JP7323788B2 - 発泡性アクリル系樹脂粒子、アクリル系樹脂発泡粒子及びアクリル系樹脂発泡粒子成形体 - Google Patents

発泡性アクリル系樹脂粒子、アクリル系樹脂発泡粒子及びアクリル系樹脂発泡粒子成形体 Download PDF

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Description

本発明は、発泡性アクリル系樹脂粒子、アクリル系樹脂発泡粒子及びアクリル系樹脂発泡粒子成形体に関する。
例えば船舶のスクリューやプレス金型などの大型の金属製品は、鋳型内に消失模型を埋設した後、消失模型に金属の溶湯を流し込むことにより消失模型を溶湯で置換しつつ鋳造を行う、フルモールド鋳造法と呼ばれる鋳造法により作製されることがある。
大型の鋳造品を鋳造するための消失模型は、従来、以下の方法により作製されている。まず、発泡性樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子を作製する。この発泡粒子を用いて型内成形を行い、所望する鋳造品の形状よりも大きな寸法を有する、直方体形状の発泡粒子成形体(以下、「ブロック成形体」と省略することがある。)を作製する。この成形体に切削加工等を施すことにより、所望の形状を有する消失模型を得ることができる。
例えば、特許文献1には、アクリル系樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体を消失模型として用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2015-183111号公報
消失模型用途においては、発泡性樹脂粒子の発泡性や、型内成形時における発泡粒子の型内成形性を高めるために、これらの基材樹脂として、ガラス転移温度が高いアクリル系樹脂が用いられる。しかしながら、このようなアクリル系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子は、ブロック成形体を成形可能な成形スチーム圧(以下、単に成形圧力ともいう。)の条件範囲が狭いという問題があった。そのため、従来の発泡性アクリル系樹脂粒子は、内部における発泡粒子同士の融着が十分であると共に、成形後の収縮が少なく、所望とする形状や寸法を有するブロック成形体を歩留まり良く得ることが難しかった。特に、消失模型の素材となるブロック成形体は、例えば、長さ2m、幅1m、厚み0.5m等の比較的大きな外寸法を有するものであるため、前記したような問題がより発生しやすい傾向があった。
なお、ブロック成形体における発泡粒子同士の融着が不十分な場合、切削加工の際に発泡粒子がブロック成形体から脱落し、消失模型の表面に凹凸が形成されやすくなる。このような意図しない凹凸が消失模型の表面に存在すると、鋳造物の表面にも凹凸が形成される。従って、切削加工中の発泡粒子の脱落を抑制する観点から、発泡粒子同士が十分に融着したブロック成形体が求められる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、発泡粒子成形体の内部においても発泡粒子同士を十分に融着させることができるとともに、型内成形後の収縮を抑制することができる発泡性アクリル系樹脂粒子、この発泡性粒子を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡粒子及びこの発泡粒子を型内成形してなるアクリル系樹脂発泡粒子成形体を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、アクリル系樹脂と、発泡剤と、カルボン酸エステルと、を含む発泡性アクリル系樹脂粒子であって、
前記アクリル系樹脂は、5万以上14万以下の重量平均分子量と、112℃以上125℃以下のガラス転移温度Tg1とを有し、
前記カルボン酸エステルは130℃よりも高い沸点を有し、
前記アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1と、前記発泡性アクリル系樹脂粒子を昇温速度10℃/分の条件で130℃まで加熱し、この温度を10分間保持した後に降温速度10℃/分の条件で室温まで冷却して得られるアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差Tg1-Tg2は2℃以上10℃以下である、発泡性アクリル系樹脂粒子にある。
本発明の他の態様は、前記の態様の発泡性アクリル系樹脂粒子を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡粒子にある。
本発明のさらに他の態様は、前記の態様のアクリル系樹脂発泡粒子を型内成形してなるアクリル系樹脂発泡粒子成形体にある。
前記発泡性アクリル系樹脂粒子(以下、「発泡性粒子」と省略することがある。)は、基材樹脂としての前記特定のアクリル系樹脂と、可塑剤としての前記特定のカルボン酸エステルと、を含有している。アクリル系樹脂の重量平均分子量を前記特定の範囲とすることにより、ガラス転移温度の比較的高いアクリル系樹脂を用い、発泡性粒子の発泡性や、発泡粒子の成形性を高めることができる。
また、前記カルボン酸エステルは、沸点が前記特定の範囲内であるため、型内成形中に気化しにくい。それ故、前記発泡性粒子を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡粒子(以下、「発泡粒子」と省略することがある。)は、型内成形時における発泡粒子中のカルボン酸エステルの放散を抑制し、型内成形中のアクリル系樹脂を適度に可塑化することができる。そして、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1と、アクリル系樹脂とカルボン酸エステルとを含有するアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差Tg1-Tg2を前記カルボン酸エステルを用いて前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子成形体の内部における発泡粒子同士の融着性を高めるとともに、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制することができる。
以上のように、前記の態様によれば、発泡粒子成形体の内部においても発泡粒子同士を十分に融着させることができると共に、型内成形後の収縮を抑制することができる発泡性アクリル系樹脂粒子を提供することができる。
次に、前記発泡性粒子、前記発泡粒子及び前記発泡粒子成形体の好ましい実施形態について説明する。
(発泡性粒子)
・アクリル系樹脂
前記発泡性粒子には、基材樹脂としてのアクリル系樹脂が含まれている。アクリル系樹脂は(メタ)アクリル酸エステル系単量体を重合してなる重合体であり、アクリル系樹脂には、少なくとも、(メタ)アクリル酸エステル成分が含まれている。なお、前述した「(メタ)アクリル酸」という表現は、アクリル酸とメタクリル酸とを包含する概念である。例えば、アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル及び/またはアクリル酸エステルの重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル及び/またはアクリル酸エステルと、他の単量体との共重合体であってもよい。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等の多環式飽和炭化水素基を備えたメタクリル酸エステル等を使用することができる。アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステルや、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル等の多環式飽和炭化水素基を備えたアクリル酸エステル等を使用することができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、スチレンやα-メチルスチレンなどを使用することができる。
