値とを比較して、使用回数が閾値以下の機器を判別する。
そして、S42で「YES」、すなわち各機器について使用回数が閾値以下と判定された場合には、S43に進む。一方、各機器について使用回数が閾値よりも多いと判定された場合には、エンドとなる。そして、次のS43では、機器のガイドを省略する変更の設定を行って、エンドとなる。この変更は、選択された言語毎に設定されてもよいし、全ての言語に基づき設定されてもよい。この場合、呼出ボタン32などの使用頻度は低いが緊急性が高いものについては、ガイドを省略しないように設定している。これにより、多くの使用者Uに必要な情報を効率よく発信させることができる。なお、S42において、機器の合計使用回数の代わりに機器の使用割合(例えば、使用回数/利用者数)を用いてもよい。また、その際に、常に使用割合を計算しておき、その結果に基づいてガイドするかしないかを決定するようにしてもよい。
かくして、本実施形態によるトイレ用音声案内装置10によれば、トイレ室TRへの入室検知を契機にして、室内用音声の言語を選択させる旨の情報(音声による言語識別を行うこと、音声入力部への入力方法)を、音声出力部53から使用者Uに伝えることができる。従って、初めてトイレ室TRを使用する外国人や目の不自由な人などの使用者Uである場合にも、使用者自身が分かる言語を選択してもらうことができる。
また、トイレ用音声案内装置10によれば、音声出力部53から発信される入力言語と、音声出力部53から発信されない隠し言語とのいずれかの言語により言語識別ができる。従って、入力言語を最低限の説明とすることで、言語選択の説明を短くしつつ、音声出力部53から発信された入力言語以外の隠し言語でも使用者Uに速やかに言語選択をしてもらうことができるので、言語選択の自由度を広くすることができる。
また、トイレ用音声案内装置10によれば、各トイレ室TRにあった言語選択の情報に変更することができるので、トイレ室TRの言語選択を効率よく行うことができる。例えば、使用者Uに伝達する情報を短くすることで、トイレ室TRへの入室後に速やかに使用者Uに言語選択をしてもらうことができる。また、言語選択を案内する言語の順番を変えることで、例えば使用頻度の高い言語の説明を先にして、多くの使用者Uにより速く言語選択をさせることができる。
また、トイレ用音声案内装置10によれば、トイレ室TRの使用情報によって、使用者Uに伝達する情報の内容を変更することで、的確な情報だけを使用者Uに伝達することができる。
また、このトイレ用音声案内装置10によれば、使用者が操作した機器の説明を中止(省略)するので、室内用音声の情報を短くすることができ、使用者Uにわずらわしさを与えるのを抑制することができる。
また、トイレ用音声案内装置10によれば、所定時間経過後に音声出力部53から室内用音声の言語を選択させる旨の情報を発信するので、例えば使用者Uが出入口1のドア2を閉めてトイレ室TRが独立した空間となった後に音声による案内を開始させることができる。従って、音声出力部53から使用者Uにより確実に情報を伝えることができるとともに、音声入力部52により確実に言語を入力させることができる。また、目の不自由な人などに音声案内の準備期間を与えることができる。
なお、上述した実施形態では、人体検知センサ50、着座検知センサ51、音声入力部52、音声出力部53、および制御部54がケーシング40内にユニット化されて設けられた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば人体検知センサ50、着座検知センサ51、音声入力部52、音声出力部53、および制御部54を別個に設けてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ用音声案内装置10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。