アクリル系樹脂中には、これらの(メタ)アクリル酸エステルの中でもメタクリル酸メチルに由来する成分が50質量%以上含有されていることが好ましく、60質量%以上含有されていることがより好ましく、70質量%以上含有されていることがさらに好ましい。
なお、通常、アクリル系樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する成分の比率が高くなると、鋳造用消失模型として使用した際のススの発生を低減することができる一方で、発泡粒子の発泡性や成形性が低下しやすく、ブロック成形体を成形することが難しくなるおそれがある。前記の態様の発泡性粒子によれば、メタクリル酸メチルに由来する成分の比率が高い場合であっても、内部融着が良好なブロック成形体を安定して得ることができる。
アクリル系樹脂は、多環式飽和炭化水素基を有する成分を含んでいてもよい。この場合、アクリル系樹脂中のメタクリル酸エステル成分とアクリル酸エステル成分との合計100モルに対する前記メタクリル酸エステル成分のモル比は85モル%以上99モル%以下であり、前記メタクリル酸エステル成分及び前記アクリル酸エステル成分のうち少なくとも一方に、多環式飽和炭化水素基が含まれていることが好ましい。この場合には、発泡性粒子の発泡性および型内成形時の成形性を向上させることができる。更に、この場合には、消失模型として使用した際のススの発生をさらに低減するとともに、熱分解ガスの発生速度をより低減することができる。
多環式飽和炭化水素基を有する成分の含有量は、アクリル系樹脂中のメタクリル酸エステル成分とアクリル酸エステル成分との合計100モルに対して2モル%以上20モル%以下であることが好ましく、3モル%以上15モル%以下であることがより好ましい。この場合には、前述した作用効果をより確実に奏することができる。また、この場合には、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1をより容易に適正な範囲に調整することができる。
前述した作用効果をより確実に奏する観点から、アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルと、アクリル酸メチルと、メタクリル酸イソボルニルとの共重合体から構成されていることが好ましい。この場合、アクリル系樹脂中のメタクリル酸メチルに由来する成分の含有量が80~95モル%、アクリル酸メチルに由来する成分の含有量が3~9モル%、メタクリル酸イソボルニルに由来する成分の含有量が2~12モル%であることがより好ましい。ただし、前述した含有量は、メタクリル酸メチルに由来する成分、アクリル酸メチルに由来する成分及びメタクリル酸イソボルニルに由来する成分の合計を100モル%とした場合の各成分の割合である。
アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1は、112℃以上125℃以下である。アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1を前記特定の範囲とすることにより、発泡性粒子の発泡性を向上させることができると共に、発泡粒子の型内成形性を向上させることができる。
アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1は、115℃以上123℃以下であることがより好ましく、116℃以上122℃以下であることがさらに好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1を高めることで、ブロッキング防止剤の添加量を少なくしつつ、発泡性粒子の発泡時におけるブロッキングを抑制することできる。そのため、型内成形時における発泡粒子の融着性を高めることができ、発泡粒子成形体の内部においても融着に優れる成形体を得やすくなる。
ガラス転移温度Tg1が低すぎる場合には、発泡粒子を型内成形した際に、発泡粒子成形体の表面が型内成形時のスチームの熱に耐えられず、表面の一部が溶融するおそれや、発泡粒子が過度に発泡して成形体の表面の平滑性が低下するおそれがある。ガラス転移温度Tg1が高すぎる場合には、発泡性ポリスチレン粒子等の発泡に用いられる一般的な発泡機を用いて発泡性粒子を発泡させることが困難となり、見掛け密度の低い発泡粒子が得られにくくなる。また、この場合には、型内成形時における発泡粒子の二次発泡や発泡粒子同士の融着が不十分となり、発泡粒子成形体の内部における融着性の低下を招くおそれがある。
なお、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。まず、以下の方法により発泡性粒子の再沈殿精製を行い、メタノール不溶分を抽出する。なお、再沈殿精製によって得られるメタノール不溶分には、アクリル系樹脂が含まれている。
まず、発泡性粒子1gをメチルエチルケトン10mLに溶解させる。次いで、メタノール500mL中に得られたメチルエチルケトン溶液を滴下し、メタノール不溶分を沈殿させる。このようにしてメタノール不溶分を沈殿させることにより、カルボン酸エステルをメタノール中に溶解させ、カルボン酸エステルとメタノール不溶分とを分離することができる。メタノール中のメタノール不溶分を濾取し、室温にて風乾する。その後、メタノール不溶分を恒量になるまで真空乾燥させる。なお、発泡性粒子の代わりに、発泡粒子や発泡粒子成形体を用いて再沈殿精製を行っても、上記と同様にカルボン酸エステルとメタノール不溶分とを分離することが可能である。
次に、再沈殿精製により得られたメタノール不溶分2mgを秤量し、JIS K 7121:1987に基づいてDSCを行う。そして、昇温速度10℃/分の条件で得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度を求める。このようにして求められる、発泡性粒子のメチルエチルケトン可溶分中のメタノール不溶分のガラス転移温度を、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1とする。なお、測定装置としては、例えば、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定装置Q1000を使用することができる。
また、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1と、前記発泡性粒子から得られる、アクリル系樹脂とカルボン酸エステルとを含むアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差Tg1-Tg2は、2℃以上10℃以下である。なお、前述したアクリル系樹脂組成物には、発泡性粒子におけるアクリル系樹脂とカルボン酸エステルとの比率とほぼ同一の比率でアクリル系樹脂とカルボン酸エステルとが含まれていればよい。また、アクリル系樹脂組成物には、実質的に発泡剤が含まれていないことが好ましい。具体的には、アクリル系樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
前記発泡性粒子は、基材樹脂としてのアクリル系樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度Tg1をそれぞれ前記特定の範囲とすることに加え、Tg1-Tg2の値を前記特定の範囲とすることにより、優れた発泡性を有し、発泡粒子成形体の内部においても発泡粒子同士を十分に融着させることができ、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制することができる。
Tg1-Tg2の値が高すぎる場合には、型内成形を開始した後の比較的早い段階において、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子が二次発泡し、これらの発泡粒子同士が融着しやすくなる。これらの発泡粒子同士が融着すると、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子間の隙間が閉塞されやすくなる。そのため、この場合には、発泡粒子成形体の内部に供給されるスチームの量が不足しやすくなり、成形体の内部における融着率の低下を招くおそれがある。また、この場合には、型内成形が完了した後、成形体が冷却された際に成形体が大きく収縮してしまい、所望とする寸法を有する成形体を得ることができないおそれがある。Tg1-Tg2の値が低すぎる場合には、型内成形時にアクリル系樹脂の可塑化が不十分となりやすい。そのため、この場合には、型内成形時の発泡粒子の二次発泡や発泡粒子同士の融着が不十分となり、発泡粒子成形体の内部における融着性の低下を招くおそれがある。
前記アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2、つまり、可塑剤によって可塑化された状態のアクリル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121:1987に準拠して、以下の方法によりDSCを行うことで測定することができる。
具体的には、まず、発泡性粒子、発泡粒子または発泡粒子成形体のいずれかから2mgの試料を秤取した後、試料を昇温速度10℃/分の条件で、130℃まで加熱する。この温度で試料を10分間保持した後、降温速度10℃/分の条件で、室温まで冷却する。試料中に発泡剤が含まれている場合には、この操作において、試料から発泡剤が脱離する。それ故、この操作により、試料をアクリル系樹脂組成物とすることができる。
次に、昇温速度10℃/分の条件で試料を再び加熱する。この際に得られたDSC曲線の中間点ガラス転移温度をアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2とする。なお、測定装置としては、例えば、ティ・エイ・インスツルメント社製のDSC測定装置Q1000を使用することができる。
前記測定において、試料の加熱保持温度を130℃に設定した理由は、発泡粒子成形体を型内成形する際に設定される加熱温度の上限を考慮したためである。加熱保持温度を130℃に設定することで、カルボン酸エステルによって可塑化された状態のアクリル系樹脂のガラス転移温度、つまり、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2を適切に求めることができる。
従来、ガラス転移温度が高いアクリル系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を型内成形する場合、発泡粒子同士を融着させるために、型内成形時のスチーム圧力は比較的高く設定される。しかし、この場合には、前述したように、型内成形を開始した後、比較的早い段階で発泡粒子が二次発泡し、成形体の内部にスチームが到達しにくくなるため、成形体内部の融着率が低下する問題がある。
これに対し、前記発泡性粒子においては、アクリル系樹脂の重量平均分子量を前述した範囲にするとともに、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1とアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差を前記特定の範囲にすることで、型内成形時のスチーム圧力を過度に高くすることなく、型内成形を行うことができる。そのため、成形体の内部までスチームを供給することができ、成形体内部においても十分に発泡粒子同士を融着させることができるものと考えられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、5万以上14万以下である。アクリル系樹脂の重量平均分子量を前記特定の範囲とすることにより、発泡粒子成形体の内部まで発泡粒子同士を十分に融着させることができる。かかる作用効果をより高める観点からは、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、6万以上12万以下であることがより好ましく、8万以上11万以下であることがさらに好ましい。
重量平均分子量が小さすぎる場合には、型内成形を開始した後、比較的早い段階において、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子が二次発泡し、これらの発泡粒子同士が融着しやすくなるため、金型の壁面近傍に存在する発泡粒子同士の隙間が閉塞されやすくなる。そのため、この場合には、発泡粒子成形体の内部に供給されるスチームの量が不足しやすくなり、成形体の内部における融着率の低下を招くおそれがある。また、この場合には、得られる成形体の機械的物性が低下するおそれがある。重量平均分子量が大きすぎる場合には、発泡性粒子の発泡性が低下するおそれや、型内成形時の発泡粒子の二次発泡や発泡粒子同士の融着が不十分となるおそれがある。そのため、この場合にも、成形体の内部における融着率の低下を招くおそれがある。
なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定されたポリスチレン換算分子量である。アクリル系樹脂の重量平均分子量の測定方法は実施例にてより具体的に説明する。
・カルボン酸エステル
発泡性粒子には、可塑剤として、130℃よりも高い沸点を有するカルボン酸エステルが含まれている。かかるカルボン酸エステルは、発泡性粒子の発泡時や発泡粒子の型内成形時に気化しにくいため、発泡時や型内成形時にアクリル系樹脂を十分に可塑化することができる。これらの結果、発泡性や融着性を高めるとともに、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制することができる。これらの作用効果をより高める観点から、カルボン酸エステルの沸点は、160℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。
カルボン酸エステルの沸点が低すぎる場合には、アクリル系樹脂を可塑化しすぎるおそれや、型内成形の加熱によってカルボン酸エステルが気化し、アクリル系樹脂を適度に可塑化することができなくなるおそれがある。そのため、この場合には、発泡粒子の型内成形性が低下し、成形体の内部における融着率が低下するおそれや、発泡粒子成形体の収縮量が大きくなり、所望の形状を有する発泡粒子成形体が得られなくなるおそれがある。
なお、発泡性粒子の発泡時や発泡粒子の型内成形時の気化を抑制する観点からは、カルボン酸エステルの沸点に上限はないが、アクリル系樹脂を可塑化する能力を備えたカルボン酸エステルの沸点は、通常、450℃以下であり、より好ましくは400℃以下である。
発泡性アクリル系樹脂粒子中のカルボン酸エステルの含有量は、アクリル系樹脂100質量部に対して0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。この場合には、前述した作用効果をより確実に奏することができる。
カルボン酸エステルとしては、例えば、ジカルボン酸とアルコールとのエステルであるジカルボン酸エステルや、モノカルボン酸とアルコールとのエステルであるモノカルボン酸エステル等を使用することができる。ジカルボン酸エステルとしては、コハク酸ジオクチル,アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル等が挙げられる。モノカルボン酸エステルとしては、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸エチルヘキシル等が挙げられる。また、カルボン酸エステルとして、カルボン酸と多価アルコールとのエステルを使用することもできる。カルボン酸エステルとしては、カルボン酸とアルコールとのエステルのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。アクリル系樹脂の重合時における懸濁安定性の観点からは、カルボン酸エステルは水酸基を有しないことが好ましい。
カルボン酸エステルとして飽和カルボン酸とアルコールとのエステルを使用する場合には、鋳造時のススの発生をより効果的に抑制することができる。かかる作用効果をより高める観点からは、カルボン酸エステルが、飽和カルボン酸と飽和アルコールとのエステルであることがより好ましい。
また、カルボン酸エステルの総炭素数は8以上40以下であることが好ましく、16以上36以下であることがより好ましく、20以上32以下であることがさらに好ましい。この場合には、鋳造時のススの発生をより効果的に抑制することができる。また、この場合には、発泡性及び融着性をより高めるとともに、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮をより効果的に抑制することができる。
また、カルボン酸エステルとしてジカルボン酸エステルを使用する場合には、成形体内部の融着率を向上させる効果と、型内成形時の放冷時間を短縮する効果とをバランスよく奏することができる。かかる作用効果をより高める観点からは、カルボン酸エステルがアジピン酸エステルであることがより好ましく、アジピン酸ジオクチルであることがさらに好ましい。
また、カルボン酸エステルは温度23℃、相対湿度50%の環境下において液体であることが好ましい。この場合には、アクリル系樹脂の重合時において、(メタ)アクリル酸エステル系単量体中にカルボン酸エステルを分散させやすくすることができる。
・その他の成分
発泡性粒子中には、アクリル系樹脂及びカルボン酸エステルに加え、本発明の目的を阻害しない範囲内において、他の樹脂や添加剤等を配合することができる。他の樹脂や添加剤等の含有量は、アクリル系樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。
また、前述した作用効果を損なわない範囲であれば、発泡性粒子中に、前記特定の範囲の沸点を有するカルボン酸エステルの他に、例えばトルエン等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン等の環式炭化水素等の、カルボン酸エステル以外の可塑剤が含まれていてもよい。この場合、発泡性粒子中のカルボン酸エステル以外の可塑剤の含有量は、アクリル系樹脂100質量部に対して1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、0質量部、つまり、カルボン酸エステル以外の可塑剤が含まれないことが特に好ましい。なお、カルボン酸エステル以外の可塑剤として、例えばシクロヘキサンのような比較的沸点の低い化合物を使用した場合、アクリル系樹脂を可塑化しすぎるおそれや、型内成形の加熱によって沸点の低い可塑剤が気化し、アクリル系樹脂を適度に可塑化することができなくなるおそれがある。
[発泡剤]
発泡性粒子中には、発泡剤として、炭素数3~5の鎖式炭化水素が含まれている。鎖式炭化水素としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン等を使用することができる。これらの鎖式炭化水素は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。鎖式炭化水素としては、炭素数3~5の鎖式炭化水素を使用することが好ましく、ペンタンを使用することが特に好ましい。発泡性粒子中の前記鎖式炭化水素の含有量は、例えば、6~10質量%の範囲内から適宜設定することができる。
[被覆剤]
発泡性粒子の表面は、ブロッキング防止剤や帯電防止剤等の被覆剤により覆われていてもよい。発泡性粒子の表面を被覆剤によって被覆することにより、発泡時に発泡性粒子同士が融着する、ブロッキングと呼ばれる現象の抑制や、発泡性粒子や発泡粒子の帯電の抑制などの作用効果を奏することができる。
ブロッキング防止剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウム等のステアリン酸金属塩や、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム等のラウリン酸金属塩等などの、炭素数12~24の脂肪酸の金属塩である高級脂肪酸金属塩を使用することができる。また、帯電防止剤としては、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステルや、アルキルジエタノールアミン等を使用することができる。
発泡性粒子の発泡時のブロッキングを防止しつつ、発泡粒子の型内成形時の融着性を高める観点から、前記ブロッキング防止剤の被覆量は、発泡性粒子100重量部に対して、0.005~0.3質量部であることが好ましく、0.01~0.2質量部であることがより好ましく、0.02~0.1質量部であることがさらに好ましい。
・平均粒子径
発泡性粒子の平均粒子径は、0.6mmを超え1mm以下であることが好ましい。この場合には、発泡粒子の発泡性を高められると共に、発泡性粒子を発泡させることで得られる発泡粒子の直径が適度に大きくなるため、金型内に充填した際の発泡粒子同士の隙間を適度に大きくすることができる。それ故、型内成形時に、発泡粒子成形体の内部まで十分な量のスチームを供給でき、発泡粒子成形体の内部に存在する発泡粒子を十分に融着させることができる。その結果、発泡粒子成形体の内部における融着性をより向上させることができる。
発泡性粒子の平均粒子径は、以下の方法により算出することができる。まず、JIS Z 8801の規定に適合する試験用篩を用いて発泡性粒子をふるい分けし、発泡性粒子を粒径範囲に基づいて分級する。篩上に残った発泡性粒子の質量を測定することにより、各粒径範囲の発泡粒子の質量分率を算出する。これらの質量分率からロジン・ラムラー分布式を用いて粒径分布を決定した後、得られた粒径分布に基づいて、積算ふるい下百分率、つまり、小粒子側から積算した質量分率の累積値が63質量%となる粒径を算出し、この値を発泡性粒子の平均粒子径とする。
(発泡性粒子の製造方法)
前記発泡性粒子は、例えば懸濁重合等の従来公知の方法によって作製することができる。このような発泡性粒子は、アクリル系樹脂を基材樹脂としており、基材樹脂中に発泡剤とカルボン酸エステルとが含まれている。
発泡性粒子を懸濁重合により製造する場合には、例えば以下のような方法を採用することができる。まず、撹拌装置の付いた密閉容器内で、適当な懸濁剤や懸濁助剤を分散させた水性媒体中に、前述したモノマー成分としての(メタ)アクリル酸エステル等を、可塑剤、重合開始剤、連鎖移動剤等と共に添加し、モノマー成分を水性媒体中に分散させる。次に、モノマー成分の重合反応を開始する。そして、重合途中あるいは重合完了後に発泡剤を密閉容器内に添加し、前記重合反応によって生じた重合体であるアクリル系樹脂に含浸させる。このようにして、発泡性粒子を得ることができる。
なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、重合時における連鎖移動剤の添加量等により調整することができる。連鎖移動剤を使用する場合、連鎖移動剤の添加量は、アクリル系樹脂を構成する単量体100質量部に対して、概ね0.20~0.60質量部であることが好ましく、0.25~0.50質量部であることがより好ましい。連鎖移動剤の添加量を前記特定の範囲とすることにより、アクリル系樹脂の重量平均分子量を前記特定の範囲に調整しやすくすることができる。
連鎖移動剤としては、n-オクチルメルカプタンや、αメチルスチレンダイマー等の従来公知の連鎖移動剤を用いることができるが、n-オクチルメルカプタンを用いることがより好ましい。
発泡性粒子の表面を被覆剤で被覆する場合には、例えば、前記の方法により得られた発泡性粒子と被覆剤とを容器内で攪拌すればよい。撹拌装置としては、例えば、タンブラーミキサー等を使用することができる。
(発泡粒子)
発泡粒子は、発泡性粒子を発泡させることにより得られる。発泡性粒子を発泡させる方法は特に限定されることはない。例えば、発泡性粒子にスチーム等の加熱媒体を供給して加熱することにより、発泡性粒子を発泡させることができる。かかる方法としては、例えば撹拌装置の付いた円筒形の発泡機を用いて、スチーム等により発泡性粒子を加熱して発泡させる方法がある。
(発泡粒子成形体)
発泡粒子成形体は、発泡粒子を型内成形することにより得られる。発泡粒子を型内成形する方法は特に限定されることはない。例えば、所望する成形体の形状に対応したキャビティを有する金型内に発泡粒子を充填し、蒸気などの加熱媒体により金型内で多数の発泡粒子を加熱する。キャビティ内の発泡粒子は、加熱によってさらに発泡すると共に、相互に融着する。これにより、多数の発泡粒子が一体化し、キャビティの形状に応じた発泡粒子成形体が得られる。
発泡粒子成形体は、各辺の長さが150mmよりも大きな直方体形状を有していることが好ましい。即ち、前記発泡粒子成形体の厚みは150mmよりも大きいことが好ましい。前述したように、前記発泡粒子は、優れた融着性を有すると共に、型内成形後の収縮を抑制することができる。それ故、前記発泡粒子を型内成形することにより、各辺の長さが150mmを超える直方体形状の発泡粒子成形体を容易に作製することができる。そして、かかる形状を有する発泡粒子成形体は、大型の鋳造品を作製するための消失模型に好適である。かかる観点から、発泡粒子成形体の厚みは200mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、400mm以上であることがさらに好ましい。
以下に、前記発泡性粒子の実施例及び比較例について説明する。本例では、以下の方法により、表1の実施例及び表2の比較例に示す発泡性粒子を製造した。なお、本発明に係る発泡性粒子、発泡粒子及び発泡粒子成形体の具体的な態様は、以下に示す実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない範囲において適宜構成を変更することができる。
(実施例1)
まず、撹拌装置の付いた内容積が1.5m3のオートクレーブ内に、脱イオン水580kg、懸濁剤2.0kg、界面活性剤290g、電解質としての酢酸ナトリウム0.9kg、懸濁助剤としての過硫酸カリウム0.2gを投入した。なお、懸濁剤は、具体的には濃度20.5質量%の第三リン酸カルシウムスラリー(太平化学産業株式会社製)である。また、界面活性剤は、具体的には濃度10質量%のドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム水溶液(具体的には、花王株式会社製「ペレックス(登録商標)SSH」)である。
モノマー成分として、メタクリル酸メチル343kgと、メタクリル酸イソボルニル40kgと、アクリル酸メチル20kgとの混合物を準備した。この混合物に、重合開始剤としてのt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(具体的には、日油株式会社製「パーブチル(登録商標)O」)0.54kg及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(具体的には、日油株式会社製「パーブチルE」)0.54kgと、可塑剤としてのアジピン酸ジオクチル(沸点:331℃)2.0kgと、連鎖移動剤としてのn-オクチルメルカプタン(シェブロン社製)0.97kgと、を溶解させた。本例における、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとの合計に対するメタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル及びアクリル酸メチルそれぞれの配合量のモル比は表1に示す通りである。
オートクレーブ内の空気を窒素にて置換した後、オートクレーブ内を密閉した。次いで、オートクレーブ内を撹拌速度100rpmで撹拌しながら1時間15分かけてオートクレーブ内の温度を70℃まで昇温させ、70℃の温度を6時間保持して前段重合工程を行った。また、前段重合工程において、オートクレーブ内の温度が70℃に到達してから5時間が経過した時点で、発泡剤としてのペンタン(具体的には、n-ペンタン80質量%とi-ペンタン20質量%の混合物)48kgを1時間かけて添加した。そして、発泡剤の添加が完了した後に、撹拌速度を80rpmに下げた。
前段重合工程が完了した後、オートクレーブ内の温度を4時間かけて115℃まで昇温させ、115℃の温度を5時間保持して後段重合工程を行った。
後段重合工程を完了した後、オートクレーブ内の温度を4時間かけて35℃まで冷却し、更に室温まで冷却した。
冷却後、オートクレーブの内容物から発泡性粒子を取り出した。この発泡性粒子を硝酸で洗浄して表面に付着した第三リン酸カルシウムを溶解させた。その後、遠心分離機を用いて発泡性粒子の脱水及び洗浄を行い、さらに気流乾燥装置を用いて発泡性粒子の表面に付着した水分を除去した。
次に、発泡性粒子を篩にかけて、直径が0.50~1.2mmの粒子を取り出した。次いで、発泡性粒子100質量部と、0.04質量部のアルキルジエタノールアミンとをドラムタンブラーに供給した。更に、ドラムタンブラー内に、発泡性粒子100質量部に対して0.10質量部のステアリン酸亜鉛と、0.10質量部のステアリン酸カルシウムと、0.04質量部のグリセリンモノステアレートと、を供給した後、これらを攪拌して混合することにより、発泡性粒子の表面を被覆剤により被覆した。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル及びアクリル酸メチルは単量体である。また、表中の「n-ペンタンの含有量」「i-ペンタンの含有量」欄に示した値は、発泡性粒子中に実際に取り込まれた発泡剤の含有量である。
(実施例2)
アルキルジエタノールアミン、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム及びグリセリンモノステアレートの添加量をそれぞれ表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(実施例3)
n-オクチルメルカプタンの添加量を0.65kgに変更すると共に、可塑剤としてのアジピン酸ジオクチルの添加量を4.0kgに変更した以外は、実施例2と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(実施例4)
可塑剤として、アジピン酸ジオクチルに替えてステアリン酸ブチル(沸点:343℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(実施例5)
可塑剤として、アジピン酸ジオクチルに替えてコハク酸ジエチル(沸点:218℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(実施例6)
可塑剤として、アジピン酸ジオクチルに替えてセバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(沸点:377℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(比較例1)
n-オクチルメルカプタンの添加量を0.65kgに変更すると共に、可塑剤として、アジピン酸ジオクチルに替えて表2に示す量のシクロヘキサン(沸点:81℃)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。なお、シクロヘキサンは、可塑剤としての機能の他に、発泡剤としての機能を有している。
(比較例2)
可塑剤として、アジピン酸ジオクチルに替えて表2に示す量のシクロヘキサンを使用した以外は、実施例2と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(比較例3、比較例4)
n-オクチルメルカプタンの添加量を0.65kgに変更し、アジピン酸ジオクチルの添加量を表2に示す値に変更した以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(比較例5)
アジピン酸ジオクチルを使用しない以外は、実施例1と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(比較例6)
n-オクチルメルカプタンの添加量を1.3kg、ペンタンの添加量を40kgに変更した以外は、比較例5と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
(比較例7)
n-オクチルメルカプタンの添加量を1.5kgに変更するとともに、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸イソボルニルの添加量をそれぞれ表2に示す値に変更した以外は、比較例5と同様の方法により発泡性粒子を作製した。
以上により得られた発泡性粒子を用い、後述する方法によりアクリル系樹脂の重量平均分子量、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2、平均粒子径の測定及び発泡性の評価を行った。
次に、発泡性粒子を発泡させて発泡粒子を作製した。具体的には、まず、発泡性粒子9.1kgを加圧バッチ発泡機(DAISEN株式会社製「DYH-850」)内に投入した。この発泡性粒子を撹拌しながら、発泡機内の圧力がゲージ圧で0.025MPa(G)となるようにスチームを供給した。この圧力を110秒間して発泡性粒子を加熱することにより、発泡性粒子を発泡させ、嵩密度が約18kg/m3の発泡粒子を得た。実施例及び比較例において作製した発泡粒子の嵩密度を表1及び表2の「発泡粒子の嵩密度」欄に示す。
次に、以下の方法により、発泡粒子を型内成形して発泡粒子成形体を作製した。まず、上記のようにして得られた発泡粒子を室温で1日間放置して熟成させた後、ブロック成形機(笠原工業株式会社製「PEONY-P205DS」)の金型のキャビティ内に充填した。なお、キャビティの内寸法は、縦2.0m、横1.0m、厚み0.54mである。また、発泡粒子成形体の厚み方向の端面、つまり、長さ2.0mの辺と1.0mの辺とに囲まれた面に対面する金型の壁面の中央部には、型内成形中に金型が受ける圧力を測定するための面圧計が取り付けられている。
次に、キャビティ内にスチームを供給することにより発泡粒子の型内成形を行った。型内成形においては、金型の受ける圧力が表1及び表2の「目標面圧」欄に示す目標面圧となった後、この面圧が33秒間保たれるようにスチームの圧力を調整した。型内成形中に金型が受ける圧力の最高値は、表1及び表2の「最高面圧」欄に示す通りであった。
その後、金型を3秒間水冷し、更にキャビティ内をゲージ圧で-0.08MPaまで減圧した。面圧が0MPaとなるまで減圧状態を維持した後、金型を開いて発泡粒子成形体を取り出した。その後、発泡粒子成形体を温度60℃で1日間乾燥させ、更に室温下で1日以上養生した。
このようにして得られた発泡粒子及び発泡粒子成形体を用い、以下の方法により、型内成形時の放冷時間、型内成形後の収縮、融着性、曲げ強さ、鋳造性及び切削性の評価を行った。
なお、比較例1~7については、型内成形が完了した後、金型を開けた時点で発泡粒子成形体が破断して発泡粒子成形体を得ることができなかった、または、内部の融着に優れる成形体を得ることができなかったため、曲げ強さ、鋳造性及び切削性の評価を行わなかった。そのため、これらの項目については、表1及び表2の該当する欄に記号「-」を記載した。
「重量平均分子量」
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりアクリル系樹脂のクロマトグラムを取得した。そして、得られたクロマトグラムに基づき、アクリル系樹脂の重量平均分子量Mwを算出した。
クロマトグラムの取得には東ソー(株)製のHLC-8320GPC EcoSECを使用した。測定試料としての発泡性粒子をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて濃度0.1wt%の試料溶液を調製した後、TSKguardcolumn SuperH-H×1本、TSK-GEL SuperHM-H×2本を直列に接続したカラムを用い、溶離液:THF、THF流量:0.6ml/分という分離条件で、測定試料を分子量の違いによって分離し、クロマトグラムを得た。
そして、標準ポリスチレンを用いて作成した較正曲線によって得られたクロマトグラムにおける保持時間を分子量に換算し、微分分子量分布曲線を得た。表1及び表2の「重量平均分子量Mw」欄に、この微分分子量分布曲線から算出したアクリル系樹脂の重量平均分子量Mwを示す。
「アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1」
メタノールを用いた再沈殿精製により、発泡性粒子から可塑剤を除去し、アクリル系樹脂を含むメタノール不溶分を抽出した。具体的には、まず、発泡性粒子1gをメチルエチルケトン10mLに溶解させた。次いで、メタノール500mL中に、得られたメチルエチルケトン溶液を滴下し、アクリル系樹脂を含むメタノール不溶分を沈殿させた。メタノール不溶分を濾取し、室温にて風乾し、その後、樹脂を恒量になるまで真空乾燥させた。このようにしてアクリル系樹脂を含むメタノール不溶分を得た。
次に、メタノール不溶分2mgを秤量し、JIS K 7121:1987に準拠してDSCを行った。測定装置としては、示差走査熱量計(ティ・エイ・インスツルメント社製「Q1000」)を使用し、昇温速度は10℃/分とした。DSCにより得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度を、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1とした。表1及び表2の「アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1」欄に、実施例及び比較例のガラス転移温度Tg1を示す。
「アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2」
試料として発泡性粒子2mgを秤取し、測定装置内において試料を昇温速度10℃/分の条件で130℃まで加熱した。この温度で試料を10分間保持した後、降温速度10℃/分の条件で、室温まで冷却した。なお、この加熱処理後の試料には、発泡剤(ペンタン)が含まれていなかった。次に、この試料を、昇温速度10℃/分の条件で再び加熱した。この際に得られたDSC曲線の中間点ガラス転移温度をアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2とした。なお、測定装置としては、示差走査熱量計(ティ・エイ・インスツルメント社製「Q1000」)を使用した。表1及び表2の「アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2」欄に、実施例及び比較例のガラス転移温度Tg2を示す。また、表1及び表2の「Tg1-Tg2」欄に、実施例及び比較例における、アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1からアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2を差し引いた値を示す。
「発泡性粒子中の発泡剤の含有量」
精秤した発泡性粒子1gをN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィー(GC)による測定を行い、発泡性粒子中の発泡剤(シクロヘキサン、ペンタン)の含有量を定量した。なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
測定装置:株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフGC-9A
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG-20M
〔液相含浸率〕25質量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW-DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
キャリアガス:N2
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量方法:内部標準法
「発泡性粒子中の残存モノマーの含有量」
上述の発泡剤の含有量の測定と同様に、ガスクロマトグラフィーを行うことにより、各実施例及び比較例において得られた発泡性樹脂粒子中の残存モノマー(メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸メチル)の総含有量を測定した。そして、測定値を検量線で校正することにより定量を行った。ガスクロマトグラフィーの条件は上述の通りである。
「発泡性粒子の平均粒子径」
JIS Z 8801の規定に適合する試験用篩を用いて発泡性粒子をふるい分けし、発泡性粒子を粒径範囲に基づいて分級した。篩上に残った発泡性粒子の質量を測定することにより、各粒径範囲の発泡粒子の質量分率を算出した。これらの質量分率からロジン・ラムラー分布式を用いて粒径分布を決定した後、得られた粒径分布に基づいて、積算ふるい下百分率、つまり、小粒子側から積算した質量分率の累積値が63質量%となる粒径を算出した。この値を発泡性粒子の平均粒子径とした。表1及び表2の「平均粒子径」欄に、発泡性粒子の平均粒子径を示す。
「発泡性」
以下の方法により発泡性粒子を発泡させたときの発泡粒子の嵩密度に基づいて発泡性粒子の発泡性(発泡力)を評価した。まず、棚式発泡機内にゲージ圧で3kPa(G)のスチームを供給して発泡性粒子を540秒間加熱することにより、発泡性粒子を発泡させて発泡粒子を得た。次いで、発泡粒子を室温下で1日間風乾した。その後、1Lのメスシリンダーを用い、乾燥後の発泡粒子1Lの質量(g)を測定した。この発泡粒子1L当たりの質量を単位換算することで、嵩密度(kg/m3)を算出した。表1及び表2の「嵩密度」欄に、発泡粒子の嵩密度を示す。
発泡性評価においては、発泡粒子の嵩密度が20kg/m3以下であった場合を、発泡性粒子の発泡力が十分であり、発泡性に優れるため合格と判断した。
「型内成形時の放冷時間」
発泡粒子を型内成形する工程において、金型内の減圧を開始した時点から、面圧が0MPaに到達した時点までの所要時間を計測し、この値を表1及び表2の「放冷時間」欄に記載した。
「型内成形後の収縮」
以下の方法により測定した鼓形収縮の値に基づいて、型内成形後の収縮の程度を評価した。まず、発泡粒子成形体の厚さ方向の端面(つまり、金型内において2.0m×1.0mの金型面に対面していた面)に、長さ1.0mの辺と平行になるように定規を当てた。発泡粒子成形体の収縮によって厚み方向の端面が凹状に湾曲している場合、厚み方向の端面における2か所の外周端縁の両方に定規を当接させることができる。この場合には、定規に沿う線上における、定規と端面との隙間(つまり、厚さ方向における距離)の最大値を鼓形収縮の値とした。
以上の測定を、2か所の厚み方向の端面における、縦方向(つまり、長さ2.0mの辺に平行な方向)の中央と、縦方向の中央から0.5m離れた位置との計6か所について行った。そして、得られた鼓形収縮の値のうち最も大きい値を表1及び表2の「最大鼓形収縮」欄に記載した。本例では、最大鼓形収縮の値が15mm以下である発泡粒子成形体を、型内成形後の収縮が十分に小さいため合格と判断した。最大鼓形収縮の値は、10mm以下であることがより好ましい。なお、型内成形が完了した後、金型を開けた時点で発泡粒子成形体が破断して発泡粒子成形体が得らなかった場合は、最大鼓形収縮の評価を行わなかった。
「融着性」
まず、ニクロム線を用い、厚さ方向に9等分となるように発泡粒子成形体をスライスし、9枚の薄板を作製した。これらの薄板のうち、発泡粒子成形体の厚み方向の端面を含む薄板を、縦方向に概ね等分となるように破断させた。次に、破断面に露出した発泡粒子のうち無作為に選択した100個以上の発泡粒子を目視により観察し、粒子内部で破断した発泡粒子(つまり、材料破壊した発泡粒子)であるか、発泡粒子同士の界面で破断した発泡粒子であるかを判別した。そして、観察した発泡粒子の総数に対する粒子内部で破断した発泡粒子の数の比率を百分率で表した値を、成形体表面における融着率とした。表1及び表2の「表面融着率」欄に、実施例及び比較例の成形体表面における融着率を示す。
また、発泡粒子成形体の厚み方向の中央に配置されていた薄板を用い、上記と同様に破断させた後破断面の目視観察を行った。観察した発泡粒子の総数に対する粒子内部で破断した発泡粒子の数の比率を百分率で表した値を、成形体内部における融着率とした。表1及び表2の「内部融着率」欄に、実施例及び比較例の成形体内部における融着率を示す。本例では、成形体内部における融着率が50%以上の場合を、成形体の内部に存在する発泡粒子が十分に融着しているため合格と判断した。成形体内部における融着率の値は、60%以上であることがより好ましい。
「曲げ強さ」
ニクロム線を用い、発泡粒子成形体の中央部から、成形体の表面(スキン面)を含まないようにして、縦300mm、横75mm、厚み25mmの直方体状の試験片を3個採取した。これらの試験片を用いてJIS K 7221-1:2006に準拠した方法により3点曲げ試験を行い、最大曲げ応力(MPa)を測定した。なお、3点曲げ試験における支点間距離は200mmとした。表1及び表2の「曲げ強さ」欄に、3個の試験片における最大曲げ応力の平均値を示す。
「鋳造性」
鋳造性は、鋳造物の鋳肌及び鋳造時の様子により評価した。まず、実施例の成形体から、成形体の表面(スキン面)を含まないようにして、縦150mm×横75mm×厚み40mmの直方体状を呈する試験体を作製した。
この試験体を消失模型として用い、フルモールド鋳造法により金属の鋳造を行った。具体的には、まず、ジルコン系塗型剤を塗布した発泡粒子成形体を、湯道及び堰とともに鋳枠内に配置した。そして、鋳枠内に鋳型となる砂を充填した。砂としては、アルカリフェノールガス硬化バインダー樹脂(花王株式会社製 カオーステップ(登録商標)C-800)を使用した。
次に、二酸化炭素ガスを鋳枠全体に行き渡るように充填し、砂を硬化させた。湯口と逃がし口を取り付けた後、溶融金属を湯口より流し込み、鋳込みを行った。なお、溶融金属としては、球状黒鉛鋳鉄(つまり、FCD)を使用した。鋳込み時の溶融金属の温度は約1400℃であった。鋳込みが完了した後、鋳枠内で金属が凝固することにより、発泡粒子成形体に対応した形状の鋳物が形成された。鋳枠内で鋳物の温度を十分に低下させた後、鋳物を鋳枠から取り出し、ショットブラスト処理を行った。
・鋳肌の評価
鋳物を目視観察してスス欠陥の有無を評価した。なお、スス欠陥とは、鋳造時に発泡粒子成形体(すなわち、消失模型)の熱分解物がうまく排出されずに砂型内に残ることによって引き起こされる、鋳肌や鋳物の内部に生じた空洞やへこみのことである。スス欠陥がない場合や少ない場合は燃焼時にススの発生がほとんどないか少ないことを意味する。
表1及び表2の「鋳肌」欄には、鋳物がスス欠陥を有しない場合には記号「A」、鋳物にスス欠陥がわずかに見られる場合には記号「B」、鋳物にスス欠陥が多く見られる場合には記号「C」を記載した。
・注湯時の様子
上記のようにして溶融金属を湯口に流し込んだ際の溶融金属の吹き返し、つまり、発泡粒子成形体から生じた熱分解ガスによって湯口から溶融金属が吹き出す現象の有無を目視で判断した。表1及び表2の「注湯時の様子」欄には、吹き返しがない場合には記号「A」、わずかに吹き返しがある場合には記号「B」、吹き返しが激しい場合には記号「C」を記載した。
「ススの発生量」
発泡粒子成形体から、成形体の表面(スキン面)を含まないようにして、縦75mm×横25mm×厚さ25mmの寸法の試験片を切り出した。この試験片をクランプに水平に取り付け、試験片に炎を接触させた。このとき、発生したススの量を目視にて観察し、下記の基準で判定した。表1及び表2の「スス発生量」欄には、ススの発生がほとんどない場合に記号「A」、ススの発生が少ない場合に記号「B」、ススの発生が多い場合に「C」を記載した。
「切削性」
以下の方法により算出した平滑率の値に基づいて切削性を評価した。まず、直径20mmのフラット刃を取り付けたNC切削機(庄田鉄工株式会社製:NCN8200)を用いて発泡粒子成形体の厚み方向における中央部が露出するように切削加工を施した。切削加工時のツールの回転数は10,000rpmとし、送り速度は8,000mm/分とした。
3D形状測定機(キーエンス株式会社製「VR-3000」)を用い、上記の条件で切削した切削面をスーパーファインモードで観察し、深度合成を行うことにより切削面の三次元形状を再構成した。得られた三次元形状における、最も高い部分の高さよりも0.2mm以上陥没している領域を切削加工時に発泡粒子が脱落した領域とした。そして、視野の面積に対する発泡粒子が脱落した領域の面積率を100%から差し引いた値を、切削面の平滑率とした。表1及び表2に、実施例及び比較例の平滑率を示す。
Figure 0007323788000001
Figure 0007323788000002
表1に示すように、実施例1~6の発泡性粒子は、前記特定のアクリル系樹脂と、沸点が前記特定の範囲内であるカルボン酸エステルと、を含有している。また、実施例1~6におけるアクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1及びアクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1とアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差Tg1-Tg2は前記特定の範囲内にある。そのため、実施例1~6の発泡性粒子は優れた発泡性を有している。さらに、実施例1~6の発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体は、発泡粒子成形体の内部における融着性が高く、かつ、型内成形後の収縮が抑制されていた。
表2に示すように、比較例1におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量は前記特定の範囲よりも大きい。そのため、比較例1においては、発泡粒子成形体の表面及び内部の両方において、発泡粒子同士の融着が不十分となった。また、比較例1の発泡性粒子中には、カルボン酸エステルが含まれていない。そのため、比較例1の発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体は、型内成形後の鼓形収縮が大きくなった。
比較例2においては、可塑剤として、カルボン酸エステルに替えてシクロヘキサンが使用されている。そのため、比較例2の発泡性粒子を用いて作製された発泡粒子成形体は、比較例1と同様に、型内成形後の鼓形収縮が大きくなった。
比較例3におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量及びガラス転移温度の差Tg1-Tg2の値は前記特定の範囲よりも大きい。そのため、発泡粒子成形体の内部において、発泡粒子同士の融着が不十分となると共に、型内成形後の収縮量が過度に大きくなった。
比較例4におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量は前記特定の範囲よりも大きい。そのため、比較例4においては、発泡性粒子の発泡性が不十分であり、良好な成形体を得ることができなかった。
比較例5~7の発泡性粒子中には、可塑剤が含まれていないため、型内成形時にアクリル系樹脂を可塑化することができていなかった。そのため、発泡粒子成形体の表面及び内部の両方において、発泡粒子同士の融着に優れる発泡体が得られなかった。

Claims (8)

  1. アクリル系樹脂と、発泡剤と、カルボン酸エステルと、を含む発泡性アクリル系樹脂粒子であって、
    前記アクリル系樹脂は、5万以上14万以下の重量平均分子量と、112℃以上125℃以下のガラス転移温度Tg1とを有し、
    前記カルボン酸エステルは130℃よりも高い沸点を有し、
    前記アクリル系樹脂のガラス転移温度Tg1と、前記発泡性アクリル系樹脂粒子を昇温速度10℃/分の条件で130℃まで加熱し、この温度を10分間保持した後に降温速度10℃/分の条件で室温まで冷却して得られるアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tg2との差Tg1-Tg2は2℃以上10℃以下である、発泡性アクリル系樹脂粒子。
  2. 前記発泡性アクリル系樹脂粒子中の前記カルボン酸エステルの含有量は、前記アクリル系樹脂100質量部に対して0.1質量部以上2.0質量部以下である、請求項1に記載の発泡性アクリル系樹脂粒子。
  3. 前記カルボン酸エステルはジカルボン酸とアルコールとのエステルであり、前記カルボン酸エステルの総炭素数は16以上40以下である、請求項1または2に記載の発泡性アクリル系樹脂粒子。
  4. 前記発泡性アクリル系樹脂粒子の粒径分布において小粒子側から積算した質量分率の累積値が63質量%となる粒径を平均粒子径とした場合に、前記平均粒子径が0.6mmを超え1mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性アクリル系樹脂粒子。
  5. 前記アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとの共重合体であり、前記アクリル系樹脂中のメタクリル酸エステル成分とアクリル酸エステル成分との合計100モルに対する前記メタクリル酸エステル成分のモル比は85モル%以上99モル%以下であり、前記メタクリル酸エステル成分及び前記アクリル酸エステル成分のうち少なくとも一方に、多環式飽和炭化水素基が含まれている、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性アクリル系樹脂粒子。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡性アクリル系樹脂粒子を発泡させてなるアクリル系樹脂発泡粒子。
  7. 請求項6に記載のアクリル系樹脂発泡粒子を型内成形してなるアクリル系樹脂発泡粒子成形体。
  8. 前記アクリル系樹脂発泡粒子成形体は、各辺の長さが150mmよりも大きな直方体形状を有している、請求項7に記載のアクリル系樹脂発泡粒子成形体。
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